JP2004071336A - 透明導電膜積層体及びその製造方法、透明導電膜の形成方法と該方法を用いて製造された物品 - Google Patents

透明導電膜積層体及びその製造方法、透明導電膜の形成方法と該方法を用いて製造された物品 Download PDF

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Hiroto Ito
伊藤 博人
Takahiro Takagi
高木 隆裕
Yasushi Okubo
大久保 康
Toshio Tsuji
辻 稔夫
Takatoshi Kiyomura
清村 貴利
Kaneo Mamiya
間宮 周雄
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Abstract

【課題】本発明の目的は、耐熱性、光学特性、電気特性、透明導電膜の接着性に優れた透明導電膜積層体の提供、該透明導電膜を製造するための方法の提供、更に、複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいて色ずれの小さい電子ディスプレイ素子用基板フィルムを提供することである。
【解決手段】基材がセルロースエステルの置換度として、アセチル置換度をX、酢酸以外の酸による置換度をYとしたとき、1.0<X+Y<2.8、かつ0<X<2.8であるセルロースエステルと、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の加水分解重縮合物とを主成分とする有機−無機ポリマーハイブリッドフィルムであり、かつ該基材上に透明導電膜を積層することを特徴とする透明導電膜積層体及びその物品。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜積層体の製造方法、透明導電膜の形成方法及び該方法によって製造された透明導電膜積層体に関し、より詳しくは耐熱性、光学特性、電気特性、透明導電膜の接着性に優れた透明導電膜積層体を提供する方法及び該方法によって製造された透明導電膜積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来液晶表示素子、有機EL表示素子等の電子ディスプレイ素子用基板、あるいはCCD、CMOSセンサー等の電子光学素子用基板、あるいは太陽電池用基板としては、熱安定性、透明性の高さ、水蒸気透過性の低さからガラスが用いられてきた。しかし、最近携帯電話あるいは携帯用の情報端末の普及に伴い、それらの基板用として割れやすく比較的重いガラスに対し屈曲性に富み割れにくく軽量な基板が求められるようになった。そこでポリエーテルスルホン、ポリカーボネートあるいは特開平5−142525号公報に記載のポリエーテルスルホンとアクリル系基板を張り合わせたプラスチック基板が提案され一部で採用されるようになったが価格が高価であったり透過率や複屈折等の光学的性質が充分でない等の理由で普及の妨げになっていた。また、これらの基板フィルムは波長分散特性が負であるため、複屈折を利用した表示方法を採用している。例えば、STN、VAあるいはIPSモードの液晶パネルにおいては可視光の全波長域で偏光の補償ができず、表示色の色ずれの原因となり、また、有機EL表示素子においてはコントラストの低下を起こしていた。一方、波長分散特性が正の樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース誘導体が挙げられるが、これらは、それ自体では水蒸気透過性が大きすぎ表示素子用基板フィルムとしては不適であった。また有機EL表示素子等の電子ディスプレイ素子用基板上に透明導電膜を形成するためには、180℃でも変形しない程度の耐熱性が必要であり、また低抵抗の透明導電膜を得るためにはより高温での焼成が必要であった。
【0003】
上記透明導電膜は古くから検討されており、液晶表示素子、有機EL素子、太陽電池、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等に広く使用されている。透明導電膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属薄膜、SnO、In、CdO、ZnO、SnO:Sb、SnO:F、ZnO:AL、In:Snなどの酸化物及びドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB、TiN、TiC等の非酸化物がある。中でも錫をドープした酸化インジウム膜(以下、ITOという)が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さからもっとも広く使用されている。これらは真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空プラズマCVD法、スプレーパイロリシス法、熱CVD法、ゾルゲル法等により形成されている。
【0004】
近年、液晶表示素子、有機EL素子等のフラットパネルディスプレイにおいては、大面積化、高精細化が進んでおり、より高性能な透明導電膜が求められている。液晶素子においては、電界応答性の高い素子あるいは装置を得るうえから、電子移動度の高い透明導電膜の利用が求められている。また、有機EL素子においては電流駆動方式をとるために、より低抵抗な透明導電膜が求められている。
【0005】
透明導電膜の形成方法の中で真空蒸着法やスパッタリング法は、低抵抗な透明導電膜を得ることができる。工業的にはDCマグネトロンスパッタリング装置を用いることにより比抵抗値で10−4Ω・cmオーダーの優れた導電性を有するITO膜を得ることが出来る。
【0006】
しかしながら、これらの物理的製作法(PVD法)では気相中で目的物質を基板に堆積させて膜を成長させるものであり、真空容器を使用する。そのため装置が大がかりで高価なうえ原料の使用効率が悪くて生産性が低い。また大面積の成膜も困難であった。さらに、低抵抗品を得るためには製膜時に200〜300℃に加熱する必要があり、プラスチックフィルムへの低抵抗な透明導電膜の製膜は困難である。
【0007】
ゾルゲル法(塗布法)は分散調液、塗布、乾燥といった多くのプロセスが必要なだけでなく、被処理基材との接着性が低いためにバインダー樹脂が必要となり透明性が悪くなる。また、得られた透明導電膜の電気特性もPVD法に比較すると劣る。
【0008】
熱CVD法は、スピンコート法やディップコート法、印刷法などにより基材に目的物質の前駆物質を塗布し、これを焼成(熱分解)することで膜を形成するものであり、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易であるという利点があるが、通常焼成時に400℃〜500℃の高温処理を必要とするため基材が限られてしまうという問題点を有していた。特に、プラスチックフィルム基板への成膜は困難である。
【0009】
上記、ゾルゲル法(塗布法)による高機能な薄膜が得にくいデメリット、および、真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する方法(以下、大気圧プラズマCVD法という)が提案されている。特公2000−303175に大気圧プラズマCVD法により透明導電膜を形成する技術が開示されている。しかしながら、得られる透明導電膜の抵抗は比抵抗値で約10−2Ω・cmと高く、比抵抗値1×10−3Ω・cm以下の優れた電気特性が要求される液晶素子、有機EL素子、PDP、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用透明導電膜としては不十分である。更に、CVD原料にトリエチルインジウムを用いており、この化合物は常温、大気中で発火、爆発の危険性があるなど、安全性にも問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐熱性、光学特性、電気特性、透明導電膜の接着性に優れた透明導電膜積層体を提供することである。本発明の第二の目的は、該透明導電膜を製造するための方法を提供する事にある。更に、本発明の目的は複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいて色ずれの小さい電子ディスプレイ素子用基板フィルムを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成によって達成される。
【0012】
1.基材がセルロースエステルの置換度として、アセチル置換度をX、酢酸以外の酸による置換度をYとしたとき、1.0<X+Y<2.8、かつ0<X<2.8であるセルロースエステルと、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の加水分解重縮合物とを主成分とする有機−無機ポリマーハイブリッドフィルムであり、かつ該基材上に透明導電膜を積層することを特徴とする透明導電膜積層体。
【0013】
2.前記反応性金属化合物が、金属種に4価の金属を含んでいることを特徴とする前記1項に記載の透明導電膜積層体。
【0014】
3.前記4価の金属が、ケイ素、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記2項に記載の透明導電膜積層体。
【0015】
4.前記反応性金属化合物の加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり4個である化合物を、50モル%以上含有することを特徴とする前記2または3項に記載の透明導電膜積層体。
【0016】
5.前記反応性金属化合物の加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり4個である化合物を、70モル%以上含有することを特徴とする前記2または3項に記載の透明導電膜積層体。
【0017】
6.前記1〜5項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法であって、該透明導電膜を大気圧または大気圧近傍の圧力下で、少なくとも1種類の不活性ガスと、少なくとも1種類の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に透明導電膜を形成することを特徴とする透明導電膜積層体の製造方法。
【0018】
7.前記反応性ガスが、少なくとも1種類の有機金属化合物を含有することを特徴とする前記6項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0019】
8.前記有機金属化合物が、前記一般式(1)または(2)で表される有機金属化合物であることを特徴とする前記7項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0020】
9.前記反応性ガスが、少なくとも1種の還元性ガスを含有することを特徴とする前記6〜8項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0021】
10.前記反応性ガスが、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする前記6〜9項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0022】
11.前記反応性ガスが、水を含有することを特徴とする前記6〜9項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0023】
12.前記放電空間に、前記反応性ガスと少なくとも1種類の不活性ガスを含有する混合ガスを導入し、該不活性ガスがアルゴンまたはヘリウムを含有することを特徴とする前記6〜11項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0024】
13.前記6〜12項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法で用いる透明導電膜の形成方法であって、前記放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力を供給して放電させることを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【0025】
14.前記高周波電圧が、150MHz以下であることを特徴とする前記13項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0026】
15.前記高周波電圧が、200kHz以上であることを特徴とする前記13または14項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0027】
16.前記高周波電圧が、800kHz以上であることを特徴とする前記13〜15項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0028】
17.前記電力が、1.2W/cm以上であることを特徴とする前記13項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0029】
18.前記電力が、50W/cm以下であることを特徴とする前記13または17項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0030】
19.前記電力が、20W/cm以下であることを特徴とする前記13、17及び18項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0031】
20.前記高周波電圧は、連続したサイン波であることを特徴とする前記13〜19項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0032】
21.前記放電空間に印加する電界に用いる電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする前記13〜20項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0033】
22.前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物であることを特徴とする前記21項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0034】
23.前記電極の表面粗さRmaxが10μm以下であることを特徴とする前記21または22項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0035】
24.前記透明導電膜を形成する基材の表面温度が、200℃以下であることを特徴とする前記13〜23項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0036】
25.前記導電膜製膜後、熱処理を行うことを特徴とする前記13〜24項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0037】
26.前記熱処理が空気雰囲気下で行われることを特徴とする前記25項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0038】
27.前記熱処理が還元雰囲気下で行われることを特徴とする前記26項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0039】
28.前記熱処理が酸化雰囲気下で行われることを特徴とする前記26項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0040】
29.前記熱処理が真空雰囲気下で行われることを特徴とする前記26項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0041】
30.前記熱処理が不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする前記26項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0042】
31.前記熱処理の温度が50〜300℃であることを特徴とする前記25〜30項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
【0043】
32.前記透明導電膜が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、Fドープ酸化錫、Alドープ酸化亜鉛、Sbドープ酸化錫、ITO及びIn−ZnO系アモルファス透明導電膜から選ばれる少なくとも1つを主成分とすることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【0044】
33.前記透明導電膜がITO膜であって、該ITO膜がIn/Sn原子数比で100/0.1〜100/15の範囲であることを特徴とする前記1〜5及び32項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【0045】
34.前記透明導電膜の炭素含有量が0〜5.0原子数濃度の範囲であることを特徴とする前記1〜5、32及び33項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
【0046】
35.前記6〜12項のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法によって製造されたことを特徴とする物品。
【0047】
36.前記13〜31項のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法によって形成されたことを特徴とする物品。
【0048】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明において用いられる基材であるセルロースエステルフィルムについて説明する。
【0049】
本発明においては、好ましくは波長分散特性が正のセルロースエステルが用いられる。波長分散特性とは該有機ポリマーを可溶な溶媒(例えばアセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、塩化メチレンなどが挙げられ、またこれらの混合溶媒でもよい)に溶解しガラス板上にフィルム厚みが100μmになるように流延し乾燥させたフィルムを作製し、波長600nmにおける面内リターデーション値R(600)を波長450nmにおける面内リターデーション値R(450)で除した値が1より大きいものをいう。
【0050】
波長分散特性が正の基板フィルムにおいては、可視光の全波長領域で偏光の補償が可能であり、複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいては色ずれがなく、有機EL表示素子においてはコントラストが良好である。
【0051】
波長分散特性が正であるセルロースエステルの例としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートなどが挙げられる。
【0052】
セルロースエステルの置換度としては、アセチル置換度をX、酢酸以外の酸による置換度をYとしたとき、1.0<X+Y<2.8、かつ0<X<2.8であるものが好ましい。X+Yが1.0以下だと複屈折が大きくなり、また透明性・樹脂の溶解性が低下するため好ましくない。X+Yが2.8以上だと、反応性金属化合物の加水分解重縮合物の水酸基と水素結合を形成しうるセルロース上の水酸基の密度が少なくなり、生成するハイブリッド材料の網目構造が疎となって、高温時での弾性率の低下が大きくなり好ましくないため、特に好ましいセルロースエステルとしては、ジアセチルセルロースが挙げられる。
【0053】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0054】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種が4価の金属のものであり、より好ましくは金属種がケイ素、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選ばれるものである。特に好ましい金属種はケイ素である。
【0055】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物で、加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり2個である化合物の例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、すずエトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、等が挙げられる。
【0056】
加水分解可能な置換基が、金属1原子当たり3個である化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0057】
加水分解可能な置換基が、金属1原子当たり4個である化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラn−ブトキシゲルマン、セリウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−ブトキシド、テルルエトキシド等が挙げられる。
【0058】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり5個である化合物の例としては、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−ブトキシド、タングステンエトキシド、タングステンフェノキシド等が挙げられる。
【0059】
本発明において、反応性金属化合物の加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり4個である化合物を加水分解重縮合時に共存させるのが好ましい。また、水蒸気透過率を低減する観点から、加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり3個である化合物、及び加水分解可能な置換基が該金属1原子当たり2個である化合物のその他の置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく、該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基等が挙げられる。また、例えば、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン等を加水分解重縮合時に共存させてもよい。
【0060】
本発明において、基板フィルムを作製するための有機ポリマーに対し、無機高分子をハイブリッドすることが必須であり、いわゆる有機−無機ポリマーハイブリッドまたは有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法などと呼ばれる手法が用いられる。
【0061】
即ち、本発明の有機ポリマーおよび加水分解重縮合可能な反応性金属化合物の溶液に、ゾル・ゲル法を適用し加水分解重縮合をおこなわせるため、必要に応じて水・触媒を加え、加水分解を起こさせることにより縮合反応を促進する。この組成物を基材上に押し出しあるいは流延し乾燥し、その後、必要なら、熱処理、紫外線処理或いはプラズマ処理等を行うことにより、三次元架橋の進んだ基板フィルムを得ることが出来る。ここで、通常触媒としては塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が、5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。又、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。尚、金属化合物の加水分解重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが、塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によっては反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していたほうが良い。
【0062】
また、触媒として、このような酸類の代りに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン等の塩基を用いることができる。さらに、酸及び塩基の処理を複数回併用しても良い。
【0063】
触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
【0064】
本発明のセルロースエステルおよび加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は溶剤に溶解されるが、基材上に流延しフィルムを形成させる際に押し出しあるいは流延後に溶剤を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒が好ましく、かつ、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、しかも流延用基材を溶解しないものであり、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。また、有機ポリマーと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合しても良い。
【0065】
溶媒の例としてはエチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、メトキシメチルアルコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、塩化メチレンなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、エチルアルコール、メチルエチルケトン、アセトンおよび塩化メチレンが好ましい。得られる基板フィルムの厚さとしては、10μm〜1mm程度の任意のものを作製できるが30μm〜500μmが好ましい。
【0066】
本発明では、上記セルロースエステルを基材として用い、該基材上に透明導電膜を形成する。透明導電膜とは、一般に工業材料としてよく知られているものであり、可視光(400〜700nm)を殆ど吸収せず透明で、しかも良導体の膜のことである。電気を運ぶ自由荷電体の透過特性が可視光域で高く、透明であり、しかも電気伝導性が高いため、透明電極や帯電防止膜として用いられる。
【0067】
なお、「膜」と称しているが、用途によってその機能を有する程度に被処理体上に形成できればよく、必ずしも被処理体の全部または一部を覆う連続的な膜である必要はない。透明導電膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属薄膜、SnO、In、CdO、ZnO、SnO:Sb、SnO:F、ZnO:AL、In:Snなどの酸化物及びドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB、TiN、TiC等の非酸化物がある。
【0068】
以下、透明導電膜の形成方法を説明する。透明導電膜の形成方法は従来より用いられている蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布法など、特に制限はないが、本発明においては大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に透明導電膜を形成する透明導電膜積層体の製造方法を用いる事が好ましい。
【0069】
ここで、本発明に有用な大気圧プラズマ放電薄膜形成方法及びその装置について説明する。
【0070】
大気圧プラズマ放電薄膜形成装置は、二つの電極が対向電極、例えば片方の電極がアース電極で、対向する位置に配置された他方の電極が印加電極で構成する対向電極を有し、これらの対向電極間の放電空間で放電させ、該放電空間に導入した少なくとも放電ガスと薄膜形成ガスを構成成分とする透明導電性薄膜用ガスの先ず放電ガスをプラズマ状態とし、続いて薄膜形成ガスがプラズマ状態となり、該放電空間を移送する基材を該プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒すことによって、該基材の上に透明導電性薄膜を形成させる装置である。
【0071】
また他の方式の大気圧プラズマ放電薄膜形成装置は、対向電極間で上記と同様に放電させ、該対向電極間に導入した透明導電性薄膜用ガスの先ず放電ガスをプラズマ状態とし、続いて薄膜形成ガスがプラズマ状態となり、該対向電極外にジェット状に該プラズマ状態の薄膜形成ガスが吹出し、該対向電極の下側近傍にある基材との間処理空間において、基材を該プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒すことによって該基材の上に透明導電性薄膜を形成させるジェット方式の装置である。なお、基材は静置していても移動していてもよい。
【0072】
更に他の方法は、放電ガスだけを対向電極間(放電空間)に導入してプラズマ状態とし、他から導入した薄膜形成ガスを処理空間においてプラズマ状態として、該プラズマ状態の薄膜形成ガスに基材を晒すことによって基材上に透明導電性薄膜を形成する方法もある。
【0073】
このように透明導電性薄膜形成ガスは、混合して放電空間に導入してもよく、また放電ガスを放電空間に導入し、処理空間で薄膜形成ガスをプラズマ状態としてもよい。
【0074】
本発明の透明導電膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい透明導電膜の種類によって異なるが、基本的に、不活性ガスと、透明導電膜を形成するためにプラズマ状態となる反応性ガスの混合ガスである。ここで不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン更には窒素ガス等が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、アルゴンまたはヘリウムが特に好ましく用いられる。本発明で用いる反応性ガスは複数用いることが可能であるが、少なくとも1種類は、放電空間でプラズマ状態となり、透明導電膜を形成する成分を含有するものである。このような反応性ガスとしては特に制限はないが、有機金属化合物が好ましく用いられる。有機金属化合物の種類は問わないが、分子内に酸素を有する有機金属化合物が好ましく、特にβジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物が好ましく用いられる。より好ましくは前記一般式(1)または(2)であらわされる化合物から選ばれる反応ガスである。これらの式中Mはインジウム、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種類の金属である。またR、Rは各々炭素数1から10までのアルキル基、少なくとも1つ以上のフッ素を含むフルオロアルキル基を示す。この一般式で表される化合物の中で好ましい例は、インジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、インジウムメチル(トリメチル)アセチルアセテート、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシド、インジウムトリフルオロペンタンジオネート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、ジンクアセチルアセトナート等を挙げることが出来る。
【0075】
この中で特に、好ましいのはインジウムアセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジンクアセチルアセトナート、ジ−n−ブチルジアセトキシスズである。これらの有機金属化合物は一般に市販されており、たとえばインジウムアセチルアセトナートであれば東京化成工業(株)等より容易に入手することができる。
【0076】
本発明においては、これら分子内に少なくとも1つ以上の酸素原子を含有する有機金属化合物のほかに、導電性を向上させるために行われるドーピング用のガスを用いることができる。ドーピングに用いられる反応性ガスとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、ニッケルアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、ボロンイソプロポキシド、n−ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラブチルスズ、ジンクアセチルアセトナート、6フッ化プロピレン、8フッ化シクロブタン、4フッ化メタン等を挙げることができる
さらに本発明においては、透明導電膜の構成元素を含む反応ガスの他に酸素などの酸化性を有するガス、水素などの還元性を有するガスその他、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などを適宜用いることも可能である。
【0077】
透明導電膜主成分として用いられる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスの量比は、成膜する透明導電膜の種類により異なる。例えば、酸化インジウムにスズをドーピングして得られるITO膜においては得られるITO膜のIn/Snの原子数比が100/0.1〜100/15の範囲になるように反応性ガス量を調整する。好ましくは、100/0.5〜100/10の範囲になるよう調整する。In/Snの原子数比はXPS測定により求めることができる。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn/Fの原子数比が100/0.01〜100/50の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。Sn/Fの原子数比はXPS測定により求めることが出来る。In−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、In/Znの原子数比が100/50〜100/5の範囲になるよう反応性ガスの量比を調整する。In/Znの原子数比はXPS測定で求めることが出来る。
【0078】
更に、反応性ガスには透明導電膜主成分となる反応性ガスとドーピングを目的に少量用いられる反応性ガスがある。更に、透明導電膜の抵抗値を調整する為に反応性ガスを追加することも可能である。透明導電膜の抵抗値を調整する為に用いる反応性ガスとしては、例えば、チタントリイソプロポキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることができる。
【0079】
上記反応性ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明ませ25導電膜が得られる。
【0080】
本発明においては、大気圧近傍の圧力下で透明導電膜を形成するが、その際の基材の温度は特に制限は200℃以下が好ましい。200℃程度の温度でも大気圧プラズマを用いて透明導電膜を形成することにより、十分低い比抵抗値の透明導電膜積層体を得ることが可能である。更に、本発明の透明導電膜の形成方法は大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に薄膜を形成した後、熱処理することも可能である。
【0081】
熱処理の温度としては、50〜200℃の範囲が好ましい。好ましくは80〜180℃の範囲である。加熱の雰囲気も特に制限はない。空気雰囲気、水素などの還元性ガスを含む還元雰囲気、酸素などの酸化性ガスを含有するような酸化雰囲気、あるいは真空、窒素、希ガスなど不活性ガス雰囲気下のうちから適宜選択することが可能である。還元、酸化雰囲気をとる場合、還元性ガス、酸化性ガスを希ガスや窒素などの不活性ガスで希釈して用いることが好ましい。このような場合、還元性ガス、酸化性ガスの濃度は0.01〜5%が好ましく、より好ましくは0.1〜3%である。
【0082】
また、本発明の透明導電膜の形成方法によって得られる透明導電膜は、反応性ガスとして有機金属化合物を用いるため、微量の炭素を含有する場合がある。その場合の炭素含有率は、0〜5.0原子数濃度であることが好ましい。特に好ましくは0.01〜3原子数濃度の範囲内にあることが好ましい。
【0083】
これまで記したセルロースエステルを用いた透明基材上に大気圧または大気圧近傍の圧力下において、少なくとも1種類以上の不活性ガスと、少なくとも1種類以上の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって透明導電膜を形成する方法では、セルロースエステル中に金属を含有するため、透明導電膜との親和性が高く、よって透明導電膜と基材との接着性が向上する。通常、樹脂フィルム上に透明導電膜を形成する場合、プライマー層と呼ばれる接着性を付与する層を設ける必要があり、この層を設ける必要がないため、該製造方法により製造された透明導電膜積層体は生産性が高い。更に大気圧下で製膜を行うため真空プロセスを必要とするスパッタリングと比較し、更に生産性が向上する。
【0084】
図1は、本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置のプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【0085】
図1において、長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻回されながら搬送される。固定されている電極26は複数の円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。ロール電極25に巻回された基材Fは、ニップローラ65、66で押圧され、ガイドローラ64で規制されてプラズマ放電処理容器31によって確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ67を介して次工程に搬送される。また、仕切板54は前記ニップローラ65、66に近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器31内に進入するのを抑制する。
【0086】
この同伴される空気は、プラズマ放電処理容器31内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ65および66により、それを達成することが可能である。
【0087】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガス(不活性ガスと、反応性ガスである有機フッ素化合物、チタン化合物または珪素化合物等を含有する有機ガス)は、給気口52からプラズマ放電処理容器31に導入され、処理後のガスは排気口53から排気される。
【0088】
図2は、図1と同様に、本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図であるが、図1においては、ロール電極25に対向する固定されている電極26は円柱型の電極が用いられているのに対し、角柱型電極36に変更した例を示している。
【0089】
図1に示した円柱型の電極26に比べて、図2に示した角柱型の電極36は、放電範囲を広げる効果があるので、本発明の製造方法に好ましく用いられる。
【0090】
図3(a)、(b)は各々、上述の円筒型のロール電極の一例を示す概略図、図4(a)、(b)は各々、円筒型で固定されている電極の一例を示す概略図、図5(a)、(b)は各々、角柱型で固定されている電極の一例を示す概略図である。
【0091】
図3(a)、(b)において、アース電極であるロール電極25cは、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体を片肉で1mm被覆し、ロール径を被覆後200φとなるように製作し、アースに接地してある。または、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせ、ロール電極25Cで構成してもよい。ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材25a、25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ、窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0092】
図4(a)、(b)および図5(a)、(b)は、印加電極である固定の電極26c、電極26C、電極36c、電極36Cであり、上記記載のロール電極25c、ロール電極25Cと同様な組み合わせで構成されている。すなわち、中空のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。尚、セラミック被覆処理誘電体の被覆後12φまたは15φとなるように製作され、当該電極の数は、上記ロール電極の円周上に沿って14本設置している。
【0093】
印加電極に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0094】
図6は、本発明に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。図6において、プラズマ放電処理容器31の部分は図2の記載と同様であるが、更に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット60等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット60の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0095】
図6に記載の電極25、36は、図3、4、5等に示したものと同様であり、対向する電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0096】
上記電極間の距離は、電極の母材に設置した固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1.0±0.5mmである。
【0097】
前記プラズマ放電処理容器31内にロール電極25、固定されている電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に入れ、前記プラズマ放電処理容器31内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し排気口53より排気する。次に電源41により電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材61より基材Fを供給し、ガイドローラ64を介して、プラズマ放電処理容器31内の電極間を片面接触(ロール電極25に接触している)の状態で搬送され、基材Fは搬送中に放電プラズマにより表面が放電処理され、その後にガイドローラ67を介して、次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極25に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0098】
電源41より固定されている電極36に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5〜10kV程度で、電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが連続モードの方がより緻密で良質な膜が得られる。
【0099】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0100】
また、図7は、本発明に用いられるプラズマ製膜装置の放電部の一例を示す概略図である。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0102】
実施例1
〈本発明に使用するセルロース類の置換度の測定〉
各実施例において、セルロースエステル、溶液およびフィルムの化学的性質は以下のように測定した
(アセチルセルロースの置換度(TAC))
乾燥したアセチルセルロース1.9gを精秤し、アセトン70mlとジメチルスルホキシド30mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら1モル/L−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間けん化した。60℃程度の熱水を100ml加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として1モル/L−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。下記式より置換度TACを計算した。
【0103】
TAC=(B−A)×W/(1000×F)
TAC:酢酸量(mol/g)=置換度
A:試料滴定量
B:空試験滴定量
F:1モル/L−硫酸の力価
W:試料質量
(アセチルプロピオニルセルロースの置換度)
乾燥したアセチルプロピオニルセルロース1.9gを精秤し、アセトン70mlとジメチルスルホキシド30mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら1モル/L−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間けん化した。60℃程度の熱水を100ml加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として1モル/L−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、定法により有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度TAを計算した。
【0104】
TA=(B−A)×W/(1000×F)
DSace=(162.14×TA)/{1−42.14×TA+(1−56.06×TA)×(PR/AC)}
DSacy=DSace×(PR/AC)
TA:有機酸量(mol/g)=置換度=DSace+DSacy
A:試料滴定量
B:空試験滴定量
F:1モル/L−硫酸の力価
W:試料質量
PR/AC:イオンクロマトで測定した酢酸(AC)とプロピオン酸(PR)とのモル比
DSace:酢酸量(mol/g)
DSacy:プロピオン酸量(mol/g)
(基板フィルムの作製)
〈基板フィルム101の作製〉
テトラエトキシシラン4.16gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.7g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、LM80)のアセトン溶液38.4gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。また、使用したセルロースLM80の置換度は2.13だった。
【0105】
〈基板フィルム102の作製〉
テトラエトキシシラン4.16gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.7g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、L50)のアセトン溶液38.4gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。また、使用したセルロースL50の置換度は2.33だった。
【0106】
〈基板フィルム103の作製〉
テトラエトキシシラン2.08g、メチルトリエトキシシラン1.78gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.61g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、L50)のアセトン溶液40.64gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。
【0107】
〈基板フィルム104の作製〉
メチルトリエトキシシラン3.57gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.52g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、L50)のアセトン溶液42.88gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。
【0108】
〈基板フィルム105の作製〉
テトラエトキシシラン4.16gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.7g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製)のアセトン溶液38.4gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。また、使用したセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.43だった。
【0109】
〈基板フィルム106の作製〉
テトライソプロポキシチタン3.42gをTHF4.0gに溶解し、この溶液を室温で10.0質量%のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製)のメチルセロソルブ溶液48.0gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間室温で攪拌した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは30μmだった。また、使用したセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.43だった。
【0110】
〈基板フィルム107の作製〉
ジルコニウムテトラn−プロポキシド70%プロパノール溶液9.36gを塩化メチレン7.0gに溶解し、この溶液を室温で10.0質量%のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製)のメチルセロソルブ:塩化メチレン=1:1(質量比)の溶液74.0gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を1時間室温で攪拌した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは60μmだった。また、使用したセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.43だった。
【0111】
〈基板フィルム108の作製〉
アルミニウムs−ブトキシド4.12gを2−ブタノール4.12g、塩化メチレン8.24gに溶解し、この溶液を室温で10.0質量%のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製)のメチルセロソルブ溶液39.4gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を5分間室温で攪拌した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは30μmだった。また、使用したセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.43だった。
【0112】
〈基板フィルム201の作製〉
前記12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、L50)のアセトン溶液50gをガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。
【0113】
〈基板フィルム202の作製〉
前記12.5質量%のジアセチルセルロース(ダイセル化学製、LM80)のアセトン溶液50gをガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。
【0114】
〈基板フィルム203の作製〉
12.5質量%のトリアセチルセルロース(ダイセル化学製、LT55)のアセトン溶液50gをガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。また、このセルロースLT55の置換度は2.80だった。
【0115】
〈基板フィルム204の作製〉
前記12.5質量%のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製)のアセトン溶液50gをガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。また、このセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.43だった。
【0116】
〈基板フィルム205の作製〉
テトラエトキシシラン4.16gをエタノール4.0gに溶解し攪拌しながら、12.7質量%塩酸水溶液を0.7g加えた。10分後この溶液を55℃に保った12.5質量%のトリアセチルセルロース(ダイセル化学製、LT55)の1,3−ジオキソラン溶液38.4gに攪拌しながら加えた。得られた溶液を6時間加熱還流した後、ガラス板上に流延し乾燥させた。乾燥後の厚みは50μmだった。
【0117】
〈基板フィルム206の作製〉
フィルム厚50μmのポリエーテルスルホンフィルムである住友ベークライト(株)製“スミライト FS1300”を比較の基板フィルムとした。
【0118】
〈基板フィルム207の作製〉
フィルム厚100μmのポリカーボネートフィルムである帝人(株)製“ピュアエース”を比較の基板フィルムとした。
【0119】
〈基板フィルム208の作製〉
フィルム厚100μmのポリノルボルネンフィルムである日本ゼオン(株)製“ゼオノア ZF1420R”を比較の基板フィルムとした。
【0120】
上記各基板フィルムの詳細を表1に示す。
【0121】
【表1】
Figure 2004071336
【0122】
〔透明導電膜の作製〕
上記基板上に下記の方法で透明導電膜を形成した。
【0123】
プラズマ放電装置には、電極が平行平板型のものを用い、この電極間に上記ガラス基板を載置し、且つ、混合ガスを導入して薄膜形成を行った。
【0124】
尚、電極は、以下の物を用いた。200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。このように電極を作製し、アース(接地)した。
【0125】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作製し、対向する電極群とした。
【0126】
また、プラズマ発生に用いる使用電源は日本電子(株)製高周波電源JRF−10000にて周波数13.56MHzの電圧で且つ5W/cmの電力を供給した。
【0127】
〈透明導電膜301の作製〉
電極間に以下の組成の反応性ガスを流した。
【0128】
不活性ガス:ヘリウム 98.69体積%
反応性ガス1:水素 0.05体積%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナート 1.2体積%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05体積%
反応性ガス4:テトラエトキシシラン 0.01体積%
基材上に上記反応ガス、反応条件により大気圧プラズマ処理を行い、錫ドープ酸化インジウム膜を作製した。
【0129】
以下表2に示す条件にて透明導電膜302〜309を作製した。これとは別に透明導電膜310及び311を以下の方法にて作製した。
【0130】
〈透明導電膜310の作製〉
プライマー、ガスバリヤ層つきPET基材を、DCマグネトロンスパッタ装置に装着し、真空槽内を1×10−5torr以下まで減圧した。尚、スパッタリングターゲットは酸化インジウム:酸化錫95:5の組成のものを用いた。この後、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを(Ar:O2=1000:3)を1×10−3Paとなるまで導入し、スパッタ出力100W、基板温度100℃にて透明導電膜積層体を形成した。
【0131】
〈透明導電膜311の作製〉
透明導電層を京都エレックス(株)製有機ITOペーストニューフロコートEC−Lをディップコートして作製した。
【0132】
【表2】
Figure 2004071336
【0133】
以上、作製した本発明の基板フィルム101〜108および比較例の基板フィルム201〜208について透過率(可視光)、ヘイズ、視屈折、比抵抗、加熱試験塗膜密着性を評価した。評価結果を下記表3に示す。尚、透過率及びヘイズは東京電色(株)製TURBIDITY METER T−2600DAで測定した。複屈折は王子計測機器(株)製自動複屈折計KOBRA−21ADHで測定し、フィルム面内のX方向、Y方向の屈折率の差に厚みを40μmと仮定し、この値を乗じた値(nm)で表した。
【0134】
〈透過率〉
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0135】
〈ヘイズ〉
東京電色(株)製TURBIDITY METER T−2600DAで測定した。
【0136】
〈複屈折〉
王子計測機器(株)製自動複屈折計KOBRA−21ADHで測定し、フィルム面内のX方向、Y方向の屈折率の差に厚みを40μmと仮定し、この値を乗じた値(nm)で表した。
【0137】
〈比抵抗〉
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
【0138】
〈加熱試験〉
透明導電膜積層体フィルムを縦横10cmの長さに切断した。このフィルムについて室温25℃相対湿度50%における表面抵抗を三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いて測定した。この表面抵抗値をR0とする。このフィルムを温度80℃相対湿度40%の恒温恒湿漕で1週間処理し、再度表面抵抗値を測定した。この値をRとし、R/R0の比を求めた。この比は1に近い方が好ましい。
【0139】
〈塗膜密着性〉
日本工業規格K5400に準拠し、碁盤目テープ試験を行った。
【0140】
〈組成、炭素含有率の測定〉
膜組成、炭素含有率は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定する。XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定をおこなう前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用できる。本測定においては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0141】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
【0142】
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンをおこない、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM(Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理をおこない、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
【0143】
定量処理をおこなう前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションをおこない、5ポイントのスムージング処理をおこなった。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps×eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
【0144】
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0145】
評価結果を表3に示す。
【0146】
【表3】
Figure 2004071336
【0147】
実施例2
実施例1で得られた透明導電膜積層体を用いて、プラスチックフィルム製液晶表示装置を作製した。用いた透明導電膜積層体は80℃高温保存、60℃95%RHの高温高湿に1000時間保存した。液晶表示装置の反りは以下の通りである。
【0148】
(反り)
101  <2mm
110  4mm
119  8mm
127  9mm
本発明に関わる液晶表示装置は反りも少なく良好である。
【0149】
【発明の効果】
本発明により、耐熱性、光学特性、電気特性、透明導電膜の接着性に優れた、透明導電膜積層体を提供する方法及び該方法によって製造された、透明導電膜積層体を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置に設置されるプラズマ放電処理容器の一例を示す概略図である。
【図3】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる円筒型のロール電極の一例を示す概略図である。
【図4】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の円筒型電極の一例を示す概略図である。
【図5】(a)、(b)は各々、本発明に係るプラズマ放電処理に用いられる固定型の角柱型電極の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の低反射積層体の製造方法に用いられるプラズマ放電処理装置の一例を示す概念図である。
【図7】本発明に用いられるプラズマ製膜装置の放電部の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
25、25c、25C ロール電極
26、26c、26C、36、36c、36C 電極
25a、25A、26a、26A、36a、36A 金属等の導電性母材
25b、26b、36b セラミック被覆処理誘電体
25B、26B、36B ライニング処理誘電体
31 プラズマ放電処理容器
35a 金属母材
35b 誘電体
41 電源
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極冷却ユニット
61 元巻き基材
65、66 ニップローラ
64、67 ガイドローラ
100 基材
105 印加電源

Claims (36)

  1. 基材がセルロースエステルの置換度として、アセチル置換度をX、酢酸以外の酸による置換度をYとしたとき、1.0<X+Y<2.8、かつ0<X<2.8であるセルロースエステルと、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の加水分解重縮合物とを主成分とする有機−無機ポリマーハイブリッドフィルムであり、かつ該基材上に透明導電膜を積層することを特徴とする透明導電膜積層体。
  2. 前記反応性金属化合物が、金属種に4価の金属を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜積層体。
  3. 前記4価の金属が、ケイ素、ジルコニウム、チタンおよびゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電膜積層体。
  4. 前記反応性金属化合物の加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり4個である化合物を、50モル%以上含有することを特徴とする請求項2または3に記載の透明導電膜積層体。
  5. 前記反応性金属化合物の加水分解可能な置換基が、該金属1原子当たり4個である化合物を、70モル%以上含有することを特徴とする請求項2または3に記載の透明導電膜積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法であって、該透明導電膜を大気圧または大気圧近傍の圧力下で、少なくとも1種類の不活性ガスと、少なくとも1種類の反応性ガスからなる混合ガスを放電空間に導入してプラズマ状態とし、基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、前記基材上に透明導電膜を形成することを特徴とする透明導電膜積層体の製造方法。
  7. 前記反応性ガスが、少なくとも1種類の有機金属化合物を含有することを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
  8. 前記有機金属化合物が、下記一般式(1)または(2)で表される有機金属化合物であることを特徴とする請求項7に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
    Figure 2004071336
    〔式中、Mはインジウム、錫又は亜鉛原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1から10までのアルキル基又は、少なくとも1つ以上のフッ素を含むフルオロアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。〕
  9. 前記反応性ガスが、少なくとも1種の還元性ガスを含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
  10. 前記反応性ガスが、少なくとも1種の酸化性ガスを含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
  11. 前記反応性ガスが、水を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
  12. 前記放電空間に、前記反応性ガスと少なくとも1種類の不活性ガスを含有する混合ガスを導入し、該不活性ガスがアルゴンまたはヘリウムを含有することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
  13. 請求項6〜12のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法で用いる透明導電膜の形成方法であって、前記放電空間に印加する電界が、周波数100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm以上の電力を供給して放電させることを特徴とする透明導電膜の形成方法。
  14. 前記高周波電圧が、150MHz以下であることを特徴とする請求項13に記載の透明導電膜の形成方法。
  15. 前記高周波電圧が、200kHz以上であることを特徴とする請求項13または14に記載の透明導電膜の形成方法。
  16. 前記高周波電圧が、800kHz以上であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  17. 前記電力が、1.2W/cm以上であることを特徴とする請求項13に記載の透明導電膜の形成方法。
  18. 前記電力が、50W/cm以下であることを特徴とする請求項13または17に記載の透明導電膜の形成方法。
  19. 前記電力が、20W/cm以下であることを特徴とする請求項13、17及び18のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  20. 前記高周波電圧は、連続したサイン波であることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  21. 前記放電空間に印加する電界に用いる電極の少なくとも一方が、誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  22. 前記誘電体が、比誘電率が6〜45の無機物であることを特徴とする請求項21に記載の透明導電膜の形成方法。
  23. 前記電極の表面粗さRmaxが10μm以下であることを特徴とする請求項21または22に記載の透明導電膜の形成方法。
  24. 前記透明導電膜を形成する基材の表面温度が、200℃以下であることを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  25. 前記導電膜製膜後、熱処理を行うことを特徴とする請求項13〜24のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  26. 前記熱処理が空気雰囲気下で行われることを特徴とする請求項25に記載の透明導電膜の形成方法。
  27. 前記熱処理が還元雰囲気下で行われることを特徴とする請求項26に記載の透明導電膜の形成方法。
  28. 前記熱処理が酸化雰囲気下で行われることを特徴とする請求項26に記載の透明導電膜の形成方法。
  29. 前記熱処理が真空雰囲気下で行われることを特徴とする請求項26に記載の透明導電膜の形成方法。
  30. 前記熱処理が不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項26に記載の透明導電膜の形成方法。
  31. 前記熱処理の温度が50〜300℃であることを特徴とする請求項25〜30のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  32. 前記透明導電膜が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、Fドープ酸化錫、Alドープ酸化亜鉛、Sbドープ酸化錫、ITO及びIn−ZnO系アモルファス透明導電膜から選ばれる少なくとも1つを主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
  33. 前記透明導電膜がITO膜であって、該ITO膜がIn/Sn原子数比で100/0.1〜100/15の範囲であることを特徴とする請求項1〜5及び32のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
  34. 前記透明導電膜の炭素含有量が0〜5.0原子数濃度の範囲であることを特徴とする請求項1〜5、32及び33のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
  35. 請求項6〜12のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体の製造方法によって製造されたことを特徴とする物品。
  36. 請求項13〜31のいずれか1項に記載の透明導電膜の形成方法によって形成されたことを特徴とする物品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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