JP2004071183A - 燃料電池における燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および燃料補充方法 - Google Patents
燃料電池における燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および燃料補充方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】燃料電池における燃料残量告知装置および燃料残量告知方法、並びに、当該方法を利用した燃料補充方法を提供すること。
【解決手段】燃料残量告知装置において、燃料極、空気極および両電極間の電解質層を備える燃料電池本体の温度を検出する手段4と、燃料電池本体の内部抵抗を取得する手段2,3,5と、燃料極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを記憶する手段6と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値に達しているかどうかを判断する手段5と、取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された内部抵抗閾値に達していると判断されたことを告知する手段7とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料残量告知装置において、燃料極、空気極および両電極間の電解質層を備える燃料電池本体の温度を検出する手段4と、燃料電池本体の内部抵抗を取得する手段2,3,5と、燃料極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを記憶する手段6と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値に達しているかどうかを判断する手段5と、取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された内部抵抗閾値に達していると判断されたことを告知する手段7とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池における燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および燃料補充方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器では、機器全体の小型軽量化や駆動可能時間の長時間化を図るため、駆動電源やメモリ保持電源として、従来のニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池に代えてリチウムイオン二次電池が採用される場合が多い。リチウムイオン二次電池は、ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池と比較すると、軽量で、比較的高い駆動電圧および電池容量が得られるという特長を有する。一方、近年の高度情報通信網の普及により、携帯電子機器における情報通信機能は強化され、機器のオペレーション時間は増加する傾向にある。そのため、携帯電子機器用途の電池に対しては、更なる高容量化の要求が高まっている。リチウムイオン二次電池は、携帯電子機器の進歩に伴って性能向上が図られてきたが、材料の観点からも構造の観点からも、性能の向上は略限界に達しており、近年の更なる高容量化の要求には、対応できなくなりつつある。
【0003】
このような状況のもと、リチウムイオン二次電池に代わる新たな電池として、リチウムイオン二次電池の数倍の高容量化が期待される燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、触媒を含む燃料極(負極)および空気極(正極)と、これらの間において所定のイオンの移動を許容する電解質層とからなる構造を有する。燃料電池においては、燃料極に燃料ないし水素を供給するとともに空気極に空気ないし酸素を供給すると、電極に含まれる触媒の作用により各電極にて電気化学的な反応が起こり、燃料を供給源とする電子による直流電流を取り出すことができる。このようなメカニズムで発電する燃料電池においては、燃料および酸素を供給し続けることにより連続発電が可能となる。したがって、燃料電池は、燃料および酸素を補給することにより、充電操作により反復使用される二次電池と同様に、携帯電子機器用途の電源へと応用可能である。
【0004】
燃料電池は、その電解質層の種類に基づいて、リン酸型、固体高分子型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などに類別される。携帯電子機器用途の電源としては、室温付近の低温にて作動可能であること、および、振動に強く大量生産が容易な固体電解質を備えることなどから、固体高分子型の燃料電池が適している。
【0005】
固体高分子型燃料電池においては、燃料供給方法として、水素ガスを保持して当該水素ガスを燃料極に接触させる手法、有機燃料を改質して水素ガスを生成した後に当該水素ガスを燃料極に接触させる手法、および、反応によってプロトンを供給可能な液体燃料を燃料極に対して直接に供給する手法などが知られている。水素ガスを使用する手法は、水素ガスの取り扱いが困難であったり、有機燃料を改質するための装置が必要であったりするため、携帯電子機器の小型電源には適さない。そのため、携帯電子機器用途の小型電源を構成するという観点からは、液体燃料を使用する燃料電池が注目を集めている。特に、液体燃料としてのメタノール水溶液を燃料極に対して直接に供給するダイレクトメタノール方式の燃料電池が注目を集めている。
【0006】
ダイレクトメタノール方式によると、メタノール水溶液が供給された燃料極では、下記の式(1)に示すように、メタノールと水が反応して、二酸化炭素(CO2)、プロトン(H+)、および電子(e−)が生ずる。燃料極で生じたプロトンは高分子電解質層を通って空気極に向かい、電子は、燃料極に接続された外部回路に流れる。外部回路にて仕事を終えた電子は空気極に向かう。また、二酸化炭素は系外に排出される。
【0007】
【化1】
【0008】
空気極では、下記の式(2)に示すように、空気から得られる酸素(O2)と、燃料極から到来したプロトン(H+)と、燃料極から外部回路を経て到来した電子(e−)とが反応して水(H2O)が生成する。
【0009】
【化2】
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクトメタノール方式の燃料電池において、比較的大型の燃料電池では、燃料タンクに収容されている燃料の液面を検出するための装置や、当該燃料の重量を検出するための装置が併設される場合がある。これらの装置によって、燃料電池の燃料極に供給するために燃料タンクに収容されている燃料の残量を予測することができ、ひいては、燃料補充の必要性を検知することが可能となる。比較的大型の燃料電池では、通常、その燃料タンクの配設姿勢が一定であるため、上述のように燃料タンク内の燃料液面や燃料重量を検出する装置を備えることにより、燃料の残存量ないし減少量を容易に検出することができるのである。燃料の液面を検出することによって燃料残量を予測する装置を具備する燃料電池システムは、例えば特開平5−258760号公報に開示されている。しかしながら、比較的大型の燃料電池であっても、燃料タンク内の燃料液面や燃料重量を検出する装置を具備することは、当該燃料電池システム全体の大型化を招来してしまい、好ましくない場合が多い。
【0011】
一方、小型の携帯機器に適用可能な小型のダイレクトメタノール方式燃料電池においては、燃料についての残量予測技術は未だに確立されていない。小型の燃料電池については、それが搭載されることとなる機器の携帯性から、一定の姿勢が維持されることは少なく、且つ、要求されるサイズ条件および重量条件は非常に厳しい。そのため、携帯機器に適用可能な小型の燃料電池においては、燃料液面や燃料重量を検出するための装置を併設することは実用的でない。
【0012】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することが可能な燃料残量告知装置および燃料残量告知方法、並びに、当該方法を利用した燃料補充方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によると、燃料電池における燃料残量告知装置が提供される。この装置は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出手段と、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得手段と、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データ、を記憶するための記憶手段と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断手段と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成の燃料残量告知装置によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができる。本発明の第1の側面に係る装置では、記憶手段にて、温度−内部抵抗相関データが記憶されている。温度−内部抵抗相関データとは、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗の値について、燃料電池本体温度ごとに、内部抵抗閾値として複数設定したものである。また、燃料電池においては、燃料残量が減少するほど、燃料電池本体の内部抵抗が増大することが知られている。したがって、燃料電池本体について、温度検出手段により温度を検出するとともに内部抵抗取得手段により内部抵抗を取得し、判断手段により、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断される場合には、燃料極に供給されている燃料残量が第1残量以下となったこととなる。取得内部抵抗が当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断手段により判断された場合に告知手段が何らかの信号を発することにより、ユーザなどは、燃料残量が第1残量以下となったことを知り得る。告知手段は、ユーザなどに対して当該告知情報を視覚的または聴覚的に知らしめる手段であり、例えば、当該燃料電池が搭載される機器のディスプレイやマイクを含むシステムにより実現される。第1残量について、燃料初期量の半分の量に設定しておくと、告知手段により、燃料残量が燃料初期量の半分を下回ったことを、ユーザなどに告知することが可能である。また、第1残量について、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するための必要最低量に設定しておくと、告知手段により、燃料残量が当該必要最低量に達したこと、従って、燃料補充が必要であることを、ユーザなどに告知することが可能である。このように、本発明の第1の側面によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができるのである。
【0015】
本発明の第1の側面において、好ましくは、内部抵抗取得手段は、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出手段と、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出手段と、検出電流および検出電圧から燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算手段と、を含んでいる。
【0016】
このような構成は、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を適切に取得するうえで好適である。例えば、電流検出手段により得られる検出電流Iと、電圧検出手段により得られる検出電圧Vとから、演算手段により、オームの法則から導かれる関係式 R=V/I に基づいて、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を算出することができる。
【0017】
好ましくは、温度検出手段は、燃料電池本体の内部に配設された温度センサを有している。より好ましくは、第1電極または第2電極は、電解質層と積層された触媒層と、当該触媒層と積層された集電体層とを含み、温度センサは、第1電極または第2電極における触媒層および集電体層の間に配設されている。
【0018】
このような構成は、燃料電池本体の正確な温度を検出し、判断手段により正確な判断をするうえで好適である。本発明に係る燃料電池本体においては、第1電極ないし燃料極にて燃料の酸化反応が起こり、当該酸化反応により生ずるプロトンは電解質層を伝導して第2電極ないし空気極に至り、空気極にて、当該プロトンと空気中の酸素とによる水の生成反応が起こる。燃料極および空気極における電池反応は発熱反応である。また、電解質層のイオン伝導度は、当該電解質層の温度により影響を受けやすい。すなわち、電解質層のイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。したがって、燃料電池本体の内部抵抗を取得するうえで、燃料電池本体について正確な温度を検出することは重要であり、正確な温度に基づくと、判断手段により正確な判断をすることが可能となる。
【0019】
好ましくは、燃料は、燃料活性物質と燃料溶媒を含む液体燃料である。燃料としてこのような液体燃料を採用すると、燃料極に供給すべきプロトンを取り出すための有機燃料を改質する装置が不要となり、燃料電池システムの小型化を図るうえで好適である。液体燃料を採用する場合、好ましくは、燃料活物質はメタノールであり、燃料溶媒は水である。液体燃料としてメタノール水溶液を使用するダイレクトメタノール方式の燃料電池は、高い発電効率を達成するうえで好適である。また、液体燃料を採用する場合、燃料の残量は、液体燃料における燃料活物質の残存濃度である。
【0020】
本発明の第2の側面によると、燃料電池における燃料残量告知方法が提供される。この方法は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
このような構成の燃料残量告知方法によると、燃料電池における燃料極に供給すべき燃料の残量を適切に告知することができる。本発明の第2の側面に係る方法では、判断ステップにて、温度−内部抵抗相関データが利用される。温度−内部抵抗相関データとは、本発明の第1の側面に関して上述したのと同様である。また、燃料電池においては、燃料残量が減少するほど、燃料電池本体の内部抵抗が増大することが知られている。したがって、燃料電池本体について、温度検出ステップにて温度を検出するとともに内部抵抗取得ステップにて内部抵抗を取得し、判断ステップにおいて、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断される場合には、燃料極に供給されている燃料残量が第1残量以下となったこととなる。取得内部抵抗が当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断ステップにて判断された場合に告知手段が何らかの信号を発することにより、ユーザなどは、燃料残量が第1残量以下となったことを知り得る。告知ステップは、ユーザなどに対して当該告知情報を視覚的または聴覚的に知らしめるステップである。第1残量について、燃料初期量の半分の量に設定しておくと、告知ステップにて、燃料残量が燃料初期量の半分を下回ったことを、ユーザなどに告知することが可能である。また、第1残量について、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するための必要最低量に設定しておくと、告知ステップにて、燃料残量が当該必要最低量に達したこと、従って、燃料補充が必要であることを、ユーザなどに告知することが可能である。このように、本発明の第2の側面によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができるのである。
【0022】
本発明の第2の側面において、好ましくは、内部抵抗取得ステップは、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出ステップと、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出ステップと、検出電流および検出電圧から燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算ステップと、を含んでいる。
【0023】
このような構成は、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を適切に取得するうえで好適である。例えば、電流検出ステップにて得られる検出電流Iと、電圧検出ステップにて得られる検出電圧Vとから、演算ステップにおいて、オームの法則から導かれる関係式 R=V/I に基づいて、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を算出することができる。
【0024】
好ましくは、温度検出ステップでは、燃料電池本体の内部の温度が検出される。このような構成は、燃料電池本体の正確な温度を検出し、判断手段により正確な判断をするうえで好適である。上述のように、燃料電池本体の電解質層におけるイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。したがって、燃料電池本体の内部について正確な温度を検出することは重要であり、正確な温度に基づくと、判断手段により正確な判断をすることが可能となる。
【0025】
本発明の第3の側面によると、燃料電池における燃料補充方法が提供される。この方法は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、第1電極に供給される燃料の残量が補充必要量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、燃料を補充するための補充ステップと、を含むことを特徴とする。補充必要量とは、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するために設定される必要量であって、燃料補充が必要であると考えられる燃料残量である。
【0026】
このような構成の燃料補充方法は、本発明の第2の側面に係る燃料残量告知方法の構成を含んでおり、燃料残量が補充必要量であるときの温度−内部抵抗相関データを利用するものである。また、本発明の第3の側面に係る方法は、告知ステップに従って燃料を補充するステップを含む。したがって、本発明の第3の側面によると、燃料電池に供給すべき燃料の残量が補充必要量に達したときに、適切に燃料を補充することができるのである。
【0027】
本発明の第3の側面において、好ましくは、燃料はメタノールおよび水を含み、補充ステップでは、燃料として、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する。ダイレクトメタノール方式の燃料電池において、適切なメタノール濃度のメタノール水溶液燃料を使用すると、液体燃料中のメタノール濃度は燃料電池の作動に伴って低下し、メタノール濃度が1vol%未満となるまで、燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動することができる場合がある。したがって、メタノール濃度が50vol%以上の高濃度のメタノール水溶液を補充することによって、効率的な補充ステップを行うことが可能である。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る燃料残量告知装置の回路構成を表すブロック図である。本発明に係る燃料残量告知装置は、電流検出部2と、電圧検出部3と、温度検出部4と、制御部5と、記憶部6と、表示部7とを備え、燃料電池1が組み込まれている。本実施形態については、燃料電池1として、ダイレクトメタノール方式燃料電池を採用する場合を説明する。また、本装置は、一対の端子を介して所定の電子機器の内部回路に接続されている。
【0029】
図2は燃料電池1の斜視図である。図3は、図2の線III−IIIに沿った断面図であり、図4は、図3の分解図である。燃料電池1は、燃料電池本体10と、燃料貯蔵部20とを備える。燃料電池本体10および燃料貯蔵部20は、電池筐体30に収容されている。
【0030】
燃料電池本体10は、図3に示すように、燃料極11および空気極12と、これらに挟まれている電解質層13とからなる。燃料極11は、触媒層11aおよび集電体11bからなる積層構造を有する。同様に、空気極12は、触媒層12aおよび集電体12bからなる積層構造を有する。空気極12における触媒層12aと集電体12bの間には、温度検出部4の一部を構成する熱電対4aが配設されている。燃料貯蔵部20は、メタノール水溶液が直接的に貯留される小型タンクとして構成されており、メタノール水溶液またはメタノールを適宜補充するための注入口(図示略)を有する。電池筐体30は、図2によく表れているように、開口部30aを有する。
【0031】
燃料電池本体10における燃料極11の触媒層11aは、上掲の式(1)に従ってメタノールを酸化してプロトンと電子を取り出すためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。導電粒子としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどの炭素粒子が挙げられる。触媒としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金を採用することができる。触媒の粒径は、例えば2〜5nmである。触媒層11aの作製においては、まず、触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料とを、水溶媒系、アルコール溶媒系、または、水−アルコール溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製する。次に、触媒層基材としての多孔質導電膜の上に電極ペーストを塗布ないし充填した後、例えば100℃にて加熱乾燥する。多孔質導電膜としては、カーボンペーパなどが挙げられる。多孔質導電膜の膜厚は例えば100〜400μmであり、触媒層基材である多孔質導電膜の上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは、例えば5〜50μmである。このようにして、多孔質導電膜(図示略)を伴う多孔質性の触媒層11aが作製される。
【0032】
集電体11bは、触媒層11aにおけるメタノール酸化反応で発生する電子を効率的に取り出すためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体11bとしては、液体燃料であるメタノール水溶液が容易に通過可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体11bは、電池筐体30表面に設けられた外部接続用端子(図示略)を介して、燃料電池1が搭載される電子機器の諸機能を達成するための所定の電子回路に対して電気的に接続されている。燃料電池1が搭載される電子機器としては、例えば、携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器が挙げられる。したがって、本燃料残量告知装置も、これら携帯電子機器に併設ないし内蔵される。
【0033】
空気極12の触媒層12aは、上掲の式(2)に従って空気中の酸素の還元反応を進行させるためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。触媒については、白金(Pt)を採用することができる。触媒の粒径は、例えば2〜5nmである。導電粒子については、触媒層11aと同様のものを使用することができる。また、触媒層12aの作製方法については、触媒層11aに関して上述したのと同様である。
【0034】
集電体12bは、触媒層12aに対して効率的に電子を供給するためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体12bとしては、触媒層12aに対して空気ないし酸素が自然拡散により充分に接触可能であるとともに、触媒層12aにおける酸素還元反応で生成する水を適切に蒸散排出可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体12bは、電池筐体30表面に設けられた更なる外部接続用端子(図示略)を介して、燃料電池1が搭載される電子機器の諸機能を達成するための所定の電子回路(図示略)に対して電気的に接続されている。
【0035】
電解質層13は、燃料極11におけるメタノール酸化反応で生成したプロトンを空気極12に輸送するための媒体であり、電子伝導性を有さずにプロトン伝導性を有する高分子材料よりなる。そのような高分子材料としては、パーフロオロスルホン酸膜が挙げられる。パーフロオロスルホン酸膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン製)、フレミオン膜(旭硝子製)、アシプレックス膜(旭化成工業製)、ダウ膜(ダウケミカル製)などが挙げられる。電解質層13の厚さは、例えば50〜250μmである。
【0036】
燃料電池本体10の作製においては、例えば、まず、上述のようにして作製された触媒層11aおよび触媒層12aにより電解質層13を挟む。このとき、触媒層11aおよび触媒層12aは、多孔質導電膜(図示略)の上における電極ペースト由来の材料のみからなる面を介して電解質層13に貼り合わせる。次に、加熱下にて、当該貼合せ体を積層方向に加圧して接合する。次に、触媒層11aに対して集電体11bを積層して接合し、触媒層12aに対して集電体12bを積層して接合する。触媒層12aに対して集電体12bを接合する際には、触媒層12aおよび集電体12bの間における所定箇所に熱電対4aを配設しておく。
【0037】
このようにして作製される燃料電池本体10と、スペーサ31と、パッキング材32と、パッキング材33とを、図3に示すように電池筐体30に収容することによって、燃料電池本体10および燃料貯蔵部20を備えてこれらが電池筐体30に収容された燃料電池1が得られる。スペーサ31には、所定の開口部31aが設けられている。この開口部31aは、円形であってもよいし、スリット状であってもよい。パッキング材32は、燃料電池本体10の周縁部と電池筐体30との間の隙間を封止する。また、パッキング材33は、燃料貯蔵部20を規定しつつ、燃料貯蔵部20からの燃料漏れを防止するためのものである。
【0038】
電池筐体30において燃料貯蔵部20を規定する所定の箇所には、燃料貯蔵部20と電池外部との間の隔壁として、二酸化炭素透過膜(図示略)が配設されている。二酸化炭素透過膜は、液体燃料を実質的に透過させずに二酸化炭素を選択的に透過させる膜であり、この膜を介して、燃料極11における電池反応で生成する二酸化炭素は排出される。二酸化炭素透過膜を構成する材料としては、例えば、シリコンゴムやフッ素ポリイミドなどが挙げられる。
【0039】
燃料電池本体10の燃料極11は、スペーサ31の開口部31aを介して燃料貯蔵部に20に露出している。したがって、燃料貯蔵部20に貯留されているメタノール水溶液(図示略)は、スペーサ31の開口部31aを通って燃料極11に接触可能である。また、空気極12は、電池筐体30に当接しつつ、その一部が開口部30aを介して機器外部に露出している。したがって、電池外部の空気に含まれる酸素は、空気極12に対して接触可能である。
【0040】
燃料電池1においては、燃料貯蔵部20に液体燃料すなわちメタノール水溶液が貯留されていると、当該メタノール水溶液は、スペーサ31の開口部31aを介して燃料貯蔵部20から燃料極11に至る。そして、燃料極11では、メタノール水溶液は、メッシュ状の集電体11bを通過して触媒層11aに至る。これとともに、電池筐体30の開口部30aを介して外気に触れる空気極12には、空気に含まれる酸素が常時的に接触する。空気極12では、酸素は、メッシュ状の集電体12bを通過して触媒層12aに至る。燃料極11に対してメタノール水溶液が供給されるとともに空気極12に対して酸素が供給されると、燃料極11の触媒層11aでは、触媒の作用により、上掲の式(1)で表されるメタノール酸化反応が起こり、二酸化炭素、プロトン、および電子が発生する。また、空気極12の触媒層12aでは、触媒の作用により、上掲の式(2)で表される酸素還元反応が起こり、水が生成する。この水は、自然蒸散する。両極においてこのような電気化学反応が進行することにより、燃料電池本体10は発電する。
【0041】
本実施形態の燃料残量告知装置の電流検出部2は、以上のような発電システムを有する燃料電池1からの放電電流を検出する回路により構成されている。電流電圧検出部3は、燃料電池1における燃料極11および空気極12の間の端子電圧を検出する回路よりなる。温度検出部4は、燃料電池本体10の温度を検出する回路よりなる。本実施形態においては、温度検出部4は、空気極12における触媒層12aと集電体12bの間に介在する温度センサとしての熱電対4aを含んでいる。制御部5は、後述の計算や判断を実行するCPUと、当該CPUによりテンポラリメモリとして使用されるRAMとを備える。記憶部6は、例えばROMよりなり、温度−内部抵抗相関データを記憶している。表示部7は、本装置による残量告知を表示して、ユーザなどに対して燃料残量を視覚的に告知するための手段である。本発明では、表示部7に代えて、ユーザなどに対して燃料残量を聴覚的に告知するための手段を設けてもよい。
【0042】
図5は、記憶部6に記憶されている温度−内部抵抗相関データの一例をグラフで表したものである。温度−内部抵抗相関データは、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が所定の値であるときの、燃料電池本体10の温度と内部抵抗の関係についてのデータであって、予め測定および作製されたデータである。図5には、メタノール濃度が0.5vol%であるときの温度−内部抵抗相関データを表す。燃料電池本体10においては、上述のように、燃料極11および空気極12にて電池反応が起こるとともに、電解質層13をプロトンが伝導する。燃料極11および空気極12における電池反応は発熱反応である。また、電解質層13のイオン伝導度は、当該電解質層13の温度により影響を受けやすい。すなわち、電解質層13のイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。具体的には、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が同一であっても、図5のグラフで示すように、燃料電池本体10の温度が上昇するほど、燃料電池本体10の内部抵抗は低下する傾向にある。したがって、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が同一であっても、燃料電池本体10の内部抵抗の値は、燃料電池本体10の温度によって異なるのである。温度−内部抵抗相関データにおいては、所定の温度範囲における所定の温度ごとに、所定の燃料残量に対応する内部抵抗として、内部抵抗閾値が設定されている。当該温度−内部抵抗相関データは、記憶部6においては、例えばテーブルの形態で、温度と内部抵抗閾値とが一対一に対応付けられて記憶されている。
【0043】
図6は、本実施形態に係る燃料残量告知装置により実行される燃料残量告知方法のフローチャートである。本実施形態に係る燃料残量告知装置は、燃料電池1による機器駆動時に、まず、ステップS1において、電流検出部2により、燃料電池1ないし燃料電池本体10からの放電電流を検出する。検出された電流Iは、制御部5により読み込まれ、検出電流として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。燃料電池1の燃料貯蔵部20に貯留されるメタノール水溶液のメタノール初期濃度は、本実施形態では10vol%である。次に、ステップS2において、電圧検出部3により、燃料電池本体10における燃料極11および空気極12の間の端子電圧を検出する。検出された端子電圧Vは、制御部5により読み込まれ、検出電圧として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。
【0044】
次に、ステップS3において、制御部5に含まれる演算手段としてのCPUにより、燃料電池本体10の内部抵抗を算出する。具体的には、当該CPUにより、RAMに記憶されている検出電流Iおよび検出電圧Vから、オームの法則から導かれるR=V/Iに基づいて、燃料電池本体10の内部抵抗Rを算出する。この内部抵抗の値は、取得内部抵抗として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。次に、ステップS4において、温度検出部4により、熱電対4aを介して燃料電池本体10の空気極12の温度を検出する。検出された温度Tは、制御部5により読み込まれ、検出温度として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。
【0045】
次に、ステップS5において、制御部5のCPUにより、記憶部6に記憶されている温度−内部抵抗相関データが参照されて、制御部5のRAMに記憶されている検出温度Tに対応する内部抵抗閾値Rthが、記憶部6から読み出される。本実施形態の温度−内部抵抗相関データについては、図5を参照して上述したように、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が0.5vol%であるときのデータである。
【0046】
次に、ステップS6において、制御部5に含まれる判断手段としてのCPUにより、制御部5のRAMに記憶されている取得内部抵抗Rが、内部抵抗閾値Rth以上であるかどうかを判断する。ステップS6において、取得内部抵抗Rが内部抵抗閾値Rth以上であると判断されない場合、上述の一連のステップが、直ちに又は一定期間経過後に繰り返される。ステップS6において、取得内部抵抗Rが内部抵抗閾値Rth以上であると判断された場合、ステップS7において、表示部7により、ユーザに対して燃料補充の必要性を視覚的に告知する。
【0047】
このようにして、表示部7により燃料補充が告知された後、燃料電池1の燃料貯蔵部20に対して、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0049】
<燃料電池の作製>
燃料電池の作製においては、まず、燃料極の触媒層および空気極の触媒層を作製した。燃料極の作製においては、まず、白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒50重量部と、プロトン伝導性のパーフロオロスルホン酸(商品名:Nafion 20042、Dupont製)50重量部とを、水および2−プロパノールの混合溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製した。白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒における白金およびルテニウムの含有率は、各々、30wt%および20wt%である。次に、カーボンペーパ(商品名:TGP−H−090、東レ製)の上に当該電極ペーストを塗布ないし充填した後、100℃にて加熱乾燥した。カーボンペーパ上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは30μmとした。このようにして、燃料極の触媒層を作製した。一方、白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒に代えて、白金担持カーボン触媒を使用した以外は、燃料極の触媒層と同様にして、空気極の触媒層を作製した。この白金担持カーボン触媒における白金の含有率は、50wt%である。
【0050】
燃料電池の作製においては、次に、上述のようにして作製した両電極の触媒層により、電解質層を構成するための膜厚125μmのパーフロオロスルホン酸膜(商品名:Nafion NF−115、Dupont製)を挟持した。このとき、各触媒層は、カーボンペーパ上における電極ペースト由来の材料のみからなる面を介して電解質層に貼り合わせた。また、このとき、空気極においては、触媒層と集電体の間に熱電対を配設した。次に、加熱下にて、当該貼合せ体を積層方向に加圧して接合した。次に、各触媒層におけるカーボンペーパ露出面側に対して、集電体として、SUS製の金属メッシュ(開口率70%)を積層して接合した。このようにして、燃料電池本体が作製された。
【0051】
燃料電池の作製においては、次に、上述のようにして作製された燃料電池本体を例えば図2に示すように、空気極側に開口部を有する電池筐体に収容した。電池筐体の内部に規定される燃料貯蔵部には、液体燃料として、メタノール濃度が10vol%のメタノール水溶液を2.5cm3注入した。
【0052】
<燃料残量の測定>
図1に示す回路構成を有する燃料残量告知装置に対して、上述のようにして作製した燃料電池を燃料電池1として組み込み、燃料残量の測定を行った。燃料補充を告知するための温度−内部抵抗相関データとしては、図5に示すような、メタノール濃度が0.5vol%のときの、電池温度Tに対する内部抵抗閾値Rthの関数を設定し、これを使用した。燃料電池の電圧Vおよび放電電流IからR=V/Iに基づいて算出される内部抵抗Rが、Rthよりも大きくなったときを燃料補充告知として燃料の組成を分析した。
【0053】
具体的には、まず、燃料電池温度が35℃、23℃、または15℃の条件において、上述のように作製した燃料電池を50mAで連続放電した。燃料電池温度35℃、23℃、15℃における、メタノール濃度0.5vol%のときの内部抵抗閾値は、各々、0.58Ω、0.82Ω、1.10Ωである。すると、すべての温度条件において、定電流放電が一定時間経過した後に燃料電池本体の内部抵抗が増加し始めた。そして、燃料電池本体の内部抵抗Rが各温度における内部抵抗閾値Rthよりも大きくなった時点で放電終了とし、そのときの燃料の組成を分析した。その結果、すべての温度条件において、放電終了時のメタノール濃度は0.5vol%程度であり、燃料の残量を予測することが可能であることを確認することができた。
【0054】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0055】
(付記1)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出手段と、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得手段と、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データ、を記憶するための記憶手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知手段と、を備えることを特徴とする、燃料残量告知装置。
(付記2)前記内部抵抗取得手段は、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出手段と、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出手段と、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算手段と、を含む、付記1に記載の燃料残量告知装置。
(付記3)前記温度検出手段は、前記燃料電池本体の内部に配設された温度センサを有する、付記1または2に記載の燃料残量告知装置。
(付記4)前記第1電極または前記第2電極は、前記電解質層と積層された触媒層と、当該触媒層と積層された集電体層とを含み、前記温度センサは、前記第1電極または前記第2電極における前記触媒層および前記集電体層の間に配設されている、付記3に記載の燃料残量告知装置。
(付記5)前記燃料は、燃料活性物質と燃料溶媒を含む液体燃料である、付記1から4のいずれか1つに記載の燃料残量告知装置。
(付記6)前記燃料活物質はメタノールであり、前記燃料溶媒は水である、付記5に記載の燃料残量告知装置。
(付記7)前記燃料の前記残量は、前記液体燃料における前記燃料活物質の残存濃度である、付記5または6に記載の燃料残量告知装置。
(付記8)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、を含むことを特徴とする、燃料残量告知方法。
(付記9)前記内部抵抗取得ステップは、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出ステップと、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出ステップと、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算ステップと、を含む、付記8に記載の燃料残量告知方法。
(付記10)前記温度検出ステップでは、前記燃料電池本体の内部の温度が検出される、付記8または9に記載の燃料残量告知方法。
(付記11)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が補充必要量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について複数設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、
燃料を補充するための補充ステップと、を含むことを特徴とする、燃料補充方法。
(付記12)前記燃料はメタノールおよび水を含み、前記補充ステップでは、前記燃料として、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する、付記11に記載の燃料補充方法。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る燃料残量告知装置や燃料残量告知方法によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することが可能である。また、本発明に係る燃料補給方法によると、燃料補充の必要性をユーザなどに対して適切に告知して、燃料補充を適切に行うことが可能となる。このような燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および、燃料補給方法は、携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器において、良好に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】閾値
本発明に係る燃料残量告知装置の回路構成を表すブロック図である。
【図2】本発明で用いられる燃料電池の斜視図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図2の線III−IIIに沿った分解断面図である。
【図5】本発明で用いられる温度−内部抵抗相関データの一例を表す。
【図6】本発明に係る燃料残量告知方法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 電流検出部
3 電圧検出部
4 温度検出部
5 制御部
6 記憶部
7 表示部
10 燃料電池本体
11 燃料極
12 空気極
11a,12a 触媒層
11b,12b 集電体
13 電解質層
20 燃料貯蔵部
30 電池筐体
30a 開口部
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池における燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および燃料補充方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器では、機器全体の小型軽量化や駆動可能時間の長時間化を図るため、駆動電源やメモリ保持電源として、従来のニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池に代えてリチウムイオン二次電池が採用される場合が多い。リチウムイオン二次電池は、ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池と比較すると、軽量で、比較的高い駆動電圧および電池容量が得られるという特長を有する。一方、近年の高度情報通信網の普及により、携帯電子機器における情報通信機能は強化され、機器のオペレーション時間は増加する傾向にある。そのため、携帯電子機器用途の電池に対しては、更なる高容量化の要求が高まっている。リチウムイオン二次電池は、携帯電子機器の進歩に伴って性能向上が図られてきたが、材料の観点からも構造の観点からも、性能の向上は略限界に達しており、近年の更なる高容量化の要求には、対応できなくなりつつある。
【0003】
このような状況のもと、リチウムイオン二次電池に代わる新たな電池として、リチウムイオン二次電池の数倍の高容量化が期待される燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、触媒を含む燃料極(負極)および空気極(正極)と、これらの間において所定のイオンの移動を許容する電解質層とからなる構造を有する。燃料電池においては、燃料極に燃料ないし水素を供給するとともに空気極に空気ないし酸素を供給すると、電極に含まれる触媒の作用により各電極にて電気化学的な反応が起こり、燃料を供給源とする電子による直流電流を取り出すことができる。このようなメカニズムで発電する燃料電池においては、燃料および酸素を供給し続けることにより連続発電が可能となる。したがって、燃料電池は、燃料および酸素を補給することにより、充電操作により反復使用される二次電池と同様に、携帯電子機器用途の電源へと応用可能である。
【0004】
燃料電池は、その電解質層の種類に基づいて、リン酸型、固体高分子型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などに類別される。携帯電子機器用途の電源としては、室温付近の低温にて作動可能であること、および、振動に強く大量生産が容易な固体電解質を備えることなどから、固体高分子型の燃料電池が適している。
【0005】
固体高分子型燃料電池においては、燃料供給方法として、水素ガスを保持して当該水素ガスを燃料極に接触させる手法、有機燃料を改質して水素ガスを生成した後に当該水素ガスを燃料極に接触させる手法、および、反応によってプロトンを供給可能な液体燃料を燃料極に対して直接に供給する手法などが知られている。水素ガスを使用する手法は、水素ガスの取り扱いが困難であったり、有機燃料を改質するための装置が必要であったりするため、携帯電子機器の小型電源には適さない。そのため、携帯電子機器用途の小型電源を構成するという観点からは、液体燃料を使用する燃料電池が注目を集めている。特に、液体燃料としてのメタノール水溶液を燃料極に対して直接に供給するダイレクトメタノール方式の燃料電池が注目を集めている。
【0006】
ダイレクトメタノール方式によると、メタノール水溶液が供給された燃料極では、下記の式(1)に示すように、メタノールと水が反応して、二酸化炭素(CO2)、プロトン(H+)、および電子(e−)が生ずる。燃料極で生じたプロトンは高分子電解質層を通って空気極に向かい、電子は、燃料極に接続された外部回路に流れる。外部回路にて仕事を終えた電子は空気極に向かう。また、二酸化炭素は系外に排出される。
【0007】
【化1】
【0008】
空気極では、下記の式(2)に示すように、空気から得られる酸素(O2)と、燃料極から到来したプロトン(H+)と、燃料極から外部回路を経て到来した電子(e−)とが反応して水(H2O)が生成する。
【0009】
【化2】
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクトメタノール方式の燃料電池において、比較的大型の燃料電池では、燃料タンクに収容されている燃料の液面を検出するための装置や、当該燃料の重量を検出するための装置が併設される場合がある。これらの装置によって、燃料電池の燃料極に供給するために燃料タンクに収容されている燃料の残量を予測することができ、ひいては、燃料補充の必要性を検知することが可能となる。比較的大型の燃料電池では、通常、その燃料タンクの配設姿勢が一定であるため、上述のように燃料タンク内の燃料液面や燃料重量を検出する装置を備えることにより、燃料の残存量ないし減少量を容易に検出することができるのである。燃料の液面を検出することによって燃料残量を予測する装置を具備する燃料電池システムは、例えば特開平5−258760号公報に開示されている。しかしながら、比較的大型の燃料電池であっても、燃料タンク内の燃料液面や燃料重量を検出する装置を具備することは、当該燃料電池システム全体の大型化を招来してしまい、好ましくない場合が多い。
【0011】
一方、小型の携帯機器に適用可能な小型のダイレクトメタノール方式燃料電池においては、燃料についての残量予測技術は未だに確立されていない。小型の燃料電池については、それが搭載されることとなる機器の携帯性から、一定の姿勢が維持されることは少なく、且つ、要求されるサイズ条件および重量条件は非常に厳しい。そのため、携帯機器に適用可能な小型の燃料電池においては、燃料液面や燃料重量を検出するための装置を併設することは実用的でない。
【0012】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することが可能な燃料残量告知装置および燃料残量告知方法、並びに、当該方法を利用した燃料補充方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によると、燃料電池における燃料残量告知装置が提供される。この装置は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出手段と、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得手段と、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データ、を記憶するための記憶手段と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断手段と、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成の燃料残量告知装置によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができる。本発明の第1の側面に係る装置では、記憶手段にて、温度−内部抵抗相関データが記憶されている。温度−内部抵抗相関データとは、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗の値について、燃料電池本体温度ごとに、内部抵抗閾値として複数設定したものである。また、燃料電池においては、燃料残量が減少するほど、燃料電池本体の内部抵抗が増大することが知られている。したがって、燃料電池本体について、温度検出手段により温度を検出するとともに内部抵抗取得手段により内部抵抗を取得し、判断手段により、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断される場合には、燃料極に供給されている燃料残量が第1残量以下となったこととなる。取得内部抵抗が当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断手段により判断された場合に告知手段が何らかの信号を発することにより、ユーザなどは、燃料残量が第1残量以下となったことを知り得る。告知手段は、ユーザなどに対して当該告知情報を視覚的または聴覚的に知らしめる手段であり、例えば、当該燃料電池が搭載される機器のディスプレイやマイクを含むシステムにより実現される。第1残量について、燃料初期量の半分の量に設定しておくと、告知手段により、燃料残量が燃料初期量の半分を下回ったことを、ユーザなどに告知することが可能である。また、第1残量について、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するための必要最低量に設定しておくと、告知手段により、燃料残量が当該必要最低量に達したこと、従って、燃料補充が必要であることを、ユーザなどに告知することが可能である。このように、本発明の第1の側面によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができるのである。
【0015】
本発明の第1の側面において、好ましくは、内部抵抗取得手段は、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出手段と、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出手段と、検出電流および検出電圧から燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算手段と、を含んでいる。
【0016】
このような構成は、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を適切に取得するうえで好適である。例えば、電流検出手段により得られる検出電流Iと、電圧検出手段により得られる検出電圧Vとから、演算手段により、オームの法則から導かれる関係式 R=V/I に基づいて、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を算出することができる。
【0017】
好ましくは、温度検出手段は、燃料電池本体の内部に配設された温度センサを有している。より好ましくは、第1電極または第2電極は、電解質層と積層された触媒層と、当該触媒層と積層された集電体層とを含み、温度センサは、第1電極または第2電極における触媒層および集電体層の間に配設されている。
【0018】
このような構成は、燃料電池本体の正確な温度を検出し、判断手段により正確な判断をするうえで好適である。本発明に係る燃料電池本体においては、第1電極ないし燃料極にて燃料の酸化反応が起こり、当該酸化反応により生ずるプロトンは電解質層を伝導して第2電極ないし空気極に至り、空気極にて、当該プロトンと空気中の酸素とによる水の生成反応が起こる。燃料極および空気極における電池反応は発熱反応である。また、電解質層のイオン伝導度は、当該電解質層の温度により影響を受けやすい。すなわち、電解質層のイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。したがって、燃料電池本体の内部抵抗を取得するうえで、燃料電池本体について正確な温度を検出することは重要であり、正確な温度に基づくと、判断手段により正確な判断をすることが可能となる。
【0019】
好ましくは、燃料は、燃料活性物質と燃料溶媒を含む液体燃料である。燃料としてこのような液体燃料を採用すると、燃料極に供給すべきプロトンを取り出すための有機燃料を改質する装置が不要となり、燃料電池システムの小型化を図るうえで好適である。液体燃料を採用する場合、好ましくは、燃料活物質はメタノールであり、燃料溶媒は水である。液体燃料としてメタノール水溶液を使用するダイレクトメタノール方式の燃料電池は、高い発電効率を達成するうえで好適である。また、液体燃料を採用する場合、燃料の残量は、液体燃料における燃料活物質の残存濃度である。
【0020】
本発明の第2の側面によると、燃料電池における燃料残量告知方法が提供される。この方法は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
このような構成の燃料残量告知方法によると、燃料電池における燃料極に供給すべき燃料の残量を適切に告知することができる。本発明の第2の側面に係る方法では、判断ステップにて、温度−内部抵抗相関データが利用される。温度−内部抵抗相関データとは、本発明の第1の側面に関して上述したのと同様である。また、燃料電池においては、燃料残量が減少するほど、燃料電池本体の内部抵抗が増大することが知られている。したがって、燃料電池本体について、温度検出ステップにて温度を検出するとともに内部抵抗取得ステップにて内部抵抗を取得し、判断ステップにおいて、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断される場合には、燃料極に供給されている燃料残量が第1残量以下となったこととなる。取得内部抵抗が当該検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断ステップにて判断された場合に告知手段が何らかの信号を発することにより、ユーザなどは、燃料残量が第1残量以下となったことを知り得る。告知ステップは、ユーザなどに対して当該告知情報を視覚的または聴覚的に知らしめるステップである。第1残量について、燃料初期量の半分の量に設定しておくと、告知ステップにて、燃料残量が燃料初期量の半分を下回ったことを、ユーザなどに告知することが可能である。また、第1残量について、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するための必要最低量に設定しておくと、告知ステップにて、燃料残量が当該必要最低量に達したこと、従って、燃料補充が必要であることを、ユーザなどに告知することが可能である。このように、本発明の第2の側面によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することができるのである。
【0022】
本発明の第2の側面において、好ましくは、内部抵抗取得ステップは、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出ステップと、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出ステップと、検出電流および検出電圧から燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算ステップと、を含んでいる。
【0023】
このような構成は、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を適切に取得するうえで好適である。例えば、電流検出ステップにて得られる検出電流Iと、電圧検出ステップにて得られる検出電圧Vとから、演算ステップにおいて、オームの法則から導かれる関係式 R=V/I に基づいて、燃料電池本体の電極間の内部抵抗を算出することができる。
【0024】
好ましくは、温度検出ステップでは、燃料電池本体の内部の温度が検出される。このような構成は、燃料電池本体の正確な温度を検出し、判断手段により正確な判断をするうえで好適である。上述のように、燃料電池本体の電解質層におけるイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。したがって、燃料電池本体の内部について正確な温度を検出することは重要であり、正確な温度に基づくと、判断手段により正確な判断をすることが可能となる。
【0025】
本発明の第3の側面によると、燃料電池における燃料補充方法が提供される。この方法は、燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、第1電極および第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、第1電極に供給される燃料の残量が補充必要量であるときの燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、検出温度における取得内部抵抗の値が、温度−内部抵抗相関データに設定された検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、燃料を補充するための補充ステップと、を含むことを特徴とする。補充必要量とは、当該燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動するために設定される必要量であって、燃料補充が必要であると考えられる燃料残量である。
【0026】
このような構成の燃料補充方法は、本発明の第2の側面に係る燃料残量告知方法の構成を含んでおり、燃料残量が補充必要量であるときの温度−内部抵抗相関データを利用するものである。また、本発明の第3の側面に係る方法は、告知ステップに従って燃料を補充するステップを含む。したがって、本発明の第3の側面によると、燃料電池に供給すべき燃料の残量が補充必要量に達したときに、適切に燃料を補充することができるのである。
【0027】
本発明の第3の側面において、好ましくは、燃料はメタノールおよび水を含み、補充ステップでは、燃料として、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する。ダイレクトメタノール方式の燃料電池において、適切なメタノール濃度のメタノール水溶液燃料を使用すると、液体燃料中のメタノール濃度は燃料電池の作動に伴って低下し、メタノール濃度が1vol%未満となるまで、燃料電池本体が搭載される機器を充分に作動することができる場合がある。したがって、メタノール濃度が50vol%以上の高濃度のメタノール水溶液を補充することによって、効率的な補充ステップを行うことが可能である。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る燃料残量告知装置の回路構成を表すブロック図である。本発明に係る燃料残量告知装置は、電流検出部2と、電圧検出部3と、温度検出部4と、制御部5と、記憶部6と、表示部7とを備え、燃料電池1が組み込まれている。本実施形態については、燃料電池1として、ダイレクトメタノール方式燃料電池を採用する場合を説明する。また、本装置は、一対の端子を介して所定の電子機器の内部回路に接続されている。
【0029】
図2は燃料電池1の斜視図である。図3は、図2の線III−IIIに沿った断面図であり、図4は、図3の分解図である。燃料電池1は、燃料電池本体10と、燃料貯蔵部20とを備える。燃料電池本体10および燃料貯蔵部20は、電池筐体30に収容されている。
【0030】
燃料電池本体10は、図3に示すように、燃料極11および空気極12と、これらに挟まれている電解質層13とからなる。燃料極11は、触媒層11aおよび集電体11bからなる積層構造を有する。同様に、空気極12は、触媒層12aおよび集電体12bからなる積層構造を有する。空気極12における触媒層12aと集電体12bの間には、温度検出部4の一部を構成する熱電対4aが配設されている。燃料貯蔵部20は、メタノール水溶液が直接的に貯留される小型タンクとして構成されており、メタノール水溶液またはメタノールを適宜補充するための注入口(図示略)を有する。電池筐体30は、図2によく表れているように、開口部30aを有する。
【0031】
燃料電池本体10における燃料極11の触媒層11aは、上掲の式(1)に従ってメタノールを酸化してプロトンと電子を取り出すためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。導電粒子としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどの炭素粒子が挙げられる。触媒としては、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金を採用することができる。触媒の粒径は、例えば2〜5nmである。触媒層11aの作製においては、まず、触媒性粒子とプロトン伝導性高分子材料とを、水溶媒系、アルコール溶媒系、または、水−アルコール溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製する。次に、触媒層基材としての多孔質導電膜の上に電極ペーストを塗布ないし充填した後、例えば100℃にて加熱乾燥する。多孔質導電膜としては、カーボンペーパなどが挙げられる。多孔質導電膜の膜厚は例えば100〜400μmであり、触媒層基材である多孔質導電膜の上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは、例えば5〜50μmである。このようにして、多孔質導電膜(図示略)を伴う多孔質性の触媒層11aが作製される。
【0032】
集電体11bは、触媒層11aにおけるメタノール酸化反応で発生する電子を効率的に取り出すためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体11bとしては、液体燃料であるメタノール水溶液が容易に通過可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体11bは、電池筐体30表面に設けられた外部接続用端子(図示略)を介して、燃料電池1が搭載される電子機器の諸機能を達成するための所定の電子回路に対して電気的に接続されている。燃料電池1が搭載される電子機器としては、例えば、携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器が挙げられる。したがって、本燃料残量告知装置も、これら携帯電子機器に併設ないし内蔵される。
【0033】
空気極12の触媒層12aは、上掲の式(2)に従って空気中の酸素の還元反応を進行させるためのものであり、導電粒子に触媒を担持させてなる触媒性粒子と、電解質層形成用の後述するプロトン伝導性高分子材料との混合物を含み、多孔質である。触媒については、白金(Pt)を採用することができる。触媒の粒径は、例えば2〜5nmである。導電粒子については、触媒層11aと同様のものを使用することができる。また、触媒層12aの作製方法については、触媒層11aに関して上述したのと同様である。
【0034】
集電体12bは、触媒層12aに対して効率的に電子を供給するためのものであり、例えばSUS製やNi製の金属メッシュである。集電体12bとしては、触媒層12aに対して空気ないし酸素が自然拡散により充分に接触可能であるとともに、触媒層12aにおける酸素還元反応で生成する水を適切に蒸散排出可能なメッシュ開口径ないしメッシュ開口率を有するものを採用する。集電体12bは、電池筐体30表面に設けられた更なる外部接続用端子(図示略)を介して、燃料電池1が搭載される電子機器の諸機能を達成するための所定の電子回路(図示略)に対して電気的に接続されている。
【0035】
電解質層13は、燃料極11におけるメタノール酸化反応で生成したプロトンを空気極12に輸送するための媒体であり、電子伝導性を有さずにプロトン伝導性を有する高分子材料よりなる。そのような高分子材料としては、パーフロオロスルホン酸膜が挙げられる。パーフロオロスルホン酸膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン製)、フレミオン膜(旭硝子製)、アシプレックス膜(旭化成工業製)、ダウ膜(ダウケミカル製)などが挙げられる。電解質層13の厚さは、例えば50〜250μmである。
【0036】
燃料電池本体10の作製においては、例えば、まず、上述のようにして作製された触媒層11aおよび触媒層12aにより電解質層13を挟む。このとき、触媒層11aおよび触媒層12aは、多孔質導電膜(図示略)の上における電極ペースト由来の材料のみからなる面を介して電解質層13に貼り合わせる。次に、加熱下にて、当該貼合せ体を積層方向に加圧して接合する。次に、触媒層11aに対して集電体11bを積層して接合し、触媒層12aに対して集電体12bを積層して接合する。触媒層12aに対して集電体12bを接合する際には、触媒層12aおよび集電体12bの間における所定箇所に熱電対4aを配設しておく。
【0037】
このようにして作製される燃料電池本体10と、スペーサ31と、パッキング材32と、パッキング材33とを、図3に示すように電池筐体30に収容することによって、燃料電池本体10および燃料貯蔵部20を備えてこれらが電池筐体30に収容された燃料電池1が得られる。スペーサ31には、所定の開口部31aが設けられている。この開口部31aは、円形であってもよいし、スリット状であってもよい。パッキング材32は、燃料電池本体10の周縁部と電池筐体30との間の隙間を封止する。また、パッキング材33は、燃料貯蔵部20を規定しつつ、燃料貯蔵部20からの燃料漏れを防止するためのものである。
【0038】
電池筐体30において燃料貯蔵部20を規定する所定の箇所には、燃料貯蔵部20と電池外部との間の隔壁として、二酸化炭素透過膜(図示略)が配設されている。二酸化炭素透過膜は、液体燃料を実質的に透過させずに二酸化炭素を選択的に透過させる膜であり、この膜を介して、燃料極11における電池反応で生成する二酸化炭素は排出される。二酸化炭素透過膜を構成する材料としては、例えば、シリコンゴムやフッ素ポリイミドなどが挙げられる。
【0039】
燃料電池本体10の燃料極11は、スペーサ31の開口部31aを介して燃料貯蔵部に20に露出している。したがって、燃料貯蔵部20に貯留されているメタノール水溶液(図示略)は、スペーサ31の開口部31aを通って燃料極11に接触可能である。また、空気極12は、電池筐体30に当接しつつ、その一部が開口部30aを介して機器外部に露出している。したがって、電池外部の空気に含まれる酸素は、空気極12に対して接触可能である。
【0040】
燃料電池1においては、燃料貯蔵部20に液体燃料すなわちメタノール水溶液が貯留されていると、当該メタノール水溶液は、スペーサ31の開口部31aを介して燃料貯蔵部20から燃料極11に至る。そして、燃料極11では、メタノール水溶液は、メッシュ状の集電体11bを通過して触媒層11aに至る。これとともに、電池筐体30の開口部30aを介して外気に触れる空気極12には、空気に含まれる酸素が常時的に接触する。空気極12では、酸素は、メッシュ状の集電体12bを通過して触媒層12aに至る。燃料極11に対してメタノール水溶液が供給されるとともに空気極12に対して酸素が供給されると、燃料極11の触媒層11aでは、触媒の作用により、上掲の式(1)で表されるメタノール酸化反応が起こり、二酸化炭素、プロトン、および電子が発生する。また、空気極12の触媒層12aでは、触媒の作用により、上掲の式(2)で表される酸素還元反応が起こり、水が生成する。この水は、自然蒸散する。両極においてこのような電気化学反応が進行することにより、燃料電池本体10は発電する。
【0041】
本実施形態の燃料残量告知装置の電流検出部2は、以上のような発電システムを有する燃料電池1からの放電電流を検出する回路により構成されている。電流電圧検出部3は、燃料電池1における燃料極11および空気極12の間の端子電圧を検出する回路よりなる。温度検出部4は、燃料電池本体10の温度を検出する回路よりなる。本実施形態においては、温度検出部4は、空気極12における触媒層12aと集電体12bの間に介在する温度センサとしての熱電対4aを含んでいる。制御部5は、後述の計算や判断を実行するCPUと、当該CPUによりテンポラリメモリとして使用されるRAMとを備える。記憶部6は、例えばROMよりなり、温度−内部抵抗相関データを記憶している。表示部7は、本装置による残量告知を表示して、ユーザなどに対して燃料残量を視覚的に告知するための手段である。本発明では、表示部7に代えて、ユーザなどに対して燃料残量を聴覚的に告知するための手段を設けてもよい。
【0042】
図5は、記憶部6に記憶されている温度−内部抵抗相関データの一例をグラフで表したものである。温度−内部抵抗相関データは、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が所定の値であるときの、燃料電池本体10の温度と内部抵抗の関係についてのデータであって、予め測定および作製されたデータである。図5には、メタノール濃度が0.5vol%であるときの温度−内部抵抗相関データを表す。燃料電池本体10においては、上述のように、燃料極11および空気極12にて電池反応が起こるとともに、電解質層13をプロトンが伝導する。燃料極11および空気極12における電池反応は発熱反応である。また、電解質層13のイオン伝導度は、当該電解質層13の温度により影響を受けやすい。すなわち、電解質層13のイオン伝導度は、温度依存性が比較的高い。具体的には、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が同一であっても、図5のグラフで示すように、燃料電池本体10の温度が上昇するほど、燃料電池本体10の内部抵抗は低下する傾向にある。したがって、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が同一であっても、燃料電池本体10の内部抵抗の値は、燃料電池本体10の温度によって異なるのである。温度−内部抵抗相関データにおいては、所定の温度範囲における所定の温度ごとに、所定の燃料残量に対応する内部抵抗として、内部抵抗閾値が設定されている。当該温度−内部抵抗相関データは、記憶部6においては、例えばテーブルの形態で、温度と内部抵抗閾値とが一対一に対応付けられて記憶されている。
【0043】
図6は、本実施形態に係る燃料残量告知装置により実行される燃料残量告知方法のフローチャートである。本実施形態に係る燃料残量告知装置は、燃料電池1による機器駆動時に、まず、ステップS1において、電流検出部2により、燃料電池1ないし燃料電池本体10からの放電電流を検出する。検出された電流Iは、制御部5により読み込まれ、検出電流として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。燃料電池1の燃料貯蔵部20に貯留されるメタノール水溶液のメタノール初期濃度は、本実施形態では10vol%である。次に、ステップS2において、電圧検出部3により、燃料電池本体10における燃料極11および空気極12の間の端子電圧を検出する。検出された端子電圧Vは、制御部5により読み込まれ、検出電圧として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。
【0044】
次に、ステップS3において、制御部5に含まれる演算手段としてのCPUにより、燃料電池本体10の内部抵抗を算出する。具体的には、当該CPUにより、RAMに記憶されている検出電流Iおよび検出電圧Vから、オームの法則から導かれるR=V/Iに基づいて、燃料電池本体10の内部抵抗Rを算出する。この内部抵抗の値は、取得内部抵抗として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。次に、ステップS4において、温度検出部4により、熱電対4aを介して燃料電池本体10の空気極12の温度を検出する。検出された温度Tは、制御部5により読み込まれ、検出温度として、制御部5のRAMに一時的に記憶される。
【0045】
次に、ステップS5において、制御部5のCPUにより、記憶部6に記憶されている温度−内部抵抗相関データが参照されて、制御部5のRAMに記憶されている検出温度Tに対応する内部抵抗閾値Rthが、記憶部6から読み出される。本実施形態の温度−内部抵抗相関データについては、図5を参照して上述したように、燃料極11に供給されるメタノール水溶液におけるメタノール濃度が0.5vol%であるときのデータである。
【0046】
次に、ステップS6において、制御部5に含まれる判断手段としてのCPUにより、制御部5のRAMに記憶されている取得内部抵抗Rが、内部抵抗閾値Rth以上であるかどうかを判断する。ステップS6において、取得内部抵抗Rが内部抵抗閾値Rth以上であると判断されない場合、上述の一連のステップが、直ちに又は一定期間経過後に繰り返される。ステップS6において、取得内部抵抗Rが内部抵抗閾値Rth以上であると判断された場合、ステップS7において、表示部7により、ユーザに対して燃料補充の必要性を視覚的に告知する。
【0047】
このようにして、表示部7により燃料補充が告知された後、燃料電池1の燃料貯蔵部20に対して、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0049】
<燃料電池の作製>
燃料電池の作製においては、まず、燃料極の触媒層および空気極の触媒層を作製した。燃料極の作製においては、まず、白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒50重量部と、プロトン伝導性のパーフロオロスルホン酸(商品名:Nafion 20042、Dupont製)50重量部とを、水および2−プロパノールの混合溶媒系にて混合し、これを脱泡して電極ペーストを調製した。白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒における白金およびルテニウムの含有率は、各々、30wt%および20wt%である。次に、カーボンペーパ(商品名:TGP−H−090、東レ製)の上に当該電極ペーストを塗布ないし充填した後、100℃にて加熱乾燥した。カーボンペーパ上における電極ペーストのみに由来する材料厚さは30μmとした。このようにして、燃料極の触媒層を作製した。一方、白金−ルテニウム合金担持カーボン触媒に代えて、白金担持カーボン触媒を使用した以外は、燃料極の触媒層と同様にして、空気極の触媒層を作製した。この白金担持カーボン触媒における白金の含有率は、50wt%である。
【0050】
燃料電池の作製においては、次に、上述のようにして作製した両電極の触媒層により、電解質層を構成するための膜厚125μmのパーフロオロスルホン酸膜(商品名:Nafion NF−115、Dupont製)を挟持した。このとき、各触媒層は、カーボンペーパ上における電極ペースト由来の材料のみからなる面を介して電解質層に貼り合わせた。また、このとき、空気極においては、触媒層と集電体の間に熱電対を配設した。次に、加熱下にて、当該貼合せ体を積層方向に加圧して接合した。次に、各触媒層におけるカーボンペーパ露出面側に対して、集電体として、SUS製の金属メッシュ(開口率70%)を積層して接合した。このようにして、燃料電池本体が作製された。
【0051】
燃料電池の作製においては、次に、上述のようにして作製された燃料電池本体を例えば図2に示すように、空気極側に開口部を有する電池筐体に収容した。電池筐体の内部に規定される燃料貯蔵部には、液体燃料として、メタノール濃度が10vol%のメタノール水溶液を2.5cm3注入した。
【0052】
<燃料残量の測定>
図1に示す回路構成を有する燃料残量告知装置に対して、上述のようにして作製した燃料電池を燃料電池1として組み込み、燃料残量の測定を行った。燃料補充を告知するための温度−内部抵抗相関データとしては、図5に示すような、メタノール濃度が0.5vol%のときの、電池温度Tに対する内部抵抗閾値Rthの関数を設定し、これを使用した。燃料電池の電圧Vおよび放電電流IからR=V/Iに基づいて算出される内部抵抗Rが、Rthよりも大きくなったときを燃料補充告知として燃料の組成を分析した。
【0053】
具体的には、まず、燃料電池温度が35℃、23℃、または15℃の条件において、上述のように作製した燃料電池を50mAで連続放電した。燃料電池温度35℃、23℃、15℃における、メタノール濃度0.5vol%のときの内部抵抗閾値は、各々、0.58Ω、0.82Ω、1.10Ωである。すると、すべての温度条件において、定電流放電が一定時間経過した後に燃料電池本体の内部抵抗が増加し始めた。そして、燃料電池本体の内部抵抗Rが各温度における内部抵抗閾値Rthよりも大きくなった時点で放電終了とし、そのときの燃料の組成を分析した。その結果、すべての温度条件において、放電終了時のメタノール濃度は0.5vol%程度であり、燃料の残量を予測することが可能であることを確認することができた。
【0054】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0055】
(付記1)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出手段と、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得手段と、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データ、を記憶するための記憶手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知手段と、を備えることを特徴とする、燃料残量告知装置。
(付記2)前記内部抵抗取得手段は、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出手段と、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出手段と、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算手段と、を含む、付記1に記載の燃料残量告知装置。
(付記3)前記温度検出手段は、前記燃料電池本体の内部に配設された温度センサを有する、付記1または2に記載の燃料残量告知装置。
(付記4)前記第1電極または前記第2電極は、前記電解質層と積層された触媒層と、当該触媒層と積層された集電体層とを含み、前記温度センサは、前記第1電極または前記第2電極における前記触媒層および前記集電体層の間に配設されている、付記3に記載の燃料残量告知装置。
(付記5)前記燃料は、燃料活性物質と燃料溶媒を含む液体燃料である、付記1から4のいずれか1つに記載の燃料残量告知装置。
(付記6)前記燃料活物質はメタノールであり、前記燃料溶媒は水である、付記5に記載の燃料残量告知装置。
(付記7)前記燃料の前記残量は、前記液体燃料における前記燃料活物質の残存濃度である、付記5または6に記載の燃料残量告知装置。
(付記8)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、を含むことを特徴とする、燃料残量告知方法。
(付記9)前記内部抵抗取得ステップは、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出ステップと、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出ステップと、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算ステップと、を含む、付記8に記載の燃料残量告知方法。
(付記10)前記温度検出ステップでは、前記燃料電池本体の内部の温度が検出される、付記8または9に記載の燃料残量告知方法。
(付記11)燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が補充必要量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について複数設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、
燃料を補充するための補充ステップと、を含むことを特徴とする、燃料補充方法。
(付記12)前記燃料はメタノールおよび水を含み、前記補充ステップでは、前記燃料として、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する、付記11に記載の燃料補充方法。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る燃料残量告知装置や燃料残量告知方法によると、燃料電池における燃料極に供給される燃料について、その残量を適切に告知することが可能である。また、本発明に係る燃料補給方法によると、燃料補充の必要性をユーザなどに対して適切に告知して、燃料補充を適切に行うことが可能となる。このような燃料残量告知装置、燃料残量告知方法、および、燃料補給方法は、携帯電話、PDA、ノートパソコンなどの携帯電子機器において、良好に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】閾値
本発明に係る燃料残量告知装置の回路構成を表すブロック図である。
【図2】本発明で用いられる燃料電池の斜視図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図2の線III−IIIに沿った分解断面図である。
【図5】本発明で用いられる温度−内部抵抗相関データの一例を表す。
【図6】本発明に係る燃料残量告知方法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 電流検出部
3 電圧検出部
4 温度検出部
5 制御部
6 記憶部
7 表示部
10 燃料電池本体
11 燃料極
12 空気極
11a,12a 触媒層
11b,12b 集電体
13 電解質層
20 燃料貯蔵部
30 電池筐体
30a 開口部
Claims (6)
- 燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出手段と、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得手段と、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データ、を記憶するための記憶手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断手段と、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知手段と、を備えることを特徴とする、燃料残量告知装置。 - 前記内部抵抗取得手段は、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出手段と、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出手段と、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算手段と、を含む、請求項1に記載の燃料残量告知装置。
- 燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が第1残量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、を含むことを特徴とする、燃料残量告知方法。 - 前記内部抵抗取得ステップは、燃料電池本体からの放電電流を検出電流として検出するための電流検出ステップと、燃料電池本体の端子電圧を検出電圧として検出するための電圧検出ステップと、前記検出電流および前記検出電圧から前記燃料電池本体の内部抵抗を算出するための演算ステップと、を含む、請求項3に記載の燃料残量告知方法。
- 燃料を酸化するための第1電極、酸素を還元するための第2電極、並びに、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた電解質層、を備える燃料電池本体の温度を検出温度として検出するための温度検出ステップと、
前記燃料電池本体の内部抵抗を取得内部抵抗として取得するための内部抵抗取得ステップと、
前記第1電極に供給される燃料の残量が補充必要量であるときの前記燃料電池本体の内部抵抗が、内部抵抗閾値として複数の燃料電池本体温度について設定されている温度−内部抵抗相関データを参照し、前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における内部抵抗閾値以上かどうかを判断する判断ステップと、
前記検出温度における前記取得内部抵抗の値が、前記温度−内部抵抗相関データに設定された前記検出温度における前記内部抵抗閾値以上であると判断されたことを知らせるための告知ステップと、
燃料を補充するための補充ステップと、を含むことを特徴とする、燃料補充方法。 - 前記燃料はメタノールおよび水を含み、前記補充ステップでは、前記燃料として、メタノール濃度が50vol%以上のメタノール水溶液を補充する、請求項5に記載の燃料補充方法。
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-
2002
- 2002-08-01 JP JP2002225160A patent/JP2004071183A/ja active Pending
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