JP2004067545A - 含フッ素アルキルヒドラジンおよびその中間体 - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱いが容易で且つ比較的安価な原料を用いて、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として極めて有用な新規な含フッ素アルキルヒドラジンを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
R2−NHNH2 (1)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
で表される含フッ素アルキルヒドラジン。
【選択図】 なし。
【解決手段】下記一般式(1):
R2−NHNH2 (1)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
で表される含フッ素アルキルヒドラジン。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として有用な含フッ素アルキルヒドラジンおよびその中間体ならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(従来技術1)特公昭57−21267号
上記従来技術1には、ヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩とアルキルハライドとを反応させて、アルキルヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩を製造する方法が開示されている。
(従来技術2)特公昭61−48823号
上記従来技術2には、工業的に又は経済的に有利なアルコールとヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩とを反応させてアルキルヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩を製造する方法が開示されている。
(従来技術3)特公平07−42260号
上記従来技術3には、無機酸の存在下で、ヒドラジンとアルケン化合物を反応させてアルキルヒドラジンを得る方法が開示されている。
(従来技術4)特公昭55−120660
更に、上記従来技術には、トリフルオロエチルアルコールとベンゼンスルホニルクロリドの反応から、2,2,2−トリフルオロエチルベンゼンスルホネートを合成し、これと水和ヒドラジンの反応による、2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンの合成法が開示されている。
この反応経路は、下記式で表される。
【化4】
【化5】
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1で用いるアルキルハライドは、対応するアルコールとハロゲン化水素との反応で得られるものであり、両者を定量的に反応させるには理論量の3倍程度のハロゲン化水素が必要であり、廃酸の処理という厄介な問題がある。さらに、含フッ素アルキルハライドとヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩との反応は、通常の反応条件下では収率良く進行しない。
【0004】
従来技術2は、アルコールからアルキルヒドラジンの合成に成功した点で意義はあるが原料のアルコールによっては目的とするアルキルヒドラジンが殆ど生成しない欠点があり、原料アルコールとして含フッ素アルコールを用いた場合も目的とするヒドラジンは生成しない。
【0005】
従来技術3で使用される原料のアルケンは、その多くが気体であり、その取り扱い上、問題があり、また原料として高価であり、経済的に不利である。
【0006】
従来技術4は、比較的安価であるトリフルオロエチルアルコールとベンゼンスルホニルクロリドからトシレートを合成し、これと水和ヒドラジンを反応させることで2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンを安価に合成した点で意義がある。しかし記載されている方法は、2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンの製造方法であり、その他のフッ素を含有しているアルキルヒドラジン全般の製造方法について言及しているものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、取り扱いが容易で且つ比較的安価な原料を用いて高収率で製造可能な新規な含フッ素アルキルヒドラジン、およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の含フッ素アルキルヒドラジンの中間体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、新規アルキルヒドラジンの新規な製造法を見出し、前記の課題を解決した。
即ち、本発明によれば、下記一般式(1):
R2−NHNH2 (1)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、で表される含フッ素アルキルヒドラジンが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、下記一般式(2):
【化6】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示し(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
nは、0〜5の整数である、
で表されるスルホン酸エステルが提供される。
このスルホン酸エステルは、上記含フッ素アルキルヒドラジン製造用の中間体である。
【0010】
本発明によれば、更に、前記一般式(2)で表されるスルホン酸エステルと水和ヒドラジンとを反応させることにより、前記一般式(1)で表される含フッ素アルキルヒドラジンの製造方法が提供される。
【0011】
本発明において、前記一般式(2)で表されるスルホン酸エステルは、下記一般式(3):
【化7】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
nは、0〜5の整数である、
で表されるスルホニルクロリドと、下記一般式(4):
R2OH (4)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は
除く)、
で表されるアルコールとを反応させることによって合成される。
かかる方法において、スルホニルクロリドとアルコールとの反応は、アルカリ金属水酸化物の存在下で行われる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
即ち、前述した一般式(1)で表される本発明の含フッ素アルキルヒドラジンは、前記一般式(3)のスルホニルクロリドと一般式(4)のアルコールとから一般式(2)のスルホン酸エステルを製造し、得られたスルホン酸エステルを水和ヒドラジンと反応させることにより製造される。
【0013】
出発原料として使用されるスルホニルクロリドは、一般式(3):
【化8】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
nは、0〜5の整数である、
で表される。
かかるスルホニルクロリドにおいて、置換基R1の炭素数4以下の低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基等を例示することができ、特にメチル基が好適である。また、置換基R1は存在していなくともよく(即ちn=0であってよい)、更に置換基R1の位置も特に制限されない。このようなスルホニルクロリドの代表例としては、これに限定されるものではないが、p−トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルフォニルクロリドを例示することができ、以下に述べるアルコールとの反応(求核置換反応)を速やかに進行させるという点で、p−トルエンスルホニルクロリドが最も好適である。
かかるスルホニルクロリドは、常温で液状の化合物で取り扱い容易であり、且つ比較的安価であるという利点がある。
【0014】
また、上記スルホニルクロリドと反応させるアルコールとしては、一般式(4):
R2OH (4)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
で表される含フッ素アルコールが使用される。
上記アルキル基R2は、目的とする含フッ素アルキルヒドラジンの含フッ素アルキル基に対応するものであり、炭素数が1〜4であるという条件を満足する限りにおいて、直鎖であっても分岐状であってもよい。また、かかるアルキル基に結合しているフッ素の数や位置は、2,2,2−トリフルオロエチル基を除く以外は、特に制限されない。かかるアルコールの代表例としては、これに限定されるものではないが、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアルコールを挙げることができる。
かかるアルコールも常温で液状で取り扱い容易であり、安価な物質である。
【0015】
上記のスルホニルクロリドとアルコールとの反応は、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOH,KOH)の存在下で行われ、一般式(2)のスルホン酸エステルが合成される。この合成反応は、以下の式で表される。
【化9】
上記式中、R1,R2及びnは、前記の通りであり、Mはアルカリ金属を表す。
【0016】
具体的には、先ず一般式(4)で表されるフッ素含有のアルコールとアルカリ金属水酸化物の水溶液からアルコラートを生成した後、このアルコラートを一般式(3)で表されるスルホン酸クロリドに滴下、反応させることにより一般式(2)で表されるスルホン酸エステルを得ることができる。
この反応では、反応を阻害しない溶媒を使用することもできるが、アルカリ金属水酸化物の水溶液中で実施するのが最も経済的である。反応温度は、室温から使用する溶媒の沸点までで適宜選択すればよいが、より好ましくは40〜70℃である。反応時間は1時間から5時間、好ましくは2〜3時間である。
含フッ素アルコールとアルカリ金属水酸化物およびスルホン酸クロリドのモル比は、アルコールに対してアルカリ金属水酸化物およびスルホン酸クロリドを等モル〜1.1モル使用すればよい。
反応後、目的のスルホン酸エステルは通常の操作により単離することができる。
このようにして得られる一般式(2)のスルホン酸エステルは新規化合物であり、一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンを合成するための中間体として利用される。
【0017】
本発明においては、上記で得られた一般式(2)のスルホン酸エステルを水和ヒドラジンとを加熱下で(通常、100℃以上)反応させることにより、目的とする一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンを高収率で得ることができる。
この反応は、以下の式で表される。
【化10】
上記式中、R1,R2及びnは前記の通りである。
【0018】
この反応は、無溶媒でも進行するが、反応を阻害しない溶媒を使用するのが望ましく、水またはメタノール等の低級アルコールを、単独または混合して用いるのが好ましい。反応温度は、 50〜110℃、好ましくは90〜100℃である。反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜2時間である。スルホン酸エステルに対する水和ヒドラジンの使用量は等モルでも良いが、通常は2〜8モル、好ましくは3〜5モルである。
反応終了後、得られた一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンは、蒸留等で容易に反応混合物より単離することができる。
【0019】
このようにして得られた一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンは、新規化合物であり、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として極めて有用である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0021】
実施例1
2,2,3,3−テトラフルオロプロピル−p−トルエンスルフォネート (TsOTFP) の合成
【化11】
【0022】
攪拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlのガラス製反応器に、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール132.1g(1.0mol)を仕込み、攪拌下、55〜60℃に加温した状態を保ち、35%水酸化ナトリウム124.9g(1.10mol)を30min.かけて滴下した。
上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。反応終了後255.6gのアルコラートを得た。
一方で攪拌機、温度計及び冷却器を備えた1000mlのガラス製反応器に、p−トルエンスルフォニルクロリド200.2g(1.050mol)、及び水170.0gを仕込み、攪拌下、55〜60℃に加温した状態で、先に合成したアルコラート255.6gを10min.かけて滴下した。
上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。反応後、反応液は二層になり、下層液で99%のTsOTFPを281.8g得た。(収率98.4%)
【0023】
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルヒドラジン ( TFPH ) の合成
CHF2CF2CH2NHNH2
攪拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlのガラス製反応器に、水和ヒドラジン200.3g(4.0mol)を仕込み、攪拌下、110〜118℃でrefluxした状態を保ち、99%TsOTFP281.8g(0.98mol)を150min.かけて滴下した。上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。
冷却後、35%水酸化ナトリウム115g(1.01mol)で反応液を中和した。中和反応液のガスクロマトグラフ(GC)およびNaOH滴定での分析より、TFPHの収率は95%であった。
攪拌機、温度計及び塔高500mm、塔径30mmの充填物を充填した蒸留塔付きの分留装置を備えた500mlのガラス製反応器に中和反応液を仕込み、50mmHgの圧力下精留を行った。蒸留塔のTopの温度が37〜58℃の留分で目的物のTFPHを水、ヒドラジンとの共沸で得ることができた。(反応工程からのTOTAL収率75%)
得られた水、ヒドラジン、TFPHの混合溶液を精製するため、攪拌機、温度計及び塔高500mm、塔径30mmの充填物を充填した蒸留塔付きの分留装置を備えた500mlのガラス製反応器で50mmHgの圧力下、再度精留を行った。蒸留塔のTopの温度が37〜38℃の留分で99.9%のTFPHを得た。(反応工程からのTOTAL収率50%)
【0024】
なお、TFPHの構造決定は、元素分析、IR及び1HNMRより決定した。
NMRスペクトル及びIRスペクトルは、それぞれ、図1及び図2に示した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、取り扱いが容易で且つ比較的安価な原料を用いて、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として極めて有用な新規な含フッ素アルキルヒドラジンを高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、TsOTFPのNMRスペクトルである。
【図2】本発明の、TsOTFPのIRスペクトルである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として有用な含フッ素アルキルヒドラジンおよびその中間体ならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(従来技術1)特公昭57−21267号
上記従来技術1には、ヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩とアルキルハライドとを反応させて、アルキルヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩を製造する方法が開示されている。
(従来技術2)特公昭61−48823号
上記従来技術2には、工業的に又は経済的に有利なアルコールとヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩とを反応させてアルキルヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩を製造する方法が開示されている。
(従来技術3)特公平07−42260号
上記従来技術3には、無機酸の存在下で、ヒドラジンとアルケン化合物を反応させてアルキルヒドラジンを得る方法が開示されている。
(従来技術4)特公昭55−120660
更に、上記従来技術には、トリフルオロエチルアルコールとベンゼンスルホニルクロリドの反応から、2,2,2−トリフルオロエチルベンゼンスルホネートを合成し、これと水和ヒドラジンの反応による、2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンの合成法が開示されている。
この反応経路は、下記式で表される。
【化4】
【化5】
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術1で用いるアルキルハライドは、対応するアルコールとハロゲン化水素との反応で得られるものであり、両者を定量的に反応させるには理論量の3倍程度のハロゲン化水素が必要であり、廃酸の処理という厄介な問題がある。さらに、含フッ素アルキルハライドとヒドラジン・ハロゲン化水素酸塩との反応は、通常の反応条件下では収率良く進行しない。
【0004】
従来技術2は、アルコールからアルキルヒドラジンの合成に成功した点で意義はあるが原料のアルコールによっては目的とするアルキルヒドラジンが殆ど生成しない欠点があり、原料アルコールとして含フッ素アルコールを用いた場合も目的とするヒドラジンは生成しない。
【0005】
従来技術3で使用される原料のアルケンは、その多くが気体であり、その取り扱い上、問題があり、また原料として高価であり、経済的に不利である。
【0006】
従来技術4は、比較的安価であるトリフルオロエチルアルコールとベンゼンスルホニルクロリドからトシレートを合成し、これと水和ヒドラジンを反応させることで2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンを安価に合成した点で意義がある。しかし記載されている方法は、2,2,2−トリフルオロエチルヒドラジンの製造方法であり、その他のフッ素を含有しているアルキルヒドラジン全般の製造方法について言及しているものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、取り扱いが容易で且つ比較的安価な原料を用いて高収率で製造可能な新規な含フッ素アルキルヒドラジン、およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の含フッ素アルキルヒドラジンの中間体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、新規アルキルヒドラジンの新規な製造法を見出し、前記の課題を解決した。
即ち、本発明によれば、下記一般式(1):
R2−NHNH2 (1)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、で表される含フッ素アルキルヒドラジンが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、下記一般式(2):
【化6】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示し(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
nは、0〜5の整数である、
で表されるスルホン酸エステルが提供される。
このスルホン酸エステルは、上記含フッ素アルキルヒドラジン製造用の中間体である。
【0010】
本発明によれば、更に、前記一般式(2)で表されるスルホン酸エステルと水和ヒドラジンとを反応させることにより、前記一般式(1)で表される含フッ素アルキルヒドラジンの製造方法が提供される。
【0011】
本発明において、前記一般式(2)で表されるスルホン酸エステルは、下記一般式(3):
【化7】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
nは、0〜5の整数である、
で表されるスルホニルクロリドと、下記一般式(4):
R2OH (4)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は
除く)、
で表されるアルコールとを反応させることによって合成される。
かかる方法において、スルホニルクロリドとアルコールとの反応は、アルカリ金属水酸化物の存在下で行われる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
即ち、前述した一般式(1)で表される本発明の含フッ素アルキルヒドラジンは、前記一般式(3)のスルホニルクロリドと一般式(4)のアルコールとから一般式(2)のスルホン酸エステルを製造し、得られたスルホン酸エステルを水和ヒドラジンと反応させることにより製造される。
【0013】
出発原料として使用されるスルホニルクロリドは、一般式(3):
【化8】
式中、
R1は、炭素数が4以下の低級アルキル基を示し、
nは、0〜5の整数である、
で表される。
かかるスルホニルクロリドにおいて、置換基R1の炭素数4以下の低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基等を例示することができ、特にメチル基が好適である。また、置換基R1は存在していなくともよく(即ちn=0であってよい)、更に置換基R1の位置も特に制限されない。このようなスルホニルクロリドの代表例としては、これに限定されるものではないが、p−トルエンスルホニルクロリド、ベンゼンスルフォニルクロリドを例示することができ、以下に述べるアルコールとの反応(求核置換反応)を速やかに進行させるという点で、p−トルエンスルホニルクロリドが最も好適である。
かかるスルホニルクロリドは、常温で液状の化合物で取り扱い容易であり、且つ比較的安価であるという利点がある。
【0014】
また、上記スルホニルクロリドと反応させるアルコールとしては、一般式(4):
R2OH (4)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、
で表される含フッ素アルコールが使用される。
上記アルキル基R2は、目的とする含フッ素アルキルヒドラジンの含フッ素アルキル基に対応するものであり、炭素数が1〜4であるという条件を満足する限りにおいて、直鎖であっても分岐状であってもよい。また、かかるアルキル基に結合しているフッ素の数や位置は、2,2,2−トリフルオロエチル基を除く以外は、特に制限されない。かかるアルコールの代表例としては、これに限定されるものではないが、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアルコールを挙げることができる。
かかるアルコールも常温で液状で取り扱い容易であり、安価な物質である。
【0015】
上記のスルホニルクロリドとアルコールとの反応は、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOH,KOH)の存在下で行われ、一般式(2)のスルホン酸エステルが合成される。この合成反応は、以下の式で表される。
【化9】
上記式中、R1,R2及びnは、前記の通りであり、Mはアルカリ金属を表す。
【0016】
具体的には、先ず一般式(4)で表されるフッ素含有のアルコールとアルカリ金属水酸化物の水溶液からアルコラートを生成した後、このアルコラートを一般式(3)で表されるスルホン酸クロリドに滴下、反応させることにより一般式(2)で表されるスルホン酸エステルを得ることができる。
この反応では、反応を阻害しない溶媒を使用することもできるが、アルカリ金属水酸化物の水溶液中で実施するのが最も経済的である。反応温度は、室温から使用する溶媒の沸点までで適宜選択すればよいが、より好ましくは40〜70℃である。反応時間は1時間から5時間、好ましくは2〜3時間である。
含フッ素アルコールとアルカリ金属水酸化物およびスルホン酸クロリドのモル比は、アルコールに対してアルカリ金属水酸化物およびスルホン酸クロリドを等モル〜1.1モル使用すればよい。
反応後、目的のスルホン酸エステルは通常の操作により単離することができる。
このようにして得られる一般式(2)のスルホン酸エステルは新規化合物であり、一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンを合成するための中間体として利用される。
【0017】
本発明においては、上記で得られた一般式(2)のスルホン酸エステルを水和ヒドラジンとを加熱下で(通常、100℃以上)反応させることにより、目的とする一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンを高収率で得ることができる。
この反応は、以下の式で表される。
【化10】
上記式中、R1,R2及びnは前記の通りである。
【0018】
この反応は、無溶媒でも進行するが、反応を阻害しない溶媒を使用するのが望ましく、水またはメタノール等の低級アルコールを、単独または混合して用いるのが好ましい。反応温度は、 50〜110℃、好ましくは90〜100℃である。反応時間は1〜10時間、好ましくは1〜2時間である。スルホン酸エステルに対する水和ヒドラジンの使用量は等モルでも良いが、通常は2〜8モル、好ましくは3〜5モルである。
反応終了後、得られた一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンは、蒸留等で容易に反応混合物より単離することができる。
【0019】
このようにして得られた一般式(1)の含フッ素アルキルヒドラジンは、新規化合物であり、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として極めて有用である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0021】
実施例1
2,2,3,3−テトラフルオロプロピル−p−トルエンスルフォネート (TsOTFP) の合成
【化11】
【0022】
攪拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlのガラス製反応器に、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール132.1g(1.0mol)を仕込み、攪拌下、55〜60℃に加温した状態を保ち、35%水酸化ナトリウム124.9g(1.10mol)を30min.かけて滴下した。
上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。反応終了後255.6gのアルコラートを得た。
一方で攪拌機、温度計及び冷却器を備えた1000mlのガラス製反応器に、p−トルエンスルフォニルクロリド200.2g(1.050mol)、及び水170.0gを仕込み、攪拌下、55〜60℃に加温した状態で、先に合成したアルコラート255.6gを10min.かけて滴下した。
上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。反応後、反応液は二層になり、下層液で99%のTsOTFPを281.8g得た。(収率98.4%)
【0023】
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルヒドラジン ( TFPH ) の合成
CHF2CF2CH2NHNH2
攪拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlのガラス製反応器に、水和ヒドラジン200.3g(4.0mol)を仕込み、攪拌下、110〜118℃でrefluxした状態を保ち、99%TsOTFP281.8g(0.98mol)を150min.かけて滴下した。上記の温度で30min.エージングし反応を終了した。
冷却後、35%水酸化ナトリウム115g(1.01mol)で反応液を中和した。中和反応液のガスクロマトグラフ(GC)およびNaOH滴定での分析より、TFPHの収率は95%であった。
攪拌機、温度計及び塔高500mm、塔径30mmの充填物を充填した蒸留塔付きの分留装置を備えた500mlのガラス製反応器に中和反応液を仕込み、50mmHgの圧力下精留を行った。蒸留塔のTopの温度が37〜58℃の留分で目的物のTFPHを水、ヒドラジンとの共沸で得ることができた。(反応工程からのTOTAL収率75%)
得られた水、ヒドラジン、TFPHの混合溶液を精製するため、攪拌機、温度計及び塔高500mm、塔径30mmの充填物を充填した蒸留塔付きの分留装置を備えた500mlのガラス製反応器で50mmHgの圧力下、再度精留を行った。蒸留塔のTopの温度が37〜38℃の留分で99.9%のTFPHを得た。(反応工程からのTOTAL収率50%)
【0024】
なお、TFPHの構造決定は、元素分析、IR及び1HNMRより決定した。
NMRスペクトル及びIRスペクトルは、それぞれ、図1及び図2に示した。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、取り扱いが容易で且つ比較的安価な原料を用いて、医薬、農薬、その他の化合物の中間体として極めて有用な新規な含フッ素アルキルヒドラジンを高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、TsOTFPのNMRスペクトルである。
【図2】本発明の、TsOTFPのIRスペクトルである。
Claims (7)
- 下記一般式(1):
R2−NHNH2 (1)
式中、
R2は、フッ素を含有する炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を示す(但し、2,2,2−トリフルオロエチル基は除く)、で表される含フッ素アルキルヒドラジン。 - 上記一般式(1)で、R2の炭素数が3〜4である請求項1に記載の含フッ素アルキルヒドラジン。
- 上記一般式(1)で、R2が2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基である請求項1または2に記載の含フッ素アルキルヒドラジン。
- 前記スルホニルクロリドとアルコールとの反応は、アルカリ金属水酸化物の存在下で行われる請求項6に記載の製造方法。
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