JP2004066389A - インゴットのスライス方法及びワイヤソー切断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワイヤソーのワイヤの列に対してスラリを均一にかつ安定して供給してインゴットを高精度に切断加工することができるスライス方法、及びこのインゴットのスライス加工に用いられるワイヤソー切断装置を提供することにある。
【解決手段】ワイヤソー切断装置1によりインゴットGを多数枚の薄板にスライスするインゴットGのスライス方法において、走行するワイヤ12の列に向けてスラリを供給するに際して、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させる。
【選択図】 図1
【解決手段】ワイヤソー切断装置1によりインゴットGを多数枚の薄板にスライスするインゴットGのスライス方法において、走行するワイヤ12の列に向けてスラリを供給するに際して、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラリを供給しつつワイヤソーにてインゴット(ブロック)を基板状にスライスする際のスライス方法、及びワイヤソー切断装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、シリコン・水晶・セラミックスなどのインゴット(ブロック)を、同時に複数、基板状にスライスする手段としてワイヤソー切断装置が知られている。このワイヤソー切断装置では、多数本のスライス用ワイヤがワイヤガイドに沿って互いに平行な状態で張られ、このワイヤが高速走行された状態で、ワイヤ長手方向と直行する方向に、インゴットを上または下方向から押し付けることにより、このインゴットから多数枚の基板状ワークが同時に切り出される。この際、インゴットのワイヤ走行方向上流側、もしくは上流側と下流側に設けられたインゴットの長手方向全長にわたって開口するスラリ供給ノズルから、スラリ(砥粒と研削液を混合したもの)を平行に張られた多数本のワイヤ又はインゴットの外周面に供給し、ワイヤに付着し転がされる砥粒の働きによってインゴットを切断する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インゴットの一回のスライスは、数時間から10時間以上にも及ぶ場合もあり、従来のワイヤソー切断装置においては、常時、均一に安定してスラリを供給することは困難であった。例えば、スラリ供給ノズルの吐出口(スリットや多数の小孔)に異物が詰ったり、ワイヤ走行による気流がスラリカーテンへ巻き込んだり、スラリの粘性・流量変化などの複雑な要因によりスラリの流れが安定せず、部分的なスラリ詰り、スラリカーテン切れ等が発生していた。
さらに、長時間にわたりスラリカーテン切れなどが発生すると、加工精度を悪化させるだけでなく、最悪は、ワイヤ断線によりワークを破損してしまう。
特に、近年、ウエハの薄型化により、従来は厚み500〜400μmあったものが、250μm程度になり、ワイヤ間ピッチは微細450μm程度を要求され、微細ピッチのワイヤに均一にスラリを供給するのが極めて困難になってきた。すなわち、スラリはスラリ供給ノズルから出ていれば良いのではなく、均一にカーテン状(板状)に連続して吐出されることが要求されている。
【0004】
本発明の主要な目的の一つは、ワイヤソーのワイヤの列に対してスラリを均一にかつ安定して供給してインゴットを高精度にスライスすることができるスライス方法、及びこのインゴットのスライス加工に用いられるワイヤソー切断装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤの列を走行させ、このワイヤの列にスラリ供給ノズルからスラリを供給しつつ、ワイヤの列にインゴットを押し付けて多数枚の薄板にスライスするインゴットのスライス方法において、
走行するワイヤの列に向けてスラリを供給するに際して、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させるインゴットのスライス方法を提供できる。
【0006】
ここで、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させるとは、▲1▼スラリ供給ノズル自体を所定の動きで繰り返し運動させることにより、ワイヤの列の走行路に対するノズル噴出口の位置を繰り返し移動させる場合と、▲2▼スラリ供給ノズル自体は静止状態にあり、ノズル噴出口の位置のみをワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させる場合の両方を含む。また、ワイヤの列の走行路とは、インゴットのスライス位置に張られたワイヤの列の走行位置を意味する。
このようにインゴットのスライス中にスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させることにより、ノズル噴出口に部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、それ以外の他部から噴出するスラリを回り込ませてワイヤの列に塗布することができ、ワイヤの列にスラリを均一に塗布することができる。したがって、ワイヤ断線およびワーク破損などのトラブルを引き起こさずに高精度にスライスを継続することができる。また、スラリ噴出口が動くことにより、スラリカーテン切れの修復作用を自然と生じさせることができる。
【0007】
本発明において、前記▲1▼の場合、具体的にはスラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交する方向(ノズル長手方向)に往復運動させる、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交する方向の水平軸の廻りに首振り揺動させる、スラリ供給ノズルを振動させる、あるいはこれらの動きを組み合わせる等の方法を挙げることができる。
スラリ供給ノズルを往復運動させることによっては、部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、往復運動により他部からのスラリを回り込ませ、トラブルを引き起こさずにスライスを継続することができる。このスラリ供給ノズルの往復運動は、5〜30mmのストロークを1往復0.2〜2秒で行うよう設定するのが好ましい。
また、スラリ供給ノズルを首振り揺動させることによっては、スラリの流れを常時均一にすることが可能で、スラリ切れなど起こし難く、またスラリ切れを生じても修復することができる。このスラリ供給ノズルの揺動は、揺動角度5〜45°のスイングを1往復0.2〜2秒で行うよう設定するのが好ましい。
また、スラリ供給ノズルを振動させることによっては、スラリカーテン切れを発生し難く、また発生しても直ぐに回復してトラブルを起こし難くすることができる。なお、振動としては上下方向、ワイヤ長手方向、ノズル長手方向、あるいはランダム方向等の振動が挙げられる。このスラリ供給ノズルの振動は0.5〜3回/秒に設定するのが好ましい。
【0008】
本発明において、スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側に遮へい板を設け、ワイヤ走行による気流がスラリ供給ノズル側へ向かうのを阻止するようにすれば、ワイヤ走行による空気の巻き込みなどのよる、スラリの乱流、スラリカーテンの乱れを防ぎ、ワイヤの列にスラリがより一層均一に塗布されてトラブルを有効に防止することができて好ましい。
【0009】
本発明において、前記▲2▼の場合、すなわち、スラリ供給ノズル自体は静止状態にあり、ノズル噴出口の位置のみをワイヤの列に対して繰り返し移動させる場合は、例えば、スラリ供給ノズルの内部に、揺動制御される流向板をノズル長手方向に設けてスラリ噴出口の向きを変化させたり、あるいはスラリ供給ノズルの内部に、回転制御されるスクリューシャフトをノズル長手方向に設けてスラリ噴出口をノズル長手方向に移動させるなどの方法が挙げられる。
【0010】
本発明の別の観点によれば、複数のガイドローラと、これら複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤと、このワイヤの列と直交する方向に延びて走行状態のワイヤの列にスラリを供給するスラリ供給ノズルとを備え、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行路に対して繰り返し運動させるノズル運動手段をさらに備えてなるワイヤソー切断装置が提供される。
【0011】
このワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズルは、インゴット設置位置に設置されたインゴットに対してワイヤ走行方向の少なくとも上流側、好ましくは上流側と下流側に設ける。また、ノズル運動手段は、少なくともワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズルについて運動させるよう設けられるが、上流側と下流側の両方のスラリ供給ノズルに設けてもよい。さらに、インゴットの外周面塗布用のスラリ供給ノズルを上流側及び/又は下流側に設けてもよい。
【0012】
ノズル運動手段としては、スラリ供給ノズルをワイヤの長手方向と直交する方向に往復運動させる往復動手段、スラリ供給ノズルをワイヤの長手方向と直交する方向の水平軸の廻りに首振り揺動させる揺動手段、スラリ供給ノズルを振動させる振動手段等を挙げることができる。
往復動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルをワイヤ長手方向と直交する方向にスライド可能に支持するガイド機構部と、スラリ供給ノズルを往復移動させる、例えばシリンダ、ラック・ピニオン機構、ボールネジ機構等を利用した従来公知の往復駆動機構部とを備えた構成とすることができる。
揺動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルに設けられたワイヤ長手方向と直交する方向の水平軸と、この水平軸を回動可能に軸支する支持部材と、スラリ供給ノズルを水平軸心廻りに揺動させる、例えばサーボモータ、シリンダ、クランク機構、リンク機構等を利用した従来公知の揺動駆動機構部とを備えた構成とすることができる。
振動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルをゴムなどの弾性体を介して支持する支持部材と、カム付モータ、あるいは圧縮空気及びバネによるピストン運動等を利用してスラリ供給ノズルに振動を与える従来公知の振動発生機構部とを備えた構成とすることができる。
【0013】
また、本発明のワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側には、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口の長手方向全長以上にわたって、かつ下端縁がワイヤの列に接触しない程度で近接した遮へい板を設けることが、ワイヤ走行による気流の巻き込みなどによるスラリカーテンの乱れ、切れを効果的に防止する上で好ましい。
【0014】
また、本発明のワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口は、例えば、ワイヤ長手方向と直交する方向に延びるスリット又はワイヤ長手方向と直交する方向に並んだ小孔の群から構成することができる。さらに、これらのスリット又は小孔の群は、複数列で設けることが好ましく、例えば、スラリ噴出口を、2列のスリット、又は2列に並んだ小孔の群から構成すれば、連続した板状のスラリカーテンが2列で構成され、一方のスラリカーテンにカーテン切れが生じても他方のスラリカーテンにて補うことができるので、より一層安定してワイヤにスラリが塗布され、スラリ供給不良によるトラブルの防止をより強化することができる。なお、スラリ噴出口は、例えば1列のスリットの場合はそのスリット幅を1〜2mmに、2列のスリットの場合はそのスリット幅を0.5〜1.5mmに、列間隔を2〜8mmに設定するのが好ましく、1列の小孔の場合はその径を2〜5mm、孔ピッチを2〜4mmに、2列の小孔の場合はその径を 1〜3mm、孔ピッチを2〜4mm、列間隔を2〜5mmに設定するのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係るワイヤソー切断装置の概略構成図であり、図2は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの正面側から視たスライス状態の説明図であり、図3は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの底面図であり、図4は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの側面側から視たスライス状態の説明図である。なお、図1及び図4において矢印Aはインゴット押付方向、矢印Bはワイヤ走行方向を示し、図2において矢印Cはスラリ供給ノズルの往復動方向を示している。
【0017】
実施の形態1のワイヤソー切断装置は、逆三角形の頂点位置に配置され、多数の溝(ピッチPが0.5mm)をそれぞれ有する3本のガイドローラ11、及び3本のガイドローラ11に多重に巻き掛けられたワイヤ12(φ0.16mm)を有するワイヤソー1と、このワイヤソー1のワイヤ12と直交する方向に延びて走行状態のワイヤ12の列にスラリSを供給するスラリ供給ノズル2と、スラリ供給ノズル2を繰り返し往復運動させるノズル運動手段としての往復動手段31と、インゴットGをワイヤ12の列と直交する方向に保持しつつ上方から(矢印A方向に)ワイヤ12の列に押し付ける図示省略のインゴット押付手段とを備えている。なお、3本のガイドローラ11のうちの少なくとも1本は駆動ローラとされている。
【0018】
スラリ供給ノズル2は、ワイヤソー1の上方に設置されるインゴットGのワイヤ走行方向(矢印B方向)の上流側及び下流側にそれぞれ配置されている。このスラリ供給ノズル2は、長手方向両端が閉鎖された円筒状(直径Dが40mm、長さLが400mm)に形成され、その底面に、ワイヤの列を超える範囲にわたって下方に開口する1本のスリット21a(スリット幅W1が1.5mm)からなるスラリ噴出口21が形成されている。また、スラリ供給ノズル2において、スラリ噴出口21のワイヤ走行方向上流側の壁面には、斜め下方に突出し、かつスラリ噴出口21の長手方向全長以上にわたって延びる遮へい板22が付設されている。この遮へい板22の下端縁は、ワイヤソー1のワイヤ12に近接して配置されている。また、各スラリ供給ノズル2は、図示省略のスラリタンクからポンプ、ホース等を介して所定流量のスラリ(砥粒と研削液の混合物)が送り込まれ、スラリ噴出口21からスラリSをカーテン状に噴出して下方のワイヤソー1のワイヤ12の列に塗布する。なお、ワイヤ12の列の間から滴り落ちたスラリは図示しない受け皿にて受けられ回収タンクに送られる。
【0019】
往復動手段31は、例えば、スラリ供給ノズル2をワイヤ長手方向と直交する方向にスライド可能に支持するガイド機構部と、スラリ供給ノズル2を往復移動させる往復駆動機構部とを備えた構成とされている。この往復動手段31は、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2を往復運動させる。
【0020】
次に、実施の形態1のワイヤソー切断装置によるインゴットのスライス動作について説明する。
多結晶太陽電池用の薄型ウエハのスライスを例にとると、図1に示すように、ワイヤソー1のワイヤ12を10m/secで矢印B方向に高速走行させながら、一対のスラリ供給ノズル2、2からスラリSを流量60リットル/minでカーテン状に流し、多結晶Siからなる125×125×200mmの角柱ブロック状インゴットGをワイヤ12の列に押し付けるように0.3mm/minで矢印A方向に下降させることにより、インゴットGを0.3mmの厚みの基板状に一度にスライスしていく。この間、図2に示すように、往復動手段31を駆動し、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2をワイヤ走行方向(矢印B方向)と直交する方向(矢印C方向)に10mmのストロークでかつ1往復1秒で繰り返し往復運動させる。なお、スラリSは、研削液(オイル)とGC砥粒からなる混合物で、GC砥粒は切断の刃物として、オイルはGC砥粒をワイヤに付着させ加工時に冷却及び切り屑排除の作用を促す。
【0021】
本発明によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2をワイヤの長手方向と直交する方向に往復運動させることにより、スラリ噴出口21を繰り返し往復移動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリSをスラリ噴出口21から均一に流動させる効果が認められ、部分的にスラリカーテン切れが発生した場合でも、往復運動によりカーテン切れしていないノズル個所からのスラリSがかかり、スラリ切れをカバーできるとともに、自然とスラリ切れを修復してスラリSを再び均一な流れに戻すことができる。また、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2に遮へい板22を設けたことにより、ワイヤ高速走行により生じる気流や異物のスラリカーテンへの進入、巻き込みを防止でき、スラリカーテンの乱れや切れを防止することができる。
【0022】
[実施の形態2]
次に、図5は本発明の実施の形態2に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。この実施の形態2は、スラリ供給ノズル2を運動させるノズル運動手段として揺動手段32を設けたものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一の要素には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0023】
揺動手段32は、例えば、スラリ供給ノズル2の両端面に設けられたノズル長手方向の水平軸と、この水平軸を回動可能に軸支する支持部材と、スラリ供給ノズル2を水平軸の廻りに揺動させる揺動駆動機構部とを備えた構成である。この揺動手段32は、インゴットGのスライス中において、スラリ供給ノズル2を水平軸廻りに揺動角度10°のスイングを1往復1秒で首振り揺動させる。
【0024】
このワイヤソー切断装置によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2を首振り揺動させることにより、スラリ噴出口21を繰り返し揺動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリSの流れを常時均一にすることが可能であり、スラリカーテン切れなどを起し難く、カーテン切れが発生しても自然と修復してスラリSを再び均一な流れに戻すことができる。
【0025】
[実施の形態3]
次に、図6は本発明の実施の形態3に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。この実施の形態3は、スラリ供給ノズル2を運動させるノズル運動手段として振動手段33を設けたものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一の要素には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0026】
振動手段33は、例えばスラリ供給ノズル2をゴムなどの弾性体を介して支持する支持部材と、スラリ供給ノズルに上下方向(矢印F方向)の振動を加える振動発生機構部とを備える。この振動手段33は、インゴットGのスライス中において、スラリ供給ノズル2を上下方向に2回/秒で振動させる。
【0027】
このワイヤソー切断装置によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2を振動させることにより、スラリ噴出口21を振動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリカーテン切れなどを起し難く、カーテン切れが発生しても自然と回復し、トラブルが生じ難い。
【0028】
[他の実施の形態]
(1)上記実施の形態では、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口21がスリット21a(図3参照)からなるものであったが、図7に示すように、例えば直径d13〜5mmの小孔41aがノズル長手方向1列にピッチp12〜4mmで多数並んだ小孔の群からなるスラリ噴出口41をスラリ供給ノズル4に形成してもよい。
(2)また、図8に示すように、スラリ噴出口51は2列のスリット51a、51aからなるものであるのも好ましい。この場合、例えば各スリット51aのスリット幅W2は1〜2mm、列間隔Kは3〜5mmに設定される。このようにすれば、一方のスリット51aから噴出するスラリのワイヤへの塗布が不十分であっても他方のスリット51aから噴出するスラリにて補うことができ、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口51の移動によるスラリ塗布均一化との相乗効果によってより一層スラリをワイヤの列に均一に塗布することができ、トラブルを確実に防止し、高精度にスライス加工を継続することができる。
(3)また、図9に示すように、スラリ噴出口61は、2列に並んだ小孔61a、61a、…の群からなるものであるのも好ましい。この場合、例えば各小孔61aの直径d2は1〜3mm、ピッチp2は2〜4mm、列間隔kは2〜5mm に設定される。このようにしても、前記(2)と同様の効果が得られる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、インゴットのスライス加工において、スラリ噴出口をワイヤの列に対して繰り返し移動させることにより、ノズル噴出口に部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、それ以外のノズル部分からスラリを回り込ませてワイヤに塗布することができ、ワイヤの列にスラリを均一に塗布することができる。したがって、ワイヤ断線およびワーク破損などのトラブルを引き起こさずに高精度にスライスを継続することができる。また、スラリ噴出口が動くことにより、スラリカーテン切れの修復作用を自然に生じさせることができ、人的なカーテン切れの修復作業を要しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るワイヤソー切断装置の概略構成図である。
【図2】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの正面側から視たスライス状態の説明図である。
【図3】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの底面図である。
【図4】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの側面側から視たスライス状態の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。
【図7】1列の小孔の群からなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【図8】2列のスリットからなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【図9】2列の小孔の群からなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤソー切断装置
2、4、5、6スラリ供給ノズル
11 ガイドローラ
12 ワイヤ
21、41、51、61 スラリ噴出口
21a、51a スリット
22 遮へい板
31 往復動手段
32 揺動手段
33 振動手段
41a、61a 小孔
G インゴット
S スラリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラリを供給しつつワイヤソーにてインゴット(ブロック)を基板状にスライスする際のスライス方法、及びワイヤソー切断装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、シリコン・水晶・セラミックスなどのインゴット(ブロック)を、同時に複数、基板状にスライスする手段としてワイヤソー切断装置が知られている。このワイヤソー切断装置では、多数本のスライス用ワイヤがワイヤガイドに沿って互いに平行な状態で張られ、このワイヤが高速走行された状態で、ワイヤ長手方向と直行する方向に、インゴットを上または下方向から押し付けることにより、このインゴットから多数枚の基板状ワークが同時に切り出される。この際、インゴットのワイヤ走行方向上流側、もしくは上流側と下流側に設けられたインゴットの長手方向全長にわたって開口するスラリ供給ノズルから、スラリ(砥粒と研削液を混合したもの)を平行に張られた多数本のワイヤ又はインゴットの外周面に供給し、ワイヤに付着し転がされる砥粒の働きによってインゴットを切断する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インゴットの一回のスライスは、数時間から10時間以上にも及ぶ場合もあり、従来のワイヤソー切断装置においては、常時、均一に安定してスラリを供給することは困難であった。例えば、スラリ供給ノズルの吐出口(スリットや多数の小孔)に異物が詰ったり、ワイヤ走行による気流がスラリカーテンへ巻き込んだり、スラリの粘性・流量変化などの複雑な要因によりスラリの流れが安定せず、部分的なスラリ詰り、スラリカーテン切れ等が発生していた。
さらに、長時間にわたりスラリカーテン切れなどが発生すると、加工精度を悪化させるだけでなく、最悪は、ワイヤ断線によりワークを破損してしまう。
特に、近年、ウエハの薄型化により、従来は厚み500〜400μmあったものが、250μm程度になり、ワイヤ間ピッチは微細450μm程度を要求され、微細ピッチのワイヤに均一にスラリを供給するのが極めて困難になってきた。すなわち、スラリはスラリ供給ノズルから出ていれば良いのではなく、均一にカーテン状(板状)に連続して吐出されることが要求されている。
【0004】
本発明の主要な目的の一つは、ワイヤソーのワイヤの列に対してスラリを均一にかつ安定して供給してインゴットを高精度にスライスすることができるスライス方法、及びこのインゴットのスライス加工に用いられるワイヤソー切断装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤの列を走行させ、このワイヤの列にスラリ供給ノズルからスラリを供給しつつ、ワイヤの列にインゴットを押し付けて多数枚の薄板にスライスするインゴットのスライス方法において、
走行するワイヤの列に向けてスラリを供給するに際して、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させるインゴットのスライス方法を提供できる。
【0006】
ここで、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させるとは、▲1▼スラリ供給ノズル自体を所定の動きで繰り返し運動させることにより、ワイヤの列の走行路に対するノズル噴出口の位置を繰り返し移動させる場合と、▲2▼スラリ供給ノズル自体は静止状態にあり、ノズル噴出口の位置のみをワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させる場合の両方を含む。また、ワイヤの列の走行路とは、インゴットのスライス位置に張られたワイヤの列の走行位置を意味する。
このようにインゴットのスライス中にスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させることにより、ノズル噴出口に部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、それ以外の他部から噴出するスラリを回り込ませてワイヤの列に塗布することができ、ワイヤの列にスラリを均一に塗布することができる。したがって、ワイヤ断線およびワーク破損などのトラブルを引き起こさずに高精度にスライスを継続することができる。また、スラリ噴出口が動くことにより、スラリカーテン切れの修復作用を自然と生じさせることができる。
【0007】
本発明において、前記▲1▼の場合、具体的にはスラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交する方向(ノズル長手方向)に往復運動させる、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交する方向の水平軸の廻りに首振り揺動させる、スラリ供給ノズルを振動させる、あるいはこれらの動きを組み合わせる等の方法を挙げることができる。
スラリ供給ノズルを往復運動させることによっては、部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、往復運動により他部からのスラリを回り込ませ、トラブルを引き起こさずにスライスを継続することができる。このスラリ供給ノズルの往復運動は、5〜30mmのストロークを1往復0.2〜2秒で行うよう設定するのが好ましい。
また、スラリ供給ノズルを首振り揺動させることによっては、スラリの流れを常時均一にすることが可能で、スラリ切れなど起こし難く、またスラリ切れを生じても修復することができる。このスラリ供給ノズルの揺動は、揺動角度5〜45°のスイングを1往復0.2〜2秒で行うよう設定するのが好ましい。
また、スラリ供給ノズルを振動させることによっては、スラリカーテン切れを発生し難く、また発生しても直ぐに回復してトラブルを起こし難くすることができる。なお、振動としては上下方向、ワイヤ長手方向、ノズル長手方向、あるいはランダム方向等の振動が挙げられる。このスラリ供給ノズルの振動は0.5〜3回/秒に設定するのが好ましい。
【0008】
本発明において、スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側に遮へい板を設け、ワイヤ走行による気流がスラリ供給ノズル側へ向かうのを阻止するようにすれば、ワイヤ走行による空気の巻き込みなどのよる、スラリの乱流、スラリカーテンの乱れを防ぎ、ワイヤの列にスラリがより一層均一に塗布されてトラブルを有効に防止することができて好ましい。
【0009】
本発明において、前記▲2▼の場合、すなわち、スラリ供給ノズル自体は静止状態にあり、ノズル噴出口の位置のみをワイヤの列に対して繰り返し移動させる場合は、例えば、スラリ供給ノズルの内部に、揺動制御される流向板をノズル長手方向に設けてスラリ噴出口の向きを変化させたり、あるいはスラリ供給ノズルの内部に、回転制御されるスクリューシャフトをノズル長手方向に設けてスラリ噴出口をノズル長手方向に移動させるなどの方法が挙げられる。
【0010】
本発明の別の観点によれば、複数のガイドローラと、これら複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤと、このワイヤの列と直交する方向に延びて走行状態のワイヤの列にスラリを供給するスラリ供給ノズルとを備え、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行路に対して繰り返し運動させるノズル運動手段をさらに備えてなるワイヤソー切断装置が提供される。
【0011】
このワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズルは、インゴット設置位置に設置されたインゴットに対してワイヤ走行方向の少なくとも上流側、好ましくは上流側と下流側に設ける。また、ノズル運動手段は、少なくともワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズルについて運動させるよう設けられるが、上流側と下流側の両方のスラリ供給ノズルに設けてもよい。さらに、インゴットの外周面塗布用のスラリ供給ノズルを上流側及び/又は下流側に設けてもよい。
【0012】
ノズル運動手段としては、スラリ供給ノズルをワイヤの長手方向と直交する方向に往復運動させる往復動手段、スラリ供給ノズルをワイヤの長手方向と直交する方向の水平軸の廻りに首振り揺動させる揺動手段、スラリ供給ノズルを振動させる振動手段等を挙げることができる。
往復動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルをワイヤ長手方向と直交する方向にスライド可能に支持するガイド機構部と、スラリ供給ノズルを往復移動させる、例えばシリンダ、ラック・ピニオン機構、ボールネジ機構等を利用した従来公知の往復駆動機構部とを備えた構成とすることができる。
揺動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルに設けられたワイヤ長手方向と直交する方向の水平軸と、この水平軸を回動可能に軸支する支持部材と、スラリ供給ノズルを水平軸心廻りに揺動させる、例えばサーボモータ、シリンダ、クランク機構、リンク機構等を利用した従来公知の揺動駆動機構部とを備えた構成とすることができる。
振動手段としては、例えば、スラリ供給ノズルをゴムなどの弾性体を介して支持する支持部材と、カム付モータ、あるいは圧縮空気及びバネによるピストン運動等を利用してスラリ供給ノズルに振動を与える従来公知の振動発生機構部とを備えた構成とすることができる。
【0013】
また、本発明のワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側には、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口の長手方向全長以上にわたって、かつ下端縁がワイヤの列に接触しない程度で近接した遮へい板を設けることが、ワイヤ走行による気流の巻き込みなどによるスラリカーテンの乱れ、切れを効果的に防止する上で好ましい。
【0014】
また、本発明のワイヤソー切断装置において、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口は、例えば、ワイヤ長手方向と直交する方向に延びるスリット又はワイヤ長手方向と直交する方向に並んだ小孔の群から構成することができる。さらに、これらのスリット又は小孔の群は、複数列で設けることが好ましく、例えば、スラリ噴出口を、2列のスリット、又は2列に並んだ小孔の群から構成すれば、連続した板状のスラリカーテンが2列で構成され、一方のスラリカーテンにカーテン切れが生じても他方のスラリカーテンにて補うことができるので、より一層安定してワイヤにスラリが塗布され、スラリ供給不良によるトラブルの防止をより強化することができる。なお、スラリ噴出口は、例えば1列のスリットの場合はそのスリット幅を1〜2mmに、2列のスリットの場合はそのスリット幅を0.5〜1.5mmに、列間隔を2〜8mmに設定するのが好ましく、1列の小孔の場合はその径を2〜5mm、孔ピッチを2〜4mmに、2列の小孔の場合はその径を 1〜3mm、孔ピッチを2〜4mm、列間隔を2〜5mmに設定するのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係るワイヤソー切断装置の概略構成図であり、図2は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの正面側から視たスライス状態の説明図であり、図3は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの底面図であり、図4は同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの側面側から視たスライス状態の説明図である。なお、図1及び図4において矢印Aはインゴット押付方向、矢印Bはワイヤ走行方向を示し、図2において矢印Cはスラリ供給ノズルの往復動方向を示している。
【0017】
実施の形態1のワイヤソー切断装置は、逆三角形の頂点位置に配置され、多数の溝(ピッチPが0.5mm)をそれぞれ有する3本のガイドローラ11、及び3本のガイドローラ11に多重に巻き掛けられたワイヤ12(φ0.16mm)を有するワイヤソー1と、このワイヤソー1のワイヤ12と直交する方向に延びて走行状態のワイヤ12の列にスラリSを供給するスラリ供給ノズル2と、スラリ供給ノズル2を繰り返し往復運動させるノズル運動手段としての往復動手段31と、インゴットGをワイヤ12の列と直交する方向に保持しつつ上方から(矢印A方向に)ワイヤ12の列に押し付ける図示省略のインゴット押付手段とを備えている。なお、3本のガイドローラ11のうちの少なくとも1本は駆動ローラとされている。
【0018】
スラリ供給ノズル2は、ワイヤソー1の上方に設置されるインゴットGのワイヤ走行方向(矢印B方向)の上流側及び下流側にそれぞれ配置されている。このスラリ供給ノズル2は、長手方向両端が閉鎖された円筒状(直径Dが40mm、長さLが400mm)に形成され、その底面に、ワイヤの列を超える範囲にわたって下方に開口する1本のスリット21a(スリット幅W1が1.5mm)からなるスラリ噴出口21が形成されている。また、スラリ供給ノズル2において、スラリ噴出口21のワイヤ走行方向上流側の壁面には、斜め下方に突出し、かつスラリ噴出口21の長手方向全長以上にわたって延びる遮へい板22が付設されている。この遮へい板22の下端縁は、ワイヤソー1のワイヤ12に近接して配置されている。また、各スラリ供給ノズル2は、図示省略のスラリタンクからポンプ、ホース等を介して所定流量のスラリ(砥粒と研削液の混合物)が送り込まれ、スラリ噴出口21からスラリSをカーテン状に噴出して下方のワイヤソー1のワイヤ12の列に塗布する。なお、ワイヤ12の列の間から滴り落ちたスラリは図示しない受け皿にて受けられ回収タンクに送られる。
【0019】
往復動手段31は、例えば、スラリ供給ノズル2をワイヤ長手方向と直交する方向にスライド可能に支持するガイド機構部と、スラリ供給ノズル2を往復移動させる往復駆動機構部とを備えた構成とされている。この往復動手段31は、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2を往復運動させる。
【0020】
次に、実施の形態1のワイヤソー切断装置によるインゴットのスライス動作について説明する。
多結晶太陽電池用の薄型ウエハのスライスを例にとると、図1に示すように、ワイヤソー1のワイヤ12を10m/secで矢印B方向に高速走行させながら、一対のスラリ供給ノズル2、2からスラリSを流量60リットル/minでカーテン状に流し、多結晶Siからなる125×125×200mmの角柱ブロック状インゴットGをワイヤ12の列に押し付けるように0.3mm/minで矢印A方向に下降させることにより、インゴットGを0.3mmの厚みの基板状に一度にスライスしていく。この間、図2に示すように、往復動手段31を駆動し、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2をワイヤ走行方向(矢印B方向)と直交する方向(矢印C方向)に10mmのストロークでかつ1往復1秒で繰り返し往復運動させる。なお、スラリSは、研削液(オイル)とGC砥粒からなる混合物で、GC砥粒は切断の刃物として、オイルはGC砥粒をワイヤに付着させ加工時に冷却及び切り屑排除の作用を促す。
【0021】
本発明によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2をワイヤの長手方向と直交する方向に往復運動させることにより、スラリ噴出口21を繰り返し往復移動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリSをスラリ噴出口21から均一に流動させる効果が認められ、部分的にスラリカーテン切れが発生した場合でも、往復運動によりカーテン切れしていないノズル個所からのスラリSがかかり、スラリ切れをカバーできるとともに、自然とスラリ切れを修復してスラリSを再び均一な流れに戻すことができる。また、ワイヤ走行方向上流側のスラリ供給ノズル2に遮へい板22を設けたことにより、ワイヤ高速走行により生じる気流や異物のスラリカーテンへの進入、巻き込みを防止でき、スラリカーテンの乱れや切れを防止することができる。
【0022】
[実施の形態2]
次に、図5は本発明の実施の形態2に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。この実施の形態2は、スラリ供給ノズル2を運動させるノズル運動手段として揺動手段32を設けたものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一の要素には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0023】
揺動手段32は、例えば、スラリ供給ノズル2の両端面に設けられたノズル長手方向の水平軸と、この水平軸を回動可能に軸支する支持部材と、スラリ供給ノズル2を水平軸の廻りに揺動させる揺動駆動機構部とを備えた構成である。この揺動手段32は、インゴットGのスライス中において、スラリ供給ノズル2を水平軸廻りに揺動角度10°のスイングを1往復1秒で首振り揺動させる。
【0024】
このワイヤソー切断装置によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2を首振り揺動させることにより、スラリ噴出口21を繰り返し揺動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリSの流れを常時均一にすることが可能であり、スラリカーテン切れなどを起し難く、カーテン切れが発生しても自然と修復してスラリSを再び均一な流れに戻すことができる。
【0025】
[実施の形態3]
次に、図6は本発明の実施の形態3に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。この実施の形態3は、スラリ供給ノズル2を運動させるノズル運動手段として振動手段33を設けたものであり、その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一の要素には同一の符号を付しその説明を省略する。
【0026】
振動手段33は、例えばスラリ供給ノズル2をゴムなどの弾性体を介して支持する支持部材と、スラリ供給ノズルに上下方向(矢印F方向)の振動を加える振動発生機構部とを備える。この振動手段33は、インゴットGのスライス中において、スラリ供給ノズル2を上下方向に2回/秒で振動させる。
【0027】
このワイヤソー切断装置によれば、インゴットGのスライス中にスラリ供給ノズル2を振動させることにより、スラリ噴出口21を振動させながらワイヤ12の列にスラリSをカーテン状(板状)に塗布するので、スラリカーテン切れなどを起し難く、カーテン切れが発生しても自然と回復し、トラブルが生じ難い。
【0028】
[他の実施の形態]
(1)上記実施の形態では、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口21がスリット21a(図3参照)からなるものであったが、図7に示すように、例えば直径d13〜5mmの小孔41aがノズル長手方向1列にピッチp12〜4mmで多数並んだ小孔の群からなるスラリ噴出口41をスラリ供給ノズル4に形成してもよい。
(2)また、図8に示すように、スラリ噴出口51は2列のスリット51a、51aからなるものであるのも好ましい。この場合、例えば各スリット51aのスリット幅W2は1〜2mm、列間隔Kは3〜5mmに設定される。このようにすれば、一方のスリット51aから噴出するスラリのワイヤへの塗布が不十分であっても他方のスリット51aから噴出するスラリにて補うことができ、スラリ供給ノズル2のスラリ噴出口51の移動によるスラリ塗布均一化との相乗効果によってより一層スラリをワイヤの列に均一に塗布することができ、トラブルを確実に防止し、高精度にスライス加工を継続することができる。
(3)また、図9に示すように、スラリ噴出口61は、2列に並んだ小孔61a、61a、…の群からなるものであるのも好ましい。この場合、例えば各小孔61aの直径d2は1〜3mm、ピッチp2は2〜4mm、列間隔kは2〜5mm に設定される。このようにしても、前記(2)と同様の効果が得られる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、インゴットのスライス加工において、スラリ噴出口をワイヤの列に対して繰り返し移動させることにより、ノズル噴出口に部分的にスラリ詰りやスラリカーテン切れが発生しても、それ以外のノズル部分からスラリを回り込ませてワイヤに塗布することができ、ワイヤの列にスラリを均一に塗布することができる。したがって、ワイヤ断線およびワーク破損などのトラブルを引き起こさずに高精度にスライスを継続することができる。また、スラリ噴出口が動くことにより、スラリカーテン切れの修復作用を自然に生じさせることができ、人的なカーテン切れの修復作業を要しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るワイヤソー切断装置の概略構成図である。
【図2】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの正面側から視たスライス状態の説明図である。
【図3】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの底面図である。
【図4】同実施の形態1におけるスラリ供給ノズルの側面側から視たスライス状態の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るワイヤソー切断装置のスライス状態を示す説明図である。
【図7】1列の小孔の群からなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【図8】2列のスリットからなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【図9】2列の小孔の群からなるスラリ噴出口を示すスラリ供給ノズルの底面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤソー切断装置
2、4、5、6スラリ供給ノズル
11 ガイドローラ
12 ワイヤ
21、41、51、61 スラリ噴出口
21a、51a スリット
22 遮へい板
31 往復動手段
32 揺動手段
33 振動手段
41a、61a 小孔
G インゴット
S スラリ
Claims (13)
- 複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤの列を走行させ、このワイヤの列にスラリ供給ノズルからスラリを供給しつつ、ワイヤの列にインゴットを押し付けて多数枚の薄板にスライスするインゴットのスライス方法において、
走行するワイヤの列に向けてスラリを供給するに際して、スラリ供給ノズルのスラリ噴出口をワイヤの列の走行路に対して繰り返し移動させることを特徴とするインゴットのスライス方法。 - スラリ噴出口を繰り返し移動させるに際して、スラリ供給ノズルを繰り返し運動させる請求項1に記載のインゴットのスライス方法。
- スラリ供給ノズルの繰り返し運動が、ワイヤの列の走行方向と直交する往復運動を含む請求項2に記載のインゴットのスライス方法。
- スラリ供給ノズルの繰り返し運動が、ワイヤの列の走行方向と直交する水平軸の廻りの首振り揺動を含む請求項2または3に記載のインゴットのスライス方法。
- スラリ供給ノズルの繰り返し運動が、振動を含む請求項2〜4のいずれか一つに記載のインゴットのスライス方法。
- スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側に遮へい板を設け、ワイヤ走行による気流がスラリ供給ノズル側へ向かうのを阻止する請求項1〜5のいずれか一つに記載のインゴットのスライス方法。
- 複数のガイドローラと、これら複数のガイドローラに多重に巻き掛けられたワイヤの列と、このワイヤの列と直交する方向に延びて走行状態のワイヤの列にスラリを供給するスラリ供給ノズルとを備え、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行路に対して繰り返し運動させるノズル運動手段をさらに備えてなることを特徴とするワイヤソー切断装置。
- ノズル運動手段が、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交して往復運動させる往復動手段である請求項7に記載のワイヤソー切断装置。
- ノズル運動手段が、スラリ供給ノズルをワイヤの列の走行方向と直交する水平軸の廻りに首振り揺動させる揺動手段である請求項7に記載のワイヤソー切断装置。
- ノズル運動手段が、スラリ供給ノズルを振動させる振動手段である請求項7に記載のワイヤソー切断装置。
- ワイヤソーのワイヤ走行による気流がスラリ供給ノズル側へ向かうのを阻止するための遮へい板を、スラリ供給ノズル近傍のワイヤ走行方向上流側に備えた請求項7〜10のいずれか一つに記載のワイヤソー切断装置。
- スラリ供給ノズルのスラリ噴出口が、複数列のスリットからなる請求項7〜11のいずれか一つに記載のワイヤソー切断装置。
- スラリ供給ノズルのスラリ噴出口が、複数列に並んだ小孔の群からなる請求項7〜12のいずれか一つに記載のワイヤソー切断装置。
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JP2007021676A (ja) * | 2005-07-19 | 2007-02-01 | Asahi Diamond Industrial Co Ltd | ノズル装置、ワイヤ加工装置、及びワイヤ加工方法 |
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-
2002
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