JP2004066247A - 転造工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ、相手部材への嵌め込み作業性を向上し得るに十分な面取り加工を被転造素材の端面部に施すことができる転造工具を提供すること。
【解決手段】面取り工具1には、平坦面上に構成された押圧面部6と、この押圧面部6から転造歯形面3の各歯底に向かって下降傾斜すると共に稜線部がテーパ状に形成される複数の溝部7が形成されている。よって、面取り工具1は、溝部7に填り込もうとする被転造素材の歯形を押圧面部6によって押圧して、被転造素材の歯形にせん断加工を施すことができる。従って、従来の転造工具のように、面取り用ダイス歯による転造加工(塑性加工)に伴う材料の流動によってスプライン等の歯形が変形したりすることがないので、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ被転造素材の端面部に面取り加工を施すことができる。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転造工具に関し、特に、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ、相手部材への嵌め込み作業性を向上し得るに十分な面取り加工を効率よく被転造素材の端面部に施すことができる転造工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】インボリュートスプラインやインボリュートセレーションは、相手部材に嵌合してその相手部材との相対回転を阻止する作用を有するものである。これらスプライン等は、切削加工に比べ短時間で大量に生産できることから、転造工具を使用した転造加工により被転造素材の外周面に転造されるのが一般的である。
【0003】
ところで、転造加工されたスプライン等は、これを相手部材へ嵌め込ませ易くして、組み立ての作業性を向上させるために、その端面部に生じたバリや突起を除去する面取り加工を行う必要がある。この面取り加工は、フライスによる切削加工やフォーム砥石による研削加工により行われていたが、加工時間が嵩むなど、加工効率の点から問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、実公平5−27237公報には、一対のラック状平ダイスの一側の対応位置に被転造素材の歯面の面取り用の複数のダイス歯が設けられた転造用平ダイスが記載されている。かかる転造用平ダイスによれば、被転造素材が転造面上を転動移動することにより、その外周面には、スプライン等が転造されると同時に、面取り用ダイス歯により端面部の面取り転造がなされるため、短時間で効率的に面取り加工が可能となるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる実公平5−27237公報に記載の転造用平ダイスでは、被転造素材の端面部に塑性加工を施すため、面取り用ダイス歯により押し込まれた材料が流動し、スプライン等の歯形が変形したり、逃げ場を無くした材料が剥離してしまう。そのため、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ、相手部材への嵌め込み作業性を向上し得るに十分な面取り加工を被転造素材の端面部に施すことが困難であるという問題点があった。
【0006】
即ち、例えば、かかる公報には、面取り用ダイス歯を被転造素材の端面方向に向けて次第に歯高が高くなるように構成し、被転造素材の端面部をテーパー状に塑性加工する転造用平ダイスが記載されている(実公平5−27237の第4図参照)。この転造用平ダイスでは、面取り用ダイス歯の勾配を強くすると、被転造素材の端面部外周に周速差が生じ、スムーズな回転ができなくなる。そのため、被転造素材に転造される歯形の精度悪化や塑性加工部の材料剥離を招くばかりでなく、転造加工自体が不能となる。一方、面取り用ダイス歯の勾配を弱くしたのでは、被転造素材の端面部を十分なテーパー状に塑性加工することができないため、相手部材とのクリアランスが減少し、嵌め込み作業性が良好なスプライン等を得ることができない。
【0007】
また、かかる公報には、相互に逆方向へ傾斜する面取り用ダイス歯を直列配置して、各々が分担して被転造素材の端面部の左右歯面を面取り転造する転造用平ダイスが記載されている(実公平5−27237の第3図参照)。この転造用平ダイスでは、被転造素材の端面部の左右歯面を順次面取り転造するため、先に面取り転造された歯面側は、後の面取り転造時に未拘束となり、後に面取り転造された歯面側からの材料流動により膨らんでしまう。その結果、歯幅が拡張することにより相手部材とのクリアランスが不十分となり、同様に、嵌め込み作業性が良好なスプライン等を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ、相手部材への嵌め込み作業性を向上し得るに十分な面取り加工を効率よく被転造素材の端面部に施すことができる転造工具を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1記載の転造工具は、被転造素材の外周面を塑性変形させてスプラインやセレーション等の複数条の歯形を転造する転造歯形面を有する歯形用ダイスと、その歯形用ダイスの転造歯形面の一側に配設されると共に前記被転造素材に転造された歯形の面取り加工を行う面取り工具とを備えており、前記面取り工具は、平坦面状に構成され前記被転造素材の歯形を押圧してせん断加工を施す押圧面部と、その押圧面部から前記転造歯形面の各歯底に向かって下降傾斜すると共に前記押圧面部と交差する稜線部がテーパ状に形成される複数の溝部とを備えている。
【0010】
この請求項1記載の転造工具によれば、一対の転造工具が相対的に平行移動されると、その対向面間に挟持された被転造素材が歯形用ダイスの転造歯形面上を転動移動して、その被転造素材の外周面にスプラインやセレーション等の複数条の歯形が転造される。次いで、一対の転造工具が更に相対的に平行移動されると、被転造素材は、歯形用ダイスの転造歯形面上を転動移動しつつ、その端面部が面取り工具上を転動移動して、面取り工具により面取り加工される。即ち、面取り工具上の転動移動に伴って溝部に填り込もうとする被転造素材端面部の歯形が面取り工具の押圧面部により押圧されることにより、被転造素材端面部の左右歯面にせん断加工が施され、被転造素材端面部の歯形が溝部の稜線部形状に対応するテーパ状に面取り加工される。また、せん断加工により分離した材料は、面取り工具の押圧面部により被転造素材の歯形の歯底に押し込まれる。
【0011】
請求項2記載の転造工具は、請求項1記載の転造工具において、前記面取り工具は、その押圧面部の少なくとも一部または全部が前記転造歯形面の頂部高さと略同一となるように構成されている。
【0012】
請求項3記載の転造工具は、請求項1又は2に記載の転造工具において、前記面取り工具は、前記転造歯形面の歯底に向かって下降傾斜する1又は2以上の溝部の最下部が転造歯形面の歯底と略同一位置となるように構成されている。
【0013】
請求項4記載の転造工具は、請求項1から3のいずれかに記載の転造工具において、前記歯形用ダイスの転造歯形面には、被転造素材に食い付く食付き部と、被転造素材に転造される歯形の仕上げを行う仕上げ部と、被転造素材を仕上げ部から排出する逃げ部と、被転造素材を転造方向へ転動駆動する駆動部とが転造方向始端側から終端側へ向かって順次配設されており、前記面取り工具は、少なくとも前記転造歯形面の駆動部の一側に配設されている。
【0014】
請求項5記載の転造工具は、請求項1から4のいずれかに記載の転造工具において、前記面取り工具は、転造方向始端側から終端側へ向けて上昇傾斜して構成される面取り加工導入部と、その面取り加工導入部の転造方向後端側に配設され被転造素材の歯形の面取り加工の仕上げを行う面取り加工部とを少なくとも備えている。
【0015】
請求項6記載の面取り工具は、請求項1から5のいずれかに記載の転造工具に使用されるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施例である転造工具1の正面図であり、図1(b)は、図1(a)の側面図である。なお、図1では、被転造素材の転造を行う一対の転造工具1のうち、転造盤(図示せず)に固定される一方の転造工具1を図示しており、かかる一方の転造工具1に対して平行移動される他方の転造工具1の図示を省略している。
【0017】
転造工具1は、円柱状の被転造素材の外周面にインボリュートスプラインやインボリュートセレーション等の複数条の歯形を転造すると共に、その転造された歯形の面取り加工を行うための工具である。この転造工具1によれば、複数条の歯形は、後述する転造ダイス2が軸状素材の外周面を塑性変形することにより形成され、その転造された歯形の面取り加工は、後述する面取り工具4が歯面にせん断加工を施すことにより行われる。
【0018】
転造工具1は、図1に示すように、転造ダイス2と面取り工具4とから略直方体状に形成され、転造に適した合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料により構成されている。転造ダイス2は、被転造素材の外周面に複数条の歯形を転造するためのものであり、その一面(図1(a)紙面手前側、(b)上側)には、複数の加工歯が刻設された転造歯形面3を備えている。なお、図1では、加工歯の刻設数が省略して図示されている。
【0019】
転造歯形面3には、転造工具1の転造方向始端側(図1(a),(b)右側)から終端側(図1(a),(b)左側)へ向けて、食付き部3a、仕上げ部3b、逃げ部3cおよび駆動部3dが順に連続して設けられている。
【0020】
食付き部3aは、転造工具1の転造歯形面3を被転造素材の外周面に食い付かせる為の部位であり、いわゆる食付き部として用いられる。この食付き部3aは、転造工具1の転造方向始端側(図1(a),(b)右側)から仕上げ部3b側(図1(a),(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で上昇傾斜して形成されている。仕上げ部3bは、食付き部3aによって被転造素材に転造された複数条の歯形を仕上げるための部位であり、転造工具1の下端面(図1(b)下側)に対して略平行に形成されている。
【0021】
逃げ部3cは、仕上げ部3bの終端から転造工具1の転造方向終端端(図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で下降傾斜して形成されており、この逃げ部3cの終端には、駆動部3dが連設されている。駆動部3dは、被転造素材の外周面に転造加工された歯形を案内して、被転造素材を転造方向終端側へ転動駆動するための部位であり、転造工具1の下端面(図1(b)下側)に対して略平行に形成されている。
【0022】
面取り工具4は、被転造素材の外周面に転造された歯形の面取り加工を行うためのものであり、転造ダイス2の転造方向終端側(図1左側)、即ち、転造歯形面3の駆動部3dの一側(図1(a)上側)に装着されている。面取り工具4は、図1(b)に示すように、複数の取付ボルト9によって転造ダイス2に螺着され、転造ダイス2への装着位置が上下左右に微調整可能となるように構成されている。
【0023】
次に、図2から図4を参照して面取り工具4の詳細構成について説明する。図2(a)は、面取り工具4の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の側面図である。面取り工具4の一面側(図1(a)紙面手前側、(b)上側)には、被転造素材に転造された歯形を面取り加工するための加工面5が設けられており、この加工面5は、押圧面部6と溝部7とを備えている。上述した転造歯形面3の駆動部3dによって転造方向終端側へ転動駆動される被転造素材は、かかる加工面5の押圧面部6及び溝部7によってその歯形の端面部が面取り加工される。なお、図2では、押圧面部6に凹設される溝部7の凹設数が省略して図示されている。また、押圧面部6及び溝部7の詳細については、後述する。
【0024】
加工面5には、図2(b)に示すように、面取り工具4の先端側(図2(a),(b)右側)から後端側(図2(a),(b)左側)へ向けて、即ち、転造工具1の転造方向始端側から終端側に向かって、面取り加工導入部5a、面取り加工部5bおよび面取り加工逃げ部5cが順に連続して設けられている。
【0025】
面取り加工導入部5aは、被転造素材に転造された歯形を徐々に面取り加工するための部位であり、面取り工具4の先端側(図1(a),(b)右側)から面取り加工部5b側(図1(a),(b)左側)へ向けて所定の傾斜角で上昇傾斜して形成されている。そのため、面取り加工時に生じる加工負荷を減少させつつ、面取り加工を精度良く行うことができる。
【0026】
面取り加工部5bは、面取り加工の仕上げを行うための部位であり、面取り工具4の下端面(図2(b)下側)に対して略平行に形成されている。この面取り加工部5bの終端には、面取り加工が終了した被転造素材を面取り工具4の加工面5から排出するための面取り加工逃げ部5cが所定の傾斜角で下降傾斜しつつ連設されている。
【0027】
図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線で切断した面取り工具4の斜視図である。加工面5の押圧面部6は、被転造素材に転造された歯形を押圧してせん断加工を施すための部位であり、図3(a)に示すように、平坦面状に形成されている。なお、加工面5の面取り加工部5bにおける押圧面部6は、転造方向に略平行な平坦面に形成されており、面取り加工導入部5a及び面取り加工逃げ部5cにおける押圧面部6は、転造方向に対して上昇又は下降傾斜した平坦面に形成されている(図2(b)参照)。
【0028】
押圧面部6の縁端部であって、押圧面部6が上述した転造歯形面3の駆動部3d(図1参照)と隣接する側(図3(a)右手前側)には、複数の溝部7が凹設されている。この溝部7は、被転造素材に転造された歯形の頂部が面取り加工時に填り込む部位であり、各溝部7は、被転造素材の歯形ピッチに対応した間隔を隣接する溝部7と互いに保ちつつ、図3(a)に示すように、押圧面部6の縁端部を2平面で切り落とした形状に凹設されている。
【0029】
よって、溝部7は、図3(a)に示すように、その溝底が押圧面部6の縁端部(図3右手前側)へ向かって下降傾斜して形成されると共に、この溝部7と押圧面部6とが交差する稜線部が、押圧面部6の縁端部へ向かって漸次幅広となるテーパー状に形成される。その結果、被転造素材は、その歯形の左右両歯面が面取り加工時に加工面5の押圧面部6ににより押圧され、テーパー状に面取り加工される。
【0030】
ここで、本実施例における溝部7の成形方法について図3(b)を参照して説明する。図3(b)は、面取り工具4を図3(a)の矢印X方向から見た側面図である。本実施例の面取り工具4では、研削砥石11を用いた研削加工により押圧面部6に溝部7を成形した。具体的には、V字状の断面形状を有する研削砥石11を、図3(b)に示すように、研削深さhに達するまで面取り工具4に接離させることにより、研削砥石11の断面形状に対応した溝部7を押圧面部6の縁端部に成形した。
【0031】
図4(a)は、転造工具1の斜視図であり、転造ダイス2の転造歯形面3及び面取り工具4の加工面5を部分的に示した拡大斜視図である。なお、図4(a)では、転造歯形面3の駆動部3aと加工面5の面取り加工部5bとが図示されている。上述したように、加工面5の各溝部7は、被転造素材に転造された歯形の面取り加工時において、被転造素材に転造された歯形頂部を填り込ませるべく、被転造素材に転造された歯形のピッチに対応した間隔で押圧面部6に凹設されている。
【0032】
そのため、面取り工具4が転造ダイス2に装着されると、図4(a)に示すように、加工面5の各溝部7は、転造歯形面3の加工歯の歯底に対応する位置へ配置される。また、隣接する溝部7同士を連結する領域の各押圧面部6は、転造歯形面3の加工歯の頂部に対応する位置、即ち、被転造素材に転造される歯形の歯底に対応する位置に配設される。
【0033】
その結果、面取り加工時におけるせん断加工によって被転造素材の歯形の左右両歯面から分離した材料mは、この領域の各押圧面部6によって被転造素材の歯形の歯底に押し込まれる(図5(b)参照)。なお、図4(a)中にハッチングSで示された領域は、面取り加工時において溝部7に填り込もうとする被転造素材の歯形が溝部7からはみ出して押圧面部6が押圧する領域である。
【0034】
図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における転造ダイス2及び面取り工具4の断面図であり、歯形転造面3の加工歯の歯底および加工面5の溝部7の溝底に沿って転造ダイス2及び面取り工具4が切断されている。
【0035】
加工面4の押圧面部6は、図4(b)に示すように、転造歯形面3の加工歯の頂部と略面一となるように構成されており、また、その押圧面部6から転造歯形面3の加工歯の歯底に向かって下降傾斜する溝部6の最下部は、転造歯形面3の加工歯の歯底と略同一位置となるように構成されている。よって、面取り工具4は、被転造素材の面取り部に段や痕が生じさせることなく、かかる被転造素材の面取り加工を行うことができる。
【0036】
次に、図5を参照して、上述のように構成された転造工具1を用いて被転造素材に歯形を転造する転造工程、及び、その転造工程により転造された歯形の端面部を面取りする面取り加工について説明する。図5(a)は、被転造素材の側面図であり、歯形の転造加工及び面取り加工が終了した後の最終製品状態を示した図である。また、図5(b)は、被転造素材に転造された歯形の面取り部の拡大斜視図であり、図5(a)のA部を拡大して示した図である。
【0037】
まず、被転造素材の外周面へセレーション等の歯形を転造するに際しては、円柱状の被転造素材の両端部を回転センタにより回転自在に軸支すると共に、その被転造素材を一対の転造工具1の歯形転造面3の対向面間に挟持して、一対の転造工具1を相対的に平行移動させる。これにより、被転造素材は、歯形転造面3の食付き部3a、仕上げ部3bおよび逃げ部3c(図1参照)を順次転動移動することにより外周面が塑性変形し、図5(a)に示すように、その被転造素材の外周面にセレーション等の複数条の歯形が転造される。
【0038】
次いで、転造された歯形の面取り加工をするに際しては、一対の転造工具を更に相対的に平行移動させる。この平行移動により、被転造素材は、転造された歯形が転造歯形面3の駆動部3d(図1参照)によって案内され、転造方向終端側へ向かって転動駆動される。これにより、被転造素材は、その歯形の端面部が面取り工具4の加工面5上を転動移動し、その被転造素材の各歯形頂部が加工面5の溝部7へ填り込もうとする(図4(a)参照)。
【0039】
上述したように、溝部7と押圧面部6とが交差する稜線部は、テーパ状に形成されているので、溝部7に填り込もうとする被転造素材の歯形は、図4(a)にハッチングSで示す領域分だけ溝部7からはみ出ることになる。その結果、被転造素材の歯形は、この溝部7からはみ出した領域が押圧面部6により押圧され、その左右両歯面にせん断加工が施される。その結果、被転造素材の歯形端面部は、図5(b)に示すように、テーパ状に面取り加工される。
【0040】
また、かかるせん断加工によって左右両歯面から分離した材料mは、図5(b)に示すように、押圧面部6により被転造素材の歯形の歯底に押し込まれるので、相手部材への嵌め込み作業において支障を来すことはない。なお、被転造素材の面取り部外周fは、転造によるダレの発生により歯先径が減少しているが、かかるダレにより、相手部材への食付き機能をより発揮することができる。
【0041】
以上説明したように、、本実施例の転造工具1によれば、被転造素材の面取り加工は、加工面5の押圧面部6が被転造素材の歯形を押圧してその歯形の左右両歯面をせん断加工することにより行われる。従って、従来の転造工具のように、面取り用ダイス歯による転造加工(塑性加工)に伴って材料が流動し、スプライン等の歯形が変形したり、逃げ場を無くした材料が剥離したりするということがない。その結果、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ相手部材への嵌め込み作業性が良好な面取り加工を被転造素材の端面部に施すことができるのである。
【0042】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0043】
【発明の効果】請求項1記載の転造工具によれば、被転造素材にスプライン等の歯形を転造する歯形用ダイスの一側に被転造素材に転造された歯形の面取り加工を行う面取り工具が配設されているので、スプライン等の歯形の転造と面取り加工とを転造工具の1ストロークで行うことができる。よって、面取り加工のために切削・研削等の別工程を必要としないので、面取り加工に要する加工時間を短縮して、加工効率を向上させることができるという効果がある。
【0044】
また、面取り工具は、平坦面上に構成された押圧面部を備えており、この押圧面部には、転造歯形面の各歯底に向かって下降傾斜すると共に押圧面部と交差する稜線部がテーパ状に形成される複数の溝部が形成されている。よって、面取り工具は、その溝部に填り込もうとする被転造素材の歯形を押圧面部によって押圧することができるので、被転造素材の歯形の面取りをせん断加工により行うことができる。従って、従来の転造工具のように、面取り用ダイス歯による被転造素材端面部の転造加工(塑性加工)に伴う材料の流動によってスプライン等の歯形が変形したり、逃げ場を無くした材料が剥離したりすることがない。そのため、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ被転造素材の端面部に面取り加工を施すことができるという効果がある。
【0045】
即ち、面取り工具の押圧部は、平坦面状に構成されているので、被転造素材の歯形を均一に押圧することができる。よって、面取り用ダイス歯に勾配を設けたタイプの従来の転造工具のように、塑性加工される被転造素材の端面部外周に周速差が生じスムーズな回転ができなくなるため、歯形の精度悪化や塑性加工部の材料剥離を招いたり、逆に、面取り用ダイス歯の勾配を弱めたために被転造素材の端面部の面取り加工が不十分になるということがない。
【0046】
また、面取り工具の溝部は、押圧面部と交差する稜線部がテーパ形状となるように構成されているので、かかる溝部に填り込もうとする被転造素材の歯形の左右両歯面を押圧面部によって同時に押圧することができる。よって、相互に逆方向へ傾斜する面取り用ダイス歯により被転造素材の端面部の左右歯面側を順次面取り転造するタイプの従来の転造工具のように、一方の歯面が面取り加工時に未拘束となるが故に他方の歯面から押されて膨らんでしまい、被転造素材の端面歯幅が拡張して相手部材とのクリアランスが不十分になるということがない。
【0047】
その結果、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ相手部材への嵌め込み作業性が良好な面取り加工を被転造素材の端面部に施すことができるという効果がある。
【0048】
請求項2又は3に記載の転造工具によれば、請求項1又は2に記載の転造工具の奏する効果に加え、面取り工具は、その押圧面部が転造歯形面の頂部高さと略同一となるように構成されると共に、その押圧面部から転造歯形面の歯底に向かって下降傾斜する溝部の最下部が転造歯形面の歯底と略同一位置となるように構成されているので、被転造素材の面取り部に段や痕が生じることを防止することができるという効果がある。その結果、被転造素材の面取り部が相手部材に引っ掛かることを防止して、嵌め込み作業を効率良く行うことができる。
【0049】
請求項4記載の転造工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載の転造工具の奏する効果に加え、面取り工具は、少なくとも転造歯形面の駆動部の一側に配設される。ここで、転造歯形面の駆動部は、逃げ部が転造方向終端側に向かって仕上げ部から下降傾斜している分だけ仕上げ部よりも低い位置に配設されるので、面取り工具の押圧面部と被転造素材の歯形(歯底)との間には、押圧面部によるせん断加工によって被転造素材の左右両歯面から分離した材料を押し込むためのスペースが確保される。よって、分離した材料が被転造素材の歯形本体方向へ流動し歯形が変形してしまうということを防止することができるので、被転造素材に転造される歯形の精度を維持しつつ被転造素材の端面部に面取り加工を施すことができるという効果がある。
【0050】
請求項5記載の転造工具によれば、請求項1から4のいずれかに記載の転造工具の奏する効果に加え、前記面取り工具は、転造方向始端側から終端側へ向けて上昇傾斜して構成される面取り加工導入部と、その面取り加工導入部の転造方向後端側に配設され被転造素材の歯形の面取り加工の仕上げを行う面取り加工部とを少なくとも備えているので、被転造素材の端面部を徐々に面取り加工することができ、その結果、かかる面取り加工を精度良く、かつ、面取り加工時(せん断加工時)に生じる加工負荷を減少させることができるという効果がある。
【0051】
請求項6記載の面取り工具によれば、請求項1から5のいずれかに記載の転造工具に使用される面取り工具と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施例である転造工具の正面図であり、(b)は、図1(a)の側面図である。
【図2】(a)は、面取り工具の正面図であり、(b)は、図2(a)の側面図である。
【図3】(a)は、図2のIIIa−IIIa線で切断した面取り工具の斜視図であり、(b)は、面取り工具を図3(a)の矢印X方向から見た側面図である。
【図4】(a)は、転造工具の斜視図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における転造ダイス及び面取り工具の断面図である。
【図5】(a)は、被転造素材の側面図であり、(b)は、図5(a)のA部の斜視図である。
【符号の説明】
1              転造工具
2              転造ダイス
3              転造歯形面
3a             食付き部
3b             仕上げ部
3c                          逃げ部
3d                          駆動部
4              面取り工具
5              加工面
5a             面取り加工導入部
5b             面取り加工部
5c             面取り加工逃げ部
6              押圧面部
7              溝部

Claims (6)

  1. 被転造素材の外周面を塑性変形させてスプラインやセレーション等の複数条の歯形を転造する転造歯形面を有する歯形用ダイスと、その歯形用ダイスの転造歯形面の一側に配設されると共に前記被転造素材に転造された歯形の面取り加工を行う面取り工具とを備えた転造工具であって、
    前記面取り工具は、平坦面状に構成され前記被転造素材の歯形を押圧してせん断加工を施す押圧面部と、その押圧面部から前記転造歯形面の各歯底に向かって下降傾斜すると共に前記押圧面部と交差する稜線部がテーパ状に形成される複数の溝部とを備えていることを特徴とする転造工具。
  2. 前記面取り工具は、その押圧面部の少なくとも一部または全部が前記転造歯形面の頂部高さと略同一となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の転造工具。
  3. 前記面取り工具は、前記転造歯形面の歯底に向かって下降傾斜する1又は2以上の溝部の最下部が転造歯形面の歯底と略同一位置となるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の転造工具。
  4. 前記歯形用ダイスの転造歯形面には、被転造素材に食い付く食付き部と、被転造素材に転造される歯形の仕上げを行う仕上げ部と、被転造素材を仕上げ部から排出する逃げ部と、被転造素材を転造方向へ転動駆動する駆動部とが転造方向始端側から終端側へ向かって順次配設されており、
    前記面取り工具は、少なくとも前記転造歯形面の駆動部の一側に配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の転造工具。
  5. 前記面取り工具は、転造方向始端側から終端側へ向けて上昇傾斜して構成される面取り加工導入部と、その面取り加工導入部の転造方向後端側に配設され被転造素材の歯形の面取り加工の仕上げを行う面取り加工部とを少なくとも備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の転造工具。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の転造工具に使用されるものであることを特徴とする面取り工具。
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