JP2004061871A - 光デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】小型でアライメントが容易であり、光半導体素子とのアライメントによって、光アイソレータ4部の結合状態が変せず、且つ長期信頼性に優れた光デバイスS2を提供すること。
【解決手段】不図示の発光素子または受光素子である光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバ5を含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された後記する光ファイバ体の少なくとも一部を、その光軸を横切りコアレスファイバ5を分断する第1凹部7を形成したフェルール3内に設け、第1凹部7の底面に、分断されたコアレスファイバ5,5を光結合可能な光アイソレータやフィルタ等の光学素子を位置決めするための第2凹部33を設けた光デバイスS2とする。
【選択図】 図1
【解決手段】不図示の発光素子または受光素子である光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバ5を含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された後記する光ファイバ体の少なくとも一部を、その光軸を横切りコアレスファイバ5を分断する第1凹部7を形成したフェルール3内に設け、第1凹部7の底面に、分断されたコアレスファイバ5,5を光結合可能な光アイソレータやフィルタ等の光学素子を位置決めするための第2凹部33を設けた光デバイスS2とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信機器,センサー等に使用される光モジュールに搭載され、光モジュール外部からの反射戻り光を遮断する、光アイソレータと光学系を一体化した光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信の光源に用いられるレーザーダイオード(以下、LDともいう)は、出射した光がある箇所で反射し、再びLDの活性層に戻ると発振状態が乱れ、出射パワーの変動や波長ずれ等が生じ、これにより信号が劣化する。
【0003】
このような反射戻り光の問題を防止するために、通常、LDは光を一方向のみに透過させる光アイソレータと同じパッケージ内に搭載され、光モジュールの一種であるLDモジュールを構成している。
【0004】
特に、アナログ信号は上記反射戻り光によって劣化し易く、また、高密度な信号ほど反射戻り光の影響を受け易いため、CATV等のアナログ伝送データの増加、大容量化、高速化に伴い、光アイソレータは不可欠な構成要素となってきている。
【0005】
以下に、光アイソレータの一般的な動作について簡単に説明する。図7に示すように、光アイソレータ4は二つの偏光子19a、19bでファラデー回転子20を挟むようにして構成されている。このような構成において、順方向光22はそのまま透過し、逆方向光23は遮断される。なお、ファラデー回転子20は外部から磁界を印加することでファラデー効果を得るものと、自発磁化により外部磁界なしでファラデー効果を持つものがあるが、ここでは特に磁界を印加するための磁石は図示しないものとする。
【0006】
次に、従来のLDモジュールの一例について説明する。図8に示すように、LDモジュールJ1は、パッケージ18内に少なくともLD15、レンズ6a、6b、光アイソレータ4、シングルモードファイバ1の一端部等が収納されている。なお、図中16は受光素子(以下、PDともいう)、17はペルティエクーラー、32は光ファイバ余長部を保護するためのラバーブーツである。また、12は気密窓であり、パッケージ18内部の気密を損なうことなく光線を通す機能を有している。
【0007】
LD15から出射された光は、レンズ6aでコリメートされ光アイソレータ4を通過し、レンズ6bで集光されシングルモードファイバ1に入射される。全体は外部の環境から遮断するためパッケージ18に内蔵される。レンズ6a、6bにはボールレンズ、両凸レンズ、非球面レンズ、グレイデッドインデックスレンズ(以下GRINレンズという)等が用いられる。
【0008】
このような光モジュールJ1では、光アイソレータ4、レンズ6a、6b等は独立した部品として、それぞれが別々にホルダーに固定された後にアライメントされるので、部品点数が多く調整も煩雑で、大型化するといった問題があった。
【0009】
そこで、光モジュール全体を小型化し、アライメントを容易にするために、図9に示すように、ファイバスタブ型光デバイスS1が提案されている(例えば、特開2001−44553号公報を参照)。このファイバスタブ型光デバイスS1はフェルール3内にモードフィールド径が異なる複数の光ファイバを収容して成り、フェルール3にモードフィールド径が最大の光ファイバを2つに分断する凹部7を形成するともに、凹部7内に光アイソレータ4を配設したものである。
【0010】
フェルール3内に収容される光ファイバは、モードフィールド径10μmのシングルモードファイバ1a、モードフィールド径を10μmから40μmに拡大するレンズ効果をもったマルチモードファイバ2a、モードフィールド径40μmのコア拡大ファイバ10、マルチモードファイバ2b、シングルモードファイバ1bの順に融着され固定する。これにより、モードフィールド径を1:4に変換し、シングルモードファイバ1a,1bとコア拡大ファイバ10を高効率で結合する。フェルール端面から数百μm突出することになるが端面を研磨により成形する。
【0011】
このようなコア拡大ファイバは、焦点ずれ(光軸と平行方向でコア拡大ファイバどうしの距離に相当)のトレランスが大きいため、光ファイバどうしを離して、その間に光アイソレータ等の光学素子を設置しても結合損失が少ないという利点がある。
【0012】
また、このようなコア拡大ファイバは、一般的なシングルモード光ファイバを局所的に加熱して作られる。シングルモード光ファイバを加熱し、コアにドープされているGe等のドーパントを拡散させ、ドーパントの拡散領域を広くするとともに比屈折率差を小さくしている。コア拡大ファイバは、熱によるドーパントの拡散のため、コアの拡大と比屈折率差の低下が同時に起こり、自動的にr×(D)1/2が一定に保たれる。ここで、rは光ファイバのコアの半径、Dはコアとクラッドの比屈折率差、r×(D)1/2は規格化周波数に比例する量であり、これが一定ならばシングルモードのまま、モードフィールド径が拡大できる。
【0013】
図11にコア拡大ファイバを用いた光結合の特性を示す。横軸に光ファイバ間の距離(対向間隔(μm):コア拡大部に形成する凹部の幅)、縦軸に光の結合損失(dB)を示す。wはそれぞれのモードフィールド径(以下、MFDと記述)を示し、各曲線に対応する。なお、光の波長は光通信で一般に使われる1.31μmとし、凹部(ファイバ間)は空気(屈折率n=1)で満たされていることとした。MFDが10μmのコアを拡大していない場合は、ファイバ間距離が70μmで1dB以上の損失があるのに対し、MFDが40μmの場合は、ファイバ間が800μmでも損失が1dB以下であることがわかり、明らかに結合特性が改善されることがわかる。
【0014】
ここでマルチモードファイバとは、ファイバの中心軸から徐々に屈折率が下がるような軸対称の屈折率分布を持つ光ファイバであり、一般にはマルチモード伝送用に用いられている。ほとんどのマルチモードファイバはほぼ2乗の屈折率分布を持つ。この屈折率分布はGRINレンズと同様にレンズ効果をもつため、適当な屈折率分布のマルチモードファイバを適切な長さで用いれば結合光学系を構成することができる。また、マルチモードファイバの特性を示すパラメータとしては、クラッドとコア中心の屈折率差Δ、コア径D、収束パラメータAがある。
【0015】
さらに、マルチモードファイバ中の光線は図12に示すようなサインカーブの挙動を示すため、その長さをその光線挙動の周期に対応させてピッチ(P)で表す。図12の横軸はピッチを表し、縦軸はマルチモードファイバ内での光線の位置を示し、光が最も広がった個所を1として相対的に図示したものである。なおP=1はサインカーブの1周期(2π)に相当する。幾何光学的に点光源から入射した光がコリメート光といわれる条件になるのはP=0.25+0.5×mであり、再度、点に収束するのはP=0.5+0.5×m(mは整数)である。すなわち0.5Pごとに同一の挙動を示す。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の光モジュールJ1では部品点数が多く調整も煩雑で、大型化するといった問題があった。また、この点を改善するために提案された光デバイスS1では全体を小型に集約することが可能であり、予め光学的に調整された光ファイバの間に光アイソレータを挿入し、作製するため、アライメントが容易で工数が非常に少なく、これを用いた光モジュールも小型で、容易に構成できるという利点があった。
【0017】
しかし、光デバイスS1では、フェルール3に形成した凹部7に光アイソレータ4を接着剤8により固定しているため、光デバイスS1が使用される温度環境下において、接着剤8とフェルール3に形成した凹部7との界面、及び接着剤8と光学素子4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を著しく劣化し信頼性を損なう問題があった。
【0018】
剥離の発生は光アイソレータ4の光透過部とフェルール3内の凹部7との隙間の長さA、すなわち接着剤8の厚さに大きく依存し、厚さが大き過ぎると接着剤8の膨張、収縮による応力が原因で又、小さ過ぎると製造時に接着剤8中に発生する気泡が原因で剥離が生じる。
【0019】
光デバイスS1では、凹部7に光アイソレータ4を接着剤8により固定する際に凹部7の底面が平坦であるため光アイソレータ4の位置合わせが困難であり、結果として光アイソレータ4の光透過部と凹部7との隙間の長さAを最適値で組み立てることが困難となり剥離が生じる問題があった。
【0020】
そこで、小型化及びアライメントが容易であり、光半導体素子とのアライメントによって、光アイソレータ等の光学素子における結合状態が変化せず、且つ長期信頼性に優れた光デバイスを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑みて本発明の光デバイスは、光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバを含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された光ファイバ体を、該光ファイバ体の光軸を横切り前記コアレスファイバを分断する第1凹部を形成したフェルール内に設けるとともに、前記第1凹部の底面に、前記分断されたコアレスファイバどうしを光結合可能な光学素子を位置決めするための第2凹部を設けたことを特徴とする。なおここで、フェルール3内に設ける光ファイバ体はその少なくとも一部が収容されていればよいものとし、全ての光ファイバ体が収容されていなくともよいものとする。
【0022】
また特に、前記光ファイバ体は、前記光半導体素子を光結合させる側から前記第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むことを特徴とする。さらに。この構成において、前記マルチモードファイバの前記光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続したことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光デバイスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の光デバイスS2は、不図示の発光素子または受光素子である光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバ5を含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された後記する光ファイバ体の少なくとも一部を、その光軸を横切りコアレスファイバ5を分断する第1凹部7を形成したフェルール3内に設け、第1凹部7の底面に、分断されたコアレスファイバ5,5を光結合可能な光アイソレータやフィルタ等の光学素子を位置決めするための第2凹部33を設けたものである。
【0025】
また、上記構成において、前記光ファイバ体は、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部7までの間に、第1のマルチモードファイバ2a及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むことを特徴とする。さらに、この構成において、第1のマルチモードファイバ2aの光半導体素子を光結合させる側に第1のシングルモードファイバを接続したものである。
【0026】
すなわち、光デバイスS2は、まずフェルール3内に、第1のシングルモードファイバ1a、第1のマルチモードファイバ2a、コアを持たないコアレスファイバ5、第2のマルチモードファイバ2b、第2のシングルモードファイバ1bを順に縦列接続した光ファイバ体F1を収納し、フェルール3から突出した第1のシングルモードファイバ1aの一端は、光半導体素子と結合するために先球9に加工されており、他端は第2のシングルモードファイバ1bを一定長備えた形の所謂ピグテイル形状としている(図示せず)。そして、フェルール3内で分断されたコアレスファイバ5,5は第1凹部7の底面に形成された第2凹部33内に配設した光学素子(この実施形態では光イソレータ4)介して光接続させるようにしている。
【0027】
ここで、第2凹部の深さは、「光アイソレータ4の高さ−光アイソレータ4へ入射する光の有効径」以下として結合効率が低下しないようにしている。
【0028】
なお、上記コアレスファイバ5の分断前の長さは2つのマルチモードファイバによるビームスポットが中央で一致するように調整されている。また、光アイソレータ4は接着剤8で固定されている。
【0029】
具体的には、MFDが例えば10μmの第1のシングルモードファイバ1a、P(ピッチ)>0.25の第1のマルチモードファイバ2a、第2のマルチモードファイバ2bから出射される光のビームウエストとマルチモードファイバ2aの出射端面の距離をdとして、長さ2dのコアレスファイバ5、第1のマルチモードファイバ2aと同じ長さの第2のマルチモードファイバ2b、伝送用シングルモードファイバ1bを縦列に接続し、第1のシングルモードファイバ1aの先端を先球9に加工し光ファイバ体F1とした。さらに、例えば直径1.25mm,長さ12mm程度のフェルール3の貫通孔3aに光ファイバ体F1を挿入し固定する。さらにコアレスファイバ5の部分で貫通孔3aを横切るように第1凹部7を形成した後、凹部7の底面に第2凹部33を形成する。
【0030】
なお、第2のシングルモードファイバ1bはフェルール3の後端面3cが一致するように研摩されるか、そのままファイバの余長をもったピグテイル形状にされる。そして、この第1凹部7に、偏光子19a,19bとファラデー回転子20を一体成形後、切断して作製した光アイソレータ4を、屈折率をコアレスファイバ5に整合させた透光性の接着剤8で固定する。
【0031】
第1凹部7へ光アイソレータ4を固定する場合、図10に示すように、第1凹部7の底面が平坦であると光アイソレータ4の位置合わせが困難であり、結果として光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAを最適値で組み立てることが困難であった。
【0032】
また、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さ過ぎると、製造時に接着剤8中に発生する微小な気泡を完全に取り除くことが困難になり、温度環境が厳しい使用条件下では、接着剤8中に取り残された微小な気泡の熱膨張、収縮による応力が原因で接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を損ない、信頼性が劣る。
【0033】
一方、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが大き過ぎても、温度環境が厳しい使用条件下では接着剤8の熱膨張、収縮による応力が原因で接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を損ない、信頼性が劣る。
【0034】
しかし、図3に示すように、第1凹部7の底面に形成された第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定すれば、位置合わせが容易になると同時に位置調整時間の短縮もでき、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さを安定して最適値で組み立てることが可能であり、結果として、接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面の剥離を防止することが可能となる。
【0035】
なお、前述のようにここでは磁界印加手段は省略する。また、光アイソレータ4の表面は反射量0.2%以下の反射防止膜が形成されたものを使用するとよい。また、接着剤8にはエポキシ系のUVや、熱併用型接着剤(ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%)を用いるとよい。
【0036】
また、マルチモードファイバ端面に点光源があったときのコリメート条件はP=0.25であるが、実際に結合効率が最も高いのは、2つのマルチモードファイバからのビームウェストが一致する場合である。P=0.25ではビームウェストはちょうどマルチモードファイバの出射端面に位置することになり、マルチモードファイバ間に光学素子を挟む場合はビームウェストは一致しない。従って、マルチモードの出射端面から離れた位置にビームウェストを形成するためにはP>0.25の条件が必要になる。
【0037】
第1のシングルモードファイバ1aの先球部9から入った光は、第1のマルチモードファイバ2aによってビーム径を拡大され、コアレスファイバ5の中央でビームウェストをもつビームとなって光アイソレータ4を通過し、再びコアレスファイバ5内を通過し、第2のマルチモードファイバ2bによりビーム径を10μmに収束させられ第2のシングルモードファイバ1bに伝播する。この光デバイスS2は、後端においては第2のシングルモードファイバ1bを一定長備えた形の所謂ピグテイル形状としている(図示せず)。または、フェルール3の後端部を研磨して、フェルール3と同一形状で、中心部に伝送用のシングルモード光ファイバを保持したフェルールをもつコネクタと接続される構造にしても良い。
【0038】
本発明によれば、伝送路中に光学素子を挿入する構成であっても、ほぼアライメントフリーとなる。また、マルチモードファイバを用いているが、焦点距離はコアレスファイバ5の長さで調整済みで光ファイバ体組み立て時点で保証されており、素子実装後に調整する必要がない。これは工程の簡略化ばかりでなく、工程の初期段階で、即ち光学素子等を固定する前に結合効率の不具合が確認できるため、工程トータルの効率化と不良による損害を大幅に減らすことが可能になる。
【0039】
さらに加えて、−40℃から85℃までの温度範囲で安定した作動、保存が可能な信頼性の高い光デバイスとすることができる。
【0040】
さらに、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むので、レンズを用いずに簡便な構成で且つ光学特性が良好な光デバイスを提供できる。
【0041】
また、マルチモードファイバの光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続することにより、高価なマルチモードファイバの一部を安価なシングルモードファイバにすることができる上に、ファイバ長さの自由度を広げることができる。
【0042】
なお、ここでは光ファイバを分断する凹部内に特に光アイソレータを用いる例を示したが、波長板や波長フィルターといった他の光学素子でも適用できるのは言うまでもない。
【0043】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した実施例について説明する。
〔例1〕
以下のような実験を行ない、接着剤とフェルールに形成した凹部との界面及び、接着剤と光学素子との界面に発生する剥離の発生率と、光学素子の光透過部と前記第1凹部における隙間の長さとの関係について調査した。
【0044】
図1及び図2(a)〜(e)を用いて説明する。図2(a)に示すように、MFDが約10μmの石英系光ファイバである第1のシングルモードファイバ1aの先端に、Δ=0.85%、コア径が105μm、収束パラメータA=3.37×10−6μm−2、第1のマルチモードファイバ2aとなるマルチモードファイバを放電加工により融着し、P=0.258(653μm)になるようにマルチモードファイバを切断し第1のマルチモードファイバ2aを得た。
【0045】
周囲の媒質がn=1.46(コアレスファイバ5の屈折率に相当)であれば、第1のマルチモードファイバ2aの端面から、この第1のマルチモードファイバ2aで形成される出射光のビームウェストまでの距離は550μmとなる。
【0046】
次に、図2(b)に示すように、n=1.46の屈折率をもつコアレスファイバ5を第1のマルチモードファイバ2aに放電加工により融着し、1100μmの長さで切断した。次いで、図2(c)に示すように、第1のマルチモードファイバ2aと同じ第2のマルチモードファイバ2b、第2のシングルモードファイバ1bをこの順に融着接続し、最後に、図2(d)に示すように、第1のシングルモードファイバ1aの一端に放電加工によりR=12μmの先球部9を形成した。
【0047】
次に、図2(e)に示すように、直径1.25mm,長さ12mmのジルコニアフェルール3の貫通孔3aに挿入固定した。固定にはエポキシテクノロジー社製熱硬化型エポキシ接着剤エポテック353NDを用いた。さらに、コアレスファイバ5の部分で貫通孔3aを横切るように第1凹部7を形成した後、凹部7の底面に凹部33を形成した。なお、この加工にはDISCO製ダイサーブレードSDC320R10MB01を用いた。
【0048】
そして、図1に示すように、この第1凹部7内において、偏光子19a,19b,ファラデー回転子20を一体成形後、切断して作製した光アイソレータ4を接着剤8で第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定した。接着剤8としてエポキシ系UV、熱硬化併用型接着剤、ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%を用いた。接着剤8の硬化前に100Torr以下で10分、真空吸引し、10分常圧放置して脱泡を行った。その後UV光を300mW/cm2の強度で20秒照射し、90℃3時間の熱硬化を施した。
【0049】
光アイソレータ4は、偏光子19a,19b(厚さ200μm、屈折率1.5)、ファラデー回転子20(磁性ガーネット、厚さ310μm、屈折率2.2)から成り、各々の光透過面は反射防止膜を形成した後に、エポキシ系の透光性の接着剤(例えばエポキシテクノロジー社製熱硬化型接着剤エポテック353ND)で接合されている。なお、光アイソレータ4は10mm角以上の大型の素子で一括アライメントを行い接着した後に、400μm角に切断されている。厚さは710μmとなる。また、ここでは自発磁化型のガーネットを用いるため磁石は不要とした。
【0050】
ここで、光アイソレータ4を第1凹部7内に接着剤8で固定するにあたり、第1凹部7の底面の第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定した。また、第1凹部7の寸法を変えることによって光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.01mm、0.03mm、0.05mm、0.07mm、0.09mm、0.15mm、0.20mm、0.30mm、0.35mm、0.40mmの10種類のサンプルを各々11サンプル作製し、温度サイクル試験へ投入し試験中の接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に発生する剥離の発生率を評価した。尚、試験条件は1サイクル当たり−40℃30分、85℃30分、温度変化時間5分の計70分であり500サイクルまで実施した。
【0051】
図5に温度サイクル試験10サイクル後の結果を示す。この結果より、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満のサンプルでは剥離が発生し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さくなるほど剥離発生率が高くなっている。これは光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満では、脱泡処理を実施しても製造時に接着剤8中に発生する気泡を完全に取り除くことが不可能なため、取り残された微小な気泡の熱膨張、収縮による応力が原因で剥離が生じたためである。気泡の熱膨張係数はフェルール3及び、接着剤8の熱膨張係数に比べ格段に大きいため、接着剤8中に気泡が取り残されると、この結果のように温度サイクル試験の10サイクル以下という短い試験期間でも剥離が発生する傾向がある。
【0052】
これに対し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm以上では、温度サイクル試験10サイクル後では剥離の発生率は0であった。
【0053】
また、図6に温度サイクル試験500サイクル後の結果を示す。この結果より光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満及び、0.30mmを超えるサンプルでは剥離発生率が高くなっている。これは光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満では前述の通り接着剤8中に取り残された気泡が原因であるが、0.30mmを超えるサンプルでは接着剤8の厚みが大きくなったことにより、試験中の接着剤8の熱膨張、収縮による応力が接着力を上回ったことが原因で剥離が生じたためである。また、接着剤8の厚さが大きくなると、熱膨張係数は一定でも膨張、収縮の絶対量は大きくなり、結果として接着界面に働く応力が大きくなったためである。
【0054】
これに対し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm〜0.30mmのサンプルでは温度サイクル試験500サイクル後では剥離の発生率は0であった。
【0055】
以上の結果から考察すると、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAの最適値は接着剤8の特性値及び、脱泡条件に依存し一定ではないと考えられるが、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さ過ぎると製造時に接着剤8中に発生する気泡が原因で、また、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが大き過ぎると接着剤8の熱膨張、収縮による応力が原因で、接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ光学特性を損なうことは明確になった。
【0056】
よって、接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面の剥離による光学特性の劣化を防止するため、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが安定して最適値になるように、光アイソレータ4を第1凹部7に固定する必要がある。
【0057】
なお、本発明の光デバイスS2においては、LDモジュールに実装する際に、LD側のコア拡大ファイバの端面は、反射を防ぎ結合効率も同時に向上させるため先球部9としているが、光モジュールの設計によっては、レンズを設けても良い。
〔例2〕
次に、光ファイバ体を前記例1とは別の光ファイバを用いて構成した例を示す。図4に基づいて説明する。光ファイバ体は長さ7900μmの第1のマルチモードファイバ2a、1600μmのコアレスファイバ5、781μmの第2のマルチモードファイバ2b、シングルモードファイバ1bを縦列に接続してなる。なお、第2のマルチモードファイバ2bはP=0.275にすることによりコアレスファイバ長1600μmを可能にしている。第1のマルチモードファイバ2aは約2.5ピッチ+0.275ピッチになっており、先球9は半径20μmの曲面を放電加工にて形成している。なお、前述したように、マルチモードファイバは0.5ピッチ毎に同様の集光特性を示すため、本実施例ではP=0.275のマルチモードファイバでコアレスファイバを挟んだものと等しくなっている。丁度2.5ピッチの差になっていないのは、シングルモードファイバ無しに先球が存在するため、補正されているからである。
【0058】
このようにして形成した光ファイバ体をフェルール3に挿入固定し、コアレスファイバ5を分断するように凹部7を形成し、その後、偏光子19a、19bとファラデー回転子20からなる光アイソレータ4を接着剤8で光アイソレータ4の下部が凹部7の底面の凹部33内に収まるように位置を合わせ固定する。接着剤8としてエポキシ系UV、熱硬化併用型接着剤、ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%を用いた。接着剤8の硬化前に100Torr以下で10分、真空吸引し、10分常圧放置して脱泡を行った。その後UV光を300mW/cm2の強度で20秒照射し、90℃3時間の熱硬化を施し、光デバイスS3とした。
【0059】
かくして、本実施例では、先球9をシングルモードファイバを用いずに直接形成したので、シングルモードファイバとマルチモードファイバの融着点が1点減少し、工数や部品点数が減るばかりか融着を原因とする不良率を下げることが可能になった。また、温度サイクル等の外部環境に対する信頼性は例1と同様優れたものとすることができた。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の光デバイスよれば、以下の顕著な効果を奏することができる。
【0061】
請求項1の光デバイスは、光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバを含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された光ファイバ体を、その光軸を横切りコアレスファイバを分断する第1凹部を形成したフェルール内に設けるとともに、第1凹部の底面に、分断されたコアレスファイバどうしを光結合可能な光学素子を位置決めするための第2凹部を設けたので、小型化が図れるとともに、第2凹部内に光学素子の下部が収まるように位置合わせ固定でき、その位置調整時間の短縮が実現され、安定した特性を有する優れた光デバイスを迅速かつ容易に製造可能となる。また、光学素子の光透過部と第1凹部との隙間の長さを安定して最適値で組み立てることが可能であり、結果として、信頼性に優れた光モジュールを提供できる。
【0062】
また、請求項2の光デバイスは、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むので、レンズを用いずに簡便な構成で且つ光学特性が良好な光デバイスを提供できる。
【0063】
さらに、請求項3の光デバイスは、マルチモードファイバの光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続したので、高価なマルチモードファイバの一部を安価なシングルモードファイバにすることができる上に、ファイバ長さの自由度を広げることができる。
【0064】
さらにまた、本発明の光デバイスは以下の優れた効果も期待できる。
【0065】
基本となる光ファイバ体は、マルチモードファイバとコアレスファイバの接続部の調整のみでよく、調整軸が少なく組み立てが容易である。
【0066】
マルチモードファイバとマルチモードファイバに挟まれるコアレスファイバは焦点距離調節と軸ずれ防止、組み立ての簡易化の役割をもつ。もともと一本のファイバなのでこれを分断したものは軸ずれは原理的に発生しない。
【0067】
コアレスファイバの長さによって予め焦点位置が精密に決定されている。フェルールの細孔の両端から挿入する場合の細孔内で調整するというような煩雑な作業が不要である。
【0068】
光ファイバ体に光学素子を挿入する場合は、コアレスファイバ部に形成した凹部に挿入するが、この凹部位置はコアレスファイバの範囲でさえあれば、ずれても全く問題が生じないため極めて作製しやすい。光アイソレータの挿入はほぼアライメントフリーで行うことができる。
【0069】
そして、以上のような作製上、光学的な利点に加え、光ファイバ体をフェルールに収納したため安定性が高く、前記凹部の底面に凹部を設けた構造にすることによりさらに長期信頼性に優れた光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光デバイスS2を模式的に説明する断面図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明に係る光デバイスの作製工程を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明に係る光デバイスS2の凹部近傍を拡大した断面図である。
【図4】本発明に係る光デバイスS3の実施例を示す断面図である。
【図5】光学素子の光透過部とフェルール内凹部との隙間と温度サイクル試験10サイクル後の剥離発生率の関係を説明するためのグラフである。
【図6】光学素子の光透過部とフェルール内凹部との隙間と温度サイクル試験500サイクル後の剥離発生率の関係を説明するためのグラフである。
【図7】光アイソレータの動作を模式的に示す斜視図である。
【図8】従来の光モジュールを説明する一部断面図である。
【図9】従来の光デバイスS1を模式的に示す断面図である。
【図10】従来の光デバイスS1における凹部近傍を拡大した断面図である。
【図11】コア拡大ファイバの結合間隔と結合損失の関係を示すグラフである。
【図12】マルチモードファイバ内の光の挙動を説明する模式図である。
【符号の説明】
1:シングルモードファイバ
1a:第1のシングルモードファイバ
1b:第2のシングルモードファイバ
2a:第1のマルチモードファイバ
2b:第2のマルチモードファイバ
3:フェルール
4:光学素子(光アイソレータ)
5:コアレスファイバ
6a,6b:レンズ
7:凹部(第1凹部)
8:接着剤
9:先球
10:コア拡大ファイバ
11:耐湿接着剤
12:気密窓
15:LD(発光素子)
16:PD(受光素子)
17:ペルティエクーラー
18:パッケージ
19a,19b:偏光子
20:ファラデー回転子
22:順方向入射光
23:逆方向入射光
32:ラバーブーツ
33:フェルール内凹部7の底面に形成された凹部(第2凹部)
A :光学素子の光透過部とフェルール内凹部7との隙間の長さ
J1:光モジュール
S1、S2、S3:光デバイス
F1:光ファイバ体
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信機器,センサー等に使用される光モジュールに搭載され、光モジュール外部からの反射戻り光を遮断する、光アイソレータと光学系を一体化した光デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信の光源に用いられるレーザーダイオード(以下、LDともいう)は、出射した光がある箇所で反射し、再びLDの活性層に戻ると発振状態が乱れ、出射パワーの変動や波長ずれ等が生じ、これにより信号が劣化する。
【0003】
このような反射戻り光の問題を防止するために、通常、LDは光を一方向のみに透過させる光アイソレータと同じパッケージ内に搭載され、光モジュールの一種であるLDモジュールを構成している。
【0004】
特に、アナログ信号は上記反射戻り光によって劣化し易く、また、高密度な信号ほど反射戻り光の影響を受け易いため、CATV等のアナログ伝送データの増加、大容量化、高速化に伴い、光アイソレータは不可欠な構成要素となってきている。
【0005】
以下に、光アイソレータの一般的な動作について簡単に説明する。図7に示すように、光アイソレータ4は二つの偏光子19a、19bでファラデー回転子20を挟むようにして構成されている。このような構成において、順方向光22はそのまま透過し、逆方向光23は遮断される。なお、ファラデー回転子20は外部から磁界を印加することでファラデー効果を得るものと、自発磁化により外部磁界なしでファラデー効果を持つものがあるが、ここでは特に磁界を印加するための磁石は図示しないものとする。
【0006】
次に、従来のLDモジュールの一例について説明する。図8に示すように、LDモジュールJ1は、パッケージ18内に少なくともLD15、レンズ6a、6b、光アイソレータ4、シングルモードファイバ1の一端部等が収納されている。なお、図中16は受光素子(以下、PDともいう)、17はペルティエクーラー、32は光ファイバ余長部を保護するためのラバーブーツである。また、12は気密窓であり、パッケージ18内部の気密を損なうことなく光線を通す機能を有している。
【0007】
LD15から出射された光は、レンズ6aでコリメートされ光アイソレータ4を通過し、レンズ6bで集光されシングルモードファイバ1に入射される。全体は外部の環境から遮断するためパッケージ18に内蔵される。レンズ6a、6bにはボールレンズ、両凸レンズ、非球面レンズ、グレイデッドインデックスレンズ(以下GRINレンズという)等が用いられる。
【0008】
このような光モジュールJ1では、光アイソレータ4、レンズ6a、6b等は独立した部品として、それぞれが別々にホルダーに固定された後にアライメントされるので、部品点数が多く調整も煩雑で、大型化するといった問題があった。
【0009】
そこで、光モジュール全体を小型化し、アライメントを容易にするために、図9に示すように、ファイバスタブ型光デバイスS1が提案されている(例えば、特開2001−44553号公報を参照)。このファイバスタブ型光デバイスS1はフェルール3内にモードフィールド径が異なる複数の光ファイバを収容して成り、フェルール3にモードフィールド径が最大の光ファイバを2つに分断する凹部7を形成するともに、凹部7内に光アイソレータ4を配設したものである。
【0010】
フェルール3内に収容される光ファイバは、モードフィールド径10μmのシングルモードファイバ1a、モードフィールド径を10μmから40μmに拡大するレンズ効果をもったマルチモードファイバ2a、モードフィールド径40μmのコア拡大ファイバ10、マルチモードファイバ2b、シングルモードファイバ1bの順に融着され固定する。これにより、モードフィールド径を1:4に変換し、シングルモードファイバ1a,1bとコア拡大ファイバ10を高効率で結合する。フェルール端面から数百μm突出することになるが端面を研磨により成形する。
【0011】
このようなコア拡大ファイバは、焦点ずれ(光軸と平行方向でコア拡大ファイバどうしの距離に相当)のトレランスが大きいため、光ファイバどうしを離して、その間に光アイソレータ等の光学素子を設置しても結合損失が少ないという利点がある。
【0012】
また、このようなコア拡大ファイバは、一般的なシングルモード光ファイバを局所的に加熱して作られる。シングルモード光ファイバを加熱し、コアにドープされているGe等のドーパントを拡散させ、ドーパントの拡散領域を広くするとともに比屈折率差を小さくしている。コア拡大ファイバは、熱によるドーパントの拡散のため、コアの拡大と比屈折率差の低下が同時に起こり、自動的にr×(D)1/2が一定に保たれる。ここで、rは光ファイバのコアの半径、Dはコアとクラッドの比屈折率差、r×(D)1/2は規格化周波数に比例する量であり、これが一定ならばシングルモードのまま、モードフィールド径が拡大できる。
【0013】
図11にコア拡大ファイバを用いた光結合の特性を示す。横軸に光ファイバ間の距離(対向間隔(μm):コア拡大部に形成する凹部の幅)、縦軸に光の結合損失(dB)を示す。wはそれぞれのモードフィールド径(以下、MFDと記述)を示し、各曲線に対応する。なお、光の波長は光通信で一般に使われる1.31μmとし、凹部(ファイバ間)は空気(屈折率n=1)で満たされていることとした。MFDが10μmのコアを拡大していない場合は、ファイバ間距離が70μmで1dB以上の損失があるのに対し、MFDが40μmの場合は、ファイバ間が800μmでも損失が1dB以下であることがわかり、明らかに結合特性が改善されることがわかる。
【0014】
ここでマルチモードファイバとは、ファイバの中心軸から徐々に屈折率が下がるような軸対称の屈折率分布を持つ光ファイバであり、一般にはマルチモード伝送用に用いられている。ほとんどのマルチモードファイバはほぼ2乗の屈折率分布を持つ。この屈折率分布はGRINレンズと同様にレンズ効果をもつため、適当な屈折率分布のマルチモードファイバを適切な長さで用いれば結合光学系を構成することができる。また、マルチモードファイバの特性を示すパラメータとしては、クラッドとコア中心の屈折率差Δ、コア径D、収束パラメータAがある。
【0015】
さらに、マルチモードファイバ中の光線は図12に示すようなサインカーブの挙動を示すため、その長さをその光線挙動の周期に対応させてピッチ(P)で表す。図12の横軸はピッチを表し、縦軸はマルチモードファイバ内での光線の位置を示し、光が最も広がった個所を1として相対的に図示したものである。なおP=1はサインカーブの1周期(2π)に相当する。幾何光学的に点光源から入射した光がコリメート光といわれる条件になるのはP=0.25+0.5×mであり、再度、点に収束するのはP=0.5+0.5×m(mは整数)である。すなわち0.5Pごとに同一の挙動を示す。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の光モジュールJ1では部品点数が多く調整も煩雑で、大型化するといった問題があった。また、この点を改善するために提案された光デバイスS1では全体を小型に集約することが可能であり、予め光学的に調整された光ファイバの間に光アイソレータを挿入し、作製するため、アライメントが容易で工数が非常に少なく、これを用いた光モジュールも小型で、容易に構成できるという利点があった。
【0017】
しかし、光デバイスS1では、フェルール3に形成した凹部7に光アイソレータ4を接着剤8により固定しているため、光デバイスS1が使用される温度環境下において、接着剤8とフェルール3に形成した凹部7との界面、及び接着剤8と光学素子4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を著しく劣化し信頼性を損なう問題があった。
【0018】
剥離の発生は光アイソレータ4の光透過部とフェルール3内の凹部7との隙間の長さA、すなわち接着剤8の厚さに大きく依存し、厚さが大き過ぎると接着剤8の膨張、収縮による応力が原因で又、小さ過ぎると製造時に接着剤8中に発生する気泡が原因で剥離が生じる。
【0019】
光デバイスS1では、凹部7に光アイソレータ4を接着剤8により固定する際に凹部7の底面が平坦であるため光アイソレータ4の位置合わせが困難であり、結果として光アイソレータ4の光透過部と凹部7との隙間の長さAを最適値で組み立てることが困難となり剥離が生じる問題があった。
【0020】
そこで、小型化及びアライメントが容易であり、光半導体素子とのアライメントによって、光アイソレータ等の光学素子における結合状態が変化せず、且つ長期信頼性に優れた光デバイスを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑みて本発明の光デバイスは、光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバを含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された光ファイバ体を、該光ファイバ体の光軸を横切り前記コアレスファイバを分断する第1凹部を形成したフェルール内に設けるとともに、前記第1凹部の底面に、前記分断されたコアレスファイバどうしを光結合可能な光学素子を位置決めするための第2凹部を設けたことを特徴とする。なおここで、フェルール3内に設ける光ファイバ体はその少なくとも一部が収容されていればよいものとし、全ての光ファイバ体が収容されていなくともよいものとする。
【0022】
また特に、前記光ファイバ体は、前記光半導体素子を光結合させる側から前記第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むことを特徴とする。さらに。この構成において、前記マルチモードファイバの前記光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続したことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光デバイスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の光デバイスS2は、不図示の発光素子または受光素子である光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバ5を含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された後記する光ファイバ体の少なくとも一部を、その光軸を横切りコアレスファイバ5を分断する第1凹部7を形成したフェルール3内に設け、第1凹部7の底面に、分断されたコアレスファイバ5,5を光結合可能な光アイソレータやフィルタ等の光学素子を位置決めするための第2凹部33を設けたものである。
【0025】
また、上記構成において、前記光ファイバ体は、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部7までの間に、第1のマルチモードファイバ2a及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むことを特徴とする。さらに、この構成において、第1のマルチモードファイバ2aの光半導体素子を光結合させる側に第1のシングルモードファイバを接続したものである。
【0026】
すなわち、光デバイスS2は、まずフェルール3内に、第1のシングルモードファイバ1a、第1のマルチモードファイバ2a、コアを持たないコアレスファイバ5、第2のマルチモードファイバ2b、第2のシングルモードファイバ1bを順に縦列接続した光ファイバ体F1を収納し、フェルール3から突出した第1のシングルモードファイバ1aの一端は、光半導体素子と結合するために先球9に加工されており、他端は第2のシングルモードファイバ1bを一定長備えた形の所謂ピグテイル形状としている(図示せず)。そして、フェルール3内で分断されたコアレスファイバ5,5は第1凹部7の底面に形成された第2凹部33内に配設した光学素子(この実施形態では光イソレータ4)介して光接続させるようにしている。
【0027】
ここで、第2凹部の深さは、「光アイソレータ4の高さ−光アイソレータ4へ入射する光の有効径」以下として結合効率が低下しないようにしている。
【0028】
なお、上記コアレスファイバ5の分断前の長さは2つのマルチモードファイバによるビームスポットが中央で一致するように調整されている。また、光アイソレータ4は接着剤8で固定されている。
【0029】
具体的には、MFDが例えば10μmの第1のシングルモードファイバ1a、P(ピッチ)>0.25の第1のマルチモードファイバ2a、第2のマルチモードファイバ2bから出射される光のビームウエストとマルチモードファイバ2aの出射端面の距離をdとして、長さ2dのコアレスファイバ5、第1のマルチモードファイバ2aと同じ長さの第2のマルチモードファイバ2b、伝送用シングルモードファイバ1bを縦列に接続し、第1のシングルモードファイバ1aの先端を先球9に加工し光ファイバ体F1とした。さらに、例えば直径1.25mm,長さ12mm程度のフェルール3の貫通孔3aに光ファイバ体F1を挿入し固定する。さらにコアレスファイバ5の部分で貫通孔3aを横切るように第1凹部7を形成した後、凹部7の底面に第2凹部33を形成する。
【0030】
なお、第2のシングルモードファイバ1bはフェルール3の後端面3cが一致するように研摩されるか、そのままファイバの余長をもったピグテイル形状にされる。そして、この第1凹部7に、偏光子19a,19bとファラデー回転子20を一体成形後、切断して作製した光アイソレータ4を、屈折率をコアレスファイバ5に整合させた透光性の接着剤8で固定する。
【0031】
第1凹部7へ光アイソレータ4を固定する場合、図10に示すように、第1凹部7の底面が平坦であると光アイソレータ4の位置合わせが困難であり、結果として光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAを最適値で組み立てることが困難であった。
【0032】
また、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さ過ぎると、製造時に接着剤8中に発生する微小な気泡を完全に取り除くことが困難になり、温度環境が厳しい使用条件下では、接着剤8中に取り残された微小な気泡の熱膨張、収縮による応力が原因で接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を損ない、信頼性が劣る。
【0033】
一方、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが大き過ぎても、温度環境が厳しい使用条件下では接着剤8の熱膨張、収縮による応力が原因で接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ、結果として光学特性を損ない、信頼性が劣る。
【0034】
しかし、図3に示すように、第1凹部7の底面に形成された第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定すれば、位置合わせが容易になると同時に位置調整時間の短縮もでき、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さを安定して最適値で組み立てることが可能であり、結果として、接着剤8とフェルール3に形成した第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面の剥離を防止することが可能となる。
【0035】
なお、前述のようにここでは磁界印加手段は省略する。また、光アイソレータ4の表面は反射量0.2%以下の反射防止膜が形成されたものを使用するとよい。また、接着剤8にはエポキシ系のUVや、熱併用型接着剤(ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%)を用いるとよい。
【0036】
また、マルチモードファイバ端面に点光源があったときのコリメート条件はP=0.25であるが、実際に結合効率が最も高いのは、2つのマルチモードファイバからのビームウェストが一致する場合である。P=0.25ではビームウェストはちょうどマルチモードファイバの出射端面に位置することになり、マルチモードファイバ間に光学素子を挟む場合はビームウェストは一致しない。従って、マルチモードの出射端面から離れた位置にビームウェストを形成するためにはP>0.25の条件が必要になる。
【0037】
第1のシングルモードファイバ1aの先球部9から入った光は、第1のマルチモードファイバ2aによってビーム径を拡大され、コアレスファイバ5の中央でビームウェストをもつビームとなって光アイソレータ4を通過し、再びコアレスファイバ5内を通過し、第2のマルチモードファイバ2bによりビーム径を10μmに収束させられ第2のシングルモードファイバ1bに伝播する。この光デバイスS2は、後端においては第2のシングルモードファイバ1bを一定長備えた形の所謂ピグテイル形状としている(図示せず)。または、フェルール3の後端部を研磨して、フェルール3と同一形状で、中心部に伝送用のシングルモード光ファイバを保持したフェルールをもつコネクタと接続される構造にしても良い。
【0038】
本発明によれば、伝送路中に光学素子を挿入する構成であっても、ほぼアライメントフリーとなる。また、マルチモードファイバを用いているが、焦点距離はコアレスファイバ5の長さで調整済みで光ファイバ体組み立て時点で保証されており、素子実装後に調整する必要がない。これは工程の簡略化ばかりでなく、工程の初期段階で、即ち光学素子等を固定する前に結合効率の不具合が確認できるため、工程トータルの効率化と不良による損害を大幅に減らすことが可能になる。
【0039】
さらに加えて、−40℃から85℃までの温度範囲で安定した作動、保存が可能な信頼性の高い光デバイスとすることができる。
【0040】
さらに、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むので、レンズを用いずに簡便な構成で且つ光学特性が良好な光デバイスを提供できる。
【0041】
また、マルチモードファイバの光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続することにより、高価なマルチモードファイバの一部を安価なシングルモードファイバにすることができる上に、ファイバ長さの自由度を広げることができる。
【0042】
なお、ここでは光ファイバを分断する凹部内に特に光アイソレータを用いる例を示したが、波長板や波長フィルターといった他の光学素子でも適用できるのは言うまでもない。
【0043】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した実施例について説明する。
〔例1〕
以下のような実験を行ない、接着剤とフェルールに形成した凹部との界面及び、接着剤と光学素子との界面に発生する剥離の発生率と、光学素子の光透過部と前記第1凹部における隙間の長さとの関係について調査した。
【0044】
図1及び図2(a)〜(e)を用いて説明する。図2(a)に示すように、MFDが約10μmの石英系光ファイバである第1のシングルモードファイバ1aの先端に、Δ=0.85%、コア径が105μm、収束パラメータA=3.37×10−6μm−2、第1のマルチモードファイバ2aとなるマルチモードファイバを放電加工により融着し、P=0.258(653μm)になるようにマルチモードファイバを切断し第1のマルチモードファイバ2aを得た。
【0045】
周囲の媒質がn=1.46(コアレスファイバ5の屈折率に相当)であれば、第1のマルチモードファイバ2aの端面から、この第1のマルチモードファイバ2aで形成される出射光のビームウェストまでの距離は550μmとなる。
【0046】
次に、図2(b)に示すように、n=1.46の屈折率をもつコアレスファイバ5を第1のマルチモードファイバ2aに放電加工により融着し、1100μmの長さで切断した。次いで、図2(c)に示すように、第1のマルチモードファイバ2aと同じ第2のマルチモードファイバ2b、第2のシングルモードファイバ1bをこの順に融着接続し、最後に、図2(d)に示すように、第1のシングルモードファイバ1aの一端に放電加工によりR=12μmの先球部9を形成した。
【0047】
次に、図2(e)に示すように、直径1.25mm,長さ12mmのジルコニアフェルール3の貫通孔3aに挿入固定した。固定にはエポキシテクノロジー社製熱硬化型エポキシ接着剤エポテック353NDを用いた。さらに、コアレスファイバ5の部分で貫通孔3aを横切るように第1凹部7を形成した後、凹部7の底面に凹部33を形成した。なお、この加工にはDISCO製ダイサーブレードSDC320R10MB01を用いた。
【0048】
そして、図1に示すように、この第1凹部7内において、偏光子19a,19b,ファラデー回転子20を一体成形後、切断して作製した光アイソレータ4を接着剤8で第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定した。接着剤8としてエポキシ系UV、熱硬化併用型接着剤、ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%を用いた。接着剤8の硬化前に100Torr以下で10分、真空吸引し、10分常圧放置して脱泡を行った。その後UV光を300mW/cm2の強度で20秒照射し、90℃3時間の熱硬化を施した。
【0049】
光アイソレータ4は、偏光子19a,19b(厚さ200μm、屈折率1.5)、ファラデー回転子20(磁性ガーネット、厚さ310μm、屈折率2.2)から成り、各々の光透過面は反射防止膜を形成した後に、エポキシ系の透光性の接着剤(例えばエポキシテクノロジー社製熱硬化型接着剤エポテック353ND)で接合されている。なお、光アイソレータ4は10mm角以上の大型の素子で一括アライメントを行い接着した後に、400μm角に切断されている。厚さは710μmとなる。また、ここでは自発磁化型のガーネットを用いるため磁石は不要とした。
【0050】
ここで、光アイソレータ4を第1凹部7内に接着剤8で固定するにあたり、第1凹部7の底面の第2凹部33内に光アイソレータ4の下部が収まるように位置を合わせ固定した。また、第1凹部7の寸法を変えることによって光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.01mm、0.03mm、0.05mm、0.07mm、0.09mm、0.15mm、0.20mm、0.30mm、0.35mm、0.40mmの10種類のサンプルを各々11サンプル作製し、温度サイクル試験へ投入し試験中の接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に発生する剥離の発生率を評価した。尚、試験条件は1サイクル当たり−40℃30分、85℃30分、温度変化時間5分の計70分であり500サイクルまで実施した。
【0051】
図5に温度サイクル試験10サイクル後の結果を示す。この結果より、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満のサンプルでは剥離が発生し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さくなるほど剥離発生率が高くなっている。これは光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満では、脱泡処理を実施しても製造時に接着剤8中に発生する気泡を完全に取り除くことが不可能なため、取り残された微小な気泡の熱膨張、収縮による応力が原因で剥離が生じたためである。気泡の熱膨張係数はフェルール3及び、接着剤8の熱膨張係数に比べ格段に大きいため、接着剤8中に気泡が取り残されると、この結果のように温度サイクル試験の10サイクル以下という短い試験期間でも剥離が発生する傾向がある。
【0052】
これに対し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm以上では、温度サイクル試験10サイクル後では剥離の発生率は0であった。
【0053】
また、図6に温度サイクル試験500サイクル後の結果を示す。この結果より光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満及び、0.30mmを超えるサンプルでは剥離発生率が高くなっている。これは光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm未満では前述の通り接着剤8中に取り残された気泡が原因であるが、0.30mmを超えるサンプルでは接着剤8の厚みが大きくなったことにより、試験中の接着剤8の熱膨張、収縮による応力が接着力を上回ったことが原因で剥離が生じたためである。また、接着剤8の厚さが大きくなると、熱膨張係数は一定でも膨張、収縮の絶対量は大きくなり、結果として接着界面に働く応力が大きくなったためである。
【0054】
これに対し、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが0.07mm〜0.30mmのサンプルでは温度サイクル試験500サイクル後では剥離の発生率は0であった。
【0055】
以上の結果から考察すると、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAの最適値は接着剤8の特性値及び、脱泡条件に依存し一定ではないと考えられるが、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが小さ過ぎると製造時に接着剤8中に発生する気泡が原因で、また、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが大き過ぎると接着剤8の熱膨張、収縮による応力が原因で、接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面に剥離が生じ光学特性を損なうことは明確になった。
【0056】
よって、接着剤8と第1凹部7との界面、及び接着剤8と光アイソレータ4との界面の剥離による光学特性の劣化を防止するため、光アイソレータ4の光透過部と第1凹部7との隙間の長さAが安定して最適値になるように、光アイソレータ4を第1凹部7に固定する必要がある。
【0057】
なお、本発明の光デバイスS2においては、LDモジュールに実装する際に、LD側のコア拡大ファイバの端面は、反射を防ぎ結合効率も同時に向上させるため先球部9としているが、光モジュールの設計によっては、レンズを設けても良い。
〔例2〕
次に、光ファイバ体を前記例1とは別の光ファイバを用いて構成した例を示す。図4に基づいて説明する。光ファイバ体は長さ7900μmの第1のマルチモードファイバ2a、1600μmのコアレスファイバ5、781μmの第2のマルチモードファイバ2b、シングルモードファイバ1bを縦列に接続してなる。なお、第2のマルチモードファイバ2bはP=0.275にすることによりコアレスファイバ長1600μmを可能にしている。第1のマルチモードファイバ2aは約2.5ピッチ+0.275ピッチになっており、先球9は半径20μmの曲面を放電加工にて形成している。なお、前述したように、マルチモードファイバは0.5ピッチ毎に同様の集光特性を示すため、本実施例ではP=0.275のマルチモードファイバでコアレスファイバを挟んだものと等しくなっている。丁度2.5ピッチの差になっていないのは、シングルモードファイバ無しに先球が存在するため、補正されているからである。
【0058】
このようにして形成した光ファイバ体をフェルール3に挿入固定し、コアレスファイバ5を分断するように凹部7を形成し、その後、偏光子19a、19bとファラデー回転子20からなる光アイソレータ4を接着剤8で光アイソレータ4の下部が凹部7の底面の凹部33内に収まるように位置を合わせ固定する。接着剤8としてエポキシ系UV、熱硬化併用型接着剤、ガラス転移点温度−63.9℃、ショア硬度29、硬化収縮率1.2%を用いた。接着剤8の硬化前に100Torr以下で10分、真空吸引し、10分常圧放置して脱泡を行った。その後UV光を300mW/cm2の強度で20秒照射し、90℃3時間の熱硬化を施し、光デバイスS3とした。
【0059】
かくして、本実施例では、先球9をシングルモードファイバを用いずに直接形成したので、シングルモードファイバとマルチモードファイバの融着点が1点減少し、工数や部品点数が減るばかりか融着を原因とする不良率を下げることが可能になった。また、温度サイクル等の外部環境に対する信頼性は例1と同様優れたものとすることができた。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の光デバイスよれば、以下の顕著な効果を奏することができる。
【0061】
請求項1の光デバイスは、光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバを含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された光ファイバ体を、その光軸を横切りコアレスファイバを分断する第1凹部を形成したフェルール内に設けるとともに、第1凹部の底面に、分断されたコアレスファイバどうしを光結合可能な光学素子を位置決めするための第2凹部を設けたので、小型化が図れるとともに、第2凹部内に光学素子の下部が収まるように位置合わせ固定でき、その位置調整時間の短縮が実現され、安定した特性を有する優れた光デバイスを迅速かつ容易に製造可能となる。また、光学素子の光透過部と第1凹部との隙間の長さを安定して最適値で組み立てることが可能であり、結果として、信頼性に優れた光モジュールを提供できる。
【0062】
また、請求項2の光デバイスは、光半導体素子を光結合させる側から第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むので、レンズを用いずに簡便な構成で且つ光学特性が良好な光デバイスを提供できる。
【0063】
さらに、請求項3の光デバイスは、マルチモードファイバの光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続したので、高価なマルチモードファイバの一部を安価なシングルモードファイバにすることができる上に、ファイバ長さの自由度を広げることができる。
【0064】
さらにまた、本発明の光デバイスは以下の優れた効果も期待できる。
【0065】
基本となる光ファイバ体は、マルチモードファイバとコアレスファイバの接続部の調整のみでよく、調整軸が少なく組み立てが容易である。
【0066】
マルチモードファイバとマルチモードファイバに挟まれるコアレスファイバは焦点距離調節と軸ずれ防止、組み立ての簡易化の役割をもつ。もともと一本のファイバなのでこれを分断したものは軸ずれは原理的に発生しない。
【0067】
コアレスファイバの長さによって予め焦点位置が精密に決定されている。フェルールの細孔の両端から挿入する場合の細孔内で調整するというような煩雑な作業が不要である。
【0068】
光ファイバ体に光学素子を挿入する場合は、コアレスファイバ部に形成した凹部に挿入するが、この凹部位置はコアレスファイバの範囲でさえあれば、ずれても全く問題が生じないため極めて作製しやすい。光アイソレータの挿入はほぼアライメントフリーで行うことができる。
【0069】
そして、以上のような作製上、光学的な利点に加え、光ファイバ体をフェルールに収納したため安定性が高く、前記凹部の底面に凹部を設けた構造にすることによりさらに長期信頼性に優れた光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光デバイスS2を模式的に説明する断面図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明に係る光デバイスの作製工程を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明に係る光デバイスS2の凹部近傍を拡大した断面図である。
【図4】本発明に係る光デバイスS3の実施例を示す断面図である。
【図5】光学素子の光透過部とフェルール内凹部との隙間と温度サイクル試験10サイクル後の剥離発生率の関係を説明するためのグラフである。
【図6】光学素子の光透過部とフェルール内凹部との隙間と温度サイクル試験500サイクル後の剥離発生率の関係を説明するためのグラフである。
【図7】光アイソレータの動作を模式的に示す斜視図である。
【図8】従来の光モジュールを説明する一部断面図である。
【図9】従来の光デバイスS1を模式的に示す断面図である。
【図10】従来の光デバイスS1における凹部近傍を拡大した断面図である。
【図11】コア拡大ファイバの結合間隔と結合損失の関係を示すグラフである。
【図12】マルチモードファイバ内の光の挙動を説明する模式図である。
【符号の説明】
1:シングルモードファイバ
1a:第1のシングルモードファイバ
1b:第2のシングルモードファイバ
2a:第1のマルチモードファイバ
2b:第2のマルチモードファイバ
3:フェルール
4:光学素子(光アイソレータ)
5:コアレスファイバ
6a,6b:レンズ
7:凹部(第1凹部)
8:接着剤
9:先球
10:コア拡大ファイバ
11:耐湿接着剤
12:気密窓
15:LD(発光素子)
16:PD(受光素子)
17:ペルティエクーラー
18:パッケージ
19a,19b:偏光子
20:ファラデー回転子
22:順方向入射光
23:逆方向入射光
32:ラバーブーツ
33:フェルール内凹部7の底面に形成された凹部(第2凹部)
A :光学素子の光透過部とフェルール内凹部7との隙間の長さ
J1:光モジュール
S1、S2、S3:光デバイス
F1:光ファイバ体
Claims (3)
- 光半導体素子に光結合可能で、且つコアレスファイバを含む複数の光ファイバの端部どうしが一列に接続された光ファイバ体を、該光ファイバ体の光軸を横切り前記コアレスファイバを分断する第1凹部を形成したフェルール内に設けるとともに、前記第1凹部の底面に、前記分断されたコアレスファイバどうしを光結合可能な光学素子を位置決めするための第2凹部を設けたことを特徴とする光デバイス。
- 前記光ファイバ体は、前記光半導体素子を光結合させる側から前記第1凹部までの間に、マルチモードファイバ及びコアレスファイバがこの順で接続されている部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
- 前記光ファイバ体は、前記マルチモードファイバの前記光半導体素子を光結合させる側にシングルモードファイバを接続したことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2002
- 2002-07-29 JP JP2002220181A patent/JP2004061871A/ja active Pending
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