上記の特許文献1に開示されているように、レンズ同士が光機能部品を介して対向するように収容スリーブ(保護チューブ)の内部に固定したレンズアッセンブリを備えた光デバイスでは、良好な光学特性を確保するために、レンズアッセンブリと、レンズアッセンブリに固定される毛細管とを、最適な光学調芯状態となるようにそれぞれの位置を調整する必要がある。特にレンズアッセンブリにおいては、光ファイバとの関係から最適な光学調芯状態を実現する上で、2つのレンズを収容スリーブに対して正確に位置調整して固定することが必要となる。そのため、このレンズの位置調整を可能にするために、収容スリーブの内周面と、各レンズの外周面との間に比較的大きな隙間(直径差)を確保して対応するのが通例である。その結果、各レンズの外周を収容スリーブの内周面に接着剤で固定する際、上記隙間に比較的多量の接着剤が入ることになり、該接着剤の硬化収縮や経年劣化に起因して位置調整されたレンズの固定位置に変位が生じ、完成品である光デバイスの光学特性や耐候性等の性能面において、高い信頼性が得られない場合があった。
特に、近年、光通信の分野では、マルチメディア情報社会の進展に伴い、高速度光通信や、波長多重通信(WDM)、高密度波長多重通信(DWDM)などの必要性が高まっており、これら通信システムに用いられる光デバイスに対して、より高エネルギーの光が入出力される条件下での信頼性向上が要求されるようになってきた。この種の光デバイスにおける比較的多量の接着剤の使用は、高エネルギーの入出力光に起因する光デバイスの温度上昇に伴い、接着剤の熱劣化の懸念を増大させることになる。したがって、上記のレンズの固定位置に変位が生じるという問題がより顕著に現れることになる。
また、収容スリーブの内部でレンズを位置調整して、収容スリーブの内周に接着剤で固定する作業自体にも、面倒且つ煩雑な作業が強いられることになる。したがって、収容スリーブの内周面にレンズを固定するまでの工程数が不当に増大するなどして、結果的に完成品である光デバイスの製造コストが高くなる。
本発明の課題は、光学特性や耐候性等の性能面において、高い信頼性が得られる光デバイスを提供することである。
本発明の他の課題は、製造コストを低減できる光デバイスを提供することである。
上記課題を解決するために創案された本発明に係る光デバイスは、一端面に球面部をそれぞれ有する第1レンズ及び第2レンズと、光機能部品と、該光機能部品を収容する収容スリーブとを備えたレンズアッセンブリを有し、前記収容スリーブの両端部に、光ファイバが挿入固定された毛細管を保持した第1保持スリーブ及び第2保持スリーブをそれぞれ固定してなる光デバイスであって、前記第1レンズが、その球面部を前記収容スリーブの一端側開口縁部に当接させた状態で該収容スリーブに固定され、且つ、前記第2レンズが、その球面部を前記収容スリーブの他端側開口縁部に当接させた状態で該収容スリーブに固定されると共に、前記第1保持スリーブの端面が、前記収容スリーブの一端面に固定され、且つ、前記第2保持スリーブの端面が、前記収容スリーブの他端面に固定されていることに特徴づけられる。なお、ここでいう光機能部品とは、光学フィルタ(バンドパスフィルタ、長波長透過/反射フィルタ、短波長透過/反射フィルム、補正用利得等価フィルタ等)や光アイソレータコア等を意味する(以下、同様)。
このような構成によれば、第1レンズ及び第2レンズのそれぞれの球面部の曲率中心を、収容スリーブの内周の中心軸に容易に一致させることができる。すなわち、各レンズの球面部を収容スリーブの開口縁部に当接させるだけで、その球面部の曲率中心を収容スリーブの内周の中心軸上に精度よく調芯することができる。また、収容スリーブの内周面とレンズの外周面との間に大きな隙間を確保して調芯する場合に比して、レンズを固定するために必要な接着剤の量を大幅に少なくすることができる。したがって、かかるレンズアッセンブリを光デバイスに組み込めば、接着剤の硬化収縮や経年劣化に起因する光デバイスの光学特性や耐候性等の低下を抑制しつつ最適な光学調芯状態を確保できるので、信頼性の高い光デバイスを構築することができる。すなわち、かかるレンズアッセンブリを、光合分波器、光アイソレータ、光サーキュレータ、光スイッチ、光利得等価器等の光デバイスに組み込んだ場合には、光学特性や耐候性等の性能面において、高い信頼性を得ることができる。
また、各レンズは、それぞれの球面部を収容スリーブの開口縁部に当接するだけで、最適な位置に調芯されるので、レンズの調芯作業に面倒且つ煩雑な作業を強いられることはない。したがって、かかるレンズアッセンブリを光デバイスに組み込めば、上述の性能面における高い信頼性に加え、製造コストの低減をも同時に図ることができる。
なお、この場合には、第1レンズと第2レンズとが、共通の収容スリーブの両端開口縁部に固定されることになることになるので、この収容スリーブの軸方向寸法を管理することにより、第1レンズ及び第2レンズの相互間隔を簡易に精度よく設定することができる。
上記の構成において、前記収容スリーブの内周に内スリーブが嵌合されており、該内スリーブは、その一端側開口縁部を前記第1レンズ又は前記第2レンズのいずれか一方の球面部に当接させた状態で、該球面部又は前記収容スリーブの内周面のうち少なくとも一方に固定され、且つ、前記光機能部品は、前記内スリーブの他端面に固定されていることが好ましい。
このようにすれば、収容スリーブ、内スリーブ及び光機能部品のそれぞれの寸法(収容スリーブの軸方向における寸法)をそれぞれ管理するだけで、第1レンズ、第2レンズ、および光機能部品のそれぞれの相互間距離を簡易に精度よく設定することができる。なお、内スリーブの内部空間が光の光路となるので、内スリーブの端面に光機能部品を接着剤で固定する場合でも、この接着剤が光路中に入ることを可及的に抑制することができる。
上記の構成において、前記第1レンズが、前記第1保持スリーブの内周面から離間し、且つ、前記第2レンズが、前記第2保持スリーブの内周面から離間していることが好ましい。
以上の構成において、前記第1レンズ及び前記第2レンズは、上述したドラムレンズや、Cレンズであってもよいが、球レンズの一部を平面部に加工して製作されたもの(以下、このようにして製作されたレンズを「半球状レンズ」という)であることが好ましい。
このようにすれば、第1レンズの球面部及び第2レンズの球面部を、比較的容易に精度よく加工することができ、各レンズの最適な光学調芯状態をより確実に得ることができる。また、半球状レンズは、レンズアッセンブリを光デバイスに組み込んだ状態で、同じ屈折率と同じ焦点距離を有するドラムレンズに比べて、光ファイバの先端との間の空隙量を大きくすることができるので、光ファイバへと反射戻り光の影響を低減する上で有利である。また、平面部が光ファイバの光軸と直交するように半球状レンズを配置することにより、その平面部において該レンズを透過する光の屈折による光軸の傾きズレを防止又は抑制することができる。
この半球状レンズは、上記の平面部と、球レンズの球面の一部がそのまま残された球面部(部分球面)とを有している。球面部の球面頂点から曲率中心(O:元となる球レンズの球面中心)を通って平面部に至る線分の長さ(L)は、球面部の曲率半径(R:元となる球レンズの半径)と同じか、それよりも大きいことが好ましい。このようにすれば、球面部と平面部との境界に鋭角部が形成されなくなるので、半球状レンズに欠け等の損傷が生じにくくなる。なお、平面部は上記の線分と直交する面となる。
上記の半球状レンズは、GRINレンズ等に比べ、球面部の曲率半径(R:元となる球レンズの半径)や上記線分の長さ(L)等のレンズ形状や素材(材料の種類や組成)を変えるだけで、その光学特性を容易に変更できるという利点がある。また、素材となる球レンズが高精度で作製できるので、この球レンズを加工して得られた半球状レンズは精度が高く、しかも比較的安価に作製することができる。
本発明によれば、光学特性や耐候性等の性能面において、高い信頼性が得られる光デバイスを提供することができる。
また、本発明によれば、製造コストを低減して、より安価な光デバイスを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は、第1の実施形態に係る光デバイス1の概略構成を示す横断面図であって、図1(b)は、この光デバイス1の概略構成を示す縦断面図である。同図に示すように、この光デバイス1は、2芯のコリメータと単芯のコリメータとを組み合わせたもので、波長多重通信(WDM)等に用いることができる。
光デバイス1は、第1毛細管アッセンブリ2と、第2毛細管アッセンブリ3と、レンズアッセンブリ4とを主要な要素として構成される。
第1毛細管アッセンブリ2は、2芯の内孔に2本の光ファイバ5、6がそれぞれ接着剤で固定されたガラス製の毛細管7と、毛細管7の外周に同軸状に外挿され、接着剤等で固定されたガラス製の保持スリーブ(毛細管保持部材)8とを備えている。光ファイバ5、6の先端面5a、6a及び毛細管7の先端面7aは、光ファイバ5、6の光軸に対して傾斜した同一傾斜面に研磨加工され、これにより光ファイバ5、6の先端での反射戻り光が抑制されるようになっている(図1(a)参照)。また、光ファイバ5、6の先端面5a、6aには、反射防止膜が形成されている。保持スリーブ8の一方の端面8aは、光ファイバ5、6の光軸と直交する面に形成され、その直角度は、例えば、光ファイバ5、6の光軸を法線とする幾何学的な理想平面に対して±0.5度以下、好ましくは±0.2度以下の精度で管理される。
第2毛細管アッセンブリ3は、単芯の内孔に1本の光ファイバ9が接着剤で固定されたガラス製の毛細管10と、毛細管10の外周に同軸状に外挿され、接着剤等で固定されたガラス製の保持スリーブ11とを備えている。光ファイバ9の先端面9a及び毛細管10の先端面10aは、光ファイバ9の光軸に対して傾斜した同一傾斜面に研磨加工され、これにより光ファイバ9の先端での反射戻り光が抑制されるようになっている(図1(a)参照)。また、光ファイバ9の先端面9aには、反射防止膜が形成されている。保持スリーブ11の一方の端面11aは、光ファイバ9の光軸と直交する平面に形成され、その直角度は、例えば、光ファイバ9の光軸を法線とする幾何学的な理想平面に対して±0.5度以下、好ましくは±0.2度以下の精度で管理される。
レンズアッセンブリ4は、第1毛細管アッセンブリ2の光ファイバ5、6の先端面5a、6aと空隙を介して対向する第1レンズ12と、第2毛細管アッセンブリ3の光ファイバ9の先端面9aと空隙を介して対向する第2レンズ13と、第1レンズ12と第2レンズ13との間に介装された光機能部品、例えば光学フィルタ、特にバンドパスフィルタ14と、これら部品を収容するガラス製の収容スリーブ15とを主要な要素として構成される。
図2に拡大して示すように、この実施形態において、第1レンズ12は、球レンズの一部を平面部に加工して製作されたレンズであり(半球状レンズ)、球レンズの一部を研磨加工等により切除して形成された平面部12aと、球レンズの残余の部分である球面部12bとを有している。球面部12bの球面頂点から曲率中心(O1:元となる球レンズの球面中心)を通って平面部12aに至る線分の長さ(L1)は、球面部12bの曲率半径(R1:元となる球レンズの半径)よりも大きい。また、第2レンズ13も、球レンズの一部を平面部に加工して製作されたレンズであり(半球状レンズ)、球レンズの一部を研磨加工等により切除して形成された平面部13aと、球レンズの残余の部分である球面部13bとを有している。球面部13bの球面頂点から曲率中心(O2:元となる球レンズの球面中心)を通って平面部13aに至る線分の長さ(L2)は、球面部13bの曲率半径(R2:元となる球レンズの半径)よりも大きい。なお、この実施形態において、第1レンズ12と第2レンズ13は、上記線分の長さ(L1、L2)及び曲率半径(R1、R2)が同じであり(L1=L2、R1=R2)、上記線分の長さ(L1、L2)と曲率半径(R1、R2)とがL1(L2)=1.2×R1(R2)の関係を有している。
第1レンズ12と第2レンズ13は、例えば、均一屈折率の光学ガラスからなり、そのような光学ガラスとして、屈折率が1.7以上のMK−18(日本電気硝子株式会社製)、屈折率が1.9以上のRH−21(日本電気硝子株式会社製)等を挙げることができる。なお、例えば、MK−18により形成され、L1(L2)=1.2×R1(R2)の関係を有する第1レンズ12と第2レンズ13は、同じ屈折率と同じ焦点距離を有するドラムレンズに比べて、光ファイバの先端との間の空隙量を約3.7倍程度大きくすることができるので、光ファイバへの反射戻り光を約1/10以下に低減できる。また、第1レンズ12と第2レンズ13の平面部12a、13aと球面部12b、13bにおける光が透過する部分には、反射防止膜が形成されている。
第1レンズ12は、その球面部12bを収容スリーブ15の一端側開口縁部に当接させた状態で、収容スリーブ15の一端側に接着剤で固定されている。第2レンズ13は、その球面部13bを収容スリーブ15の他端側開口縁部に当接させた状態で、収容スリーブ15の他端側に接着剤で固定されている。
この実施形態において、光機能部品としてのバンドパスフィルタ14は、内スリーブ16を介して収容スリーブ15の内周面に固定されている。内スリーブ16は、ガラス、金属、又はセラミックス等により(この実施形態ではガラスにより)、円形リング状又は円筒状に形成されている。詳述すると、内スリーブ16は、収容スリーブ15の内周に嵌合され、その一端側開口縁部を第1レンズ12の球面部12bに当接させた状態で、収容スリーブ15の内周面に接着剤で固定されている。なお、内スリーブ16は、収容スリーブ15の内周面ではなく第1レンズの球面部12bに接着剤で固定されていても良い。そして、バンドパスフィルタ14は、この内スリーブ16の他端面16bに接着剤で固定されている。この状態で、バンドパスフィルタ14は、内スリーブ16の内部空間を介して第1レンズ12の球面部12bと対向すると共に、収容スリーブ15の内部空間を介して第2レンズ13の球面部13bに対向するようになっている。すなわち、第1レンズ12、第2レンズ13、及びバンドパスフィルタ14のそれぞれの相互間距離を、収容スリーブ15及び内スリーブ16のそれぞれの軸方向寸法を管理することにより、簡易に精度よく設定することができる。なお、内スリーブ16の他端側開口部を、第2レンズ13の球面部13bに当接させた状態で収容スリーブ15の内周面に接着剤で固定して、該内スリーブ16の一端面16aにバンドパスフィルタ14を接着剤で固定するようにしてもよい。この場合、内スリーブ16は、収容スリーブ15の内周面ではなく第2レンズの球面部13bに接着剤で固定されていても良い。
収容スリーブ15の両端面15a、15bは、それぞれ、収容スリーブ15の内周の中心軸と直交する平面に形成され、その直角度は、例えば、内周の中心軸を法線とする幾何学的な理想平面に対して±0.5度以下、好ましくは±0.2度以下の精度で管理される。そして、第1レンズ12の平面部12a及び第2レンズ13の平面部13aは、収容スリーブ15の両端面15a、15bと平行である。
また、内スリーブ16の両端面16a、16bは、それぞれ、内スリーブ16の内周の中心軸と直交する平面に形成され、その直角度は、例えば、内周の中心軸を法線とする幾何学的な理想平面に対して±0.5度以下、好ましくは±0.2度以下の精度で管理される。
図1(a)、(b)に示すように、第1毛細管アッセンブリ2とレンズアッセンブリ4は、保持スリーブ8の一方の端面8aと収容スリーブ15の一端面15aとを突き合わせ状にして接着剤で固定され、第2毛細管アッセンブリ3とレンズアッセンブリ4は、保持スリーブ11の一方の端面11aと収容スリーブ15の他端面15bとを突き合わせ状にして接着剤で固定される。第1レンズ12の平面部12aは第1毛細管アッセンブリ2の光ファイバ5、6の先端面5a、6aと空隙を介して対向し、第2レンズ13の平面部13aは第2毛細管アッセンブリ3の光ファイバ9の先端面9aと空隙を介して対向する。なお、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8の内周面には、レンズアッセンブリ4側から順に、大径部と、この大径部よりも相対的に小径となる小径部とが設けられている。そして、小径部に毛細管7が挿入固定されており、大径部内に隙間を介して第1レンズ12が収容されている。同様に、第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11の内周面にも大径部と小径部とが設けられており、小径部に毛細管10が挿入固定され、大径部内に隙間を介して第2レンズ13が収容されている。
この実施形態の光デバイス1は、例えば次のようにして組み立てることができる。
まず、収容スリーブ15の一端側に上述した態様で第1レンズ12を接着剤で固定する。その際、適宜、位置決め治具で押圧して、第1レンズ12の平面部12aと、収容スリーブ15の中心軸に対する直角度が管理された一端面15a、及び/又は、他端面15bとが平行又は略平行になるように固定する。その後、バンドパスフィルタ14が接着固定された内スリーブ16を、収容スリーブ15の他端側からその内周に挿入して、内スリーブ16の一端側開口縁部を第1レンズ12の球面部12bに当接させた状態で、内スリーブ16の外周面を収容スリーブ15の内周面に接着剤で固定する。なお、内スリーブ16は、収容スリーブ15の内周面ではなく第1レンズ12の球面部12bに接着剤で固定しても良い。また、内スリーブ16を収容スリーブ15の内周にスムーズに挿入できるように、内スリーブ16の外径と収容スリーブ15の内径とを略一致させてある。具体的には、収容スリーブ15の内周面と、内スリーブ16の外周面との間のクリアランスは、例えば0.030mm以下、好ましくは0.015mm以下に設定される。
そして、このように第1レンズ12、内スリーブ16、及びバンドパスフィルタ14が固定された収容スリーブ15の他端側に上述した態様で第2レンズ13を接着剤で固定することで、レンズアッセンブリ4を作製することができる。その際、適宜、位置決め治具で押圧して、第2レンズ13の平面部13aと、収容スリーブ15の中心軸に対する直角度が管理された他端面15b、及び/又は、一端面15aとが平行又は略平行になるように固定する。
このようにすれば、第1レンズ12の球面部12bの曲率中心O1を収容スリーブ15の内周の中心軸と容易に一致又は略一致させることができる。また、第2レンズ13の球面部13bの曲率中心O2を収容スリーブ15の内周の中心軸と一致又は略一致させることができる。そして、これら第1レンズ12と第2レンズ13とは、共通の収容スリーブ15の両端開口縁部にそれぞれ固定されていることから、収容スリーブ15の軸方向寸法を管理すれば、第1レンズ12と第2レンズ13との相互間距離を簡易に精度よく設定できる。また、バンドパスフィルタ14は、内スリーブ16の一端側開口縁部が第1レンズ12の球面部12bに当接した状態で、内スリーブ16の他端面16bに固定されていることから、この内スリーブ16の軸方向寸法を管理すれば、バンドパスフィルタ14と第1レンズ12との相互間距離を簡易に精度よく設定できる。したがって、収容スリーブ15、内スリーブ16及びバンドパスフィルタ14のそれぞれの軸方向寸法を管理すれば、第1レンズ12、第2レンズ13、及びバンドパスフィルタ14のそれぞれの相互間距離を簡易に精度よく設定できる。
つぎに、上述のようにして製作されたレンズアッセンブリ4の収容スリーブ15の一端面15aに、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8の一方の端面8aを突き合わせ、両者の相対位置を、光ファイバ8、9の光軸方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸、Y軸方向)に調整すると共に、その突き合わせた第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8内で毛細管7を光軸方向(Z軸方向)に移動させて、毛細管7に固定された光ファイバ5、6の先端面5a、6aの位置を調整し、例えば一方の光ファイバ5から出射された光がバンドパスフィルタ14で反射して、他方の光ファイバ6に戻るように、最適な光学調芯状態で接着固定する。
さらに、上記のレンズアッセンブリ4の収容スリーブ15の他端面15bに、第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11の一方の端面11aを突き合わせ、両者の相対位置を、光ファイバ9の光軸方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸、Y軸方向)に調整すると共に、その突き合わせた第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11内で毛細管10を光軸方向(Z軸方向)に移動させて、毛細管10に固定された光ファイバ9の先端面9aの位置を調整すると共に、毛細管10を回転させて、毛細管10に固定された光ファイバ9の光軸に対して傾斜した先端面9aの傾斜方向を調整し、例えば第1毛細管アッセンブリ2の一方の光ファイバ5から出射された光がバンドパスフィルタ14を透過して、光ファイバ9に入射するように、最適な光学調芯状態で接着固定する。
上述の光デバイス1の組立方法において、光デバイス1を構成する部材が全て透明材料(例えば樹脂、ガラス等)で形成されていると、接着剤としてUV硬化型接着剤の使用が可能になるため、組立作業の作業性が向上する。また、保持スリーブ8(11)と毛細管7(10)との接着、及び/又は、毛細管アッセンブリ2(3)とレンズアッセンブリ4との接着において、UV硬化型接着剤で仮止めした後、信頼性の高い熱硬化接着剤で固定するようにしても良い。
つぎに、この実施形態の光デバイス1の一使用例を、光分波器として使用した場合を例に取って説明する。
例えば、第1毛細管アッセンブリ2の一方の光ファイバ5から相異なる波長λ1、λ2の光が出射される。バンドパスフィルタ14は、波長λ1の光を反射し、波長λ2の光を透過させる光学的特性を有している。第1毛細管アッセンブリ2の光ファイバ5から出射された波長λ1の光は、第1レンズ12によって平行光にコリメートされ、バンドパスフィルタ14で反射される。バンドパスフィルタ14で反射された波長λ1の光は、第1レンズ12によって集光されて、第1毛細管アッセンブリ2の他方の光ファイバ6に戻される。一方、第1毛細管アッセンブリ2の光ファイバ5から出射された波長λ2の光は、第1レンズ12によって平行光にコリメートされ、バンドパスフィルタ14に入る。そして、バンドパスフィルタ14を透過し、第2レンズ13によって集光されて、第2毛細管アッセンブリ3の光ファイバ9に入射する。
図3(a)は第1の参考例に係る光デバイス21の概略構成を示す横断面図であって、図3(b)はその縦断面図である。なお、第1の参考例に係る光デバイス1と、実質的に同一の部品及び部分には同一の参照数字を附して、重複する説明を省略する。
この参考例の光デバイス21が、上記の第1の実施形態に係る光デバイス1と相違する点は、レンズアッセンブリ22の構成と、このレンズアッセンブリ22への第1毛細管アッセンブリ2及び第2毛細管アッセンブリ3の固定方法とにある。すなわち、図3(a)、(b)に示すように、このレンズアッセンブリ22は、収容スリーブ15の内周に、第1内スリーブ23と第2内スリーブ24とが同軸状に嵌合固定されており、この嵌合固定された第1内スリーブ23の他端面23bと第2内スリーブ24の一端面24aとの間に、それぞれの端面23b、24aに接触した状態でバンドパスフィルタ14が固定されている。この際、バンドパスフィルタ14は、第1内スリーブ23の他端面23b及び第2内スリーブ24の一端面24aの少なくとも一方に接着剤で固定される(この実施形態では第1内スリーブ23の他端面23bに接着剤で固定されている)。第1レンズ12は、第1内スリーブ23の一端側開口縁部に、その球面部12bを当接させた状態で第1内スリーブ23の一端側に接着剤で固定されていると共に、第2レンズ13は、第2内スリーブ24の他端側開口縁部に、その球面部13bを当接させた状態で第2内スリーブ24の他端側に接着剤で固定されている。
また、第1内スリーブ23の一端面23aと第2内スリーブ24の他端面24bとは、収容スリーブ15の両端から僅かに外方に突出している。そして、第1毛細管アッセンブリ2における保持スリーブ8が、第1内スリーブ23の一端面23aに接着剤で固定されている。また、第2毛細管アッセンブリ3における保持スリーブ11が、第2内スリーブ24の他端面24bに接着剤で固定されている。なお、第1内スリーブ23の両端面23a、23b及び第2内スリーブ24の両端面24a、24bは、それぞれ第1内スリーブ23及び第2内スリーブ24の内周の中心軸と直交する平面に形成され、その直角度は、例えば、第1内スリーブ23及び第2内スリーブ24の内周の中心軸を法線とする幾何学的な理想平面に対して±0.5度以下、好ましくは±0.2度以下の精度で管理される。
このようにすれば、第1レンズ12の球面部12bの曲率中心を第1内スリーブ23の内周の中心軸に容易に一致させることができると共に、第2レンズ13の球面部13bの曲率中心を第2内スリーブ24の内周の中心軸に容易に一致させることができる。そして、これら両内スリーブ23、24は、共通の収容スリーブ15の内周に同軸状にそれぞれ嵌合固定されていることから、第1レンズ12及び第2レンズ13の各球面部12b、13bの曲率中心を、収納スリーブ15の内周の中心軸に容易に一致させることができる。また、第1レンズ12、第2レンズ13及びバンドパスフィルタ14は、第1内スリーブ23と第2内スリーブ24とを介して軸方向に連続していることから、第1内スリーブ23、第2内スリーブ24及びバンドパスフィルタ14の軸方向寸法を管理することにより、第1レンズ12、第2レンズ13及びバンドパスフィルタ14のそれぞれの相互間距離を簡易に精度よく設定することができる。
この参考例の光デバイス21は、例えば次のようにして組み立てることができる。
まず、第1内スリーブ23に上述した態様で第1レンズ12とバンドパスフィルタ14を接着剤で固定して、これら3部品からなる組付体を作製する。その際、適宜、位置決め治具で押圧して、第1レンズ12の平面部12aと、第1内スリーブ23の中心軸に対する直角度が管理された一端面23a、及び/又は、他端面23bとが平行又は略平行になるように固定する。そして、この組付体を収容スリーブ15の内周に挿入し、その位置を調整した後、第1内スリーブ23の外周を収容スリーブ15の内周に接着剤で固定する。なお、組付体の第1内スリーブ23を収容スリーブ15の内周にスムーズに挿入できるように、第1内スリーブ23の外周径と収容スリーブ15の内周径とを略一致させてある。具体的には、収容スリーブ15の内周面と、第1内スリーブ23の外周面との間のクリアランスは、例えば0.030mm以下、好ましくは0.015mm以下に設定される。このようにすれば、第1レンズ12の平面部12aが第1内スリーブ23の一端面23a、及び/又は、他端面23bと平行で、かつ、収容スリーブ15の内周の中心軸と直交した状態又はこれに近い状態となるように、上記の組付体を収容スリーブ15に固定することができる。
つぎに、第2内スリーブ24に上述した態様で第1レンズ13を接着剤で固定して、これら2部品からなる組付体を作製する。その際、適宜、位置決め治具で押圧して、第2レンズ13の平面部13aと、第2内スリーブ24の中心軸に対する直角度が管理された他端面24b、及び/又は、一端面24aとが平行又は略平行になるように固定する。そして、この組付体を収容スリーブ15の内周に挿入し、組付体の第2内スリーブ24の一端面24aをバンドパスフィルタ14に当接させた後、第2内スリーブ24の外周を収容スリーブ15の内周に接着剤で固定することで、レンズアッセンブリ22を作製することができる。なお、組付体の第2内スリーブ24を収容スリーブ15の内周にスムーズに挿入できるように、第2内スリーブ24の外径と収容スリーブ15の内径とを略一致させてある。具体的には、収容スリーブ15の内周面と、第2内スリーブ24の外周面との間のクリアランスは、例えば0.030mm以下、好ましくは0.015mm以下に設定される。このようにすれば、第2レンズ13の平面部13aが第2内スリーブ24の他端面24b、及び/又は、一端面24aと平行で、かつ、収容スリーブ15の内周の中心軸と直交した状態又はこれに近い状態となるように、上記の組付体を収容スリーブ15に固定することができる。
つぎに、上記のように作製されたレンズアッセンブリ22における第1内スリーブ23の一端面23aに、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8を接着剤で固定し、第2内スリーブ24の他端面24bに第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11を接着剤で固定する。この際、レンズアッセンブリ22に対する両毛細管アッセンブリ2、3の位置決め方法は、第1の実施形態と同様の方法によって行われる。
図4(a)は第2の参考例に係る光デバイス31の概略構成を示す横断面図であって、図4(b)はその縦断面図である。なお、第1の実施形態に係る光デバイス1、及び第1の参考例に係る光デバイス21と、実質的に同一の部品及び部分には同一の参照数字を附して、重複する説明を省略する。
この参考例の光デバイス31が、上記の第1の参考例に係る光デバイス21と相違する点は、レンズアッセンブリ32の構成にある。詳述すると、第1の相違点は、収容スリーブ15を軸方向に伸長して、この収容スリーブ15の内周に、第1内スリーブ23と、第2内スリーブ24とを完全に収容した点である。第2の相違点は、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8の先端部(一方の端面8a)を、収容スリーブ15の内周に挿入した状態で、第1内スリーブ23の一端面23aに接着剤で固定すると共に、第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11の先端部(一方の端面11a)を、収容スリーブ15の内周に挿入した状態で、第2内スリーブ24の他端面24bに接着剤で固定した点である。なお、各保持スリーブ8、11の外周面と、収容スリーブ15の内周面との間には、各毛細管アッセンブリ2、3とレンズアッセンブリ32との光学的調芯状態を調整可能な隙間(例えば、0.125mm〜0.25mm程度の隙間)が形成されている。また、この参考例では、各保持スリーブ8、11は、固定力を補強、及び/又は、耐候性を更に向上するために、収容スリーブ15の内周の一部に接着剤で固定されている。
図5(a)は第3の参考例に係る光デバイス41の概略構成を示す横断面図であって、図5(b)はその縦断面図である。なお、第1の実施形態に係る光デバイス1、第1の参考例に係る光デバイス21、及び第2の参考例に係る光デバイス31と、実質的に同一の部品及び部分には同一の参照数字を附して、重複する説明を省略する。
この参考例に係る光デバイス41が、上記の第1、2の参考例に係る光デバイス21、31と相違する点は、レンズアッセンブリ42の構成と、このレンズアッセンブリ42への第1毛細管アッセンブリ2及び第2毛細管アッセンブリ3の固定方法とにある。詳述すると、第1の相違点は、第1レンズ12の平面部12aと第2レンズ13の平面部13aとを、収容スリーブ15の両端から僅かに外方に突出させた点である。そして、第2の相違点は、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8の一方の端面8aを第1レンズ12の平面部12aに接着剤で固定すると共に、第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11の一方の端面11aを第2レンズ13の平面部13aに接着剤で固定した点である。
図6(a)は第4の参考例に係る光デバイス51の概略構成を示す横断面図であって、図6(b)はその縦断面図である。なお、第1の実施形態に係る光デバイス1、及び第1〜3の参考例に係る光デバイス21、31、41と、実質的に同一の部品及び部分には同一の参照数字を附して、重複する説明を省略する。
この参考例に係る光デバイス51が、第3の参考例に係る光デバイス41と相違する点は、レンズアッセンブリ52の構成と、このレンズアッセンブリ52への第1毛細管アッセンブリ2及び第2毛細管アッセンブリ3の固定方法とにある。詳述すると、第1の相違点は、収容スリーブ15の軸方向寸法を伸長して、第1レンズ12と、第2レンズ13とを収容スリーブ15の内周に完全に収容した点である。そして、第2の相違点は、第1毛細管アッセンブリ2の保持スリーブ8の先端部(一方の端面8a)を、収容スリーブ15の内周に挿入された状態で、第1レンズ12の平面部12aに接着剤で固定すると共に、第2毛細管アッセンブリ3の保持スリーブ11の先端部(一方の端面11a)を、収容スリーブ15の内周に挿入された状態で、第2レンズ13の平面部13aに接着剤で固定した点にある。なお、各保持スリーブ8、11の外周面と、収容スリーブ15の内周面との間には、各毛細管アッセンブリ2、3とレンズアッセンブリ52との光学的調芯状態を調整可能な隙間(例えば、0.125mm〜0.25mm程度の隙間)が形成されている。また、この実施形態では、各保持スリーブ8、11は、固定力を補強、及び/又は、耐候性を更に向上するために、収容スリーブ15の内周の一部に接着剤で固定されている。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、単芯のコリメータ同士を組み合わせると共に、光機能部品として光アイソレータコアを使用した構成としてもよい。すなわち、以上の第1の実施形態において、第2毛細管アッセンブリと同様に、第1毛細管アッセンブリの毛細管の内孔にも1本の光ファイバを接着剤で固定すると共に、バンドパスフィルタに代えて光アイソレータコアを固定した構成としてもよい。
また、上記の実施形態において、内周面に大径部と小径部とを有する保持スリーブを、内径が実質的に一定である保持スリーブに変更してもよい。また、これとは逆に、内径が実質的に一定である保持スリーブを、内周面に大径部と小径部とを有する保持スリーブに変更してもよい。