JP4231190B2 - ファイバスタブ型光デバイス及びそれを用いた光モジュール - Google Patents

ファイバスタブ型光デバイス及びそれを用いた光モジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信機器、センサー等に好適に使用される光モジュールに関する。また、この光モジュールに搭載され、光モジュール外部からの反射戻り光を遮断する光アイソレータを内蔵した、ファイバスタブ型光デバイス及びそれを用いた光モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信の光源に用いられるレーザーダイオード(以下、LDともいう)は、出射した光がある箇所で反射し、再びLDの活性層に戻ると発振状態が乱れ、出射パワーの変動や波長ずれ等が生じ、これにより信号が劣化する。
【0003】
このような反射戻り光の問題を防止するために、通常、LDは光を一方向のみに透過させる光アイソレータと同じパッケージ内に搭載され、光モジュールの一種であるLDモジュールを構成している。
【0004】
特に、アナログ信号は上記反射戻り光によって劣化し易く、また、高密度な信号ほど反射戻り光の影響を受け易いため、CATV等のアナログ伝送データの増加、大容量化、高速化に伴い、光アイソレータは不可欠な構成要素となってきている。
【0005】
以下に、光アイソレータの一般的な動作について簡単に説明する。図5に示すように、光アイソレータ2は偏光方向の互いに異なる2つの偏光子19A、19Bでファラデー回転子20を挟むようにして構成されている。このような構成において、順方向光22はそのまま透過し、逆方向光25は遮断される。なお、ファラデー回転子20は外部から磁界を印加することでファラデー効果を得るものと、自発磁化により外部磁界なしでファラデー効果を持つものがあるが、ここでは簡単のため特に磁界を印加するための磁石は図示しないものとする。なお、以降は、周囲の電子デバイス等で発生して環境に存在する磁界を不要な外部磁界、ファラデー回転を得るために印加されている磁界を特にバイアス磁界と称するものとする。
【0006】
次に、従来のLDモジュールの一例について説明する。図7に示すように、LDモジュールJ1は、パッケージ18内に少なくともLD15、レンズ6A、6B、光アイソレータ2、伝送用シングルモード光ファイバ4の一端部等が収納されている。なお、図中、16は受光素子であるフォトダイオード(以下、PDともいう)、17はペルティエクーラー、32は光ファイバ余長部を保護するためのラバーブーツである。また、12は気密窓であり、パッケージの気密を損なうことなく光線を通す機能を有している。高い信頼性の要求されるモジュールでは、温度調節の必要上、あるいはLDを劣化させる水分、様々な気体から守るためモジュール内部を外界から遮断している。
【0007】
LD15から出射された光は、レンズ6Aでコリメートされ、気密窓12、光アイソレータ2を通過し、レンズ6Bで集光され伝送用シングルモードファイバ4に入射される。全体は外部の環境から遮断するためパッケージ18に内蔵される。レンズ6A、6Bにはボールレンズ、両凸レンズ、非球面レンズ、グレイデッドインデックスレンズ(以下GRINレンズという)等が用いられる。
【0008】
このような光モジュールJ1では、光アイソレータ2、レンズ6A、6B等は独立した部品として、それぞれが別々にホルダーに固定された後にアライメントされるため、部品点数が多く調整も煩雑で、大型化してしまうといった問題があった。
【0009】
また、光モジュール全体を小型化し、アライメントを容易にするために、図8に示すように、レンズを用いずコア拡大ファイバを使ってファイバスタブに光アイソレータを実装した光デバイスJ2も提案されている(特開平10−68909号公報等を参照)。
【0010】
この光デバイスJ2は、光の結合を向上させるために光ファイバのコアを拡大したコア拡大ファイバ5を用い、反射を防ぐために光軸に対し光アイソレータ2を斜めに挿入している。また、先球9を中心に保持したフェルール3に光アイソレータ2と、光アイソレータ2を取り囲む形で円筒形の磁石26が配設され、全体がスリーブ13内に固定されている。光デバイスJ2では、フェルール3は同軸の精度が高いので軸ずれが生じない。また、光アイソレータ付きのモジュールが光アイソレータの無いモジュールと同等の工数で組み立てが可能で非常に簡便である。
【0011】
このような光デバイスJ2に用いられるコア拡大ファイバは、一般的なシングルモード光ファイバを局所的に加熱して作られる。シングルモード光ファイバを加熱し、コアにドープされているGe等のドーパントを拡散させ、ドーパントの拡散領域を広くするとともに比屈折率差を小さくしている。
【0012】
光ファイバのコアとクラッドの比屈折率差が変らないままコア径が大きくなると、シングルモード条件が崩れマルチモードが励振されてしまう。コア拡大ファイバの場合は、熱によるドーパントの拡散のため、コアの拡大と比屈折率差の低下が同時に起こり、自動的にr×(D)1/2が一定に保たれる。ここで、rは光ファイバのコアの半径、Dはコアとクラッドの比屈折率差、r×(D)1/2は規格化周波数に比例する量であり、これが一定ならばシングルモード条件は保たれる。
【0013】
図6にコア拡大ファイバを用いた光結合の特性を示す。横軸にファイバ間の距離(=コア拡大部に形成する溝の幅)、縦軸に光の結合損失を示す。wはそれぞれのモードフィールド径を示し、各曲線に対応する。なお、光の波長は光通信で一般に使われる1.31μmとし、溝(ファイバ間)は空気(屈折率n=1)で満たされていることとした。
【0014】
モードフィールド径が10μmでコアを拡大していない場合、ファイバ間距離が50μmでは3dB以上の損失があるのに対し、モードフィールド径が40μmの場合は、ファイバ間が800μmでも損失が1dB以下であることが判り、明らかに結合特性が改善されることがわかる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
先に述べたように、図7に示すような従来の光モジュールJ1では、部品点数が多く、大型化してしまい、組立も煩雑であった。但し、パッケージは気密溶接が可能で、光路も気密窓を通しているため信頼性を高めることが可能になる。
【0016】
一方、図8に示すような従来の光デバイスJ2は、モジュールに用いる場合はモジュール内外の境界に位置することになる。したがって、パッケージの気密が完全であっても光デバイスJ2の気密性が不十分であると、光モジュールJ2を介して外界から水分や様々なガスがモジュール内に侵入する可能性がある。
【0017】
光モジュールJ2はフェルール内に光ファイバを挿入、固定しており、これには一般にはエポキシ系の熱硬化型接着剤を用いてきた。従って気密封止を完全に保証することが困難であった。接着剤を用いる理由としては、石英の光ファイバとセラミックのフェルールは溶接できず、さらに、ハンダや低融点ガラスは溶融されるまでは固体であり、フェルールの穴とファイバとの隙間に予め充填しておくといった処理が困難であるからである。
【0018】
また、光モジュールJ2は小型である反面、フェルールは1.25mm〜2.5mm程度であり、このように微小であるため磁石の大きさが制限され、光アイソレータを構成するファラデー回転子に対して十分な磁界が印加されない場合がある。その意味では磁石が不要な自発磁化型のファラデー回転子を用いた光アイソレータが好適であるが、大きな外部磁界で自発磁化型ファラデー回転子を減磁するおそれがあった。小型の部品ではなるべく磁石の体積が確保できた方が良く、体積効率を考慮すれば部材どうしの隙間が極小にする必要があるが、別個に成形した磁石では限界がある。
【0019】
そこで本発明では、気密性と信頼性に優れ、小型でありながら十分な磁界を確保できる優れたファイバスタブ型光デバイス及びそれを用いた光モジュールを提案することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のファイバスタブ型光デバイスは、フェルールに貫通孔と該貫通孔を横切る溝を形成し、前記溝により分断された2つの貫通孔のそれぞれに光ファイバを配設し、各光ファイバの一端部どうしを前記溝内に配設した光アイソレータを介して光接続させるように成し、前記溝に耐湿性の樹脂を充填して、該樹脂で前記アイソレータを包囲したことを特徴とする。
【0021】
また特に、前記樹脂に強磁性粉体を分散させていることを特徴とする。
【0022】
より具体的には、フェルール前後端部に凹部と、中心軸に貫通孔と、該貫通孔を横切る溝を形成し、溝により分断された2つの貫通孔のぞれぞれに伝送用シングルモードファイバよりモードフィールド径の大きい光ファイバを配設し、光ファイバとフェルールを低融点ガラス若しくはハンダで固定する。この伝送用シングルモードファイバよりモードフィールド径の大きい光ファイバの一端部どうしを前記溝内に配設した光アイソレータを介して光接続させるようにし、さらにフェルールに形成された溝を吸水率が1%以下の耐湿性樹脂により被覆する。フェルール前後端に設けた凹部には低融点ガラス、若しくはハンダが溜まることにより安定した接合が可能となる。
【0023】
また、フェルール前後端部に凹部と、中心軸に貫通孔と、該貫通孔を横切る溝を形成し、溝により分断された2つの貫通孔のぞれぞれに伝送用シングルモードファイバよりモードフィールド径の大きい光ファイバを配設し、光ファイバとフェルールを低融点ガラス若しくはハンダで固定する。この伝送用シングルモードファイバよりモードフィールド径の大きい光ファイバの一端部どうしを前記溝内に配設した光アイソレータを介して光接続させるようにし、さらにフェルールに形成された溝を吸水率1%以下の樹脂に磁性粉体を分散させた磁性微粒子分散磁石で被覆充填し、溝部に隙間無くこの磁石が充填される構造を持つようにする。
【0024】
また、本発明の光モジュールは、基板上に、上記のファイバスタブ型光デバイスと、該ファイバスタブ型光デバイスに光接続させるための受光または発光する光素子を、それぞれ配設して成るものとする。
【0025】
これにより、ファイバスタブ内に光アイソレータ等の光素子をほぼアライメントフリーで実装したコンパクトな構成とすることができ、気密性、信頼性に優れ、不要な外部磁界が有っても安定して動作する光モジュールを容易に構成できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一部材については、同一符号を付し説明を省略するものとする。
【0027】
図1に示すように、ファイバスタブ型光デバイスS1は、ジルコニア製のフェルール3内に、モードフィールド径を例えば40μm以上にしたコア拡大ファイバ(光ファイバ)5、このモードフィールド径を10μmに変換するGI(グレイデッドインデックス)ファイバ8、及びモードフィールド径10μmを有する伝送用シングルモードファイバ4を縦列に接続し収容して成る。
【0028】
フェルール3には、溶融した低融点ガラス、またはハンダの封止材31を溜めるための凹部30が形成されている。
【0029】
ここで、溝10により分断された2つの貫通孔(貫通路)3aのそれぞれにコア拡大ファイバ5、5を配設し、各コア拡大ファイバの一端部を溝10内に突出させている。そして、各コア拡大ファイバの一端部側面を、各コア拡大ファイバを構成するクラッド部より屈折率の高い保護部材11で覆い、各コア拡大ファイバの一端部どうしを、溝10内に配設した光アイソレータ2を介して光接続させるようにしている。なお、上記のようにモードフィールド径を40μm以上に拡大する理由は、光ファイバ間(溝)に挿入する光学素子として最も薄い光アイソレータを想定した場合、溝幅は最低でも600〜800μmは必要であり、1dB以下の損失で接合するためには、モードフィールド径は40μm必要であるためである。
【0030】
また、本発明では貫通孔3a内に収容されているコア拡大ファイバ5の少なくとも一方が、モードフィールド径を変換するためのGIファイバ8と伝送用シングルモードファイバ4とに縦列に接続されているものとする。
【0031】
上記コア拡大ファイバ5をフェルール3内に挿入する前に、予め貫通孔3aを横切る溝10を形成した後に、貫通孔3aに挿入固定する。そして、コア拡大ファイバ5の溝10内の露出部(ファイバ側面)をコア拡大ファイバのクラッド部より屈折率の高い保護部材11で覆った後に、溝10の部分で一端部に上記保護部材11を設けたコア拡大ファイバ5を分断し、溝10内に形成された溝10に光アイソレータ2を配設する。
【0032】
具体的には、例えば直径1.25mm、長さ12mm程度のフェルール3の中央部に、フェルール3の先端面3bに対し2度の角度で、貫通孔3aを横切るように幅1.5mm程度の溝10を形成する。
【0033】
次に、モードフィールド径が例えば40μmで、モードフィールド径が変化しないコア拡大ファイバ5と、レンズ効果を持つGIファイバ8を放電により融着接続し、GIファイバの長さが2107μmになるよう切断する。なお、GIファイバは長さ2107μmで10μmのビームをほぼ40μmに拡大するものとする。更にモードフィールド径10μmの伝送用シングルモードファイバ4を融着接続する。
【0034】
次に、コア拡大ファイバ5とGIファイバ8と伝送用シングルモードファイバ4を融着したものを貫通孔3aから挿入し、フェルール前後端部の凹部30に低融点ガラス、若しくはハンダを充填し加熱溶融し伝送用シングルモードファイバ4がフェルール3の後端面3cから突出するように固定する。
【0035】
さらに、コア拡大ファイバ5のフェルール3の先端面3bから突出した部分を切断後、放電や研磨により先球部9を形成する。またフェルール3の後端面3cから突出した伝送用シングルモードファイバ4を後端面3cと一致するよう切断、研磨する。
【0036】
さらに、先にフェルール3に形成した溝10においてこの端面と平行に(約2度の角度)、幅800μmでコア拡大ファイバ5を分断する溝を形成する。そして、この溝内に光アイソレータ2を設置するとともに、光アイソレータ2と光入出射面とコア拡大ファイバ5の一端部との間に透光性の接着材21を設ける。最後に吸湿率1%以下の耐湿性樹脂28を溝10全体を覆うように充填する。ここで、耐湿性樹脂とは例えばエポキシ系樹脂などの各種熱硬化性、光硬化性の樹脂を用いるものとする。
【0037】
このファイバスタブ型デバイスS1は以下のように動作する。コア拡大ファイバ5Aの先球部9から入った光は、溝10で光アイソレータ2を通過し、再びコア拡大ファイバ5B内を伝搬し、GIファイバ8によりビーム径を10μmに収束させられ伝送用シングルモード4に結合し後端面3cから出射する。このファイバスタブ型光デバイスS1は、後端面3cにおいてフェルール3と同一形状で、中心部に伝送用のシングルモード光ファイバを保持したフェルールをもつコネクタ(図示せず)と接続される。
【0038】
なお、本実施形態ではファイバスタブ型光デバイスと、これにに光接続させるための発光素子(LD)を設けた光モジュールについて説明したが、発光素子の代わりに受光素子を設けるようにしてもよく、また、発光素子と受光素子とファイバスタブ型光デバイスを同一基板上に配設するようにした光モジュールにも適用可能であることはもちろんである。
【0039】
【実施例】
以下により具体的な実施例を説明する。
【0040】
〔例1〕
図2(a)〜(h)を用いて説明する。図2(a)、(b)に示すように、直径1.25mm、長さ12mmのジルコニア製のフェルール3は、その前後端部に凹部30を設け、フェルール3の中央部にフェルール端面に対し2度の角度で、貫通孔3aを横切るように幅1.5mmの溝10を形成した。なお、この加工にはDISCO製ダイサーブレードSDC320R10MB01を用いた。
【0041】
次に、図2(c)に示すように、モードフィールド径が40μmでコアがストレートの(テーパ部がない)コア拡大ファイバ5とレンズ効果を持つGIファイバ8を放電により融着接続し、GIファイバは長さが2107μmに成る位置で切断した。GIファイバ8は長さが2107μmで10μmのビームをほぼ40μmに拡大するものである。さらに、GIファイバ8に伝送用シングルモードファイバ4を融着接続した。
【0042】
次に、図2(d)に示すように、コア拡大ファイバ5とGIファイバ8と伝送用シングルモードファイバ4を融着したものを貫通孔3aから挿入し、伝送用シングルモードファイバ4がフェルール3の後端面3cより僅かに突出するように調整し、凹部30に低融点ガラスのペースト(低融点ガラスの微粉末を溶剤に分散したもの)である封止材31を充填し加熱溶融することで固定した。
【0043】
さらに、コア拡大ファイバ5のフェルール3の先端面3bから突出した部分を切断後、放電や研磨により先球部9を形成し、フェルール後端部3cから突出した部分は3cと同一面となるよう研磨した。
【0044】
そして、図2(e)に示すように、コア拡大ファイバ5の溝10内の露出部(光ファイバの露出側面)にエポキシ系の紫外線硬化型光学接着剤などの接着材である保護部材11で覆い、図2(f)に示すように、溝10と平行に(2度の角度)、幅800μmでコア拡大ファイバ5を分断する溝を形成した。ここではDISCO製のダイサーブレードNBC−Z2050を用いた。
【0045】
そして、図2(g)に示すように、溝10内において、偏光子19A、19B、ファラデー回転子20を一体成形後、切断して作製した光アイソレータ2を設置した。ここで、コア拡大ファイバ5と屈折率を整合させた紫外線硬化型接着剤や熱硬化型の接着材21で固定した。さらに、図2(h)に示すように、吸湿率が1%以下の熱硬化性エポキシ系樹脂(EPO−TEK E3116)である耐湿性樹脂28で光アイソレータの外周部を被覆し、80℃30分で加熱硬化させた。
【0046】
光アイソレータ2は、偏光子19A、19B(厚さ200μm、屈折率1.51)、ファラデー回転子20(米国ルーセント社製、自発磁化型ガーネットxL22、厚さ380μm、屈折率2.356)から成り、各々の光透過面は反射防止膜を形成した後に、エポキシ系の透光性の接着剤で接合されている。なお、光アイソレータ2は10mm角以上の大型の素子で一括アライメントを行い接着した後に、300μm角に切断されている。厚さは780μmとなる。また、ここでは自発磁化型のガーネットを用いるため磁石は不要である。
なお、本発明のファイバスタブ型光デバイスにおいては、LDモジュールに実装する際に、LD側のコア拡大ファイバの端面は、反射を防ぎ結合効率も同時に向上させるため半径25μmの先球部9としている。
【0047】
〔例2〕
上記例1のファイバスタブ型光デバイスにおいて、光アイソレータを配設した後に補償磁界を印加するため、あるいは自発磁化型以外の一般のガーネットも使用可能でかつ信頼性も高めるために、図3に示すように、光アイソレータ2を耐湿性樹脂28に強磁性の磁性微粒子29を分散させて充填被覆した後、80℃30分で加熱硬化させた。最後に、ファイバスタブ型デバイスS2全体に磁界を印加し樹脂中に強磁性の磁性微粒子29を分散させて成る磁性微粒子分散磁石とした。ここで、樹脂は吸湿性1%以下の例1と同様な材料を用い、Nd−Fe−B系の磁性微粒子を分散させた。
【0048】
これにより、光アイソレータ2を構成するファラデー回転子が自発磁化型の場合は、外部磁界の変化からファラデー回転子を保護する補償磁気回路と成すことができる。また、自発磁化を持たないファラデー回転子の場合はバイアス磁気回路と成すことができる。樹脂に分散させた磁性微粒子を充填する方法なので、全く隙間無く磁石を設置することが可能になる。
【0049】
具体的な作製方法を以下に説明する。まず、実施例1と同様に、コア拡大ファイバ5とGIファイバ8と伝送用シングルモードファイバ4を融着したものを、予め幅1.5mmでフェルール3の端面に対し2度の角度をもつ溝10を形成し、前後端部に凹部30をもつフェルール3の貫通孔3に挿入し、伝送用シングルモードファイバ4の端面とフェルール3の後端面3cが一致するように固定した。そして、上記例1と同様にしてさらにコア拡大ファイバ5を分断する溝10を幅800μmに形成し、偏光子19A、19B、ファラデー回転子20を一体化した光アイソレータ2を溝10に例1と同様にして設置固定した。その後、耐湿性樹脂に磁性微粒子を分散させた磁性微粒子分散磁石で充填被覆した後、80℃30分で加熱硬化させた。最後に、ファイバスタブ型デバイス全体に磁界を印加し磁性微粒子分散磁石を磁化した。
【0050】
なお、例1と同様にLDとの結合効率を高めるため、コア拡大ファイバ5の端部は半径25μmの先球9に放電または研磨により形成した。
【0051】
このファイバスタブ型光デバイスS2は、後端面3cにおいてフェルール3と同一形状で、中心部に伝送用のシングルモード光ファイバを保持したフェルールをもつコネクタ(図示せず)と接続される。
【0052】
〔例3〕
上記例1〜2で形成したファイバスタブ型光デバイスを用いてLDモジュールMを構成した例を図4に示す。基板であるSiプラットフォーム14のV型の溝に、LD側端面を先球ファイバにしたファイバスタブ型光デバイスSを固定した。Siプラットフォーム14をペルティエクーラー17に載置することにより、LD15は一定の温度に保持され安定した状態で動作した。PD16は光強度を安定化するためにLD15の光をモニターする。スリーブ13は外部からコネクタ(図示せず)を嵌合し光結合させる。全体はパッケージ18内に気密封止した。
【0053】
以上のような構成により、LD15と先球ファイバをアライメントするだけで、LDモジュールの光学的調整は全て完了した。また、光学系の全てがフェルール3内にあるため、小型化を図ることができ、フェルール3とコア拡大ファイバ5、伝送用シングルモードファイバ4は低融点ガラスで気密が保証されているため高信頼性のLDモジュールが提供できた。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のファイバスタブ型光デバイス及び光モジュールによれば、以下の顕著な効果を奏することができる。
【0055】
・ファイバスタブ型光デバイス自体の作製は、GIファイバとコア拡大ファイバの接続部の調整のみでよく、後の光アイソレータの挿入はほぼアライメントフリーで行うことができる。さらに、光アイソレータを挿入する前に光結合系のみを組み立てておくことが可能であり、大幅な工程の低減が可能である。
【0056】
・光学系の組立が先で、光アイソレータの挿入が後のため、低融点ガラスやハンダといった高温の気密プロセスを行うことが可能である。
【0057】
・フェルールと光ファイバを低融点ガラス、若しくはハンダで固定することにより、気密性に優れ信頼性の高いデバイスとすることが出来る。
【0058】
・耐湿性の樹脂で光アイソレータを被覆したため、光アイソレータの劣化のない信頼性の高いデバイスとすることが出来る。
【0059】
・磁性微粒子を分散させた樹脂を充填、着磁したので、全く隙間無く結合強度の強い磁石を得ることができる。微細デバイスなので隙間の無い体積効率が高い構造は極めて有効性が高い。
【0060】
・磁石を配置したため、光アイソレータに自発磁化型ファラデー回転子を用いた場合は補償磁界として劣化を抑え信頼性を高めることが可能で、自発磁化を持たないファラデー回転子を用いることも可能になる。同時に気密性も得られる。
【0061】
・小型で作製容易、安価で経時変化の少なく信頼性の高い光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るファイバスタブ型光デバイスを模式的に説明する断面図である。
【図2】(a)〜(h)は本発明に係るファイバスタブ型光デバイスの作製工程を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明に係るファイバスタブ型光デバイスの実施例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る光モジュールを模式的に説明するための断面図である。
【図5】光アイソレータの動作を模式的に説明する斜視図である。
【図6】コア拡大ファイバの対向間隔と回折損失の関係を示すグラフである。
【図7】従来の光モジュールを説明する一部断面図である。
【図8】従来のコア拡大ファイバに光アイソレータを実装したデバイスを説明する断面図である。
【符号の説明】
2:光アイソレータ
3:フェルール
3a:貫通孔
4:シングルモードファイバ
5:コア拡大ファイバ(光ファイバ)
6A、6B、6C:レンズ
10:溝
8:GI(グレイデッドインデックス)ファイバ
9:先球
11:保護部材
12:気密窓
13:スリーブ
14:Siプラットフォーム(基板)
15:LD(発光素子)
16:PD(受光素子)
17:ペルティエクーラー
18:パッケージ
19A、19B:偏光子
20:ファラデー回転子
21:接着材
22:順方向入射光
23:コア
24:クラッド
25:逆方向入射光
26:磁石
27:光吸収性部材
28:耐湿性樹脂
29:磁性微粒子分散磁石
30:凹部
31:封止材
32:ラバーブーツM:LDモジュール(光モジュール)
J1:光モジュール
J2:光デバイスS1、S2:ファイバスタブ型光デバイス

Claims (2)

  1. フェルールに貫通孔と該貫通孔を横切る溝を形成し、前記溝により分断された2つの貫通孔のそれぞれに光ファイバを配設し、各光ファイバの一端部どうしを前記溝内に配設した光アイソレータを介して光接続させるように成したファイバスタッブ型光デバイスであって、
    前記溝に耐湿性の樹脂を充填して、該樹脂で前記アイソレータを包囲し
    前記樹脂に強磁性粉体を分散させていることを特徴とするファイバスタブ型光デバイス。
  2. 基板上に、請求項1に記載のファイバスタブ型光デバイスと、該ファイバスタブ型光デバイスに光接続させる受光または発光する光半導体素子を、それぞれ配設して成る光モジュール。
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