JP2004058133A - 鋳造方法および鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】押し湯用の大きな圧力を簡単に得られるようにする。
【解決手段】鋳型1が、例えばエンジンのピストン鋳造用とされて、ピストンリングの層着部分において耐摩耗性等を確保するために気孔を有する複合用材料2が設置される。鋳型1内の空間のうち製品キャビティ15に連なると共に注湯後にガスが存在されるガス存在空間31は、注湯後に、その内部に残留している高温のガスが冷たいガスに置換されると共に密閉状態とされる。この冷たいガスが溶湯金属や鋳型1の高温を受けて膨張することによる大きな膨張圧が、押し湯用圧力となる。
注湯後に、密閉状態にあるガス存在空間内に、例えば、水、アルコール、ドライアイス、樟脳等の液体又は固体の膨張圧発生物質を充填して、この膨張圧発生物質が溶湯金属や鋳型の高温を受けて気化したときの大きな膨張圧を押し湯用の圧力とすることもできる。
【選択図】 図1
【解決手段】鋳型1が、例えばエンジンのピストン鋳造用とされて、ピストンリングの層着部分において耐摩耗性等を確保するために気孔を有する複合用材料2が設置される。鋳型1内の空間のうち製品キャビティ15に連なると共に注湯後にガスが存在されるガス存在空間31は、注湯後に、その内部に残留している高温のガスが冷たいガスに置換されると共に密閉状態とされる。この冷たいガスが溶湯金属や鋳型1の高温を受けて膨張することによる大きな膨張圧が、押し湯用圧力となる。
注湯後に、密閉状態にあるガス存在空間内に、例えば、水、アルコール、ドライアイス、樟脳等の液体又は固体の膨張圧発生物質を充填して、この膨張圧発生物質が溶湯金属や鋳型の高温を受けて気化したときの大きな膨張圧を押し湯用の圧力とすることもできる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳造方法および鋳造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車用エンジンのピストンやコンロッド等、軽合金による鋳造品にあっては、部分的に耐熱性や耐摩耗性が不足する場合ある。このため、軽金属の鋳造品のうち耐熱性や耐摩耗性等の必要な特定部位に、必要機能確保のための複合用材料を鋳込むことが行われている。すなわち、鋳型の製品キャビティのうち所定位置に複合用材料を配置して、その後に軽合金の金属溶湯を注湯することによって、所望位置に複合用材料が鋳込まれた鋳造品を得るようにしている。そして、複合用材料は気孔を有するため、金属溶湯が複合用材料内に含浸することになり、金属溶湯が凝固した状態では、凝固した軽合金と複合用材料とが強固に一体化されることになる。
【0003】
気孔を有する複合用材料に溶融金属を十分に含浸させるために、鋳型内への金属溶湯の注湯後は、金属溶湯に対して押し湯用の大きな圧力を印加することが要求される。従来は、特許第3212245号公報に示すように、押し湯用の圧力を、型締め後の金属溶湯に対して所定圧に調整されたエア圧を印加することにより行っていた。また、上記公報には、複合用材料に対して金属溶湯がより十分に含浸するように、複合用材料に連なるリリーフ通路を鋳型に形成して、金属溶湯を注湯したときに、複合用材料の気孔内に存在するガスがリリーフ通路を介して外部に十分に排気されるようにすることも開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エア圧を外部から供給して大きな押し湯圧力を得るためには、エア圧供給のための特別な装置が必要となる。この押し湯用の大きなエア圧を、工場内で使用される通常のエア圧を利用することも考えられるが、工場内での通常のエア圧は小さすぎるため、高圧のエア圧を発生させるための高圧発生手段が別途必要となる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、押し湯用の大きな圧力を簡単に得られるようにした鋳造方法および鋳造装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造方法にあっては、その第1の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内の高温のガスを冷たいガスと置換させると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持して、該冷たいガスがその周囲の高温の温度を受けて膨張されたときの膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ようにしてある。これにより、ガス存在空間内を冷たいガスと置換するだけで、この冷たいガスが周囲の高温の温度を受けて膨張されることによる大きな膨張圧によって、大きな押し湯圧力が得られることになる。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造方法にあっては、その第2の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項2に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内にその周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填すると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持することにより、該膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ようにしてある。これにより、ガス存在空間に膨張圧発生用物質を充填するだけで、この膨張圧発生用物質がその周囲の高温の温度を受けて気化されることによる大きな膨張圧によって、大きな押し湯圧力が得られることになる。
【0008】
前記膨張圧発生用物質としては、安価で入手し易い適宜のものを用いることができるが、例えば、水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかを用いることができる。
【0009】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造装置にあっては、その第1の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項4に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内のガスを排気するための排気装置と、
前記ガス存在空間内に冷たいガスを供給するための冷却ガス供給装置と、
を備えているようにしてある。これにより、請求項1に記載された鋳造方法を行うことができる。
【0010】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造装置にあっては、その第2の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項5に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内に、その周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填するための膨張圧発生用物質供給装置と、
を備えているようにしてある。これにより、請求項2に記載の鋳造方法を行うことができる。勿論、前記膨張圧発生用物質としては、前述のように、例えば水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかを用いることができる(請求項6対応)。
【0011】
請求項5に記載された上記解決手法を前提として、次のような解決手法を合わせて採択することができる。すなわち、
型締め圧力を調整することにより溶湯に作用するガス圧力を調整するための型締め圧力調整手段を備えている、ようにすることができる(請求項7対応)。この場合、押し湯圧力が、所定圧力以下になってしまったり、所定圧力以上になってしまうことを防止することができる。
【0012】
前記ガス存在空間内の圧力が所定圧力以上になることを規制するリリーフ手段を備えている、ようにすることができる(請求項(8対応)。この場合、簡単な手法によって、押し湯圧力が所定圧力以上になってしまうことを防止できる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な手法によって大きな押し湯圧力を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1において、鋳型1は、ディーゼルエンジンのピストンを形成するためのものとなっており、複数の分割型から構成されている。このような分割型とされた鋳型1は、左右外方に開かれる左右一対の外型12L、12Rと、下方に開かれる中央型13と、上方に開かれる上型14とを有して、各型12L、12R、13、14を閉じたときに、ピストン形成用の製品キャビティ15が画成される。
【0015】
複合用材料2は、ピストンリング溝部分を構成するもので、全体として環状とされると共に気孔を有するものとなっており、耐熱性および耐摩耗性を有する。このような複合用材料2は、例えば、ニッケル多孔体(住友電工セルメット:体積率約5%、平均気孔径0.8mm)により形成されている。なお、ピストンリング溝は通常はその外周面に環状の溝が形成されているものであるが、この環状の溝は後行程の機械加工によって形成されるようになっており、したがって鋳型1にセットされる複合用材料2はその外周面に環状の溝を有しないものとされている。
【0016】
鋳型1には、上記複合用材料2を製品キャビティ15の所定位置に保持するための保持部16が形成されている。この保持部16は、実施形態では、外型12L、12Rに形成されて複合用材料2の下面周縁部を支承する支承部16aと、上型14に形成されて、複合用材料2の上面周縁部を押圧する押圧部16bとから構成されている。外型12Rには、製品キャビティ15内の所定位置にセットされた複合用材料2(の外周面)に対して常時連通されるリリーフ通路17形成されている。このリリーフ通路17は、大気に常時開放されている。なお、所定位置にセットされた複合用材料2の近傍には、冷却水通路形成用の塩中子18がセットされる(これを支持する支持部は図示略)。
【0017】
一方の外型12Lには、製品キャビティ15に連なる金属溶湯の注湯口21が形成されている。この注湯口21は、開閉可能な蓋体22によって施蓋可能となっており、閉じられた施蓋時には、注湯口21は密閉状態とされる。そして、蓋体22には、開閉弁23を有するエア供給通路24が接続されている。開閉弁23を開くことにより、所定の圧力に調整された後のエア圧が、エア供給通路24を介して、密閉状態にある注湯口21に対して印加することが可能となっている。
【0018】
上型14は、製品キャビティ15の上部に対して常時連通されるガス存在空間31を画成するものとなっている。このガス存在空間31そのものは、ピストンを成形するのに必要な製品キャビティ15に比して余分な空間となっている(製品としてのピストン頂面に相当する高さ位置が図1符号αで示される)。すなわち、金属溶湯は、図1一点鎖線で示すように、製品キャビティ15の上端位置(α線相当)よりも若干上方位置にまで金属溶湯が存在するように供給されるが、この一点鎖線よりも上方空間が、金属溶湯の注湯後に存在する実質的なガス存在空間とされる。そして、製品としてのピストンの頂面(α線対応)よりも上方に位置する鋳造部分は、後の機械加工によって除去されるものである。
【0019】
上型14は、上記ガス存在空間31の上方を覆う蓋部部材41を別途有する。この蓋部材41を開くことにより、ガス存在空間31が大気に開放され、蓋部材41を閉じることにより、ガス存在空間31が密閉状態に閉じられる。この蓋部材41にはリリーフ通路42が接続されており、このリリーフ通路42には、ガス存在空間31内が所定圧力以上となったときに開弁されるリリーフ弁43が接続されている。
【0020】
蓋部材41には、さらに、冷却ガスの供給通路45が接続されている。この冷却ガス供給通路45には、その途中に冷却器46が接続され、ガス供給ポンプ47によって供給される室温程度のガス(実施形態ではエア)が、冷却器46で冷却された後、ガス存在空間31内に供給可能となっている。なお、実施形態では、冷却ガスとしては、大気中のエアを冷却したものを用いるようにしてある。
【0021】
上記冷却ガスの供給通路45には、蓋部材41と冷却器46との間において、切換弁48が接続されている。この切換弁48は、ガス存在空間31内を、選択的に、冷却器46に接続する状態と大気に開放する状態と閉じた状態(ガス存在空間31内を密閉状態に維持)とに切換えるものである。なお、冷却ガスとしては、室温程度の温度のものであってもよく、この場合は冷却器46は不用となる(注湯直後にガス存在空間31に存在するガスの温度に比して室温が十分に低温である)。
【0022】
次に、図1に示す鋳造装置を用いて鋳造する手法について説明する。まず、蓋体22が開かれ、かつ蓋部材41が閉じられると共に切換弁48が閉じられている状態とされる。また、複合用材料2および塩中子18が鋳型1内にセットされる。この状態で、例えばアルミニウム合金の溶融したものつまり金属溶湯が、注湯口21を介して製品キャビティ15内に注湯され、この注湯量は、製品キャビティ15を満たして、金属溶湯の上面が図1一点鎖線付近にまで位置する状態とされる。なお、金属溶湯の注湯時には、蓋部材41を開いておくようにすることもできる。
【0023】
製品キャビティ15への金属溶湯の注湯によって、ピストンが成形されると共に、金属溶湯の一部が複合用材料2内に含浸される。複合用材料2の気孔内にあるガスは、リリーフ通路17から大気へ逃げるために、金属溶湯が複合用材料2内に十分に含浸される。
【0024】
金属溶湯の注湯完了後に、蓋体22、蓋部材41は閉じられた状態とされる。そして、切換弁48を大気側に開放することにより、ガス存在空間31内の高温のガスが大気に排出される。この後、切換弁48を冷却器46側に切換えることにより、冷却ガスがガス存在空間31内に充填される。このガス存在空間31内への冷却ガスの充填後は、すみやかに切換弁48が閉じられる(ガス存在空間31が密閉状態)。ガス存在空間31内に充填された冷却ガスは、その周囲、すなわち金属溶湯や鋳型1の高温の温度を受けて膨張して、大きな膨張圧を発生する。このガス存在空間31内で発生された大きな膨張圧は、金属溶湯を押圧することになり、この結果金属溶湯が、鋳型1内にくまなく行き渡る作用が助長されると共に複合用材料2内への含浸がより十分に行われる。
【0025】
ガス存在空間31内が所定圧力以上になると、リリーフ弁43が開いて、ガス存在空間31内が不用意に高圧になり過ぎてしまう事態が防止される。押し湯圧力が不足するときは、開閉弁23を開いて、所定圧力に調整されたエア圧がエア供給路24から注湯口21側に作用され、押し湯圧力の不足という事態が防止される。なお、ガス存在空間31内での冷却ガスの膨張作用を行わせつつ、エア供給路24からの所定圧力のエア圧供給をも常時行うようにすることもできる。
【0026】
金属溶湯が凝固して鋳型から取り出された後の複合用材料2の付近の断面が、図2に示される。この図2において、51は製品キャビティ15に対応した形状とされたピストン本体であり、このピストン本体51に複合用材料2が鋳込まれている。複合用材料2の外周面を機械加工することによって、図3に示すようにピストンリング溝52が形成される。なお、図2、図3中符号53は、塩中子18に対応して形成された冷却水通路である。
【0027】
図4は、本発明の別の実施形態を示すものであり、図1に示すものと同一構成要素には同一符号を付してその説明は省略する。図4の実施形態では、ガス存在空間31内で発生させる膨張圧を、液体あるいは固体が気化したときの圧力を利用するものとなっている。このため、図4のものでは、図1のものに比して、膨張圧発生用物質の供給装置60が新たに設けられる一方、冷却ガス供給装置(45〜48)を有しないものとなっている。
【0028】
図4の実施形態において新たに設けられた膨張圧発生用物質の供給装置60は、液体あるいは固体の膨張圧発生用物質を貯溜するタンク61と、タンク61に連なる供給路62と、供給路62を開閉する開閉弁63とを有する。これらの各種構成要素61、62、63は、図示を略す駆動手段によって、図4矢印で示すように、ガス存在空間31に対して近接、離間できるようにされている。
【0029】
金属溶湯の製品キャビティの注湯は、、図1の場合と同様に行われる。金属溶湯の注湯後は、蓋部材41が一端開かれ、供給装置60がガス存在空間31に近接された図4の位置へと駆動される。この状態では、供給路62の先端は、ガス存在空間31の直上方に位置されており、この状態で開閉弁63を開くことにより、タンク61内の膨張圧発生用物質がガス存在空間31内に供給される。
【0030】
ガス存在空間31内に膨張圧発生用物質が充填された後は、すみやかに蓋部材41が閉じられて、ガス存在空間31が密閉状態とされる。ガス存在空間31内に充填された膨張圧発生用物質は、その周囲の高温の温度を受けて気化し、大きな膨張圧を発生し、この大きな膨張圧が押し湯の作用を行うことになる。なお、図4の実施形態においても、冷却ガス供給装置(45〜48)を設けて、膨張圧発生用物質が気化することによる膨張圧と冷却ガスの膨張圧とを併用するようにしてもよい。
【0031】
上記膨張圧発生用物質としては、適宜のものを選択できるが、例えば、液体としては、水、エチルアルコール等のアルコールがあり、固体としては、ドライアイス、ビニルアルコール、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレン等があり、いずれかを選択的に用いることができる。ただし、金属溶湯と反応する等によって危険を生じない物質であることが必要であり、金属溶湯が例えばアルミニウム合金である場合は上記いずれの物質も使用可能であるが、金属溶湯がマグネシウム合金の場合は、上記物質のうち水は使用不可である。また、金属溶湯と水素とが反応して鋳造品の欠陥を生じる可能性があるので、気化したときに水素を発生しない物質を用いるのが好ましい。勿論、膨張圧発生用物質としては、金属溶湯の注湯後におけるガス存在空間31近傍の高温の温度でもって気化するものであることが条件となるが、金属溶湯の温度は約750度C程度であるので、この金属溶湯に接触する限りにおいては、上述のように列記された膨張圧発生用物質は確実に気化して大きな膨張圧を発生することになる(鋳型1の温度は250度C程度である)。勿論、実用化に際しては、コストをも考慮して、極力安価な膨張圧発生用物質を使用するのが望まれるものとなる(この意味において、マグネシウム合金を除き、膨張圧発生用物質として水を用いるのが好ましい)。
【0032】
以上実施形態について説明したが、鋳造品としては、エンジンのピストンに限らず、適宜の鋳造品に対しても同様に適用できるものである。また、複合用材料2としては、鋳造品の所定部位に要求される機能に応じて適宜のものを用いることができる。膨張圧発生用物質の供給を行う場合に、蓋部材41を常時閉じておくように設定することもできる。すなわち、蓋部材41に膨張圧発生用物質の供給通路を接続すると共に、この供給通路に開閉弁を接続しておくことにより、蓋部材41が閉じられた状態において、開閉弁を開いてガス存在空間31内に膨張圧発生用物質を供給し、この供給後に開閉弁を閉じることによりガス存在空間31を密閉状態に維持することができる(この場合、上型14に蓋部材41のような開閉用の部材を別途設けることが不用になる)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部断面図。
【図2】複合用材料が鋳造品としてのピストンに鋳込まれた状態を示す要部断面図。
【図3】図2の状態から、複合用材料の外周面にピストンリング溝を機械加工した後の状態を示す断面図。
【図4】本発明の別の実施形態を示す要部断面図。
【符号の説明】
1:鋳型
2:複合用材料
15:製品キャビティ
16:複合用材料の保持部
17:リリーフ通路
24:エア圧供給通路(押し湯圧力)
31:ガス存在空間
42:リリーフ通路
43:リリーフ弁
45:冷却ガス供給路
48:切換弁
60:膨張圧発生用物質の供給装置
61:膨張圧発生用物質の貯溜タンク
62:膨張圧発生用物質の供給路
63:開閉弁
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳造方法および鋳造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車用エンジンのピストンやコンロッド等、軽合金による鋳造品にあっては、部分的に耐熱性や耐摩耗性が不足する場合ある。このため、軽金属の鋳造品のうち耐熱性や耐摩耗性等の必要な特定部位に、必要機能確保のための複合用材料を鋳込むことが行われている。すなわち、鋳型の製品キャビティのうち所定位置に複合用材料を配置して、その後に軽合金の金属溶湯を注湯することによって、所望位置に複合用材料が鋳込まれた鋳造品を得るようにしている。そして、複合用材料は気孔を有するため、金属溶湯が複合用材料内に含浸することになり、金属溶湯が凝固した状態では、凝固した軽合金と複合用材料とが強固に一体化されることになる。
【0003】
気孔を有する複合用材料に溶融金属を十分に含浸させるために、鋳型内への金属溶湯の注湯後は、金属溶湯に対して押し湯用の大きな圧力を印加することが要求される。従来は、特許第3212245号公報に示すように、押し湯用の圧力を、型締め後の金属溶湯に対して所定圧に調整されたエア圧を印加することにより行っていた。また、上記公報には、複合用材料に対して金属溶湯がより十分に含浸するように、複合用材料に連なるリリーフ通路を鋳型に形成して、金属溶湯を注湯したときに、複合用材料の気孔内に存在するガスがリリーフ通路を介して外部に十分に排気されるようにすることも開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エア圧を外部から供給して大きな押し湯圧力を得るためには、エア圧供給のための特別な装置が必要となる。この押し湯用の大きなエア圧を、工場内で使用される通常のエア圧を利用することも考えられるが、工場内での通常のエア圧は小さすぎるため、高圧のエア圧を発生させるための高圧発生手段が別途必要となる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、押し湯用の大きな圧力を簡単に得られるようにした鋳造方法および鋳造装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造方法にあっては、その第1の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内の高温のガスを冷たいガスと置換させると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持して、該冷たいガスがその周囲の高温の温度を受けて膨張されたときの膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ようにしてある。これにより、ガス存在空間内を冷たいガスと置換するだけで、この冷たいガスが周囲の高温の温度を受けて膨張されることによる大きな膨張圧によって、大きな押し湯圧力が得られることになる。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造方法にあっては、その第2の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項2に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内にその周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填すると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持することにより、該膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ようにしてある。これにより、ガス存在空間に膨張圧発生用物質を充填するだけで、この膨張圧発生用物質がその周囲の高温の温度を受けて気化されることによる大きな膨張圧によって、大きな押し湯圧力が得られることになる。
【0008】
前記膨張圧発生用物質としては、安価で入手し易い適宜のものを用いることができるが、例えば、水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかを用いることができる。
【0009】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造装置にあっては、その第1の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項4に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内のガスを排気するための排気装置と、
前記ガス存在空間内に冷たいガスを供給するための冷却ガス供給装置と、
を備えているようにしてある。これにより、請求項1に記載された鋳造方法を行うことができる。
【0010】
前記目的を達成するため、本発明における鋳造装置にあっては、その第2の解決手法として次のようにしてある。すなわち、特許請求の範囲における請求項5に記載のように、
製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内に、その周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填するための膨張圧発生用物質供給装置と、
を備えているようにしてある。これにより、請求項2に記載の鋳造方法を行うことができる。勿論、前記膨張圧発生用物質としては、前述のように、例えば水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかを用いることができる(請求項6対応)。
【0011】
請求項5に記載された上記解決手法を前提として、次のような解決手法を合わせて採択することができる。すなわち、
型締め圧力を調整することにより溶湯に作用するガス圧力を調整するための型締め圧力調整手段を備えている、ようにすることができる(請求項7対応)。この場合、押し湯圧力が、所定圧力以下になってしまったり、所定圧力以上になってしまうことを防止することができる。
【0012】
前記ガス存在空間内の圧力が所定圧力以上になることを規制するリリーフ手段を備えている、ようにすることができる(請求項(8対応)。この場合、簡単な手法によって、押し湯圧力が所定圧力以上になってしまうことを防止できる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な手法によって大きな押し湯圧力を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1において、鋳型1は、ディーゼルエンジンのピストンを形成するためのものとなっており、複数の分割型から構成されている。このような分割型とされた鋳型1は、左右外方に開かれる左右一対の外型12L、12Rと、下方に開かれる中央型13と、上方に開かれる上型14とを有して、各型12L、12R、13、14を閉じたときに、ピストン形成用の製品キャビティ15が画成される。
【0015】
複合用材料2は、ピストンリング溝部分を構成するもので、全体として環状とされると共に気孔を有するものとなっており、耐熱性および耐摩耗性を有する。このような複合用材料2は、例えば、ニッケル多孔体(住友電工セルメット:体積率約5%、平均気孔径0.8mm)により形成されている。なお、ピストンリング溝は通常はその外周面に環状の溝が形成されているものであるが、この環状の溝は後行程の機械加工によって形成されるようになっており、したがって鋳型1にセットされる複合用材料2はその外周面に環状の溝を有しないものとされている。
【0016】
鋳型1には、上記複合用材料2を製品キャビティ15の所定位置に保持するための保持部16が形成されている。この保持部16は、実施形態では、外型12L、12Rに形成されて複合用材料2の下面周縁部を支承する支承部16aと、上型14に形成されて、複合用材料2の上面周縁部を押圧する押圧部16bとから構成されている。外型12Rには、製品キャビティ15内の所定位置にセットされた複合用材料2(の外周面)に対して常時連通されるリリーフ通路17形成されている。このリリーフ通路17は、大気に常時開放されている。なお、所定位置にセットされた複合用材料2の近傍には、冷却水通路形成用の塩中子18がセットされる(これを支持する支持部は図示略)。
【0017】
一方の外型12Lには、製品キャビティ15に連なる金属溶湯の注湯口21が形成されている。この注湯口21は、開閉可能な蓋体22によって施蓋可能となっており、閉じられた施蓋時には、注湯口21は密閉状態とされる。そして、蓋体22には、開閉弁23を有するエア供給通路24が接続されている。開閉弁23を開くことにより、所定の圧力に調整された後のエア圧が、エア供給通路24を介して、密閉状態にある注湯口21に対して印加することが可能となっている。
【0018】
上型14は、製品キャビティ15の上部に対して常時連通されるガス存在空間31を画成するものとなっている。このガス存在空間31そのものは、ピストンを成形するのに必要な製品キャビティ15に比して余分な空間となっている(製品としてのピストン頂面に相当する高さ位置が図1符号αで示される)。すなわち、金属溶湯は、図1一点鎖線で示すように、製品キャビティ15の上端位置(α線相当)よりも若干上方位置にまで金属溶湯が存在するように供給されるが、この一点鎖線よりも上方空間が、金属溶湯の注湯後に存在する実質的なガス存在空間とされる。そして、製品としてのピストンの頂面(α線対応)よりも上方に位置する鋳造部分は、後の機械加工によって除去されるものである。
【0019】
上型14は、上記ガス存在空間31の上方を覆う蓋部部材41を別途有する。この蓋部材41を開くことにより、ガス存在空間31が大気に開放され、蓋部材41を閉じることにより、ガス存在空間31が密閉状態に閉じられる。この蓋部材41にはリリーフ通路42が接続されており、このリリーフ通路42には、ガス存在空間31内が所定圧力以上となったときに開弁されるリリーフ弁43が接続されている。
【0020】
蓋部材41には、さらに、冷却ガスの供給通路45が接続されている。この冷却ガス供給通路45には、その途中に冷却器46が接続され、ガス供給ポンプ47によって供給される室温程度のガス(実施形態ではエア)が、冷却器46で冷却された後、ガス存在空間31内に供給可能となっている。なお、実施形態では、冷却ガスとしては、大気中のエアを冷却したものを用いるようにしてある。
【0021】
上記冷却ガスの供給通路45には、蓋部材41と冷却器46との間において、切換弁48が接続されている。この切換弁48は、ガス存在空間31内を、選択的に、冷却器46に接続する状態と大気に開放する状態と閉じた状態(ガス存在空間31内を密閉状態に維持)とに切換えるものである。なお、冷却ガスとしては、室温程度の温度のものであってもよく、この場合は冷却器46は不用となる(注湯直後にガス存在空間31に存在するガスの温度に比して室温が十分に低温である)。
【0022】
次に、図1に示す鋳造装置を用いて鋳造する手法について説明する。まず、蓋体22が開かれ、かつ蓋部材41が閉じられると共に切換弁48が閉じられている状態とされる。また、複合用材料2および塩中子18が鋳型1内にセットされる。この状態で、例えばアルミニウム合金の溶融したものつまり金属溶湯が、注湯口21を介して製品キャビティ15内に注湯され、この注湯量は、製品キャビティ15を満たして、金属溶湯の上面が図1一点鎖線付近にまで位置する状態とされる。なお、金属溶湯の注湯時には、蓋部材41を開いておくようにすることもできる。
【0023】
製品キャビティ15への金属溶湯の注湯によって、ピストンが成形されると共に、金属溶湯の一部が複合用材料2内に含浸される。複合用材料2の気孔内にあるガスは、リリーフ通路17から大気へ逃げるために、金属溶湯が複合用材料2内に十分に含浸される。
【0024】
金属溶湯の注湯完了後に、蓋体22、蓋部材41は閉じられた状態とされる。そして、切換弁48を大気側に開放することにより、ガス存在空間31内の高温のガスが大気に排出される。この後、切換弁48を冷却器46側に切換えることにより、冷却ガスがガス存在空間31内に充填される。このガス存在空間31内への冷却ガスの充填後は、すみやかに切換弁48が閉じられる(ガス存在空間31が密閉状態)。ガス存在空間31内に充填された冷却ガスは、その周囲、すなわち金属溶湯や鋳型1の高温の温度を受けて膨張して、大きな膨張圧を発生する。このガス存在空間31内で発生された大きな膨張圧は、金属溶湯を押圧することになり、この結果金属溶湯が、鋳型1内にくまなく行き渡る作用が助長されると共に複合用材料2内への含浸がより十分に行われる。
【0025】
ガス存在空間31内が所定圧力以上になると、リリーフ弁43が開いて、ガス存在空間31内が不用意に高圧になり過ぎてしまう事態が防止される。押し湯圧力が不足するときは、開閉弁23を開いて、所定圧力に調整されたエア圧がエア供給路24から注湯口21側に作用され、押し湯圧力の不足という事態が防止される。なお、ガス存在空間31内での冷却ガスの膨張作用を行わせつつ、エア供給路24からの所定圧力のエア圧供給をも常時行うようにすることもできる。
【0026】
金属溶湯が凝固して鋳型から取り出された後の複合用材料2の付近の断面が、図2に示される。この図2において、51は製品キャビティ15に対応した形状とされたピストン本体であり、このピストン本体51に複合用材料2が鋳込まれている。複合用材料2の外周面を機械加工することによって、図3に示すようにピストンリング溝52が形成される。なお、図2、図3中符号53は、塩中子18に対応して形成された冷却水通路である。
【0027】
図4は、本発明の別の実施形態を示すものであり、図1に示すものと同一構成要素には同一符号を付してその説明は省略する。図4の実施形態では、ガス存在空間31内で発生させる膨張圧を、液体あるいは固体が気化したときの圧力を利用するものとなっている。このため、図4のものでは、図1のものに比して、膨張圧発生用物質の供給装置60が新たに設けられる一方、冷却ガス供給装置(45〜48)を有しないものとなっている。
【0028】
図4の実施形態において新たに設けられた膨張圧発生用物質の供給装置60は、液体あるいは固体の膨張圧発生用物質を貯溜するタンク61と、タンク61に連なる供給路62と、供給路62を開閉する開閉弁63とを有する。これらの各種構成要素61、62、63は、図示を略す駆動手段によって、図4矢印で示すように、ガス存在空間31に対して近接、離間できるようにされている。
【0029】
金属溶湯の製品キャビティの注湯は、、図1の場合と同様に行われる。金属溶湯の注湯後は、蓋部材41が一端開かれ、供給装置60がガス存在空間31に近接された図4の位置へと駆動される。この状態では、供給路62の先端は、ガス存在空間31の直上方に位置されており、この状態で開閉弁63を開くことにより、タンク61内の膨張圧発生用物質がガス存在空間31内に供給される。
【0030】
ガス存在空間31内に膨張圧発生用物質が充填された後は、すみやかに蓋部材41が閉じられて、ガス存在空間31が密閉状態とされる。ガス存在空間31内に充填された膨張圧発生用物質は、その周囲の高温の温度を受けて気化し、大きな膨張圧を発生し、この大きな膨張圧が押し湯の作用を行うことになる。なお、図4の実施形態においても、冷却ガス供給装置(45〜48)を設けて、膨張圧発生用物質が気化することによる膨張圧と冷却ガスの膨張圧とを併用するようにしてもよい。
【0031】
上記膨張圧発生用物質としては、適宜のものを選択できるが、例えば、液体としては、水、エチルアルコール等のアルコールがあり、固体としては、ドライアイス、ビニルアルコール、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレン等があり、いずれかを選択的に用いることができる。ただし、金属溶湯と反応する等によって危険を生じない物質であることが必要であり、金属溶湯が例えばアルミニウム合金である場合は上記いずれの物質も使用可能であるが、金属溶湯がマグネシウム合金の場合は、上記物質のうち水は使用不可である。また、金属溶湯と水素とが反応して鋳造品の欠陥を生じる可能性があるので、気化したときに水素を発生しない物質を用いるのが好ましい。勿論、膨張圧発生用物質としては、金属溶湯の注湯後におけるガス存在空間31近傍の高温の温度でもって気化するものであることが条件となるが、金属溶湯の温度は約750度C程度であるので、この金属溶湯に接触する限りにおいては、上述のように列記された膨張圧発生用物質は確実に気化して大きな膨張圧を発生することになる(鋳型1の温度は250度C程度である)。勿論、実用化に際しては、コストをも考慮して、極力安価な膨張圧発生用物質を使用するのが望まれるものとなる(この意味において、マグネシウム合金を除き、膨張圧発生用物質として水を用いるのが好ましい)。
【0032】
以上実施形態について説明したが、鋳造品としては、エンジンのピストンに限らず、適宜の鋳造品に対しても同様に適用できるものである。また、複合用材料2としては、鋳造品の所定部位に要求される機能に応じて適宜のものを用いることができる。膨張圧発生用物質の供給を行う場合に、蓋部材41を常時閉じておくように設定することもできる。すなわち、蓋部材41に膨張圧発生用物質の供給通路を接続すると共に、この供給通路に開閉弁を接続しておくことにより、蓋部材41が閉じられた状態において、開閉弁を開いてガス存在空間31内に膨張圧発生用物質を供給し、この供給後に開閉弁を閉じることによりガス存在空間31を密閉状態に維持することができる(この場合、上型14に蓋部材41のような開閉用の部材を別途設けることが不用になる)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部断面図。
【図2】複合用材料が鋳造品としてのピストンに鋳込まれた状態を示す要部断面図。
【図3】図2の状態から、複合用材料の外周面にピストンリング溝を機械加工した後の状態を示す断面図。
【図4】本発明の別の実施形態を示す要部断面図。
【符号の説明】
1:鋳型
2:複合用材料
15:製品キャビティ
16:複合用材料の保持部
17:リリーフ通路
24:エア圧供給通路(押し湯圧力)
31:ガス存在空間
42:リリーフ通路
43:リリーフ弁
45:冷却ガス供給路
48:切換弁
60:膨張圧発生用物質の供給装置
61:膨張圧発生用物質の貯溜タンク
62:膨張圧発生用物質の供給路
63:開閉弁
Claims (8)
- 製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内の高温のガスを冷たいガスと置換させると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持して、該冷たいガスがその周囲の高温の温度を受けて膨張されたときの膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ことを特徴とする鋳造方法。 - 製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造方法であって、
前記製品キャビティに金属溶湯を注湯した後で鋳型が高温とされている間に、前記ガス存在空間内にその周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填すると共に、該ガス存在空間を密閉状態に維持することにより、該膨張圧によって金属溶湯を押圧する、
ことを特徴とする鋳造方法。 - 請求項2において、
前記膨張圧発生用物質が、水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかである、ことを特徴とする鋳造方法。 - 製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内のガスを排気するための排気装置と、
前記ガス存在空間内に冷たいガスを供給するための冷却ガス供給装置と、
を備えていることを特徴とする鋳造装置。 - 製品キャビティと、該製品キャビティに連なると共に注湯後もガスが存在するガス存在空間を形成する押し湯部と、気孔を有する複合用材料を保持する保持部とを有する鋳型に対して、該保持部に複合用材料を保持させた状態で該製品キャビティに金属溶湯を注湯することにより、該複合用材料が鋳込まれた鋳造品を鋳造する鋳造装置であって、
前記ガス存在空間を金属溶湯の注湯後において密閉状態に維持するための密閉手段と、
前記ガス存在空間内に、その周囲の高温の温度を受けて気化することにより膨張圧を発生する固体または液体の膨張圧発生用物質を充填するための膨張圧発生用物質供給装置と、
を備えていることを特徴とする鋳造装置。 - 請求項5において、
前記膨張圧発生用物質が、水、アルコール、ドライアイス、セシウム、セレン、ヨウ素、黄燐、酢酸、樟脳、ナフタレンのいずれかである、ことを特徴とする鋳造装置。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1項において、
型締め圧力を調整することにより金属溶湯に作用するガス圧力を調整するための型締め圧力調整手段を備えている、ことを特徴とする鋳造装置。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1項において、
前記ガス存在空間内の圧力が所定圧力以上になることを規制するリリーフ手段を備えている、ことを特徴とする鋳造装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP1842607A2 (de) * | 2006-04-04 | 2007-10-10 | O. St. Feingussgesellschaft m. b. H. | Verfahren zum Feingiessen von metallischen Formteilen und Vorrichtung hierfür |
CN103433468A (zh) * | 2013-08-08 | 2013-12-11 | 无锡锦绣轮毂有限公司 | 金属型辅压重力铸造系统及铸造方法 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223505A patent/JP2004058133A/ja active Pending
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EP1842607A3 (de) * | 2006-04-04 | 2007-10-17 | O. St. Feingussgesellschaft m. b. H. | Verfahren zum Feingiessen von metallischen Formteilen und Vorrichtung hierfür |
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