JP4448629B2 - 鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法 - Google Patents

鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給してキャビティ内でアルミニウム鋳物を鋳造する鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムの鋳造において、金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給する際に、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成し、生成した酸化膜がアルミニウム溶湯の表面張力を増加させ、アルミニウム溶湯の流動性を低下させることが起こり得る。このため、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成すると、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことは難しい。
【0003】
そこで、アルミニウム鋳造の際に、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に維持する鋳造方法として、例えば特願平11−91445号公報(特開2000−280063)「アルミニウム鋳造方法」が提案されている。以下、この技術について同公報の図を再掲して説明する。
【0004】
図17は従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図である。アルミニウムを鋳造する際には、先ず窒素ガスボンべ150から窒素ガス(N2ガス)を金型151のキャビティ152に充填する。次に、窒素ガスを蓄留タンク153に送り、蓄留タンク153内のマグネシウム粉末(Mg粉末)を窒素ガスと共に加熱炉155内に送り込む。
この加熱炉155内でマグネシウム粉末を昇華させ、昇華したマグネシウムを窒素ガスと反応させて気体状のマグネシウム窒素化合物(Mg32)を得る。
【0005】
このマグネシウム窒素化合物を配管156を通して金型151のキャビティ152内に導入し、導入したマグネシウム窒素化合物をキャビティ152の表面に析出させる。
次に、キャビティ152内にアルミニウム溶湯157を供給する。供給したアルミニウム溶湯157をマグネシウム窒素化合物と反応させて、アルミニウム溶湯157の表面の酸化物から酸素を取り除く。
【0006】
これにより、アルミニウム溶湯157の表面に酸化皮膜が発生することを防ぎ、アルミニウム溶湯157の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、アルミニウム溶湯157のキャビティ152への湯廻り性を好適に保つことができ、アルミニウム鋳造品の品質を高めることができる。
【0007】
ここで、上述したマグネシウム窒素化合物の生成工程及びアルミニウム溶湯の注湯工程ついて詳しく説明する。
先ず、マグネシウム窒素化合物の生成工程について説明する。加熱炉155の内部でマグネシウム粉末を昇華させ、この昇華したマグネシウムを加熱炉155の内部で窒素ガスと反応させる。昇華したマグネシウムは加熱炉155の内部で浮遊しているために、マグネシウムの表面全域に窒素ガスが付着し、表面全域にマグネシウム窒素化合物を生成することになる。
【0008】
次に、アルミニウム溶湯の注湯工程について説明する。
図18は従来のアルミニウム鋳造方法の要部説明図であり、キャビティ152の表面にマグネシウム窒素化合物の層159(以下、「マグネシウム窒素化合物層159」という)を析出させた後、キャビティ152にアルミニウム溶湯157を供給した状態を示す。
キャビティ152にアルミニウム溶湯157を供給することにより、アルミニウム溶湯157の表面157aが、マグネシウム窒素化合物層159の表面159aに接触し、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除く。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図18で説明したように、アルミニウム溶湯157の表面157aをマグネシウム窒素化合物層159の表面159aに接触させることで、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除くことができる。
このことから、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除くためには、アルミニウム溶湯157の表面157aが接触するマグネシウム窒素化合物層159の表面159aのみを存在させればよいことが判る。
【0010】
しかし、図17で説明したように、マグネシウム窒素化合物の生成を、加熱炉155の内部にマグネシウムを浮遊させた状態でおこなうので、マグネシウムの表面全域に窒素ガスが付着する。このため、マグネシウムの表面全域にマグネシウム窒素化合物を生成することになる。このマグネシウム窒素化合物をキャビティ152の表面に析出させるので、図18に示すように膜厚tのマグネシウム窒素化合物層159になる。
【0011】
このため、キャビティ152の表面に、過剰なマグネシウム窒素化合物層159を析出させることになり、マグネシウム窒素化合物層159の生成に時間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになる。
加えて、過剰なマグネシウム窒素化合物層159を生成することになるので、窒素ガスの使用量も多くなり、そのことがコストを下げる妨げになる。
【0012】
さらに、上記公報の鋳造方法では、マグネシウム窒素化合物層159をキャビティ152の表面に生成する工程の前工程において、キャビティ152内に空気を残したままの状態で、キャビティ152内に窒素ガスを充填する方法を採用している。
このため、キャビティ152内から空気を円滑に逃がすことが難しく、キャビティ152内を窒素ガスの雰囲気状態にするまでに時間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、マグネシウム窒素化合物の生成を短い時間でおこなうことができ、かつ窒素ガスの使用量を少なくすることができる鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、型閉めした金型のキャビティ内に不活性ガスを充填する工程と、この不活性ガスを充填したキャビティ内に、気体状のマグネシウムを導入してキャビティ表面にマグネシウムを析出させる工程と、金型を加熱することにより、マグネシウムを析出させたキャビティ表面を所定温度に加熱する工程と、このキャビティ内に窒素ガスを導入してキャビティ表面に窒化マグネシウムを生成させる工程と、この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する工程とから鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を構成する。
【0015】
窒化マグネシウムを生成する際に、先ずキャビティの表面にマグネシウムを析出させてマグネシウム層を形成し、次にキャビティ表面を加熱した後、キャビティに窒素ガスを導入してマグネシウム層の表面に窒化マグネシウムを生成する。これにより、マグネシウム層の表面だけに窒化マグネシウムを生成することができるので、窒化マグネシウムの生成時間を短くすることができる。
加えて、マグネシウム層の表面だけに窒化マグネシウムを生成するだけでよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0016】
請求項2は、キャビティ表面を金型に埋設したカートリッジヒータで加熱することを特徴とする。
【0017】
ここで、カートリッジヒータとは、ヒータをカートリッジに収容したもので、金型に簡単に埋設することが可能なものである。
一般に、鋳造金型のキャビティ表面を加熱する方法として、金型全体を加熱することによりキャビティ表面を加熱する方法が考えられる。しかし、金型全体を加熱するためには多量の熱エネルギを必要とする。加えて、金型全体を加熱する方法ではキャビティ表面を所定温度に加熱するまでに時間がかかる。
【0018】
そこで、請求項2では、金型に埋設したカートリッジヒータでキャビティ表面を加熱するようにした。金型にカートリッジヒータを埋設することで、金型の一部のみを加熱するだけで、キャビティ表面を加熱することができる。
このため、キャビティ表面を所定温度に加熱するための熱エネルギを減らすことができる。加えて、金型のうちの必要な部位のみを加熱するだけでよいので、比較的短い時間でキャビティ表面を所定温度まで加熱することができる。
【0019】
請求項3は、キャビティ表面を加熱するとき、前記鋳物の薄肉部に相当する部位のみを加熱することを特徴とする。
【0020】
一般に、アルミニウム溶湯をキャビティに注湯するとき、キャビティが広い空間であればアルミニウム溶湯を円滑に流すことができる。しかし、キャビティが狭い空間の場合にはアルミニウム溶湯は円滑に流れ難い。
そこで、請求項3では、キャビティが狭い空間、すなわち鋳物の薄肉部に相当する部位のみを加熱することにした。薄肉部に相当する部位を加熱することで、この部位のマグネシウム層に窒化マグネシウムを生成することができる。
【0021】
薄肉部に相当する部位までアルミニウム溶湯が到達したとき、アルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムに接触させることができる。このアルミニウム溶湯の表面には酸化物が発生している可能性があるが、万が一酸化物が発生していても、酸化物が窒化マグネシウムと反応して酸化物から酸素を取り除くことができる。
【0022】
これにより、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、薄肉部に相当する部位においてアルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0023】
加えて、鋳物の薄肉部に相当する部位を加熱して、この部位のみに窒化マグネシウムを生成させることにより、窒素の使用量をさらに減らすことが可能になる。
【0024】
請求項4は、キャビティ表面の温度を、前記金型に埋設した熱電対で検知することを特徴とする。
【0025】
ここで、熱電対とは、二つの金属で閉回路をつくり、接点間の温度差によって起電力を生じさせる装置である。
キャビティ表面の温度を熱電対で検知することで、キャビティ表面の温度をより正確に所定温度に設定することができる。このため、マグネシウム層に窒化マグネシウムを効率よく生成させることができる。従って、アルミニウム製の鋳物を鋳造する工程を短くすることができる。
【0026】
請求項5は、熱電対を前記鋳物の薄肉部に相当する部位に設け、この部位を熱電対で検知することを特徴とする。
【0027】
鋳物の薄肉部に相当する部位はキャビティの空間が狭くなり、アルミニウム溶湯が流れ難くなる。そこで、請求項5において、薄肉部に相当する部位の温度を熱電対で検知することにした。これにより、薄肉部に相当する部位において、マグネシウム層に窒化マグネシウムを効率よく生成させることができる。
【0028】
従って、薄肉部に相当する部位において、窒化マグネシウム58bにアルミニウム溶湯の表面を接触させることで、アルミニウム溶湯の表面の酸化物から酸素を除去し、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防ぐことができる。この結果、薄肉部に相当する部位においてアルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)で鋳造したディスクロータの斜視図である。
ディスクロータ10は、円筒形のハブ部11と、ハブ部11に一体に成形した円盤状のディスク部18とからなアルミニウム製の部材である。
【0030】
ハブ部11は、周壁12の外側端に蓋13を一体成形したもので、蓋13の中央に開口14を開け、開口14の周囲にボルト孔15・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)及びスタッド孔16・・・を開けたものである。
ボルト孔15・・・から図示しないボルトを差込み、これらのボルトでディスクロータ10をドライブシャフト(図示しない)側に取り付ける。
なお、スタッド孔16・・・は、ディスクロータ10に車輪を取り付けるために、図示しないスタッドを圧入する孔である。
【0031】
図2は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置20は、鋳造金型22を備えた鋳造装置本体21と、鋳造金型22に備えたキャビティ25内にアルゴン(Ar)ガス(不活性ガス(希ガス))を導入する不活性ガス導入部40と、不活性ガスを導入した後のキャビティ25内に気体状のマグネシウム(Mg)を導入するマグネシウム導入部50と、気体状のマグネシウムを導入した後のキャビティ25内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部60とを備える。
【0032】
鋳造装置本体21は、ベース30に固定板31を取付け、この固定板31に鋳造金型22の固定型23を取付け、固定板31にガイドロッド32,32を取付け、ガイドロッド32,32で可動板33を移動自在に支え、可動板33に鋳造金型22の可動型24を取付け、固定型23及びベース30にキャビティ25に開口する湯路34を形成し、湯路34内に移動自在にプランジャ35を備え、この湯路34から鉛直に湯口36を形成し、湯口36の上端をほぞ37で塞ぎ、この湯口36に連通可能な注湯槽38を湯口36の上方に備える。
固定型23及び可動型24で鋳造金型22を構成する。
【0033】
このアルミニウム鋳造装置20によれば、可動板33を移動手段(図示しない)で矢印の方向に移動することにより可動型24を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。可動型24を型締め位置に静止させることで、固定型23と可動型24とでキャビティ25を形成することができる。このキャビティ25にアルミニウム溶湯39を供給した後、プランジャ35でアルミニウム溶湯39を加圧することによりキャビティ25内でアルミニウム鋳物を鋳造することができる。
【0034】
加えて、鋳造装置本体21は、キャビティ25の表面のうち、図1に示す円盤状のディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aに沿って、すなわち固定型23の外周及び可動型24の外周に沿って加熱部(カートリッジヒータ)27を配置するように鋳造金型22に埋設したものである。
これにより、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを所定温度(一例として、400℃以上)に加熱することができる。
【0035】
ここで、キャビティ25のうちの部位25aを所定温度に加熱する方法として、鋳造金型22全体を加熱することも考えられる。しかし、鋳造金型22全体を加熱するためには多量の熱エネルギを必要とする。加えて、鋳造金型22全体を加熱する方法では部位25aを所定温度に加熱するまでに時間がかかる。
【0036】
これに対して、鋳造金型22に加熱部(カートリッジヒータ)を埋設することで、鋳造金型22のうちの必要な部位のみを加熱するだけで、所定の部位25aを所定温度に加熱することができる。このため、所定の部位25aを所定温度に加熱する際に必要な熱エネルギを減らすことができる。加えて、鋳造金型22のうちの必要な部位のみを加熱するだけでよいので、比較的短い時間で所定の部位25aを所定温度まで加熱することができる。
【0037】
さらに、この鋳造装置本体21は、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aのうちの固定型23の外周下端に熱電対28を埋設したものである。
これにより、ディスクロータ10の円盤状のディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを熱電対28で検知することができる。
【0038】
ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aの温度を熱電対28で検知することで、所定の部位25aの温度をより正確に所定温度に設定することができる。このため、マグネシウム層58aに窒化マグネシウム58b(図8に示す)を効率よく生成させることができる。
【0039】
特に、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aはキャビティの空間が狭く、アルミニウム溶湯が流れ難くなる。そこで、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aの温度を熱電対28で検知することにした。
これにより、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aのマグネシウム層58aに窒化マグネシウム58bを効率よく生成させることができる。この窒化マグネシウム58bでアルミニウム溶湯の酸化物を還元することで、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0040】
不活性ガス導入部40は、キャビティ25に導入流路41を介してアルゴンガスボンべ42を連通し、導入流路41の途中にアルゴン用開閉弁43を備える。アルゴン用開閉弁43は、導入流路41を開・閉状態に切換える弁である。アルゴン用開閉弁43を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンを導入流路41を介してキャビティ25内に導入することができる。
【0041】
マグネシウム導入部50は、導入流路41の途中に第1マグネシウム導入流路51及び第2マグネシウム導入流路52を備え、第1、第2のマグネシウム導入流路51,52に昇華部53を連通し、第1マグネシウム導入流路51の途中にマグネシウム用開閉弁57を備える。
【0042】
昇華部53は、第1マグネシウム導入流路51の出口端51aに連通するとともに第2マグネシウム導入流路52の入口端52aに連通する収容ケース54を備え、この収容ケース54の外側に昇華用ヒータ55を備える。
この昇華用ヒータ55を加熱することで、収容ケース54内を所定温度(一例として、400℃以上)まで加熱し、収容ケース54内のマグネシウム・インゴット(マグネシウム)58を昇華させて気体状にすることができる。
【0043】
マグネシウム用開閉弁57は、第1マグネシウム導入流路51を開・閉状態に切換える弁である。マグネシウム用開閉弁57を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガスを第1マグネシウム導入流路51を介して収容ケース54内に導入し、導入したアルゴンガスで気体状のマグネシウムを第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41を介してキャビティ25内に導入することができる。
【0044】
窒素ガス導入部60は、キャビティ25に窒素導入流路61を介して窒素ガスボンべ62を連通し、窒素導入流路61の途中に窒素用開閉弁63を備える。
窒素用開閉弁63は、窒素導入流路61を開・閉状態に切換える弁である。窒素用開閉弁63を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ62内の窒素ガスを窒素導入流路61を介してキャビティ25内に導入することができる。
【0045】
以下、本発明に係る第1実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置20で実施する例について説明する。
図3は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;型閉めした金型のキャビティ内に不活性ガスを充填する。
ST11;この不活性ガスを充填したキャビティ内に、気体状のマグネシウムを導入してキャビティ表面にマグネシウムを析出させる。
ST12;金型を加熱することにより、前記マグネシウムを析出させたキャビティ表面を所定温度に加熱する。
ST13;加熱したキャビティ内に窒素ガスを導入してキャビティ表面に窒化マグネシウムを生成させる。
ST14;窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する。
以下、本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法のST10〜ST14の工程を図4〜図10で詳しく説明する。
【0046】
図4は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、ST10を示す。
アルゴン用開閉弁43を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガス(「点々」で示す)を導入流路41を介してキャビティ25内に導入する。
キャビティ25内にアルゴンガスを充填することにより、キャビティ25内の空気を、例えば固定型23と可動型24との間の隙間からキャビティ25の外に排出する。
これにより、キャビティ25内をアルゴンガスの雰囲気状態にすることができる。キャビティ25内をアルゴンガスの雰囲気状態にした後、アルゴン用開閉弁43を閉状態に切換える。
【0047】
図5は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST11を示す。
昇華部53の昇華用ヒータ55を加熱状態とし、収容ケース54内を所定温度(一例として、400℃以上)まで加熱する。収容ケース54内を加熱することでマグネシウム・インゴット58を昇華させて気体状にする。なお、収容ケース54内の気体状のマグネシウムを「点々」で示す。
【0048】
マグネシウム用開閉弁57を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガスを第1マグネシウム導入流路51を介して収容ケース54内に導入する。
導入したアルゴンガスで気体状のマグネシウム(「点々」で示す)を第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41を介してキャビティ25内に導入する。
【0049】
なお、気体状のマグネシウムをキャビティ25に導入する際に、第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41を加熱することで、第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41にマグネシウムが析出しないようにすることが好ましい。
【0050】
図6は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図であり、ST11及びST12を示す。
キャビティ25内に矢印の如く導入した気体状のマグネシウムは、キャビティ25の表面に触れて150〜250℃に温度が低下する。気体状のマグネシウムの温度が150〜250℃に下がることにより、気体状のマグネシウムがキャビティ25の表面に析出する。この析出したマグネシウムをマグネシウム層58aとする。
キャビティ25の表面にマグネシウム層58aを析出させた後、マグネシウム用開閉弁57(図5に示す)を閉状態に切換える。
【0051】
次に、ST12の工程について説明する。
キャビティ25の表面にマグネシウム層58aを析出した後、加熱部(カートリッジヒータ)27を加熱する。図1に示すディスク部18(薄肉部)に相当する部位25a(キャビティ25の表面の一部)を加熱する。
このとき、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aの温度を熱電対28で検知する。熱電対28の検知温度が一例として、400℃以上まで到達したとき、この温度を維持するように加熱部(カートリッジヒータ)27を制御する。
【0052】
図7は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図であり、ST13を示す。
窒素ガス導入部60の窒素用開閉弁63を開状態に切換える。窒素用開閉弁63を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ62内の窒素ガスを窒素導入流路61に流す。これにより、窒素ガスボンべ62内の窒素ガスを窒素導入流路61を介してキャビティ25内に導入する。
【0053】
図8は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図である。
ここで、キャビティ25の表面は、図1に示すディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを、加熱部(カートリッジヒータ)27で一例として400℃以上まで加熱している。
これにより、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aのマグネシウム層58aと窒素ガスとが反応して、この部位のマグネシウム層58aの表面に窒化マグネシウム(Mg32)58bを生成させる。
【0054】
このように、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを、加熱部(カートリッジヒータ)27で一例として400℃以上まで加熱することで、マグネシウム層58aを加熱して窒化マグネシウム58bを生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム58bを効率よく生成することができる。
そして、この部位25aのマグネシウム層58aの表面に窒化マグネシウム58bを生成させた後、窒素用開閉弁63を閉状態に切換える。
【0055】
図6及び図8で説明したように、窒化マグネシウム58bを生成する際に、先ずキャビティ25の表面にマグネシウムを析出させてマグネシウム層58aを形成し、次にディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを加熱した後、キャビティ25に窒素ガスを導入する。これにより、加熱した部位25aのマグネシウム層58aの表面に窒化マグネシウム58bを生成する。
【0056】
従って、マグネシウム層58aの表面だけに窒化マグネシウム58bを生成することができるので、窒化マグネシウム58bの生成時間を短くすることができる。
加えて、マグネシウム層58aの表面だけに窒化マグネシウム58bを生成するだけでよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0057】
図9(a),(b)は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第6説明図であり、ST14の前半を示す。
(a)において、鋳造装置本体21のほぞ37を操作して湯口36を開口させることにより、注湯槽38のアルミニウム溶湯39を湯口36及び湯路34を通してキャビティ25に矢印の如く供給する。
【0058】
ここで、一般にアルミニウム溶湯39は、キャビティ25が広い空間の場合には円滑に流れるが、キャビティ25が狭い空間の場合には円滑に流れ難い。このため、広い空間を形成するキャビティの部位25bにおいては、万が一アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化物39bが発生していても、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことができる。
【0059】
一方、狭い空間を形成するキャビティの部位25aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
そこで、狭い空間を形成するキャビティの部位25aにおいては、キャビティ25の表面に窒化マグネシウム58bを生成させ、この窒化マグネシウム58bでアルミニウム溶湯39の酸化物39bを還元することにした。この作用を(b)で説明する。
【0060】
(b)において、キャビティ25内に供給したアルミニウム溶湯39が、図1に示すディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aまで到達すると、アルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム58bに接触する。
このアルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム58bと反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0061】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aにおいて、アルミニウム溶湯39の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0062】
図10(a),(b)は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第7説明図であり、ST14の後半を示す。
(a)において、注湯槽38からアルミニウム溶湯39をキャビティ25側に所定量供給した後、ほぞ37で湯口36を閉じる。この状態で、プランジャ35をキャビティ25に向けて押出すことにより、アルミニウム溶湯39をキャビティ25内に充填する。
【0063】
(b)において、鋳造金型22を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品39cを取り出す。アルミニウム鋳造品39cは、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品39cを加工して図1に示すディスクロータ10を得る。
【0064】
次に、第2実施形態を図11〜図16に基づいて説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
図11は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第2実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置80は、鋳造金型82を備えた鋳造装置本体81と、鋳造金型82に備えたキャビティ87内にアルゴン(Ar)ガス(不活性ガス(希ガス))を導入する不活性ガス導入部40と、不活性ガスを導入した後のキャビティ87内に気体状のマグネシウム(Mg)を導入するマグネシウム導入部50と、気体状のマグネシウムを導入した後のキャビティ87内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部60とを備える。
【0065】
鋳造装置本体81は、ベース90に固定板91を取付け、この固定板91に固定型83を取付け、ベース90に可動板92を移動自在に取付け、可動板92に可動型84を取付け、可動板92を移動する移動手段93をベース90に設け、ベース90に鋳造金型82の中子85を昇降手段94で昇降自在に取付け、キャビティ87に開口する湯路95を可動型84に形成し、湯路95に対して鉛直に湯口96を形成し、アルミニウム溶湯39を蓄える注湯槽97を湯口96の上方に備え、鋳造金型82の上端にガス抜きや押湯用の開口98を備える。
固定型83、可動型84及び中子85で鋳造金型82を構成する。
【0066】
なお、図11においては、鋳造装置本体81の理解を容易にするために湯口96及び開口98をキャビティ87に対して大きく図示して説明するが、現実の湯口96及び開口98はキャビティ87に対して十分に小さく、鋳造金型82を型締めするとキャビティ87は殆ど密閉状態を維持することができる。
【0067】
このアルミニウム鋳造装置80によれば、可動板92を移動手段93で矢印の方向に移動することにより可動型84を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。また、昇降手段94で中子85を矢印の方向に移動することにより中子85を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。
【0068】
可動型84及び中子85を型締め位置に静止させることで、固定型83、可動型84及び中子85でキャビティ87を形成することができる。このキャビティ87にアルミニウム溶湯39を供給してキャビティ87内でアルミニウム鋳物を鋳造することができる。
鋳造装置本体81は、大気圧下で自重を利用してアルミニウム溶湯39をキャビティ87内に流込む構成にしたもので、この点で第1実施形態の鋳造装置本体21と異なる。
【0069】
加えて、鋳造装置本体81は、キャビティ87の表面のうち、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aに沿って、すなわち固定型83の左下部及び中子85の外周に加熱部(カートリッジヒータ)88を配置するように鋳造金型82に埋設したものである。
これにより、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aを所定温度(一例として、400℃以上)に加熱することができる。
【0070】
ここで、キャビティ87のうちの部位87aを所定温度に加熱する方法として、鋳造金型82全体を加熱することも考えられる。しかし、鋳造金型82全体を加熱するためには多量の熱エネルギを必要とする。加えて、鋳造金型82全体を加熱する方法では部位87aを所定温度に加熱するまでに時間がかかる。
【0071】
これに対して、鋳造金型82に加熱部(カートリッジヒータ)を埋設することで、鋳造金型82のうちの必要な部位のみを加熱するだけで、所定の部位87aを所定温度に加熱することができる。このため、所定の部位87aを所定温度に加熱する際に必要な熱エネルギを減らすことができる。加えて、鋳造金型82のうちの必要な部位のみを加熱するだけでよいので、比較的短い時間で所定の部位87aを所定温度まで加熱することができる。
【0072】
さらに、この鋳造装置本体81は、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aのうちの固定型83の左下部に熱電対89を埋設したものである。
これにより、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aを熱電対89で検知することができる。
【0073】
シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aの温度を熱電対89で検知することで、所定の部位87aの温度をより正確に所定温度に設定することができる。このため、マグネシウム層102に窒化マグネシウム103(図14に示す)を効率よく生成させることができる。
【0074】
特に、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aはキャビティの空間が狭く、アルミニウム溶湯が流れ難くなる。そこで、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aの温度を熱電対89で検知することにした。
これにより、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aのマグネシウム層102に窒化マグネシウム103を効率よく生成させることができる。この窒化マグネシウム103でアルミニウム溶湯の酸化物を還元することで、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0075】
次に、本発明に係る第2実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置80で実施する例について図3及び図11〜図16に基づいて説明する。
先ず、図3のST10の工程を説明する。
図11に示すアルゴン用開閉弁43を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガスを導入流路41を介してキャビティ87内に導入する。
【0076】
図12は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図である。
キャビティ87内にアルゴンガスを充填することにより、キャビティ87内の空気を、例えば湯口96やガス抜きや押湯用の開口98からキャビティ87の外に排出する。これにより、キャビティ87内をアルゴンガスの雰囲気状態にすることができる。
キャビティ87内をアルゴンガスの雰囲気状態にした後、アルゴン用開閉弁43(図11に示す)を閉状態に切換える
【0077】
次に、図3のST11の工程を説明する。
図11に戻って、昇華部53の昇華用ヒータ55を加熱状態とし、収容ケース54内を所定温度(一例として、400℃以上)まで加熱する。収容ケース54内を加熱することでマグネシウム・インゴット58を昇華させて気体状にする。
マグネシウム用開閉弁57を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガスを第1マグネシウム導入流路51を介して収容ケース54内に導入する。
導入したアルゴンガスで気体状のマグネシウムを第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41を介してキャビティ87内に導入する。
【0078】
なお、気体状のマグネシウムをキャビティ87に導入する際に、第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41を加熱することで、第2マグネシウム導入流路52及び導入流路41にマグネシウムが析出しないようにすることが好ましい。
【0079】
図13は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST11及びST12の工程を説明する。
キャビティ87内に矢印の如く導入した気体状のマグネシウムは、キャビティ87の表面に触れて150〜250℃に温度が低下する。気体状のマグネシウムの温度が150〜250℃に下がることで、気体状のマグネシウムがキャビティ87の表面に析出する。以下、析出したマグネシウムをマグネシウム層102として説明する。
キャビティ87の表面にマグネシウム層102を析出させた後、マグネシウム用開閉弁57(図11に示す)を閉状態に切換える。
【0080】
次に、ST12の工程について説明する。
キャビティ25の表面にマグネシウム層102を析出した後、加熱部(カートリッジヒータ)89を加熱する。シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87a(キャビティ87の表面の一部)を加熱する。
このとき、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aの温度を熱電対89で検知する。熱電対89の検知温度が一例として、400℃以上まで到達したとき、この温度を維持するように加熱部(カートリッジヒータ)89を制御する。
【0081】
次いで、図3のST13の工程について説明する。
図11に示す窒素ガス導入部60の窒素用開閉弁63を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ62内の窒素ガスを窒素導入流路61に流す。これにより、窒素ガスボンべ62内の窒素ガスを窒素導入流路61を介してキャビティ87内に導入する。
【0082】
図14は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図である。
ここで、キャビティ87の表面は、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aを、加熱部(カートリッジヒータ)88で一例として400℃以上まで加熱している。
これにより、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aのマグネシウム層102と窒素ガスとが反応して、この部位のマグネシウム層102の表面に窒化マグネシウム(Mg32)103を生成させる。
【0083】
このように、シリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aを、加熱部(カートリッジヒータ)88で一例として400℃以上まで加熱することで、マグネシウム層102を加熱して窒化マグネシウム103を生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム103を効率よく生成することができる。
そして、この部位87aのマグネシウム層102の表面に窒化マグネシウム103を生成させた後、窒素用開閉弁63を閉状態に切換える。
【0084】
図13及び図14に示すように、窒化マグネシウム103を生成する際に、先ずキャビティ87の表面にマグネシウムを析出させてマグネシウム層102を形成し、次にシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aを加熱した後、キャビティ87に窒素ガスを導入する。これにより、マグネシウム層102の表面に窒化マグネシウム103を生成する。
【0085】
従って、マグネシウム層102の表面だけに窒化マグネシウム103を生成することができるので、窒化マグネシウム103の生成時間を短くすることができる。
加えて、マグネシウム層102の表面だけに窒化マグネシウム103を生成するだけでよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0086】
次に、図3のST14の工程を図15及び図16で説明する。
図15(a),(b)は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図である。
(a)において、鋳造装置本体81の注湯槽97を傾けることにより、注湯槽97のアルミニウム溶湯39を湯口96及び湯路95を通してキャビティ87に矢印の如く供給する。
【0087】
ここで、一般にアルミニウム溶湯39は、キャビティ87が広い空間の場合には円滑に流れるが、キャビティ87が狭い空間の場合には円滑に流れ難い。このため、広い空間を形成するキャビティの部位87bにおいては、万が一アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化物39bが発生していても、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことができる。
【0088】
一方、狭い空間を形成するキャビティの部位87aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
そこで、狭い空間を形成するキャビティの部位87aにおいては、キャビティ87の表面に窒化マグネシウム103を生成させ、この窒化マグネシウム103でアルミニウム溶湯39の酸化物39bを還元することにした。この作用を(b)で説明する。
【0089】
(b)において、キャビティ87内に供給したアルミニウム溶湯39が、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aまで到達すると、アルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム103に接触する。
このアルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム103と反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0090】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aにおいて、アルミニウム溶湯39の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0091】
図16(a),(b)は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図である。
(a)において、注湯槽97からアルミニウム溶湯39をキャビティ87に所定量供給した後、注湯槽97を水平に戻す。アルミニウム溶湯39が凝固した後、昇降手段94で中子85を矢印▲5▼の如く下げ、移動手段93で可動型84を矢印▲6▼の如く移動することにより、鋳造金型82を型開きする。
【0092】
(b)において、鋳造金型82を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品105を取り出す。アルミニウム鋳造品105は、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品105から非製品部105a及び非製品部105bを除去した後、製品部を加工してエンジンのシリンダブロックを得る。
【0093】
なお、前記実施形態では、鋳造金型のキャビティ内のアルゴンガスの雰囲気に変えた例に例について説明したが、アルゴンガスに変えてヘリウム等の不活性ガスを使用することも可能である。
さらに、アルゴンガスなどの不活性ガスに代えて、空気と比較して化学的に不活発な窒素ガスを使用することも可能である。
【0094】
また、前記実施形態では、キャビティ25,87の表面のうち、鋳物の薄肉部に相当する部位25a,87aを加熱する例について説明したが、これに限らないで、キャビティ25,87の表面全域を加熱することも可能である。
但し、鋳物の薄肉部に相当する部位25a,87aを加熱して、この部位25a,87aのみに窒化マグネシウム58b,103を生成することにより、窒素の使用量をさらに減らすことが可能になる。
【0095】
さらに、前記実施形態のアルミニウムの鋳造方法は、一例としてシリコン、ニッケルや銅を含んだアルミニウム合金や純粋なアルミニウムに適用することが可能である。
【0096】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、窒化マグネシウムを生成する際に、先ずキャビティの表面にマグネシウムを析出させてマグネシウム層を形成し、次にキャビティ表面を加熱した後、キャビティに窒素ガスを導入してマグネシウム層の表面に窒化マグネシウムを生成する。これにより、マグネシウム層の表面だけに窒化マグネシウムを生成することができるので、窒化マグネシウムの生成時間を短くすることができる。従って、アルミニウム鋳造品の生産性を高めることができる。
【0097】
加えて、マグネシウム層の表面だけに窒化マグネシウムを生成するだけでよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。従って、アルミニウム鋳造品のコストを抑えることができる。
【0098】
請求項2は、金型に埋設したカートリッジヒータでキャビティ表面を加熱するようにした。金型にカートリッジヒータを埋設することで、金型の一部のみを加熱するだけで、キャビティ表面を加熱することができる。
このため、キャビティ表面を所定温度に加熱するための熱エネルギを減らすことができる。加えて、金型のうちの必要な部位のみを加熱するだけでよいので、比較的短い時間でキャビティ表面を所定温度まで加熱することができる。
従って、アルミニウム鋳造品の生産性を高めることができる。
【0099】
請求項3は、鋳物の薄肉部に相当する部位のみを加熱することにした。薄肉部に相当する部位を加熱することで、この部位のマグネシウム層に窒化マグネシウムを生成することができる。このため、薄肉部に相当する部位までアルミニウム溶湯が到達したとき、アルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムに接触させることができる。
【0100】
このアルミニウム溶湯の表面には酸化物が発生している可能性があるが、万が一酸化物が発生していても、酸化物が窒化マグネシウムと反応して酸化物から酸素を取り除くことができる。
これにより、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、薄肉部に相当する部位においてアルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。この結果、アルミニウム製の鋳物を鋳造する工程を短くして生産性を高めることができる。
【0101】
加えて、鋳物の薄肉部に相当する部位を加熱して、この部位のみに窒化マグネシウムを生成させることにより、窒素の使用量をさらに減らすことが可能になる。従って、アルミニウム鋳造品のコストを抑えることができる。
【0102】
請求項4は、キャビティ表面の温度を熱電対で検知することで、キャビティ表面の温度をより正確に所定温度に設定することができる。このため、マグネシウム層に窒化マグネシウムを効率よく生成させることができる。従って、アルミニウム製の鋳物を鋳造する工程を短くすることができるので生産性を高めることができる。
【0103】
請求項5は、薄肉部に相当する部位の温度を熱電対で検知することで、薄肉部に相当する部位において、マグネシウム層に窒化マグネシウムを効率よく生成させることができる。このため、薄肉部に相当する部位において、窒化マグネシウムにアルミニウム溶湯の表面を接触させることで、アルミニウム溶湯の表面の酸化物から酸素を除去し、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防ぐことができる。
従って、薄肉部に相当する部位においてアルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができるので、アルミニウム製の鋳物を鋳造する工程を短くして生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)で鋳造したディスクロータの斜視図
【図2】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図3】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャート
【図4】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図5】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図6】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図7】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図
【図8】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図
【図9】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第6説明図
【図10】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第7説明図
【図11】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第2実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図12】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図13】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図14】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図15】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図
【図16】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図
【図17】従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図
【図18】従来のアルミニウム鋳造方法の要部説明図
【符号の説明】
20,80…アルミニウム鋳造装置、22,82…鋳造金型(金型)、25,87…キャビティ、25a,87a…薄肉部に相当する部位、27,88…加熱部(カートリッジヒータ)、28,89…熱電対、39…アルミニウム溶湯、39a…アルミニウム溶湯の表面、39c,105…アルミニウム鋳造品、58a,102…マグネシウム層、58b,106…窒化マグネシウム。

Claims (5)

  1. 型閉めした金型のキャビティ内に不活性ガスを充填する工程と、
    この不活性ガスを充填したキャビティ内に、気体状のマグネシウムを導入してキャビティ表面にマグネシウムを析出させる工程と、
    金型を加熱することにより、前記マグネシウムを析出させたキャビティ表面を所定温度に加熱する工程と、
    このキャビティ内に窒素ガスを導入してキャビティ表面に窒化マグネシウムを生成させる工程と、
    この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する工程と、からなる鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  2. 前記キャビティ表面を、前記金型に埋設したカートリッジヒータで加熱することを特徴とする請求項1記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  3. 前記キャビティ表面を加熱するとき、前記鋳物の薄肉部に相当する部位のみを加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  4. 前記キャビティ表面の温度を、前記金型に埋設した熱電対で検知することを特徴とする請求項1、2又は3記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  5. 前記熱電対を前記鋳物の薄肉部に相当する部位に設け、この部位を熱電対で検知することを特徴とする請求項4記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
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