JP4462595B2 - 鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法 - Google Patents

鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給してキャビティ内でアルミニウム鋳物を鋳造する鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムの鋳造において、金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給する際に、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成し、生成した酸化膜がアルミニウム溶湯の表面張力を増加させ、アルミニウム溶湯の流動性を低下させることが起こり得る。このため、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成すると、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことは難しい。
【0003】
そこで、アルミニウム鋳造の際に、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に維持する鋳造方法として、例えば特願平11−91445号公報(特開2000−280063)「アルミニウム鋳造方法」が提案されている。以下、この技術について同公報の図を再掲して説明する。
【0004】
図10は従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図である。アルミニウムを鋳造する際には、先ず窒素ガスボンべ150から窒素ガス(N2ガス)を金型151のキャビティ152に充填する。次に、窒素ガスを蓄留タンク153に送り、蓄留タンク153内のマグネシウム粉末(Mg粉末)を窒素ガスと共に加熱炉155内に送り込む。
この加熱炉155内でマグネシウム粉末を昇華させ、昇華したマグネシウムを窒素ガスと反応させて気体状のマグネシウム窒素化合物(Mg32)を得る。
【0005】
このマグネシウム窒素化合物を配管156を通して金型151のキャビティ152内に導入し、導入したマグネシウム窒素化合物をキャビティ152の表面に析出させる。
次に、キャビティ152内にアルミニウム溶湯157を供給する。供給したアルミニウム溶湯157をマグネシウム窒素化合物と反応させて、アルミニウム溶湯157の表面の酸化物から酸素を取り除く。
【0006】
これにより、アルミニウム溶湯157の表面に酸化皮膜が発生することを防ぎ、アルミニウム溶湯157の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、アルミニウム溶湯157のキャビティ152への湯廻り性を好適に保つことができ、アルミニウム鋳造品の品質を高めることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アルミニウム鋳造品のなかには薄肉部を備えたものが有り、薄肉部を備えたアルミニウム鋳造品を鋳造する際には、キャビティへの湯回り性を好適に保つことが難しいものがある。このため、アルミニウム溶湯をキャビティ全域に十分に行き渡らせるためには、アルミニウム溶湯の注湯時間をある程度長く確保する必要がある。従って、アルミニウム鋳造品を鋳造する際のサイクルタイムが長くなり生産性が低下する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、サイクルタイムを短くして生産性を高めることができる鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、型閉めした金型のキャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填した後、このキャビティ内にアルミニウム溶湯を注湯するアルミニウム鋳造方法であって、注湯したアルミニウム溶湯の熱でキャビティ内の窒素ガス及びマグネシウムガスを反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物を生成し、このマグネシウム窒素化合物を生成することによりキャビティ内を減圧し、この生成したマグネシウム窒素化合物でアルミニウム溶湯の表面に発生した酸化膜を除去することを特徴とする。
【0010】
アルミニウム溶湯の熱でキャビティ内の窒素ガス及びマグネシウムガスを反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物を生成する。このように、キャビティ内の気体を固化反応させることによりキャビティ内のガスを減らすことができる。このため、キャビティ内を減圧することができるので、アルミニウム溶湯をキャビティ内の全域に効率よく導入させることができる。
【0011】
加えて、生成したマグネシウム窒素化合物でアルミニウム溶湯の表面に発生した酸化物を除去することができる。これにより、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。アルミニウム溶湯の表面張力を抑えることで、アルミニウム溶湯のキャビティへの湯廻り性を好適に保つことができる。
このように、アルミニウム溶湯の表面から酸化物を除去することで湯回り性を好適に保ち、加えてキャビティ内を減圧することでアルミニウム溶湯をキャビティの全域に導入しやすくしたので、アルミニウム溶湯の湯回り性をより一層高めることができる。
【0012】
請求項2は、キャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填する前に、キャビティ内を不活性ガスに充填置換することを特徴とする。
【0013】
キャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填する前に、キャビティ内を不活性ガスに充填することで、キャビティ内を不活性ガスの雰囲気としてキャビティ内の空気を不活性ガスに置換する。これにより、キャビティ内から酸素を除去することができるので、アルミニウム溶湯を注湯した際に、アルミニウム溶湯の表面に酸化物や酸化膜が発生することを防ぐことができる。従って、アルミニウム溶湯の湯回り性をさらに好適に保つことができる。
【0014】
請求項3は、アルミニウム溶湯の注湯温度を600〜750℃に設定したことを特徴とする。
【0015】
アルミニウム溶湯の温度が600℃未満になると、窒素ガスとマグネシウムガスとの反応が乏しくなる。そこで、アルミニウム溶湯の温度を600℃以上に設定することで、窒素ガスとマグネシウムガスとを好適に反応させるようにした。
また、アルミニウム溶湯の温度が750℃を越えると、アルミニウム溶湯をキャビティ内で凝固させる際に凝固時間が長くかかり生産性を高め難い。加えて、アルミニウム溶湯の温度が高いことで金型の耐久性が低下する虞がある。そこで、アルミニウム溶湯の温度を750℃以下に設定することで、生産性の低下を抑えるとともに金型の耐久性を高めるようにした。
【0016】
請求項4は、アルミニウム溶湯の注湯温度を温度センサで検知し、この温度センサの検知情報に基づいてアルミニウム溶湯を設定温度に制御することを特徴とする。
【0017】
アルミニウム溶湯の注湯温度を温度センサで検知し、この温度センサの温度検知情報に基づいてアルミニウム溶湯の注湯温度に制御するようにした。このため、アルミニウム溶湯の注湯温度を手間をかけないで確実に制御することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法で鋳造したシリンダブロックの斜視図である。
内燃機関用シリンダブロック10は4気筒エンジンに使用するシリンダブロックであり、鋳造金型でアルミニウム鋳造品を鋳造した後、このアルミニウム鋳造品からシリンダ12・・・の内周面13・・・やその他の部位を加工したものである。
以下、内燃機関用シリンダブロック10の素材であるアルミニウム鋳造品を鋳造する方法について説明する。
【0019】
図2は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置20は、鋳造金型22を備えた鋳造装置本体21と、鋳造金型22に備えたキャビティ27内にアルゴン(Ar)ガス(不活性ガス(希ガス))を導入する不活性ガス導入部40と、キャビティ27内に気体状の窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部50と、キャビティ27内に気体状のマグネシウム(Mg)ガスを導入するマグネシウム導入部60とを備える。
【0020】
鋳造装置本体21は、ベース30に固定板31を取付け、この固定板31に固定型23を取付け、ベース30に可動板32を移動自在に取付け、可動板32に可動型24を取付け、可動板32を移動する移動手段33をベース30に設け、ベース30に鋳造金型22の中子25を昇降手段34で昇降自在に取付け、キャビティ27に開口する湯路35を可動型24に形成し、湯路35に対して鉛直に湯口36を形成し、アルミニウム溶湯39を蓄える注湯槽37を湯口36の上方に備え、注湯槽37の周囲に注湯槽用ヒータ37aを備え、鋳造金型22の上端にガス抜きや押湯用の開口38を備える。
固定型23、可動型24及び中子25で鋳造金型22を構成する。
【0021】
なお、図2においては、鋳造装置本体21の理解を容易にするために湯口36及び開口38をキャビティ27に対して大きく図示して説明するが、現実の湯口36及び開口38はキャビティ27に対して十分に小さく、鋳造金型22を型締めするとキャビティ27は殆ど密閉状態を維持することができる。
【0022】
このアルミニウム鋳造装置20によれば、可動板32を移動手段33で矢印の方向に移動することにより可動型24を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。また、昇降手段34で中子25を矢印の方向に移動することにより中子25を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。
【0023】
可動型24及び中子25を型締め位置に静止させることで、鋳造金型22(固定型23、可動型24及び中子25)でキャビティ27を形成することができる。このキャビティ27にアルミニウム溶湯39を供給してキャビティ27内でアルミニウム鋳物を鋳造することができる。
【0024】
不活性ガス導入部40は、キャビティ27にアルゴン導入流路41を介してアルゴンガスボンべ42を連通し、アルゴン導入流路41の途中にアルゴン用開閉弁43を備える。アルゴン用開閉弁43は、アルゴン導入流路41を開・閉状態に切換える弁である。アルゴン用開閉弁43を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンをアルゴン導入流路41を介してキャビティ27内に導入することができる。
【0025】
窒素ガス導入部50は、キャビティ27に窒素導入流路51を介して窒素ガスボンべ52を連通し、窒素導入流路51の途中に窒素用開閉弁53を備える。窒素用開閉弁53は、窒素導入流路51を開・閉状態に切換える弁である。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51を介してキャビティ27内に導入することができる。
【0026】
マグネシウム導入部60は、キャビティ27にマグネシウム導入流路61を介して昇華部62を連通し、マグネシウム導入流路61の途中にマグネシウム用開閉弁66を備える。
昇華部62は、マグネシウム導入流路61の入口端61aに連通する収容ケース63を備え、この収容ケース63の外側に昇華用ヒータ64を備える。
この昇華用ヒータ64を加熱することで、収容ケース63内を所定温度(一例として、400℃以上)まで加熱し、収容ケース63内のマグネシウム・インゴット(マグネシウム)65を昇華させて気体状にすることができる。
【0027】
マグネシウム用開閉弁66は、マグネシウム導入流路61を開・閉状態に切換える弁である。マグネシウム用開閉弁66を開状態に切換えることで、気体状のマグネシウムをマグネシウム導入流路61を介してキャビティ27内に導入することができる。
【0028】
ところで、気体状のマグネシウムはマグネシウム導入流路61を流れている間に、冷却されてマグネシウム導入流路61に析出することが考えられる。そこで、マグネシウム導入流路61の温度を所望の温度に保温するために、マグネシウム導入流路61の周囲を保温材67で覆うように構成した。
これにより、気体状のマグネシウムがマグネシウム導入流路61に析出することを防ぐことができる。
【0029】
なお、鋳造金型22が所定温度以下に冷却されていると、キャビティ内に充填した気体状のマグネシウムもキャビティ表面に析出することが考えられる。しかし、鋳造金型22は鋳造工程の際に、アルミニウム溶湯で加熱されているのでキャビティ内の温度は所定温度より高い。このため、気体状のマグネシウムがキャビティ表面に析出することを防止できる。
【0030】
温度検知部70は、キャビティ27の上端に温度センサ71を備え、この温度センサ71でキャビティ27内のアルミニウム溶湯の注湯温度を検出し、検出した情報を制御部75に伝えるものである。
制御部75は、温度検知部70からの注湯温度検出情報に基づいて、注湯槽用ヒータ37aをオン・オフ制御することにより、アルミニウム溶湯の注湯温度を設定温度に保つようにするものである。
具体的には、制御部75はアルミニウム溶湯39の溶湯温度を600〜750℃に保つように、注湯槽用ヒータ37aをオン・オフ制御する。
【0031】
すなわち、制御部75は、温度検出部70からの注湯温度検出情報に基づいて注湯槽37内のアルミニウム溶湯の温度を上げる必要があると判断した場合には、注湯槽用ヒータ37aをオンにしてアルミニウム溶湯を加熱する。
一方、制御部75は、温度検出部70からの注湯温度検出情報に基づいて注湯槽内のアルミニウム溶湯の温度を現状維持あるいは下げる必要があると判断した場合には、注湯槽用ヒータ37aをオフにしてアルミニウム溶湯を自然冷却する。
【0032】
以下、本発明に係る第1実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置20で実施する例について説明する。
図3は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;型閉めした金型のキャビティ内に不活性ガス(アルゴンガス)を充填して、キャビティ内の空気を不活性ガスと置換する。
ST11;この不活性ガスを充填したキャビティ内に窒素ガスを導入する。
ST12;窒素ガスを導入したキャビティ内に気体状のマグネシウムを導入する。
ST13;キャビティ内にアルミニウム溶湯を注湯する。
【0033】
ST13の工程を実地することにより、注湯したアルミニウム溶湯の熱でキャビティ内の窒素ガス及びマグネシウムガスを反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物を生成する。マグネシウム窒素化合物を生成することによりキャビティ内を減圧する。さらに、生成したマグネシウム窒素化合物でアルミニウム溶湯の表面に発生した酸化膜を除去する。
以下、本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法のST10〜ST13の工程を図4〜図9で詳しく説明する。
【0034】
図4は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、ST10を示す。
アルゴン用開閉弁43を開状態に切換えることで、アルゴンガスボンべ42内のアルゴンガスをアルゴン導入流路41を介してキャビティ27内に導入する。
キャビティ27内にアルゴンガスを充填することにより、キャビティ27内の空気を、例えば湯路35及び湯口36や押湯用の開口38からキャビティ27の外に排出する。
これにより、キャビティ27内をアルゴンガスの雰囲気状態にすることができる。キャビティ27内をアルゴンガスの雰囲気状態にした後、アルゴン用開閉弁43を閉状態に切換える。
【0035】
図5は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST11を示す。
窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51を介してキャビティ27内に導入する。キャビティ27内に窒素ガスを導入した後、窒素用開閉弁53を閉状態に切換える。
【0036】
図6は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第3説明図であり、ST12を示す。
昇華部62の昇華用ヒータ64を加熱状態とし、収容ケース63内を所定温度(一例として、400℃以上)まで加熱する。収容ケース63内を加熱することでマグネシウム・インゴット65を昇華させて気体状にする。
この状態で、マグネシウム用開閉弁66を開状態に切換えることで、収容ケース63内に充填した気体状のマグネシウムをマグネシウム導入流路61を介してキャビティ27内に導入する。キャビティ27内に気体状のマグネシウムを導入した後、マグネシウム用開閉弁66を閉状態に切換える。
【0037】
図7(a),(b)は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第4説明図であり、ST13を示す。
(a)において、鋳造装置本体21の注湯槽37を傾けることにより、注湯槽37のアルミニウム溶湯39を湯口36及び湯路35を通してキャビティ37に矢印の如く供給する。
アルミニウム溶湯39の溶湯温度は600〜750℃に設定されている。
【0038】
(b)において、キャビティ27内には窒素ガス80・・・やマグネシウムガス81・・・が充填した状態になっている。なお、キャビティ27内には少量ではあるがアルゴンガスも含まれている。
この状態のキャビティ27内にアルミニウム溶湯39が進入する。このアルミニウム溶湯39は注湯槽37からキャビティ27に到達するまでに、アルミニウム溶湯39の表面39aが空気に触れる可能性があり、アルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物(Al23)が発生することが考えられる。
【0039】
図8(a),(b)は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第5説明図であり、ST13を示す。
(a)において、アルミニウム溶湯39がキャビティ27内に進入することにより、アルミニウム溶湯39の熱でキャビティ27内の窒素ガス80・・・及びマグネシウムガス81・・・を反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物(Mg32)82・・・を生成する。
【0040】
このように、キャビティ27内の気体(窒素ガス80・・・、マグネシウムガス81・・・)を固化反応させることによりキャビティ27内の気体を減少させて、キャビティ27内を減圧することができる。よって、アルミニウム溶湯39をキャビティ27の湯回り性を高めることができる。
【0041】
加えて、キャビティ27内に窒素ガス80・・・及びマグネシウムガス81・・・を充填する前に、キャビティ27内をアルゴンガスの雰囲気にすることで、キャビティ27内の空気をアルゴンガス27に置換する。これにより、キャビティ27内から酸素を除去することができるので、アルミニウム溶湯39を注湯した際に、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化物や酸化膜が発生することを防ぐことができる。
【0042】
ここで、アルミニウム溶湯39の溶湯温度を600〜750℃に設定した理由について説明する。
アルミニウム溶湯39の温度が600℃未満になると、窒素ガス80とマグネシウムガス81との反応が乏しくなる。そこで、アルミニウム溶湯39の溶湯温度を600℃以上に設定することで、窒素ガス80とマグネシウムガス81との反応を好適におこなうようにした。
【0043】
また、アルミニウム溶湯39の温度が750℃を越えると、アルミニウム溶湯39の凝固時間が長くかかり生産性を高め難い、加えて鋳造金型22の耐久性が低下する虞がある。そこで、アルミニウム溶湯39の温度を750℃以下に設定することで、生産性が低下することを抑え、鋳造金型22の耐久性を高めるようにした。
【0044】
(b)において、生成したマグネシウム窒素化合物(Mg32)82・・・((a)に示す)とアルミニウム溶湯39の表面39aに発生した酸化物(Al23)39b((a)に示す)とが反応してアルミニウム(Al23)、窒素ガス(N2)80、酸化マグネシウム(MgO)83を生成する。
【0045】
これにより、生成したマグネシウム窒素化合物82・・・((a)に示す)でアルミニウム溶湯39の表面39aに発生した酸化物39b((a)に示す)を除去することにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。
アルミニウム溶湯39の表面張力を抑えることで、アルミニウム溶湯39のキャビティへ27の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0046】
このように、アルミニウム溶湯39の表面張力の増大を抑えることで湯回り性を高め、その上キャビティ27内を減圧して湯回り性を高めるようにした。このため、アルミニウム溶湯39の湯回り性をより一層高めることができる。従って、鋳造工程のサイクルタイムを短くして生産性を高めることができる。
【0047】
図9(a),(b)は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第6説明図であり、ST13を示す。
(a)において、注湯槽37からアルミニウム溶湯39をキャビティ27に所定量供給した後、注湯槽37を水平に戻す。アルミニウム溶湯39が凝固した後、昇降手段34で中子25を矢印▲1▼の如く下げ、移動手段33で可動型24を矢印▲2▼の如く移動することにより、鋳造金型22を型開きする。
【0048】
ここで、アルミニウム溶湯39の注湯温度を温度センサ71で検知し、この温度センサ71の注湯温度検知情報に基づいて制御部75で注湯槽用ヒータ37aをオン・オフ制御することにより、注湯槽37内のアルミニウム溶湯39の温度を調整するようにした。
このため、アルミニウム溶湯39の注湯温度を手間をかけないで簡単に制御することができる。
【0049】
(b)において、鋳造金型22を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品90を取り出す。アルミニウム鋳造品90は、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品90から非製品部90a及び非製品部90bを除去した後、製品部90cを加工してエンジンのシリンダブロック10(図1に示す)を得る。
【0050】
なお、前記実施形態では、鋳造金型のキャビティ内のアルゴンガスの雰囲気に変えた例に例について説明したが、アルゴンガスに変えてヘリウム等の不活性ガスを使用することも可能である。
さらに、アルゴンガスなどの不活性ガスに代えて、空気と比較して化学的に不活発な窒素ガスを使用することも可能である。
加えて、アルゴンガスなどの不活性ガスをキャビティに充填しないで、窒素ガスやマグネシウムガスをキャビティに充填することも可能である。
【0051】
また、前記実施形態では、温度検知部70の温度センサ71でアルミニウム溶湯39の溶湯温度を検知し、この検知情報に基づいて、アルミニウム溶湯の溶湯温度を自動的に調整する例について説明したが、これに限らないで、温度検知部70や制御部75を使用しないでアルミニウム溶湯の溶湯温度を経験的に調整することも可能である。
【0052】
さらに、前記実施形態では、アルミニウム合金の鋳造方法について説明したが、アルミニウム合金としてはシリコン、ニッケルや銅を含んだものが該当する。また、アルミニウム合金に限らないで、純粋なアルミニウムの鋳造に適用することもできる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、アルミニウム溶湯の熱でキャビティ内の窒素ガス及びマグネシウムガスを反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物を生成する。このように、キャビティ内の気体を固化反応させることによりキャビティ内のガスを減らすことができる。このため、キャビティ内を減圧することができるので、アルミニウム溶湯をキャビティ内の全域に効率よく導入させることができる。
【0054】
加えて、生成したマグネシウム窒素化合物でアルミニウム溶湯の表面に発生した酸化物を除去することができる。これにより、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。アルミニウム溶湯の表面張力を抑えることで、アルミニウム溶湯のキャビティへの湯廻り性を好適に保つことができる。
【0055】
このように、アルミニウム溶湯の表面から酸化物を除去することで湯回り性を好適に保ち、加えてキャビティ内を減圧することでアルミニウム溶湯をキャビティの全域に導入しやすくしたので、アルミニウム溶湯の湯回り性をより一層高めることができる。従って、鋳造工程のサイクルタイムを短くして生産性を高めることができる。
【0056】
請求項2は、キャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填する前に、キャビティ内を不活性ガスに充填することで、キャビティ内を不活性ガスの雰囲気としてキャビティ内の空気を不活性ガスに置換する。これにより、キャビティ内から酸素を除去することができるので、アルミニウム溶湯を注湯した際に、アルミニウム溶湯の表面に酸化物や酸化膜が発生することを防ぐことができる。
従って、アルミニウム溶湯の湯回り性をさらに好適に保つことができるので、アルミニウム鋳造品を鋳造する際のサイクルタイムを短くして生産性をより高めることができる。
【0057】
請求項3は、アルミニウム溶湯の温度を600℃以上に設定することで、窒素ガスとマグネシウムガスとを好適に反応させるようにした。さらに、アルミニウム溶湯の温度を750℃以下に設定することで、アルミニウム溶湯の凝固時間を短くした。これにより、アルミニウム鋳造品を鋳造する際のサイクルタイムを短くして生産性をさらに高めることができる。
加えて、アルミニウム溶湯の温度を750℃以下に設定することで、金型の耐久性を高めることができる。
【0058】
請求項4は、アルミニウム溶湯の注湯温度を温度センサで検知し、この温度センサの温度検知情報に基づいてアルミニウム溶湯の注湯温度に制御するようにした。このため、アルミニウム溶湯の注湯温度を手間をかけないで確実に制御することができるので、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法で鋳造したシリンダブロックの斜視図
【図2】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図3】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャート
【図4】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図5】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図6】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図7】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第4説明図
【図8】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第5説明図
【図9】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法の第6説明図
【図10】従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図
【符号の説明】
20…アルミニウム鋳造装置、22…鋳造金型(金型)、27…キャビティ、37a…注湯槽用ヒータ、39…アルミニウム溶湯、39a…アルミニウム溶湯の表面、39b…酸化物、40…不活性ガス導入部、50…窒素ガス導入部、60…マグネシウム導入部、70…温度検知部、71…温度センサ、75…制御部、80…窒素ガス、81…マグネシウムガス、82…マグネシウム窒素化合物。

Claims (4)

  1. 型閉めした金型のキャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填した後、このキャビティ内にアルミニウム溶湯を注湯するアルミニウム鋳造方法であって、
    前記注湯したアルミニウム溶湯の熱でキャビティ内の窒素ガス及びマグネシウムガスを反応させて固体状のマグネシウム窒素化合物を生成し、
    このマグネシウム窒素化合物を生成することによりキャビティ内を減圧し、
    この生成したマグネシウム窒素化合物でアルミニウム溶湯の表面に発生した酸化膜を除去することを特徴とする鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  2. 前記キャビティ内に窒素ガス及びマグネシウムガスを充填する前に、キャビティ内を不活性ガスに充填置換することを特徴とする請求項1記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  3. 前記アルミニウム溶湯の注湯温度を600〜750℃に設定したことを特徴とする請求項1記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
  4. 前記アルミニウム溶湯の注湯温度を温度センサで検知し、この温度センサの検知情報に基づいてアルミニウム溶湯を設定温度に制御することを特徴とする請求項3記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
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