JP4448630B2 - 鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給してキャビティ内でアルミニウム鋳物を鋳造する鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムの鋳造において、金型のキャビティにアルミニウム溶湯を供給する際に、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成し、生成した酸化膜がアルミニウム溶湯の表面張力を増加させ、アルミニウム溶湯の流動性を低下させることが起こり得る。このため、アルミニウム溶湯の表面に酸化膜が生成すると、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことは難しい。
【0003】
そこで、アルミニウム鋳造の際に、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に維持する鋳造方法として、例えば特願平11−91445号公報(特開2000−280063)「アルミニウム鋳造方法」が提案されている。以下、この技術について同公報の図を再掲して説明する。
【0004】
図24は従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図である。アルミニウムを鋳造する際には、先ず窒素ガスボンべ150から窒素ガス(N2ガス)を金型151のキャビティ152に充填する。次に、窒素ガスを蓄留タンク153に送り、蓄留タンク153内のマグネシウム粉末(Mg粉末)を窒素ガスと共に加熱炉155内に送り込む。
この加熱炉155内でマグネシウム粉末を昇華させ、昇華したマグネシウムを窒素ガスと反応させて気体状のマグネシウム窒素化合物(Mg3N2)を得る。
【0005】
このマグネシウム窒素化合物を配管156を通して金型151のキャビティ152内に導入し、導入したマグネシウム窒素化合物をキャビティ152の表面に析出させる。
次に、キャビティ152内にアルミニウム溶湯157を供給する。供給したアルミニウム溶湯157をマグネシウム窒素化合物と反応させて、アルミニウム溶湯157の表面の酸化物から酸素を取り除く。
【0006】
これにより、アルミニウム溶湯157の表面に酸化皮膜が発生することを防ぎ、アルミニウム溶湯157の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、アルミニウム溶湯157のキャビティ152への湯廻り性を好適に保つことができ、アルミニウム鋳造品の品質を高めることができる。
【0007】
ここで、上述したマグネシウム窒素化合物の生成工程及びアルミニウム溶湯の注湯工程ついて詳しく説明する。
先ず、マグネシウム窒素化合物の生成工程について説明する。加熱炉155の内部でマグネシウム粉末を昇華させ、この昇華したマグネシウムを加熱炉155の内部で窒素ガスと反応させる。昇華したマグネシウムは加熱炉155の内部で浮遊しているために、マグネシウムの表面全域に窒素ガスが付着し、表面全域にマグネシウム窒素化合物を生成することになる。
【0008】
次に、アルミニウム溶湯の注湯工程について説明する。
図25は従来のアルミニウム鋳造方法の要部説明図であり、キャビティ152の表面にマグネシウム窒素化合物の層159(以下、「マグネシウム窒素化合物層159」という)を析出させた後、キャビティ152にアルミニウム溶湯157を供給した状態を示す。
キャビティ152にアルミニウム溶湯157を供給することにより、アルミニウム溶湯157の表面157aが、マグネシウム窒素化合物層159の表面159aに接触して還元し、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除く。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図25で説明したように、アルミニウム溶湯157の表面157aをマグネシウム窒素化合物層159の表面159aに接触させることで、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除くことができる。
このことから、アルミニウム溶湯157の表面157aに発生した酸化物157bから酸素を取り除くためには、アルミニウム溶湯157の表面157aが接触するマグネシウム窒素化合物層159の表面159aのみを存在させればよいことが判る。
【0010】
しかし、図24で説明したように、マグネシウム窒素化合物の生成を、加熱炉155の内部にマグネシウムを浮遊させた状態でおこなうので、マグネシウムの表面全域に窒素ガスが付着する。このため、マグネシウムの表面全域にマグネシウム窒素化合物を生成することになる。このマグネシウム窒素化合物をキャビティ152の表面に析出させるので、図25に示すように膜厚tのマグネシウム窒素化合物層159になる。
【0011】
このため、キャビティ152の表面に、過剰なマグネシウム窒素化合物層159を析出させることになり、マグネシウム窒素化合物層159の生成に時間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになる。
加えて、過剰なマグネシウム窒素化合物層159を生成することになるので、窒素ガスの使用量も多くなり、そのことがコストを下げる妨げになる。
【0012】
さらに、上記公報の鋳造方法では、マグネシウム窒素化合物層159をキャビティ152の表面に生成する工程の前工程において、キャビティ152内に空気を残したままの状態で、キャビティ152内に窒素ガスを充填する方法を採用している。
このため、キャビティ152内から空気を円滑に逃がすことが難しく、キャビティ152内を窒素ガスの雰囲気状態にするまでに時間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、マグネシウム窒素化合物の生成を短い時間でおこなうことができ、かつ窒素ガスの使用量を少なくすることができる鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、キャビティを形成する金型表面にマグネシウムを含有した離型剤を塗布する工程と、この離型剤を塗布した金型表面でキャビティを形成する工程と、このキャビティ内に窒素ガスを導入し、この窒素ガスをマグネシウムに反応させることにより金型表面に窒化マグネシウムを生成させる工程と、この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する工程とから鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法を構成する。
【0015】
窒化マグネシウムを生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を金型表面に塗布し、次にキャビティに窒素ガスを導入する。離型剤の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して窒化マグネシウムを生成する。
これにより、離型剤に含有した全てのマグネシウムのうち、離型剤の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウムの生成時間を短くすることができる。
加えて、離型剤の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウムを生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0016】
ここで、金型表面にマグネシウムを付着させるその他の例として、マグネシウムを加熱して昇華させ、昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導入することにより、気体状のマグネシウムを金型表面に析出させることも考えられる。
しかし、この方法は、マグネシウムを昇華させるための加熱手段を必要とし、加えて昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導くためには、例えば不活性ガスで気体状のマグネシウムを導く必要があるのでガス導入手段を必要とする。このため、設備費が嵩み、鋳造品のコストを抑える妨げになる。
そこで、請求項1において、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面に塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
【0017】
加えて、鋳造の際には、鋳造工程後に金型から鋳物を離型するために、金型表面に離型剤を塗布することは一般的な作業工程であり、この塗布工程を利用してマグネシウムを金型表面に塗布することができるので、金型表面にマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
【0018】
請求項2は、離型剤として油性の離型剤を使用したことを特徴とする。
ここで、万が一水性の離型剤を使用すると、離型剤に含まれるマグネシウムが離型剤の水分(酸素)と反応して酸化マグネシウムになる。従って、この後にキャビティ内に窒素ガスを導入しても窒化マグネシウムが生成されず、アルミニウム溶湯の表面を還元することはできない。
そこで、請求項2において、油性の離型剤を使用することで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯の表面を還元してアルミニウム溶湯の流動性を好適に保つことが可能になる。
【0019】
請求項3は、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定したことを特徴とする。
マグネシウムの含有量が2重量%未満になると、窒素ガスとの反応が乏しくなる。反応を良好におこなうためには、金型又は窒素ガスを500℃以上に加熱する必要があり、加熱時間が長くかかる。このため、鋳造工程のサイクルタイムが長くなり生産性が低下する。
そこで、マグネシウムの含有量を2重量%以上に設定することで、金型又は窒素ガスの加熱温度を抑えサイクルタイムを短くして生産性を高めるようにした。
【0020】
また、マグネシウムの含有量が20重量%を越えると、マグネシウムに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウムを生成する際に過剰の反応熱が発生することが考えられる。このため、雰囲気が700℃以上になり金型の耐久性が低下する虞がある。そこで、マグネシウムの含有量を20重量%以下に設定することで、反応熱を抑え金型の耐久性を高めるようにした。
【0021】
請求項4は、離型剤を塗布する部位を、金型表面のうちの湯回り性の悪い部位とすることを特徴とする。
【0022】
アルミニウム溶湯は粘性流体の一種であるから流路断面積が小さい、若しくは流路断面の縦又は横寸法が小さいときには流速が低下し、湯回り性が悪くなる。キャビティには湯回り性の悪い部位がどうしても存在する。
【0023】
そこで、請求項4では、湯回り性の悪い部位のみに離型剤を塗布することで、この部位に窒化マグネシウムを生成することにした。
これにより、アルミニウム溶湯が湯回り性の悪い部位まで到達したとき、アルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムに接触させることができる。このアルミニウム溶湯の表面には酸化物が発生している可能性があるが、万が一酸化物が発生していても、酸化物が窒化マグネシウムと反応して酸化物から酸素を取り除くことができる。
【0024】
よって、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、湯回り性が悪い部位においても、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0025】
加えて、湯回り性の悪い部位にのみ離型剤を塗布して、離型剤のマグネシウムに窒素ガスを反応させることにより、この部位にのみ窒化マグネシウムを生成させればよいので、窒素の使用量をさらに減らすことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)で鋳造したディスクロータの斜視図である。
ディスクロータ10は、円筒形のハブ部11と、ハブ部11に一体に成形した円盤状のディスク部18とからなアルミニウム製の部材である。
【0027】
ハブ部11は、周壁12の外側端に蓋13を一体成形したもので、蓋13の中央に開口14を開け、開口14の周囲にボルト孔15・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)及びスタッド孔16・・・を開けたものである。
ボルト孔15・・・から図示しないボルトを差込み、これらのボルトでディスクロータ10をドライブシャフト(図示しない)側に取り付ける。
なお、スタッド孔16・・・は、ディスクロータ10に車輪を取り付けるために、図示しないスタッドを圧入する孔である。
【0028】
図2は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置20は、鋳造金型22を備えた鋳造装置本体21と、鋳造金型22の金型表面25で形成したキャビティ内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部50とを備える。
金型表面25は、固定型23及び可動型24に形成した表面である。
【0029】
鋳造装置本体21は、ベース30に固定板31を取付け、この固定板31に鋳造金型22の固定型23を取付け、固定板31にガイドロッド32,32を取付け、ガイドロッド32,32で可動板33を移動自在に支え、可動板33に鋳造金型22の可動型24を取付け、固定型23及びベース30にキャビティに開口する湯路34を形成し、湯路34内に移動自在にプランジャ35を備え、この湯路34から鉛直に湯口36を形成し、湯口36の上端をほぞ37で塞ぎ、この湯口36に連通可能な注湯槽38を湯口36の上方に備える。
固定型23及び可動型24で鋳造金型22を構成する。
【0030】
このアルミニウム鋳造装置20によれば、可動板33を移動手段(図示しない)で矢印の方向に移動することにより可動型24を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。可動型24を型締め位置に静止させることで、固定型23及び可動型24のそれぞれの金型表面25でキャビティを形成することができる。
このキャビティにアルミニウム溶湯39を供給した後、プランジャ35でアルミニウム溶湯39を加圧することによりキャビティ内でアルミニウム鋳物を鋳造することができる。
【0031】
加えて、鋳造装置本体21は、キャビティを形成する金型表面25のうち、図1に示す円盤状のディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aに沿って、すなわち固定型23の外周及び可動型24の外周に沿って加熱部(カートリッジヒータ)27を配置するように鋳造金型22に埋設したものである。
これにより、ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aを所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱することができる。
ディスク部18(薄肉部)に相当する部位25aは、金型表面25のうちで、比較的湯回り性を良好に確保することが難しい部位である。
【0032】
窒素ガス導入部50は、キャビティに窒素導入流路51を介して窒素ガスボンべ52を連通し、窒素導入流路51の途中に窒素用開閉弁53を備える。
窒素用開閉弁53は、窒素導入流路51を開・閉状態に切換える弁である。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51を介してキャビティ内に導入することができる。
【0033】
以下、本発明に係る第1実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置20で実施する例について説明する。
図3は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST10;鋳造金型を型開きした状態で、キャビティを形成する金型表面にマグネシウムを含有した離型剤を塗布する。
ST11;鋳造金型を型締めすることにより、離型剤を塗布した金型表面でキャビティを形成する。
ST12;金型表面のうちで、鋳物の薄肉部に相当する部位を加熱する。
ST13;このキャビティ内に窒素ガスを導入し、この窒素ガスをマグネシウムに反応させることにより金型表面に窒化マグネシウムを生成する。
ST14;この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する。
以下、本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法のST10〜ST14の工程を図4〜図8で詳しく説明する。
【0034】
先ず、ST10において、図2に示す鋳造金型22の可動型24を矢印の如く移動することにより、鋳造金型22を型開きする。次に、固定型23及び可動型24のそれぞれの金型表面のうちの、鋳物の薄肉部に相当する部位(図1に示す、ディスクロータ10のディスク部18に相当する部位)25aに離型剤を塗布することにより離型層40を形成する。
【0035】
図4は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、ST11〜12を示す。
鋳造金型22を型開した状態で、金型表面25のうちの鋳物の薄肉部に相当する部位25aに離型剤を塗布することにより離型層40を形成する。離型層40を形成した後、鋳造金型22を型締してそれぞれの金型表面25でキャビティを形成する(この状態を図4に示す。)。
【0036】
金型表面の部位25aに塗布した離型剤は、粉末状のマグネシウムを2〜20重量%含有させた油性の離型剤である。なお、マグネシウムの含有量は5〜10重量%であることがより好ましい。
マグネシウムの含有量を2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%に設定した理由については後述する。
【0037】
金型表面の部位25aに離型層40を形成した後、加熱部(カートリッジヒータ)27を加熱する。この加熱の際に、金型表面部の部位25aの温度を、一例として400〜500℃未満となるように加熱部(カートリッジヒータ)27を制御する。
【0038】
図5は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST13を示す。
窒素ガス導入部50の窒素用開閉弁53を開状態に切換える。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51に流す。これにより、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51を介して金型表面25で形成したキャビティ内に導入する。
【0039】
図6は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図であり、ST13を示す。
ここで、金型表面25の部位25aを、加熱部(カートリッジヒータ)27で一例として400〜500℃未満に加熱している。これにより、離型層40の表面のマグネシウムと窒素ガスとが反応して、この部位25aの表面に窒化マグネシウム(Mg3N2)42を生成する。
【0040】
ここで、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定した理由を説明する。
すなわち、マグネシウムの含有量が2重量%未満になると、窒素ガスとの反応が乏しくなる。反応を良好におこなうためには、金型表面25の部位25aを500℃以上に加熱する必要があり、加熱時間が長くなる。このため、鋳造工程のサイクルタイムが長くなり生産性が低下する。
【0041】
そこで、マグネシウムの含有量を2重量%以上に設定することで、金型表面25の部位25aの加熱温度を低く抑えサイクルタイムを短くして生産性を高めるようにした。
なお、マグネシウムの含有量を5重量%以上に設定することで、上記効果をより高めることができる。
【0042】
また、マグネシウムの含有量が20重量%を越えると、マグネシウムに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウムを生成する際に過剰の反応熱が発生することが考えられる。このため、雰囲気が700℃以上になり金型の耐久性が低下する虞がある。そこで、マグネシウムの含有量を20重量%以下に設定することで、反応熱を抑え金型の耐久性を高めるようにした。
なお、マグネシウムの含有量を10重量%以下に設定することで、上記効果をより高めることができる。
【0043】
このように、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定することにより、金型表面25の部位25aを、加熱部(カートリッジヒータ)27で一例として400〜500℃未満)に加熱することで、離型層40を加熱して窒化マグネシウム42を生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム42を効率よく生成することができる。
【0044】
また、加熱温度を400〜500℃未満に設定することで、雰囲気を700℃以下に抑えることができるので、鋳造金型22の耐久性を維持することができる。
そして、金型表面25の部位25aに窒化マグネシウム42を生成させた後、図5に示す窒素用開閉弁53を閉状態に切換える。
【0045】
図4及び図6で説明したように、窒化マグネシウム42を生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を、金型表面25の部位25aに塗布して離型層40を形成する。次に、金型表面25で形成したキャビティに窒素ガスを導入する。離型層40の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して、金型表面25の部位25aに窒化マグネシウム42を生成する。
これにより、離型層40に含有した全てのマグネシウムのうち、離型層40の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウム42の生成時間を短くすることができる。
【0046】
加えて、離型層40の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウム42を生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0047】
ここで、金型表面25の部位25aにマグネシウムを付着させる方法として、マグネシウムを加熱することにより昇華し、昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導入することにより、気体状のマグネシウムを金型表面25の部位25aに析出させるという方法も考えられる。
【0048】
しかし、この方法を採用するためには、マグネシウムを昇華させるための加熱手段を必要とし、加えて昇華した気体状のマグネシウムを、例えば不活性ガスでキャビティ内に導くためにガス導入手段を必要とする。このため、設備費が嵩み、鋳造品のコストを抑える妨げになる。
そこで、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面25の部位25aに塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
【0049】
加えて、鋳造工程後に鋳造金型22から鋳物を離型するために、金型表面25に離型剤を塗布することは一般的な作業工程であり、この塗布工程を利用してマグネシウムを金型表面25の部位25aに塗布することができるので、金型表面25の部位25aにマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
【0050】
図7(a),(b)は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図であり、ST14の前半を示す。
(a)において、鋳造装置本体21のほぞ37を操作して湯口36を開口させることにより、注湯槽38のアルミニウム溶湯39を湯口36及び湯路34を通して、金型表面25で形成したキャビティに矢印の如く供給する。
【0051】
ここで、離型剤として水性の離型剤を使用することも考えられるが、水性の離型剤を使用すると、離型剤に含まれるマグネシウムが離型剤の水分(酸素)と反応して酸化マグネシウムになる。従って、この後にキャビティ内に窒素ガスを導入しても窒化マグネシウムが生成されず、アルミニウム溶湯39の表面を還元することはできない。
そこで、離型剤を油性の離型剤とした。油性の離型剤を使用することで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯39の表面を還元してアルミニウム溶湯39の流動性を好適に保つことが可能になる。
【0052】
ところで、アルミニウム溶湯39は、粘性流体の一種であるから流路断面積が大きいときには湯回り性を好適に保ちやすく、流路断面積が小さいときや流路断面の縦寸法又はよこ寸法が小さいときには湯回り性が悪くなる。キャビティには湯回り性の悪い部位がどうしても存在する。
このため、広い空間を形成する金型表面25の部位(湯回り性が良好な部位)25bにおいては、万が一アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化物39b(図7(b)に示す)が発生していても、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことができる。
【0053】
一方、狭い空間を形成する金型表面25の部位(すなわち、湯回り性を良好に確保することが難しい部位)25aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
そこで、狭い空間を形成する金型表面25の部位25aに、窒化マグネシウム58bを生成させ、この窒化マグネシウム58bでアルミニウム溶湯39の酸化物39bを還元することにした。この作用を(b)で説明する。
【0054】
(b)において、キャビティ内に供給したアルミニウム溶湯39が、金型表面25の部位25aまで到達すると、アルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム42に接触する。
このアルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム42と反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0055】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、金型表面25の部位25aにおいて、アルミニウム溶湯39の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0056】
図8(a),(b)は本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図であり、ST14の後半を示す。
(a)において、注湯槽38からアルミニウム溶湯39をキャビティ側に所定量供給した後、ほぞ37で湯口36を閉じる。この状態で、プランジャ35をキャビティに向けて押出すことにより、アルミニウム溶湯39をキャビティ内に充填する。
【0057】
(b)において、鋳造金型22を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品39cを取り出す。アルミニウム鋳造品39cは、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品39cを加工して図1に示すディスクロータ10を得る。
【0058】
以下、第2〜第4実施形態について説明する。なお、第2〜第4実施形態において第1実施形態と同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
先ず、第2実施形態を図9〜図12に基づいて説明する。
図9は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第2実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置80は、鋳造金型82を備えた鋳造装置本体81と、鋳造金型82の金型表面87で形成したキャビティ内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部50とを備える。
金型表面87は、固定型83、可動型84及び中子85に形成した表面である。
【0059】
鋳造装置本体81は、ベース90に固定板91を取付け、この固定板91に固定型83を取付け、ベース90に可動板92を移動自在に取付け、可動板92に可動型84を取付け、可動板92を移動する移動手段93をベース90に設け、ベース90に鋳造金型82の中子85を昇降手段94で昇降自在に取付け、キャビティに開口する湯路95を可動型84に形成し、湯路95に対して鉛直に湯口96を形成し、アルミニウム溶湯39を蓄える注湯槽97を湯口96の上方に備え、鋳造金型82の上端にガス抜きや押湯用の開口98を備える。
固定型83、可動型84及び中子85で鋳造金型82を構成する。
【0060】
なお、図9においては、鋳造装置本体81の理解を容易にするために湯口96及び開口98をキャビティに対して大きく図示して説明するが、現実の湯口96及び開口98はキャビティに対して十分に小さく、鋳造金型82を型締めするとキャビティは殆ど密閉状態を維持することができる。
【0061】
このアルミニウム鋳造装置80によれば、可動板92を移動手段93で矢印の方向に移動することにより可動型84を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。また、昇降手段94で中子85を矢印の方向に移動することにより中子85を型締め位置(図に示す位置)と型開き位置とに移動することができる。
【0062】
可動型84及び中子85を型締め位置に静止させることで、固定型83、可動型84及び中子85の金型表面87でキャビティを形成することができる。このキャビティにアルミニウム溶湯39を供給してキャビティ内でアルミニウム鋳物を鋳造することができる。
鋳造装置本体81は、大気圧下で自重を利用してアルミニウム溶湯39をキャビティ内に流込む構成にしたもので、この点で第1実施形態の鋳造装置本体21と異なる。
【0063】
加えて、鋳造装置本体81は、キャビティを形成する金型表面87のうち、シリンダブロックのシリンダ部(薄肉部)に相当する部位87aに沿って、すなわち固定型83の左下部及び中子85の外周に加熱部(カートリッジヒータ)88を配置するように鋳造金型82に埋設したものである。
これにより、金型表面87の部位87aを所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱することができる。
金型表面87の部位87aは、金型表面87のうちで、比較的湯回り性を良好に確保することが難しい部位である。
【0064】
次に、本発明に係る第2実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置80で実施する例について図3及び図9〜図12に基づいて説明する。
先ず、図3のST10の工程を説明する。
図9に示す鋳造金型82の可動型84を移動することにより、鋳造金型82を型開きし、固定型83、可動型84及び中子85の金型表面87の部位87aに離型剤を塗布する。
【0065】
図10(a),(b)は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、ST11〜13を示す。
(a)において、金型表面87の部位87aに離型剤を塗布することで、部位87aに離型層100を形成した後、鋳造金型82を型締して金型表面87でキャビティを形成する。
金型表面87の部位87aに塗布した離型剤は、粉末状のマグネシウムを2〜20重量%含有させた油性の離型剤である。なお、マグネシウムの含有量は5〜10重量%であることがより好ましい。
マグネシウムの含有量を2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%に設定した理由は、第1実施形態と同じ理由なので説明を省略する。
【0066】
金型表面87の部位87aに離型層100を形成した後、加熱部(カートリッジヒータ)88を加熱する。このとき、金型表面87の部位87aの温度を、一例として400〜500℃未満になるように加熱部(カートリッジヒータ)88を制御する。
【0067】
(b)において、図9に示す窒素ガス導入部50の窒素用開閉弁53を開状態に切換える。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51に流す。これにより、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51を介して金型表面87で形成したキャビティ内に導入する。
【0068】
ここで、金型表面87の部位87aを、加熱部(カートリッジヒータ)88で、一例として400〜500℃未満に加熱している。これにより、離型層100の表面のマグネシウムと窒素ガスとが反応して、この部位87aの表面に窒化マグネシウム(Mg3N2)102を生成する。
【0069】
ここで前述したように、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定することにより、金型表面87の部位87aを、加熱部(カートリッジヒータ)88で、一例として400〜500℃未満)まで加熱することで、離型層100を加熱して窒化マグネシウム102を生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム102を効率よく生成することができる。
また、400〜500℃未満に加熱することで、雰囲気を700℃以下に抑えることができるので、鋳造金型82の耐久性を維持することができる。
そして、金型表面25の部位87aに窒化マグネシウム102を生成させた後、図9に示す窒素用開閉弁53を閉状態に切換える。
【0070】
図10で説明したように、窒化マグネシウム102を生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を、金型表面87の部位87aに塗布し、次にキャビティに窒素ガスを導入する。離型層100の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して窒化マグネシウム102を生成する。
これにより、離型層100に含有した全てのマグネシウムのうち、離型層100の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウム102の生成時間を短くすることができる。
【0071】
加えて、離型層100の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウム102を生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0072】
ここで、金型表面87の部位87aにマグネシウムを付着させる方法として、マグネシウムを加熱することにより昇華し、昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導入することにより、気体状のマグネシウムを部位87aに析出させるという方法も考えられる。
【0073】
しかし、この方法を採用するためには、マグネシウムを昇華させるための加熱手段を必要とし、加えて昇華した気体状のマグネシウムを、例えば不活性ガスでキャビティ内に導くためにガス導入手段を必要とする。このため、設備費が嵩み、鋳造品のコストを抑える妨げになる。
そこで、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面87の部位87aに塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
【0074】
加えて、鋳造工程後に鋳造金型82から鋳物を離型するために、金型表面87に離型剤を塗布することは一般的な作業工程であり、この塗布工程を利用してマグネシウムを金型表面87の部位87aに塗布することができるので、金型表面87の部位87aにマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
【0075】
次に、図3のST14の工程を図11及び図12で説明する。
図11(a),(b)は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図である。
(a)において、鋳造装置本体81の注湯槽97を傾けることにより、注湯槽97のアルミニウム溶湯39を湯口96及び湯路95を通してキャビティに矢印の如く供給する。
【0076】
ここで、第1実施形態と同様に、離型剤を油性の離型剤とした。油性の離型剤を使用することで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯39の表面を還元してアルミニウム溶湯39の流動性を好適に保つことが可能になる。
【0077】
ところで、アルミニウム溶湯39は、第1実施形態で説明したように粘性流体の一種であるから流路断面積が大きいときには湯回り性を好適に保ちやすく、流路断面積が小さいときや流路断面の縦寸法又はよこ寸法が小さいときには湯回り性が悪くなる。キャビティには湯回り性の悪い部位がどうしても存在する。
このため、広い空間を形成する金型表面87の部位(湯回り性が良好な部位)87bにおいては、万が一アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化物39bが発生していても、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことができる。
【0078】
一方、狭い空間を形成する金型表面87の部位(すなわち、湯回り性を良好に確保することが難しい部位)87aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
そこで、狭い空間を形成する金型表面87の部位87aにおいては、部位87aに窒化マグネシウム103を生成させ、この窒化マグネシウム103でアルミニウム溶湯39の酸化物39bを還元することにした。この作用を(b)で説明する。
【0079】
(b)において、キャビティ内に供給したアルミニウム溶湯39が、金型表面87の部位87aまで到達すると、アルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム102に接触する。
このアルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム102と反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0080】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、金型表面87の部位87aにおいて、アルミニウム溶湯39の湯廻り性を好適に保つことができる。
【0081】
図12(a),(b)は本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図である。
(a)において、注湯槽97からアルミニウム溶湯39をキャビティに所定量供給した後、注湯槽97を水平に戻す。アルミニウム溶湯39が凝固した後、昇降手段94で中子85を矢印▲1▼の如く下げ、移動手段93で可動型84を矢印▲2▼の如く移動することにより、鋳造金型82を型開きする。
【0082】
(b)において、鋳造金型82を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品105を取り出す。アルミニウム鋳造品105は、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品105から非製品部105a及び非製品部105bを除去した後、製品部を加工してエンジンのシリンダブロックを得る。
【0083】
次に、第3実施形態を図13〜図19に基づいて説明する。
図13は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第3実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置120は、鋳造金型122を備えた鋳造装置本体121と、鋳造金型122の金型表面25で形成したキャビティ内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部130とを備える。
金型表面25は、第1実施形態と同様に固定型23及び可動型24に形成した表面である。
【0084】
鋳造装置本体121は、第1実施形態の鋳造金型22から加熱部27を取除いたものであり、その他の構成は鋳造装置本体21と同様である。
また、窒素ガス導入部130は、第1実施形態を構成する窒素ガス導入部50の窒素導入流路51の途中に加熱部(ヒータ)131を備えたもので、その他の構成は窒素ガス導入部50と同様である。
窒素ガス導入部130によれば、加熱部(ヒータ)131を備えることで、窒素導入流路51を流れる窒素ガスを所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱することができる。
【0085】
以下、本発明に係る第3実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置120で実施する例について説明する。
図14は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャートであり、図中ST××はステップ番号を示す。
ST20;鋳造金型を型開きした状態で、キャビティを形成する金型表面にマグネシウムを含有した離型剤を塗布する。
ST21;鋳造金型を型締めすることにより、離型剤を塗布した金型表面でキャビティを形成する。
ST22;加熱した窒素ガスをキャビティ内に導入し、この窒素ガスをマグネシウムに反応させることにより金型表面に窒化マグネシウムを生成する。
ST23;この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する。
以下、本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法のST20〜ST23の工程を図15〜図19で詳しく説明する。
【0086】
先ず、ST20において、図13に示す鋳造金型122の可動型24を矢印の如く移動することにより、鋳造金型22を型開きする。次に、固定型23及び可動型24のそれぞれの金型表面25(鋳物の薄肉部に相当する部位25a及び鋳物のその他の部位25b)に離型剤を塗布する。
【0087】
図15は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、ST20及びST21を示す。
金型表面25に離型剤を塗布することにより離型層135を形成した後、鋳造金型122を型締してそれぞれの金型表面25でキャビティを形成する。
金型表面25に塗布した離型剤は、粉末状のマグネシウムを2〜20重量%含有させた油性の離型剤である。なお、マグネシウムの含有量は5〜10重量%であることがより好ましい。
マグネシウムの含有量を2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%に設定した理由は、第1実施形態の理由と同じであり説明を省略する。
【0088】
図16は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST22の前半を示す。
窒素ガス導入部130の加熱部131を加熱状態にする。この状態で、窒素用開閉弁53を開状態に切換える。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51に流す。これにより、窒素導入流路51内の窒素ガスを加熱部131で加熱し、加熱した窒素ガスを窒素導入流路51を介してキャビティ内に導入する。
【0089】
このように、窒素ガスを加熱部131で単独で個別に加熱することで、窒素導入流路61を流れる窒素ガスを効率よく所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱することができる。
【0090】
図17は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図であり、ST22の後半を示す。
ここで、キャビティ内に導入した窒素ガスは、所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱している。
これにより、離型層135の表面のマグネシウムと窒素ガスとが反応して、離型層135の表面に窒化マグネシウム(Mg3N2)136を生成する。
【0091】
ここで前述したように、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定することにより、窒素ガスを、図16に示す加熱部131で、一例として400〜500℃未満)に加熱することで、離型層135を加熱して窒化マグネシウム136を生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム136を効率よく生成することができる。
また、400〜500℃未満に加熱することで、雰囲気を700℃以下に抑えることができるので、鋳造金型122の耐久性を維持することができる。
そして、離型層135の表面に窒化マグネシウム136を生成させた後、図16に示す窒素用開閉弁53を閉状態に切換える。
【0092】
図15及び図17で説明したように、窒化マグネシウム136を生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を金型表面25に塗布し、次にキャビティに窒素ガスを導入する。離型層135の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して窒化マグネシウム136を生成する。
これにより、離型層135に含有した全てのマグネシウムのうち、離型層135の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウム136の生成時間を短くすることができる。
【0093】
加えて、離型層135の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウム136を生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0094】
ここで、金型表面25にマグネシウムを付着させる方法として、マグネシウムを加熱することにより昇華し、昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導入することにより、気体状のマグネシウムを金型表面25に析出させるという方法も考えられる。
【0095】
しかし、この方法を採用するためには、マグネシウムを昇華させるための加熱手段を必要とし、加えて昇華した気体状のマグネシウムを、例えば不活性ガスでキャビティ内に導くためにガス導入手段を必要とする。このため、設備費が嵩み、鋳造品のコストを抑える妨げになる。
【0096】
そこで、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面25に塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
【0097】
加えて、鋳造工程後に鋳造金型122から鋳物を離型するために、金型表面25に離型剤を塗布することは一般的な作業工程であり、この塗布工程を利用してマグネシウムを金型表面25に塗布することができるので、金型表面25にマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
【0098】
図18(a),(b)は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図であり、ST23の前半を示す。
(a)において、鋳造装置本体121のほぞ37を操作して湯口36を開口させることにより、注湯槽38のアルミニウム溶湯39を湯口36及び湯路34を通してキャビティに矢印の如く供給する。
【0099】
ここで、第1実施形態と同様に、離型剤を油性の離型剤とした。油性の離型剤を使用することで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯39の表面を還元してアルミニウム溶湯39の流動性を好適に保つことが可能になる。
【0100】
(b)において、キャビティ内に供給したアルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム58bに接触する。ここで、アルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム58bと反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0101】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、アルミニウム溶湯39のキャビティへの湯廻り性を好適に保つことができる。
【0102】
特に、狭い空間を形成する金型表面25の部位(すなわち、流動性を良好に確保することが難しい部位)25aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
このため、金型表面25の部位25aにおいて、湯回り性を良好に確保することができ、より高い効果を得ることができる。
【0103】
図19(a),(b)は本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図であり、ST23の後半を示す。
(a)において、注湯槽38からアルミニウム溶湯39をキャビティ側に所定量供給した後、ほぞ37で湯口36を閉じる。この状態で、プランジャ35をキャビティに向けて押出すことにより、アルミニウム溶湯39をキャビティ内に充填する。
【0104】
(b)において、鋳造金型122を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品39cを取り出す。アルミニウム鋳造品39cは、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品39cを加工して図1に示すディスクロータ10を得る。
【0105】
次に、第4実施形態を図20〜図23に基づいて説明する。
図20は本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第4実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図である。
アルミニウム鋳造装置140は、鋳造金型142を備えた鋳造装置本体141と、鋳造金型142の金型表面87で形成したキャビティ内に窒素(N2)ガスを導入する窒素ガス導入部130とを備える。
金型表面87は、第2実施形態と同様に固定型83、可動型84及び中子85に形成した表面である。
鋳造装置本体141は、第2実施形態の鋳造金型142から加熱部88を取除いたものであり、その他の構成は鋳造装置本体141と同様である。
【0106】
次に、本発明に係る第4実施形態の鋳造方法をアルミニウム鋳造装置140で実施する例について図14及び図20〜図23に基づいて説明する。
先ず、図14のST20の工程を説明する。
図20に示す鋳造金型142の可動型84を移動することにより、鋳造金型142を型開きの状態にし、固定型83及び可動型84のそれぞれの金型表面87に離型剤を塗布する。
【0107】
図21(a),(b)は本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図であり、(a)はST21を示し、(b)はST22を示す。
(a)において、金型表面87(鋳物の薄肉部を成形する部位87a、鋳物のその他部位を成形する部位87b)に離型剤を塗布することで、金型表面87に離型層145を形成した後、鋳造金型142を型締して金型表面142でキャビティを形成する。
【0108】
金型表面87に塗布した離型剤は、粉末状のマグネシウムを2〜20重量%含有させた油性の離型剤である。なお、マグネシウムの含有量は5〜10重量%であることがより好ましい。
マグネシウムの含有量を2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%に設定した理由は、第1実施形態と同じ理由であり説明を省略する。
【0109】
図20に戻って、窒素ガス導入部130の加熱部131を加熱状態にする。この状態で、窒素用開閉弁53を開状態に切換える。窒素用開閉弁53を開状態に切換えることで、窒素ガスボンべ52内の窒素ガスを窒素導入流路51に流す。これにより、窒素導入流路51内の窒素ガスを加熱部131で加熱し、加熱した窒素ガスを窒素導入流路51を介して金型表面87で形成したキャビティ内に導入する。
【0110】
このように、窒素ガスを加熱部131で単独で個別に加熱することで、窒素導入流路61を流れる窒素ガスを効率よく所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱することができる。
【0111】
(b)において、キャビティ内に導入した窒素ガスは、所定温度(一例として、400〜500℃未満)に加熱している。
これにより、離型層135の表面のマグネシウムと窒素ガスとが反応して、離型層145の表面に窒化マグネシウム(Mg3N2)146を生成する。
【0112】
ここで前述したように、離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定することにより、窒素ガスを、図20に示す加熱部131で、一例として400〜500℃未満)に加熱することで、離型層145を加熱して窒化マグネシウム146を生成しやすくすることができる。このため、窒化マグネシウム146を効率よく生成することができる。
また、400〜500℃未満に加熱することで、雰囲気を700℃以下に抑えることができるので、鋳造金型の耐久性を維持することができる。
そして、離型層145の表面に窒化マグネシウム146を生成させた後、図20に示す窒素用開閉弁53を閉状態に切換える。
【0113】
図21で説明したように、窒化マグネシウム146を生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を金型表面87に塗布し、次にキャビティに窒素ガスを導入する。離型層145の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して窒化マグネシウム146を生成する。
これにより、離型層145に含有した全てのマグネシウムのうち、離型層145の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウム146の生成時間を短くすることができる。
【0114】
加えて、離型層145の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウム146を生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができる。
【0115】
ここで、金型表面87にマグネシウムを付着させる方法として、マグネシウムを加熱することにより昇華し、昇華した気体状のマグネシウムをキャビティ内に導入することにより金型表面87に析出させるという方法も考えられる。
しかし、この方法を採用するためには、マグネシウムを昇華させるための加熱手段を必要とし、加えて昇華した気体状のマグネシウムを、例えば不活性ガスでキャビティ内に導くためにガス導入手段を必要とする。このため、設備費が嵩み、鋳造品のコストを抑える妨げになる。
【0116】
そこで、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面87に塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
【0117】
加えて、鋳造工程後に鋳造金型142から鋳物を離型するために、金型表面87に離型剤を塗布することは一般的な作業工程であり、この塗布工程を利用してマグネシウムを金型表面87に塗布することができるので、金型表面87にマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
【0118】
図22(a),(b)は本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図であり、ST23の前半を示す。
(a)において、鋳造装置本体141の注湯槽97を傾けることにより、注湯槽97のアルミニウム溶湯39を湯口96及び湯路95を通して金型表面87で形成したキャビティに矢印の如く供給する。
【0119】
ここで、第1実施形態と同様に、離型剤を油性の離型剤とした。油性の離型剤を使用することで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯39の表面を還元してアルミニウム溶湯39の流動性を好適に保つことが可能になる。
【0120】
(b)において、キャビティ内に供給したアルミニウム溶湯39の表面39aが、窒化マグネシウム58bに接触する。ここで、アルミニウム溶湯39の表面39aには酸化物39bが発生している可能性があるが、万が一酸化物39bが発生していても、酸化物39bが窒化マグネシウム146と反応して酸化物39bから酸素を取り除くことができる。
【0121】
これにより、アルミニウム溶湯39の表面39aに酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯39の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、アルミニウム溶湯39のキャビティへの湯廻り性を好適に保つことができる。
【0122】
特に、狭い空間を形成する金型表面87のうちの部位(湯回り性を良好に確保することが難しい部位)87aにおいてはアルミニウム溶湯39は比較的流れ難いので、アルミニウム表面39aに酸化物39bが発生していると、アルミニウム溶湯39を円滑に流すことが難しい。
このため、金型表面87のうちの部位87aにおいて、湯回り性を良好に保つことができ、より高い効果を得ることができる。
【0123】
図23(a),(b)は本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図であり、ST23の後半を示す。
(a)において、注湯槽97からアルミニウム溶湯39をキャビティに所定量供給した後、注湯槽97を水平に戻す。アルミニウム溶湯39が凝固した後、昇降手段94で中子85を矢印▲3▼の如く下げ、移動手段93で可動型84を矢印▲4▼の如く移動することにより、鋳造金型142を型開きする。
【0124】
(b)において、鋳造金型142を型開きすることにより、アルミニウム溶湯39((a)に示す)が凝固して得たアルミニウム鋳造品105を取り出す。アルミニウム鋳造品105は、注湯の際に湯廻り性を好適に保つことができるので、品質をより優れたものとすることができる。
このアルミニウム鋳造品105から非製品部105a及び非製品部105bを除去した後、製品部を加工してエンジンのシリンダブロックを得る。
【0125】
なお、前記第1、第2実施形態では、金型表面25の部位25aや金型表面87の87aに離型剤を塗布し、それぞれの部位25a,87aを加熱する例について説明したが、これに限らないで、金型表面25,87の表面全域に離型剤を塗布することも可能である。この場合、金型表面25,87全域を加熱してもよく、それぞれの部位25a,87aのみを加熱してもよい。
【0126】
さらに、前記実施形態のアルミニウムの鋳造方法は、一例としてシリコン、ニッケルや銅を含んだアルミニウム合金や純粋なアルミニウムに適用することが可能である。
【0127】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、窒化マグネシウムを生成する際に、先ずマグネシウムを含有した離型剤を金型表面に塗布し、次にキャビティに窒素ガスを導入する。離型剤の表面のマグネシウムが窒素ガスに反応して窒化マグネシウムを生成する。
これにより、離型剤に含有した全てのマグネシウムのうち、離型剤の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させることができる。このため、窒化マグネシウムの生成時間を短くすることができる。従って、アルミニウム鋳造品の生産性を高めることができる。
加えて、離型剤の表面に露出したマグネシウムだけに窒素ガスを反応させて窒化マグネシウムを生成すればよいので、窒素ガスの使用量を少なくすることができ、鋳造品のコストを抑えることができる。
【0128】
また、マグネシウムを含有した離型剤を金型表面に塗布することにした。これにより、マグネシウムを昇華するための加熱手段や、気体状のマグネシウムをキャビティに導入するガス導入手段を不要にすることができる。
加えて、鋳造の際には、鋳造工程後に金型から鋳物を離型するために、金型表面に離型剤を塗布することは一般的に実施する作業工程であり、金型表面にマグネシウムを塗布するための工程を新たに加える必要はない。このため、鋳造工程の簡素化を図ることができる。
このように、加熱手段やガス導入手段を不要にでき、かつ鋳造工程を簡素にできるので、鋳造品のコストを抑えることができる。
【0129】
請求項2は、離型剤を油性の離型剤とすることで、マグネシウムと水(酸素)との反応を防止するようにした。これにより、キャビティ内に窒素ガスを導入することで窒化マグネシウムを生成し、この窒化マグネシウムでアルミニウム溶湯の表面を還元してアルミニウム溶湯の流動性を好適に保つことが可能になる。従って、アルミニウム鋳造品の生産性を高めることができる。
【0130】
請求項3は、離型剤のマグネシウム含有量を2〜20重量%に設定した。
マグネシウムの含有量を2重量%以上に設定することで、窒化マグネシウムを生成する際の金型又は窒素ガスの加熱温度を抑えることができるので、鋳造工程のサイクルタイムを短くして生産性を高めることができる。
また、マグネシウムの含有量を20重量%以下に設定することで、窒化マグネシウムを生成する際の反応熱を700℃より低く抑えることができるので、雰囲気温度を抑えて、金型の耐久性を高めることができる。
【0131】
請求項4は、キャビティのうちの湯回り性の悪い部位のみに離型剤を塗布することで、この部位に部位に窒化マグネシウムを生成することができる。
これにより、アルミニウム溶湯が湯回り性の悪い部位まで到達したとき、アルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムに接触させることができる。このアルミニウム溶湯の表面には酸化物が発生している可能性があるが、万が一酸化物が発生していても、酸化物が窒化マグネシウムと反応して酸化物から酸素を取り除くことができる。
【0132】
酸化物から酸素を取除くことにより、アルミニウム溶湯の表面に酸化皮膜が発生することを防いで、アルミニウム溶湯の表面張力が増大することを抑えることができる。従って、湯回り性が悪い部位においても、アルミニウム溶湯の湯廻り性を好適に保つことができるので、アルミニウム製の鋳物を鋳造する工程を短くして生産性を高めることができる。
【0133】
加えて、湯回り性の悪い部位にのみ離型剤を塗布して、離型剤のマグネシウムに窒素ガスを反応させることにより、この部位にのみ窒化マグネシウムを生成させることができる。このため、窒素の使用量をさらに減らすことが可能になり、アルミニウム鋳造品のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)で鋳造したディスクロータの斜視図
【図2】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第1実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図3】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャート
【図4】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図5】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図6】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図7】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図
【図8】本発明に係る第1実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図
【図9】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第2実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図10】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図11】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図12】本発明に係る第2実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図13】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第3実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図14】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法を説明するフローチャート
【図15】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図16】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図17】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図18】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第4説明図
【図19】本発明に係る第3実施形態のアルミニウム鋳造方法の第5説明図
【図20】本発明に係る鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法(第4実施形態)を実施するためのアルミニウム鋳造装置の全体概略図
【図21】本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第1説明図
【図22】本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第2説明図
【図23】本発明に係る第4実施形態のアルミニウム鋳造方法の第3説明図
【図24】従来のアルミニウム鋳造方法を説明する概略図
【図25】従来のアルミニウム鋳造方法の要部説明図
【符号の説明】
20,80,120,140…アルミニウム鋳造装置、22,82,122,142…鋳造金型(金型)、25,87…金型表面、25a,87a…金型表面のうちの薄肉部に相当する部位、27,88…金型を加熱する加熱部(カートリッジヒータ)、39…アルミニウム溶湯、39a…アルミニウム溶湯の表面、39c,105…アルミニウム鋳造品、40,100,135,145…離型層、58a,42,102,136,146…窒化マグネシウム、131…窒素ガスを加熱する加熱部。
Claims (4)
- キャビティを形成する金型表面にマグネシウムを含有した離型剤を塗布する工程と、
この離型剤を塗布した金型表面でキャビティを形成する工程と、
このキャビティ内に窒素ガスを導入し、この窒素ガスをマグネシウムに反応させることにより金型表面に窒化マグネシウムを生成させる工程と、
この窒化マグネシウムを生成させたキャビティ内に、アルミニウム溶湯を供給してアルミニウム溶湯の表面を窒化マグネシウムで還元させながらキャビティ内でアルミニウム製の鋳物を鋳造する工程と、からなる鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。 - 前記離型剤として油性の離型剤を使用したことを特徴とする請求項1記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
- 前記離型剤に含むマグネシウムの含有量を2〜20重量%に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
- 前記離型剤を塗布する部位を、前記金型表面のうちの湯回り性の悪い部位とすることを特徴とした請求項1、2又は3記載の鋳造金型によるアルミニウム鋳造方法。
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