JP2004057153A - 苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 - Google Patents
苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004057153A JP2004057153A JP2002223769A JP2002223769A JP2004057153A JP 2004057153 A JP2004057153 A JP 2004057153A JP 2002223769 A JP2002223769 A JP 2002223769A JP 2002223769 A JP2002223769 A JP 2002223769A JP 2004057153 A JP2004057153 A JP 2004057153A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tea
- kudin
- bitter
- cyclodextrin
- bitter taste
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Non-Alcoholic Beverages (AREA)
Abstract
【課題】漢方的効果が知られている苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶の提供。
【解決手段】本発明は、苦丁茶抽出液にγ−シクロデキストリンを添加してその苦味成分を包接することにより苦味を低減して、苦味の低減された苦丁茶とする。さらに、苦丁茶抽出液にγ−シクロデキストリンを添加した後、濃縮して苦味の少ない飲料用苦丁茶抽出物粉体またはその成形物とする。
【解決手段】本発明は、苦丁茶抽出液にγ−シクロデキストリンを添加してその苦味成分を包接することにより苦味を低減して、苦味の低減された苦丁茶とする。さらに、苦丁茶抽出液にγ−シクロデキストリンを添加した後、濃縮して苦味の少ない飲料用苦丁茶抽出物粉体またはその成形物とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の薬効が注目されている苦丁茶の苦味を低減させる方法、苦味を低減した苦丁茶抽出液、および苦味を低減した苦丁茶抽出物粉体およびその成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
苦丁茶(KUDIN TEA:クディン茶)は、2000年前から知られている中国の伝統的な薬用植物で、その薬効は古くから注目されている。苦丁茶は、モチノキ科(Ilex kudin gcha Tseng)の植物の葉から作られ、茶葉は黒く、非常に苦く、茶泡も海草のような臭いがする。モチノキ科といえば我が国ではヒメモチ、シイモチ、ツルツゲ、ナナメノキなどがあるが、モチノキ科の植物からお茶がつくられることはない。苦丁茶は、時代によってその名を変遷し、古代には「紫笋」、「過羅」、「瓜蘆」、などと呼ばれていたそうであり、その後、元、明、清の三王朝に献上茶として貢がれたもので、「苦登」、「富丁茶」などと呼ばれ、現在では「苦丁茶」として知られている。さらに、「茶肝」という別名おあり、主に、このまま飲まれる他、烏龍茶の味付け(「茶葉味精」)などに使われている。「一葉茶」とか「一片茶」と呼ばれるものもこの苦丁茶の一種だと云われている。
この苦丁茶を古くから愛飲する習慣のある中国広西壮族自治区巴馬村では、平均寿命が90歳以上で、小さい村に100歳以上の長寿者が38名もいる中国一の長寿村であることが、WHOと中国厚生省の連合調査によって明らかにされている。そこで、苦丁茶は「長寿茶」とも呼ばれている。
【0003】
この苦丁茶の薬効については、中国各地の漢方医の研究から徐々に明らかにされてきている。例えば、貴州省王少意思らの研究によると、苦丁茶を飲用する1,2,3ヶ月の間に血中脂肪が減り、血液粘度が降下する(中国中西医結合雑誌)、冠状動脈の流れを増強し、心血管の血液流量をスムースにする(広東省薬物研究所、広東省薬物学院「中薬材」94年第17巻3期)などが報告されている。また、医学博士 郭金龍氏の報告では、苦丁茶は人体の代謝機能を有効に調節し、高コレステロール(特に、悪玉のLDL)・高中性脂肪を降下させ、高血圧や高血糖を降下させ、高脂血症、高血圧、動脈硬化、狭心症、糖尿病、大腸炎、肥満などの生活習慣病に対して予防と治療の二重の効果があり、臨床データによると、高脂血症に対する有効率は94.8%、単純性肥満症に対しても92.5%の有効率まで達している。最近の研究により、抗過酸化作用、免疫機能を高めることによって、がんに対する予防と治療効果もあり、さらに疲労回復、老化抑止、精力回復効果も期待できる。また、清熱解毒、清咽利喉、利腸通便、利尿作用などの伝統的に知られている効果によって、皮膚病、慢性咽喉炎、気管支炎、口内炎、歯周病、便秘、痔などに対して著しい効果がある。また、外用では、美容効果が優れており、ニキビや湿疹、アトピー性皮膚炎などに対しても大変有効である。それゆえ、苦丁茶は、「美容茶」とも呼ばれている。
このように種々の薬効が認識されている苦丁茶には、その成分として明らかにされているものとして、人体に必要な各種のビタミン類、アミノ酸、亜鉛やゲルマニウムなどのミネラル類と共に、クディングリコーゲン、ルペオール、β−アミリン、β−シトステロール、ウルソーン、フラボノイド類などが含まれている。
【0004】
なかでも、免疫調節作用、抗腫瘍作用、発ガン抑制作用、抗骨粗鬆症、鎮痛作用など種々の生理活性機能が知られているゲルマニウムを含むことは注目に値する。自然界には、薬用植物として高名な霊芝や高麗人参、ニンニクなどがゲルマニウムの含有量が多いことが知られている。
苦丁茶を飲用することによる副作用やアレルギーは全く見られない。しかし、その苦味成分については未だ明らかではない。
苦丁茶はその有効性が認識されているにも拘わらず、その有する特有の苦味のため、通常人が飲用することは並大抵ではない。種々の薬効が知られているだけに、苦味を低減させた飲用方法、飲料が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上述のような現状に鑑み、種々の漢方的効果が知られている苦丁茶を苦味の少ない飲料として供することを課題として研究した結果、苦丁茶葉の水抽出液にγ−シクロデキストリンを添加共存させることによって、苦丁茶の有する有効成分を減少させることなく、苦味だけを低減させ得ることを見出し本発明に到った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加してなる苦味を低減する方法、こうして得られる苦丁茶に関する。さらに、苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加して後、濃縮粉末化した苦味の少ない苦丁茶抽出物粉体またはその成形物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、苦丁茶葉を水で抽出してその成分を溶出させる。抽出に用いる水は飲用に適するものであれば良く、その温度は特に制限するものではないが、通常温湯と言われる温度、すなわち40〜65℃程度の水に苦丁茶葉を浸漬するだけでもよく、またはもっと温度の低い水に浸漬し、加熱抽出してもよい。この抽出液に、γ−シクロデキストリンを粉末状もしくは水溶液として添加する。こうして得られる液はそのまま飲用に供することができ、その苦味を殆ど感じさせない程度にまで苦味は低減されている。水に入れる苦丁茶葉とγ−シクロデキストリンの順序は逆であってもよい。すなわち、γ−シクロデキストリンを溶解させた水ないし温湯に苦丁茶葉を浸漬抽出しても良い。いずれの方法によるときも、抽出後は茶葉を除去し、さらにオリなどを濾過などの公知の方法によって分離する。
【0008】
苦丁茶葉の抽出に用いる水の量は、苦丁茶葉1重量部(風乾重量)当たり、水50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部を用いる。また用いるγ−シクロデキストリンの量は、苦丁茶葉1重量部当たり、γ−シクロデキストリンを0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜3重量部、さらに好ましくは0.3〜2重量部である。γ−シクロデキストリンが苦丁茶に存在する苦味成分を優先的に包接してその苦味を低減させるものである。余り少ないと充分に苦味が低減されず、多すぎると苦味成分以外の成分をも多く包接もしくは吸着して苦丁茶の風味を失うおそれがあり好ましくない。あるいはγ−シクロデキストリンが無駄になる。
天然シクロデキストリンには、その構成グルコースユニットによってα−(グルコースユニット6)、β−(グルコースユニット7)、およびγ−(グルコースユニット8)があるが、後述する試験例に示すように苦味低減に効果を有するのはγ−のみである。α−、β−およびγ−シクロデキストリンでは、構造的におよび物理的性質が異なり、例えば円環部高さ、空洞部直径、空洞部容積などについてはγ−シクロデキストリンが最も大きい。苦味低減についてα−およびβ−は殆ど効果がなく、γ−のみにその効果が認められるのは、これらシクロデキストリンの構造と苦味成分の嵩に関係しているものと思われる。
【0009】
得られた抽出液は、用いた苦丁茶葉の量、水の量、抽出の程度により、また用いたγ−シクロデキストリンの量により抽出成分の濃度、残存する苦味の程度は異なってくるが、用途、好みに応じて濃縮または希釈して飲用にあるいは、他の飲食物に添加して供することができる。
場合によっては、この苦味の低減された苦丁茶抽出物を濃縮乾燥して粉末にして利用することもできる。粉末化手段としては、通常の方法、例えば、減圧蒸留、逆浸透圧膜濃縮、スプレー乾燥、凍結乾燥、これらの組合せによる方法など公知の方法を用いることができる。
粉末化した抽出物は水に溶かし飲用に供するほか、あるいは粉末のまま、または水溶液として多の飲食物に添加することもできる。さらに、抽出物粉末は顆粒または錠剤などに成形することができ、成形に際しては人体に有用な他の成分、例えばビタミン類、鉄、亜鉛など、その他欠乏しがちといわれる微量栄養成分を加えることができる。
γ−シクロデキストリンを添加共存させる本発明は、苦味を低減させるが、苦丁茶の成分を系外に除去分離するものではない。γ−シクロデキストリン自体は人体内で分解(消化)され、包接されていた成分は人体内で放出されるから、γ−シクロデキストリンを添加していない苦丁茶の期待される効果を低減あるいは阻害するものではない。
【0010】
【実施例1】
500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液にγ−シクロデキストリン300mgを加え攪拌して飲用茶とした。
【0011】
【試験例1】
実施例1と同様に、500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液を4個のビーカーに100mlづつ入れ、各ビーカーにα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン1.5gづつを別個に入れた。1個のビーカーの液はシクロデキストリンを加えず対照とした。
この4個のシクロデキストリン(CDと略記する)添加抽出液を4人のパネラーが、苦くないと思われる順序(γ−添加、β−添加、α−添加、無添加の順)で試飲して、苦味の程度を5段階評価してもらった。結果を表1に示した。
【0012】
【表1】
表1の結果から明らかなように、γ−CDのみが苦味低減効果を有する。
【0013】
【試験例2】
試験例1と同様に、500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液を5個のビーカーに100mlづつ入れ、各ビーカーに添加するγ−CDの量を1.5g〜0gに変えてそれぞれ添加した。1個のビーカーの液はシクロデキストリンを加えず対照とした。
この5個のCD添加抽出液を6人のパネラーに、苦くないと思われる順序(γ−CDム添加、添加0.25g、0.5g、1.0g、1.5g)で試飲して、苦味の程度を5段階評価してもらった。結果を表1に示した。
なお、判定基準は、試験例1と同じである。
【0014】
【表2】
表2の結果から明らかなように、茶葉1.5gからの抽出液にγ−CD0.25g(茶葉に対して16.7%)添加は、苦丁茶の苦味を明らかに低減させる。
【0015】
【実施例2】
55℃の温湯18リットルに、γ−CD60gを添加した。この温湯に900gの苦丁茶葉を籠に入れて20分浸して苦丁茶成分を抽出した。濾布を用いて濾過して粗い茶片その他のオリを除去した。これによりブリックス2の抽出液14リットル回収した。抽出液を減圧蒸留でブリックス16まで濃縮し、その後、スプレー乾燥によって乾燥すると、苦丁茶抽出粉末Aが85g得られた。この0.8gを120〜150mlの温湯に溶かすことによって苦味のない苦丁茶が得られた。
【0016】
【実施例3】
γ−CD220gを3リットルの水に溶解した。この液を80℃まで温め、苦丁茶200gを加え、攪拌しながら80℃で10分間抽出した。濾布を用いて濾過して粗い茶片その他のオリを除去したところ、ブリックス8.9の抽出液2.73リットルを得た。この抽出液を逆浸透膜濃縮により、ブリックス20まで濃縮した。得られた濃縮液は−40℃に予備凍結後、凍結真空乾燥して苦丁茶抽出粉末Bを160g得た。
【0017】
【比較例1】
実施例3で用いたγ−CDに代えてシクロデキストリンを含まないデキストリン220gを用いた以外は、実施例3と同様にして苦丁茶抽出粉末Cを160g得た。
【0018】
【試験例3】
実施例2、実施例3、比較例1で得られた苦丁茶抽出粉末A、B、Cそれぞれ0.8gを120〜150mlの温湯に溶かしたところ、AとBから得られたお茶には苦味がなかったが、Cから得られたお茶には苦丁茶特有のつよい苦味があった。
【0019】
【試験例4】
実施例2、実施例3、比較例1で得られた苦丁茶抽出粉末A、B、Cをそれぞれアルミ箔袋に封入しただけの通常包装(含気包装)したものと、窒素ガス置換包装したものとの6種類を、それぞれ4パックずつ、計24パック作り、35℃で4週間の保存試験を行った。1週間毎にそれらのパックを開封し、粉末体を熱湯に溶解して5人のパネラーが試飲した。
粉末体Cは通常包装、窒素ガス置換包装のいずれにおいても蒸れたような変異臭が徐々に生じ、味もいやな渋みが増すなどの風味に著しい変化があった。しかし、粉末体A、Bは通常包装、窒素ガス置換包装のいずれも4週間保存後においても変異臭は殆どないし全くなく、風味で変質はなかった。渋みに関しては全員一致でA、Bから得られたお茶は4週間後も苦くなく、Cから得られたお茶は苦く渋いという結果となった。
保存における変異臭の発生の程度を5名のパネラーによる評価を表3および表4に示す。なお評価は、変異臭を感じなかったものを1、強く感じたものを5とし5段階で評価した。結果を表3、表4に示す。
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【発明の効果】
本発明によって得られるγ−CD含有苦丁茶は苦丁茶の有する成分を保有したまま苦丁茶特有の強い苦味がなく、飲用し易く、苦丁茶の有する種々の生理活性機能が期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の薬効が注目されている苦丁茶の苦味を低減させる方法、苦味を低減した苦丁茶抽出液、および苦味を低減した苦丁茶抽出物粉体およびその成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
苦丁茶(KUDIN TEA:クディン茶)は、2000年前から知られている中国の伝統的な薬用植物で、その薬効は古くから注目されている。苦丁茶は、モチノキ科(Ilex kudin gcha Tseng)の植物の葉から作られ、茶葉は黒く、非常に苦く、茶泡も海草のような臭いがする。モチノキ科といえば我が国ではヒメモチ、シイモチ、ツルツゲ、ナナメノキなどがあるが、モチノキ科の植物からお茶がつくられることはない。苦丁茶は、時代によってその名を変遷し、古代には「紫笋」、「過羅」、「瓜蘆」、などと呼ばれていたそうであり、その後、元、明、清の三王朝に献上茶として貢がれたもので、「苦登」、「富丁茶」などと呼ばれ、現在では「苦丁茶」として知られている。さらに、「茶肝」という別名おあり、主に、このまま飲まれる他、烏龍茶の味付け(「茶葉味精」)などに使われている。「一葉茶」とか「一片茶」と呼ばれるものもこの苦丁茶の一種だと云われている。
この苦丁茶を古くから愛飲する習慣のある中国広西壮族自治区巴馬村では、平均寿命が90歳以上で、小さい村に100歳以上の長寿者が38名もいる中国一の長寿村であることが、WHOと中国厚生省の連合調査によって明らかにされている。そこで、苦丁茶は「長寿茶」とも呼ばれている。
【0003】
この苦丁茶の薬効については、中国各地の漢方医の研究から徐々に明らかにされてきている。例えば、貴州省王少意思らの研究によると、苦丁茶を飲用する1,2,3ヶ月の間に血中脂肪が減り、血液粘度が降下する(中国中西医結合雑誌)、冠状動脈の流れを増強し、心血管の血液流量をスムースにする(広東省薬物研究所、広東省薬物学院「中薬材」94年第17巻3期)などが報告されている。また、医学博士 郭金龍氏の報告では、苦丁茶は人体の代謝機能を有効に調節し、高コレステロール(特に、悪玉のLDL)・高中性脂肪を降下させ、高血圧や高血糖を降下させ、高脂血症、高血圧、動脈硬化、狭心症、糖尿病、大腸炎、肥満などの生活習慣病に対して予防と治療の二重の効果があり、臨床データによると、高脂血症に対する有効率は94.8%、単純性肥満症に対しても92.5%の有効率まで達している。最近の研究により、抗過酸化作用、免疫機能を高めることによって、がんに対する予防と治療効果もあり、さらに疲労回復、老化抑止、精力回復効果も期待できる。また、清熱解毒、清咽利喉、利腸通便、利尿作用などの伝統的に知られている効果によって、皮膚病、慢性咽喉炎、気管支炎、口内炎、歯周病、便秘、痔などに対して著しい効果がある。また、外用では、美容効果が優れており、ニキビや湿疹、アトピー性皮膚炎などに対しても大変有効である。それゆえ、苦丁茶は、「美容茶」とも呼ばれている。
このように種々の薬効が認識されている苦丁茶には、その成分として明らかにされているものとして、人体に必要な各種のビタミン類、アミノ酸、亜鉛やゲルマニウムなどのミネラル類と共に、クディングリコーゲン、ルペオール、β−アミリン、β−シトステロール、ウルソーン、フラボノイド類などが含まれている。
【0004】
なかでも、免疫調節作用、抗腫瘍作用、発ガン抑制作用、抗骨粗鬆症、鎮痛作用など種々の生理活性機能が知られているゲルマニウムを含むことは注目に値する。自然界には、薬用植物として高名な霊芝や高麗人参、ニンニクなどがゲルマニウムの含有量が多いことが知られている。
苦丁茶を飲用することによる副作用やアレルギーは全く見られない。しかし、その苦味成分については未だ明らかではない。
苦丁茶はその有効性が認識されているにも拘わらず、その有する特有の苦味のため、通常人が飲用することは並大抵ではない。種々の薬効が知られているだけに、苦味を低減させた飲用方法、飲料が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上述のような現状に鑑み、種々の漢方的効果が知られている苦丁茶を苦味の少ない飲料として供することを課題として研究した結果、苦丁茶葉の水抽出液にγ−シクロデキストリンを添加共存させることによって、苦丁茶の有する有効成分を減少させることなく、苦味だけを低減させ得ることを見出し本発明に到った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加してなる苦味を低減する方法、こうして得られる苦丁茶に関する。さらに、苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加して後、濃縮粉末化した苦味の少ない苦丁茶抽出物粉体またはその成形物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明においては、苦丁茶葉を水で抽出してその成分を溶出させる。抽出に用いる水は飲用に適するものであれば良く、その温度は特に制限するものではないが、通常温湯と言われる温度、すなわち40〜65℃程度の水に苦丁茶葉を浸漬するだけでもよく、またはもっと温度の低い水に浸漬し、加熱抽出してもよい。この抽出液に、γ−シクロデキストリンを粉末状もしくは水溶液として添加する。こうして得られる液はそのまま飲用に供することができ、その苦味を殆ど感じさせない程度にまで苦味は低減されている。水に入れる苦丁茶葉とγ−シクロデキストリンの順序は逆であってもよい。すなわち、γ−シクロデキストリンを溶解させた水ないし温湯に苦丁茶葉を浸漬抽出しても良い。いずれの方法によるときも、抽出後は茶葉を除去し、さらにオリなどを濾過などの公知の方法によって分離する。
【0008】
苦丁茶葉の抽出に用いる水の量は、苦丁茶葉1重量部(風乾重量)当たり、水50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部を用いる。また用いるγ−シクロデキストリンの量は、苦丁茶葉1重量部当たり、γ−シクロデキストリンを0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜3重量部、さらに好ましくは0.3〜2重量部である。γ−シクロデキストリンが苦丁茶に存在する苦味成分を優先的に包接してその苦味を低減させるものである。余り少ないと充分に苦味が低減されず、多すぎると苦味成分以外の成分をも多く包接もしくは吸着して苦丁茶の風味を失うおそれがあり好ましくない。あるいはγ−シクロデキストリンが無駄になる。
天然シクロデキストリンには、その構成グルコースユニットによってα−(グルコースユニット6)、β−(グルコースユニット7)、およびγ−(グルコースユニット8)があるが、後述する試験例に示すように苦味低減に効果を有するのはγ−のみである。α−、β−およびγ−シクロデキストリンでは、構造的におよび物理的性質が異なり、例えば円環部高さ、空洞部直径、空洞部容積などについてはγ−シクロデキストリンが最も大きい。苦味低減についてα−およびβ−は殆ど効果がなく、γ−のみにその効果が認められるのは、これらシクロデキストリンの構造と苦味成分の嵩に関係しているものと思われる。
【0009】
得られた抽出液は、用いた苦丁茶葉の量、水の量、抽出の程度により、また用いたγ−シクロデキストリンの量により抽出成分の濃度、残存する苦味の程度は異なってくるが、用途、好みに応じて濃縮または希釈して飲用にあるいは、他の飲食物に添加して供することができる。
場合によっては、この苦味の低減された苦丁茶抽出物を濃縮乾燥して粉末にして利用することもできる。粉末化手段としては、通常の方法、例えば、減圧蒸留、逆浸透圧膜濃縮、スプレー乾燥、凍結乾燥、これらの組合せによる方法など公知の方法を用いることができる。
粉末化した抽出物は水に溶かし飲用に供するほか、あるいは粉末のまま、または水溶液として多の飲食物に添加することもできる。さらに、抽出物粉末は顆粒または錠剤などに成形することができ、成形に際しては人体に有用な他の成分、例えばビタミン類、鉄、亜鉛など、その他欠乏しがちといわれる微量栄養成分を加えることができる。
γ−シクロデキストリンを添加共存させる本発明は、苦味を低減させるが、苦丁茶の成分を系外に除去分離するものではない。γ−シクロデキストリン自体は人体内で分解(消化)され、包接されていた成分は人体内で放出されるから、γ−シクロデキストリンを添加していない苦丁茶の期待される効果を低減あるいは阻害するものではない。
【0010】
【実施例1】
500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液にγ−シクロデキストリン300mgを加え攪拌して飲用茶とした。
【0011】
【試験例1】
実施例1と同様に、500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液を4個のビーカーに100mlづつ入れ、各ビーカーにα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン1.5gづつを別個に入れた。1個のビーカーの液はシクロデキストリンを加えず対照とした。
この4個のシクロデキストリン(CDと略記する)添加抽出液を4人のパネラーが、苦くないと思われる順序(γ−添加、β−添加、α−添加、無添加の順)で試飲して、苦味の程度を5段階評価してもらった。結果を表1に示した。
【0012】
【表1】
表1の結果から明らかなように、γ−CDのみが苦味低減効果を有する。
【0013】
【試験例2】
試験例1と同様に、500mlビーカーにティーパックに包んだ苦丁茶7.5gと温湯(80℃)500gを入れ、ウォーターバスで10分間加熱抽出した。冷水で冷却した後、茶葉を取り出し、ろ紙濾過してオリを除去した。この抽出液を5個のビーカーに100mlづつ入れ、各ビーカーに添加するγ−CDの量を1.5g〜0gに変えてそれぞれ添加した。1個のビーカーの液はシクロデキストリンを加えず対照とした。
この5個のCD添加抽出液を6人のパネラーに、苦くないと思われる順序(γ−CDム添加、添加0.25g、0.5g、1.0g、1.5g)で試飲して、苦味の程度を5段階評価してもらった。結果を表1に示した。
なお、判定基準は、試験例1と同じである。
【0014】
【表2】
表2の結果から明らかなように、茶葉1.5gからの抽出液にγ−CD0.25g(茶葉に対して16.7%)添加は、苦丁茶の苦味を明らかに低減させる。
【0015】
【実施例2】
55℃の温湯18リットルに、γ−CD60gを添加した。この温湯に900gの苦丁茶葉を籠に入れて20分浸して苦丁茶成分を抽出した。濾布を用いて濾過して粗い茶片その他のオリを除去した。これによりブリックス2の抽出液14リットル回収した。抽出液を減圧蒸留でブリックス16まで濃縮し、その後、スプレー乾燥によって乾燥すると、苦丁茶抽出粉末Aが85g得られた。この0.8gを120〜150mlの温湯に溶かすことによって苦味のない苦丁茶が得られた。
【0016】
【実施例3】
γ−CD220gを3リットルの水に溶解した。この液を80℃まで温め、苦丁茶200gを加え、攪拌しながら80℃で10分間抽出した。濾布を用いて濾過して粗い茶片その他のオリを除去したところ、ブリックス8.9の抽出液2.73リットルを得た。この抽出液を逆浸透膜濃縮により、ブリックス20まで濃縮した。得られた濃縮液は−40℃に予備凍結後、凍結真空乾燥して苦丁茶抽出粉末Bを160g得た。
【0017】
【比較例1】
実施例3で用いたγ−CDに代えてシクロデキストリンを含まないデキストリン220gを用いた以外は、実施例3と同様にして苦丁茶抽出粉末Cを160g得た。
【0018】
【試験例3】
実施例2、実施例3、比較例1で得られた苦丁茶抽出粉末A、B、Cそれぞれ0.8gを120〜150mlの温湯に溶かしたところ、AとBから得られたお茶には苦味がなかったが、Cから得られたお茶には苦丁茶特有のつよい苦味があった。
【0019】
【試験例4】
実施例2、実施例3、比較例1で得られた苦丁茶抽出粉末A、B、Cをそれぞれアルミ箔袋に封入しただけの通常包装(含気包装)したものと、窒素ガス置換包装したものとの6種類を、それぞれ4パックずつ、計24パック作り、35℃で4週間の保存試験を行った。1週間毎にそれらのパックを開封し、粉末体を熱湯に溶解して5人のパネラーが試飲した。
粉末体Cは通常包装、窒素ガス置換包装のいずれにおいても蒸れたような変異臭が徐々に生じ、味もいやな渋みが増すなどの風味に著しい変化があった。しかし、粉末体A、Bは通常包装、窒素ガス置換包装のいずれも4週間保存後においても変異臭は殆どないし全くなく、風味で変質はなかった。渋みに関しては全員一致でA、Bから得られたお茶は4週間後も苦くなく、Cから得られたお茶は苦く渋いという結果となった。
保存における変異臭の発生の程度を5名のパネラーによる評価を表3および表4に示す。なお評価は、変異臭を感じなかったものを1、強く感じたものを5とし5段階で評価した。結果を表3、表4に示す。
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】
【発明の効果】
本発明によって得られるγ−CD含有苦丁茶は苦丁茶の有する成分を保有したまま苦丁茶特有の強い苦味がなく、飲用し易く、苦丁茶の有する種々の生理活性機能が期待できる。
Claims (4)
- 苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加して苦味成分を包接する苦丁茶の苦味を低減する方法。
- 苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを添加してなる苦味の低減された苦丁茶。
- 苦丁茶葉1重量部あたり、γ−シクロデキストリンを0.1〜10重量部添加してなる請求項1に記載の苦丁茶。
- 苦丁茶葉抽出液にγ−シクロデキストリンを、苦丁茶葉1重量部あたり0.1〜10重量部添加した液を濃縮粉末化してなる苦味の低減された苦丁茶抽出物粉体またはその成形物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002223769A JP2004057153A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002223769A JP2004057153A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004057153A true JP2004057153A (ja) | 2004-02-26 |
Family
ID=31943445
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002223769A Withdrawn JP2004057153A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004057153A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007135767A1 (ja) * | 2006-05-18 | 2007-11-29 | Kabushiki Kaisha Yakult Honsha | グァバ葉エキス粉末及びその製造方法 |
JP2008069138A (ja) * | 2006-09-15 | 2008-03-27 | Chun-Erh Wang | 口腔用組成物 |
WO2010076112A2 (en) | 2008-12-29 | 2010-07-08 | Unilever Plc | Food products enriched with methylxanthines |
WO2010134568A1 (ja) | 2009-05-20 | 2010-11-25 | キリンホールディングス株式会社 | 苦味抑制剤 |
JP2011057707A (ja) * | 2010-12-21 | 2011-03-24 | Nagasakiken Koritsu Daigaku Hojin | 血糖値上昇抑制組成物、血糖値上昇抑制食品、および二糖類水解酵素活性阻害組成物 |
CN115769891A (zh) * | 2022-11-28 | 2023-03-10 | 江中药业股份有限公司 | 一种药食同源食品制剂及其制备方法 |
US11806352B2 (en) | 2010-05-19 | 2023-11-07 | Upfield Europe B.V. | Theobromine for increasing HDL-cholesterol |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223769A patent/JP2004057153A/ja not_active Withdrawn
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007135767A1 (ja) * | 2006-05-18 | 2007-11-29 | Kabushiki Kaisha Yakult Honsha | グァバ葉エキス粉末及びその製造方法 |
US8021699B2 (en) | 2006-05-18 | 2011-09-20 | Kabushiki Kaisha Yakult Honsha | Guava leaf extract powder and method for production thereof |
JP2008069138A (ja) * | 2006-09-15 | 2008-03-27 | Chun-Erh Wang | 口腔用組成物 |
WO2010076112A2 (en) | 2008-12-29 | 2010-07-08 | Unilever Plc | Food products enriched with methylxanthines |
WO2010134568A1 (ja) | 2009-05-20 | 2010-11-25 | キリンホールディングス株式会社 | 苦味抑制剤 |
US11806352B2 (en) | 2010-05-19 | 2023-11-07 | Upfield Europe B.V. | Theobromine for increasing HDL-cholesterol |
JP2011057707A (ja) * | 2010-12-21 | 2011-03-24 | Nagasakiken Koritsu Daigaku Hojin | 血糖値上昇抑制組成物、血糖値上昇抑制食品、および二糖類水解酵素活性阻害組成物 |
CN115769891A (zh) * | 2022-11-28 | 2023-03-10 | 江中药业股份有限公司 | 一种药食同源食品制剂及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2010094081A (ja) | 飲食品組成物 | |
CN101669643B (zh) | 菊花甜茶泡腾片及其制备方法 | |
JP2014082960A (ja) | ポリフェノール含有飲料の苦渋味マスキング剤及び該飲料の苦渋味のマスキング方法 | |
WO2017041742A1 (zh) | 一种含有金银花的固体饮料及其制备方法 | |
JP4000283B2 (ja) | 甘草油性抽出物の可溶化組成物、並びに飲料、液状調味料、化粧品及び医薬部外品 | |
JP2004057153A (ja) | 苦丁茶の苦味を低減する方法および苦味の低減された苦丁茶 | |
JP5309301B2 (ja) | エリオシトリン含有素材の製造方法 | |
CN112690450A (zh) | 解酒护肝的组合物及其制备方法和包含其的产品 | |
CN101006862A (zh) | 竹汁麦冬绞股蓝保健制剂及其生产方法 | |
CN104544450A (zh) | 一种金银花速溶固体饮品的制备方法 | |
JP6951864B2 (ja) | カフェイン含有飲料 | |
JP2003289837A (ja) | 飲料及びその製造方法 | |
CN115844009A (zh) | 含有2911植物元的组合物和含有2911植物元的金银花提取物的制备方法 | |
CN1663474A (zh) | 一种低卡路里的解渴饮料 | |
JP6974818B2 (ja) | 組成物 | |
CN108125082A (zh) | 一种止咳润肺饮料 | |
KR100867605B1 (ko) | 라한과 추출물을 함유하는 녹차 조성물 | |
KR100628465B1 (ko) | 오가피 함유 기능성 차의 제조방법 | |
CN104206580B (zh) | 一种莞香花叶茶饮料及其制作工艺 | |
KR102046654B1 (ko) | 신규한 락토바실러스 브레비스 omj-46 및 이로부터 제조되는 오미자 발효액을 포함하는 중금속 해독 조성물 | |
JP6152251B2 (ja) | 春ウコン成分含有飲料及び春ウコン成分による風味の調整を行う方法 | |
CN102511715A (zh) | 罗汉果泡腾片及其制备工艺 | |
KR20050100890A (ko) | 오가피 및 녹차 추출물을 함유하는 숙취해소용 조성물 | |
JP3159543B2 (ja) | 高麗人参エキスの精製法および高麗人参含有飲料 | |
KR20210041387A (ko) | 갈화 추출물 및 차전자피 분말을 함유한 숙취해소용 천연차 및 그 제조방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20040618 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20040618 |
|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20051004 |