JP2004057149A - ジネンジョの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】厄介な順化工程は不要で、それでいて定植成功率は約90%と非常に高く、これによりジネンジョの大量生産が可能となる極めて画期的なジネンジョの製造方法を提供するものである。
【解決手段】ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、この分離したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造するものである。
【選択図】 図1
【解決手段】ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、この分離したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造するものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジネンジョの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ジネンジョ(ヤマノイモ科、Dioscorea japonica Thunb.)は、中山間地域において、ムカゴや切り芋によって増殖することが知られている。
【0003】
ところで、ジネンジョの人工栽培は困難である。これは、ジネンジョがヤマノイモモザイクウイルス(JYMV:葉にモザイク症状を起こして生育を抑制させてしまうウイルス)に感染し易く、単にムカゴや切り芋を培土で栽培するだけでは、前記ヤマノイモモザイクウイルスの感染によって収量が非常に低下してしまう為である。
【0004】
この現状に鑑み、本発明者らは、新潟県農業総合研究所研究報告、第2号、69〜70、2000年において、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないウイルスフリーのジネンジョの苗を大量に増殖する方法(以下、ウイルスフリーの苗の製造方法という。)を提案している。
【0005】
しかし、このウイルスフリーの苗の製造方法で得られた苗をそのまま土壌で栽培しようとしても、その成功率は非常に低い。これは、ウイルスフリーの苗を製造する環境が、無菌状態で且つ温度管理された非常に手厚い保護環境であるのに対し、一般的な土壌は苗の生育に厳しい環境であるからである。即ち、この急激な環境の変化に苗が耐えられないことが、前記成功率の低下の原因である。
【0006】
よって、従来は、苗を土壌に順化させる工程を行っているが、この順化は、例えば25℃の温室を用意し、減菌した専用培土をビニールポットに入れ、この専用培土に苗を植え込み、更に、適度に遮光したり灌水したりしなければならない等、非常に厄介である。
【0007】
更に、順化工程を行っても、普通の土壌に定植した後に枯死してしまうものが多く、ジネンジョの定植の成功率は約10%に止まっている。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するもので、厄介な順化工程は不要で、それでいて定植成功率は約90%と非常に高く、これによりジネンジョの大量生産が可能となる極めて画期的なジネンジョの製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、この分離したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1付きの培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、低温処理し、この低温処理したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1を分離した後、該マイクロチューバ1を冷蔵保存し、その後、該冷蔵保存したマイクロチューバ1を培養して新たにマイクロチューバ1を形成し、この新たに形成したマイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0013】
また、ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、このマイクロチューバ1付きの培養体2を土壌で栽培して該マイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項4記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1付きの培養体2を低温処理し、この低温処理したマイクロチューバ1付きの培養体2を土壌で栽培して該マイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1を形成する為のジネンジョの組織として、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないジネンジョの組織を採用したことを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0016】
【発明の作用及び効果】
本発明は繰り返し実験した結果得られた作用効果を請求項としてまとめたもので、ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、土壌で栽培すると、厄介な順化工程を行わなくても、マイクロチューバ1の約90%がジネンジョとして成長することが確認された。
【0017】
マイクロチューバ1を培養体2から分離しない場合も同様であった。
【0018】
本発明は上述のようにするから、ジネンジョの大量生産が可能となる極めて画期的なジネンジョの製造方法となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図面は本発明の一実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0020】
先ず、前述のウイルスフリーの苗の製造方法により、ウイルスフリーのジネンジョの苗を製造する。
【0021】
このウイルスフリーのジネンジョの苗を、分割(ツルを節毎に切断する等)、発根、伸長することにより大量増殖する。
【0022】
この大量増殖したウイルスフリーのジネンジョの苗を組織培養し、マイクロチューバ1付きの培養体2を形成する。
【0023】
このマイクロチューバ1は、組織培養により培養体2の一部に形成される塊茎のことである(図2参照)。また、マイクロチューバ1は、イモやムカゴの様なもので、ジネンジョの場合、茎が肥大した組織であるといわれている。
【0024】
また、組織培養は、温度,光,栄養,ホルモン等の条件を人為的にコントロールして行う。この組織培養は、例えば、前記ウイルスフリーのジネンジョの苗をショ糖60g/lを含むMS培地に移植し、25℃で培養を続けることにより行う。
【0025】
続いて、形成されたマイクロチューバ1を培養体2から分離し、土壌に植えて栽培する。
【0026】
また、土壌に植える前、マイクロチューバ1を低温処理することにより休眠打破を行い、その後に土壌に植えて栽培した方が良い。
【0027】
形成されたマイクロチューバ1は、休眠状態(成長が一時的に停止した状態)にあり、このまま分離して土壌に植えても直ぐには成長しない。前述のように、低温処理(例えば、2カ月以上5℃に保持)すると、前記休眠状態が打破され、土壌に植えた後に短期間で成長を開始する。
【0028】
このマイクロチューバ1を土壌に植えて得たジネンジョの苗を取り出し、別途畑等に植えてジネンジョを製造する。
【0029】
以上の工程によれば、マイクロチューバ1の約90%が土壌でジネンジョとして成長することが確認された。
【0030】
また、一旦、マイクロチューバ1を形成したら、このマイクロチューバ1を組織培養することにより、再度マイクロチューバ1を形成する(この再度のマイクロチューバ1の形成により、多量のマイクロチューバ1を形成することができる。)というサイクルを繰り返すことにより、ウイルスフリーのジネンジョの苗を製造する工程を省いてマイクロチューバ1を大量生産する。
【0031】
また、前記分離したマイクロチューバ1は、低温(例えば5℃)で保存することができ、更に、この低温状態を解除することでいつでも成長を再開することができる。従って、前記分離したマイクロチューバ1は低温で保存しておき、前記マイクロチューバ1の組織培養を実施する必要が生じた場合に、前記低温状態を解除する方法を採用する。
【0032】
この低温で保存していたマイクロチューバ1も、約90%が土壌でジネンジョとして成長することが確認された。
【0033】
本実施例は上述のようにするから、順化工程を行わず、ウイルスに感染していない成長し易いジネンジョの苗を形成してジネンジョの大量生産を達成できる実用性に秀れたジネンジョの製造方法となる。
【0034】
また、低温処理によってマイクロチューバ1の休眠打破を行っているから、土壌に植えたマイクロチューバ1が短期間でジネンジョとして成長することになり、生産性は良好となる。
【0035】
また、マイクロチューバ1からマイクロチューバ1を形成することにより、やや複雑なウイルスフリー化工程を可及的に省略することができ、これにより多量のウイルスフリーのマイクロチューバ1を大量に形成して該マイクロチューバ1から大量のジネンジョを製造することができる。
【0036】
また、マイクロチューバ1を低温で保存することにより、いつでもジネンジョの生産を開始することができ、この点においても生産性は良好となる。
【0037】
尚、マイクロチューバ1付きの培養体2をそのまま土壌で栽培しても同様である。
【0038】
以下、本実施例の作用効果を確認した実験例について説明する。
【0039】
実験例1:ジネンジョのマイクロチューバ生産とマイクロチューバからの苗の再生
1.茎頂培養による苗の生産
ムカゴをバーミキュライトに植えつけ、温室内(25℃)で3〜4週間栽培した。ムカゴから伸長したツルを節毎に切断し、70%エタノールに数秒間浸漬した後、1%次亜塩素酸ナトリウムに5分間浸漬することによって表面殺菌し、滅菌水で3回洗浄した。実体顕微鏡を用いてツルの先端及び腋芽の茎頂を0.2〜0.5mmの大きさで摘出し、培地に置床した。30g/l ショ糖、0.1mg/l NAA、0.1mg/l BA、2g/l ゲランガムを含み、多量要素を1/2にしたMS培地へ置床し、25℃、16時間照明で3〜4ヶ月間培養した。
【0040】
2.RT−PCR法によるウイルス検定
培養により生長した苗から、1cm角の葉切片3〜5枚を切り出し、SDSフェノール法によりRNAを抽出した。RT反応及びPCR反応は、One Step RNA PCR Kit (AMV)(Takara)を用い、5’−ATGGT(TG)TGGTG(TC)AT(TA)GA(AG)AA(TC)GG−3’およびを5’−GC(TC)TTCAT(TC)TG(AG)(TA)(TG)GTG(TG)GC(TC)TC−3’をプライマーとして、Takara Thermal Cycler MPにより、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒の条件で30サイクル行った。PCR産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、ethidium bromide染色することにより、ウイルス感染の有無を検定した。
【0041】
3.節培養による苗の増殖
ウイルス感染していないことが確認された苗は、ツルを節毎に切断して30g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地へ置床し、25℃、16時間照明で培養した。苗の増殖は、約30日毎に、ツルを節毎に切断し継代することによって行った。
【0042】
4.マイクロチューバの生産
増殖した苗を、マイクロチューバ形成培地(60g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地)へ移植し、25℃、16時間照明で約2〜6ヶ月間培養した結果マイクロチューバ1付きの培養体2を形成した(図2参照)。
【0043】
5.低温処理によるマイクロチューバの休眠打破
培養体2からマイクロチューバ1を分離し、このマイクロチューバ1を、2ヶ月以上、5℃で低温処理することにより休眠打破した。5月頃、休眠打破したマイクロチューバ1を、培養瓶から取り出し、水で洗浄後、ビニルポットに定植し栽培することにより、苗が再生した。
【0044】
また、苗の再生成功率は約90%であった。
【0045】
実験例2:マイクロチューバによる原種保存
1.マイクロチューバの保存
実験例1−4で生産したマイクロチューバ1を、無菌状態のまま5℃、暗黒で2年間保存した。
【0046】
2.保存したマイクロチューバからの苗生産
マイクロチューバ1を取り出し、30g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地へ移植し、25℃、16時間照明で培養することにより、約1ヶ月で苗が再生した。
【0047】
また、苗の再生成功率は約90%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の説明図である。
【図2】実験例のマイクロチューバ1付き培養体2の説明図である。
【符号の説明】
1 マイクロチューバ
2 培養体
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジネンジョの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ジネンジョ(ヤマノイモ科、Dioscorea japonica Thunb.)は、中山間地域において、ムカゴや切り芋によって増殖することが知られている。
【0003】
ところで、ジネンジョの人工栽培は困難である。これは、ジネンジョがヤマノイモモザイクウイルス(JYMV:葉にモザイク症状を起こして生育を抑制させてしまうウイルス)に感染し易く、単にムカゴや切り芋を培土で栽培するだけでは、前記ヤマノイモモザイクウイルスの感染によって収量が非常に低下してしまう為である。
【0004】
この現状に鑑み、本発明者らは、新潟県農業総合研究所研究報告、第2号、69〜70、2000年において、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないウイルスフリーのジネンジョの苗を大量に増殖する方法(以下、ウイルスフリーの苗の製造方法という。)を提案している。
【0005】
しかし、このウイルスフリーの苗の製造方法で得られた苗をそのまま土壌で栽培しようとしても、その成功率は非常に低い。これは、ウイルスフリーの苗を製造する環境が、無菌状態で且つ温度管理された非常に手厚い保護環境であるのに対し、一般的な土壌は苗の生育に厳しい環境であるからである。即ち、この急激な環境の変化に苗が耐えられないことが、前記成功率の低下の原因である。
【0006】
よって、従来は、苗を土壌に順化させる工程を行っているが、この順化は、例えば25℃の温室を用意し、減菌した専用培土をビニールポットに入れ、この専用培土に苗を植え込み、更に、適度に遮光したり灌水したりしなければならない等、非常に厄介である。
【0007】
更に、順化工程を行っても、普通の土壌に定植した後に枯死してしまうものが多く、ジネンジョの定植の成功率は約10%に止まっている。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するもので、厄介な順化工程は不要で、それでいて定植成功率は約90%と非常に高く、これによりジネンジョの大量生産が可能となる極めて画期的なジネンジョの製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、この分離したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1付きの培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、低温処理し、この低温処理したマイクロチューバ1を土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1を分離した後、該マイクロチューバ1を冷蔵保存し、その後、該冷蔵保存したマイクロチューバ1を培養して新たにマイクロチューバ1を形成し、この新たに形成したマイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0013】
また、ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、このマイクロチューバ1付きの培養体2を土壌で栽培して該マイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項4記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1付きの培養体2を低温処理し、この低温処理したマイクロチューバ1付きの培養体2を土壌で栽培して該マイクロチューバ1からジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ1を形成する為のジネンジョの組織として、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないジネンジョの組織を採用したことを特徴とするジネンジョの製造方法に係るものである。
【0016】
【発明の作用及び効果】
本発明は繰り返し実験した結果得られた作用効果を請求項としてまとめたもので、ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ1付きの培養体2を形成し、この培養体2からマイクロチューバ1を分離した後、土壌で栽培すると、厄介な順化工程を行わなくても、マイクロチューバ1の約90%がジネンジョとして成長することが確認された。
【0017】
マイクロチューバ1を培養体2から分離しない場合も同様であった。
【0018】
本発明は上述のようにするから、ジネンジョの大量生産が可能となる極めて画期的なジネンジョの製造方法となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図面は本発明の一実施例を図示したものであり、以下に説明する。
【0020】
先ず、前述のウイルスフリーの苗の製造方法により、ウイルスフリーのジネンジョの苗を製造する。
【0021】
このウイルスフリーのジネンジョの苗を、分割(ツルを節毎に切断する等)、発根、伸長することにより大量増殖する。
【0022】
この大量増殖したウイルスフリーのジネンジョの苗を組織培養し、マイクロチューバ1付きの培養体2を形成する。
【0023】
このマイクロチューバ1は、組織培養により培養体2の一部に形成される塊茎のことである(図2参照)。また、マイクロチューバ1は、イモやムカゴの様なもので、ジネンジョの場合、茎が肥大した組織であるといわれている。
【0024】
また、組織培養は、温度,光,栄養,ホルモン等の条件を人為的にコントロールして行う。この組織培養は、例えば、前記ウイルスフリーのジネンジョの苗をショ糖60g/lを含むMS培地に移植し、25℃で培養を続けることにより行う。
【0025】
続いて、形成されたマイクロチューバ1を培養体2から分離し、土壌に植えて栽培する。
【0026】
また、土壌に植える前、マイクロチューバ1を低温処理することにより休眠打破を行い、その後に土壌に植えて栽培した方が良い。
【0027】
形成されたマイクロチューバ1は、休眠状態(成長が一時的に停止した状態)にあり、このまま分離して土壌に植えても直ぐには成長しない。前述のように、低温処理(例えば、2カ月以上5℃に保持)すると、前記休眠状態が打破され、土壌に植えた後に短期間で成長を開始する。
【0028】
このマイクロチューバ1を土壌に植えて得たジネンジョの苗を取り出し、別途畑等に植えてジネンジョを製造する。
【0029】
以上の工程によれば、マイクロチューバ1の約90%が土壌でジネンジョとして成長することが確認された。
【0030】
また、一旦、マイクロチューバ1を形成したら、このマイクロチューバ1を組織培養することにより、再度マイクロチューバ1を形成する(この再度のマイクロチューバ1の形成により、多量のマイクロチューバ1を形成することができる。)というサイクルを繰り返すことにより、ウイルスフリーのジネンジョの苗を製造する工程を省いてマイクロチューバ1を大量生産する。
【0031】
また、前記分離したマイクロチューバ1は、低温(例えば5℃)で保存することができ、更に、この低温状態を解除することでいつでも成長を再開することができる。従って、前記分離したマイクロチューバ1は低温で保存しておき、前記マイクロチューバ1の組織培養を実施する必要が生じた場合に、前記低温状態を解除する方法を採用する。
【0032】
この低温で保存していたマイクロチューバ1も、約90%が土壌でジネンジョとして成長することが確認された。
【0033】
本実施例は上述のようにするから、順化工程を行わず、ウイルスに感染していない成長し易いジネンジョの苗を形成してジネンジョの大量生産を達成できる実用性に秀れたジネンジョの製造方法となる。
【0034】
また、低温処理によってマイクロチューバ1の休眠打破を行っているから、土壌に植えたマイクロチューバ1が短期間でジネンジョとして成長することになり、生産性は良好となる。
【0035】
また、マイクロチューバ1からマイクロチューバ1を形成することにより、やや複雑なウイルスフリー化工程を可及的に省略することができ、これにより多量のウイルスフリーのマイクロチューバ1を大量に形成して該マイクロチューバ1から大量のジネンジョを製造することができる。
【0036】
また、マイクロチューバ1を低温で保存することにより、いつでもジネンジョの生産を開始することができ、この点においても生産性は良好となる。
【0037】
尚、マイクロチューバ1付きの培養体2をそのまま土壌で栽培しても同様である。
【0038】
以下、本実施例の作用効果を確認した実験例について説明する。
【0039】
実験例1:ジネンジョのマイクロチューバ生産とマイクロチューバからの苗の再生
1.茎頂培養による苗の生産
ムカゴをバーミキュライトに植えつけ、温室内(25℃)で3〜4週間栽培した。ムカゴから伸長したツルを節毎に切断し、70%エタノールに数秒間浸漬した後、1%次亜塩素酸ナトリウムに5分間浸漬することによって表面殺菌し、滅菌水で3回洗浄した。実体顕微鏡を用いてツルの先端及び腋芽の茎頂を0.2〜0.5mmの大きさで摘出し、培地に置床した。30g/l ショ糖、0.1mg/l NAA、0.1mg/l BA、2g/l ゲランガムを含み、多量要素を1/2にしたMS培地へ置床し、25℃、16時間照明で3〜4ヶ月間培養した。
【0040】
2.RT−PCR法によるウイルス検定
培養により生長した苗から、1cm角の葉切片3〜5枚を切り出し、SDSフェノール法によりRNAを抽出した。RT反応及びPCR反応は、One Step RNA PCR Kit (AMV)(Takara)を用い、5’−ATGGT(TG)TGGTG(TC)AT(TA)GA(AG)AA(TC)GG−3’およびを5’−GC(TC)TTCAT(TC)TG(AG)(TA)(TG)GTG(TG)GC(TC)TC−3’をプライマーとして、Takara Thermal Cycler MPにより、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒の条件で30サイクル行った。PCR産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、ethidium bromide染色することにより、ウイルス感染の有無を検定した。
【0041】
3.節培養による苗の増殖
ウイルス感染していないことが確認された苗は、ツルを節毎に切断して30g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地へ置床し、25℃、16時間照明で培養した。苗の増殖は、約30日毎に、ツルを節毎に切断し継代することによって行った。
【0042】
4.マイクロチューバの生産
増殖した苗を、マイクロチューバ形成培地(60g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地)へ移植し、25℃、16時間照明で約2〜6ヶ月間培養した結果マイクロチューバ1付きの培養体2を形成した(図2参照)。
【0043】
5.低温処理によるマイクロチューバの休眠打破
培養体2からマイクロチューバ1を分離し、このマイクロチューバ1を、2ヶ月以上、5℃で低温処理することにより休眠打破した。5月頃、休眠打破したマイクロチューバ1を、培養瓶から取り出し、水で洗浄後、ビニルポットに定植し栽培することにより、苗が再生した。
【0044】
また、苗の再生成功率は約90%であった。
【0045】
実験例2:マイクロチューバによる原種保存
1.マイクロチューバの保存
実験例1−4で生産したマイクロチューバ1を、無菌状態のまま5℃、暗黒で2年間保存した。
【0046】
2.保存したマイクロチューバからの苗生産
マイクロチューバ1を取り出し、30g/l ショ糖、0.002mg/l NAA、0.02mg/l BAを含むMS培地へ移植し、25℃、16時間照明で培養することにより、約1ヶ月で苗が再生した。
【0047】
また、苗の再生成功率は約90%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の説明図である。
【図2】実験例のマイクロチューバ1付き培養体2の説明図である。
【符号の説明】
1 マイクロチューバ
2 培養体
Claims (6)
- ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ付きの培養体を形成し、この培養体からマイクロチューバを分離した後、この分離したマイクロチューバを土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法。
- 請求項1記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ付きの培養体からマイクロチューバを分離した後、低温処理し、この低温処理したマイクロチューバを土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法。
- 請求項1,2いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバを分離した後、該マイクロチューバを冷蔵保存し、その後、該冷蔵保存したマイクロチューバを培養して新たにマイクロチューバを形成し、この新たに形成したマイクロチューバからジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法。
- ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ付きの培養体を形成し、このマイクロチューバ付きの培養体を土壌で栽培して該マイクロチューバからジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法。
- 請求項4記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバ付きの培養体を低温処理し、この低温処理したマイクロチューバ付きの培養体を土壌で栽培して該マイクロチューバからジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法。
- 請求項1〜5いずれか1項に記載のジネンジョの製造方法において、マイクロチューバを形成する為のジネンジョの組織として、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないジネンジョの組織を採用したことを特徴とするジネンジョの製造方法。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002223470A Pending JP2004057149A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | ジネンジョの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004057149A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100707999B1 (ko) | 2005-06-30 | 2007-04-16 | 경북대학교 산학협력단 | 재배마의 초저온 동결보존 및 재생을 통한 마 모자이크 바이러스(ymv-k)가 없는 마 식물체의 생산방법 |
CN103039364A (zh) * | 2013-01-17 | 2013-04-17 | 河南师范大学 | 一种循环诱导山药微型块茎的方法 |
CN103891619A (zh) * | 2014-04-20 | 2014-07-02 | 上饶师范学院 | 一种黄独微型块茎有机诱导的方法 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223470A patent/JP2004057149A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100707999B1 (ko) | 2005-06-30 | 2007-04-16 | 경북대학교 산학협력단 | 재배마의 초저온 동결보존 및 재생을 통한 마 모자이크 바이러스(ymv-k)가 없는 마 식물체의 생산방법 |
CN103039364A (zh) * | 2013-01-17 | 2013-04-17 | 河南师范大学 | 一种循环诱导山药微型块茎的方法 |
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