JP2004054973A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス基板からのアルカリ金属のマイグレーションに起因する欠陥が磁性膜に発生することを防止するアルカリ金属ストッパー層としての硬質炭素膜が、ガラス基板およびNi−P膜に対して十分な密着強度を有する磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体において、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層、または硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層の少なくとも一方を有するように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体において、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層、または硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層の少なくとも一方を有するように構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体およびその製造方法に関するものであり、特に磁性膜における欠陥の発生の原因となるNa等のアルカリ金属によるコンタミネーションを防止するため、および磁性膜の剥離を防止するための構成とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のハードディスク装置等の磁気記録装置の記録密度の上昇は著しく、高記録密度化に伴う記録ビットの微小化により、磁気記録媒体の低欠陥化の必要性が求められている。
このような磁気記録媒体の低欠陥化の要請に応えるためには、加工時に傷の発生しやすいAl合金を基板として用いることは不適当であり、現在ではガラス基板の採用が主流になりつつある。
【0003】
磁気記録媒体用のガラス基板としては、欠陥の原因となる磁性膜を構成する金属磁性層へNa等のアルカリ金属がマイグレーションすることによる汚染を防止するために、高価なアルミノシリケートガラスが用いられている。
アルミノシリケートガラスに対しては、機械的強度を高めるためにKOHの熱溶融液中に浸漬するいわゆるアルカカリ溶融塩処理を行い、Naイオンを原子半径の大きなKイオンと置換して格子定数を変えることで、表面に圧縮応力を発生させている。
【0004】
しかし、アルミノシリケートガラスを用いた基板は、それ自体高価であるとともに、上述のアルカリ溶融塩処理を行っているにも拘らず、記録ビットの微小化に伴って微小な欠陥が問題となるので、汚染の防止は十分ではなくなってきた。一方、安価なソーダ石灰ガラス、すなわち、いわゆる青板ガラスはアルミノシリケートガラス以上に汚染が多く、GMR(巨大磁気抵抗効果)ヘッド世代以降のハードディスク装置においては実用的ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この課題に対し、例えば特願平12−378600には、ソーダ石灰ガラスからなるガラス基板と磁性膜との間にNi−P膜およびアルカリ金属ストッパー層としてダイヤモンドライクカーボン膜(以下硬質炭素膜と称す)を、硬質炭素膜と磁性膜との間にCu膜を設けた磁気記録媒体が開示されている。
【0006】
従来の磁気記録媒体の概略的断面図(1)を図2に示す。ここで、符号1はガラス基板、9はCr膜、3は硬質炭素膜、5はNi−P膜、14はCu下地膜、6は磁性膜、7は保護膜、8は潤滑膜をそれぞれ示している。
すなわち、ガラス基板1と磁性膜6との間にアルカリ金属ストッパ層としての硬質炭素膜3を介在させることにより、ガラス基板1からのアルカリ金属のマイグレーションに起因する欠陥が磁性膜6に発生することがなくなり、このことによって安価なガラス基板の使用が可能となる。また、アルカリ金属ストッパー層として機能する硬質炭素膜3は高硬度であるので、ガラス基板1の機械的強度を高めることができるとしている。
【0007】
しかしながら上記の構成で作製した磁気記録媒体は、80℃で95%RH(湿度)の雰囲気中に12時間放置した際には腐蝕痕が発生しなかったが、MIL規格の温湿度サイクル試験(温度:−10〜65℃、湿度:〜92%RH)を行ったところ、ほぼ全数で剥離が発生した。
すなわちこの構成では、ガラス基板の上に0.05μmのCr密着層を介して厚さが10μmのNiおよびPからなるアモルファス状のNi−P膜を設けて機械的強度を高めており、さらにその上に厚さが100nmの硬質炭素膜を成膜しているが、ガラス基板とアルカリ金属ストッパー層との間に形成したCr膜、Ni−P膜では密着性が十分ではなく、熱膨張係数および/または格子定数の違いがあるために剥離が発生したものと推察した。
【0008】
また、上記の課題に対し、例えば特開平8−22616には、磁性膜から発生するノイズを低減した強化ガラス系/結晶化ガラス系/カーボン系などの非金属系の基板上に設けた非磁性金属膜からなる第一のプリコート層と、この第一のプリコート層上に、第一のプリコートの凹凸を吸収するように設けたCVD(化学的気相成長)プリコート層と、このCVDプリコート層上に形成した磁性層および保護膜とを含むことを特徴とする非金属系の基板を用いた磁気ディスクが開示されている。
【0009】
図3に、従来の磁気記録媒体の概略的断面図(2)を示す。ここで、符号21は非金属基板、22は非磁性金属プリコート膜、23はCVDプリコート膜、24はCr下地膜、6は磁性膜、7は保護膜をそれぞれ示している。
しかし、ここでは非金属基板21として高価な強化ガラスや結晶化ガラスを用いた磁気ディスクであり、安価なソーダ石灰ガラスについては言及しておらず、かつ非金属基板21の直上に形成するのは非磁性金属プリコート膜22であり、非金属基板21との密着性については言及していない。
【0010】
そこで、本発明は、上記の剥離という問題点を解決するために、ガラス基板からのアルカリ金属のマイグレーションに起因する欠陥が磁性膜に発生することを防止するアルカリ金属ストッパー層としての硬質炭素膜が、ガラス基板およびNi−P膜に対して十分な密着強度を有する磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上に述べた課題は、本発明の請求項1によれば、ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P(ニッケル−リン)膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体において、該ガラス基板と該硬質炭素膜との間にSi(シリコン)を主成分とする第一の密着層、または該硬質炭素膜と該Ni−P(ニッケル−リン)膜との間にTi(チタン)を主成分とする第二の密着層の少なくとも一方を有するように構成した磁気記録媒体によって達成される。
【0012】
すなわち、Siを主成分とする第一の密着層をガラス基板と硬質炭素膜との間に設けるようにしている。またTiを主成分とする第二の密着層を硬質炭素膜とNi−P膜との間に設けるようにしている。そして両密着層を設けるか、両密着層のそれぞれを別個に設けるようにしている。
第一の密着層または第二の密着層を設けることにより、ガラス基板と硬質炭素膜または硬質炭素膜とNi−P膜との熱膨張係数および/または格子定数の違いのために剥離が発生することを防止することができると考える。
【0013】
その結果、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層を配置することによってガラス基板と硬質炭素膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができ、また、硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層を配置することによって硬質炭素膜とNi−P膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0014】
また、上に述べた課題は、本発明の請求項2によれば、請求項1記載の磁気記録媒体において、該硬質炭素膜の硬さが8GPa(Giga Pascal)以上であることを特徴とする磁気記録媒体とすることで達成される。
すなわち、硬質炭素膜の硬さを8GPa以上とすることで、アルカリ金属の拡散を抑えることができる。本発明者らは、一定以上の硬度を有する炭素膜は、アルカリ金属の拡散を抑えることが可能であることを見いだした。これは硬質炭素膜が化学的に不活性な膜であることに加え、高硬度の膜は炭素のsp3、sp2結合が高密度に充填されているためであると考える。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、表1に示す組成で酸化物を混合して加熱し、酸化物ガラスを作製した。その後、熱間プレスで板状に成形したガラスを作製した。そして、表面を研磨してRa(中心線平均あらさ)で5Å以下になるようにし、これをガラス基板として用いた。
【0016】
【表1】
〔実施例〕
図1に、本発明による磁気記録媒体の概略的断面図を示す。ここで、符号1はガラス基板、2は第一の密着層、3は硬質炭素膜、4は第二の密着層、5はNi−P膜、6は磁性膜、7は保護膜、8は潤滑膜をそれぞれ示している。
【0017】
表面を研摩してRaで5Å以下となるようにした表1に示す成分のガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始し、その後次第に硬質炭素の量を増やしながら同時スパッタすることでSiが傾斜組成を持つようにSiと硬質炭素とからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0018】
次いでTiのスパッタを次第に硬質炭素の量を減少しながら10nm形成し、Tiが傾斜組成をもつようにTiと硬質炭素とからなる第二の密着層4を10nm成膜した。次いでNi−P膜5(Ni:80%、P:20%)をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜およびTiの成膜条件を表2に示す。
【0019】
なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープ(Hysitron社製)で硬さの測定を行ったところ、17GPaであった。
【0020】
【表2】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDX(エネルギー分散型X線分光法)で評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0021】
また、この条件を用いて作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、全数で剥離は発生しなかった。
図1と図2、3とを比較すると、ガラス基板1と硬質炭素膜3との間に形成する第一の密着層2は、金属であるCr密着膜とNi−P膜で形成するよりも、Siを主成分とするもので形成する方が密着性を向上させること、および硬質炭素膜3とNi−P膜5との間に形成する第二の密着層4は、金属であるCu補強層よりもTiを主成分とするもので形成する方が密着性を向上させることを見いだした。これは、前述したように、熱膨張係数または格子定数の違いが密着性に影響しているものと推察できる。
【0022】
〔参考例1〕
実施例と同じ条件で作製したガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始することによって、ガラス基板1の表面に炭素を含有し、SiCからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0023】
次いでNi−P膜5をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜の成膜条件を表3に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、17GPaであった。
【0024】
【表3】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0025】
また、この条件で作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
〔参考例2〕
実施例と同じ条件で作製したガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて実施例と硬さの異なる硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始することによって、ガラス基板1の表面に炭素を含有し、SiCからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0026】
次いでNi−P膜5をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜の成膜条件を表4に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、8GPaであった。
【0027】
【表4】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0028】
また、この条件を用いて作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
比較のために硬度の低い炭素膜を10nm成膜した。この時の成膜条件を表5に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、5GPaであった。
【0029】
【表5】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、検出されたNaは8%であった。
【0030】
この条件で作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
また、表6に示す条件で成膜した硬さ6.3GPaの硬度の比較的低い炭素膜(厚さ10nm)のものを、上記と同じ条件で評価したところ、検出されたNaは1.5%であった。
【0031】
【表6】
このことから、アルカリ金属のマイグレーションを防止する硬質炭素膜は、硬さが8GPa以上であることが好ましいといえる。
参考例1では第一の密着層として炭素を含有したSiを、実施例ではさらに第二の密着層として炭素を含有したTiを用いたが、たとえば第一の密着層を形成せずに第二の密着層だけを形成するなどの種々の変形が可能である。
【0032】
なお、硬質炭素膜を成膜する手法としてはスパッタ法を用いることができるが、CVD法(化学的気相成長法)などであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層を有することによってガラス基板と硬質炭素膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0034】
また、硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層を有することによって硬質炭素膜とNi−Pとの密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。その結果、本発明は製品の安定化に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気記録媒体の概略的断面図。
【図2】従来の磁気記録媒体の概略的断面図(1)
【図3】従来の磁気記録媒体の概略的断面図(2)
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 第一の密着層
3 硬質炭素膜
4 第二の密着層
5 Ni−P膜
6 磁性膜
7 保護膜
8 潤滑膜
9 Cr膜
14 Cu下地膜
21 非金属基板
22 非磁性金属プリコート膜
23 CVDプリコート膜
24 Cr下地膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体およびその製造方法に関するものであり、特に磁性膜における欠陥の発生の原因となるNa等のアルカリ金属によるコンタミネーションを防止するため、および磁性膜の剥離を防止するための構成とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のハードディスク装置等の磁気記録装置の記録密度の上昇は著しく、高記録密度化に伴う記録ビットの微小化により、磁気記録媒体の低欠陥化の必要性が求められている。
このような磁気記録媒体の低欠陥化の要請に応えるためには、加工時に傷の発生しやすいAl合金を基板として用いることは不適当であり、現在ではガラス基板の採用が主流になりつつある。
【0003】
磁気記録媒体用のガラス基板としては、欠陥の原因となる磁性膜を構成する金属磁性層へNa等のアルカリ金属がマイグレーションすることによる汚染を防止するために、高価なアルミノシリケートガラスが用いられている。
アルミノシリケートガラスに対しては、機械的強度を高めるためにKOHの熱溶融液中に浸漬するいわゆるアルカカリ溶融塩処理を行い、Naイオンを原子半径の大きなKイオンと置換して格子定数を変えることで、表面に圧縮応力を発生させている。
【0004】
しかし、アルミノシリケートガラスを用いた基板は、それ自体高価であるとともに、上述のアルカリ溶融塩処理を行っているにも拘らず、記録ビットの微小化に伴って微小な欠陥が問題となるので、汚染の防止は十分ではなくなってきた。一方、安価なソーダ石灰ガラス、すなわち、いわゆる青板ガラスはアルミノシリケートガラス以上に汚染が多く、GMR(巨大磁気抵抗効果)ヘッド世代以降のハードディスク装置においては実用的ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この課題に対し、例えば特願平12−378600には、ソーダ石灰ガラスからなるガラス基板と磁性膜との間にNi−P膜およびアルカリ金属ストッパー層としてダイヤモンドライクカーボン膜(以下硬質炭素膜と称す)を、硬質炭素膜と磁性膜との間にCu膜を設けた磁気記録媒体が開示されている。
【0006】
従来の磁気記録媒体の概略的断面図(1)を図2に示す。ここで、符号1はガラス基板、9はCr膜、3は硬質炭素膜、5はNi−P膜、14はCu下地膜、6は磁性膜、7は保護膜、8は潤滑膜をそれぞれ示している。
すなわち、ガラス基板1と磁性膜6との間にアルカリ金属ストッパ層としての硬質炭素膜3を介在させることにより、ガラス基板1からのアルカリ金属のマイグレーションに起因する欠陥が磁性膜6に発生することがなくなり、このことによって安価なガラス基板の使用が可能となる。また、アルカリ金属ストッパー層として機能する硬質炭素膜3は高硬度であるので、ガラス基板1の機械的強度を高めることができるとしている。
【0007】
しかしながら上記の構成で作製した磁気記録媒体は、80℃で95%RH(湿度)の雰囲気中に12時間放置した際には腐蝕痕が発生しなかったが、MIL規格の温湿度サイクル試験(温度:−10〜65℃、湿度:〜92%RH)を行ったところ、ほぼ全数で剥離が発生した。
すなわちこの構成では、ガラス基板の上に0.05μmのCr密着層を介して厚さが10μmのNiおよびPからなるアモルファス状のNi−P膜を設けて機械的強度を高めており、さらにその上に厚さが100nmの硬質炭素膜を成膜しているが、ガラス基板とアルカリ金属ストッパー層との間に形成したCr膜、Ni−P膜では密着性が十分ではなく、熱膨張係数および/または格子定数の違いがあるために剥離が発生したものと推察した。
【0008】
また、上記の課題に対し、例えば特開平8−22616には、磁性膜から発生するノイズを低減した強化ガラス系/結晶化ガラス系/カーボン系などの非金属系の基板上に設けた非磁性金属膜からなる第一のプリコート層と、この第一のプリコート層上に、第一のプリコートの凹凸を吸収するように設けたCVD(化学的気相成長)プリコート層と、このCVDプリコート層上に形成した磁性層および保護膜とを含むことを特徴とする非金属系の基板を用いた磁気ディスクが開示されている。
【0009】
図3に、従来の磁気記録媒体の概略的断面図(2)を示す。ここで、符号21は非金属基板、22は非磁性金属プリコート膜、23はCVDプリコート膜、24はCr下地膜、6は磁性膜、7は保護膜をそれぞれ示している。
しかし、ここでは非金属基板21として高価な強化ガラスや結晶化ガラスを用いた磁気ディスクであり、安価なソーダ石灰ガラスについては言及しておらず、かつ非金属基板21の直上に形成するのは非磁性金属プリコート膜22であり、非金属基板21との密着性については言及していない。
【0010】
そこで、本発明は、上記の剥離という問題点を解決するために、ガラス基板からのアルカリ金属のマイグレーションに起因する欠陥が磁性膜に発生することを防止するアルカリ金属ストッパー層としての硬質炭素膜が、ガラス基板およびNi−P膜に対して十分な密着強度を有する磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上に述べた課題は、本発明の請求項1によれば、ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P(ニッケル−リン)膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体において、該ガラス基板と該硬質炭素膜との間にSi(シリコン)を主成分とする第一の密着層、または該硬質炭素膜と該Ni−P(ニッケル−リン)膜との間にTi(チタン)を主成分とする第二の密着層の少なくとも一方を有するように構成した磁気記録媒体によって達成される。
【0012】
すなわち、Siを主成分とする第一の密着層をガラス基板と硬質炭素膜との間に設けるようにしている。またTiを主成分とする第二の密着層を硬質炭素膜とNi−P膜との間に設けるようにしている。そして両密着層を設けるか、両密着層のそれぞれを別個に設けるようにしている。
第一の密着層または第二の密着層を設けることにより、ガラス基板と硬質炭素膜または硬質炭素膜とNi−P膜との熱膨張係数および/または格子定数の違いのために剥離が発生することを防止することができると考える。
【0013】
その結果、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層を配置することによってガラス基板と硬質炭素膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができ、また、硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層を配置することによって硬質炭素膜とNi−P膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0014】
また、上に述べた課題は、本発明の請求項2によれば、請求項1記載の磁気記録媒体において、該硬質炭素膜の硬さが8GPa(Giga Pascal)以上であることを特徴とする磁気記録媒体とすることで達成される。
すなわち、硬質炭素膜の硬さを8GPa以上とすることで、アルカリ金属の拡散を抑えることができる。本発明者らは、一定以上の硬度を有する炭素膜は、アルカリ金属の拡散を抑えることが可能であることを見いだした。これは硬質炭素膜が化学的に不活性な膜であることに加え、高硬度の膜は炭素のsp3、sp2結合が高密度に充填されているためであると考える。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、表1に示す組成で酸化物を混合して加熱し、酸化物ガラスを作製した。その後、熱間プレスで板状に成形したガラスを作製した。そして、表面を研磨してRa(中心線平均あらさ)で5Å以下になるようにし、これをガラス基板として用いた。
【0016】
【表1】
〔実施例〕
図1に、本発明による磁気記録媒体の概略的断面図を示す。ここで、符号1はガラス基板、2は第一の密着層、3は硬質炭素膜、4は第二の密着層、5はNi−P膜、6は磁性膜、7は保護膜、8は潤滑膜をそれぞれ示している。
【0017】
表面を研摩してRaで5Å以下となるようにした表1に示す成分のガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始し、その後次第に硬質炭素の量を増やしながら同時スパッタすることでSiが傾斜組成を持つようにSiと硬質炭素とからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0018】
次いでTiのスパッタを次第に硬質炭素の量を減少しながら10nm形成し、Tiが傾斜組成をもつようにTiと硬質炭素とからなる第二の密着層4を10nm成膜した。次いでNi−P膜5(Ni:80%、P:20%)をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜およびTiの成膜条件を表2に示す。
【0019】
なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープ(Hysitron社製)で硬さの測定を行ったところ、17GPaであった。
【0020】
【表2】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDX(エネルギー分散型X線分光法)で評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0021】
また、この条件を用いて作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、全数で剥離は発生しなかった。
図1と図2、3とを比較すると、ガラス基板1と硬質炭素膜3との間に形成する第一の密着層2は、金属であるCr密着膜とNi−P膜で形成するよりも、Siを主成分とするもので形成する方が密着性を向上させること、および硬質炭素膜3とNi−P膜5との間に形成する第二の密着層4は、金属であるCu補強層よりもTiを主成分とするもので形成する方が密着性を向上させることを見いだした。これは、前述したように、熱膨張係数または格子定数の違いが密着性に影響しているものと推察できる。
【0022】
〔参考例1〕
実施例と同じ条件で作製したガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始することによって、ガラス基板1の表面に炭素を含有し、SiCからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0023】
次いでNi−P膜5をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜の成膜条件を表3に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、17GPaであった。
【0024】
【表3】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0025】
また、この条件で作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
〔参考例2〕
実施例と同じ条件で作製したガラス基板1の表面に、スパッタ法を用いて実施例と硬さの異なる硬質炭素膜3の成膜を開始するのと同時にSiのスパッタを開始することによって、ガラス基板1の表面に炭素を含有し、SiCからなる第一の密着層2を10nm成膜し、続いて硬質炭素膜3を30nm成膜した。
【0026】
次いでNi−P膜5をスパッタ法を用いて0.5μm成膜した。この時のSiおよび硬質炭素膜の成膜条件を表4に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、8GPaであった。
【0027】
【表4】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、Na、Mgなどは検出限界の1%以下であった。
【0028】
また、この条件を用いて作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
比較のために硬度の低い炭素膜を10nm成膜した。この時の成膜条件を表5に示す。なお、これと同時にSi基板に成膜した硬質炭素膜をトライボスコープで硬さの測定を行ったところ、5GPaであった。
【0029】
【表5】
この条件で作製した膜を恒温槽中に75℃、湿度85%の雰囲気で100時間放置し、放置後の表面に存在する化学種をEDXで評価した。その結果、検出されたNaは8%であった。
【0030】
この条件で作製した磁気記録媒体をMIL規格に則った条件で試験を行ったところ、ほぼ1/3で剥離が発生した。
また、表6に示す条件で成膜した硬さ6.3GPaの硬度の比較的低い炭素膜(厚さ10nm)のものを、上記と同じ条件で評価したところ、検出されたNaは1.5%であった。
【0031】
【表6】
このことから、アルカリ金属のマイグレーションを防止する硬質炭素膜は、硬さが8GPa以上であることが好ましいといえる。
参考例1では第一の密着層として炭素を含有したSiを、実施例ではさらに第二の密着層として炭素を含有したTiを用いたが、たとえば第一の密着層を形成せずに第二の密着層だけを形成するなどの種々の変形が可能である。
【0032】
なお、硬質炭素膜を成膜する手法としてはスパッタ法を用いることができるが、CVD法(化学的気相成長法)などであってもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス基板と硬質炭素膜との間にSiを主成分とする第一の密着層を有することによってガラス基板と硬質炭素膜との密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0034】
また、硬質炭素膜とNi−P膜との間にTiを主成分とする第二の密着層を有することによって硬質炭素膜とNi−Pとの密着性が良くなり、実用に耐える強度を有する磁気記録媒体とすることができる。その結果、本発明は製品の安定化に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気記録媒体の概略的断面図。
【図2】従来の磁気記録媒体の概略的断面図(1)
【図3】従来の磁気記録媒体の概略的断面図(2)
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 第一の密着層
3 硬質炭素膜
4 第二の密着層
5 Ni−P膜
6 磁性膜
7 保護膜
8 潤滑膜
9 Cr膜
14 Cu下地膜
21 非金属基板
22 非磁性金属プリコート膜
23 CVDプリコート膜
24 Cr下地膜
Claims (3)
- ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P(ニッケル−リン)膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体において、
該ガラス基板と該硬質炭素膜との間にSi(シリコン)を主成分とする第一の密着層、または該硬質炭素膜と該Ni−P(ニッケル−リン)膜との間にTi(チタン)を主成分とする第二の密着層の少なくとも一方を有する
ことを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1記載の磁気記録媒体において、
該硬質炭素膜の硬さが8GPa以上である
ことを特徴とする磁気記録媒体。 - ガラス基板上に硬質炭素膜、Ni−P(ニッケル−リン)膜、磁性膜、保護膜および潤滑膜が順次積層されてなる磁気記録媒体の製造方法において、
該ガラス基板と該硬質炭素膜との間にSi(シリコン)を主成分とする第一の密着層を形成する工程または該硬質炭素膜と該Ni−P(ニッケル−リン)層との間にTi(チタン)を主成分とする第二の密着層を形成する工程の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002207393A JP2004054973A (ja) | 2002-07-16 | 2002-07-16 | 磁気記録媒体およびその製造方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2013149315A (ja) * | 2012-01-19 | 2013-08-01 | Showa Denko Kk | 熱アシスト磁気記録媒体及び磁気記録再生装置 |
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-
2002
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