JP2004053349A - ヒステリシス誤差補正装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示すロードセルの出力信号が、増加から減少または減少から増加へ転換する転換点を検出し、それの転換方向に応じて零点または最大荷重に向かう出力信号を引数とする、ヒステリシス誤差特性に近似した特性を有する近似誤差関数を発生する。ロードセルのヒステリシス誤差を近似誤差関数によって補正する。近似誤差関数は、引数となる出力信号存在領域を複数の範囲に区分し、各区分に対応した複数の近似誤差関数を作成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷重検出手段、例えばロードセルの出力信号が持つヒステリシス誤差特性を補正する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ロードセルは、荷重が印加されて、歪みを生じる起歪体と、この起歪体に取り付けられ、起歪体に生じた歪みを検出するストレインゲージとを備えている。起歪体を構成する金属材料やストレインゲージの特性に起因するヒステリシス誤差が、ロードセルの出力信号に存在する。例えば、クリープ等の他の誤差発生要因が全く存在しないとしても、ロードセルに対する負荷荷重を増加させていく場合と、減少させていく場合とでは、同じ荷重であっても出力信号が異なる。
【0003】
このロードセルのヒステリシス現象は、例えば図9(a)に示すように、縦軸に出力誤差Y、横軸に負荷荷重Rをとると、ロードセルへの負荷荷重がR1、R2、R3、R4、R5の大きさになるように、ロードセルに載荷される負荷を順に増加させると、誤差零の場合の出力であるR軸に対してY1a、Y2a、Y3a、Y4aのような誤差が現れる。逆に負荷を最大値R5から順にR4、R3、R2、R1と減少させると、負荷を増加させた場合の誤差と同じ大きさの負荷であっても、異なった大きさのY4b、Y3b、Y2b、Y1bのような誤差が生じる。出力誤差Yは、最大荷重R5に対する百分率で示してある。
【0004】
特開平6−160164号公報には、上記のようなヒステリシス誤差を補償する技術が開示されている。この技術では、図9(a)に示すように、これら誤差の値、例えばY1a、Y2a、Y3a、Y4aやY4b、Y3b、Y2b、Y1bを結んでできる包絡線M1、M2を、負荷荷重の増加特性及び減少特性として、負荷荷重Rを引数とする1つの多項式による近似式で表す。包絡線M1、M2の形状から判断して、ヒステリシス誤差特性は、経験的に2次或いは3次の曲線で表すことができると判断され、例えば3次曲線式で表すと、M1、M2は、座標の原点を通るので、
Y=A*R+B*R2+C*R3
で表される。但し、A、B、Cはロードセルによって異なる値をとる定数である。
【0005】
上記の式Yは、既知の値の分銅をロードセルに負荷し、出力を測定して、分銅の値とロードセル出力値との差を求め、差の最大荷重に対する百分率をとって、図9(a)のR−Y座標にプロットし、3点の座標(R、Y)をY式に入力して、連立方程式を解いて、A、B、Cを求める。この式は、使用ロードセルの特性を表すものとして、予め用意される。
【0006】
ロードセルを秤として使用する場合、負荷荷重零の状態から任意の荷重Rx(0≦Rx≦R5)を印加し、そのとき発生する誤差を補正する。即ち、秤は荷重Rxに対して誤差Yxa(パーセント)を含んだロードセル出力荷重Rx’を測定するので、出力荷重Rx’を測定したとき、予め用意されている誤差曲線式Yにより発生誤差Yxa’を求める。これに基づいて、
Rx=Rx’+(Yxa’/100)*R5
の演算が実行され、出力荷重Rx’に対する正しい荷重Rxを求めることができる。
【0007】
重量式所定量充填機のように、負荷荷重が増加方向にのみ印加され、負荷の除去は常に全量を一挙に行う場合には、誤差曲線式Yとしては、図9(a)のM1に相当するもののみを準備すればよい。しかし、台秤では、一度大きな負荷が秤に載荷された後、少し負荷が減少された後に、正式に負荷を測定することがある。或いは台秤では、大きい負荷が載荷されてから零点までの途中の荷重まで負荷が除去された後、再び負荷が載荷されて、その後に正式に負荷を測定することがある。
【0008】
このような使用では、負荷荷重が増加方向から減少方向へ、または減少方向から増加方向へ折り返すごとに、ヒステリシス誤差は、図9(a)の誤差曲線式M1、M2とは異なった誤差曲線式で表される。
【0009】
例えば図9(b)において、負荷荷重が最大荷重R5まで増加されるとき、曲線M1に沿って誤差が発生し、最大荷重R5から負荷荷重が減少されるとき、曲線M2に沿って誤差が発生する。曲線M2上において、負荷荷重を零にまで減少させずに、例えばR1xにおいて増加させると、誤差は曲線M3に沿って発生する。従って、R1xからR5まで荷重を増加させる場合には、曲線M3を求め、この曲線に従って荷重補償を行う必要がある。
【0010】
同様に、零点から負荷がR2xまで増加し、荷重R2xからR3xまで負荷が減少する際には、R2xとR3xとの間の途中の荷重の測定には、誤差曲線M4を求めて、補償する必要がある。さらに荷重R3xからR5まで荷重が増加する場合には、誤差曲線M5を求めて補償しなければならない。
【0011】
このように、荷重が増加から減少に、或いは減少から増加に転換する荷重を転換点と称する。
【0012】
特開平6−160164号の技術では、上記のように負荷荷重を変化させた上で荷重測定する場合の補償法として次のようなものが提案されている。即ち、図9(b)において、荷重が零点から最大荷重R5であるP1点まで増加し、P1点を転換点とし、荷重がR1xであるP2点まで減少し、P2点から再びP1点まで増加する途中の荷重Rxの測定に対するロードセルの誤差出力特性を表す曲線M3を
Y=A*R+B*R2+C*R3+Wx
と定義している。但し、Wxは
Wx=W0*[(R5―Rx)/(R5−R1x)]
である。これは、誤差曲線M1を基本曲線とし、P2点での荷重R1xのとき誤差をW0、P1点での荷重R5のとき誤差を0として、その間でRxが増加するに従って、誤差がW0から比例的に小さくなるオフセット量Wxを、M1に対して加えることで得られることを表している。
【0013】
他の誤差曲線M5を求める場合には、誤差曲線M4が既に得られているので、転換点P12のオフセット量W0は、R3xにおける曲線M4と基本誤差曲線M1とのY座標上の偏差として与えられている。転換点P12のW0とR3xをWxの式に代入して、Wxを求め、これに基づいてYを決定すればよい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ロードセルでは、起歪体材料、起歪体の起歪部の形状、ストレインゲージの特性等に様々な種類が存在する。そのため、ヒステリシス誤差特性には、図9(a)、(b)とは異なり、図10(a)、(b)に示すようなものもある。誤差の包絡線を例えば特開平6−160164号公報に示されている技術に従って、曲線Mのように上または下に凸の1本の曲線で表したなら、誤差出力と曲線とが乖離して、正確な誤差曲線が得られず、適切な補償ができないことがある。従って、従来の技術は、ロードセルの種類によっては適切に誤差を補償することができる場合もあるが、各種ロードセルの様々な特性に一般的に対応可能なものとするには、さらなる改善が必要である。
【0015】
また、特開平6−160164号公報の技術では、ロードセルに対する経験荷重について考慮されていない。例えばロードセルが図9(a)のようなループ状のヒステリシス特性を表すのは、荷重を増加または減少させる過程において中間的な荷重や最大荷重がロードセルに対して単に負荷されるのではなく、ロードセル自体がそれぞれの荷重を物性的に経験する状態に負荷されているからである。
【0016】
例えば、ロードセルの最大負荷が25Kgであるとき、分銅を5Kg、10Kg、・・・と5Kgずつ増加させて合計20Kgの分銅が載荷されているとき、更に5Kgの分銅を追加して載荷するや、直ちに除去しても、ロードセルは25Kgの負荷を経験したことにならず、図9(a)において20Kgにおけるヒステリシス誤差はY4aからY4bには変化しない。
【0017】
ところが、20Kgの分銅が載荷されている状態において、5Kgの分銅を追加載荷して、作業者が測定荷重を読みとれるぐらいの時間の後に、5Kgの分銅を除去すると、25Kgから戻りのヒステリシス特性に沿ってY4bの誤差が現れる。この現象を経験荷重という。
【0018】
ロードセルを秤に適用する場合、様々な状態に荷重が負荷されることを想定する必要がある。荷重負荷に関して、経験荷重であるという条件を加えないと、正しくヒステリシス補償を行うことができない。また、経験荷重でない負荷状態でもって間違って補償することがあってはならない。
【0019】
本発明は、正確にヒステリシス誤差特性を補償することを目的とする。具体的には、様々な特性を持つロードセルに対してもヒステリシス誤差補償を可能とすることを目的とする。また、本発明は、経験荷重が負荷されているか否かに対応して、ヒステリシス補償を可能とすることを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の1態様によるヒステリシス誤差補正装置は、誤差関数発生手段を有している。この誤差関数発生手段には、荷重検出手段の出力信号が入力されている。この荷重検出手段としては、例えばロードセルを使用することができる。この荷重検出手段の出力信号は、零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示す。この荷重検出手段への荷重が増加から減少または減少から増加へ転換する転換点が、前記出力信号に基づいて検出されるごとに、それの転換方向、例えば増加から減少または減少から増加に応じて、別の転換点、例えば零点または最大荷重に向かう出力信号を引数とする、ヒステリシス誤差特性に近似した特性を有する近似誤差関数を、誤差関数発生手段が発生する。前記出力信号は補正手段にも入力されている。この補正手段は、荷重検出手段の出力信号のヒステリシス誤差を、前記誤差関数発生手段による前記近似誤差関数によって補正する。例えば誤差関数発生手段に荷重検出手段の出力信号が引数として入力されたことによって発生した誤差関数と、そのときの荷重検出手段の出力信号との代数和を求めることによって、荷重補正を行うことができる。前記誤差関数発生手段は、前記引数となる前記出力信号存在領域を複数の範囲に区分し、各区分に対応した複数の近似誤差関数を作成する。例えば、誤差関数発生手段は、任意の転換点と、その転換点からの転換方向に沿った別の転換点(この別の転換点での誤差の値とそれに対応する荷重検出手段の出力信号の値とは、予め判明している)との間における最大誤差と、この最大誤差を生じる荷重検出手段の出力信号の値とを推定し、前記任意の転換点における誤差と前記最大誤差との間の誤差を表す関数と、前記最大誤差と前記別の転換点での誤差との間の誤差を表す関数とを発生する。
【0021】
このように構成された補正装置では、誤差補正用に誤差関数発生手段が発生する関数は、荷重検出手段の出力信号の存在領域を複数の範囲に区分し、各区分に対応した複数の関数によって構成されている。従って、荷重検出手段のヒステリシス誤差が種々のものであっても、そのヒステリシス誤差に近似した関数を発生することができ、補正の精度を向上させることができる。
【0022】
作成される複数の近似誤差関数は、前記荷重検出手段のヒステリシス誤差特性形状に適合するように、次数の異なる負荷荷重の関数の組合せとすることができる。このように構成すると、ヒステリシス誤差特性を、それの各部に応じた次数を持った複数の近似誤差関数によって表すことができるので、より精度の高い補正が可能となる。
【0023】
作成される複数の近似誤差関数は、荷重増加または荷重減少のいずれかまたは双方の過程の中において同一次数であっても上に凸の形状を有する関数と、下に凸の形状を有する関数との組合せとすることができる。このように構成すると、各近似誤差関数に同一次数のものを使用していても、ヒステリシス誤差特性に非常に近似したものとすることができ、精度の高い補正を行うことができる。
【0024】
本発明による他の態様のヒステリシス誤差補正装置は、上述した態様のものと同様に、誤差関数発生手段と、補正手段とを、具備している。さらに、荷重検出手段が荷重を物性的に経験する状態に、荷重が荷重検出手段に負荷されている経験荷重状態か否かを決定する経験荷重負荷条件が設定されている。経験荷重負荷条件を満足していることを前提として、転換点及び出力信号を決定する。
【0025】
このように構成すると、経験荷重が負荷されているときに転換点と荷重検出手段の出力信号の値とが決定されるので、経験荷重でない負荷状態であるにも拘わらず、ヒステリシス誤差補正を行うことを防止することができる。
【0026】
本発明による重量測定装置では、零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示す荷重検出手段の出力信号が入力される判定手段を有している。この判定手段には、荷重検出手段の調整段階におけるヒステリシス誤差と異なるヒステリシス誤差を、前記荷重検出手段の使用段階において出力する場合を検出する誤操作荷重負荷条件が定められている。この誤操作荷重負荷条件下で、荷重検出手段が使用されているか否かを判定手段が判定する。この判定手段の判定結果が出力手段によって出力される。この出力は、種々の形態とすることができる。
【0027】
このように構成されているので、調整段階において設定したヒステリシス誤差と異なるヒステリシス誤差を、使用段階において出力することを防止することができる。
【0028】
なお、経験荷重負荷条件または誤操作荷重負荷条件としては、前記荷重検出手段の出力信号の時系列値の差が予め定めた値以内であることが、予め定めた時間以上継続することを、使用することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態のヒステリシス誤差補正装置は、荷重検出手段、例えばロードセルのヒステリシス誤差を複数の直線、または曲線多項式でもって近似させ、できるだけ実際の誤差特性曲線に近い補償関数を導入することによって、正確なヒステリシス補償を行えるようにする装置である。
【0030】
ロードセルにおける測定荷重が一定の時間以上にわたって或る幅以内の変化をするとき、ロードセルはその荷重を経験した、即ち経験荷重状態にあると定義する。
【0031】
ロードセルを秤に使用して荷重測定する場合、経験荷重状態にあるか否かを判定するために、普通に負荷を掛けて測定荷重の表示が読みとれる程度の長さの時間と、通常には負荷の安定性を判定するために使用する荷重変化幅が設定されている。
【0032】
使用者の負荷荷重のかけ方は予測できない。荷重負荷を掛ける時間が前記一定の時間よりも短い時間であると、荷重経験が中途半端に成立し、調整段階で設定した値とは異なる値のヒステリシス誤差を生じることがある。一方、荷重変化が前記の一定の荷重変化幅以内であっても、荷重負荷時間が或る値以下なら、ロードセルは確実に荷重経験しないことがある。
【0033】
使用者が普通の秤の使用状態で負荷を掛けて操作する場合、荷重経験しているので、警報信号を出力しないように設定し、中間的な時間の長さに荷重変化の少ない負荷荷重を掛けた場合には、誤操作として一度荷重を取り除くように指示する警報信号を発生するようにしている。
【0034】
秤においては、このような機能を用いて、より安全確実にヒステリシス補償を行えるようにする必要がある。
【0035】
上記のことから、第1の実施形態のヒステリシス誤差補正装置は、ロードセルのヒステリシス誤差補償にも、現在の荷重負荷の状態が増加、減少のいずれであるかの判定が必要であるので、この判定に経験荷重の時系列比較を用いている。経験荷重でない荷重負荷の状態を、増加、減少の判定に使用しないことにより、正確にヒステリシス誤差補償を行うことができる。
【0036】
以下、第1の実施の形態におけるヒステリシス誤差補償のための近似誤差関数の設定法と、これを用いたヒステリシス誤差補償法とについて、説明する。
【0037】
例えば図2(a)では、図10(a)に示したロードセルのヒステリシス誤差特性を、M11、M12、M21、M22の4本の直線で包絡してある。図2(b)では、同じく図10(b)に示したロードセルのヒステリシス誤差特性をM11、M12、M21、M22の4本の曲線で包絡してある。また、直線と曲線とを同時に包絡線として使用することもできる。
【0038】
図2(a)、(b)では、M11は荷重が増加方向にあるとき、荷重0からx2の区間に適用され、M12は荷重が増加方向にあるとき、荷重x2からx5の区間に適用され、M21は荷重が減少方向にあるとき、荷重x3から荷重0の区間に適用され、M22は荷重が減少方向にあるとき、荷重x5からx3の区間に適用されている。
【0039】
このように、余り複雑にならない程度に、ロードセルに負荷される荷重範囲を複数の区間に分け、区間ごとに実際に発生する非線形誤差特性に最も適合する、負荷荷重xを引数とする関数である直線または曲線の補正式を作成している。従って、どのようなヒステリシス誤差特性を有するロードセルに対しても、より発生誤差の実態に近い包絡線を得ることができ、正確な誤差補正を行える。
【0040】
このヒステリシス誤差補正装置では、補正対象のロードセルに対し、このロードセルの使用範囲内で予め複数の転換点を定めている。これらを基にヒステリシス誤差特性を描き、誤差出力データを取得する。この誤差出力データに適合する複数の関数の次数を決定し、この次数を持つ推定式を、誤差出力データによって作成する。補償対象ロードセルの使用中に、任意の転換点から零点(荷重減少の場合)または最大荷重(荷重増加の場合)に向かって負荷荷重が減少または増加したとき出力されるヒステリシス誤差特性に最も適合する誤差特性関数を、上記予め定めた次数に応じて推定することによって決定し、出力誤差を誤差特性関数によって補償する。
【0041】
この近似誤差関数の設定法の詳細を図2(a)を参照して述べる。図2(a)の実線は或るロードセルにおいて荷重xを零点からx1、x2、x3、x4を経て最大荷重点x5まで増加させ、次に最大荷重点x5からx4、x3、x2、x1を経て零点まで減少させた場合のヒステリシス誤差を表している。図9(a)、(b)では、Y軸の誤差量を最大荷重に対する百分率で表したが、以下では誤差量の値そのもので表す。
【0042】
この場合、零点は、ロードセルに負荷されていた負荷荷重が減少し、無負荷になったときの点であり、ここから荷重を増加させていく点でもあるので、荷重が減少から増加に転じる転換点である。最大荷重は、ロードセルに負荷されていた負荷荷重が増加し、最大荷重になった点であり、この点から荷重を減少させていく点でもあるので、荷重が増加から減少へ転じる転換点である。
【0043】
M11とM12とは、2つの転換点である零点から最大荷重へ向かって、負荷荷重が増加するとき、描かれるロードセルのヒステリシス誤差特性の包絡線を表している。M21とM22とは、最大荷重点から零点に向かって負荷荷重が減少されるとき、描かれるロードセルのヒステリシス誤差特性の包絡線を表している。M11乃至M22によって描かれるループが、ヒステリシス誤差特性を表す包絡線である。ロードセルの使用前のテストモードで、これらの包絡線を定義することができる。
【0044】
しかし、ロードセル使用モードでは、任意の荷重負荷が載荷されるので、様々な負荷形態が考えられる。従って、使用時のロードセルのヒステリシス誤差を補償するには、任意の転換点から最大荷重点に向かって増加される場合、及び任意の転換点から零点に向かって減少される場合のそれぞれに対し、ロードセルが描くヒステリシス誤差特性を決定する必要がある。
【0045】
そこで、まず、補償対象のロードセルが有するヒステリシス誤差の特性を、既知の負荷荷重を掛けて調べる。この実施の形態では、零点と最大荷重点との間に種々の大きさの負荷を掛けて、上記特性を調べている。ロードセルのヒステリシス誤差特性は、荷重変化範囲の大きさに応じて、ほぼ相似形に現れることが経験的に判明している。従って、特性調査は、ロードセルの使用範囲内の任意の既知の負荷荷重を転換点として、該転換点と零点または最大荷重との間で調査することもできる。
【0046】
従って、ロードセル使用段階において、ロードセル調整段階における誤差特性の推定式決定に使用した荷重変化範囲よりも大きい荷重変化範囲で、ロードセルが使用される場合のヒステリシス誤差特性も決定することができる。
【0047】
ロードセル調整段階において、荷重をx1、x2・・x5と、例えば一定量ずつ5段階に増加させ、続いて最大荷重x5から、x4、x3・・x1と零点まで減少させ、出力誤差をプロットして、図2(a)のようなヒステリシス誤差特性を描く。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、転換点を零とした場合の荷重増加時の最大誤差yimと、これに対応する最大誤差発生荷重ximとを決定する。この実施の形態では、xim=x2の場合の出力y21が最大誤差yimであったとする。yim=s0とする。
【0049】
荷重を段階的に増加させているので、必ずしも荷重x2での誤差y2が最大誤差yimであるとは言えない。荷重x2とx3との間、x3とx4との間に最大誤差がある可能性もある。従って、更に高精度に補正を行う必要がある場合には、描いた特性図から判断して、より多くの段階に区分されたテスト荷重点を設定して、調査を行う。この実施の形態の場合、5点の荷重でテストしているが、この数の荷重点によるテストでもって、ロードセルの誤差出力の特性はほぼ把握でき、実用上、充分な補正が行える。
【0050】
同様に、転換点を最大荷重x5とした場合の荷重減少時の最大誤差ydmと、最大誤差発生荷重xdmとを調べる。この実施の形態では、x3の点の誤差y32が最大誤差ydmである。
【0051】
図1(a)に示すように、y21の座標をQ1、y32の座標をQ2とすると、0−Q1、Q1−P1、P1−Q2、Q2−0の間で直線を引いて、各荷重プロット点の誤差の値との乖離の程度を見て、補償に適用する包絡線M11、M12、M21、M22の多項式の次数を決定する。通常、これらの式には、1次式または2次式を使用するが、この実施の形態では、発生誤差と上記の直線とが余り離れていないので、いずれの式も1次多項式、即ち直線を選択する。
【0052】
従って、図2(c)において、零点を転換点として、荷重が最大荷重x5まで増加するとき、ヒステリシス誤差の近似誤差特性関数は、
(1)M11:0≦x≦xim y=(yim/xim)*x
(2)M12:xim<x≦x5
y=−{yim/(x5−xim)}*x+{yim/(x5−xim)}*x5
と表される。
【0053】
最大荷重x5を転換点として、荷重が零点まで減少するとき、ヒステリシス誤差の近似誤差特性関数は、
(3)M21:0≦x≦xdm y=(ydm/xdm)*x
(4)M22:xdm<x≦x5
y=−{ydm/(x5−xdm)}*x+{ydm/(x5−xdm)}*x5
と表される。
【0054】
次に、任意の大きさの転換点から最大荷重に向かって負荷荷重が増加する場合の近似誤差関数を求める方法、測定荷重を補償する方法について、説明する。
【0055】
零点と最大荷重との間を5等分する荷重x1、x2・・・によって誤差特性を描いたのに続いて、ロードセル特性の調査段階において、荷重転換点を既知のx2にとって、x2と最大荷重x5との間を5等分するx軸上の荷重x1’、x2’、x3’、x4’を算出する。次に、荷重零の状態から最大荷重を負荷し、最大荷重を転換点とするように負荷荷重をx2まで減少させ、続いて上記において算出した荷重x1’、x2’・・・x4’に相当する荷重を、x2から増加方向へ与えながら最大荷重x5まで与えた場合のヒステリシス誤差特性を描く。これらの特性は、図1(a)において包絡線M11、M12及び荷重x2の点P2から最大荷重x5の点P1に至る誤差出力をプロットした包絡線M31、M32によって表される。
【0056】
転換点P2と最大荷重点P1との間に直線を引くと、荷重のx2からx5までの増加によって描かれる誤差特性P2−Q3−P1の曲線と、上記直線によって囲まれる図形V2は、荷重零からx5までの増加によって描かれる0−Q1−P1の曲線と、x軸のラインとで囲まれる図形V1との間で、ほぼ相似形に近い関係がなりたつように現れる。これは、経験的に判明している。
【0057】
従って、図形V2の特性曲線における最大誤差の発生する荷重点をT2とし、図形V1の特性曲線の最大誤差の発生する荷重点をT1とすると、ほぼ
P2Q3/0Q1=P2P1/0P1が成立し、
P2Q3/0Q1=T1T2/0T,P2P1/0P1=T1P1/0P1であるので、
T1T2/0T1=T1P1/0P1
の関係をほぼ満足する。
【0058】
いずれも零点と最大荷重との間を等しく等分しているので、T1の荷重がx2であれば、T2の荷重はx2’に対応する。即ち、x2’において最大誤差が出力される。最大誤差出力の座標をQ3とすると、最大誤差出力はQ3T2で表される。
【0059】
ここで、x2’においてx軸に垂線を立て、この垂線が直線P1P2と交わる点U3の座標を求め、
Q3U3=Q3T2+T2U3
と演算して、x2’における最大ヒステリシス誤差Q3U3を求める。x2を転換点とする荷重増加における最大誤差Q3U3をs2とする。
【0060】
点P2の座標は、上記テストにおいて荷重を最大荷重から減少させたときの既知の荷重x2における誤差出力値によって判明しており、既知である。従って、Q3U3の値は求めることができる。
【0061】
以上によって、荷重x2を転換点とする場合の最大誤差s2が求められた。しかし、実際にロードセルが使用される場合、任意の大きさの転換点xnから最大荷重x5に向かうヒステリシス誤差特性が求められるようにする必要がある。
【0062】
そのため、任意の転換点xnから最大荷重x5に向かって荷重が増加する場合に発生する最大誤差を、次のようにして求める。ロードセル事前調査段階で得た転換点荷重を零、x2として、荷重を増加させた場合に得られた最大誤差測定値s0と、s2との関係から、図3(a)のように、転換点荷重と誤差との関係をプロットし、任意の転換点の場合に発生する最大誤差を推定する曲線を表す推定式を求める。この推定式に、転換点xnの荷重を代入すると、転換点xnにおける最大誤差snを求めることができる。
【0063】
推定式としては、(0、s0)、(x2、s2)、(x5、0)の3点を通る2次曲線f12(x)を求めるか、作業、精度を簡略化するために(0、s0)と(x5、0)とを結ぶ直線式f11(x)を求め、いずれかの関係式から、任意の荷重点xnを転換点として、荷重増加の場合の最大誤差snを得る。なお、最大誤差量は、上記のような方法の他に、複数の転換荷重点と、これら荷重点の場合の最大誤差量とを予め測定し、これら最大誤差量から最小二乗法によって求めた関数(この関数は転換か充填を引数とする)に従って推定することもできる。
【0064】
任意の転換点荷重xnの場合に最大誤差を発生する荷重xmの値は、零点が転換点の場合に最大誤差を発生する荷重をxp(先の例のx2)とすると、上述したように、誤差特性の形状が任意の転換点においてほぼ相似関係の特性になることにより、図3(b)に示す座標関係から、
TnTm/0T1=TnP1/0P1
0T1=xp、TnP1=0P1−0Tn=x5−xn
よって、TnTm=xp*(x5−xn)/x5
であるので、xmは、
0Tm=xm=0Tn+TnTm=xn+xp*(x5−xn)/x5
と表される。但し、TnTmは、Tn点が任意の転換点である場合の、Tnから最大誤差を出力すると推定される荷重Tmまでの距離、TnP1は、Tn点が任意の転換点である場合のTnから最大荷重点まで増加する荷重の範囲である。
【0065】
実際にロードセルの使用中に任意の転換点荷重xnが検出されると、xnから荷重が増加して、最大荷重x5に向かう場合に最大誤差を発生する推定荷重点xmは、上記の式で求められ、また転換点がxnの場合における最大誤差snは、図3(a)のf11(x)またはf12(x)から求められる。
【0066】
ロードセル使用中に、任意の大きさの転換点xnが検出され、転換点xnが荷重減少から増加への転換点と判断されると、この転換点xnから最大荷重x5に向かって荷重が増加する場合の近似誤差関数における推定最大誤差snを決定することができる。
【0067】
このようにして求めた任意の荷重xnが荷重減少から増加に転じた場合の推定最大誤差snを用いた、任意の荷重xnを転換点とする近似誤差関数の算出法を決定する。
【0068】
図1(a)において転換点が零と最大荷重との間で荷重を増減させたときの近似誤差関数はM11乃至M22によって表される。よってロードセル使用時において、荷重が零から最大荷重まで増加し、その後に零まで減少する場合だけなら、M11乃至M22の直線を定めて、これら直線を表す近似誤差特性関数を重量測定装置に記憶させておいて、これによって誤差を補償すればよい。
【0069】
しかし、通常のロードセルの使用では、任意の荷重が増加から減少へ、または減少から増加へと、荷重方向が転換される転換点が発生するので、それぞれの場合の転換点に対する誤差近似特性関数を作成する必要がある。例えば図1(a)のP2点が任意の荷重における誤差であって、このP2点を転換点として減少から増加に転換される場合の、P2点における近似誤差特性関数の求め方について説明する。
【0070】
補償対象ロードセルにおいて、零点と最大荷重x5との間で荷重が増加または減少した場合の近似誤差関数は、調整段階のテストから測定装置に記憶されて、図1(a)の直線M11乃至M22の式が記憶されているとする。
【0071】
ロードセルの使用段階において、ロードセルに零から最大荷重x5まで荷重が増加される場合のヒステリシス誤差補償は任意の測定荷重xnの大きさによって、
(1)0≦xn<x2のとき、M11の式
(2)x2≦xn≦x5の場合M12の式
が適用され、測定荷重xnにおけるx軸とM11またはM12との差によって誤差enが求められる。このenと測定荷重xnとの代数和を求めることで、正しい荷重に補正される。
【0072】
調整時には、既知の負荷荷重に対して誤差を求め、M11、M12等の近似誤差関数を決定しているが、ロードセル使用時には、測定荷重の中にヒステリシス誤差を含んでいるので、既知の正確な荷重xnの場合の誤差enによって、ヒステリシス誤差を含んだ荷重xnの誤差であるとは、厳密には言えない。
【0073】
しかし、ヒステリシス誤差の大きさは、測定値誤差としては無視できないが、小さい値であって、測定荷重が真の荷重に対してヒステリシス誤差分程度になっても、該測定荷重におけるヒステリシス誤差と真の荷重におけるヒステリシス誤差とは、ほぼ等しいと見なすことができるので、上記誤差enによって補正を行っている。
【0074】
一旦、最大荷重x5まで荷重負荷が増加され、最大荷重が経験された後に、減少され、荷重xnを経験した後に、再び荷重が増加されたとすると、xn=x2であると仮定すると、xnの後に荷重増加によるヒステリシス誤差は、図1(a)のように、P2−Q3−P1の曲線上に発生するので、x2からx5までの間の測定荷重は、P2−Q3−P1に沿って、x2を転換点として作成される近似誤差関数によって補償される。
【0075】
荷重の転換点の検出には、ロードセルの荷重負荷状態が、常に経験荷重状態であるかどうか判定させ、経験荷重と判定されると、予め準備してある少なくとも3個分のメモリに、時系列に連続する3個の経験荷重xn−1、xn、xn+1を記憶させ、xn−1>xn、xn<xn+1の関係となることが検出されると、xnを荷重減少から増加への転換点と決定する。ロードセル使用中に、転換点が新たに決定されるごとに、xnからx5までの範囲における荷重経験値を補正するための近似誤差特性関数を算出する。
【0076】
まず、上述したようにして、推定最大誤差snと、推定最大誤差の発生荷重xmとが決定される。ここで、転換点がxnの場合の仮の誤差特性図形Vn’を図1(b)に斜線を付して示す。Vn’では、最大発生誤差はx=xmにおいてy軸のマイナス方向に−snを取る。最大発生誤差があるRnの座標は(xm、−sn)であるので、Vn’における仮の誤差特性直線は、
M11’:y=−{sn/(xm−xn)}*x+sn*xn/(xm−xn)
M12’:y=−{sn/(x5−xm)}*x−sn*xm/(x5−xm)
と表される。実際には荷重減少時の誤差は、図1(a)におけるQ2と零点0との間の曲線に沿って現れるが、この曲線そのものは不明であるので、代わりに先に形成されている近似誤差関数M21に沿って現れると見なす。従って、任意の荷重xnにおける誤差は、荷重減少時の補正直線0Q2のx=xnにおけるy座標P2’として与えられ、xnからの増加荷重に対して誤差は、最大荷重P1とP2’とを結んだ直線に沿って形成される2本の直線P2’Q3とQ3P1とからなる近似誤差特性関数に対応して現れるとする。即ち、荷重増加の場合には、任意の転換点と最大荷重とを結ぶ直線に沿って現れるとする。P2’のy座標の値は、M21にx=xnを代入して、求めればよい。
【0077】
直線P1P2’をL1nとすると、L1nは、
L1n:y=−{yn・(x5−xn)}*x+yn*x5/(x5−xn)
と表される。直線M11n、M12nは、
M11n=M11n’+L1n
M12n=M12n’+L1n
であるので、
M11n:y11(x)=−{yn/(x5−xn)+sn/(xm−xn)}
*x+yn*x5/(x5−xn)+sn*xn/(xm−xn)
M12n:y12(x)=−{yn/(x5−xn)+sn/(x5−xm)}
*x+yn*x5/(x5−xn)+yn*x5/(x5−xm)
で表される。補正値enは、
xn≦x≦xmのとき、en=y11(x)
xm<x≦x5のとき、en=y12(x)
と求められるので、補正荷重xfは測定荷重xに対して
xf=x+en
によって表される。
【0078】
ほぼP2’−Q3−P1と直線P1、P2とで囲われた図形は、荷重零を転換点とする場合の誤差特性図(基準図形と称する)、即ち0−Q1−P1と直線0−P1とで囲まれる図形に対して、経験的にほぼ相似に現れることがわかっている。これを基に、基準図形から任意の転換点荷重の場合を比例的に推定している。上記の経験的に把握できる現象から、任意の転換点の場合の近似誤差直線を得るには、測定荷重がx軸上の値で与えられ、基準図形から比例的に最大誤差発生荷重がx軸上に与えられ、最大誤差量も事前に求めた近似関数から与えられるので、まずx軸上に任意の転換点x2の場合の誤差図形を基準図形である三角形とほぼ相似に描き(これがVn’である)、任意の転換点x2の場合の誤差特性図形はP1P2に沿って傾いているので、描いた三角形の各辺のy座標を、転換点と最大荷重を結ぶ直線L1nに沿って移動させている。このようにして描いた三角形P2’Q3P1はx軸上に描いた三角形xn−Rn−x5とは相似形ではないが、実際に現れる誤差曲線である図1(a)のP2−Q3−P1を近似する三角形P2’−Q3−P1と、転換点座標、最大荷重座標、最大誤差発生座標、最大誤差量、底辺の傾きは互いに同じであるので、両者の形状と座標はほぼ一致し、図1(a)のP2Q3と図1(b)のP2’Q3及び図1(a)のP1Q3と図1(b)のP1Q3とがほぼ一致している。従って、上記のようにして、ヒステリシス誤差を補正することができる。
【0079】
次に、任意の転換点から零点に向かって荷重が減少する場合の近似誤差関数の決定法及び測定荷重の補正について、図4(a)、(b)を参照して説明する。
【0080】
零点と最大荷重点x5との間を複数等分、例えば5等分する荷重によって誤差特性を描き、続いて荷重転換点をx3にとって、x3と零点との間を複数等分、例えば5等分するx軸上の荷重x1’、x2’、x3’、x4’を算出し、荷重零の状態から荷重をx3まで増加させ、続いてx4’、x3’・・・x1’に相当する荷重をx3から減少方向に与えながら、零点までのヒステリシス誤差特性を描く。これらの特性は、図4(a)において、包絡線M11、M12及び荷重x3の点P2から零点0に向かう誤差出力をプロットした包絡線M42、M41で表される。
【0081】
ここで、転換点P2と零点0との間に直線を引くと、荷重x3から零までの減少によって描かれる誤差特性P2−Q3−0の曲線と、上記直線とによって囲われる図形V2は、最大荷重x5から零までの減少によって描かれるP1−Q2−0とx軸のラインとで囲われる図形V1との間で、経験的にほぼ相似形に近い関係が成り立つことがわかっている。
【0082】
以下、荷重増加の場合と同様に、最大誤差Q3U3=s2dを求める。x3を転換点とする場合の最大誤差s2dが求められると、任意の転換点xnから零へ向かって荷重が減少する場合に発生する最大誤差を求めるようにするために、ロードセル調査段階で得た転換点を最大荷重x5、x3と、荷重を減少させた場合に得られた最大誤差測定値s0d、s2d(図3(a)参照)との関係からf21(x)またはf22(x)を求める。これらの関数によって任意の転換点xnに対する荷重減少の場合の推定最大誤差sndを得る。
【0083】
図4(b)は任意の荷重xnを転換点として、荷重が減少する場合にx=xmで最大誤差を発生する状態を示したものである。荷重増加の場合と同様に、任意の転換点xnの場合に、最大誤差を発生する荷重xmは、この実施の形態ではx3としたが、xpとして、図形V1とV2とがほぼ相似図形であることにより、
0Tm/0T1=0Tn/0P1
が成立する。0Tm=xm、0T1=xp、0Tn=xn、0P1=x5であるので、最大誤差発生座標xmは、
xm=xp*xn/x5
で求められる。
【0084】
増加の場合と同様にして、M21’、M22’は、
M21n’:y=(snd/xm)*x
M22n’:y=−{snd/(xn−xm)}*x+{snd*xn/(xnーxm)}
で求められる。
【0085】
図4(a)における任意の荷重xnにおける誤差出力P2は、図4(b)における荷重増加時の近似誤差直線Q1P1に沿って現れると推定されるので、xnにおける直線P1Q1のy座標をP2’としてP2の代わりに使用する。そして、転換点xnから荷重が減少したとき発生する誤差は、零点とP2’とを結んだ直線に沿って形成される2本の直線P2’Q3と、Q30とからなる近似誤差特性関数に対応して現れると見なす。即ち、荷重減少の場合には、任意の転換点と零点とを結ぶ直線に沿って現れるとする。
【0086】
荷重増加に応じて誤差出力は先に決定した現在の近似特性関数である直線Q1P1に沿って発生しているので、転換点xnのy座標は、現在の近似特性関数とx=xnから決定される。現在の近似特性関数は、M12を表す式であって、この式にx=xnを代入してyの値ynを求める。
【0087】
P2’0をL2nとすると、L2nは
L2n:y=−(yn/xn)*x
と表される。
【0088】
直線M21n、M22nは、
M21n=M21n’+L2n
M22n=M22n’+L2n
であるので、
M21n:y21(x)={yn/xn+snd/xm}*x
M22n:y22(x)={yn/xn−snd/(xn−xm)}*x+snd*xn/(xn−xm)
で表される。
【0089】
補償値enは、測定荷重xが
(1)0≦x≦xmのとき、en=y21(x)
(2)xm<x<xnのとき、en=y22(x)
と求められるので、補償荷重xfは、測定荷重xに対して
xf=x+en
によって表される。
【0090】
以上のように、補償対象ロードセルのヒステリシス誤差特性を荷重増加時には、一方の転換点を零点または任意の既知の荷重とし、他方の転換点を最大荷重として、それらの間で荷重が増加するときに描かれるヒステリシス誤差特性をもって、また荷重減少時には、一方の転換点を最大荷重または任意の既知の荷重として、他方の転換点を零点として、それらの間で荷重が減少するとき描かれるヒステリシス誤差特性をもって作成される推定式によって荷重増加または減少時における任意の荷重を転換点とするヒステリシス誤差特性を表す誤差特性関数を決定する過程を説明したが、荷重増加時及び減少時における推定式を作成する過程で、転換点として、零点、最大荷重を用いる代わりに、別の既知の任意の荷重を転換点として使用することもできる。なお、上記の説明において使用された荷重は、全て経験荷重である。
【0091】
次に、近似誤差関数を多項式、例えば2次式で近似する第2の実施の形態について、図5(a)、(b)を参照して説明する。図5(a)は、零点、最大荷重を転換点としてヒステリシス誤差特性曲線を4本の2次曲線によって近似した場合を示している。
【0092】
直線による近似誤差関数を求めた場合と同様に、ロードセルの調整段階において任意の転換点xnにおける最大誤差を推定する関数f11(x)またはf12(x)を作成する。また、最大誤差を発生する荷重xmも、上述した直線による近似の場合と同様に求める。これらの処理によって任意の転換点xnに対する最大誤差発生荷重xmと最大誤差snの値が決定される。最大誤差の座標は、図5(b)のRnで示される。
【0093】
任意の転換点に対する最大誤差Rnの座標が決定されると、2次曲線M11n’とM12n’とを、次のようにして定める。2点の座標値のみで二次曲線を定める場合には、
(1)M11n’は(xn、0)と(xm、−sn)とを通り、(xm、−sn)で極値をとる2次曲線である。
(2)M12n’は(xm、−sn)と(x5、0)とを通り、(x5、0)で極値をとる2次曲線である。
と決定し、M11n’、M12n’の一般式をf(x)=ax2+bx+cとおいて、(1)、(2)の場合について転換点が検出されるごとに、(1)の場合なら、 f(xn)=axn2+bxn+c=0
f(xm)=axm2+bxm+c=−sn
また f’(x)=2ax+bであるので、
f’(xm)=2axm+b=0
の3元1次連立方程式を解いて、係数a、b、cを求めて、M11n’、M12n’を決定する。
【0094】
直線L1nは、第1の実施の形態における直線によって近似した場合と同様に求められ、測定値を補償するための近似誤差関数M11n、M12nも、同様にして求められる。M21n、M22nも同様にして求められる。
【0095】
M11やM11nは、下に凸の二次曲線であり、M12やM12nは、上に凸の二次曲線である。このように同じ次数の曲線であっても、上に凸の曲線と下に凸の曲線とを用いることによって、ヒステリシス誤差にマッチした近似誤差関数を得ることができる。
【0096】
なお、図5(a)のQ1を最大誤差発生座標とすると、ヒステリシス誤差曲線0−Q1−P1を近似する場合、曲線0−Q1が更に直線に近い形状であれば、0Q1を第1の実施の形態で述べたように一次関数である直線によって近似し、Q1−P1が上に凸の曲線形状に近い形状であれば、この間を第2の実施の形態において述べたように上に凸の二次関数である曲線で近似させることによって、全体の曲線を各部の特性に応じた、次数の異なる誤差近似関数によって表すことによって、より精度の高い補正が可能となる。
【0097】
第3の実施の形態として、転換点を零点と最大荷重としたとき、図6(a)のヒステリシス誤差特性を示すロードセルに対する別の補償のための近似誤差関数について、図6及び図7を参照して説明する。図6(a)は、零点と最大荷重とを4分割して、ヒステリシス誤差特性を調整段階でプロットした図で、荷重増加について述べると、x1、x2、x3においてそれぞれs1z、s2z、s3zのヒステリシス誤差量が測定されたとする。
【0098】
図6(b)は、図6(a)の特性を示すロードセルに対して、調整段階において、負荷荷重を一旦最大荷重x4まで印加し、x4を転換点としてQ2点まで負荷荷重を減少させ、Q2点の荷重x2を転換点として、荷重x2から最大荷重x4まで4等分する荷重x1’、x2’、x3’を掛けたときに描かれるヒステリシス誤差特性をプロットしたものである。
【0099】
転換点を零点とした図6(a)と、転換点をx2とした図6(b)の特性から、任意の荷重xnが転換点の時の誤差特性を推定する。即ち、図6(c)、(d)、(e)は荷重増加時の場合で、転換点が零点と最大荷重、転換点がx2と最大荷重とした場合の、これら2つの転換点の間を4等分する荷重位置において発生する誤差の値から、任意の転換点xnと最大荷重との間を4等分する荷重における発生誤差を推定するためのグラフである。
【0100】
f31(x)は、(x、y)の座標が(0、s1z)、(x2、s1a)、(x4、0)を通る2次曲線として決定される。f32(x)は、(x、y)の座標が(0、s2z)、(x2、s2a)、(x4、0)を通る2次曲線として決定される。f33(x)は(x、y)の座標が(0、s3z)、(x2、s3a)、(x4、0)を通る2次曲線として決定される。f31(x)乃至f33(x)は、ax2+bx+cとして表され、各係数a、b、cが、f31(x)乃至f33(x)それぞれにおいて決定される。
【0101】
図6(c)は、荷重変化範囲の1/4等分目の誤差を推定するためのものであり、図6(d)は、荷重変化範囲の2/4等分目の誤差を推定するためのものであり、図6(e)は、荷重変化範囲の3/4等分目の誤差を推定するためのものである。
【0102】
ロードセル使用段階において、例えば任意の荷重xnが荷重減少から増加への転換点であるとすると、荷重減少時の近似誤差関数とxnとによりP2’の転換点座標が決定される。
【0103】
またxnが決定されると、xnから最大荷重までを4等分する荷重x1n、x2n、x3nを算出する。続いて、荷重x1nに対応する誤差を図6(c)から求め、s1nと決定する。同様に、x2n、x3nに対応する誤差を図6(d)、(e)からs2n、s3nと決定する。これらによって、(x1n、−s1n)、(x2n、−s2n)、(x3n、−s3n)の座標を決定する。
【0104】
次に、P2’P1を結ぶ直線L1nを求める。図7に示すように、x軸上で、(xn、0)と(x1n、−s1n)とを結ぶ直線M1n’、(x1n、−s1n)と(x2n、−s2n)とを結ぶ直線M2n’、(x2n、−s2n)と(x3n、−s3n)とを結ぶ直線M3n’、(x3n、−s3n)と(x4、0)とを結ぶ直線M4n’を表す直線式を求める。それぞれの直線式に対して上記のL1nを加算して、誤差補償のための近似誤差関数である直線M1n、M2n、M3n、M4nを求める。以下、これら直線を用いて誤差量を推定し、この誤差量とそのときのロードセルの出力信号との代数和を求めることによって、ヒステリシス誤差を補正することができる。
【0105】
上記の説明は増加の場合であるが、減少の場合でも同様にして、ヒステリシス誤差を補償することができる。
【0106】
【実施例】
図8に、第1乃至第3の実施の形態におけるヒステリシス誤差を補正するためのヒステリシス誤差補正装置1のブロック図を示す。この装置1では、ロードセル2からのアナログ計量信号が、増幅器4によって増幅される。増幅アナログ計量信号は、フィルタ6によって不要成分が除去され、A/D変換器8によってデジタル計量信号に変換される。このデジタル計量信号が、入出力装置10を介して制御手段、例えばCPU12に供給される。CPU12には、記憶手段、例えばメモリ14が接続されている。メモリ14には、ROMが含まれ、これに記憶されているプログラムに従ってCPU12はデジタル計量信号を処理して、ヒステリシス誤差補正を行う。また、この処理の際に、ワーキングエリアとして使用するためのRAMや、処理中には書き換えないが、ロードセル2の仕様別データ等を記憶させておくためのEEPROMも、メモリ14に含まれている。
【0107】
また、CPU12による処理に使用するデータを設定したり、零点調整の指示や、使用モードと調整モードとの切換の指示を入出力装置10を介してCPU12に与えるための操作子、例えばキースイッチ16が設けられている。また、ロードセル10の荷重やデータ設定時に設定データを確認するための表示装置18も設けられている。
【0108】
この装置において、第1の実施の形態での処理を行う場合について説明する。まず、ロードセルの調整段階(テストモード)において、設定操作を行う。
【0109】
ロードセル2の荷重使用範囲の最小値を零点に取り、最大値をロードセル2の最大荷重に取り、これらの値を0、x5とする。そして、0とx5との間を5等分する荷重x1、x2、x3、x4と、最大荷重x5とをそれぞれ載荷可能なように基準分銅を準備する。荷重零のとき出力が零になるように、最初に零点調整し、負荷荷重x5において、ちょうどx5の値を出力し、表示装置18に表示するように、スパン調整を行う。
【0110】
x1から順にx5まで荷重を増加させ、かつx5から0まで荷重を減少させる。荷重増加時及び減少時における誤差を読みとり、図2(a)のようにグラフにプロットする。
【0111】
荷重増加時と減少時とにおける誤差の絶対値が最大である負荷荷重と誤差値とを求める。第1の実施の形態では、増加時のx2のときのy21、減少時のx3のときのy32である。
【0112】
図2(c)に示すように、0とy21、y21とx5、x5とy32、y32と0とを直線で結んで、使用する誤差近似関数の次数を決定する。第1の実施の形態のロードセルの場合、全て直線の誤差近似関数を選択するので、M11、M12、M21、M22が使用される。
【0113】
M11乃至M22の4本の直線式を、荷重増加用の近似誤差関数(M11、M12)と荷重減少用の近似誤差関数(M21、M22)として、メモリ14に記憶させる。また、それぞれの直線を使用する範囲として、M11に対して0からx2、M12に対してx2からx5、M21に対して0からx3、M22に対してx3からx5がメモリ14に記憶させる。
【0114】
荷重増加時に零と最大荷重x5との間で最大誤差を検出する荷重x2と、荷重x2と最大荷重x5との間で荷重x2と同じ比率の位置に位置する荷重x2’とを、ロードセル2に載荷可能に分銅を準備する。
【0115】
零から荷重を増加させ、最大荷重を転換点としてx2まで減少させたときの誤差出力(図1(a)のP2点)とP1とを結ぶ直線に、x2’(=T2)からx軸に垂直に延長した線分の交点をU3とし、T2U3と、x2’での誤差T2Q3とから、U3Q3=s2を決定する。
【0116】
任意の転換点xnから荷重が増加する場合の最大誤差発生荷重xmにおける最大誤差の絶対値を推定するため、(0、s0)と(x2、s2)と(x5、0)との3点を通る2次曲線y=ax2+bx+cのa、b、cを求め、図3(a)のf12(x)を決定する。
【0117】
上記と同様にして、任意の転換点からの負荷荷重が減少する場合の近似誤差関数を求めるための準備を行い、図3(a)のf22(x)を決定する。
【0118】
経験荷重状態であるか否かの判定用に条件を設定する。隣接する時系列測定データの差が、予め定めたWa以内であることが予め定めた時間Ta以上(またはA/Dサンプリングの一定回数以上)継続すると、Ta時間領域での平均荷重をロードセル2が測定荷重として経験したと判定する。
【0119】
荷重変化がWa以下である時間がTb(Tb<Ta)秒以上で、Ta未満であるときや、荷重変化がWa以上で予め定めた値Wc(Wc>Wa)未満である状態が、Tb秒以上続いたときには、疑わしいヒステリシス誤差を出力する可能性があるので、一度使用者に荷重を零に戻すことを促すための警報を発生するための境界値として、Wa、Ta、Tb、Wcがキースイッチ16によって設定される。
【0120】
次に、ロードセル2の使用段階(使用モード)について説明する。荷重負荷がない場合には、転換点は0と最大荷重x5と記憶されているので、最初に未知の荷重負荷xをロードセル2に載荷したときには、荷重xがロードセルにとって転換点零からの荷重増加方向の経験荷重であるか否かを、経験荷重の時系列メモリから判定する。なお、以下の説明では、経験荷重が入力されるとして、説明するが、上述したように、経験荷重の判定は、実際には行われている。
【0121】
少なくとも時系列に3個の経験荷重が記憶される経験荷重メモリをメモリ14内に設けてある。経験荷重が得られるごとに、経験荷重用メモリのデータは更新される。ロードセル2及び装置1に電源が供給されたとき、経験荷重用メモリには、零、最大荷重、零の順でデータが記憶されている。零点調整が行われたときも、同様にデータが記憶される。
【0122】
測定荷重が経験荷重であると判定されると、その経験荷重xが経験荷重用メモリに記憶される。その並びは、古い順に最大荷重、零、xとなる。
【0123】
経験荷重xが検出されるごとに、xの1つ前に記憶された経験荷重が転換点であるか否か判定される。古い順に最大荷重と零と並んでいる場合、荷重減少方向であると判定でき、古い順に零、xと並んでいる場合、荷重増加方向であると判定できる。従って、xの1つ前の零は転換点であると判定される。
【0124】
転換点であると判定されると、まず、この転換点の場合の最大誤差発生荷重xmを算出する。続いて、転換点荷重に対する荷重増加方向または減少方向の近似誤差補正関数を算出する。この場合、転換点が零であるので、最大誤差発生荷重xmはx2である。荷重増加方向の場合、最初から記憶されているM11、M12が使用される。その他の場合には、新たに転換点が検出されるごとに、近似誤差関数を算出する。
【0125】
算出した複数の近似誤差関数に対して、経験荷重が検出されると、該経験荷重の荷重範囲により適用する近似誤差補正関数を選択する。
(1)0≦x≦x2であれば、M11を使用する。
(2)x2<x≦x5であれば、M12を使用する。
【0126】
近似誤差関数より誤差補償値を求め、検出された経験荷重を補正する。
【0127】
さらに、次にxよりも大きい経験荷重x’が検出されたとする。経験荷重メモリは、古い順に、零、x、x’と並んでいる。零とxとの間、xとx’との間は、共に増加であるので、転換点は、依然として零点である。従って、上記の近似誤差関数がそのまま使用される。このまま、経験荷重がx5まで増加しても、上記の近似誤差関数がそのまま使用される。
【0128】
経験荷重として、x’、x5に続いて、x5よりも小さいxが検出されたとする。x’とx5との間では荷重増加であり、x5とxとの間では荷重減少であるので、x5が新たな転換点であると判定される。x5が転換である場合の近似誤差関数は、M21、M22として既に記憶されているので、xの範囲に応じてM21またはM22が用いられて、xのヒステリシス誤差の補正が行われる。
【0129】
この荷重減少方向に転換してすぐの荷重をxnとし、次にxnよりも大きい値の荷重xn’が経験荷重として検出されたとする。このとき、経験荷重メモリには、古い順位にx5、xn、xn’と記憶されている。x5からxnまで荷重は減少し、xnからxn’まで荷重は増加するので、xnが転換点であると判定される。xnにおける新たな荷重増加方向の近似誤差関数M11n、M12nが第1の実施の形態において説明したようにして、算出される。
【0130】
xn’は、荷重範囲によって、M11nかM12nのいずれかを用いて、補正される。
【0131】
以上のように、この実施例の装置によれば、荷重検出手段、例えばロードセル2が、荷重経験状態にあるか否かをCPU12による経験荷重判定手段によって判定している。経験荷重判定手段としては、ロードセルの出力信号の時系列データの変化幅が所定値以内であることが所定時間継続しているか否かを判定するものを使用することができる。このようにして順次得られる経験荷重を基に、ロードセル2の出力信号が転換点であるか否かをCPU12による転換点判定手段が判定している。この転換点の判断は、例えば経験荷重が増加方向から減少方向に変化したか、或いは減少方向から増加方向に変化したか判断することによって行える。具体的には、前々回、前回、今回の経験荷重のうち前々回と前回、前回と今回とを比較することによって行う。転換点であると判定されると、転換後の荷重の変化方向にある別の転換点に、当該転換点から向かう誤差出力特性を表す近似誤差関数を、CPU12が、近似誤差関数発生手段として発生する。この近似誤差関数は、転換点での荷重を基に設定されている。この近似誤差関数は、転換点から別の転換点までの荷重範囲を複数の区間に分け、各区間にそれぞれ1つずつ設けた複数の関数からなる。この近似誤差関数は、例えば、転換点の荷重から別の転換点までにおける最大誤差と、その最大誤差の発生荷重とを、転換点の荷重から推定し、転換点の荷重と、最大誤差発生荷重と、転換点における誤差出力と、推定最大誤差とによって、転換点から最大誤差発生荷重までの近似誤差関数を設定する。さらに、最大誤差発生荷重と別の転換点の荷重と、別の転換点での荷重と、別の転換点での誤差出力とによって、最大誤差発生点から別の転換点までの近似誤差関数を設定している。この近似誤差関数を使用して、CPU12は、転換点から別の転換点までの経験荷重が入力されると、当該経験荷重に対応する誤差出力を推定する。即ち、CPU12は誤差関数発生手段として機能する。さらに、CPU12は、この推定誤差出力とロードセル2の出力との代数和を算出して、ヒステリシス誤差を補正する。即ち、CPU12は補正手段として機能する。このようにして、高精度にヒステリシス誤差を補正することができる。
【0132】
この装置は、ヒステリシス誤差を補正するに際し、ロードセル調整段階で求めたヒステリシス誤差特性が、ロードセル使用段階で再現されるように、経験荷重と呼ぶ荷重負荷状態を定義している。荷重負荷の状態が経験荷重として定義する条件に僅かに至らない使用をされたとき、調整段階で定義した誤差とは異なる誤差を出力し、誤った誤差補正を行う危険性がある。そこで、使用者が、ロードセル使用段階において、上述したような警報を発する条件で使用した場合、即ち誤操作荷重負荷条件下で使用した場合、警報を出力し、重量測定が行えないようにする。そのため、例えば表示装置18に、測定値の表示が不能にしたり、外部に測定値を出力不能としたりする。なお、使用者が警報に応じて、負荷を除去した上で、零点調整キーを操作すると、警報が解除され、ロードセル2と装置1とに初めて電源を投入した初期状態と同じ状態に復帰させられる。また全ての負荷を除去することで、予め定めた零点近傍の領域に重量測定値が戻れば、自動的に警報を解除し、上記の初期状態に復帰させるようにしてもよい。即ち、CPU12による経験荷重判定手段は、誤操作荷重負荷条件の判定手段としても機能している。
【0133】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、誤差近似関数を複数の関数によって構成しているので、様々な特性の荷重検出手段に対しても、その特性に対応した誤差近似関数を設定することができ、正確にヒステリシス誤差特性を補償することができる。また、本発明によれば、荷重検出手段に経験荷重が負荷されているか否かを判定するように構成し、経験荷重が負荷されている状態においてヒステリシス補償を可能としているので、高精度にヒステリシス誤差を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるヒステリシス誤差の荷重の増加方向における補正法の説明図である。
【図2】同第1の実施の形態におけるヒステリシス誤差の近似曲線の決定法の説明図である。
【図3】同第1の実施の形態における転換点以後に発生する最大誤差発生量及びその発生荷重点の推定の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるヒステリシス誤差の荷重の減少方向における補正法の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるヒステリシス誤差の荷重の増加方向における補正法の説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態におけるヒステリシス誤差の荷重の増加方向における補正に使用するデータの取得法の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態におけるヒステリシス誤差の荷重の増加方向における補正法の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施例のブロック図である。
【図9】従来のヒステリシス誤差の補正法の説明図である。
【図10】図9とは異なるロードセルのヒステリシス誤差の特性図である。
【符号の説明】
2 ロードセル
12 CPU(誤差関数発生手段、補正手段)
Claims (5)
- 零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示す荷重検出手段の出力信号が入力され、この荷重検出手段への荷重が増加から減少または減少から増加へ転換する転換点が前記出力信号に基づいて検出されるごとに、それの転換方向に応じて別の転換点に向かう前記出力信号を引数とするヒステリシス誤差特性に近似した特性を有する近似誤差関数を発生する誤差関数発生手段と、
前記出力信号を入力し、それのヒステリシス誤差を前記誤差関数発生手段による前記近似誤差関数によって補正する補正手段とを、
具備し、前記誤差関数発生手段は、前記引数となる前記出力信号存在領域を複数の範囲に区分し、各区分に対応した複数の近似誤差関数を作成するヒステリシス誤差補正装置。 - 請求項1記載のヒステリシス誤差補正装置において、作成される複数の近似誤差関数は、前記荷重検出手段のヒステリシス誤差特性形状に適合するように、次数の異なる負荷荷重の関数の組合せからなるヒステリシス誤差補正装置。
- 請求項1記載のヒステリシス誤差補正装置において、作成される複数の近似誤差関数は、荷重増加または荷重減少のいずれかまたは双方の過程の中において同一次数であっても上に凸の形状を有する関数と、下に凸の形状を有する関数との組合せからなるヒステリシス誤差補正装置。
- 零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示す荷重検出手段の出力信号が入力され、この荷重検出手段への荷重が増加から減少または減少から増加へ転換する転換点が前記出力信号に基づいて検出されるごとに、それの転換方向に応じて別の転換点に向かう前記出力信号を引数とするヒステリシス誤差特性に近似した特性を有する近似誤差関数を発生する誤差関数発生手段と、
前記出力信号を入力し、それのヒステリシス誤差を前記誤差関数発生手段による前記近似誤差関数によって補正する補正手段とを、
具備し、前記荷重検出手段が荷重を物性的に経験する状態に前記荷重が前記荷重検出手段に負荷されている経験荷重状態か否かを決定する経験荷重負荷条件が設定され、前記経験荷重負荷条件を満足していることを前提として、前記転換点及び前記出力信号を決定するヒステリシス誤差補正装置。 - 零点と最大荷重との間の負荷荷重の履歴に応じてヒステリシス誤差を示す荷重検出手段の出力信号が入力され、前記荷重検出手段の調整段階における前記ヒステリシス誤差と異なるヒステリシス誤差を、前記荷重検出手段の使用段階において出力する場合を検出する誤操作荷重負荷条件が定められ、前記荷重検出手段が、前記誤操作荷重負荷条件下で使用されているか否かを判定する判定手段と、
この判定手段の判定結果を出力する出力手段とを、
具備する重量測定装置。
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