JP2004051771A - 接着剤用低屈折率樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】低屈折率であって透明性に優れ、紫外線等の活性エネルギー線を照射して速やかに硬化することが可能であり、さらにその硬化物が透明性、ガラスに対する密着性、耐溶剤性および耐熱性に優れた、主に光学用物品向けの接着剤用樹脂組成物を開発する。
【解決手段】ある特定の構造を有するフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物を合成し、これに必要に応じてカチオン重合性化合物、および光カチオン重合開始剤を含有する低屈折率樹脂組成物を調製する。
【解決手段】ある特定の構造を有するフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物を合成し、これに必要に応じてカチオン重合性化合物、および光カチオン重合開始剤を含有する低屈折率樹脂組成物を調製する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物、必要に応じてカチオン重合性化合物、および光カチオン重合開始剤を含有する低屈折率樹脂組成物、さらにはその樹脂組成物から構成されるガラス等に対する密着性の良好な活性エネルギー線硬化型接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、低屈折率高分子材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、光ファイバー、光道波路等への検討が盛んに行われている。なお、これらの光学用物品から構成される光関連部材において、接着剤は特に重要な役割を担っているものである。
一般に、接着剤用樹脂組成物は、これまで溶剤系または水系の接着剤が主に開発されて用いられてきた(例えば、特公昭47−1188号公報等)。ただし、従来の溶剤系接着剤の場合は、大量の有機溶剤を使用するため、その回収にコストを要したり、作業環境が悪化したり、さらには得られる製品の耐溶剤性の関係で、使用できるインキが限定されるという問題が生じる。水系接着剤の場合は乾燥に長時間を要し、さらに被接着物が熱に弱い材質の場合は、乾燥時の熱で被接着物が劣化し、寸法変化やカールが生じるという問題があった。また、溶剤系または水系の接着剤両方ともに、被接着物が有機溶剤または水を通さない材質の場合はさらに乾燥に時間がかかることになり、最悪の場合は溶剤または水が含まれたまま接着しないことがある。このような問題を解決するために、活性エネルギー線硬化型無溶剤でも硬化可能な接着剤用樹脂組成物が提案されている(例えば、特開平6−184498号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより速やかに硬化するため、フィルム等の接着剤等に幅広く用いられている。例えば、特開平6−184498号公報においては、(メタ)アクリル酸およびカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から成る群より選ばれた少なくとも1種とポリウレタンポリ(メタ)アクリレートからなる接着剤樹脂組成物が記載されている。ただし、上記公開公報にある接着剤用樹脂組成物をはじめ、一般的に(メタ)アクリル酸エステル化合物系で構成される活性エネルギー線硬化型接着剤用樹脂組成物は、プラスチック材料に対する接着力はそこそこあるものの、ガラス等の無機材料に対しては極端に接着力が弱くなるという傾向にあるものが多い。さらに、接着剤用樹脂組成物が光学用物品に用いられることが多くなり、光関連部材が高度化していくにつれて、光透過性等の観点から接着剤用樹脂組成物の低屈折率化が要求されることがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物を合成し、この得られたフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物と、必要に応じてカチオン重合性化合物、さらには光カチオン重合開始剤から構成される樹脂組成物を調製することによって、低屈折率であり、透明性に優れ、紫外線等の活性エネルギー線で硬化することが可能であり、さらにはその硬化物が透明性、ガラスに対する密着性、耐溶剤性および耐熱性に優れること見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
〔1〕式(1)
【0005】
【化2】
【0006】
(ここで、mは1〜4の整数であり、nは2〜4の整数である。)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物、
〔2〕カチオン重合性化合物(B)を含有することを特徴とする〔1〕に記載の樹脂組成物、
〔3〕光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物、
〔4〕用途が接着剤であることを特徴とする〔1〕ないし〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物、
に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)は、下記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物にエピクロルヒドリンを反応させることにより得ることができる。
【0008】
【化3】
【0009】
(ここで、mおよびnは、前記式(1)のものと同じものを表す。)
【0010】
前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジオール、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジオール、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジオール、1H,1H,17H,17H−パーフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサペプタデカン−1,17−ジオール、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジオール、1H,1H,15H,15H−パーフルオロ−4,8,12−トリオキサペンタデカン−1,15−ジオール、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−5,10−ジオキサテトラデカン−1,14−ジオール、1H,1H,19H,19H−パーフルオロ−5,10,15−トリオキサノナデカン−1,19−ジオール等を挙げることができる。
【0011】
本発明で用いられる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成する場合、エピクロルヒドリンの仕込量は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基1.00当量に対して2.00〜20.00当量となるように仕込むのが好ましく、より好ましくは3.00〜6.00当量となるように仕込むのがよい。なおこの反応は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基にエピクロルヒドリンが付加し、さらに水酸化ナトリウム等のアルカリを反応させることにより得ることができる。例えばこのとき用いられる水酸化ナトリウムの仕込量は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基1.00当量に対して1.00〜1.50当量であることが好ましい。また、水酸化ナトリウムは固形のまま仕込んでもよく、水溶液として仕込んでもよいが、水溶液で仕込む場合は過剰な水を反応系外へ取り除く必要があるため、なるべく25〜40重量%程度の高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いる。なお、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成する場合、反応を促進させるために、少量の水を添加するとよい。このときに添加する水の量は、エピクロルヒドリンの仕込量全体に対して、重量比で0.1〜3.0重量%とするのが好ましい。水酸化ナトリウムを仕込むと発熱があるので、水酸化ナトリウムはゆっくりと仕込むのがよい。水酸化ナトリウムを仕込む温度は30〜100℃であるのが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。水酸化ナトリウムを仕込んだ後の反応時間は30分間〜6時間が好ましく、より好ましくは1〜3時間である。反応温度は30〜100℃とするのが好ましく、より好ましくは40〜90℃とするのがよい。また反応系内に溶存酸素が多いと黄色〜褐色に着色することがあるので、水酸化ナトリウムを仕込む前に、窒素ガスを溶液中に吹き込んで溶存酸素を追い出しておくとよい。
【0012】
上記のようにして合成して得られる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)の具体例としては、例えば、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジグリシジルエーテル、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテル、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル、1H,1H,17H,17H−パーフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサペプタデカン−1,17−ジグリシジルエーテル、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテル、1H,1H,15H,15H−パーフルオロ−4,8,12−トリオキサペンタデカン−1,15−ジグリシジルエーテル、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−5,10−ジオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル、1H,1H,19H,19H−パーフルオロ−5,10,15−トリオキサノナデカン−1,19−ジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0013】
なお、本発明で用いられる前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成するのに1種類だけを使用してもよいが、得られる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)の屈折率を調整する等、必要に応じて2種類以上の前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物を原料として用いてもよく、合成して得られた2種類以上の前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を任意の割合で混合して使用してよい。
【0014】
また本発明で用いられる樹脂組成物では、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)に、必要に応じてカチオン重合性化合物(B)を含有することができる。本発明で用いられるカチオン重合性化合物(B)としては、例えば、エポキシ基を有する化合物(a)、オキセタン環を有する化合物(b)、ビニルエーテル化合物(c)等を挙げることができる。これらは単独もしくは2種以上を併用して用いても差し支えない。これら(a)〜(c)の中で、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)との相溶性、屈折率の観点から、特に芳香族環を有しない(a)のエポキシ基を有する化合物および(b)のオキセタン環を有する化合物が好んで使用される。
【0015】
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物(a)の具体例としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス−(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン環を有する化合物(b)としては、例えば、3,3−ジメチルオキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン等を挙げることができる。ビニルエーテル化合物(c)の具体例としては、例えば、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチニルビニルエーテル、1−メチル−2−プロペニルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル等を挙げることができる。なおこれらは、単独もしくは2種以上を併用して用いてもよい。
【0016】
なお上述したカチオン重合性化合物(B)の使用割合は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)100重量部に対して0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。上述したカチオン重合性化合物(B)の中でも、特にエポキシ基を有する化合物(a)を配合した場合は、本発明の樹脂組成物そのものの硬化性が向上することがある。カチオン重合性化合物(B)の使用割合が少なすぎるとカチオン重合性化合物(B)を添加する効果が得られず、逆に、カチオン重合性化合物(B)の使用割合が多すぎると屈折率が高くなり過ぎることがある。
【0017】
さらに、本発明の樹脂組成物では、光カチオン重合開始剤(C)を使用することができる。本発明で用いる光カチオン重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を照射して酸を発生するものであれば特に制限なく利用でき、その具体例としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩あるいはピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0018】
スルホニウム塩としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4’−tert−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平7−61964号、特開平8−165290号、米国特許第4231951号、米国特許第4256828号等に記載の芳香族スルホニウム塩等を挙げることができる。
【0019】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等や、特開平6−184170号、米国特許第4256828号等に記載の芳香族ヨードニウム塩等を挙げることができる。
【0020】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平6−157624号等に記載の芳香族ホスホニウム塩等を挙げることができる。またピリジニウム塩としては、例えば、特開平1−96169号、特開平5−222112号等に記載のピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0021】
これら光カチオン重合開始剤(C)の中で特に好ましいものとしては、スルホニウム塩およびヨードニウム塩を挙げることができる。また、スルホニウム塩およびヨードニウム塩は、市場より容易に入手することができる。市場より容易に入手することができる光カチオン重合開始剤(C)の具体例としては、例えばスルホニウム塩では、ユニオンカーバイド社製のCYRACURE UVI−6990(商品名)およびCYRACURE UVI−6974(商品名)、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−170(商品名)およびアデカオプトマーSP−150(商品名)等を挙げることができ、またヨードニウム塩では、ローヌプーラン社製のNO 2074(商品名)等を挙げることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物での光カチオン重合開始剤(C)の使用割合は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)あるいは前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)およびカチオン重合性化合物(B)の混合物100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部となるように用いるのが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。また上述の光カチオン重合開始剤(C)が固体である場合、これら光カチオン重合開始剤(C)は一般に前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)およびカチオン重合性化合物(B)に溶解しにくいことが多い。このような場合は、光カチオン重合開始剤(C)をプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンのようなカチオン重合性希釈剤にあらかじめ希釈して配合するとよい。なお、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンのようなカチオン重合性希釈剤の使用量は、光カチオン重合開始剤(C)の濃度が25〜60重量%になるようにして用いるのが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)成分、必要に応じてカチオン重合性化合物(B)成分、および光カチオン重合開始剤(C)成分を混合、溶解、加熱、分散等を実施することにより調製することができる。なお、本発明で得られる樹脂組成物の屈折率は25℃で1.45以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物がカチオン重合性化合物(B)成分、光カチオン重合開始剤(C)成分を含む場合、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)および光カチオン重合開始剤(C)の樹脂組成物中の好ましい重量組成比は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A):カチオン重合性化合物(B):光カチオン重合開始剤(C)=100:0.01〜30:0.1〜13であり、より好ましい重量組成比は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A):カチオン重合性化合物(B):光カチオン重合開始剤(C)=100:1〜10:1〜5.5である。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、さらに、酸化防止剤、難燃剤、耐電防止剤、充填剤、レベリング剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤等を混合することも可能である。ただし、本発明の樹脂組成物の保存安定性および硬化性を著しく悪化させるような酸性および塩基性化合物は配合できない。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ガラス、金属、プラスチック等あらゆる基材の接着に用いることが可能であるが、とりわけガラス基材の接着に効果的である。本発明の樹脂組成物をガラス基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、バーコーター、アプリケーター、ロールコーターあるいはロールブラシ等により直接塗布する方法、エアースプレーまたはエアースプレー塗装機等によるスプレー塗布法、シャワーコーターまたはカーテンフローコーター等による流し塗り法(フローコート)、浸漬法、キャスティング法、スピナーコーティング法等を用いることができる。なお、前記塗布法は、基材の材質、形状あるいは用途等に応じて適宜使い分けることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、その硬化物を得ることができる。なお、本発明の樹脂組成物を硬化する場合に用いられる光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を使用することができる。また本発明の樹脂組成物を紫外線照射により硬化する場合、硬化に必要な紫外線照射量は300〜3000mJ/cm2程度でよい。さらに活性エネルギー線を照射して得られた硬化物を、重合による硬化を完結させる目的で、さらに50〜250℃に加熱処理することもできる。加熱処理する場合、本発明の樹脂組成物を塗布する基材や得られる硬化物の耐熱性等を考慮し、100℃以上の高温で加熱処理する場合は、なるべく短時間で加熱処理を行う方が好ましい。
【0028】
なお本発明で得られる樹脂組成物は接着剤として好適に使用することができるが、基材上に均一に塗布した後、さらにその上から基材を張り合わせることなく紫外線等の活性エネルギー線を照射しても、硬化物表面にべとつきがなく、基材との密着性に優れ、透明で均一な硬化膜を得ることができるので、ガラス、金属、プラスチック、木材、セラミック等の基材のコーティング剤としても用いることができる。また本発明の樹脂組成物は屈折率が低く、光伝送損失が低いため、光通信用物品の接着剤として好適に使用することができ、さらには光学用物品の接着剤の他、その低屈折率を利用したLED(Light emittin diode)用封止剤、光学用レンズの保護コート剤等にも用いることができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
前記式(1)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)の合成例
合成例1:
1Lのセパラブルフラスコに、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジオール200.0g、エピクロルヒドリン451.4gおよび水 4.6gを入れ、窒素ガスを吹き込みながら15分間攪拌後、そのまま70℃まで昇温した。混合溶液が透明になってから、この混合溶液に水酸化ナトリウム39.8gを、発熱に注意しながら85℃を越えないように1時間かけてゆっくり仕込んだ。水酸化ナトリウム仕込み終了後、70〜80℃の温度でそのまま2時間攪拌し、その後、40℃以下まで冷却した。
この反応液に、水200mLを仕込み、15分間攪拌後、1Lの分液ロートに移液して30分間放置し、下層の反応物層を取り出して1L4つ口フラスコに移液した。この操作を繰り返し、水層のpHが6〜7であること確認してから反応物層を1Lナス型フラスコに移液した。残存するエピクロルヒドリンを減圧留去後、ろ過することにより無色〜微黄色透明な液体236.4gを得た(収率92.8%)。得られた反応物の25℃における屈折率は1.3558であり、25℃における粘度は36mPa・sであり、エポキシ当量は328であった。なお、粘度はE型粘度計で測定し、屈折率はアッベ屈折率計{型番:1T、(株)アタゴ製}で測定し、エポキシ当量はJIS K 7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量試験方法」に準拠して測定した(後述の合成例及び実施例においても同様)。得られた反応物の主成分は、下記構造式(3)で表される化合物:1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテルである。
【0031】
【化4】
【0032】
合成例2:
1Lのセパラブルフラスコに、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル 200.0g、エピクロルヒドリン 362.8gおよび水 3.6gを入れ、窒素ガスを吹き込みながら15分間攪拌後、そのまま70℃まで昇温した。混合溶液が透明になってから、この混合溶液に水酸化ナトリウム 32.0gを発熱に注意しながら85℃を越えないように1時間かけてゆっくり仕込んだ。以下、合成例1と同様な操作を実施することにより、無色〜微黄色透明な液体 228.9gを得た(収率91.5%)。得られた反応物の25℃における屈折率は1.3462であり、25℃における粘度は32mPa・sであり、エポキシ当量は389であった。得られた反応物の主成分は、下記構造式(4)で表される化合物:1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテルである。
【0033】
【化5】
【0034】
樹脂組成物の実施例
実施例1:
合成例1で得た前記式(3)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)50.0gにCYRACURE UVI−6990(トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩のプロピレンカーボネート50重量%希釈品)3.0gを配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3646であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま100℃で30分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0035】
実施例2:
合成例2で得た前記式(4)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)50.0gにCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3556であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま100℃で30分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0036】
実施例3:
合成例1で得た前記式(3)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)47.5g、セロキサイド2021{ダイセル化学工業(株)製、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート}2.5gおよびCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3713であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま120℃で20分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0037】
実施例4:
合成例2で得た前記式(4)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)45.0g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン5.0gおよびCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3655であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま120℃で20分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0038】
硬化膜の評価の実施例
実施例5:ガラスに対する密着性試験
実施例1で得られた硬化膜に、1mmおきに10本のラインをカッターナイフで引き、さらに直角に1mmおきで10本、カッターナイフでラインを引いて1mm×1mmの碁盤目を100個作成し、JIS K 5400「塗料一般試験方法」に準拠してセロテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったところ、100/100の密着性を示した。なお、実施例2〜4の硬化膜についても同様の試験を実施したところ、すべての硬化膜で100/100の密着性を示した。
また、実施例1で調製した樹脂組成物を石英ガラス板上にキャスティングし、その上からさらに石英ガラスを重ね、高圧水銀灯で石英ガラス上から2000mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、得られたサンプルピースの石英ガラスと石英ガラスの間に金属製ヘラを差し込み、木槌でヘラの柄の部分を軽くたたいて石英ガラス同士を剥離しようとしたところ、2枚の石英ガラス板が破壊した。ただし硬化膜の部分は比較的軟質であった。また、紫外線を照射したサンプルピースをさらにそのまま100℃で30分間加熱してサンプルピースを作成した場合、得られたサンプルピースの石英ガラスと石英ガラスの間に金属製ヘラを差し込むことはできなかった。同様の試験を実施例2〜4で得た樹脂組成物についても同じ試験を実施してみたところ、同様の結果が得られた。ただし、紫外線を照射することなしに100℃で30分間加熱したものは、硬化していなかったので簡単に石英ガラス同士が剥離した。
【0039】
実施例6:耐溶剤性試験
実施例1〜4で得た硬化膜の表面を、メチルエチルケトンを浸み込ませたガーゼで往復50回摩擦し、硬化膜表面の状況を観察したところ、すべての硬化膜において表面にまったく変化が見られなかった。
【0040】
実施例7:耐熱性試験
実施例1〜4で得た硬化膜を、200℃で2時間加熱し、加熱前後の着色の程度を色差計{型番:マクベスCE−3000、コルモーゲン社製}にて測定した。加熱前後の色差値の差を測定したところ、実施例1の硬化膜で0.47、実施例2の硬化膜で0.49、実施例3の硬化膜で0.38、実施例4の硬化膜で0.41という結果が得られた。
【0041】
実施例1〜4の結果より、本発明の樹脂組成物は無色透明で低屈折率であり、紫外線の照射により速やかに硬化することが判った。さらに紫外線を照射後、加熱を施すことにより、本発明の樹脂組成物の硬化を促進することが可能である。また本発明の樹脂組成物の硬化物は透明性に優れ、さらに実施例5〜7の結果より、ガラスに対する密着性、耐溶剤性、耐熱性に優れるという本発明が目的とする硬化物にとって好ましい結果が得られた。
【0042】
【発明の効果】
実施例1〜4の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は透明性に優れる上に低屈折率であり、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより速やかに硬化することが可能である。また、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は透明性に優れ、実施例5の結果よりガラスに対する密着性も良好であることから、特に材質がガラスである光学用物品向けの活性エネルギー線硬化型接着剤として使用することができる。さらに、実施例6および実施例7の結果より、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は耐溶剤性、耐熱性にも優れることから、本発明の樹脂組成物は液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、光ファイバー、光道波路等のクリアーコーティング剤としても有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物、必要に応じてカチオン重合性化合物、および光カチオン重合開始剤を含有する低屈折率樹脂組成物、さらにはその樹脂組成物から構成されるガラス等に対する密着性の良好な活性エネルギー線硬化型接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、低屈折率高分子材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、光ファイバー、光道波路等への検討が盛んに行われている。なお、これらの光学用物品から構成される光関連部材において、接着剤は特に重要な役割を担っているものである。
一般に、接着剤用樹脂組成物は、これまで溶剤系または水系の接着剤が主に開発されて用いられてきた(例えば、特公昭47−1188号公報等)。ただし、従来の溶剤系接着剤の場合は、大量の有機溶剤を使用するため、その回収にコストを要したり、作業環境が悪化したり、さらには得られる製品の耐溶剤性の関係で、使用できるインキが限定されるという問題が生じる。水系接着剤の場合は乾燥に長時間を要し、さらに被接着物が熱に弱い材質の場合は、乾燥時の熱で被接着物が劣化し、寸法変化やカールが生じるという問題があった。また、溶剤系または水系の接着剤両方ともに、被接着物が有機溶剤または水を通さない材質の場合はさらに乾燥に時間がかかることになり、最悪の場合は溶剤または水が含まれたまま接着しないことがある。このような問題を解決するために、活性エネルギー線硬化型無溶剤でも硬化可能な接着剤用樹脂組成物が提案されている(例えば、特開平6−184498号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより速やかに硬化するため、フィルム等の接着剤等に幅広く用いられている。例えば、特開平6−184498号公報においては、(メタ)アクリル酸およびカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物から成る群より選ばれた少なくとも1種とポリウレタンポリ(メタ)アクリレートからなる接着剤樹脂組成物が記載されている。ただし、上記公開公報にある接着剤用樹脂組成物をはじめ、一般的に(メタ)アクリル酸エステル化合物系で構成される活性エネルギー線硬化型接着剤用樹脂組成物は、プラスチック材料に対する接着力はそこそこあるものの、ガラス等の無機材料に対しては極端に接着力が弱くなるという傾向にあるものが多い。さらに、接着剤用樹脂組成物が光学用物品に用いられることが多くなり、光関連部材が高度化していくにつれて、光透過性等の観点から接着剤用樹脂組成物の低屈折率化が要求されることがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物を合成し、この得られたフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物と、必要に応じてカチオン重合性化合物、さらには光カチオン重合開始剤から構成される樹脂組成物を調製することによって、低屈折率であり、透明性に優れ、紫外線等の活性エネルギー線で硬化することが可能であり、さらにはその硬化物が透明性、ガラスに対する密着性、耐溶剤性および耐熱性に優れること見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
〔1〕式(1)
【0005】
【化2】
【0006】
(ここで、mは1〜4の整数であり、nは2〜4の整数である。)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)を含有することを特徴とする樹脂組成物、
〔2〕カチオン重合性化合物(B)を含有することを特徴とする〔1〕に記載の樹脂組成物、
〔3〕光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の樹脂組成物、
〔4〕用途が接着剤であることを特徴とする〔1〕ないし〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物、
に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)は、下記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物にエピクロルヒドリンを反応させることにより得ることができる。
【0008】
【化3】
【0009】
(ここで、mおよびnは、前記式(1)のものと同じものを表す。)
【0010】
前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジオール、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジオール、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジオール、1H,1H,17H,17H−パーフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサペプタデカン−1,17−ジオール、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジオール、1H,1H,15H,15H−パーフルオロ−4,8,12−トリオキサペンタデカン−1,15−ジオール、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−5,10−ジオキサテトラデカン−1,14−ジオール、1H,1H,19H,19H−パーフルオロ−5,10,15−トリオキサノナデカン−1,19−ジオール等を挙げることができる。
【0011】
本発明で用いられる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成する場合、エピクロルヒドリンの仕込量は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基1.00当量に対して2.00〜20.00当量となるように仕込むのが好ましく、より好ましくは3.00〜6.00当量となるように仕込むのがよい。なおこの反応は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基にエピクロルヒドリンが付加し、さらに水酸化ナトリウム等のアルカリを反応させることにより得ることができる。例えばこのとき用いられる水酸化ナトリウムの仕込量は、前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物の末端ヒドロキシル基1.00当量に対して1.00〜1.50当量であることが好ましい。また、水酸化ナトリウムは固形のまま仕込んでもよく、水溶液として仕込んでもよいが、水溶液で仕込む場合は過剰な水を反応系外へ取り除く必要があるため、なるべく25〜40重量%程度の高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いる。なお、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成する場合、反応を促進させるために、少量の水を添加するとよい。このときに添加する水の量は、エピクロルヒドリンの仕込量全体に対して、重量比で0.1〜3.0重量%とするのが好ましい。水酸化ナトリウムを仕込むと発熱があるので、水酸化ナトリウムはゆっくりと仕込むのがよい。水酸化ナトリウムを仕込む温度は30〜100℃であるのが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。水酸化ナトリウムを仕込んだ後の反応時間は30分間〜6時間が好ましく、より好ましくは1〜3時間である。反応温度は30〜100℃とするのが好ましく、より好ましくは40〜90℃とするのがよい。また反応系内に溶存酸素が多いと黄色〜褐色に着色することがあるので、水酸化ナトリウムを仕込む前に、窒素ガスを溶液中に吹き込んで溶存酸素を追い出しておくとよい。
【0012】
上記のようにして合成して得られる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)の具体例としては、例えば、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジグリシジルエーテル、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテル、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル、1H,1H,17H,17H−パーフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサペプタデカン−1,17−ジグリシジルエーテル、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−4,8−ジオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテル、1H,1H,15H,15H−パーフルオロ−4,8,12−トリオキサペンタデカン−1,15−ジグリシジルエーテル、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−5,10−ジオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル、1H,1H,19H,19H−パーフルオロ−5,10,15−トリオキサノナデカン−1,19−ジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0013】
なお、本発明で用いられる前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を合成するのに1種類だけを使用してもよいが、得られる前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)の屈折率を調整する等、必要に応じて2種類以上の前記式(2)で表されるフッ素原子含有ジオール化合物を原料として用いてもよく、合成して得られた2種類以上の前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)を任意の割合で混合して使用してよい。
【0014】
また本発明で用いられる樹脂組成物では、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)に、必要に応じてカチオン重合性化合物(B)を含有することができる。本発明で用いられるカチオン重合性化合物(B)としては、例えば、エポキシ基を有する化合物(a)、オキセタン環を有する化合物(b)、ビニルエーテル化合物(c)等を挙げることができる。これらは単独もしくは2種以上を併用して用いても差し支えない。これら(a)〜(c)の中で、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)との相溶性、屈折率の観点から、特に芳香族環を有しない(a)のエポキシ基を有する化合物および(b)のオキセタン環を有する化合物が好んで使用される。
【0015】
本発明で用いられるエポキシ基を有する化合物(a)の具体例としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス−(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン環を有する化合物(b)としては、例えば、3,3−ジメチルオキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン等を挙げることができる。ビニルエーテル化合物(c)の具体例としては、例えば、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチニルビニルエーテル、1−メチル−2−プロペニルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル等を挙げることができる。なおこれらは、単独もしくは2種以上を併用して用いてもよい。
【0016】
なお上述したカチオン重合性化合物(B)の使用割合は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)100重量部に対して0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。上述したカチオン重合性化合物(B)の中でも、特にエポキシ基を有する化合物(a)を配合した場合は、本発明の樹脂組成物そのものの硬化性が向上することがある。カチオン重合性化合物(B)の使用割合が少なすぎるとカチオン重合性化合物(B)を添加する効果が得られず、逆に、カチオン重合性化合物(B)の使用割合が多すぎると屈折率が高くなり過ぎることがある。
【0017】
さらに、本発明の樹脂組成物では、光カチオン重合開始剤(C)を使用することができる。本発明で用いる光カチオン重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を照射して酸を発生するものであれば特に制限なく利用でき、その具体例としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩あるいはピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0018】
スルホニウム塩としては、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4’−tert−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平7−61964号、特開平8−165290号、米国特許第4231951号、米国特許第4256828号等に記載の芳香族スルホニウム塩等を挙げることができる。
【0019】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等や、特開平6−184170号、米国特許第4256828号等に記載の芳香族ヨードニウム塩等を挙げることができる。
【0020】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平6−157624号等に記載の芳香族ホスホニウム塩等を挙げることができる。またピリジニウム塩としては、例えば、特開平1−96169号、特開平5−222112号等に記載のピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0021】
これら光カチオン重合開始剤(C)の中で特に好ましいものとしては、スルホニウム塩およびヨードニウム塩を挙げることができる。また、スルホニウム塩およびヨードニウム塩は、市場より容易に入手することができる。市場より容易に入手することができる光カチオン重合開始剤(C)の具体例としては、例えばスルホニウム塩では、ユニオンカーバイド社製のCYRACURE UVI−6990(商品名)およびCYRACURE UVI−6974(商品名)、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−170(商品名)およびアデカオプトマーSP−150(商品名)等を挙げることができ、またヨードニウム塩では、ローヌプーラン社製のNO 2074(商品名)等を挙げることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物での光カチオン重合開始剤(C)の使用割合は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)あるいは前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)およびカチオン重合性化合物(B)の混合物100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部となるように用いるのが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。また上述の光カチオン重合開始剤(C)が固体である場合、これら光カチオン重合開始剤(C)は一般に前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)およびカチオン重合性化合物(B)に溶解しにくいことが多い。このような場合は、光カチオン重合開始剤(C)をプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンのようなカチオン重合性希釈剤にあらかじめ希釈して配合するとよい。なお、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンのようなカチオン重合性希釈剤の使用量は、光カチオン重合開始剤(C)の濃度が25〜60重量%になるようにして用いるのが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)成分、必要に応じてカチオン重合性化合物(B)成分、および光カチオン重合開始剤(C)成分を混合、溶解、加熱、分散等を実施することにより調製することができる。なお、本発明で得られる樹脂組成物の屈折率は25℃で1.45以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物がカチオン重合性化合物(B)成分、光カチオン重合開始剤(C)成分を含む場合、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A)、カチオン重合性化合物(B)および光カチオン重合開始剤(C)の樹脂組成物中の好ましい重量組成比は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A):カチオン重合性化合物(B):光カチオン重合開始剤(C)=100:0.01〜30:0.1〜13であり、より好ましい重量組成比は、前記式(1)で表されるフッ素原子含有グリシジルエーテル化合物(A):カチオン重合性化合物(B):光カチオン重合開始剤(C)=100:1〜10:1〜5.5である。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、さらに、酸化防止剤、難燃剤、耐電防止剤、充填剤、レベリング剤、安定剤、補強剤、艶消し剤、研削剤等を混合することも可能である。ただし、本発明の樹脂組成物の保存安定性および硬化性を著しく悪化させるような酸性および塩基性化合物は配合できない。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ガラス、金属、プラスチック等あらゆる基材の接着に用いることが可能であるが、とりわけガラス基材の接着に効果的である。本発明の樹脂組成物をガラス基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、バーコーター、アプリケーター、ロールコーターあるいはロールブラシ等により直接塗布する方法、エアースプレーまたはエアースプレー塗装機等によるスプレー塗布法、シャワーコーターまたはカーテンフローコーター等による流し塗り法(フローコート)、浸漬法、キャスティング法、スピナーコーティング法等を用いることができる。なお、前記塗布法は、基材の材質、形状あるいは用途等に応じて適宜使い分けることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、その硬化物を得ることができる。なお、本発明の樹脂組成物を硬化する場合に用いられる光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を使用することができる。また本発明の樹脂組成物を紫外線照射により硬化する場合、硬化に必要な紫外線照射量は300〜3000mJ/cm2程度でよい。さらに活性エネルギー線を照射して得られた硬化物を、重合による硬化を完結させる目的で、さらに50〜250℃に加熱処理することもできる。加熱処理する場合、本発明の樹脂組成物を塗布する基材や得られる硬化物の耐熱性等を考慮し、100℃以上の高温で加熱処理する場合は、なるべく短時間で加熱処理を行う方が好ましい。
【0028】
なお本発明で得られる樹脂組成物は接着剤として好適に使用することができるが、基材上に均一に塗布した後、さらにその上から基材を張り合わせることなく紫外線等の活性エネルギー線を照射しても、硬化物表面にべとつきがなく、基材との密着性に優れ、透明で均一な硬化膜を得ることができるので、ガラス、金属、プラスチック、木材、セラミック等の基材のコーティング剤としても用いることができる。また本発明の樹脂組成物は屈折率が低く、光伝送損失が低いため、光通信用物品の接着剤として好適に使用することができ、さらには光学用物品の接着剤の他、その低屈折率を利用したLED(Light emittin diode)用封止剤、光学用レンズの保護コート剤等にも用いることができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
前記式(1)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)の合成例
合成例1:
1Lのセパラブルフラスコに、1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジオール200.0g、エピクロルヒドリン451.4gおよび水 4.6gを入れ、窒素ガスを吹き込みながら15分間攪拌後、そのまま70℃まで昇温した。混合溶液が透明になってから、この混合溶液に水酸化ナトリウム39.8gを、発熱に注意しながら85℃を越えないように1時間かけてゆっくり仕込んだ。水酸化ナトリウム仕込み終了後、70〜80℃の温度でそのまま2時間攪拌し、その後、40℃以下まで冷却した。
この反応液に、水200mLを仕込み、15分間攪拌後、1Lの分液ロートに移液して30分間放置し、下層の反応物層を取り出して1L4つ口フラスコに移液した。この操作を繰り返し、水層のpHが6〜7であること確認してから反応物層を1Lナス型フラスコに移液した。残存するエピクロルヒドリンを減圧留去後、ろ過することにより無色〜微黄色透明な液体236.4gを得た(収率92.8%)。得られた反応物の25℃における屈折率は1.3558であり、25℃における粘度は36mPa・sであり、エポキシ当量は328であった。なお、粘度はE型粘度計で測定し、屈折率はアッベ屈折率計{型番:1T、(株)アタゴ製}で測定し、エポキシ当量はJIS K 7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量試験方法」に準拠して測定した(後述の合成例及び実施例においても同様)。得られた反応物の主成分は、下記構造式(3)で表される化合物:1H,1H,11H,11H−パーフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジグリシジルエーテルである。
【0031】
【化4】
【0032】
合成例2:
1Lのセパラブルフラスコに、1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテル 200.0g、エピクロルヒドリン 362.8gおよび水 3.6gを入れ、窒素ガスを吹き込みながら15分間攪拌後、そのまま70℃まで昇温した。混合溶液が透明になってから、この混合溶液に水酸化ナトリウム 32.0gを発熱に注意しながら85℃を越えないように1時間かけてゆっくり仕込んだ。以下、合成例1と同様な操作を実施することにより、無色〜微黄色透明な液体 228.9gを得た(収率91.5%)。得られた反応物の25℃における屈折率は1.3462であり、25℃における粘度は32mPa・sであり、エポキシ当量は389であった。得られた反応物の主成分は、下記構造式(4)で表される化合物:1H,1H,14H,14H−パーフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1,14−ジグリシジルエーテルである。
【0033】
【化5】
【0034】
樹脂組成物の実施例
実施例1:
合成例1で得た前記式(3)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)50.0gにCYRACURE UVI−6990(トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩のプロピレンカーボネート50重量%希釈品)3.0gを配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3646であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま100℃で30分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0035】
実施例2:
合成例2で得た前記式(4)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)50.0gにCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3556であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま100℃で30分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0036】
実施例3:
合成例1で得た前記式(3)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)47.5g、セロキサイド2021{ダイセル化学工業(株)製、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート}2.5gおよびCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3713であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま120℃で20分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0037】
実施例4:
合成例2で得た前記式(4)で表されるフッ素原子含有ジグリシジルエーテル化合物(A)45.0g、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン5.0gおよびCYRACURE UVI−6990を3.0g配合し、攪拌して無色透明で均一な樹脂組成物を調製した。このものの25℃における屈折率は1.3655であった。この樹脂組成物を石英ガラス板上におおよそ5〜7μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、高圧水銀灯で1500mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、さらにそのまま120℃で20分間加熱して無色透明な硬化膜を得た。得られた硬化膜を目視で観察したところ、硬化膜に白化や濁り等の不透明な部分が全く見られなかった。
【0038】
硬化膜の評価の実施例
実施例5:ガラスに対する密着性試験
実施例1で得られた硬化膜に、1mmおきに10本のラインをカッターナイフで引き、さらに直角に1mmおきで10本、カッターナイフでラインを引いて1mm×1mmの碁盤目を100個作成し、JIS K 5400「塗料一般試験方法」に準拠してセロテープ(登録商標)を用いてピーリング試験を行ったところ、100/100の密着性を示した。なお、実施例2〜4の硬化膜についても同様の試験を実施したところ、すべての硬化膜で100/100の密着性を示した。
また、実施例1で調製した樹脂組成物を石英ガラス板上にキャスティングし、その上からさらに石英ガラスを重ね、高圧水銀灯で石英ガラス上から2000mJ/cm2の照射量で紫外線を照射した後、得られたサンプルピースの石英ガラスと石英ガラスの間に金属製ヘラを差し込み、木槌でヘラの柄の部分を軽くたたいて石英ガラス同士を剥離しようとしたところ、2枚の石英ガラス板が破壊した。ただし硬化膜の部分は比較的軟質であった。また、紫外線を照射したサンプルピースをさらにそのまま100℃で30分間加熱してサンプルピースを作成した場合、得られたサンプルピースの石英ガラスと石英ガラスの間に金属製ヘラを差し込むことはできなかった。同様の試験を実施例2〜4で得た樹脂組成物についても同じ試験を実施してみたところ、同様の結果が得られた。ただし、紫外線を照射することなしに100℃で30分間加熱したものは、硬化していなかったので簡単に石英ガラス同士が剥離した。
【0039】
実施例6:耐溶剤性試験
実施例1〜4で得た硬化膜の表面を、メチルエチルケトンを浸み込ませたガーゼで往復50回摩擦し、硬化膜表面の状況を観察したところ、すべての硬化膜において表面にまったく変化が見られなかった。
【0040】
実施例7:耐熱性試験
実施例1〜4で得た硬化膜を、200℃で2時間加熱し、加熱前後の着色の程度を色差計{型番:マクベスCE−3000、コルモーゲン社製}にて測定した。加熱前後の色差値の差を測定したところ、実施例1の硬化膜で0.47、実施例2の硬化膜で0.49、実施例3の硬化膜で0.38、実施例4の硬化膜で0.41という結果が得られた。
【0041】
実施例1〜4の結果より、本発明の樹脂組成物は無色透明で低屈折率であり、紫外線の照射により速やかに硬化することが判った。さらに紫外線を照射後、加熱を施すことにより、本発明の樹脂組成物の硬化を促進することが可能である。また本発明の樹脂組成物の硬化物は透明性に優れ、さらに実施例5〜7の結果より、ガラスに対する密着性、耐溶剤性、耐熱性に優れるという本発明が目的とする硬化物にとって好ましい結果が得られた。
【0042】
【発明の効果】
実施例1〜4の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は透明性に優れる上に低屈折率であり、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより速やかに硬化することが可能である。また、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は透明性に優れ、実施例5の結果よりガラスに対する密着性も良好であることから、特に材質がガラスである光学用物品向けの活性エネルギー線硬化型接着剤として使用することができる。さらに、実施例6および実施例7の結果より、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は耐溶剤性、耐熱性にも優れることから、本発明の樹脂組成物は液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT(Thin Film Transistor)用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、光ファイバー、光道波路等のクリアーコーティング剤としても有用である。
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