JP2004051749A - 光硬化性樹脂コーティング組成物、および硬化塗装膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】形状異方性を有する無機ガラス質フィラーを、好ましくは全固形分中5〜50重量%含有する光硬化性樹脂コーティング組成物。ガラス質フィラーが、繊維径5μm〜20μmでアスペクト比が2〜10のグラスファイバー、平均厚さ1μm〜10μmで平均粒度が5μm〜70μmの薄膜状ガラス、またはその混合物である上記光硬化性樹脂コーティング組成物。上記いずれかに記載の光硬化性樹脂コーティング組成物を光硬化してなる塗膜厚が20μm〜150μmの硬化塗膜、特に鉛筆硬度が3H以上である塗膜。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光硬化性樹脂コーティング組成物および該組成物から得られた硬化塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
高硬度透明樹脂塗料として多種多様な塗料が知られているが、近年、生産性が高く比較的表面硬度が得られ易い点から、光硬化性樹脂塗料がハードトップコート材料として用いられるようになってきた。
しかしながら、実際は、コーティング材の表面硬度は下地の基材の表面硬さに大きく依存しており、下地によっては十分な硬さが発揮されない。一方、下地の影響を打ち消すために、コーティング材を厚く塗布する手段もあるが、通常は50μm以上、好ましくは100μm程度は塗布しないと下地の影響は打ち消すことが困難である。しかし、塗膜が厚くなることによって硬化収縮が大きくなって、クラックや下地との密着不良を招きやすくなる危険性が生じ、経済的でもない。
【0003】
コーティング材の表面硬度を向上するために、シリカ粒子や酸化チタンなどの無機粒子を塗料に添加することはすでに広く用いられる手法であるが、光硬化性樹脂塗料の場合は、これら無機粒子を多量に添加すると光透過性が低下し、コーティング層の硬化不良を招いてしまう。
また、通常の粒状の添加物では硬度アップに寄与する程度となると相当多量(塗料樹脂100重量部に対して50重量部以上程度)に添加することが必要である。その場合は光硬化性樹脂塗料の光透過性が低下するだけでなく、かなり粘度が高くなるため塗装性の低下も生じることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光硬化性、平滑性に優れ、かつ比較的薄膜でもトップコートとして高い塗膜硬度を有する光硬化性の透明樹脂コーティング材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、 (メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーと光重合開始剤からなる光硬化性樹脂組成物、あるいはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有するオリゴマーおよび/またはモノマーと光重合開始剤からなる光硬化性樹脂組成物のような光重合可能な樹脂をマトリックスとするコーティング組成物の硬化塗膜の硬度を向上するために、各種不溶性の強化材の添加を鋭意検討した結果、無機ガラス質フィラーの中でもとりわけ異方性を有する形状、特に好ましくは繊維状の強化材が、硬度アップに有効に寄与することを見出した。
また、形状異方性の無機ガラス質フィラーは、光硬化性樹脂成分を硬化させるに必要な300〜450nmの波長域の光線を有効に透過させることができるため、硬度アップに十分効果が得られるのに必要な添加量を含有させても、光硬化性樹脂成分の光硬化性が低下しないことを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、形状異方性を有する無機ガラス質フィラーを含有した光硬化性樹脂コーティング組成物に関する。
特に、本発明は、無機ガラス質フィラーが、繊維径5μm〜20μmでアスペクト比が2〜10のグラスファイバーであるか、平均厚さ1μm〜10μmで平均粒度が5μm〜70μmの薄膜状ガラスであるか、またはその混合物である上記光硬化性樹脂コーティング組成物に関する。
好ましくは、本発明は、前記無機ガラス質フィラーの含有量が組成物中の全固形分の5〜50重量%である上記光硬化性樹脂コーティング組成物に関する。
また、本発明は、上記いずれかに記載の光硬化性樹脂コーティング組成物を光硬化してなる塗膜厚が20μm〜150μmの硬化塗膜、特に鉛筆硬度が3H以上である塗膜に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性樹脂コーティング組成物は、紫外線または電子線で重合可能な樹脂組成物であって、形状が異方性を有する無機ガラス質フィラーを含有していることを特徴としている。
無機ガラス質フィラーの含有量は組成物中の全固形分の5〜50重量%であることが好ましい。
無機ガラス質フィラーとしては、光線透過率の観点からケイ酸塩ガラスからなるものが好ましい。
【0008】
本発明において、形状異方性を有するとは縦横高さのいずれか1つもしくは2つの長さが、残りの長さに比べ、極端に長い場合を意味する。極端に長い場合とは、残りの長さの2倍以上を意味する。
形状異方性を有する無機ガラス質フィラーとしては、繊維あるいは薄膜状物(以降、フレークとも記す)等が挙げられる。特に好ましくは、繊維径5μm〜20μmでアスペクト比が2〜10のグラスファイバー、または平均厚さ1μm〜10μmで平均粒度が5μm〜70μmの薄膜状ガラスである。さらに好ましくは、繊維径10μm〜18μmでアスペクト比が3〜7のグラスファイバー、または平均厚さ3μm〜8μmで平均粒度が20μm〜50μmの薄膜状ガラスである。上記グラスファイバーと薄膜状ガラスとは併用して含有することもできる。これらの場合に塗膜の硬度向上に大きな効果が得られる。
上記において、薄膜状ガラスの平均粒度とは、厚みを除く径の平均を意味する。具体的な測定方法としては、光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡を用い、薄膜状ガラスを観察し、内接円および外接円の直径を測定し、その平均をその薄膜状ガラスの粒度とする。それを任意に抽出した20検体で測定し、その平均を平均粒度とする。
【0009】
このようなアスペクト比の大きいフィラーを含有することにより、従来の粒状のフィラー含有時よりも、塗膜硬度の向上が大きくなる理由についてその詳細は明らかではないが、次のように推測される。
すなわち、第1には、塗装面の擦傷が最表面層の微小塑性変形であると捉えると、補強材により補強されたマトリックス(この場合、硬化した塗料皮膜)の強度は、複合則にのっとって表わすことができる。説明を簡略化するために、仮に異方性フィラーが繊維状ないしは棒状と仮定すると、フィラーの繊維長lが、
lc =(d/2)・σf/τ
〔式中、dは繊維の直径、σfは繊維の破断強度、τはマトリックス/繊維界面に働くせん断応力を表す〕
であらわされる臨界繊維長lc以上の長さの繊維であれば、下記の式
σ=Vfσf+(1−Vf)σm
〔式中、σは皮膜の破断強度、σfは繊維が破断強度、σmはマトリックス(この場合、塗料中の硬化した樹脂成分)の破断強度、Vfは補強フィラーの体積含有率〕
による補強効果が得られる。
したがって、l/dがある一定値を越えないと十分な補強効果が得られない。
【0010】
第2に、塗装中に塗料のレベリングに付随して形状異方性のフィラーがその長手方向に配列するため、面方向の塗膜の硬化収縮が低減され、基材との密着性が向上する、ないしは収縮による残留応力が低減される。
第3には、樹脂成分が硬化する過程で、形状異方性のフィラーが骨材的に架橋高分子中に存在するために、形状異方性のフィラーの重なり合いや交差によって塗膜の骨格構造が形成できる。
【0011】
第4には、粒径の小さい等方性のフィラーであると、樹脂成分中に高濃度で分散させた場合、増粘効果が甚だ大きく、塗料として使用するためには相当量の溶剤等で希釈する必要がある。その場合、当然ながら溶剤の揮発による塗膜の収縮の増大や溶剤の沸きなどによる塗膜欠陥の増加に繋がる。しかしながらアスペクト比の大きい異方性フィラーであると、塗膜強化に効果を発現する数10重量%(樹脂に対して)の添加量に達しても、塗料の粘度を比較的低いレベルで維持することができる。
【0012】
さらに付加的な効果として、粒状のフィラーであると、それらが沈降時、非常に密に体積・パッキングされるために、一旦沈降が生じた場合、再分散することが非常に困難であるが、アスペクトの大きいフィラーでは、比較的再分散が容易である。
【0013】
また、これらグラスファイバーおよび薄膜状ガラスは、樹脂添加用に分散性や樹脂との接着性を考慮して、適宜、アクリルシランやアミノシラン系カップリング剤によって表面処理が施されていることが好ましい。
【0014】
さらに、形状異方性ガラス質フィラーは塗料に添加して用いることが前提であるから、塗装膜の乾燥厚みが通常は数μm〜200μm程度であることに鑑みて、塗装面の平滑性や均一性を得るためには、通常、グラスファイバーの繊維長は10μm〜100μm、薄膜状ガラスでは平均粒度が10μm〜70μmであることが好ましい。ただし、これらグラスファイバーや薄膜状グラスの繊維長あるいは平面辺長さが目的とする乾燥塗膜厚みより必ずしも小さくならなければならない必要性はない。基本的に繊維径および厚みは乾燥塗膜厚みより小さくならないと、トップコートとしての表面平滑性は得られないが、繊維長あるいは平面辺長さは、塗装される際に何らかのレベリング手段が取られるために、塗膜のレベリングと同時に塗装面が平滑化される際にグラスファイバーや薄膜グラスも平面方向に配列し、塗膜厚みより長くても塗装表面に突出することがないからである。
【0015】
無機ガラス質フィラーの含有量は組成物中の全固形分の5〜50重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましい。5重量%未満では十分な硬度向上効果が得られず、逆に50重量%を越えると、塗料粘度が増大し塗装性が低下する。
【0016】
光硬化後の塗膜厚みは20μm〜150μmが好ましく、30μm〜100μmがさらに好ましい。塗膜が20μm未満となると下地の影響が出やすくなり、150μmを越えると材料コスト面で経済的ではないし、硬化収縮による塗膜欠陥や、硬化速度の低下といったトラブルが出やすくなる。
被塗物表面に光硬化後の塗膜厚みが20μm〜150μmとなるように本発明の光硬化性樹脂コーティング組成物を塗布することにより、被塗物表面に鉛筆硬度が3H以上の塗膜を形成することができる。
【0017】
本発明の光硬化性樹脂コーティング組成物のマトリックスを形成する光硬化性樹脂成分としては、光ラジカル重合性組成物および光カチオン重合性組成物を用いることができる。
光ラジカル重合性組成物は、一般的に、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーの重合性成分と光重合開始剤からなる。
【0018】
(メタ)アクリレートオリゴマーとは、アクリロイル基(CH2=CHCO−)あるいはメタクリロイル基(CH2=CCH3CO−)を分子内に1〜数個有する分子量が数百から千数百の化合物であり、代表的にはエポキシ、エポキシ化油、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル等のモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレートおよびさらに多官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリロイル基(CH2=CHCO−)あるいはメタクリロイル基(CH2=CCH3CO−)を分子内に1〜数個有する反応性モノマーである。代表的にはモノ(メタ)アクリレートとして、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート等;ジ(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等;トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等;4官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または(メタ)アクリレートモノマーはそれぞれ単独種で用いても良いし、異なる数種のものを組合せて用いても良い。ただし、本発明の主目的とする硬度向上の観点からみれば、架橋度を密にした方が硬化後の樹脂の硬度が高くなるため、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーとも官能基を1分子中に複数有している、すなわち二官能以上のものを主成分として用いることが好ましい。
【0021】
光ラジカル重合開始剤は、紫外線等の特定波長を吸収して電子的励起状態となり、ラジカルを発生する化合物であり、代表的にはアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサンソン類等が挙げられる。添加量としては(メタ)アクリレート成分に対して1〜5重量%程度が適量である。
また、光開始剤の機能を促進する目的で、適宜、光開始助剤や鋭感剤を加えても良いし、シェルフライフの延長を目的に、重合禁止剤等を配合しても良い。
【0022】
光カチオン重合性組成物としては、光ラジカル重合性組成物と同様に、オリゴマーおよび/またはモノマーと光開始剤からなり、オリゴマーとしてはビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等のエポキシ樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられ、モノマーとしては上記プレポリマーを構成する単量体や脂環式エポキシが挙げられる。
【0023】
光カチオン重合開始剤としては、アリルジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、スルホン酸エステルなどが挙げられる。光カチオン重合開始剤の添加量は、エポキシ樹脂に対して1〜5重量%程度が適当である。
さらに、光増感剤としてアントラセン、フェノチアジンなどを用いることもできる。
【0024】
さらに、塗料として用いる際には、塗工性をコントロールするために粘度調整が必要である。そのため、溶剤を適宜加えて希釈することができる。溶剤としては各種のものが使用可能であるが、(メタ)アクリレート、あるいはエポキシ/ビニルエーテル類を良く溶解することが重要であり、前者の溶媒としては、シクロヘキサン、イソホロン、キシレン、トルエン、エタノールが挙げられ、後者の溶媒としてはメチルエチルケトン(MEK)が代表的に挙げられる。
【0025】
溶剤を多量に使用した場合、後工程で溶剤を除去する際に温度や時間がかかり、また揮発分も多いことから、はなはだ不経済である。また、溶剤除去が不十分であった場合、マトリックス成分中に溶剤が残存したままで光硬化させることになり、塗膜硬度が低下したり、ピンホールなどの塗膜欠陥を生じる原因になることがある。したがって、溶剤添加量は塗料中0〜30重量%の範囲であることが好ましい。すなわち固形分濃度が70〜100重量%であることが好ましい。
【0026】
即ち、本発明の光硬化性樹脂コーティング組成物の好ましい配合は、光硬化性樹脂組成物(マトリックス成分:重合性成分と光重合開始剤)が50〜70重量%、形状異方性の無機ガラス質フィラーが全固形分中5〜50重量%、および溶剤0〜30重量%を含んでなるものであり、上記の塗料成分に加え、塗料の光硬化性を阻害しない範囲で、着色剤や、レベリング剤等の表面調整剤が適宜含まれていてもよい。また、塗料の光硬化性を阻害しない範囲で、球状等の形状等方性のフィラーを含有することができる。
【0027】
本発明による塗料を被塗装物に適用する場合、塗工方法は塗料の一般的な塗工方法ならいずれも使用することができ、例えばロールコーター法、コンマコーター法、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗りなどがいずれも挙げられる。形状異方性のフィラーをコーティング面に対して略水平方向に配列させるためには、特にロールコーター法やコンマコーター法が好ましい。
【0028】
被塗装物としては、特に限定されるものではないが、金属板、床・タイル材・化粧板などの平面材、さらにはプラスチック成形品や金属加工品等の構造体などが代表的に挙げられ、特に鋼板やアルミ板の塗装に好適である。
【0029】
塗膜の乾燥・硬化は、塗膜に紫外線ないしは電子線を照射することにより達成される。ただし、溶剤を含んだ組成の場合には、これら放射線を照射する前に適当な手段により溶剤を除去しておくことが好ましい。例えば、熱風乾燥炉にて加温する、遠赤外線ヒーター等より加熱するなどの手段が挙げられる。溶剤除去時の温度、時間などは溶剤の種類によって適宜調整されるべきである。また、あまり高温に長時間曝すと、光開始剤が揮発するなどして塗料の光硬化性が失活したり、被塗装物素材の物性低下を招いたりする恐れがあるため、通常は150℃程度以下に抑えることが望ましい。
【0030】
放射線を照射する際には、特に光ラジカル重合性樹脂組成物の場合は、塗料表面の酸素障害を防ぐために、適宜、遮光性の少ない透明フィルムなどを貼り合わせていても良いし、あるいは窒素など不活性ガスにより酸素濃度を低減したチャンバー内で行っても良い。
【0031】
さらには、本発明による塗料を、紫外線等の光透過率の高い透明フィルムに必要厚みで塗装して転写フィルムを作製し、この転写面、すなわち塗装面を被塗装物に貼りつけ、フィルム越しに光を照射して、塗膜層を硬化させ被塗装物に転写せしめても良い。フィルムは樹脂硬化後に除去される。
【0032】
転写フィルムを作製する場合のベースフィルムとしては、光透過性が高く、当然ながら硬化皮膜と剥離性の良い材質を選定する必要がある。代表例としては、PET、PP、PE等のプラスチックフィルム挙げられるが、耐熱性や光硬化性の観点から特にPETフィルムが好ましい。また、これらベースフィルムには剥離性を向上するために、表面をシリコン化合物やフッ素化合物等により離型処理が施されていても良い。ベースフィルムの膜厚は通常10〜150μm、より好ましくは20〜100μmが好ましい。
【0033】
転写フィルムとして用いた場合は、転写表面に強化フィラーが局在化するためにより高硬度の皮膜が得られやすい。すなわち、ベースフィルム上に本発明による塗料が塗装された際に、強化材であるフィラーが、樹脂成分より比重が大きいために、一旦フィルム表面近傍に沈降し局在化する。これを被塗装物側に転写すると、結果的にフィラーが局在化した側が塗装表面となるため、特に塗装表面近傍のみを硬度アップすることが可能である。
【0034】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に且つ具体的に説明する。
【実施例】
実施例 1
あらかじめ鉛筆硬度Fの白色塗料が着色層として20μm厚さで焼付け塗装された鋼板に、さらにそのトップコート層を形成するために、下記配合(1)の光硬化性樹脂コーティング組成物を調製した。配合(1)に用いたグラスファイバーは、繊維径13μm、長さ50μm(アスペクト比 3.8)のEガラス繊維であり、アクリルシランによる表面処理が施されている。この組成物をロールコーター法により固形分厚さが50μmとなるように塗装鋼板に塗布した。下記配合は塗装性を鑑みて溶剤により希釈してあり、常温で約2Pa・sの溶液粘度としたが、溶剤乾燥除去した後の光硬化性樹脂層の常温粘度は、約10,000 Pa・sであった。
【0035】
〔コーティング組成物配合(1)〕
ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製「NKオリコ゛U−6HA」) 100重量部
トリメチロールフ゜ロハ゜ントリアクリレート(日本化薬(株)製「KS−TMPTA」) 10重量部
光開始剤(チハ゛スヘ゜シャリティケミカルス゛(株)製「Irgacure 184」) 3重量部
ミルト゛ク゛ラスファイハ゛ー(日本板硝子(株)製「サーフェストラント゛REV6」) 30重量部
希釈溶剤(エタノール) 20重量部
【0036】
光硬化性塗料塗装後の鋼板は熱風乾燥炉中、120℃で約2分間加熱して溶剤(エタノール)を除去した後、厚さ50μmのPET樹脂フィルムを表面が平滑になるようギャップ調整されたラミネートロールによってトップコート層表面に圧着した。
得られた光硬化性樹脂積層鋼板を室温まで冷却後、紫外線照射機(フュージョン・ジャパン(株)製;120W/cm、Hバルブ)にてフィルム越しに約2秒間紫外線を照射してトップコート層を硬化せしめ、ついで保護フィルムを取り外した。
得られた塗膜の鉛筆硬度は表1に記載したように4Hであった。
【0037】
比較例 1
コーティング組成物配合(1)からグラスファイバーを除いた塗料を調製し、これを実施例1と同様に塗装鋼板上に50μmの硬化膜厚になるように塗布し、溶媒除去後、厚さ50μmのPET樹脂フィルムを圧着した。さらに実施例1と同様に、約2秒間紫外線を照射してトップコート層を硬化せしめ、ついで保護フィルムを取り外した。得られた塗膜の鉛筆硬度はHであった(表1)。
【0038】
比較例 2
実施例1の塗装鋼板に配合(1)のかわりに、カタログ値で硬度が9Hと記載されている市販の紫外線硬化塗料(日本化薬(株)製「KAYARAD ARC−87」:アクリル系)を同様に50μmの硬化膜厚になるように塗布し、厚さ50μmのPET樹脂フィルムを圧着した。さらに実施例1と同様に、約2秒間紫外線を照射してトップコート層を硬化せしめ、ついで保護フィルムを取り外した。得られた塗膜の鉛筆硬度は2Hであり(表1)、下地の影響により塗料の潜在性能が十分に発揮されなかった。
【0039】
実施例 2
下記配合(2)の塗料を調製し、実施例1と同様にして塗装鋼板上にトップコート層を形成させた。配合(2)に用いた薄膜状ガラス(ガラスフレーク)は、平均厚さ5μm、平均粒度45μm(アスペクト比 9)のEガラスフレークであり、アミノシランによる表面処理が施されている。
【0040】
〔コーティング組成物配合(2)〕
ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製「NKオリコ゛U−6HA」) 100重量部
トリメチロールフ゜ロハ゜ントリアクリレート(日本化薬(株)製「KS−TMPTA」) 10重量部
光開始剤(チハ゛スヘ゜シャリティケミカルス゛(株)製「Irgacure 184」) 3重量部
ガラスフレーク(日本板硝子(株)製「カ゛ラスフレークREF−015A」) 30重量部
希釈溶剤(エタノール) 20重量部
得られた塗膜の鉛筆硬度は4Hであった(表1)。
【0041】
比較例 3
下記配合(3)の塗料を調製し、実施例1と同様にして塗装鋼板上にトップコート層を形成させた。配合(3)に用いた無機ガラス質フィラーは、粒径15μmの粒状(アスペクト比≒1)の石英ガラス粉末である。
〔コーティング組成物配合(3)〕
ウレタンアクリレート(新中村化学工業(株)製「NKオリコ゛U−6HA」) 100重量部
トリメチロールフ゜ロハ゜ントリアクリレート(日本化薬(株)製「KS−TMPTA」) 10重量部
光開始剤(チハ゛スヘ゜シャリティケミカルス゛(株)製「Irgacure 184」) 3重量部
石英ガラス粉末(龍森(株)製「RD−8」) 30重量部
希釈溶剤(エタノール) 20重量部
得られた塗膜の鉛筆硬度は2Hであった(表1)。
【0042】
実施例 3
上記配合(1)の塗料を用い、厚さ50μmのPET樹脂フィルムにコンマコーター法により固形分付着量が50μmとなるように調整して塗布した。塗装後、実施例1と同様にして溶剤を除去した後、光硬化性塗料面を実施例1の鋼板表面に貼付け、ラミネートロールによって圧着した。これを紫外線照射機にてフィルム越しに約2秒間紫外線を照射して樹脂層を硬化せしめ、ついで該フィルムを取り外した。光硬化性樹脂層は鋼板表面側に良好に転写・接着しており、該フィルムは軽く剥離が可能であって、フィルム側に樹脂層が残ることはまったく無かった。転写された表面塗膜硬度は鉛筆硬度で5Hであった。
【0043】
比較例 4
固形分付着量が厚さ10μmとなるように塗布した以外はまったく実施例3と同様にして塗装鋼板上にトップコート層を形成した。転写された表面塗膜硬度は鉛筆硬度で2Hであった。
【0044】
実施例 4
配合(1)におけるEガラス繊維の添加量を30重量部(硬化塗膜中21重量%)から5重量部(硬化塗膜中4重量%)に減少させた配合を用いた以外は、まったく実施例3と同様にして塗装鋼板上にトップコート層を形成した。転写された表面塗膜硬度は鉛筆硬度で3Hであった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光硬化性樹脂コーティング組成物を用いることにより、光硬化性を低下させることなく、且つ素地の状態に拘わらず高硬度のクリアー塗膜を得ることができる。
本発明のコーティング組成物およびその硬化塗膜は、透明で、かつ表面硬度が高く、生産性に優れたコーティング塗膜を提供するものであり、金属用塗料、床・タイル・化粧板などのトップコート塗料、プラスチック成形品のトップコート塗料などに適用できる。
Claims (7)
- 形状異方性を有する無機ガラス質フィラーを含有した光硬化性樹脂コーティング組成物。
- 前記無機ガラス質フィラーが、繊維径5μm〜20μmでアスペクト比が2〜10のグラスファイバーである請求項1に記載の光硬化性樹脂コーティング組成物。
- 前記無機ガラス質フィラーが、平均厚さ1μm〜10μmで平均粒度が5μm〜70μmの薄膜状ガラスである請求項1に記載の光硬化性樹脂コーティング組成物。
- 前記ガラス質フィラーが、繊維径5μm〜20μmでアスペクト比が2〜10のグラスファイバーと、平均厚さ1μm〜10μmで平均粒度が5μm〜70μmの薄膜状ガラスの混合物である請求項1に記載の光硬化性樹脂コーティング組成物。
- 前記無機ガラス質フィラーの含有量が組成物中の全固形分の5〜50重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂コーティング組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂コーティング組成物を光硬化してなる塗膜厚が20μm〜150μmの硬化塗膜。
- 鉛筆硬度が3H以上である請求項6に記載の塗膜。
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