JP2004051416A - 圧電磁器材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来材料の2倍以上の高振動速度あるいは大振幅でも駆動可能であり、かつ高い比誘電率および高い電気機械結合係数を有し、さらに高い振動速度レベルでも信頼性に優れる圧電磁器材料およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】主成分の組成式が、Pb[(Mn1/3Nb2/3)αTiβZrγ]O3(ただし、α+β+γ=1)で表され、その組成範囲が、図1に示すU、V、W、X、Y、Zの6点を順に結ぶ線に囲まれるα−β−γの3元系組成図の領域(線上を含む)にあること、および前記主成分の重量を100wt%としたとき、δwt%のLn2O3(ただし、Ln2O3はランタノイド系酸化物とし、複合的に用いても良く、その場合の合計量はδの範囲とする)を、0<δ≦6.0、の範囲で添加した圧電磁器材料とする。
【選択図】 図1
【解決手段】主成分の組成式が、Pb[(Mn1/3Nb2/3)αTiβZrγ]O3(ただし、α+β+γ=1)で表され、その組成範囲が、図1に示すU、V、W、X、Y、Zの6点を順に結ぶ線に囲まれるα−β−γの3元系組成図の領域(線上を含む)にあること、および前記主成分の重量を100wt%としたとき、δwt%のLn2O3(ただし、Ln2O3はランタノイド系酸化物とし、複合的に用いても良く、その場合の合計量はδの範囲とする)を、0<δ≦6.0、の範囲で添加した圧電磁器材料とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種圧電デバイスに用いられる圧電磁器材料に係り、特に圧電トランスに適した圧電磁器材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、圧電材料を応用した圧電トランスは、電磁トランスと比較して、高い効率および昇圧比が得られること、低背化に適していることから、液晶ディスプレイバックライト用インバータに広く用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイの大型化およびインバータの小型化に伴い、圧電トランスに用いられる圧電材料に対しては、その機械的出力のさらなる増大が要求されている。また、圧電材料の電気エネルギーの機械的な振動エネルギーへの変換に際して、エネルギー損失を抑制することが求められる。動作振動振幅もしくは振動速度が高くなるのに伴い、内部エネルギー損失による発熱が生じるため、やがて励起できる振動振幅は限界値すなわち振動速度限界値に達し、さらには材料の絶縁破壊を引き起こすことになるからである。
【0004】
今、振動速度を、振動子の最大先端振動振幅ξmと、振動子の共振周波数frの測定から算出できる実効的振動速度Vとすると、Vは次式(1)で表される。文献(広瀬清二:電子情報通信学会技術報告 US92−3,圧電振動子のハイパワー特性の自動測定)に記されているとおりである。
【0005】
V = 21/2・π・fr・ξm ……(1)
【0006】
このように振動レベルを振動速度で表現した場合、従来技術では、安心して使用できる振動速度の限界である振動速度限界Vmax(温度上昇20℃の発熱を起こすときの振動速度)が、0.2m/s程度に留まっていた。
【0007】
また、圧電トランスの場合、その出力値Poutは材料特性値である比誘電率εr、電気機械結合係数K、および振動速度Vと次式(2)の関係にある。
【0008】
Pout ∝ εr・K2・V2 ……(2)
【0009】
高出力を得るためには、その材料特性において、使用可能な振動速度レベルが高いことも重要であるが、あわせてεrやKの値が大きいことが必要となる。従って、Vmaxのみが高くとも、εr、Kの低い材料では、高出力を達成することが困難であるといえる。
【0010】
また、圧電トランスのように、高振動速度レベルで使用するデバイスにおいては、セラミックスの機械的強度が高いことが求められる。上記のような高特性(εr、K、Vmax)を満足する材料が得られても、機械的強度が低ければ、高振動速度レベルで安定して使用することが不可能であり、製品としての信頼性も低下する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来材料の2倍以上の高振動速度あるいは大振幅でも駆動可能であり、かつ高い比誘電率および高い電気機械結合係数を有し、さらに高い振動速度レベルでも信頼性に優れる圧電磁器材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高振動速度でも駆動可能な圧電磁器材料の組成範囲を見い出したもので、主成分の組成式が、Pb[(Mn1/3Nb2/3)αTiβZrγ]O3(ただし、α+β+γ=1)で表され、その組成範囲が、
U(α=0.01、β=0.54、γ=0.45)、
V(α=0.25、β=0.52、γ=0.23)、
W(α=0.45、β=0.39、γ=0.16)、
X(α=0.45、β=0.26、γ=0.29)、
Y(α=0.15、β=0.24、γ=0.61)、
Z(α=0.01、β=0.35、γ=0.64)、の6点を順に結ぶ線に囲まれるα−β−γの3元系組成図の領域(線上を含む)にあること、および前記主成分の重量を100wt%としたとき、δwt%のLn2O3(ただし、Ln2O3はランタノイド系酸化物とし、複合的に用いても良く、その場合の合計量はδの範囲とする)を、0<δ≦6.0、の範囲で添加したことを特徴とし、また、その焼結用の圧電材粉末の平均粒径が1μm以下でかつ5μm以上の粒径の粉末を含まないようにすることで、機械的な破壊のない、安定して駆動できる圧電磁器材料が得られることを見い出した。
【0013】
すなわち、本発明による、組成範囲と焼結用粉末の粒径の制御により、振動速度限界Vmaxが従来の2倍以上となるVmax≧0.50m/s、比誘電率εrが500以上、縦振動モードにおける電気機械結合係数K33が0.50以上の圧電磁器材料が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の圧電磁器材料を得る出発原料として、PbO、ZrO2、TiO2、MnCO3、Nb2O5、La2O3、Nd2O3、Yb2O3、Eu2O3、Sm2O3の各粉末を用いた。
【0016】
各原料粉末を所定量秤量し、ボールミルによる湿式混合後、混合粉末を2時間大気中にて仮焼した。仮焼粉を粉砕後、必要に応じて粒径選別をして用いた。
【0017】
さらに、バインダー混合、成形、および脱バインダーを行い、大気中にて焼成した。
【0018】
焼結体を切断加工し、振動速度限界Vmaxの評価用としては長さ43mm×幅7mm×厚さ1mmの矩形板、縦振動モードにおける電気機械結合係数K33の評価用としては3mm×3mm×12mmの矩形板の試料を得て、厚さ方向に相対向する両面に銀電極を焼き付け、100℃のシリコーンオイル中で、4kV/mmの直流電界を15分印加して分極処理を施した。
【0019】
分極処理後、24時間室温放置し、特性評価を行った。なお、振動速度限界は圧電横効果長さ方向振動の基本モードを励振させて測定した。
【0020】
振動速度は、上記従来技術で説明したように、振動子の最大先端振動振幅ξmと振動子の共振周波数frの測定から算出できる実効的振動速度Vで表した。
【0021】
V = 21/2・π・fr・ξm ……(1)
【0022】
振動速度限界は圧電振動子の振動の節点における温度測定により、その振動子の内部エネルギー損失により励起される温度上昇(室温と振動子の温度との差)△Tが20℃になる振動速度をVmaxと表し、これを振動速度限界とした。
【0023】
表1に評価結果を示す。なお、表1の試料は、いずれも粉末平均粒径が1μm以下で、かつ5μm以上の粒径を含まない粉末を用いた。また、*の記された試料は、本発明の請求範囲外の試料であることを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、本発明の圧電磁器材料として、各化合物の配合比率(組成比)を限定した理由について表1の結果に基づき、適宜、図1を参照して説明する。なお、図1は、本発明の組成範囲を表す3元系の組成図である。
【0026】
まず、表1の試料の組成と、図1の組成点の対応について、説明する。
【0027】
試料3,11,15,16,8,および4の組成が、それぞれ、図1の組成点U,V,W,X,Y,およびZに対応している。
【0028】
また、試料18*の組成は、Ln2O3の添加量がゼロなので発明品ではないが、組成点Yに対応している。
【0029】
また、試料6,7,12,13,19,20,21,および22の組成は6角形U−V−W−X−Y−Zの内部に含まれる。
【0030】
また、試料23*の組成は、Ln2O3の添加量が6wt%を超えるので、発明品ではないが、6角形U−V−W−X−Y−Zの内部に含まれる。
【0031】
それに対して、試料1*,2*,5*,9*,10*,14*,および17*の組成は6角形U−V−W−X−Y−Zの外部にある。
【0032】
引き続き、次に、圧電磁器材料の組成と圧電トランスの特性の関係を説明する。
【0033】
表1に示すように、Mn1/3Nb2/3が1mol%未満(α<0.01)の場合、強誘電体分域壁の運動に伴う内部摩擦による損失が大きいため、振動速度限界が低い。それに対し、45mol%を越えると(α>0.45)、比誘電率および電気機械結合係数が低下するため好ましくない。
【0034】
また、図1において、U−V−Wを結ぶ線よりZr量(γ)が少なく、Ti量(β)が多いほうの領域(図1の6角形U−V−W−X−Y−Zの左側)は、電気機械結合係数が極端に下がるため、圧電トランス用には適さない。
【0035】
一方、X−Y−Zを結ぶ線よりZr量(γ)が多く、Ti量(β)が少ないほうの領域(図1の6角形U−V−W−X−Y−Zの右側)は、比誘電率および電気機械結合係数が低下するため、圧電トランス用には適さない。
【0036】
また、ランタノイド系酸化物は、電気機械結合係数および振動速度限界の改善効果を有するが、添加量が6.0wt%を越えると(δ>6.0)、比誘電率が著しく低下するため、本発明の請求範囲から除外した。
【0037】
このように、表1からは、500以上の比誘電率と0.50以上の縦振動モード電気機械結合係数を有し、かつ振動速度限界が0.50m/s以上となるのは、本発明の請求の組成範囲内に限定されることが分かる。
【0038】
さらにここで、圧電トランスの出力値の大小を判断できる、出力係数なるパラメータを算出してみる。この出力係数Pcは、次式(3)で定義される量である。
【0039】
Pc = εr・(K33)2・(Vmax)2 ……(3)
【0040】
表1に算出結果を示す。これより、本請求の範囲内ではPcが80以上となり、高出力の圧電トランスを実現できると予想される。
【0041】
一方、本請求の範囲外では、Pc<80であるので、たとえVmaxが高くとも、高出力トランスは実現できない。
【0042】
次に、圧電磁器材料の焼結用粉末の粒度分布と圧電トランスの破壊振動速度の関係について説明する。
【0043】
表2に、表1で既に示した試料No.7とNo.12、およびそれらと同じ組成を有し焼結用粉末の粒度分布が異なる試料について、過励振試験(破壊振動速度値の測定)の結果を示す。各試料ともサンプル数は10個とし、そのなかで最小の振動速度で破壊したサンプルの値を、破壊振動速度値として表示した。
【0044】
また、粒径は、粒度分布計での測定値より、平均粒径(D50)と、5μm以上の粒径の頻度を表示した。
【0045】
【表2】
【0046】
粉砕上がりの粒径が異なる粉末を使用した場合の比較を行うと、使用する圧電材粉末の平均粒径が1μmを越えたり、5μm以上の粒径の粉末を含むと、振動速度が0.90m/s以下でも破壊する場合のあることが判明した。
【0047】
この場合、発熱温度的には使用可能な振動速度範囲であるのに、機械的破壊を起こすことが想定されるので、本発明の請求範囲から除外した。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明による圧電磁器材料は高い振動速度、比誘電率、電気機械結合係数を有し、また高振動レベルでも安定して使用できるため、圧電トランスの出力特性向上および信頼性向上が可能となり、工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組成範囲を表す3元系の組成図。
【符号の説明】
U,V,W,X,Y,Z 3元系組成図上の点。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種圧電デバイスに用いられる圧電磁器材料に係り、特に圧電トランスに適した圧電磁器材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、圧電材料を応用した圧電トランスは、電磁トランスと比較して、高い効率および昇圧比が得られること、低背化に適していることから、液晶ディスプレイバックライト用インバータに広く用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイの大型化およびインバータの小型化に伴い、圧電トランスに用いられる圧電材料に対しては、その機械的出力のさらなる増大が要求されている。また、圧電材料の電気エネルギーの機械的な振動エネルギーへの変換に際して、エネルギー損失を抑制することが求められる。動作振動振幅もしくは振動速度が高くなるのに伴い、内部エネルギー損失による発熱が生じるため、やがて励起できる振動振幅は限界値すなわち振動速度限界値に達し、さらには材料の絶縁破壊を引き起こすことになるからである。
【0004】
今、振動速度を、振動子の最大先端振動振幅ξmと、振動子の共振周波数frの測定から算出できる実効的振動速度Vとすると、Vは次式(1)で表される。文献(広瀬清二:電子情報通信学会技術報告 US92−3,圧電振動子のハイパワー特性の自動測定)に記されているとおりである。
【0005】
V = 21/2・π・fr・ξm ……(1)
【0006】
このように振動レベルを振動速度で表現した場合、従来技術では、安心して使用できる振動速度の限界である振動速度限界Vmax(温度上昇20℃の発熱を起こすときの振動速度)が、0.2m/s程度に留まっていた。
【0007】
また、圧電トランスの場合、その出力値Poutは材料特性値である比誘電率εr、電気機械結合係数K、および振動速度Vと次式(2)の関係にある。
【0008】
Pout ∝ εr・K2・V2 ……(2)
【0009】
高出力を得るためには、その材料特性において、使用可能な振動速度レベルが高いことも重要であるが、あわせてεrやKの値が大きいことが必要となる。従って、Vmaxのみが高くとも、εr、Kの低い材料では、高出力を達成することが困難であるといえる。
【0010】
また、圧電トランスのように、高振動速度レベルで使用するデバイスにおいては、セラミックスの機械的強度が高いことが求められる。上記のような高特性(εr、K、Vmax)を満足する材料が得られても、機械的強度が低ければ、高振動速度レベルで安定して使用することが不可能であり、製品としての信頼性も低下する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来材料の2倍以上の高振動速度あるいは大振幅でも駆動可能であり、かつ高い比誘電率および高い電気機械結合係数を有し、さらに高い振動速度レベルでも信頼性に優れる圧電磁器材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高振動速度でも駆動可能な圧電磁器材料の組成範囲を見い出したもので、主成分の組成式が、Pb[(Mn1/3Nb2/3)αTiβZrγ]O3(ただし、α+β+γ=1)で表され、その組成範囲が、
U(α=0.01、β=0.54、γ=0.45)、
V(α=0.25、β=0.52、γ=0.23)、
W(α=0.45、β=0.39、γ=0.16)、
X(α=0.45、β=0.26、γ=0.29)、
Y(α=0.15、β=0.24、γ=0.61)、
Z(α=0.01、β=0.35、γ=0.64)、の6点を順に結ぶ線に囲まれるα−β−γの3元系組成図の領域(線上を含む)にあること、および前記主成分の重量を100wt%としたとき、δwt%のLn2O3(ただし、Ln2O3はランタノイド系酸化物とし、複合的に用いても良く、その場合の合計量はδの範囲とする)を、0<δ≦6.0、の範囲で添加したことを特徴とし、また、その焼結用の圧電材粉末の平均粒径が1μm以下でかつ5μm以上の粒径の粉末を含まないようにすることで、機械的な破壊のない、安定して駆動できる圧電磁器材料が得られることを見い出した。
【0013】
すなわち、本発明による、組成範囲と焼結用粉末の粒径の制御により、振動速度限界Vmaxが従来の2倍以上となるVmax≧0.50m/s、比誘電率εrが500以上、縦振動モードにおける電気機械結合係数K33が0.50以上の圧電磁器材料が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の圧電磁器材料を得る出発原料として、PbO、ZrO2、TiO2、MnCO3、Nb2O5、La2O3、Nd2O3、Yb2O3、Eu2O3、Sm2O3の各粉末を用いた。
【0016】
各原料粉末を所定量秤量し、ボールミルによる湿式混合後、混合粉末を2時間大気中にて仮焼した。仮焼粉を粉砕後、必要に応じて粒径選別をして用いた。
【0017】
さらに、バインダー混合、成形、および脱バインダーを行い、大気中にて焼成した。
【0018】
焼結体を切断加工し、振動速度限界Vmaxの評価用としては長さ43mm×幅7mm×厚さ1mmの矩形板、縦振動モードにおける電気機械結合係数K33の評価用としては3mm×3mm×12mmの矩形板の試料を得て、厚さ方向に相対向する両面に銀電極を焼き付け、100℃のシリコーンオイル中で、4kV/mmの直流電界を15分印加して分極処理を施した。
【0019】
分極処理後、24時間室温放置し、特性評価を行った。なお、振動速度限界は圧電横効果長さ方向振動の基本モードを励振させて測定した。
【0020】
振動速度は、上記従来技術で説明したように、振動子の最大先端振動振幅ξmと振動子の共振周波数frの測定から算出できる実効的振動速度Vで表した。
【0021】
V = 21/2・π・fr・ξm ……(1)
【0022】
振動速度限界は圧電振動子の振動の節点における温度測定により、その振動子の内部エネルギー損失により励起される温度上昇(室温と振動子の温度との差)△Tが20℃になる振動速度をVmaxと表し、これを振動速度限界とした。
【0023】
表1に評価結果を示す。なお、表1の試料は、いずれも粉末平均粒径が1μm以下で、かつ5μm以上の粒径を含まない粉末を用いた。また、*の記された試料は、本発明の請求範囲外の試料であることを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、本発明の圧電磁器材料として、各化合物の配合比率(組成比)を限定した理由について表1の結果に基づき、適宜、図1を参照して説明する。なお、図1は、本発明の組成範囲を表す3元系の組成図である。
【0026】
まず、表1の試料の組成と、図1の組成点の対応について、説明する。
【0027】
試料3,11,15,16,8,および4の組成が、それぞれ、図1の組成点U,V,W,X,Y,およびZに対応している。
【0028】
また、試料18*の組成は、Ln2O3の添加量がゼロなので発明品ではないが、組成点Yに対応している。
【0029】
また、試料6,7,12,13,19,20,21,および22の組成は6角形U−V−W−X−Y−Zの内部に含まれる。
【0030】
また、試料23*の組成は、Ln2O3の添加量が6wt%を超えるので、発明品ではないが、6角形U−V−W−X−Y−Zの内部に含まれる。
【0031】
それに対して、試料1*,2*,5*,9*,10*,14*,および17*の組成は6角形U−V−W−X−Y−Zの外部にある。
【0032】
引き続き、次に、圧電磁器材料の組成と圧電トランスの特性の関係を説明する。
【0033】
表1に示すように、Mn1/3Nb2/3が1mol%未満(α<0.01)の場合、強誘電体分域壁の運動に伴う内部摩擦による損失が大きいため、振動速度限界が低い。それに対し、45mol%を越えると(α>0.45)、比誘電率および電気機械結合係数が低下するため好ましくない。
【0034】
また、図1において、U−V−Wを結ぶ線よりZr量(γ)が少なく、Ti量(β)が多いほうの領域(図1の6角形U−V−W−X−Y−Zの左側)は、電気機械結合係数が極端に下がるため、圧電トランス用には適さない。
【0035】
一方、X−Y−Zを結ぶ線よりZr量(γ)が多く、Ti量(β)が少ないほうの領域(図1の6角形U−V−W−X−Y−Zの右側)は、比誘電率および電気機械結合係数が低下するため、圧電トランス用には適さない。
【0036】
また、ランタノイド系酸化物は、電気機械結合係数および振動速度限界の改善効果を有するが、添加量が6.0wt%を越えると(δ>6.0)、比誘電率が著しく低下するため、本発明の請求範囲から除外した。
【0037】
このように、表1からは、500以上の比誘電率と0.50以上の縦振動モード電気機械結合係数を有し、かつ振動速度限界が0.50m/s以上となるのは、本発明の請求の組成範囲内に限定されることが分かる。
【0038】
さらにここで、圧電トランスの出力値の大小を判断できる、出力係数なるパラメータを算出してみる。この出力係数Pcは、次式(3)で定義される量である。
【0039】
Pc = εr・(K33)2・(Vmax)2 ……(3)
【0040】
表1に算出結果を示す。これより、本請求の範囲内ではPcが80以上となり、高出力の圧電トランスを実現できると予想される。
【0041】
一方、本請求の範囲外では、Pc<80であるので、たとえVmaxが高くとも、高出力トランスは実現できない。
【0042】
次に、圧電磁器材料の焼結用粉末の粒度分布と圧電トランスの破壊振動速度の関係について説明する。
【0043】
表2に、表1で既に示した試料No.7とNo.12、およびそれらと同じ組成を有し焼結用粉末の粒度分布が異なる試料について、過励振試験(破壊振動速度値の測定)の結果を示す。各試料ともサンプル数は10個とし、そのなかで最小の振動速度で破壊したサンプルの値を、破壊振動速度値として表示した。
【0044】
また、粒径は、粒度分布計での測定値より、平均粒径(D50)と、5μm以上の粒径の頻度を表示した。
【0045】
【表2】
【0046】
粉砕上がりの粒径が異なる粉末を使用した場合の比較を行うと、使用する圧電材粉末の平均粒径が1μmを越えたり、5μm以上の粒径の粉末を含むと、振動速度が0.90m/s以下でも破壊する場合のあることが判明した。
【0047】
この場合、発熱温度的には使用可能な振動速度範囲であるのに、機械的破壊を起こすことが想定されるので、本発明の請求範囲から除外した。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明による圧電磁器材料は高い振動速度、比誘電率、電気機械結合係数を有し、また高振動レベルでも安定して使用できるため、圧電トランスの出力特性向上および信頼性向上が可能となり、工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組成範囲を表す3元系の組成図。
【符号の説明】
U,V,W,X,Y,Z 3元系組成図上の点。
Claims (3)
- 主成分の組成式が、
Pb[(Mn1/3Nb2/3)αTiβZrγ]O3(ただし、α+β+γ=1)で表され、その組成範囲が、
U(α=0.01、β=0.54、γ=0.45)、
V(α=0.25、β=0.52、γ=0.23)、
W(α=0.45、β=0.39、γ=0.16)、
X(α=0.45、β=0.26、γ=0.29)、
Y(α=0.15、β=0.24、γ=0.61)、
Z(α=0.01、β=0.35、γ=0.64)、の6点を順に結ぶ線分に囲まれるα−β−γの3元系組成図の領域(線上を含む)にあること、および前記主成分の重量を100wt%としたとき、δwt%のLn2O3(ただし、Ln2O3はランタノイド系酸化物とし、複合的に用いても良く、その場合の合計量はδの範囲とする)を、0<δ≦6.0、の範囲で添加したことを特徴とする圧電磁器材料。 - 常温下で共振駆動されている圧電振動子の振動節点における上昇温度が20℃に達するときの振動速度を振動速度限界Vmaxと定め、前記圧電振動子が、長さ43mm×幅7mm×厚さ1mmの矩形板試料の厚さ方向に相対向する両主面に駆動電極を有する状態における前記振動速度限界Vmaxが0.50m/s以上であり、かつ比誘電率εrが500以上、かつ縦振動モードにおける電気機械結合係数K33が0.50以上であることを特徴とする圧電磁器材料。
- 請求項1に記載の圧電磁器材料の製造方法において、平均粒径が1μm以下であり、かつ5μm以上の粒径の粉末が含まれない焼結用粉末を用いることを特徴とする圧電磁器材料の製造方法。
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