JP2004050662A - インクジェットヘッド - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】インクを吐出するためにインク室の圧力隔壁を変形させインクを圧縮させる際、オリフィス板側の圧力隔壁でインクを圧縮しているときにインク供給口側でインクを膨張させる現象が発生するための圧縮ロスの改善を行う。
【解決手段】オリフィス板側の圧力隔壁に割り当てられた分極方向4とインク供給口側の圧力隔壁での分極方向44を逆にすることで圧力隔壁の変形方向が同方向となるので、従来技術と比較してオリフィス板側でインクを圧縮するときにインク供給口側でもインクを圧縮する事が可能となり、インクの圧縮効率を向上させる事が可能である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンター用圧電ヘッドに関し、さらに詳細には圧電効果を利用したインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ノンインパクト・プリンターの主流であるインクジェットヘッド・プリンターでは、アクチュエーターとして圧電素子を用いる場合が多い。この中の一つに剪断モード方式で駆動されるインクジェットヘッドがあり、その構成は多数の特許明細書ならび文献等に開示されている。図16乃至図19を用いて剪断モード方式のインクジェットヘッドの構成を説明する。図16はアレイ方向に垂直で空気室中央にて切断した斜視図である。図17はアレイ方向に垂直でインク室中央にて切断した斜視図、図18はアレイ方向に垂直な断面図、図19は断面部分を含む斜視図である。
【0003】
図19において、インクジェットは圧電材料の基板1に垂直な縦壁のペアが複数組並んでおりこの並び方向をアレイ方向と呼ぶが、前記縦壁で区切られた領域のひとつはインク室21、もうひとつは空気室22であり、この二室が交互に並ぶ。縦壁の上部にはカバー2とカバー3が接着剤他で縦壁と当接しており、矢印24で示すように2つのカバー間の隙間、ここをインク供給口26と呼ぶが、この隙間からインクはインク室内に流入し、矢印23のようにインク室から噴出していく。
【0004】
圧電材料の基板は予め図18中の矢印4で示すようにアレイ方向と垂直かつインク噴出方向とも垂直な向きに分極されている。図18あるいは図19の矢印24で示すように、インクはマニホールド側からインク供給口26を経由してインク室に流入し、オリフィス板5に設けられたオリフィス孔から液滴8となり矢印23の方向へ噴出される。縦壁20の両側には電極9(図17)及び電極10(図16)が付着しており、この電極間の電圧差と縦壁に付与された分極方向の作用により、縦壁は略くの字に変形しインク室内のインクを圧縮させ、結果的にインクを矢印23の方向へ噴出させることができる。即ち圧電素子の特性である剪断モードで縦壁を略くの字に変形させる。該縦壁はインク室のインクを圧縮させるので、圧力隔壁と呼ばれることも多い。
【0005】
このようなインクジェットヘッドにおいては、電極に加える電圧を極力抑制しながら圧力隔壁を大きく変形させる、言い換えれば圧縮効率を高める発明が多数開示されている。例えば特開平4−148934を図13で示しているが、圧力隔壁とカバーが弾性部材により接着された構造であり、低電圧で圧力隔壁を変形させる提案である。図14に示す特許第3200446号の発明では圧力隔壁とカバーとを弾性部材で結合するとともに、インク室内にガラス、セラミックス等のインクより圧縮率の小さなスペーサーを挿入し、圧縮効率を高めている。また図15に示す特開平4−305462では圧力隔壁内部の分極方向50,51とインク流路36の底面側基板の分極方向33,34が互いに逆の構成とすることで、圧縮効率を高めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の先行事例においては、圧縮効率を改善させるための部位をオリフィス板近傍の圧力隔壁に限定している。これに対して本発明は、インク供給口26付近の圧力隔壁の変形に注目している。表1、図12、図19を用いて説明する。
【0007】
【表1】
Figure 2004050662
【0008】
表1の上段は現実形状におけるインク噴出方向に垂直な方向で、左列は図19におけるオリフィス板近傍、右列は図19におけるインク供給口近傍での各断面を表している。表1の下段は、圧電素子の剪断モード変形の基本パターンを表している。表1の上段左列のオリフィス板付近においては圧力隔壁の空気室側電極部9,インク室側電極10は基板1に固定されている。なお各電極は圧力隔壁の上半分に付設されている。電極間の電位差(電界ベクトル)は分極方向4と垂直になるように構成されている。これを簡略モデル化したのが表1の下段左列の図であり、現実形状は圧力隔壁の上側を固定したと近似できるので、電極電圧を印可することにより右方向(矢印39)に剪断変形することになる。一方でインク供給口側においては、表1の上段右列に示すようにカバーが無いので、圧力隔壁は基板下部で固定されることが大きく異なる。インク供給口側では空気室側電極9がインク室側電極10に面対向しないため電界ベクトルが分極方向4とが斜めに交差しているが、これをほぼ直交とみなせば表1の下段右列のように近似できるので、オリフィス板側の変形方向(矢印39)と逆方向(矢印42)に変形することがわかる。
【0009】
この現象を現実形状で示したのが図12の斜視図であり、電極電圧を印可し、圧力隔壁を略くの字に変形させインク室を圧縮させようとするにもかかわらず、インク供給側がこれとは反対方向に変形するため、圧縮効率が低下する課題が発生している。従って、インクジェットヘッドの特性改善においては従来の技術で述べたように圧力隔壁をいかに低電圧で変形させるかという課題に加えて、オリフィス板近傍の圧力隔壁とインク供給側の変形を同方向(同位相)に合わすということも重要である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明のインクジェットヘッドは、インク供給側の分極方法、電極電圧の印加方法を変更してオリフィス板側に対してインク供給側を同方向に変形させることを特徴としたものである。
【0011】
本発明によれば、オリフィス板側を略くの字に変形させてインクを圧縮させるとき、オリフィス板側に対して供給側の変形も同方向を向くので、インクの圧縮を妨げることがなく、インクの圧縮効率が改善され、低電圧で大きな変形が発生可能なインクジェットを提供できる。
【0012】
【発明の実施形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記インク室内の前記オリフィス板側の隔壁の分極方向と前記インク供給口側における前記隔壁の分極方向とを互いに反対の方向に配置することを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記オリフィス板側の前記圧力隔壁と前記基板が同方向に分極され、かつ前記インク供給側口側の前記隔壁と前記基板が同方向に分極され、前記オリフィス板側の隔壁及び基板の領域と前記インク供給側口側の圧力隔壁と基板との領域とが互いに反対の方向に分極されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0014】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記オリフィス板側の隔壁の分極方向に対するインク供給口側における隔壁の分極方向を170度乃至220度の向きに傾斜させたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0015】
本発明の請求項4に記載の発明は、圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記電極に印加する電界の方向を、前記オリフィス板側とインク供給口側では、互いに反対の方向にしたことを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0016】
本発明の請求項5に記載の発明は、前記オリフィス板側に形成された電極と前記インク供給口側に配置された電極は互いに非接触で独立しており、これら二つの電極に対して異なる電圧を印加できるように構成されたことを特徴とする請求項4のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0017】
本発明の請求項6に記載の発明は、前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印加方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印加方向が反対方向になるように、リード線を前記電極に結合することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0018】
本発明の請求項7に記載の発明は、前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印加方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印加方向の電気的位相角の差を略180度になるように印加することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0019】
本発明の請求項8に記載の発明は、前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印可方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印可方向の電気的位相角の差を170度乃至190度になるように印加することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0020】
本発明の請求項9に記載の発明は、圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁およびこれに当接する前記基板のみ分極することを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0021】
本発明の請求項10に記載の発明は、前記オリフィス側の前記隔壁は分極させるが、それ以外の領域は分極させずに使用することを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0022】
本発明の請求項11に記載の発明は、圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁に形成された電極は電圧を印加し、前記インク供給口側の隔壁に形成された電極には電圧を印加しないことを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0023】
本発明の請求項12に記載の発明は、前記オリフィス板側の前記隔壁は電極を形成し電圧を印可させるのに対して、前記インク供給口側の隔壁は電極を形成せずに使用することを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0024】
本発明の請求項13に記載の発明は、圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁に形成された電極に電圧を印加させ、前記インク供給口側の隔壁に形成された電極には電圧を印加せず、かつ、前記オリフィス板側の前記隔壁およびこれに当接する前記基板のみ分極させることを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0025】
本発明の請求項14に記載の発明は、圧電材料からなる基板に対して垂直に複数の圧電素子の圧力隔壁が当接し、さらに前記隔壁に垂直かつ前記基板に平行に敷設されたカバープレートによって構成された複数のインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に電極電圧の印可により圧力を与えてインクを噴射するインクヘッドにおいて、インク供給口付近の前記隔壁の天面をインク供給口側の開放孔に向かって延長したことを特徴とするインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0026】
本発明の請求項15に記載の発明は、インク供給口側の開放孔に向かってインク供給口付近の圧力隔壁の天面を延長し、延長した隔壁の側面をカバープレートと固着させたことを特徴とする請求項14記載のインクジェットヘッドであり、低電圧で前記隔壁が大きく変形できるのでインクの圧縮効率を高めるという作用がある。
【0027】
(実施の形態1)
以下に、本発明の請求項1乃至請求項3に記載された発明の実施の形態について、図1、図2、図20、図22を用いて説明する。図1はアレイ方向に垂直で、かつインク室に関する断面図であり、図2は図1を3次元的に斜視したもので、変形方向も表したものである。図1で示すようにインクはマニホールド側(別名インクタンク)からインク供給孔26を経てインク室内に入り、圧力隔壁で圧縮されてオリフィス板に設けられたオリフィス孔から液滴となり噴出する。オリフィス板側とインク供給口の分極方向が同一方向だとオリフィス板側とインク供給口側の変形方向が逆となり、インク圧縮においてロスが発生する。そこで請求項1に記載したとおりオリフィス板側とインク供給口の分極方向を逆にすれば、図2に示すとおりオリフィス板側とインク供給口側の変形方向が同方向となり、インク圧縮のロスが解消されてインクの圧縮効率が高まる。これにより、より低電圧で大きなインク圧縮が可能なインクジェットヘッドが提供できる。
【0028】
実際に剪断モードのインクジェットヘッドを製作する場合、圧電素子の母材(バルク状態)に対して分極処理を施し、基板並びにインク室及び空気室を形成する方法が一般的であり、その時には基板も分極されることになる。従って請求項2に述べるように、インクの圧縮効率を高めるためには基板に関してもオリフィス板側とインク供給口側で分極方向を逆にしておく必要がある。
【0029】
上述の作用は、請求項3に述べるように、オリフィス板側とインク供給口側の分極方向が180度に限定されるものでない。図22に示す圧電材料PZTのヘッドに対して圧力隔壁に付設された電極に30Vと0Vの電位差を印可し、分極方向の角度θを変えながら圧力隔壁の変形を実験した結果が、図20のグラフである。これによれば分極方向の角度θが170度乃至220度の範囲で安定して大きな変形量が得られることがわかる。
【0030】
なお分極方向θが90度の時に変形量が零にならないのは、θ=90度が電極間の電界方向と合致するので圧電素子における縦振動モードが発生し、この縦振動モードでインク供給口側の圧力隔壁が変形するためである。この縦振動モードが無ければx方向の変位量はθ=0度で最小、θ=180度で最大となるはずだが、縦振動モードの影響により、最小/最大のピークが約10度ほどシフトする。
【0031】
(実施の形態2)
以下に、本発明の請求項4乃至請求項8に記載された発明の実施の形態について、図2乃至図5、図21、図22を用いて説明する。図3はアレイ方向に垂直で、かつインク室に関する断面図であり、とくに電極電圧の印加方法についての模式図である。図4は特に電極電圧の印加方法として交流電源を表現したものである。図5はオリフィス板側に対する供給口側の電極電圧の位相を表したものである。図21は電極電圧の位相角を変化させた場合の実験結果であり、図22は実験条件を示している。
【0032】
請求項4に示す構成が図3に示されるものである。即ち、インク室側および空気室側(図は省略)の各壁面にはオリフィス板側とインク供給口側の2カ所に電極電圧が付設されている。前記2カ所の電極64,65の間は請求項5の通り非接で独立した構成である。
【0033】
従来の技術課題はオリフィス板側とインク供給口側とで圧力隔壁の変形方向が逆転していることであり、この原因は表1で示した分極方向と電界方向(電圧差の方向)が同じなのに圧力隔壁の固定方法が違うためである。そこで実施の形態2においては、電界方向をオリフィス板側とインク供給口側で逆転させる解決方法を提案するものである。即ち、請求項6に記載したように電極電源からの電圧がオリフィス板側とインク供給口側で逆転するように機械的に配線した場合が図である。オリフィス板側とインク供給口側での電極電圧が電気的位相にて180度ずれるように実施したのが図4及び図5にて示す請求項7の発明である。これによりオリフィス板側とインク供給口側の圧力隔壁の変形方向は同じとなり、インク圧縮時のロスが解消されるので、結果的に低電圧で大きな変形が可能なインクジェットヘッドが提供可能である。
【0034】
上述の作用において、オリフィス板側とインク供給口側の電気的位相は、請求項8に記載したように180度に限定されるものでない。
【0035】
図22において分極方向の角度をθ=0とし、オリフィス板側の電極電圧に対するインク供給口側の電極電圧の電気的な位相角を変えた実験結果を図21に示す。電気的な位相角が170度乃至190度の範囲で安定して大きな変形量が得られている。電気的な位相角を変化させる場合は、実施の形態1で記述したような現象(最小位置と最大位置が10度シフトする現象)は発生しない。
【0036】
従って、請求項8の如く、電極電圧に加える電圧の電気的位相角が170度乃至190度であれば、圧力隔壁は低電圧で大きな変形を生じさせることが可能であり、インクの圧縮効率が改善できる。
【0037】
(実施の形態3)
以下に、本発明の請求項9乃至請求項10に記載された発明の実施の形態について、図6を用いて説明する。図6はアレイ方向に垂直で、かつインク室に関する断面図であり、とくに分極方向についての模式図である。オリフィス板側とインク供給口側で圧力隔壁の変形方向が逆になるのは、そもそも、インク供給口側が変形するからである。従って、変形させないことも課題を解決するためのひとつの手段である。図6中の57で示したようにインク供給口側の圧電材料を意図的に分極させない発明を提案する。請求項9においてはオリフィス板側の圧力隔壁および下部に位置する基板を分極、請求項10ではオリフィス板側の圧力隔壁のみを分極させている。
【0038】
こうすることにより、オリフィス板側の圧力隔壁でインクを圧縮しているプロセス中にインク供給口側の圧力隔壁が逆方向に変形して圧縮ロスが発生するというロスが防止できる。従ってインクの圧縮効率を改善した高性能なインクジェットヘッドが提供できる。
【0039】
(実施の形態4)
以下に、本発明の請求項11乃至請求項13に記載された発明の実施の形態について、図7乃至図9を用いて説明する。図7乃至図9は、いずれもアレイ方向に垂直でインク室中央にて切断した斜視図である。
【0040】
オリフィス板側とインク供給口側で圧力隔壁の変形方向が逆になるのは、そもそも、インク供給口側が変形するからである。従って、変形させないことも課題を解決するためのひとつの手段である。
【0041】
請求項11の実施例を図7に示すが、インク供給口側の圧力隔壁に電極を付設するものの、そこには電圧を印可させないことにより、インク供給口側の圧力隔壁の変形を防止している。また請求項12の実施例を図8に示すが、インク供給口側の圧力隔壁部の電極電圧を付設しないことで、インク供給口側の圧力隔壁の変形を防止している。
【0042】
請求項13の実施例を図9に示すが、これは請求項9と請求項12を組み合わせた発明であり、インク供給口側においては未分極で、かつ電極を除去することにより、より確実にインク供給口側での圧力隔壁の変形を抑制する事が可能である。
【0043】
こうすることにより、オリフィス板側の圧力隔壁でインクを圧縮しているプロセス中にインク供給口側の圧力隔壁が逆方向に変形して圧縮ロスが発生するというロスが防止できる。従ってインクの圧縮効率を改善した高性能なインクジェットヘッドが提供できる。
【0044】
(実施の形態5)
以下に、本発明の請求項14乃至請求項15に記載された発明の実施の形態について、図10乃至図11を用いて説明する。図10はアレイ方向に垂直でインク室中央にて切断した斜視図で、組立工程の模式図である。図11はアレイ方向に垂直で空気室中央にて切断した斜視図である。
【0045】
図10に示すようにインク供給口部分の圧力隔壁に関して、電極を付けずに天面方向に延長することで、インク供給口側の圧力隔壁の曲げ剛性を高める。こうすることで、インク供給口側の圧力隔壁の変形量が抑制できる。これが請求項14の発明である。また請求項15では延長した圧力隔壁70を上部カバー71に固着させており、より確実にインク供給口側の圧力隔壁の変形量が抑制できる。
【0046】
従って、オリフィス板側の圧力隔壁でインクを圧縮しているプロセス中にインク供給口側の圧力隔壁が逆方向に変形して圧縮ロスが発生するというロスが防止できるため、インクの圧縮効率を改善した高性能なインクジェットヘッドが提供できる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明のインクジェットヘッドによれば、インク供給口側の分極方法の変更、あるいは電極電圧の印可方法の変更を行うだけで、オリフィス板側の圧力隔壁とインク供給口側の圧力隔壁の変形方向を同方向にする事が可能である。
【0048】
もしくはインク供給口側に関して未分極で使用、電極の除去、圧力隔壁の形状変更にて、オリフィス板側の圧力隔壁でインクを圧縮しているプロセス中にインク供給口側の圧力隔壁が逆方向に変形することを防止することができる。従って、従来と同じ電極電圧なら圧力隔壁を大きく変形させることができる。もしくは圧力隔壁の変形量を従来と同じにするならばそれに要する電極電圧を低くすることが可能であり、インクの圧縮効率を改善した高性能なインクジェットヘッドが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1におけるインクジェットヘッド装置での圧電素子の分極方向を表す断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁の変形方向を表す斜視図
【図3】本発明の実施の形態2におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁に付設された電極への電圧の印加方法を表す斜視図
【図4】本発明の実施の形態2におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁に付設された電極への電圧の印加方法を表す斜視図
【図5】図4においてオリフィス板側電極とインク供給口側電極の印加電圧が電気的な位相で180度異なることを表す図
【図6】本発明の実施の形態3におけるインクジェットヘッド装置での圧電素子の分極方向を表す断面図
【図7】本発明の実施の形態4におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁に付設された電極への電圧の印加方法を表す斜視図
【図8】本発明の実施の形態4におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁に付設された電極への電圧の印加方法を表す斜視図
【図9】本発明の実施の形態4におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁に付設された電極への電圧の印加方法を表す斜視図
【図10】本発明の実施の形態5におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁の形状を表す斜視図
【図11】本発明の実施の形態5におけるインクジェットヘッド装置の構成を表す斜視図
【図12】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置での圧力隔壁の変形方向を表す斜視図
【図13】従来の技術として説明する特開平4−148934の代表図
【図14】従来の技術として説明する特許第3200446の代表図
【図15】従来の技術として説明する特開平4−305462の代表図
【図16】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置で圧力隔壁に付設されたインク室側の電極を表す斜視図
【図17】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置で圧力隔壁に付設された空気室側の電極を表す斜視図
【図18】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置での圧電素子の分極方向を表す断面図
【図19】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置の構成を表す斜視図
【図20】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置で、オリフィス板側に対してインク供給口側の分極方向を同方向から逆方向に変化させた場合の圧力隔壁の変形をシミュレーションした結果図
【図21】従来の技術におけるインクジェットヘッド装置で、オリフィス板側に対してインク供給口側の電圧印加の電気的位相角を同方向から逆方向に変化させた場合の圧力隔壁の変形をシミュレーションした結果図
【図22】検証実験の条件をまとめた図
【符号の説明】
1 基板
2 カバー
3 カバー
4 オリフィス板側の分極方向
5 オリフィス板
6 インクタンク側壁
7 インク
8 液滴
9 インク室側電極
10 空気室側電極
20 圧力隔壁
21 インク室
22 空気室
23 インク進行方向
24 インク進行方向
25 仮想切断面
26 インク供給孔
30 弾性部材
31 スペーサー
32 基板
33 基板側の分極方向
34 基板側の分極方向
36 インク流路
37 基板
38 変形形状
39 オリフィス板側変形方向
40 直流電圧源
41 供給口側隔壁
42 供給口側変形方向
44 インク供給口側の分極方向
50 圧力隔壁の分極方向
51 圧力隔壁の分極方向
57 供給口側分極方向
60 電極用電圧源
61 電気配線
62 供給口側電圧源
63 オリフィス板側電圧源
64 オリフィス板側電極
65 供給口側電極
70 延長隔壁
71 カバー

Claims (15)

  1. 圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記インク室内の前記オリフィス板側の隔壁の分極方向と前記インク供給口側における前記隔壁の分極方向とを互いに反対の方向に配置することを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記オリフィス板側の前記圧力隔壁と前記基板が同方向に分極され、かつ前記インク供給側口側の前記隔壁と前記基板が同方向に分極され、前記オリフィス板側の隔壁及び基板の領域と前記インク供給側口側の圧力隔壁と基板との領域とが互いに反対の方向に分極されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記オリフィス板側の隔壁の分極方向に対するインク供給口側における隔壁の分極方向を170度乃至220度の向きに傾斜させたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  4. 圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記電極に印加する電界の方向を、前記オリフィス板側とインク供給口側では、互いに反対の方向にしたことを特徴とするインクジェットヘッド。
  5. 前記オリフィス板側に形成された電極と前記インク供給口側に配置された電極は互いに非接触で独立しており、これら二つの電極に対して異なる電圧を印加できるように構成されたことを特徴とする請求項4のインクジェットヘッド。
  6. 前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印加方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印加方向が反対方向になるように、リード線を前記電極に結合することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印加方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印加方向の電気的位相角の差を略180度になるように印加することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記電極において、前記オリフィス板側の電極電圧の印可方向に対して、前記インク供給口側における電極電圧の印可方向の電気的位相角の差を170度乃至190度になるように印加することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  9. 圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁およびこれに当接する前記基板のみ分極することを特徴とするインクジェットヘッド。
  10. 前記オリフィス側の前記隔壁は分極させるが、それ以外の領域は分極させずに使用することを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッド。
  11. 圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁に形成された電極は電圧を印加し、前記インク供給口側の隔壁に形成された電極には電圧を印加しないことを特徴とするインクジェットヘッド。
  12. 前記オリフィス板側の前記隔壁は電極を形成し電圧を印可させるのに対して、前記インク供給口側の隔壁は電極を形成せずに使用することを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッド。
  13. 圧電材料からなる基板上に隔壁で隔てられた複数の溝から成るインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に圧力を与えてインクを吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記隔壁の両面には電極が形成され、かつ前記インク室内のインク流路は、インク供給口からインク室内を通過してオリフィス板のオリフィス孔からインクを吐出させるように構成されており、前記オリフィス板側の前記隔壁に形成された電極に電圧を印加させ、前記インク供給口側の隔壁に形成された電極には電圧を印加せず、かつ、前記オリフィス板側の前記隔壁およびこれに当接する前記基板のみ分極させることを特徴とするインクジェットヘッド。
  14. 圧電材料からなる基板に対して垂直に複数の圧電素子の圧力隔壁が当接し、さらに前記隔壁に垂直かつ前記基板に平行に敷設されたカバープレートによって構成された複数のインク室を有し、前記隔壁の剪断モード変形により前記インク室内に電極電圧の印可により圧力を与えてインクを噴射するインクヘッドにおいて、インク供給口付近の前記隔壁の天面をインク供給口側の開放孔に向かって延長したことを特徴とするインクジェットヘッド。
  15. インク供給口側の開放孔に向かってインク供給口付近の圧力隔壁の天面を延長し、延長した隔壁の側面をカバープレートと固着させたことを特徴とする請求項14記載のインクジェットヘッド。
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