JP3758255B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドに関し、特に、インク圧力室を有するキャビティープレートと、前記インク圧力室の開口部を被覆するように取り付けられた圧電素子と、該圧電素子の上下面にそれぞれ設けられた電極と、前記インク圧力室に連通するノズルとを有し、前記電極に駆動電圧を印加して前記圧電素子を伸縮変形させることにより前記インク圧力室内に圧力振動を生じさせて前記ノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3に示すごとく、従来のインクジェットヘッド100では、厚さ方向に分極された圧電素子102と、その上下面に形成された電極104,106と、圧電素子102の伸縮変形を拘束する拘束板108とが一体となって、キャビティプレート110のインク圧力室112を覆っているものが存在する。
【0003】
この構成では、電極104,106に駆動電圧を印加することにより、圧電素子102が厚さ方向に伸び、厚さ方向と直角方向に縮む。このとき圧電素子102の伸縮変形は拘束板108によって拘束されているので、たわみを発生してインク圧力室112に圧力を加えて、インク圧力室112に連通するノズルから外部に、インクを吐出させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図3のような構成では、圧電素子102の上下面に電極104,106を形成した後、圧電素子102上に、特に電極104に対して精度良く拘束板108を接着等により配置して形成する必要があり、生産性が非常に悪かった。しかも、2インチ幅、4インチ幅、A4用紙幅といった多数のノズルを有するヘッドでは、全ての電極104に対して拘束板108を高精度に位置合わせするのは大変困難であった。
【0005】
図4のインクジェットヘッド200ように、拘束板208を圧電素子202の全面にわたって貼り付けると、図3のように電極204に対して高精度な位置決めする必要ないが、この場合には圧電素子202の伸縮変形が全面にわたって拘束されるため、大きな変形量が得られないという問題が生じた。
【0006】
本発明は、拘束板と電極との高精度な位置決めを必要とせず、大きな変形量も得られるインクジェットヘッドの提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
ここには、1つまたはそれ以上の発明が記載され、それぞれ以下に述べるような構成および効果を有する。
本発明のインクジェットヘッドは、インク圧力室を有するキャビティープレートと、前記インク圧力室の開口部を被覆するように前記キャビティープレートに取り付けられた圧電素子と、該圧電素子の前記キャビティープレートに取り付けられる側の面である下面に設けられた共通電極と、下面とは反対の上面に設けられた個別電極と、前記インク圧力室に連通するノズルとを有し、前記個別電極と前記共通電極との間に駆動電圧を印加して前記圧電素子を伸縮変形させることにより前記インク圧力室内に圧力振動を生じさせて前記ノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドであって、前記圧電素子は、その厚み方向に前記個別電極から前記共通電極に向かって分極処理がなされており、前記圧電素子の上面に設けられた前記個別電極は、下面に設けられた前記共通電極よりも前記圧電素子の伸縮変形を拘束する力が強くなるように、前記共通電極よりもその弾性係数が大きい材質で形成されるとともに、前記個別電極が前記共通電極よりも前記圧電素子の伸縮変形を拘束する力が強くなるように、前記個別電極の厚さが5〜30μm、前記圧電素子の厚さは5〜30μm、前記共通電極の厚さは3μm以下とされ、駆動電圧印加時に、前記圧電素子がその上面が凸側で下面が凹側となるように湾曲して、前記インク圧力室内に圧力振動を生じさせることを特徴とする。
【0008】
このように、上面の個別電極の方が下面の共通電極に比較して圧電素子に対する拘束力が大きいため、圧電素子が縮めば、圧電素子は上面側に凸となるように湾曲する。
【0009】
したがって、独立した拘束板が不用なので、全体の構成が簡単なものとなるとともに、個別電極そのものが拘束板であることから、従来のように電極に対して正確に位置決めして拘束板を設ける必要がなく、製造が容易である。しかも、圧電素子の全面にわたって拘束板を設ける必要はないので、圧電素子の伸縮変形が全面にわたって拘束されることはなく、大きな変形量が得られる。
【0010】
このような拘束力の差は、個別電極と共通電極の間に、厚み上の差が設けられていること、すなわち、個別電極の厚さが5〜30μm、圧電素子の厚さは5〜30μm、共通電極の厚さは3μm以下とすることにより、達成することができる
【0011】
また拘束力の差は、厚みの差に加えて、個別電極を共通電極よりも弾性係数の大きい材質で形成することによっても達成できる。
尚、圧電素子の分極処理は、駆動時に用いられる前記個別電極及び共通電極により行っても良い。このようにすると、特別な分極用電極を形成することもなく、また分極用の特別な治具を用いる必要もなくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1(a)および図2は、上述した発明のいくつかが適用されたインクジェットヘッド2の構成を示し、図2はキャビティ4の軸方向に沿って切断した縦断面図を表し、図1(a)はキャビティ4の軸方向に直角(X−X)に切断した面の一部を拡大して示す縦断面説明図である。
【0013】
インク圧力室であるキャビティ4は、キャビティプレート6上に側壁6aにより仕切られて、溝状に形成されている。キャビティプレート6のキャビティ4が開口している一面には、シート状圧電素子8が接合されている。シート状圧電素子8の上下面の内、キャビティプレート6に接合している下面側には薄い共通電極10が設けられ、上面側にはキャビティ4の中央に対応する位置に、キャビティ4内のインクの流動方向に沿って延びた、厚みのある個別電極12が設けられている。例えば、シート状圧電素子8の厚さt1:共通電極10の厚さt2:個別電極12の厚さt3≒10:1:5に設定されている。具体的には、例えば、t1≒20μm、t2≒2μm、t3≒10μmである。
【0014】
共通電極10は銀ペースト等の導電性ペーストをシート状圧電素子8に塗布してなるものであり、シート状圧電素子8の変形に対する拘束力はほとんどないが、個別電極12は、銅、銀等の金属層からなり、厚いことから、シート状圧電素子8の変形に対して十分な拘束力を有する。この個別電極12は、シート状圧電素子8の上面全面に必要な厚さに金属をメッキした後、エッチングにより余分な部分の金属を除去することにより形成される。
【0015】
シート状圧電素子8は図示矢印のごとく、シート状圧電素子8の厚み方向に、個別電極12から共通電極10に向かって分極処理がなされている。このため、個別電極12と共通電極10との間に、個別電極12をプラス側とし共通電極10側をマイナスあるいは接地側として駆動電圧を印加させることにより、シート状圧電素子8の内、個別電極12と共通電極10とに挟まれた部分が、面方向に縮む。
【0016】
このようにシート状圧電素子8が縮むと、シート状圧電素子8に設けられている電極10,12の内、個別電極12のみがその拘束力の強さから、拘束板として作用するので、図1(b)に示すごとく、個別電極12側を凸側、共通電極10側を凹側として、キャビティ4の中心付近のシート状圧電素子8が盛り上がるように変形する。このことにより、キャビティ4の体積が増加しキャビティ4内のインクの圧力が低下し、図2に示したインク室20からインクをキャビティ4内に吸い込む。
【0017】
続いて共通電極10と個別電極12との間の駆動電圧印加を停止すると、図1(b)の状態から図1(a)の状態に戻り、キャビティ4の体積が減少しキャビティ4内のインクの圧力が増加する。このことにより、ノズル22からインクが外部に吐出される。
【0018】
このようにして、キャビティ4内のインクに圧力振動が生じることにより、ノズル22に対面した外部の記録媒体に、インクで記録がなされる。尚、分極方向や駆動電圧の電界方向は上述とは異なっていても良く、適宜決定すれば良い。
本実施の形態のインクジェットヘッド2は、上下両面に設けられた電極10,12の内の一方の個別電極12が、シート状圧電素子8の拘束板として作用するのに十分に厚く形成されているので、更に個別電極12上に拘束板を形成しなくてもシート状圧電素子8を駆動電圧の印加にて変形させることができる。
【0019】
したがって、独立した拘束板が不用なので、全体の構成が簡単なものとなるとともに、個別電極12そのものが拘束板であることから、従来のように個別電極12に対して正確に位置決めして拘束板を設ける必要がなく、製造が容易となる。また、シート状圧電素子8の全面にわたって拘束板を設ける必要がないので、圧電素子の伸縮変形が全面にわたって拘束されることはなく、十分大きな変形量が得られる。
【0020】
なお、シート状圧電素子8はキャビティ4のすべてを覆っている一枚のシートであることから、性能の均一性を高めることができ、すべてのノズル22において、均一な吐出性能を得ることができる。
分極処理も共通電極10と個別電極12とをそのまま利用してできるので、別個に分極のための電極を設けたり、あるいは特別な分極装置を用いる必要が無く、効率的であり、製造コストも低くて済む。
【0021】
なお、本実施の形態は、駆動電圧によって発生する電界の向きと圧電素子の分極方向とが一致しているタイプであることから、大きな変形量を得ることができ、小型でも大きな吐出量を得ることができる。
[その他]
前記実施の形態では、共通電極10がキャビティプレート6側であり、個別電極12がキャビティプレート6とは反対側に設けられていたが、この逆の配置でも良い。逆に配置した場合には、前記実施の形態のごとくの分極および電界方向では、駆動電圧印加時にシート状圧電素子8はキャビティ4側に陥没するように変形し、駆動電圧非印加時には、平面状に戻ることになる。
【0022】
前記実施の形態においては、個別電極12が厚くされていることにより、共通電極10との間で、シート状圧電素子8に対する拘束力の差を生じさせていたが、この厚さの差としては、具体的には、例えば、シート状圧電素子8の厚さを5〜30μm、共通電極10の厚さは3μm以下、および個別電極12の厚さは5〜30μmとすることが挙げられる。
【0023】
また、拘束力の差を生じさせるには、厚さ以外に電極の間に、材質強度としての差を設けることによっても達成できる。この材質強度としては、弾性係数を指標として選択しても良い。また、厚さと材質強度との両方により拘束力の差を生じさせても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態としてのインクジェットヘッドの一部の構成を示す縦断面説明図であり、(a)は駆動電圧非印加時の状態、(b)は駆動電圧印加時の状態を示す。
【図2】 一実施の形態としてのインクジェットヘッド縦断面図である。
【図3】 従来例のインクジェットヘッドの一部の構成を示す縦断面説明図である。
【図4】 他の従来例のインクジェットヘッドの一部の構成を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
2…インクジェットヘッド 4…キャビティ
6…キャビティプレート 6a…側壁 8…シート状圧電素子
10…共通電極 12…個別電極 20…インク室 22…ノズル

Claims (1)

  1. インク圧力室を有するキャビティープレートと、前記インク圧力室の開口部を被覆するように前記キャビティープレートに取り付けられた圧電素子と、該圧電素子の前記キャビティープレートに取り付けられる側の面である下面に設けられた共通電極と、下面とは反対の上面に設けられた個別電極と、前記インク圧力室に連通するノズルとを有し、
    前記個別電極と前記共通電極との間に駆動電圧を印加して前記圧電素子を伸縮変形させることにより前記インク圧力室内に圧力振動を生じさせて前記ノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドであって、
    前記圧電素子は、その厚み方向に前記個別電極から前記共通電極に向かって分極処理がなされており、
    前記圧電素子の上面に設けられた前記個別電極は、下面に設けられた前記共通電極よりも前記圧電素子の伸縮変形を拘束する力が強くなるように、前記共通電極よりもその弾性係数が大きい材質で形成されるとともに、前記個別電極が前記共通電極よりも前記圧電素子の伸縮変形を拘束する力が強くなるように、前記個別電極の厚さが5〜30μm、前記圧電素子の厚さは5〜30μm、前記共通電極の厚さは3μm以下とされ、
    駆動電圧印加時に、前記圧電素子がその上面が凸側で下面が凹側となるように湾曲して、前記インク圧力室内に圧力振動を生じさせることを特徴とするインクジェットヘッド。
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