JP2004049009A - 糯玄米 - Google Patents
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Abstract
【課題】調理適性と食味に優れた糯玄米を提供すること。
【解決手段】多孔質構造を有する糯玄米。その吸水率は120〜145%であることが好ましい。また、玄米中の蓚酸量が15mg/100g未満であることが好ましい。本発明の糯玄米は、調味液の浸透性が良いという特徴を有し、玄米加工食品の製造原料として適している。
このような糯玄米は、玄米を浸漬処理した後、湿熱処理し、次いで、乾燥することにより製造することが出来る。
【選択図】 なし
【解決手段】多孔質構造を有する糯玄米。その吸水率は120〜145%であることが好ましい。また、玄米中の蓚酸量が15mg/100g未満であることが好ましい。本発明の糯玄米は、調味液の浸透性が良いという特徴を有し、玄米加工食品の製造原料として適している。
このような糯玄米は、玄米を浸漬処理した後、湿熱処理し、次いで、乾燥することにより製造することが出来る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、調理適性と食味に優れた糯玄米に関する。
【0002】
【従来の技術】
玄米は、白米に比べ栄養価が高いことは一般によく知られている。しかしながら、玄米は固い外皮に覆われているため、米の吸水率が悪く、通常、圧力釜などを利用し加圧下で炊飯する必要があった。近年、加工米飯の需要として、調味米飯が伸長してきている中で、玄米の調味米飯への応用もされているが、加圧下で調理をしても、調味液の浸透が悪く、調味米飯には適さない。
【0003】
また、玄米の糠層には蓚酸が多く含まれるため、えぐみが強く、食味に劣る。えぐみを低減するために、玄米を水に混合して、PH2.5〜6.5の状態で3日以上保存する方法(特開昭62−166855号公報)が提案されている。しかし、この方法はえぐみを低減することはできるが、処理に要する時間が3日以上と長時間酸性水に浸漬するため、風味が失われるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、調味液の浸透性が良く、食味に優れた糯玄米を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの課題を解決するために鋭意検討の結果、玄米の構造を多孔質とすることで、通常の玄米を調理した時の調味液の浸透に要する時間を短縮することができ、さらに味の馴染みが良く、蓚酸が低減化し、食味の優れた調味米飯を得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の第一は、多孔質な構造を有する糯玄米である。
第二は、吸水率が120〜145%であり、調味料の浸透性が良いことを特徴とする糯玄米である。
第三は、玄米中の蓚酸量が15mg/100g未満であることを特徴とする糯玄米である。さらに、この玄米の製造方法、それを原料として得られる加工食品に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の玄米は、後述の実施例及び図1に示されるように、多孔質構造を有する。このような多孔質構造の玄米は、通常、玄米を浸漬処理し、湿熱処理後、乾燥することにより得られる。玄米の浸漬処理により玄米の糠層及び胚乳組織が吸水し膨潤化する。これを湿熱処理後、乾燥することにより膨潤化した形態を保ったまま乾燥され、糠層及び胚乳組織が多孔質となる。また、浸漬処理により玄米の糠層の蓚酸が除去される。
蓚酸含量は、原料の糯玄米の40%以下まで低減化され、好ましくは50%以下まで低減化される。具体的には15mg/100g未満である。蓚酸含量が15mg/100g以上では、糯玄米独特の渋味、えぐみが強く、食味が悪い。
【0007】
玄米の浸漬処理は、例えば次のような方法で実施できる。
玄米を通常2乃至4回程洗米し、水切り後、浸漬槽(浸漬用タンク)に浸漬する。洗米に供する水は、水道水、蒸留水、井戸水、酸性水、電解食塩水、オゾンを溶存させた水等の食品用に使用できる水であれば、いずれの使用も可能である。
【0008】
浸漬槽の浸漬条件は、通常20乃至50℃の温水中に発芽するまで浸漬するか、あるいは例えば3乃至5時間程浸漬し、その後脱水を行い、発芽するまで間欠的に散水を行って、所定時間、高湿度の条件下で処理する方法が良い。使用する温水は、前記の洗米工程で例示した様な水が例示でき、食品用に使用できる水であれば、いずれも可能である。また、浸漬から発芽するまでを液相中で実施する場合は、例えば、3乃至48時間、通常20乃至50℃の温水中に浸漬させ、発芽させる。尚、浸漬中は、適度なエアレーションを行うことで、均一な発芽を行うことが出来る。
【0009】
発芽させる場合には、一般的には胚の部分から0.5mm〜2.0mm程度の膨らみ、あるいは突起部、幼芽が確認できる程度の状態が良い。発芽後は、加熱処理して、発芽を停止させるが、その方法としては、蒸煮しても良いし、熱風あるいはマイクロウェーブ、冷却等の適当な方法により、温度処理あるいは乾燥させても良い。
【0010】
浸漬タンクから玄米を排出して次の乾燥工程へ移行するが、乾燥前に、玄米がほぼ単粒状態になる程度まで付着水を除去し、ついで湿熱処理を施して乾燥するのが好ましい。単粒状態とは玄米粒が表面の付着水によって大部分が互いに付着していない状態である。これによって、湿熱処理、乾燥工程時のハンドリングが行いやすくなり、粒同士あるいは機器壁面への付着、α化度の不均一、乾燥むらを防ぐことが可能となり、乾燥効率も改善できる。表面の付着水の除去は、例えば、排出した玄米を水切りコンベア上に載せて行うことができるし、その際に振動を与えたり、送風を行うことでより効率良く表面の付着水を除去することができる。また、必要に応じて、例えば攪拌機能をもった回転羽、スクリューなどで攪拌を行うと尚良い。
【0011】
湿熱処理は、具体的には、飽和水蒸気か熱水あるいは過熱蒸気等を熱媒体として高湿度雰囲気、例えば湿度60%以上の雰囲気で対象物を加熱する方法である。この場合には、加熱対象物と熱媒体を直接接触させ加熱する方法と例えば湿度60%以上の雰囲気でかつ伝導加熱方式のように間接的に熱媒体を接触させ、加熱する方法のどちらでも実施可能である。具体的な条件は、例えば、蒸気温度98〜180℃で3秒〜30分間処理することができる。蒸気温度が98℃以下の場合、α化、乾燥自体に問題はないが、所望のα化に要する時間が長くなるため、工業的に大量生産を行う場合には、あまり好ましくない。一方で、180℃を超えるとα化が進みすぎる問題があり、米粒の付着が生じ、乾燥工程のハンドリングが悪くなる。処理時間は、3秒未満では、粒のα化度にムラが生じやすいこともあるが、実際の工程における制御も難しい。また、処理時間が30分を超えると玄米のα化が進行し過ぎ、乾燥工程でのハンドリングが悪い。
【0012】
また、上述した以外の方法として米飯製造や発酵工業等で行われる米の蒸煮処理を用いた方法が例示できる。具体的には、例えば、浸漬処理した玄米を0.1〜7.0kg/cm2、好ましくは0.1〜2.0kg/cm2の条件下で、3秒〜30分間、好ましくは10秒〜30分間蒸気で処理する方法である。蒸気圧が、0.1kg/cm2未満では、胴割れ、砕米の発生防止効果は少なく、処理時間が3秒未満でも同様である。逆に処理時間が長くなりすぎると、α化が進み過ぎ、乾燥工程のハンドリングが悪くなる傾向がある。一方、蒸気圧が7.0kg/cm2を超えても、胴割れ、砕米の発生防止効果は得られるが、圧力が高すぎ、安全性に問題がある。
【0013】
乾燥は、対流(熱風)乾燥法、放射乾燥法、伝導乾燥法、電磁波等による均一発熱法、真空乾燥法、凍結乾燥法等のいずれの方法をもっても行うことが可能である。
また、所望の水分値に達するまでに、工程中にテンパリングを行うことで、仕上がりが美しく、砕米の発生をより低減させることが可能である。
乾燥は、得られる玄米の水分量を、通常10〜18%、好ましくは12〜18%、さらに好ましくは13〜16%になるようにする。水分量が10%未満である場合、玄米の粒に胴割れ、砕米が発生しやすくなり、乾燥玄米としての歩留まりが悪くなる。一方、水分量が18%を超える場合、カビ、細菌などが発生しやすく、加工適性、保存性に問題が生じる。
【0014】
また、湿熱処理や乾燥の条件はα化度に影響を及ぼす。α化度とは、β−アミラーゼ・プルラナーゼ法(BAP法)によって測定した値である。BAP法は糊化デンプンと生デンプンまたは老化デンプンを識別するのに優れた方法である。湿熱処理や乾燥を緩やかな条件で行うとα化度は低くなり、温度を高くしたり時間を長くするとα化度は高くなる。発芽玄米のα化度は、通常5〜90%であり、好ましくは、30〜85%、さらに好ましくは50〜80%であり、このような範囲になるように、熱処理、乾燥の条件を定めるのが好ましい。
なお、原料糯玄米をあらかじめ搗精することにより、乾燥時間を短縮し、果皮の硬さや異臭を低減させることが可能になる。また、乾燥後に玄米の表皮の一部を搗精して剥離・裂傷することで、表皮の固さや異臭をより低減させることもできる。このようにして浸漬、乾燥処理した多孔質糯玄米を得ることができる。
【0015】
吸水率とは、30℃の恒温下で、1時間浸漬した後の玄米の吸水状態での重量を浸漬前の重量で除し、%で表したものである。吸水率は120〜145%であり、好ましくは130〜145%が良い。吸水率が120%未満では、調味液の浸透性が悪く、味の馴染みが遅く、調理に時間を要する。また、吸水率が145%を超えると、逆に炊飯玄米の形状が崩れ易く、食味だけでなく外観も損なってしまう。吸水率は玄米の水分とも関係し、含水量が小さいものは吸水率が大きく、水分量が大きいものは吸水率が小さい。
ただし、吸水率は含水量だけでなく、玄米の表皮の剥離や、裂傷などにも大きく影響される。従って、含水量の調整や搗精することで、吸水率をコントロールすることが可能であり、搗精が進めば、吸水率も大きくなる。含水量、吸水率は適宜実験することにより、搗精、蒸煮、乾燥の条件を定めて所望の値に調整することができる。
【0016】
多孔質の構造を有する糯玄米は、調味液処理をし、調理することができる。調味液処理としては、多孔質糯玄米と調味液とを接触させる処理を全て含み、例えば、調味液に多孔質糯玄米を浸漬、塗付、スプレーするなどの処理がある。この際、調味液及び水分が米に吸収されるのが好ましく、調味液処理後、炊飯、蒸煮、餅つきなどの加工調理を行っても良い。
調味液としては、調理において常用される調味液を含み、例えば、醤油、みりん、砂糖、液糖その他甘味料、だし汁、魚介類エキス、化学調味料、カラメル、増粘剤、その他着色料を含む各種添加料を適宜配合する。
【0017】
本発明の多孔質糯玄米を用いた加工食品としては、切り餅、ちまき、おはぎ、大福、おかき、お焼きなどはもとより、例えば雑煮、雑炊、赤飯や栗飯などのおこわ、イカ飯、参鶏湯(サムケタン)などの調味米飯、もち米入りシュウマイまたは春巻きなどが例示できる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例で詳細に説明する。
実施例1
原料糯玄米(ヒヨクモチ)を洗米機にて洗浄し、30℃の恒温水中で24時間浸漬させた。その後、98℃、3分間蒸煮し、引き続き100℃の流動層乾燥を行い、水分量を15%に調整した多孔質糯玄米を得た。
乾燥糯玄米を水で軽くすすいだ後、水切りした。その後、全体の米重量に対して1.5倍の調味液を加え、家庭用炊飯器で炊飯した。調味液の組成は、醤油5.5部、みりん2部、酒2部、化学調味料1部、塩0.5部、水88部とした。
比較例1
原料糯玄米(ヒヨクモチ)を実施例1と同様の方法で炊飯した。
【0019】
評価例1
評価は以下のようにして行った。
[玄米の断面写真]
実施例1の多孔質糯玄米及び比較例1の糯玄米をミクロトームにより米粒中央部長軸に沿ってスライスし、試料とした。走査型電子顕微鏡(SEM)により切断面を撮影し、図1に示した。
[蓚酸量]
炊飯前玄米の蓚酸量は、高速液体クロマトグラフ法を用いて定量した。結果を表1に示した。
【0020】
[官能試験]
実施例1及び比較例1で得られた米飯について、パネラー9名(20代〜30代)を対象に官能試験を行い、結果をパネラーのコメントを含めて表1に示した。
調味液の浸透性について、以下のように評価した。
○:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが6名以上
△:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが3〜5名
×:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが0〜2名
米飯のえぐ味について、以下のように評価した。
○:えぐ味が感じられると答えたパネラーが0〜2名
△:えぐ味が感じられると答えたパネラーが3〜5名
×:えぐ味が感じられると答えたパネラーが6名以上
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
図1の炊飯前玄米の断面写真より、本発明の糯玄米は胚乳部分が多孔質状であることが分かった。また、吸水率を比較すると、比較例1の炊飯前糯玄米の吸水率が111%に対し実施例1の炊飯前乾燥糯玄米の吸水率では、137.6%と吸水性が高いことが分かった。
本発明により、これまでに無い調理特性を持った原料米を市場に提供する事が可能となり、調味ご飯をはじめとする玄米加工食品の嗜好性が飛躍的に改善される。特に食感や食味にすぐれた飯として、調理および加工が可能となり、玄米の栄養価を誰でも簡単に食することが出来、健康増進に寄与することが出来る。本発明は玄米の栄養価を失うことなく、白米と同様に調理、保存することができ、新しい食材として、多岐にわたる応用が可能となる。その応用方法が広まれば、食生活が変化向上していくものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1の炊飯前乾燥糯玄米粒の図面代用断面写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、調理適性と食味に優れた糯玄米に関する。
【0002】
【従来の技術】
玄米は、白米に比べ栄養価が高いことは一般によく知られている。しかしながら、玄米は固い外皮に覆われているため、米の吸水率が悪く、通常、圧力釜などを利用し加圧下で炊飯する必要があった。近年、加工米飯の需要として、調味米飯が伸長してきている中で、玄米の調味米飯への応用もされているが、加圧下で調理をしても、調味液の浸透が悪く、調味米飯には適さない。
【0003】
また、玄米の糠層には蓚酸が多く含まれるため、えぐみが強く、食味に劣る。えぐみを低減するために、玄米を水に混合して、PH2.5〜6.5の状態で3日以上保存する方法(特開昭62−166855号公報)が提案されている。しかし、この方法はえぐみを低減することはできるが、処理に要する時間が3日以上と長時間酸性水に浸漬するため、風味が失われるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、調味液の浸透性が良く、食味に優れた糯玄米を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの課題を解決するために鋭意検討の結果、玄米の構造を多孔質とすることで、通常の玄米を調理した時の調味液の浸透に要する時間を短縮することができ、さらに味の馴染みが良く、蓚酸が低減化し、食味の優れた調味米飯を得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の第一は、多孔質な構造を有する糯玄米である。
第二は、吸水率が120〜145%であり、調味料の浸透性が良いことを特徴とする糯玄米である。
第三は、玄米中の蓚酸量が15mg/100g未満であることを特徴とする糯玄米である。さらに、この玄米の製造方法、それを原料として得られる加工食品に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の玄米は、後述の実施例及び図1に示されるように、多孔質構造を有する。このような多孔質構造の玄米は、通常、玄米を浸漬処理し、湿熱処理後、乾燥することにより得られる。玄米の浸漬処理により玄米の糠層及び胚乳組織が吸水し膨潤化する。これを湿熱処理後、乾燥することにより膨潤化した形態を保ったまま乾燥され、糠層及び胚乳組織が多孔質となる。また、浸漬処理により玄米の糠層の蓚酸が除去される。
蓚酸含量は、原料の糯玄米の40%以下まで低減化され、好ましくは50%以下まで低減化される。具体的には15mg/100g未満である。蓚酸含量が15mg/100g以上では、糯玄米独特の渋味、えぐみが強く、食味が悪い。
【0007】
玄米の浸漬処理は、例えば次のような方法で実施できる。
玄米を通常2乃至4回程洗米し、水切り後、浸漬槽(浸漬用タンク)に浸漬する。洗米に供する水は、水道水、蒸留水、井戸水、酸性水、電解食塩水、オゾンを溶存させた水等の食品用に使用できる水であれば、いずれの使用も可能である。
【0008】
浸漬槽の浸漬条件は、通常20乃至50℃の温水中に発芽するまで浸漬するか、あるいは例えば3乃至5時間程浸漬し、その後脱水を行い、発芽するまで間欠的に散水を行って、所定時間、高湿度の条件下で処理する方法が良い。使用する温水は、前記の洗米工程で例示した様な水が例示でき、食品用に使用できる水であれば、いずれも可能である。また、浸漬から発芽するまでを液相中で実施する場合は、例えば、3乃至48時間、通常20乃至50℃の温水中に浸漬させ、発芽させる。尚、浸漬中は、適度なエアレーションを行うことで、均一な発芽を行うことが出来る。
【0009】
発芽させる場合には、一般的には胚の部分から0.5mm〜2.0mm程度の膨らみ、あるいは突起部、幼芽が確認できる程度の状態が良い。発芽後は、加熱処理して、発芽を停止させるが、その方法としては、蒸煮しても良いし、熱風あるいはマイクロウェーブ、冷却等の適当な方法により、温度処理あるいは乾燥させても良い。
【0010】
浸漬タンクから玄米を排出して次の乾燥工程へ移行するが、乾燥前に、玄米がほぼ単粒状態になる程度まで付着水を除去し、ついで湿熱処理を施して乾燥するのが好ましい。単粒状態とは玄米粒が表面の付着水によって大部分が互いに付着していない状態である。これによって、湿熱処理、乾燥工程時のハンドリングが行いやすくなり、粒同士あるいは機器壁面への付着、α化度の不均一、乾燥むらを防ぐことが可能となり、乾燥効率も改善できる。表面の付着水の除去は、例えば、排出した玄米を水切りコンベア上に載せて行うことができるし、その際に振動を与えたり、送風を行うことでより効率良く表面の付着水を除去することができる。また、必要に応じて、例えば攪拌機能をもった回転羽、スクリューなどで攪拌を行うと尚良い。
【0011】
湿熱処理は、具体的には、飽和水蒸気か熱水あるいは過熱蒸気等を熱媒体として高湿度雰囲気、例えば湿度60%以上の雰囲気で対象物を加熱する方法である。この場合には、加熱対象物と熱媒体を直接接触させ加熱する方法と例えば湿度60%以上の雰囲気でかつ伝導加熱方式のように間接的に熱媒体を接触させ、加熱する方法のどちらでも実施可能である。具体的な条件は、例えば、蒸気温度98〜180℃で3秒〜30分間処理することができる。蒸気温度が98℃以下の場合、α化、乾燥自体に問題はないが、所望のα化に要する時間が長くなるため、工業的に大量生産を行う場合には、あまり好ましくない。一方で、180℃を超えるとα化が進みすぎる問題があり、米粒の付着が生じ、乾燥工程のハンドリングが悪くなる。処理時間は、3秒未満では、粒のα化度にムラが生じやすいこともあるが、実際の工程における制御も難しい。また、処理時間が30分を超えると玄米のα化が進行し過ぎ、乾燥工程でのハンドリングが悪い。
【0012】
また、上述した以外の方法として米飯製造や発酵工業等で行われる米の蒸煮処理を用いた方法が例示できる。具体的には、例えば、浸漬処理した玄米を0.1〜7.0kg/cm2、好ましくは0.1〜2.0kg/cm2の条件下で、3秒〜30分間、好ましくは10秒〜30分間蒸気で処理する方法である。蒸気圧が、0.1kg/cm2未満では、胴割れ、砕米の発生防止効果は少なく、処理時間が3秒未満でも同様である。逆に処理時間が長くなりすぎると、α化が進み過ぎ、乾燥工程のハンドリングが悪くなる傾向がある。一方、蒸気圧が7.0kg/cm2を超えても、胴割れ、砕米の発生防止効果は得られるが、圧力が高すぎ、安全性に問題がある。
【0013】
乾燥は、対流(熱風)乾燥法、放射乾燥法、伝導乾燥法、電磁波等による均一発熱法、真空乾燥法、凍結乾燥法等のいずれの方法をもっても行うことが可能である。
また、所望の水分値に達するまでに、工程中にテンパリングを行うことで、仕上がりが美しく、砕米の発生をより低減させることが可能である。
乾燥は、得られる玄米の水分量を、通常10〜18%、好ましくは12〜18%、さらに好ましくは13〜16%になるようにする。水分量が10%未満である場合、玄米の粒に胴割れ、砕米が発生しやすくなり、乾燥玄米としての歩留まりが悪くなる。一方、水分量が18%を超える場合、カビ、細菌などが発生しやすく、加工適性、保存性に問題が生じる。
【0014】
また、湿熱処理や乾燥の条件はα化度に影響を及ぼす。α化度とは、β−アミラーゼ・プルラナーゼ法(BAP法)によって測定した値である。BAP法は糊化デンプンと生デンプンまたは老化デンプンを識別するのに優れた方法である。湿熱処理や乾燥を緩やかな条件で行うとα化度は低くなり、温度を高くしたり時間を長くするとα化度は高くなる。発芽玄米のα化度は、通常5〜90%であり、好ましくは、30〜85%、さらに好ましくは50〜80%であり、このような範囲になるように、熱処理、乾燥の条件を定めるのが好ましい。
なお、原料糯玄米をあらかじめ搗精することにより、乾燥時間を短縮し、果皮の硬さや異臭を低減させることが可能になる。また、乾燥後に玄米の表皮の一部を搗精して剥離・裂傷することで、表皮の固さや異臭をより低減させることもできる。このようにして浸漬、乾燥処理した多孔質糯玄米を得ることができる。
【0015】
吸水率とは、30℃の恒温下で、1時間浸漬した後の玄米の吸水状態での重量を浸漬前の重量で除し、%で表したものである。吸水率は120〜145%であり、好ましくは130〜145%が良い。吸水率が120%未満では、調味液の浸透性が悪く、味の馴染みが遅く、調理に時間を要する。また、吸水率が145%を超えると、逆に炊飯玄米の形状が崩れ易く、食味だけでなく外観も損なってしまう。吸水率は玄米の水分とも関係し、含水量が小さいものは吸水率が大きく、水分量が大きいものは吸水率が小さい。
ただし、吸水率は含水量だけでなく、玄米の表皮の剥離や、裂傷などにも大きく影響される。従って、含水量の調整や搗精することで、吸水率をコントロールすることが可能であり、搗精が進めば、吸水率も大きくなる。含水量、吸水率は適宜実験することにより、搗精、蒸煮、乾燥の条件を定めて所望の値に調整することができる。
【0016】
多孔質の構造を有する糯玄米は、調味液処理をし、調理することができる。調味液処理としては、多孔質糯玄米と調味液とを接触させる処理を全て含み、例えば、調味液に多孔質糯玄米を浸漬、塗付、スプレーするなどの処理がある。この際、調味液及び水分が米に吸収されるのが好ましく、調味液処理後、炊飯、蒸煮、餅つきなどの加工調理を行っても良い。
調味液としては、調理において常用される調味液を含み、例えば、醤油、みりん、砂糖、液糖その他甘味料、だし汁、魚介類エキス、化学調味料、カラメル、増粘剤、その他着色料を含む各種添加料を適宜配合する。
【0017】
本発明の多孔質糯玄米を用いた加工食品としては、切り餅、ちまき、おはぎ、大福、おかき、お焼きなどはもとより、例えば雑煮、雑炊、赤飯や栗飯などのおこわ、イカ飯、参鶏湯(サムケタン)などの調味米飯、もち米入りシュウマイまたは春巻きなどが例示できる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例で詳細に説明する。
実施例1
原料糯玄米(ヒヨクモチ)を洗米機にて洗浄し、30℃の恒温水中で24時間浸漬させた。その後、98℃、3分間蒸煮し、引き続き100℃の流動層乾燥を行い、水分量を15%に調整した多孔質糯玄米を得た。
乾燥糯玄米を水で軽くすすいだ後、水切りした。その後、全体の米重量に対して1.5倍の調味液を加え、家庭用炊飯器で炊飯した。調味液の組成は、醤油5.5部、みりん2部、酒2部、化学調味料1部、塩0.5部、水88部とした。
比較例1
原料糯玄米(ヒヨクモチ)を実施例1と同様の方法で炊飯した。
【0019】
評価例1
評価は以下のようにして行った。
[玄米の断面写真]
実施例1の多孔質糯玄米及び比較例1の糯玄米をミクロトームにより米粒中央部長軸に沿ってスライスし、試料とした。走査型電子顕微鏡(SEM)により切断面を撮影し、図1に示した。
[蓚酸量]
炊飯前玄米の蓚酸量は、高速液体クロマトグラフ法を用いて定量した。結果を表1に示した。
【0020】
[官能試験]
実施例1及び比較例1で得られた米飯について、パネラー9名(20代〜30代)を対象に官能試験を行い、結果をパネラーのコメントを含めて表1に示した。
調味液の浸透性について、以下のように評価した。
○:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが6名以上
△:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが3〜5名
×:調味液の味が充分に感じられると答えたパネラーが0〜2名
米飯のえぐ味について、以下のように評価した。
○:えぐ味が感じられると答えたパネラーが0〜2名
△:えぐ味が感じられると答えたパネラーが3〜5名
×:えぐ味が感じられると答えたパネラーが6名以上
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】
図1の炊飯前玄米の断面写真より、本発明の糯玄米は胚乳部分が多孔質状であることが分かった。また、吸水率を比較すると、比較例1の炊飯前糯玄米の吸水率が111%に対し実施例1の炊飯前乾燥糯玄米の吸水率では、137.6%と吸水性が高いことが分かった。
本発明により、これまでに無い調理特性を持った原料米を市場に提供する事が可能となり、調味ご飯をはじめとする玄米加工食品の嗜好性が飛躍的に改善される。特に食感や食味にすぐれた飯として、調理および加工が可能となり、玄米の栄養価を誰でも簡単に食することが出来、健康増進に寄与することが出来る。本発明は玄米の栄養価を失うことなく、白米と同様に調理、保存することができ、新しい食材として、多岐にわたる応用が可能となる。その応用方法が広まれば、食生活が変化向上していくものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1の炊飯前乾燥糯玄米粒の図面代用断面写真である。
Claims (5)
- 多孔質構造を有する糯玄米。
- 吸水率が120〜145%であることを特徴とする請求項1記載の糯玄米。
- 玄米中の蓚酸量が15mg/100g未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の糯玄米。
- 玄米を浸漬処理した後、湿熱処理し、次いで、乾燥する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の糯玄米の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の糯玄米を原料として加工することにより得られる玄米加工食品。
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JP2011182709A (ja) * | 2010-03-09 | 2011-09-22 | Bio Tec Japan:Kk | 香辛料等の添加米及び香辛料等の添加米飯並びにそれらの製造方法 |
CN104855826A (zh) * | 2015-05-25 | 2015-08-26 | 江苏米之飨食品科技有限公司 | 改良糙米粽子的加工方法 |
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2002
- 2002-07-16 JP JP2002206704A patent/JP2004049009A/ja active Pending
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