JP2004044465A - エンジンにおけるシリンダヘッド構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷却水を流通させるジャケットが設けられるシリンダヘッドを備えるエンジンにおいて、シリンダヘッドの大型化を回避しつつ、シリンダヘッドのジャケット内にエアが溜まることを防止する。
【解決手段】ジャケット14の天井壁14b内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝50が、ジャケット14の最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッド12に設けられる。
【選択図】 図3
【解決手段】ジャケット14の天井壁14b内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝50が、ジャケット14の最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッド12に設けられる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水を流通させるジャケットが設けられるシリンダヘッドを備えるエンジンに関し、特に、前記ジャケット内からエアを抜くためのシリンダヘッド構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリンダヘッドのジャケット内からエアを抜くために、たとえば特開平8−338300号公報で開示されたものでは、ジャケットの天井壁内面全体を傾斜させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のものではジャケットの天井壁の大型化、ひいてはシリンダヘッドの大型化を招いてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、シリンダヘッドの大型化を回避しつつ、シリンダヘッドのジャケット内にエアが溜まることを防止したエンジンにおけるシリンダヘッド構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、冷却水を流通させるジャケットが設けられるシリンダヘッドを備えるエンジンにおいて、前記ジャケットの天井壁内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝が、前記ジャケットの最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッドに設けられることを特徴とする。
【0006】
このような請求項1記載の発明の構成によれば、エア抜き溝は、シリンダヘッドのジャケットの最も高い部分を形成するようにして略直線状に延びるので、前記ジャケットの天井壁全体が大型化することはなく、シリンダヘッドの大型化を回避しつつ、エア抜き溝からエアを抜くようにして、ジャケット内にエアが溜まることを防止することができる。
【0007】
また請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、前記エア抜き溝は、前記天井壁を臨ませる動弁室内に突出するようにしてシリンダヘッドに設けられたリブ内に形成されることを特徴とし、かかる構成によれば、シリンダヘッドの動弁室に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝を形成することができる。
【0008】
さらに請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記エア抜き溝の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッドに設けられた孔部からオフセットした位置で外部に開口するとともに前記エア抜き溝の長手方向他端部とほぼ同一高さに位置するエア抜き口と、前記エア抜き溝の長手方向他端部および前記エア抜き口を結んで前記ジャケットの天井壁内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝とが、前記シリンダヘッドに設けられることを特徴とし、かかる構成によれば、シリンダヘッドに設けられる孔部を避けて、エア抜き溝で導かれたエアをシリンダヘッド外に排出することが可能であり、エア抜き溝の配置上の自由度を増大することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図9は本発明の一実施例を示すものであり、図1はエンジンの冷却水循環系統の模式図、図2はシリンダヘッドの平面図であって図3の2矢視図、図3は図2および図4の3−3線断面図、図4は図3の4矢視図、図5は図2の5ー5線断面図、図6は図3の6矢視図、図7は図3の7−7線断面図、図8は図3の8−8線断面図、図9は図2の9−9線断面図である。
【0011】
先ず図1において、このエンジンEは、複数気筒たとえば第1〜第4気筒CA〜CDが直列に並ぶ多気筒エンジンであり、冷却水を流通させるようにして各気筒CA〜CDを囲むブロック側ジャケット13を有するシリンダブロック11には、気筒配列方向15に沿うシリンダブロック11の一端側に配置される冷却水ポンプ16のポンプボディ17が一体に設けられるとともに、該冷却水ポンプ16から吐出される冷却水を、シリンダブロック11に結合されるシリンダヘッド12側に導く吐出路18が設けられる。
【0012】
一方、シリンダヘッド12には、冷却水を流通させるヘッド側ジャケット14が前記各気筒CA〜CDに個別に対応した第1〜第4燃焼室10A〜10Dを囲むようにして設けられ、前記吐出路18からの冷却水をヘッド側ジャケット14内に流入させる流入口19が、前記気筒配列方向15に沿う一端側の第1気筒CAに対応する部分でシリンダヘッド12に設けられ、ヘッド側ジャケット14の冷却水をブロック側ジャケット13に流通させる複数の連通路20,20…が、各燃焼室10A〜10Dの周囲に配置されるようにしてシリンダヘッド12に設けられる。
【0013】
前記気筒配列方向15に沿う他端側でシリンダヘッド12には、該シリンダヘッド12に取付けられるサーモスタット21の一部を収納する収納室22が設けられ、この収納室22は、シリンダヘッド12に設けられたバイパス通路23を介してヘッド側ジャケット14に連通可能であるとともに、冷却水ポンプ16の吸入口に通じた吸入管24に連通する。
【0014】
前記サーモスタット21は、1つの流入通路25と、2つの流出通路26,27とを備えるものであり、流入通路25は、ラジエータホース28を介してラジエータ29の出口に接続される。また一方の流出通路26は、ブロック側ジャケット13に通じてシリンダブロック11に設けられた通路30に、シリンダヘッド12に設けられた通路31を介して連通しており、ラジエータ29の入口はラジエータホース32を介して前記流出通路26に通じている。さらにヘッド側ジャケット14に通じた他方の流出通路27は、ホース33を介して空調用のヒータコア34に通じるとともにホース35を介してスロットルボディ36に設けられた冷却水通路(図示せず)に連通する。而してヒータコア34は、収納室22に通じてシリンダヘッド12に設けられた戻り口37にホース38を介して接続され、前記スロットルボディ36の冷却水通路は、前記吸入管24に設けられた戻り口39にホース40を介して接続される。
【0015】
このような冷却水の循環回路においてエンジンEの冷間時に、サーモスタット21は、収納室22および流入通路25間を遮断するとともにバイパス通路23を収納室22に連通せしめる。これにより冷却水ポンプ16から吐出通路18および流入口19を経てヘッド側ジャケット14に流入した冷却水は、破線で示すように流通するものであり、連通路20,20…を経てブロック側ジャケット13に冷却水が流通することは殆どなく、ヘッド側ジャケット14からバイパス通路23を介して収納室22に流入するとともに、一部の冷却水はヒータコア34に供給されて空調用の空気と熱交換し、他の一部の冷却水はスロットルボディ36の冷却水通路に供給されてスロットルボディ36の加熱に用いられる。また熱交換後にヒータコア34から収納室22に戻る冷却水、ならびにスロットルボディ36の加熱後に吸入管24に戻る冷却水は、バイパス通路23から収納室22に流入した冷却水とともに冷却水ポンプ16に吸入される。
【0016】
またエンジンEの熱間時に、サーモスタット21は、バイパス通路23および収納室22間を遮断するとともに収納室22および流入通路25間を連通せしめる。これにより、冷却水ポンプ16から吐出通路18および流入口19を経てヘッド側ジャケット14に流入した冷却水は、実線で示すように流通するものであり、連通路20,20…を介してブロック側ジャケット13に流入した冷却水は、シリンダブロック11を冷却した後に、通路30,31、流出通路26およびラジエータホース32を介してラジエータ29に導かれ、ラジエータ29で放熱することで低温となった冷却水は、ラジエータホース28および流入通路25を経て収納室22に流入する。またヘッド側ジャケット14の冷却水は、エンジンEの冷間時と同様に、その一部がヒータコア34に供給されて空調用の空気と熱交換した後に収納室22に戻り、さらに他の一部の冷却水はスロットルボディ36の加熱に用いられた後に吸入管24に戻るものであり、ラジエータ29で低温となった冷却水とともに冷却水ポンプ16に吸入される。
【0017】
図2〜図9を併せて参照して、エンジンEはそのシリンダ軸線Cを水平面に対して角度αだけ傾斜させた姿勢で図示しない車両に搭載されるものであり、シリンダヘッド12は、ガスケット41をシリンダブロック11との間に介在させてシリンダブロック11に締結される。
【0018】
シリンダヘッド12およびシリンダブロック11間には、各気筒CA〜CD毎に対応した燃焼室10A〜10Dが形成されるものであり、各燃焼室10A〜10D毎に一対ずつの吸気弁口43,43…および排気弁口44,44…がシリンダヘッド12に設けられる。また一対の吸気弁口43,43が共通に通じるようにして各燃焼室10A〜10D毎にシリンダヘッド12に設けられる吸気ポート45…が、シリンダヘッド12の一側壁12aに開口するようにして該シリンダヘッド12に設けられ、一対の排気弁口44,44が共通に通じるようにして各燃焼室10A〜10D毎にシリンダヘッド12に設けられる排気ポート46…がシリンダヘッド12の他側壁12bに開口するようにしてシリンダヘッド12に設けられる。しかも車両への搭載状態で、シリンダヘッド12は、その一側壁12aを斜め上方に臨ませ、他側壁12bを斜め下方に臨ませる姿勢となる。
【0019】
燃焼室10A〜10D毎に一対の吸気弁口43,43…を個別に開閉する吸気弁(図示せず)は、シリンダヘッド12に固着されたガイド筒47,47…に開閉作動可能に嵌合され、また燃焼室10A〜10D毎に一対の排気弁口44,44…を個別に開閉する排気弁(図示せず)は、シリンダヘッド12に固着されたガイド筒48,48…に開閉作動可能に嵌合される。
【0020】
またシリンダヘッド12には、各燃焼室10A〜10Dの略中央部に臨む点火プラグ(図示せず)を装着するための装着孔49…が設けられる。
【0021】
このようなシリンダヘッド12には、冷却水を流通させるヘッド側ジャケット14が前記各気筒CA〜CDに個別に対応した第1〜第4燃焼室10A〜10Dを囲むようにして設けられるのであるが、シリンダブロック11に設けられた冷却水ポンプ16から吐出される冷却水をヘッド側ジャケット14に流入させる流入口19が、気筒配列方向15に沿う一端側の第1気筒CAに対応する部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aに設けられ、ヘッド側ジャケット14の冷却水をブロック側ジャケット13に流通させる複数の連通路20,20…も、各燃焼室10A〜10Dの周囲に配置されるようにしてヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aに設けられる。
【0022】
しかもヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aのうち前記流入口19が設けられる第1気筒CAに対応する部分の肉厚t1(図3参照)が、他の気筒すなわち第2〜第3気筒CB〜CDに対応する部分の肉厚t2(図5参照)よりも大きく設定されている。
【0023】
またシリンダヘッド14には、ヘッド側ジャケット14における天井壁14bの内面から上方に凹んだエア抜き溝50が、ヘッド側ジャケット14の最も高い部分を形成するようにして設けられる。
【0024】
しかもヘッド側ジャケット14の前記天井壁14bは、シリンダヘッド14と、シリンダヘッド14に結合されるヘッドカバー(図示せず)との間に形成される動弁室51に臨むものであるが、前記エア抜き溝50は、動弁室51内に突出するようにしてシリンダヘッド14に設けられたリブ52内に形成される。
【0025】
リブ52およびエア抜き溝50は、第1気筒CAに対応する部分から第4気筒CDに対応する部分まで気筒配列方向15に沿って略直線状に延びるように形成されており、エア抜き溝50は、図9で明示するように、その長手方向一端である第1気筒CA側端部から長手方向他端である第4気筒CD側端部に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるように、傾斜して形成される。
【0026】
ところで、エア抜き溝50の長手方向他端部すなわち第4気筒CD側端部からの延長線上でシリンダヘッド12には、動弁室51からのオイルをシリンダブロック11側に戻すための孔部としてのオイル戻り通路53が設けられており、そのオイル戻り通路53を避けるようにして前記エア抜き溝50の長手方向他端部の延長線上からオフセットした位置でシリンダヘッド12の端壁12cには、エア抜き溝50の長手方向他端部とほぼ同一高さで外部に開口するエア抜き口54が設けられ、エア抜き溝50の長手方向他端部およびエア抜き口54を結んでヘッド側ジャケットの天井壁14b内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝55がシリンダヘッド12に設けられる。
【0027】
次にこの実施例の作用について説明すると、ヘッド側ジャケット14の天井壁14bの内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝50が、ヘッド側ジャケット14の最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッド12に設けられている。
【0028】
このためヘッド側ジャケット14の天井壁14b全体が大型化することはなく、シリンダヘッド12の大型化を回避しつつ、エア抜き溝50からエアを効果的に抜くようにして、ヘッド側ジャケット14内にエアが溜まることを防止することができる。
【0029】
またエア抜き溝50は、天井壁14bを臨ませる動弁室51内に突出するようにしてシリンダヘッド12に設けられたリブ52内に形成されるものであり、シリンダヘッド12の動弁室51に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝50を形成することができる。
【0030】
またエア抜き溝50の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッド12に設けられるオイル戻り通路53からオフセットした位置で外部に開口するとともにエア抜き溝50の長手方向他端部とほぼ同一高さに位置するエア抜き口54と、エア抜き溝50の長手方向他端部およびエア抜き口54を結んでヘッド側ジャケット14の天井壁14b内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝55とがシリンダヘッド12に設けられるので、オイル戻り通路53を避けて、エア抜き溝50で導かれたエアをシリンダヘッド12外に排出することが可能であり、エア抜き溝50の配置上の自由度を増大することができる。
【0031】
さらに直列に並ぶ複数気筒の1つである第1気筒CAに対応する部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aには、冷却水ポンプ16から吐出される冷却水をヘッド側ジャケット14に流入させる流入口19が設けられるのであるが、ヘッド側ジャケット14の前記シリンダブロック側底壁14aのうち前記流入口19が設けられる気筒CAに対応する部分の肉厚t1が、他の気筒CB〜CDに対応する部分の肉厚t2よりも大きく設定されている。
【0032】
ところで、流入口19が設けられた部分では、ヘッド側ジャケット14の内側壁および外側壁間の距離が比較的大きくならざるを得ず、冷却水の流通量を充分に大きくするために流入口19の開口面積を大きく設定すると、前記ヘッド側ジャケット14の内側壁および外側壁間の距離がより一層大きくなるが、流入口19が設けられた部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aの肉厚t1が大きく設定されるので、冷却水の流通量を充分に大きくするために流入口19の開口面積を大きく設定しても、その流入口19に対応する部分で前記シリンダブロック側底壁14aの剛性を充分に確保することができ、ガスケット41による充分なシール性を確保することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
たとえば上記実施例では、孔部としてオイル戻り通路53を取り上げて説明したが、孔部としてのボルト挿入孔、冷却水通路、肉抜きのための空洞部等が、エア抜き溝50の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッド12に設けられる場合にも本発明を適用することができる。
【0035】
また本発明はクランク軸を鉛直方向とした船外機などの船舶推進機用エンジンにも適用可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、シリンダヘッドのジャケットの天井壁全体が大型化することはなく、シリンダヘッドの大型化を回避しつつエア抜き溝からエアを抜くようにして、ジャケット内にエアが溜まることを防止することができる。
【0037】
また請求項2記載の発明によれば、シリンダヘッドの動弁室に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝を形成することができる。
【0038】
さらに請求項3記載の発明によれば、シリンダヘッドに設けられる孔部を避けて、エア抜き溝で導かれたエアをシリンダヘッド外に排出することが可能であり、エア抜き溝の配置上の自由度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジンの冷却水循環系統の模式図である。
【図2】シリンダヘッドの平面図であって図3の2矢視図である。
【図3】図2および図4の3−3線断面図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図2の5ー5線断面図である。
【図6】図3の6矢視図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【符号の説明】
12・・・シリンダヘッド
14・・・ヘッド側ジャケット
14b・・・天井壁
50・・・エア抜き溝
51・・・動弁室
52・・・リブ
53・・・孔部としてのオイル戻り通路
54・・・エア抜き口
55・・・連通溝
E・・・エンジン
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水を流通させるジャケットが設けられるシリンダヘッドを備えるエンジンに関し、特に、前記ジャケット内からエアを抜くためのシリンダヘッド構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリンダヘッドのジャケット内からエアを抜くために、たとえば特開平8−338300号公報で開示されたものでは、ジャケットの天井壁内面全体を傾斜させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のものではジャケットの天井壁の大型化、ひいてはシリンダヘッドの大型化を招いてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、シリンダヘッドの大型化を回避しつつ、シリンダヘッドのジャケット内にエアが溜まることを防止したエンジンにおけるシリンダヘッド構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、冷却水を流通させるジャケットが設けられるシリンダヘッドを備えるエンジンにおいて、前記ジャケットの天井壁内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝が、前記ジャケットの最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッドに設けられることを特徴とする。
【0006】
このような請求項1記載の発明の構成によれば、エア抜き溝は、シリンダヘッドのジャケットの最も高い部分を形成するようにして略直線状に延びるので、前記ジャケットの天井壁全体が大型化することはなく、シリンダヘッドの大型化を回避しつつ、エア抜き溝からエアを抜くようにして、ジャケット内にエアが溜まることを防止することができる。
【0007】
また請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、前記エア抜き溝は、前記天井壁を臨ませる動弁室内に突出するようにしてシリンダヘッドに設けられたリブ内に形成されることを特徴とし、かかる構成によれば、シリンダヘッドの動弁室に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝を形成することができる。
【0008】
さらに請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記エア抜き溝の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッドに設けられた孔部からオフセットした位置で外部に開口するとともに前記エア抜き溝の長手方向他端部とほぼ同一高さに位置するエア抜き口と、前記エア抜き溝の長手方向他端部および前記エア抜き口を結んで前記ジャケットの天井壁内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝とが、前記シリンダヘッドに設けられることを特徴とし、かかる構成によれば、シリンダヘッドに設けられる孔部を避けて、エア抜き溝で導かれたエアをシリンダヘッド外に排出することが可能であり、エア抜き溝の配置上の自由度を増大することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図9は本発明の一実施例を示すものであり、図1はエンジンの冷却水循環系統の模式図、図2はシリンダヘッドの平面図であって図3の2矢視図、図3は図2および図4の3−3線断面図、図4は図3の4矢視図、図5は図2の5ー5線断面図、図6は図3の6矢視図、図7は図3の7−7線断面図、図8は図3の8−8線断面図、図9は図2の9−9線断面図である。
【0011】
先ず図1において、このエンジンEは、複数気筒たとえば第1〜第4気筒CA〜CDが直列に並ぶ多気筒エンジンであり、冷却水を流通させるようにして各気筒CA〜CDを囲むブロック側ジャケット13を有するシリンダブロック11には、気筒配列方向15に沿うシリンダブロック11の一端側に配置される冷却水ポンプ16のポンプボディ17が一体に設けられるとともに、該冷却水ポンプ16から吐出される冷却水を、シリンダブロック11に結合されるシリンダヘッド12側に導く吐出路18が設けられる。
【0012】
一方、シリンダヘッド12には、冷却水を流通させるヘッド側ジャケット14が前記各気筒CA〜CDに個別に対応した第1〜第4燃焼室10A〜10Dを囲むようにして設けられ、前記吐出路18からの冷却水をヘッド側ジャケット14内に流入させる流入口19が、前記気筒配列方向15に沿う一端側の第1気筒CAに対応する部分でシリンダヘッド12に設けられ、ヘッド側ジャケット14の冷却水をブロック側ジャケット13に流通させる複数の連通路20,20…が、各燃焼室10A〜10Dの周囲に配置されるようにしてシリンダヘッド12に設けられる。
【0013】
前記気筒配列方向15に沿う他端側でシリンダヘッド12には、該シリンダヘッド12に取付けられるサーモスタット21の一部を収納する収納室22が設けられ、この収納室22は、シリンダヘッド12に設けられたバイパス通路23を介してヘッド側ジャケット14に連通可能であるとともに、冷却水ポンプ16の吸入口に通じた吸入管24に連通する。
【0014】
前記サーモスタット21は、1つの流入通路25と、2つの流出通路26,27とを備えるものであり、流入通路25は、ラジエータホース28を介してラジエータ29の出口に接続される。また一方の流出通路26は、ブロック側ジャケット13に通じてシリンダブロック11に設けられた通路30に、シリンダヘッド12に設けられた通路31を介して連通しており、ラジエータ29の入口はラジエータホース32を介して前記流出通路26に通じている。さらにヘッド側ジャケット14に通じた他方の流出通路27は、ホース33を介して空調用のヒータコア34に通じるとともにホース35を介してスロットルボディ36に設けられた冷却水通路(図示せず)に連通する。而してヒータコア34は、収納室22に通じてシリンダヘッド12に設けられた戻り口37にホース38を介して接続され、前記スロットルボディ36の冷却水通路は、前記吸入管24に設けられた戻り口39にホース40を介して接続される。
【0015】
このような冷却水の循環回路においてエンジンEの冷間時に、サーモスタット21は、収納室22および流入通路25間を遮断するとともにバイパス通路23を収納室22に連通せしめる。これにより冷却水ポンプ16から吐出通路18および流入口19を経てヘッド側ジャケット14に流入した冷却水は、破線で示すように流通するものであり、連通路20,20…を経てブロック側ジャケット13に冷却水が流通することは殆どなく、ヘッド側ジャケット14からバイパス通路23を介して収納室22に流入するとともに、一部の冷却水はヒータコア34に供給されて空調用の空気と熱交換し、他の一部の冷却水はスロットルボディ36の冷却水通路に供給されてスロットルボディ36の加熱に用いられる。また熱交換後にヒータコア34から収納室22に戻る冷却水、ならびにスロットルボディ36の加熱後に吸入管24に戻る冷却水は、バイパス通路23から収納室22に流入した冷却水とともに冷却水ポンプ16に吸入される。
【0016】
またエンジンEの熱間時に、サーモスタット21は、バイパス通路23および収納室22間を遮断するとともに収納室22および流入通路25間を連通せしめる。これにより、冷却水ポンプ16から吐出通路18および流入口19を経てヘッド側ジャケット14に流入した冷却水は、実線で示すように流通するものであり、連通路20,20…を介してブロック側ジャケット13に流入した冷却水は、シリンダブロック11を冷却した後に、通路30,31、流出通路26およびラジエータホース32を介してラジエータ29に導かれ、ラジエータ29で放熱することで低温となった冷却水は、ラジエータホース28および流入通路25を経て収納室22に流入する。またヘッド側ジャケット14の冷却水は、エンジンEの冷間時と同様に、その一部がヒータコア34に供給されて空調用の空気と熱交換した後に収納室22に戻り、さらに他の一部の冷却水はスロットルボディ36の加熱に用いられた後に吸入管24に戻るものであり、ラジエータ29で低温となった冷却水とともに冷却水ポンプ16に吸入される。
【0017】
図2〜図9を併せて参照して、エンジンEはそのシリンダ軸線Cを水平面に対して角度αだけ傾斜させた姿勢で図示しない車両に搭載されるものであり、シリンダヘッド12は、ガスケット41をシリンダブロック11との間に介在させてシリンダブロック11に締結される。
【0018】
シリンダヘッド12およびシリンダブロック11間には、各気筒CA〜CD毎に対応した燃焼室10A〜10Dが形成されるものであり、各燃焼室10A〜10D毎に一対ずつの吸気弁口43,43…および排気弁口44,44…がシリンダヘッド12に設けられる。また一対の吸気弁口43,43が共通に通じるようにして各燃焼室10A〜10D毎にシリンダヘッド12に設けられる吸気ポート45…が、シリンダヘッド12の一側壁12aに開口するようにして該シリンダヘッド12に設けられ、一対の排気弁口44,44が共通に通じるようにして各燃焼室10A〜10D毎にシリンダヘッド12に設けられる排気ポート46…がシリンダヘッド12の他側壁12bに開口するようにしてシリンダヘッド12に設けられる。しかも車両への搭載状態で、シリンダヘッド12は、その一側壁12aを斜め上方に臨ませ、他側壁12bを斜め下方に臨ませる姿勢となる。
【0019】
燃焼室10A〜10D毎に一対の吸気弁口43,43…を個別に開閉する吸気弁(図示せず)は、シリンダヘッド12に固着されたガイド筒47,47…に開閉作動可能に嵌合され、また燃焼室10A〜10D毎に一対の排気弁口44,44…を個別に開閉する排気弁(図示せず)は、シリンダヘッド12に固着されたガイド筒48,48…に開閉作動可能に嵌合される。
【0020】
またシリンダヘッド12には、各燃焼室10A〜10Dの略中央部に臨む点火プラグ(図示せず)を装着するための装着孔49…が設けられる。
【0021】
このようなシリンダヘッド12には、冷却水を流通させるヘッド側ジャケット14が前記各気筒CA〜CDに個別に対応した第1〜第4燃焼室10A〜10Dを囲むようにして設けられるのであるが、シリンダブロック11に設けられた冷却水ポンプ16から吐出される冷却水をヘッド側ジャケット14に流入させる流入口19が、気筒配列方向15に沿う一端側の第1気筒CAに対応する部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aに設けられ、ヘッド側ジャケット14の冷却水をブロック側ジャケット13に流通させる複数の連通路20,20…も、各燃焼室10A〜10Dの周囲に配置されるようにしてヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aに設けられる。
【0022】
しかもヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aのうち前記流入口19が設けられる第1気筒CAに対応する部分の肉厚t1(図3参照)が、他の気筒すなわち第2〜第3気筒CB〜CDに対応する部分の肉厚t2(図5参照)よりも大きく設定されている。
【0023】
またシリンダヘッド14には、ヘッド側ジャケット14における天井壁14bの内面から上方に凹んだエア抜き溝50が、ヘッド側ジャケット14の最も高い部分を形成するようにして設けられる。
【0024】
しかもヘッド側ジャケット14の前記天井壁14bは、シリンダヘッド14と、シリンダヘッド14に結合されるヘッドカバー(図示せず)との間に形成される動弁室51に臨むものであるが、前記エア抜き溝50は、動弁室51内に突出するようにしてシリンダヘッド14に設けられたリブ52内に形成される。
【0025】
リブ52およびエア抜き溝50は、第1気筒CAに対応する部分から第4気筒CDに対応する部分まで気筒配列方向15に沿って略直線状に延びるように形成されており、エア抜き溝50は、図9で明示するように、その長手方向一端である第1気筒CA側端部から長手方向他端である第4気筒CD側端部に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるように、傾斜して形成される。
【0026】
ところで、エア抜き溝50の長手方向他端部すなわち第4気筒CD側端部からの延長線上でシリンダヘッド12には、動弁室51からのオイルをシリンダブロック11側に戻すための孔部としてのオイル戻り通路53が設けられており、そのオイル戻り通路53を避けるようにして前記エア抜き溝50の長手方向他端部の延長線上からオフセットした位置でシリンダヘッド12の端壁12cには、エア抜き溝50の長手方向他端部とほぼ同一高さで外部に開口するエア抜き口54が設けられ、エア抜き溝50の長手方向他端部およびエア抜き口54を結んでヘッド側ジャケットの天井壁14b内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝55がシリンダヘッド12に設けられる。
【0027】
次にこの実施例の作用について説明すると、ヘッド側ジャケット14の天井壁14bの内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝50が、ヘッド側ジャケット14の最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッド12に設けられている。
【0028】
このためヘッド側ジャケット14の天井壁14b全体が大型化することはなく、シリンダヘッド12の大型化を回避しつつ、エア抜き溝50からエアを効果的に抜くようにして、ヘッド側ジャケット14内にエアが溜まることを防止することができる。
【0029】
またエア抜き溝50は、天井壁14bを臨ませる動弁室51内に突出するようにしてシリンダヘッド12に設けられたリブ52内に形成されるものであり、シリンダヘッド12の動弁室51に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝50を形成することができる。
【0030】
またエア抜き溝50の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッド12に設けられるオイル戻り通路53からオフセットした位置で外部に開口するとともにエア抜き溝50の長手方向他端部とほぼ同一高さに位置するエア抜き口54と、エア抜き溝50の長手方向他端部およびエア抜き口54を結んでヘッド側ジャケット14の天井壁14b内面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝55とがシリンダヘッド12に設けられるので、オイル戻り通路53を避けて、エア抜き溝50で導かれたエアをシリンダヘッド12外に排出することが可能であり、エア抜き溝50の配置上の自由度を増大することができる。
【0031】
さらに直列に並ぶ複数気筒の1つである第1気筒CAに対応する部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aには、冷却水ポンプ16から吐出される冷却水をヘッド側ジャケット14に流入させる流入口19が設けられるのであるが、ヘッド側ジャケット14の前記シリンダブロック側底壁14aのうち前記流入口19が設けられる気筒CAに対応する部分の肉厚t1が、他の気筒CB〜CDに対応する部分の肉厚t2よりも大きく設定されている。
【0032】
ところで、流入口19が設けられた部分では、ヘッド側ジャケット14の内側壁および外側壁間の距離が比較的大きくならざるを得ず、冷却水の流通量を充分に大きくするために流入口19の開口面積を大きく設定すると、前記ヘッド側ジャケット14の内側壁および外側壁間の距離がより一層大きくなるが、流入口19が設けられた部分でヘッド側ジャケット14のシリンダブロック側底壁14aの肉厚t1が大きく設定されるので、冷却水の流通量を充分に大きくするために流入口19の開口面積を大きく設定しても、その流入口19に対応する部分で前記シリンダブロック側底壁14aの剛性を充分に確保することができ、ガスケット41による充分なシール性を確保することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
たとえば上記実施例では、孔部としてオイル戻り通路53を取り上げて説明したが、孔部としてのボルト挿入孔、冷却水通路、肉抜きのための空洞部等が、エア抜き溝50の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッド12に設けられる場合にも本発明を適用することができる。
【0035】
また本発明はクランク軸を鉛直方向とした船外機などの船舶推進機用エンジンにも適用可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、シリンダヘッドのジャケットの天井壁全体が大型化することはなく、シリンダヘッドの大型化を回避しつつエア抜き溝からエアを抜くようにして、ジャケット内にエアが溜まることを防止することができる。
【0037】
また請求項2記載の発明によれば、シリンダヘッドの動弁室に臨む部分の剛性を高めつつ、エア抜き溝を形成することができる。
【0038】
さらに請求項3記載の発明によれば、シリンダヘッドに設けられる孔部を避けて、エア抜き溝で導かれたエアをシリンダヘッド外に排出することが可能であり、エア抜き溝の配置上の自由度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジンの冷却水循環系統の模式図である。
【図2】シリンダヘッドの平面図であって図3の2矢視図である。
【図3】図2および図4の3−3線断面図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】図2の5ー5線断面図である。
【図6】図3の6矢視図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【符号の説明】
12・・・シリンダヘッド
14・・・ヘッド側ジャケット
14b・・・天井壁
50・・・エア抜き溝
51・・・動弁室
52・・・リブ
53・・・孔部としてのオイル戻り通路
54・・・エア抜き口
55・・・連通溝
E・・・エンジン
Claims (3)
- 冷却水を流通させるジャケット(14)が設けられるシリンダヘッド(12)を備えるエンジンにおいて、前記ジャケット(14)の天井壁(14b)内面から上方に凹んで略直線状に延びるとともに長手方向一端から他端に向かうにつれて上端閉塞部が高くなるエア抜き溝(50)が、前記ジャケット(14)の最も高い部分を形成するようにしてシリンダヘッド(12)に設けられることを特徴とするエンジンにおけるシリンダヘッド構造。
- 前記エア抜き溝(50)は、前記天井壁(14b)を臨ませる動弁室(51)内に突出するようにしてシリンダヘッド(12)に設けられたリブ(52)内に形成されることを特徴とする請求項1記載のエンジンにおけるシリンダヘッド構造。
- 前記エア抜き溝(50)の長手方向他端部からの延長線上でシリンダヘッド(12)に設けられた孔部(53)からオフセットした位置で外部に開口するとともに前記エア抜き溝(50)の長手方向他端部とほぼ同一高さに位置するエア抜き口(54)と、前記エア抜き溝(50)の長手方向他端部および前記エア抜き口(54)を結んで前記ジャケット(14)の天井壁内(14b)面から上方に凹んで略水平に延びる連通溝(55)とが、前記シリンダヘッド(12)に設けられることを特徴とする請求項1または2記載のエンジンにおけるシリンダヘッド構造。
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-
2002
- 2002-07-11 JP JP2002202192A patent/JP2004044465A/ja active Pending
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