JP2004043829A - 常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 速硬化性及び流動性に優れた新規な常温固形のエポキシ樹脂の製造方法及び該エポキシ樹脂を使用した速硬化性及び流動性に優れ、かつ耐ハンダクラック性に優れた半導体装置を与える新規な半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ樹脂を、精製後、結晶化して常温で固形のエポキシ樹脂を得る方法であって、
(i) ビスフェノールAとエピハロヒドリンをアルカリの存在下に反応させ、常温で液状のエポキシ樹脂を得る工程、(ii)得られたエポキシ樹脂を精製して式(1)
【化1】
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量を95重量%以上とする工程、及び(iii)該精製エポキシ樹脂を結晶化し、44℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂とする工程を順に行なうことを特徴とする常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ樹脂を、精製後、結晶化して常温で固形のエポキシ樹脂を得る方法であって、
(i) ビスフェノールAとエピハロヒドリンをアルカリの存在下に反応させ、常温で液状のエポキシ樹脂を得る工程、(ii)得られたエポキシ樹脂を精製して式(1)
【化1】
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量を95重量%以上とする工程、及び(iii)該精製エポキシ樹脂を結晶化し、44℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂とする工程を順に行なうことを特徴とする常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、速硬化性及び流動性に優れた常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法、特に、速硬化性及び流動性に優れ、かつ耐ハンダクラック性に優れた半導体装置を与える新規な半導体封止用エポキシ樹脂組成物用のエポキシ樹脂の製造方法に関する。
エポキシ樹脂組成物は、その優れた硬化物性や取扱いの容易さから、接着、注型、封止、積層、成型、塗装、絶縁等の広い分野で使用されている。また、エポキシ樹脂には、多くの種類があり、その選択により硬化物性が大きく変わるため、使用分野や目的に応じて使い分けられている。
近年、高分子材料の使用条件が苛酷になるに従って、高分子材料に対して要求される諸特性は厳しくなり、一般に用いられている各種のエポキシ樹脂では、要求特性を充分に満足できなくなってきた。例えば、エポキシ樹脂組成物は半導体封止用に用いられているが、この分野でも要求性能は厳しくなっている。すなわち、半導体装置の高集積化が進み、半導体素子の大型化が著しいとともに、パッケージそのものが小型化、薄型化している。また、半導体装置の実装も表面実装へと移行している。表面実装においては半導体装置がハンダ浴に直接浸漬され、高温にさらされる為、吸湿された水分が急速に膨張し、パッケージ全体に大きな応力がかかり、封止材にクラックが入ることがある。そのために、耐ハンダクラック性の良好な封止材用のエポキシ樹脂組成物には、低吸湿性と低応力性が要求される。
溶融シリカ粉末のような無機充填剤を高充填することにより、低吸湿性及び低応力性(すなわち低熱膨張率)を改良することは広く行われており、耐ハンダクラック性の改良に大きな効果がある。しかし、無機充填剤を高充填すると成型時の流動性が損なわれるため、封止材用のエポキシ樹脂には低溶融粘度であることが要求されてきた。さらに、パッケージの小型化、薄型化に伴い封止材用エポキシ樹脂組成物には高流動性も要求されてきており、エポキシ樹脂への低溶融粘度の要求はさらに厳しくなっている。
また、成型速度を上げるため速硬化性も強く要求されており、他の特性がいくら良くても速硬化性に劣る材料は使用されないのが現状である。現在、主として用いられているノボラック型エポキシ樹脂(特にクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)は、速硬化性には優れるが、特に低溶融粘度の点において充分なものとは言えなくなってきた。
半導体の封止は、常温で固形の成形材料を使用した低圧トランスファー成形法が通常用いられる。そのため、その成形材料(組成物)に用いられるエポキシ樹脂も常温で固形である必要がある。近年、常温では結晶であり、低溶融粘度のビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが広く検討されているが、速硬化性に劣り、溶融粘度も十分には低くない。
ビスフェノールAとエピハロヒドリンから得られるエポキシ樹脂はもっとも一般的に使用されており、物性バランスにも優れているが、低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で液状となり、固形のエポキシ樹脂を用いる用途には使用できない。分子量を上げたビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で非晶質の固体となるが溶融粘度が高く、耐湿性も悪いため使用できない。
また、常温で固形のエポキシ樹脂を用いた組成物は、粉体塗料、粉体絶縁材料等にも使用されているが、これらの分野でも速硬化性及び高流動性が求められている。
また、常温で固形のエポキシ樹脂を用いた組成物は、粉体塗料、粉体絶縁材料等にも使用されているが、これらの分野でも速硬化性及び高流動性が求められている。
本発明は、速硬化性及び流動性に優れた常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法及び、速硬化性及び流動性に優れ、かつ耐ハンダクラック性に優れた半導体装置を与える新規な半導体封止用エポキシ樹脂組成物用のエポキシ樹脂を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、前記の課題を解決するために種々研究を重ねた結果、エポキシ樹脂としての純度を高め、さらに結晶化させることにより、常温で固形として取り扱えるようにした特定のビスフェノールA型エポキシ樹脂を製造し、使用することによりその目的を達成できたのである。本発明は以下の各発明を包含する。
(1)ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応で得られるエポキシ樹脂を、精製後、結晶化して常温で固形のエポキシ樹脂を得る方法であって、
(i) ビスフェノールAとエピハロヒドリンをアルカリの存在下に反応させ、常温で液状のエポキシ樹脂を得る工程、
(ii)得られたエポキシ樹脂を精製して式(1)
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量を95重量%以上とする工程、及び
(iii)該精製エポキシ樹脂を結晶化し、44℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂とする工程を順に行なうことを特徴とする常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
(i) ビスフェノールAとエピハロヒドリンをアルカリの存在下に反応させ、常温で液状のエポキシ樹脂を得る工程、
(ii)得られたエポキシ樹脂を精製して式(1)
(iii)該精製エポキシ樹脂を結晶化し、44℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂とする工程を順に行なうことを特徴とする常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
(2)前記(ii)の精製工程を蒸留又は晶析操作により行なうことを特徴とする(1)項記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
(3)前記(iii)の固形エポキシ樹脂とする工程が、液状のエポキシ樹脂に少量の結晶核を添加混合し、0〜20度の温度で結晶化させる工程であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
(4)前記固形エポキシ樹脂とする工程に引き続いて、さらに粉砕する工程を有することを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
本発明の方法で製造されるエポキシ樹脂は、速硬化性及び流動性に優れるので、封止材料、粉体塗料、粉体絶縁材料等に使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂の製造方法は、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応で得られるビスフェノールAエポキシ樹脂において、前記式(1)で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量を非常に高め、結晶化させることにより、常温で固形のエポキシ樹脂として使用可能とするものである。本発明の方法で製造される高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、超低溶融粘度で硬化性にも優れる。また、そこに無機充填剤を高充填し、低吸湿化及び低応力化することにより、速硬化性、流動性、低吸湿性及び耐ハンダクラック性のすべての要求性能を満足する半導体封止用エポキシ樹脂組成物とすることもできる。
本発明の方法におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとをアルカリの存在下に、縮合反応させてエポキシ樹脂としたものである。一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂中には、前記式(1)で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルに加えて、下記一般式(2)で表される高分子化物等が含まれる。
本発明の方法で製造されるエポキシ樹脂は、前記式(1)のビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量が95重量%以上であり、好ましくは97重量%以上である。その製造は定法に従って行うことができるが、そのような高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂を製造するためには、エピハロヒドリンをビスフェノールAに対して大過剰に用いるなどの反応条件の最適化を行ったり、いったん製造したビスフェノールA型エポキシ樹脂を蒸留、晶析、抽出などの方法で精製し、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量を高める必要がある。
それらの方法の中では、蒸留又は晶析による精製操作を採用して得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂の純度や、操作の容易性の点から好ましい。ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量が低いと結晶化が充分ではなく、溶融粘度も充分に低くならない。
そのようにして得られた高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、常温では液状となるため、結晶化させることにより固形化し、常温で固形の結晶エポキシ樹脂として使用できるようにする必要がある。一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂は、純度を高めても結晶化速度が非常に遅いため、結晶核を加えて良く混合するなどの結晶化促進の操作を行うことが好ましい。
結晶核としては、別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末が好ましいが、本発明の常温固形のエポキシ樹脂を半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用する場合に用いられる無機充填材であるシリカ粉末等も使用できる。その結晶核の使用量は液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%である。
また、結晶化の温度は0〜20℃が好ましく、より好ましくは5〜15℃である。結晶化の温度が低すぎても高すぎても結晶化速度が遅く、完全な結晶化が起こりにくい。さらに、製造される常温固形のエポキシ樹脂の結晶の融点は、44℃以上が好ましく、より好ましくは46℃以上である。融点が低すぎると粉砕作業や粉体としての取り扱いなどの固形としての取り扱いが困難になる。
また、本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂成分以外のエポキシ樹脂を混合使用することができる。その混合使用することができる他のエポキシ樹脂としては、たとえば、つぎのようなものが挙げられる。
ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂などの種々のフェノール類とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂。
種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂。重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂。ジアミノジフェニルメタン、 アミノフェノール、 キシレンジアミンなどの種々のアミン化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂。メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸などの種々のカルボン酸類とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂。
また、本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物に難燃性を付与するために、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂や臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂のような臭素化エポキシ樹脂樹脂を添加することができる。
以上のような、その他のエポキシ樹脂の使用割合は、本発明の方法で製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して100重量部以下が好ましく、より好ましくは、50重量部以下である。その他のエポキシ樹脂の使用割合が多すぎると、本発明の方法で得られる常温固形のエポキシ樹脂の効果が充分に発揮されなくなる。
以上のような、その他のエポキシ樹脂の使用割合は、本発明の方法で製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して100重量部以下が好ましく、より好ましくは、50重量部以下である。その他のエポキシ樹脂の使用割合が多すぎると、本発明の方法で得られる常温固形のエポキシ樹脂の効果が充分に発揮されなくなる。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂硬化剤が必須成分として配合されるが、このエポキシ樹脂硬化剤には特に制約は無く、一般的なエポキシ樹脂用の硬化剤が使用できる。エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する基を持つ化合物であり、たとえば、つぎのようなものが挙げられる。
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々の多価フェノール類。
種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類。重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類。上記の各種のフェノール(樹脂)類のフェノール性水酸基の全部もしくは一部をベンゾエート化あるいはアセテート化などのエステル化することによって得られる活性エステル化合物。
メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類。ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類。
また、エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤としては、たとえば、つぎのようなものが挙げられる。
トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物。テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩。2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2、4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジンなどのイミダゾール類。
トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物。テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩。2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2、4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジンなどのイミダゾール類。
1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩。2,4,6−トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類。トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5-ジアザビシクロ(5,4,0)−7− ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩類。
さらに、トリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 - 陰イオン(ここで、Mは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形のVIb元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[ 4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル] スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩等を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を半導体の封止に使用する場合には、それら各種のエポキシ樹脂硬化剤の中では、硬化物性や取り扱いのしやすさ、硬化物性などからフェノール樹脂類が好ましく、より好ましくは、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂である。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂硬化剤の使用量は、エポキシ基と反応する基を持つ化合物の場合は、全エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1モルに対して、全エポキシ樹脂硬化剤成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは、0.7〜1.5モルになる量である。エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤の場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは、0.3〜5重量部である。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤、硬化促進剤、カップリング剤、可塑剤、顔料、溶剤、強化用繊維、離型剤、難燃(助)剤、イオン捕捉剤等を適宜に配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を半導体の封止に使用する場合には、無機充填剤成分が必須成分として配合される。その無機充填剤の種類としては、たとえば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。その形状としては、破砕型又は球状である。各種の無機充填剤は、単独で又は2種以上混合して用いられるが、それらの中では溶融シリカ又は結晶性シリカが好ましい。その使用量は、組成物全体の80〜95重量%であり、より好ましくは、85〜95重量%である。無機充填剤の使用量が少なすぎると低吸湿性及び低応力性の改良効果が少なく、結果的に耐ハンダクラック性に劣る。また、無機充填剤の使用量が多すぎると、成型時の流動性が損なわれる。
硬化促進剤としては、たとえば、つぎのようなものが挙げられる。
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス( ジメトキシフェニル) ホスフィン、トリス( ヒドロキシプロピル) ホスフィン、トリス( シアノエチル) ホスフィンなどのホスフィン化合物。テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩。2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4- メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2- メチルイミダゾール、2,4-ジシアノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-S- トリアジン、2,4-ジシアノ-6-[2-ウンデシルイミダゾリル-(1)]-エチル-S- トリアジンなどのイミダゾール類。
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス( ジメトキシフェニル) ホスフィン、トリス( ヒドロキシプロピル) ホスフィン、トリス( シアノエチル) ホスフィンなどのホスフィン化合物。テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩。2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4- メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2- メチルイミダゾール、2,4-ジシアノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-S- トリアジン、2,4-ジシアノ-6-[2-ウンデシルイミダゾリル-(1)]-エチル-S- トリアジンなどのイミダゾール類。
1-シアノエチル-2- ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-エチル-4- メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2-エチル-1,4- ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩。2,4,6-トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N-メチルピペラジン、2-ジメチルアミノ-1-ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5-ジアザビシクロ(5,4,0)-7- ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)-オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2-エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
また、難燃(助)剤として、三酸化アンチモン、リン化合物、窒素化合物、酸化モリブデン、水酸化アルミニウムなどを適宜に配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物は、速硬化性及び流動性に優れるので、封止材料、粉体塗料、粉体絶縁材料等に使用することができる。また本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、速硬化性及び流動性に優れ、かつ耐ハンダクラック性に優れた半導体装置を与えるので半導体封止の分野で有利に使用することができる。
以下に、本発明のエポキシ樹脂の製造実施例1及び2、及び本発明の製造実施例で製造したエポキシ樹脂を使用した半導体封止用エポキシ樹脂組成物の実施例1〜4及び比較例をあげてさらに詳述する。なお、各実施例及び比較例で用いた分析方法は次のとおりである。
・エポキシ当量:JIS K−7236による。
・ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量:HPLCの面積%。
・融点:DSC の吸熱ピーク温度。
・エポキシ当量:JIS K−7236による。
・ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量:HPLCの面積%。
・融点:DSC の吸熱ピーク温度。
(エポキシ樹脂の製造例1)
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量3リッターの三つ口フラスコに、ビスフェノールA114g、エピクロルヒドリン1300gを仕込み、80℃に昇温して均一に溶解させたのち、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液82.5gを2時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、93〜98℃でエピクロルヒドリンと水を共沸させ、凝縮液を分離し、エピクロルヒドリンだけを反応系に戻して脱水した。滴下終了後、30分間脱水を継続して反応を行わせた。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量3リッターの三つ口フラスコに、ビスフェノールA114g、エピクロルヒドリン1300gを仕込み、80℃に昇温して均一に溶解させたのち、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液82.5gを2時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、93〜98℃でエピクロルヒドリンと水を共沸させ、凝縮液を分離し、エピクロルヒドリンだけを反応系に戻して脱水した。滴下終了後、30分間脱水を継続して反応を行わせた。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン200gに溶解させ、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液50gを加え、80℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は、178g/eq.、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量は、91.2%であった。
製造実施例1:(エポキシ樹脂の製造例2)
エポキシ樹脂の製造例1で製造したビスフェノールA型エポキシ樹脂をメチルエチルケトンとメタノールの1:1混合液に40℃で完全に溶解し、濃度50重量%とした。この溶液を5℃に冷却し、1週間保持した。析出した結晶を濾別した後、減圧下150℃で溶媒を完全に除去して、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を収率39%で得た。
エポキシ樹脂の製造例1で製造したビスフェノールA型エポキシ樹脂をメチルエチルケトンとメタノールの1:1混合液に40℃で完全に溶解し、濃度50重量%とした。この溶液を5℃に冷却し、1週間保持した。析出した結晶を濾別した後、減圧下150℃で溶媒を完全に除去して、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を収率39%で得た。
このビスフェノールA型エポキシ樹脂に別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末を3重量%添加し、良く混合した。このものを8℃で3日間保持して完全に結晶化させた。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は、174g/eq.、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量は、96.4%、融点は45.1℃であった。また、その結晶化はほぼ完全であり、粉砕や粉体での取り扱いなど常温で固形のエポキシ樹脂として使用可能であった。
製造実施例2:(エポキシ樹脂の製造例3)
エポキシ樹脂の製造例1で製造したビスフェノールA型エポキシ樹脂を内部コンデンサー型フィルムエバポレーターを用い、0.1mmHg、180〜200℃で蒸留した。収率は76%であった。得られた常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末を1 重量% 添加し、良く混合した。このものを8℃で1日間保持して完全に結晶化させた。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は172g/eq.、ビスフェールAジグリシジルエーテルの含有量は98.1%、融点は48.3℃であった。また、その結晶化はほぼ完全であり、粉砕や粉体での取り扱いなど常温で固形のエポキシ樹脂として使用可能であった。
エポキシ樹脂の製造例1で製造したビスフェノールA型エポキシ樹脂を内部コンデンサー型フィルムエバポレーターを用い、0.1mmHg、180〜200℃で蒸留した。収率は76%であった。得られた常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末を1 重量% 添加し、良く混合した。このものを8℃で1日間保持して完全に結晶化させた。このエポキシ樹脂のエポキシ当量は172g/eq.、ビスフェールAジグリシジルエーテルの含有量は98.1%、融点は48.3℃であった。また、その結晶化はほぼ完全であり、粉砕や粉体での取り扱いなど常温で固形のエポキシ樹脂として使用可能であった。
(エポキシ樹脂の製造例4)
エポキシ樹脂の製造例1で製造した常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末を3重量%添加し、良く混合した。このものを8℃で5日間保持して結晶化させた。このエポキシ樹脂の融点は42.9℃であった。また、その結晶化は不完全であり、一部液状の部分があるため、粉砕や粉体での取り扱いなどが困難で常温で固形のエポキシ樹脂として使用不可能であった。
エポキシ樹脂の製造例1で製造した常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に別途用意したビスフェノールAジグリシジルエーテルの結晶粉末を3重量%添加し、良く混合した。このものを8℃で5日間保持して結晶化させた。このエポキシ樹脂の融点は42.9℃であった。また、その結晶化は不完全であり、一部液状の部分があるため、粉砕や粉体での取り扱いなどが困難で常温で固形のエポキシ樹脂として使用不可能であった。
(半導体封止用エポキシ樹脂組成物)
表1に示したように、エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂の製造例2又は3で製造した各エポキシ樹脂、市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、市販のテトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂をそれぞれ用い、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノールノボラック樹脂又はフェノールアラルキル樹脂を用い、無機充填剤として球状溶融シリカ粉末を比較例1以外は組成物全体の87重量%で用い、比較例1では組成物全体の78重量%を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、難燃剤として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂をそれぞれに用い、難燃助剤として三酸化アンチモン、充填剤表面処理剤としてエポキシシラン、また離型剤としてカルナバワックスをそれぞれに用いて各エポキシ樹脂組成物を配合した。
表1に示したように、エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂の製造例2又は3で製造した各エポキシ樹脂、市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、市販のテトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂をそれぞれ用い、エポキシ樹脂硬化剤としてフェノールノボラック樹脂又はフェノールアラルキル樹脂を用い、無機充填剤として球状溶融シリカ粉末を比較例1以外は組成物全体の87重量%で用い、比較例1では組成物全体の78重量%を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、難燃剤として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂をそれぞれに用い、難燃助剤として三酸化アンチモン、充填剤表面処理剤としてエポキシシラン、また離型剤としてカルナバワックスをそれぞれに用いて各エポキシ樹脂組成物を配合した。
次いで、各配合物をミキシングロールを用いて70〜130℃の温度で5分間溶融混合した。得られた各溶融混合物はシート状に取り出し、粉砕して各成形材料を得た。各成形材料の180℃でのゲルタイムを測定した。
これらの各成形材料を用い低圧トランスファー成形機で金型温度180℃、成形時間180秒で成形して、各試験片を得、180℃で8時間ポストキュアーさせた。また、各成形材料のスパイラルフローを測定した。
これらの各成形材料を用い低圧トランスファー成形機で金型温度180℃、成形時間180秒で成形して、各試験片を得、180℃で8時間ポストキュアーさせた。また、各成形材料のスパイラルフローを測定した。
各成形材料のゲルタイム、スパイラルフロー及び各試験片のポストキュアー後のガラス転移温度、吸湿率及び耐ハンダクラック性を試験した結果は表1に示すとおりであり、エポキシ樹脂の製造例2(製造実施例1)及び3(製造実施例2)のエポキシ樹脂を使用した実施例1〜4の各成形材料は、比較例1又は2の成形材料に較べて速硬化性(即ち短ゲルタイム)、流動性(即ち高スパイラルフロー)、低吸湿性及び耐ハンダクラック性のバランスに優れていた。
本発明の方法で製造される常温固形のエポキシ樹脂は、速硬化性及び流動性に優れ、かつ耐ハンダクラック性に優れた半導体装置を与えるので半導体封止の分野で有利に使用することができる。
Claims (4)
- 前記(2)の精製工程を蒸留又は晶析操作により行なうことを特徴とする請求項1記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
- 前記(3)の固形エポキシ樹脂とする工程が、液状のエポキシ樹脂に少量の結晶核を添加混合し、0〜20℃の温度で結晶化させる工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
- 前記固形エポキシ樹脂とする工程に引き続いて、さらに粉砕する工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の常温で固形のエポキシ樹脂の製造方法。
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JP2005330475A (ja) * | 2004-04-20 | 2005-12-02 | Nippon Kayaku Co Ltd | 結晶性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物およびその硬化物 |
WO2022149468A1 (ja) * | 2021-01-07 | 2022-07-14 | 三菱ケミカル株式会社 | ビスフェノールaf型ジグリシジルエーテル及びその製造方法と、硬化性組成物、硬化物、電気・電子部品、絶縁材料、電気・電子回路用積層板、並びにビスフェノール型ジグリシジルエーテルの多結晶体 |
-
2003
- 2003-11-13 JP JP2003383792A patent/JP2004043829A/ja active Pending
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