JP2004043298A - シリカ分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乾式シリカを原料とした、研磨剤やコート剤の原料として有用な、安定性の高いシリカ分散液の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】乾式シリカ粒子を水等の極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって、平均粒子径100nm未満に粉砕することを特徴とする平均粒子径100nm未満の粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液の製造方法である。各種の研磨剤やコート剤用等の原料として好適な保存安定性に優れたシリカ分散液を経済的に且つ効率よく得ることができる。
【選択図】なし
【解決手段】乾式シリカ粒子を水等の極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって、平均粒子径100nm未満に粉砕することを特徴とする平均粒子径100nm未満の粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液の製造方法である。各種の研磨剤やコート剤用等の原料として好適な保存安定性に優れたシリカ分散液を経済的に且つ効率よく得ることができる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリカ分散液の製造方法に関する。さらに詳しくは、乾式シリカを原料に、研磨剤やコート剤の原料として有用な、安定性の高い新規のシリカ分散液の製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンに代表される半導体ウェハーを研磨するときやIC製造工程中で絶縁層などを研磨するために、研磨剤としてシリカ分散液が使われている。
【0003】
また、従来より、メガネレンズなどのプラスチック用ハードコート剤、インクジェット用の紙やOHP用コート剤、さらには、各種フィルムのアンチブロッキング剤、ガラス繊維等の接着助剤、エマルジョンやワックス等の安定剤としてもシリカ分散液が原料として使用されている。
【0004】
このようなシリカ分散液としては、珪酸ソーダを原料としたコロイダルシリカが代表的であった。即ち、コロイダルシリカは、液相中で合成し、乾燥させずにそのまま生産されるため、極めて高い安定性を示すシリカ分散液であり、上記用途において有用である。
【0005】
ところが、上記コロイダルシリカは、その製法上、生産性において改良の余地があり、より生産性良く得られ、且つ安定性の良いシリカ分散液の開発が望まれる。
【0006】
上記要望に対して、生産性の面で、四塩化珪素を原料として酸水素炎中で燃焼させて作る乾式シリカ、珪酸ソーダを中和して作る沈澱法シリカやゲル法シリカといった、いわゆる湿式シリカ、あるいは、珪素のアルコキシドを原料としてアルカリ性もしくは酸性の含水有機溶媒中で加水分解して作るゾル−ゲル法シリカが優れており、かかるシリカを使用したシリカ分散液が注目される。
【0007】
特に、乾式シリカを使用した分散液はシリカの純度においてコロイダルシリカに対して有利であり、高純度であることが要求される半導体ウェハーの研磨剤やICの研磨剤に有用であると考えられる。
【0008】
また、沈澱法で作る湿式シリカは非常に生産性の良いシリカであり、シリカ分散液の製造を工業的に有利に実施できるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、上記乾式シリカ、湿式シリカ、或いはゾル−ゲル法シリカは、凝集状態で得られるため、これを分散性良く溶媒に分散させることが困難で、通常の方法では平均粒子径が100nm未満のシリカ分散液を得た報告はない。
【0010】
そのため、これらのシリカを使用して製造されるシリカ分散液は、一概に安定性が悪く、数日でシリカの沈降が起こるため、実用的ではない。特に、湿式シリカは、シリカ生成反応時に、溶液中で析出したシリカ粒子同士が強固に結合するため、安定したシリカ分散液を得ることが困難である。
【0011】
上記乾式シリカの水分散液に関しては、特許文献1に表面シラノール基密度が1nm2当り0.3個以上3個以下の乾式法で製造された無水ケイ酸を水系溶媒に分散させたことを特徴とする無水ケイ酸の水分散液組成物が開示されている。これには、表面シラノール基密度を上記範囲にしなければ、粒子が沈降したり、粘度が極端に高くなったり、ゲル化したりする問題が指摘されている。
【0012】
従って、上記水分散液組成物では、該条件を満足させるため、シリカを分散前に乾燥させたり、シランカップリング剤等で表面処理しなければならず、操作が煩雑になり、生産性が悪いという問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特公平5−338号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記の背景の中で、乾式シリカを用いて得られる保存安定性に優れたシリカ分散液及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、上記平均粒子径が大きい前記シリカ粒子を平均粒子径が100nm未満にまで粉砕したシリカ分散液が、長期間の保存においてゲル化しない、保存安定性、シリカ粒子の沈降が起こらない、沈降安定性(以下、これらを単に安定性ともいう)に優れていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、乾式シリカ粒子を極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって平均粒子径100nm未満に粉砕することを特徴とする平均粒子径100nm未満の粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液の製造方法である。
【0017】
尚、本発明において、シリカ分散液中の粉砕シリカの平均粒子径は、粒度分布計によって測定したものである。粒度分布計には各種の原理を利用したものが市販されているが、100nm未満の粒子を正確に測定するには装置を選ぶ必要がある。本発明において、上記平均粒子径は、遠心沈降式光透過法の粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−DCP)を用いて測定した重量平均粒子径である。また、高分解能の走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いることによって、上記粒度分布計の測定結果の妥当性を確認することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明によって得られるシリカ分散液を構成する粉砕シリカ粒子としては、公知の方法により得られる乾式シリカの粉砕物が特に制限なく使用される。尚、ここで言う粉砕とは、強固な凝集粒子よりなるシリカ粒子を砕くという意味だけではなく、緩やかな凝集粒子よりなるシリカ粒子の凝集をほぐす意味での解砕や分散をも意味する。
【0019】
上記乾式シリカは、一般に、四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて得られる。一般的には、フュームドシリカとも称されている。乾式シリカは製造条件を変えることにより、比表面積がおよそ50〜500m2/gの範囲のシリカが得られる。比表面積より計算されるシリカの一次粒子径は、およそ5〜50nmの範囲であるが、通常は1μm以上の凝集体として存在している。
【0020】
100nm未満にまで粉砕された粉砕シリカ粒子としてシリカ分散液中に存在させた例は従来から無く、このような1μm程度のシリカ粒子を極性溶媒に分散したシリカ分散液は、安定性が極めて悪いという問題があった。
【0021】
本発明にあっては、該シリカを原料にして平均粒子径100nm未満に粉砕することにより、従来にない安定性の高いシリカ分散液を得ることに成功したのである。
【0022】
かかる本発明の製造方法により得られるシリカ分散液は、平均粒子径が100nm未満であれば、安定性において高い効果を発揮するが、特に、該平均粒子径が80nm以下であることが好ましい。
【0023】
乾式シリカを原料にしたシリカ分散液は、原料が高純度であるため高純度が要求されるシリコンウェハー用研磨剤、IC用研磨剤等の各種の研磨剤等として有用である。
【0024】
本発明において、シリカ分散液を構成する極性溶媒としては、シリカが分散し易い極性溶媒であれば特に制限はない。かかる極性溶媒としては、水が代表的である。水以外にもメタノールやエタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類などの極性溶媒が利用できるが、水と上記極性溶媒との混合溶媒であっても良い。なお、シリカ粒子の安定性や分散性を向上させるために界面活性剤や極性溶媒等を少量添加しても良い。
【0025】
本発明の製造方法においては、シリカ分散液中の粉砕シリカの濃度5〜30重量%の範囲のシリカ分散液を得る。
【0026】
ところで、珪酸ソーダを原料としたコロイダルシリカやゾル−ゲル法によって作られたコロイダルシリカでは、平均粒子径が100nm未満のものは既に知られているが、これらは一つ一つのシリカ粒子が独立したほぼ球状の均一な形状を有していることが特徴である。これに対して、本発明のシリカ分散液は、微粒子が凝集した各種シリカを粉砕したものであるため、該分散液中のシリカ粒子は多少いびつな凹凸のある不均一な形状が特徴である。このような特徴ある粒子形状を活かすことによって、コロイダルシリカとは異なる用途や効果も期待できる。
【0027】
例えば、研磨材としての用途においては、研磨性において研磨速度の向上等を図ることができ有利である。
【0028】
上記シリカ分散液中のシリカが粉砕シリカであることは、高分解能の走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて粒子形状を観察することによって確認できる。
【0029】
本発明の製造方法により得られるシリカ分散液の他の性状は特に制限されないが、シリカ分散液のpHは、3〜11の範囲が一般的である。
【0030】
本発明の製造方法により得られるシリカ分散液は塩基性塩化アルミニウム等を使用してカチオン変性を行うことができる。ここで、カチオン変性とは、シリカ粒子表面の少なくとも一部をシリカ以外の金属酸化物を用いて被覆することであり、この方法としては、例えば特公昭47−26959に示された方法を使用することができる。このような処理を、本発明で使用するシリカ原料またはシリカ分散液に施すことにより、粒子表面を正に帯電させたシリカ分散液を調製することが可能である。上記処理は、酸性領域で行われるが、本発明の製造方法により得られるシリカ分散液はpHの変化する酸性溶液中でも安定な特性を示し、得られるシリカ分散液も安定性を持続する。
【0031】
本発明において粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液は、下記の方法によって製造する。
【0032】
即ち、乾式シリカ粒子を極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって平均粒子径100nm未満に粉砕することによって、粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液を製造する。
【0033】
該シリカスラリーにおける粒子径は、平均粒子径100nm未満にまで粉砕可能なものであれば特に制限されず、一般に、0.2〜100μmの範囲のものが好適に使用される。
【0034】
本発明において、シリカスラリーの対向衝突は、乾式シリカを平均粒子径100nm未満の大きさに粉砕させる条件が特に制限なく採用される。かかる条件を満足する装置としては、一般に、対向衝突ジェット粉砕機と呼ばれている市販の装置が好適に使用できる。
【0035】
対向衝突ジェット粉砕機とは、基本的には、シリカスラリーを加圧することによって出口側に導き、該スラリーを2つの流路に分岐し、さらに流路を狭めることによって流速を加速し、対向衝突させることによって該スラリー中のシリカ凝集体を粉砕する装置である。
【0036】
このような対向衝突ジェット粉砕機を使用した粉砕条件は、機種によって各種の装置定数や効率が異なるため、あるいは用いるシリカスラリーの種類によって粉砕の効率が異なるため、一概にその処理条件を定めることはできない。
【0037】
一般には、粉砕効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど粉砕効率も高くなる。例えば、処理圧力は500kgf/cm2以上、好ましくは800kgf/cm2以上、さらに好ましくは1200kgf/cm2以上の場合、粉砕効率の高い処理が可能である。また、対向衝突する際のシリカスラリーの衝突速度は、相対速度として50m/秒以上、好ましくは100m/秒以上、さらに好ましくは150m/秒以上であることが望ましい。
【0038】
なお、対向衝突ジェット粉砕機でシリカスラリーを処理する回数は、1〜数十回の範囲から選ぶことができる。
【0039】
上記のようにシリカスラリーを加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるためにダイヤモンドが好適に採用される。このような装置の代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー(株)製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、及びスギノマシン製のアルティマイザーなどを挙げることができる。上記で例示した装置はいずれも流通式であるため、出口側で取り出されたシリカ分散液は一応に粉砕、解砕または分散等の処理を受けたことになるため均一性が高い点で、超音波分散やホモジナイザー等のバッチ式とは異なり優れている。
【0040】
また、粉砕、解砕または分散処理が高効率で行われること、不純物の混入が極めて少ないこと、大量処理にも適応可能なことなど、工業的に利用するのには適している。
【0041】
本発明において、シリカスラリーの濃度は、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下が好ましい。50重量%を超えると、スラリーの流動性が極端に悪くなるため処理が困難になる傾向がある。なお、粉砕後の平均粒子径が小さくなればなるほど、あるいはシリカスラリーの濃度が高くなればなるほどシリカスラリーの流動性が低下するため処理が困難になる。そのような場合には、まずスラリー濃度の低い原料スラリーを本発明の方法で処理し粘度を下げた後に、徐々にシリカを添加してスラリー濃度を上げて再び本発明の方法を適用するという方法が採用できる。
【0042】
本発明においては、上記方法において、さらに、シリカスラリーを対向衝突させる際のシリカスラリーのpHを8以上、さらに好ましくはpHを9以上とすることによってさらに保存安定性の優れたシリカ分散液が得られることを見い出した。
【0043】
即ち、従来の分散方法ではシリカスラリーのpHを8以上にして分散させても、必ずしも長期的に安定なシリカ分散液は得られなかった。それに対して、本発明の方法を採用した場合では、シリカスラリーのpHを8以上としたシリカ分散液は、長時間放置しても、あるいはさらにアルカリを添加しても再凝集する現象は見られなかった。
【0044】
アルカリの種類は公知のものが何等制限なく使用できる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0045】
アルカリの添加量は用いるシリカの種類によって異なるため一概には定義できない。通常はpHメーターでpHを確認しながら少量ずつアルカリを添加すれば良い。但し、原料シリカの一次粒子径が35nm以下で、スラリー濃度が10重量%以上のシリカスラリーでは、アルカリを添加するとゲル化してpHを測定できない場合がある。そのような場合には、シリカスラリーを対向衝突させることによって該スラリーの粘度を下げた後にpHを測定すれば良い。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の製造方法によって得られた平均粒子径100nm未満の粉砕乾式シリカ粒子5〜30重量%を分散してなるシリカ分散液は、長期間放置してもゲル化やシリカ粒子の沈降が起こらず、保存安定性、沈降安定性に優れたものである。
【0047】
また、本発明の製造方法によれば、平均凝集粒子径が0.2μm以上の乾式シリカを原料にして安定なシリカ分散液を効率よく製造することができる。
【0048】
そのため、本発明によれば、各種の研磨剤やコート剤用等の原料として好適なシリカ分散液を経済的に且つ効率よく提供することができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0050】
以下の方法によって、原料のシリカ及び処理したシリカ分散液を分析した。
【0051】
(比表面積)
BET式の比表面積計(島津製作所製、フローソーブII)を用いて測定した。
【0052】
(平均粒子径)
平均粒子径は、遠心沈降式光透過法の粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−DCP)を用いて重量平均粒子径を測定した。また、高分解能の走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6400F)を用いて、処理したシリカ分散液中のシリカ粒子の形状と上記粒度分布計の値の妥当性を確認した。
【0053】
(保存安定性及び沈降安定性)
保存安定性は、処理したシリカ分散液がゲル化して流動性がなくなるまでの日数を調べた。
【0054】
また、沈降安定性は、1ヶ月間静置後に生じた沈降成分を計量し、初期のシリカ分に対する重量%で示した。
【0055】
(pHの測定)
処理したシリカ分散液のpHをpHメーター(堀場製作所製、M−13)を用いて測定した。
【0056】
(粘度の測定)
シリカ分散液の粘度はB型粘度計(トキメック製、BL型)を用いて、20℃で測定した。
【0057】
(表面シラノール基密度の測定)
シリカを120℃で3時間真空乾燥後、脱水したジオキサン30mlに対して該シリカ1g加えて良く分散させた。次に、25mlのガラス製三角フラスコに0.3gのLiAlH4と脱水したジオキサン10mlを加えて撹拌し、さらに上記シリカ分散液1mlを加えて、シリカの表面シラノール基とLiAlH4とを反応させた。反応によって生成した水素をガスクロマトグラフィーを用いて定量した。表面シラノール基1個に対して水素分子1個が発生すると仮定し、別途求めておいた比表面積値を用いて、表面シラノール基密度(単位;個/nm2)を計算した。
【0058】
(nの測定)
シリカ分散液のスペクトルは、分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セルと試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、シリカ分散液の濃度が1.5重量%になるようにシリカ分散液をイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈液を入れて波長(λ)460〜700nmの範囲の吸光度(τ)を1nm毎に241個測定した。log(λ)とlog(τ)をプロットし、前述した式(1)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。このときのnを光散乱指数とした。
【0059】
実施例1
5リットルのポリ容器に乾式シリカ(トクヤマ製;レオロシールQS−10、比表面積;138m2/g)360gとイオン交換水2640gを入れて、棒でかき混ぜることによって予備混合を行った。できたペースト状のシリカスラリーを対向衝突ジェット粉砕機(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力700kgf/cm2、衝突相対速度105m/秒で3回処理した。なお、3回の合計処理時間は45分であった。分析の結果を表1に示す。
【0060】
スラリー濃度は12重量%、粘度は15.8cP、平均粒子径は78nmで、40〜90nmの範囲の粒度分布の狭い多少透明感のある乳白色の均質なシリカ分散液であった。また、ゲル化が起こるまでの日数は13日であったが、よく振り混ぜることによって流動性が回復するような軽いゲル化状態であった。
【0061】
なお、原料シリカと処理後のシリカを走査型電子顕微鏡で観察したところ、処理前後における一次粒子の形状の変化は特に観察されなかった。
【0062】
実施例2、3
処理圧力を1000kgf/cm2、衝突相対速度140m/秒及び1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例1と同様にシリカスラリーをそれぞれ処理し、できたシリカ分散液を分析した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
粉砕機にホモジナイザー(イカ製ウルトラタラックス、T−25)を用いた以外は実施例1と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例4の1/2の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例1〜3と比較して大きく、しかも粒度分布は50〜800nmと広いものであった。そのため保存安定性の評価も3日と悪かった。
【0064】
以上の結果からわかるように、本発明の方法は、従来法に比べて、粒度分布が狭く平均粒子径が小さい乾式シリカ分散液を高効率で製造できることがわかった。
【0065】
実施例4
乾式シリカとして、トクヤマ製;レオロシールQS−102(比表面積;205m2/g)を用い、処理圧力を1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例1と同様にシリカ分散液を製造した。分析の結果を表1に示す。
【0066】
上記シリカ分散液は、スラリー濃度が12重量%、粘度が23.5cP、平均粒子径が44nmで20〜60nmの範囲の比較的シャープな粒度分布を持った、やや青みがかった透明感のある均質なシリカ分散液であった。また、ゲル化が起こるまでの日数は15日であったが、よく振り混ぜることによって流動性が回復するような軽いゲル化状態であった。
【0067】
ところで、このとき用いたシリカの表面シラノール基密度を測定したところ、4.3個/nm2であった。特公平5−338では表面シラノール基密度が1nm2当り0.3個以上3個以下でないと、粒子が沈降したり、粘度が極端に高くなったり、ゲル化したりする問題があると述べているが、シリカスラリーを対向衝突させることによって粉砕する本発明の方法では、表面シラノール基密度が上記範囲外であっても粘度が低く、均質なシリカ分散液が得られることがわかった。
【0068】
なお、上記シリカと同じグレードの乾式シリカで、製造直後のものや数カ月間保存したシリカなどを用い、表面シラノール基密度が1〜3個/nm2の範囲のものについて上記と同様にシリカ分散液を製造したが、結果は上記とほぼ同じであった。
【0069】
実施例5
5リットルのポリ容器にイオン交換水2615gと1Nの水酸化カリウム水溶液25gを計り取り、混合した。次に、乾式シリカ(トクヤマ製;レオロシールQS−10、比表面積;138m2/g)360gを上記アルカリ水溶液に投入し、棒でかき混ぜることによって予備混合を行った。できたペースト状のシリカスラリーを対向衝突ジェット粉砕機(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力700kgf/cm2、衝突相対速度105m/秒で3回処理し、できたシリカ分散液を分析した。このときのスラリー濃度は12重量%、粘度は13.2cPの乳白色の均質なシリカ分散液であった。分析の結果を表1に示す。
【0070】
実施例6、7
処理圧力を1000kgf/cm2、衝突相対速度140m/秒及び1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理し、分析をおこなった。結果を表1に示す。
【0071】
以上のように、シリカスラリーのpHを8以上とすることによって平均粒子径はより小さくなり、しかも保存安定性が大幅に向上することがわかった。
【0072】
比較例2
粉砕機にホモジナイザー(イカ製ウルトラタラックス、T−25)を用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例5の1/2の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例5〜7と比較して大きく、しかも保存安定性も悪かった。
【0073】
比較例3
粉砕機に超音波洗浄機(出力200W)を用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例5の1/10の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例5〜7と比較して大きく、しかも保存安定性も悪かった。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例8〜10
比表面積の異なる乾式シリカを用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理し、分析した。なお、1N−水酸化カリウム水溶液の量は実施例8では16g、実施例9では35g、実施例10では65gと変えたが、スラリー濃度は12重量%で一定にした。結果を表2に示す。
【0076】
実施例11〜12
1N−水酸化カリウム水溶液の量を88gと220gとした以外は実施例10と同様にシリカスラリーを処理し、分析した。結果を表2に示す。
【0077】
以上のように、アルカリの添加量を増して、pHをより高くした方が平均粒子径が小さくなることがわかった。
【0078】
【表2】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリカ分散液の製造方法に関する。さらに詳しくは、乾式シリカを原料に、研磨剤やコート剤の原料として有用な、安定性の高い新規のシリカ分散液の製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンに代表される半導体ウェハーを研磨するときやIC製造工程中で絶縁層などを研磨するために、研磨剤としてシリカ分散液が使われている。
【0003】
また、従来より、メガネレンズなどのプラスチック用ハードコート剤、インクジェット用の紙やOHP用コート剤、さらには、各種フィルムのアンチブロッキング剤、ガラス繊維等の接着助剤、エマルジョンやワックス等の安定剤としてもシリカ分散液が原料として使用されている。
【0004】
このようなシリカ分散液としては、珪酸ソーダを原料としたコロイダルシリカが代表的であった。即ち、コロイダルシリカは、液相中で合成し、乾燥させずにそのまま生産されるため、極めて高い安定性を示すシリカ分散液であり、上記用途において有用である。
【0005】
ところが、上記コロイダルシリカは、その製法上、生産性において改良の余地があり、より生産性良く得られ、且つ安定性の良いシリカ分散液の開発が望まれる。
【0006】
上記要望に対して、生産性の面で、四塩化珪素を原料として酸水素炎中で燃焼させて作る乾式シリカ、珪酸ソーダを中和して作る沈澱法シリカやゲル法シリカといった、いわゆる湿式シリカ、あるいは、珪素のアルコキシドを原料としてアルカリ性もしくは酸性の含水有機溶媒中で加水分解して作るゾル−ゲル法シリカが優れており、かかるシリカを使用したシリカ分散液が注目される。
【0007】
特に、乾式シリカを使用した分散液はシリカの純度においてコロイダルシリカに対して有利であり、高純度であることが要求される半導体ウェハーの研磨剤やICの研磨剤に有用であると考えられる。
【0008】
また、沈澱法で作る湿式シリカは非常に生産性の良いシリカであり、シリカ分散液の製造を工業的に有利に実施できるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、上記乾式シリカ、湿式シリカ、或いはゾル−ゲル法シリカは、凝集状態で得られるため、これを分散性良く溶媒に分散させることが困難で、通常の方法では平均粒子径が100nm未満のシリカ分散液を得た報告はない。
【0010】
そのため、これらのシリカを使用して製造されるシリカ分散液は、一概に安定性が悪く、数日でシリカの沈降が起こるため、実用的ではない。特に、湿式シリカは、シリカ生成反応時に、溶液中で析出したシリカ粒子同士が強固に結合するため、安定したシリカ分散液を得ることが困難である。
【0011】
上記乾式シリカの水分散液に関しては、特許文献1に表面シラノール基密度が1nm2当り0.3個以上3個以下の乾式法で製造された無水ケイ酸を水系溶媒に分散させたことを特徴とする無水ケイ酸の水分散液組成物が開示されている。これには、表面シラノール基密度を上記範囲にしなければ、粒子が沈降したり、粘度が極端に高くなったり、ゲル化したりする問題が指摘されている。
【0012】
従って、上記水分散液組成物では、該条件を満足させるため、シリカを分散前に乾燥させたり、シランカップリング剤等で表面処理しなければならず、操作が煩雑になり、生産性が悪いという問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特公平5−338号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記の背景の中で、乾式シリカを用いて得られる保存安定性に優れたシリカ分散液及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、上記平均粒子径が大きい前記シリカ粒子を平均粒子径が100nm未満にまで粉砕したシリカ分散液が、長期間の保存においてゲル化しない、保存安定性、シリカ粒子の沈降が起こらない、沈降安定性(以下、これらを単に安定性ともいう)に優れていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、乾式シリカ粒子を極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって平均粒子径100nm未満に粉砕することを特徴とする平均粒子径100nm未満の粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液の製造方法である。
【0017】
尚、本発明において、シリカ分散液中の粉砕シリカの平均粒子径は、粒度分布計によって測定したものである。粒度分布計には各種の原理を利用したものが市販されているが、100nm未満の粒子を正確に測定するには装置を選ぶ必要がある。本発明において、上記平均粒子径は、遠心沈降式光透過法の粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−DCP)を用いて測定した重量平均粒子径である。また、高分解能の走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いることによって、上記粒度分布計の測定結果の妥当性を確認することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明によって得られるシリカ分散液を構成する粉砕シリカ粒子としては、公知の方法により得られる乾式シリカの粉砕物が特に制限なく使用される。尚、ここで言う粉砕とは、強固な凝集粒子よりなるシリカ粒子を砕くという意味だけではなく、緩やかな凝集粒子よりなるシリカ粒子の凝集をほぐす意味での解砕や分散をも意味する。
【0019】
上記乾式シリカは、一般に、四塩化珪素を酸水素炎中で燃焼させて得られる。一般的には、フュームドシリカとも称されている。乾式シリカは製造条件を変えることにより、比表面積がおよそ50〜500m2/gの範囲のシリカが得られる。比表面積より計算されるシリカの一次粒子径は、およそ5〜50nmの範囲であるが、通常は1μm以上の凝集体として存在している。
【0020】
100nm未満にまで粉砕された粉砕シリカ粒子としてシリカ分散液中に存在させた例は従来から無く、このような1μm程度のシリカ粒子を極性溶媒に分散したシリカ分散液は、安定性が極めて悪いという問題があった。
【0021】
本発明にあっては、該シリカを原料にして平均粒子径100nm未満に粉砕することにより、従来にない安定性の高いシリカ分散液を得ることに成功したのである。
【0022】
かかる本発明の製造方法により得られるシリカ分散液は、平均粒子径が100nm未満であれば、安定性において高い効果を発揮するが、特に、該平均粒子径が80nm以下であることが好ましい。
【0023】
乾式シリカを原料にしたシリカ分散液は、原料が高純度であるため高純度が要求されるシリコンウェハー用研磨剤、IC用研磨剤等の各種の研磨剤等として有用である。
【0024】
本発明において、シリカ分散液を構成する極性溶媒としては、シリカが分散し易い極性溶媒であれば特に制限はない。かかる極性溶媒としては、水が代表的である。水以外にもメタノールやエタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類などの極性溶媒が利用できるが、水と上記極性溶媒との混合溶媒であっても良い。なお、シリカ粒子の安定性や分散性を向上させるために界面活性剤や極性溶媒等を少量添加しても良い。
【0025】
本発明の製造方法においては、シリカ分散液中の粉砕シリカの濃度5〜30重量%の範囲のシリカ分散液を得る。
【0026】
ところで、珪酸ソーダを原料としたコロイダルシリカやゾル−ゲル法によって作られたコロイダルシリカでは、平均粒子径が100nm未満のものは既に知られているが、これらは一つ一つのシリカ粒子が独立したほぼ球状の均一な形状を有していることが特徴である。これに対して、本発明のシリカ分散液は、微粒子が凝集した各種シリカを粉砕したものであるため、該分散液中のシリカ粒子は多少いびつな凹凸のある不均一な形状が特徴である。このような特徴ある粒子形状を活かすことによって、コロイダルシリカとは異なる用途や効果も期待できる。
【0027】
例えば、研磨材としての用途においては、研磨性において研磨速度の向上等を図ることができ有利である。
【0028】
上記シリカ分散液中のシリカが粉砕シリカであることは、高分解能の走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて粒子形状を観察することによって確認できる。
【0029】
本発明の製造方法により得られるシリカ分散液の他の性状は特に制限されないが、シリカ分散液のpHは、3〜11の範囲が一般的である。
【0030】
本発明の製造方法により得られるシリカ分散液は塩基性塩化アルミニウム等を使用してカチオン変性を行うことができる。ここで、カチオン変性とは、シリカ粒子表面の少なくとも一部をシリカ以外の金属酸化物を用いて被覆することであり、この方法としては、例えば特公昭47−26959に示された方法を使用することができる。このような処理を、本発明で使用するシリカ原料またはシリカ分散液に施すことにより、粒子表面を正に帯電させたシリカ分散液を調製することが可能である。上記処理は、酸性領域で行われるが、本発明の製造方法により得られるシリカ分散液はpHの変化する酸性溶液中でも安定な特性を示し、得られるシリカ分散液も安定性を持続する。
【0031】
本発明において粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液は、下記の方法によって製造する。
【0032】
即ち、乾式シリカ粒子を極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって平均粒子径100nm未満に粉砕することによって、粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液を製造する。
【0033】
該シリカスラリーにおける粒子径は、平均粒子径100nm未満にまで粉砕可能なものであれば特に制限されず、一般に、0.2〜100μmの範囲のものが好適に使用される。
【0034】
本発明において、シリカスラリーの対向衝突は、乾式シリカを平均粒子径100nm未満の大きさに粉砕させる条件が特に制限なく採用される。かかる条件を満足する装置としては、一般に、対向衝突ジェット粉砕機と呼ばれている市販の装置が好適に使用できる。
【0035】
対向衝突ジェット粉砕機とは、基本的には、シリカスラリーを加圧することによって出口側に導き、該スラリーを2つの流路に分岐し、さらに流路を狭めることによって流速を加速し、対向衝突させることによって該スラリー中のシリカ凝集体を粉砕する装置である。
【0036】
このような対向衝突ジェット粉砕機を使用した粉砕条件は、機種によって各種の装置定数や効率が異なるため、あるいは用いるシリカスラリーの種類によって粉砕の効率が異なるため、一概にその処理条件を定めることはできない。
【0037】
一般には、粉砕効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど粉砕効率も高くなる。例えば、処理圧力は500kgf/cm2以上、好ましくは800kgf/cm2以上、さらに好ましくは1200kgf/cm2以上の場合、粉砕効率の高い処理が可能である。また、対向衝突する際のシリカスラリーの衝突速度は、相対速度として50m/秒以上、好ましくは100m/秒以上、さらに好ましくは150m/秒以上であることが望ましい。
【0038】
なお、対向衝突ジェット粉砕機でシリカスラリーを処理する回数は、1〜数十回の範囲から選ぶことができる。
【0039】
上記のようにシリカスラリーを加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるためにダイヤモンドが好適に採用される。このような装置の代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー(株)製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、及びスギノマシン製のアルティマイザーなどを挙げることができる。上記で例示した装置はいずれも流通式であるため、出口側で取り出されたシリカ分散液は一応に粉砕、解砕または分散等の処理を受けたことになるため均一性が高い点で、超音波分散やホモジナイザー等のバッチ式とは異なり優れている。
【0040】
また、粉砕、解砕または分散処理が高効率で行われること、不純物の混入が極めて少ないこと、大量処理にも適応可能なことなど、工業的に利用するのには適している。
【0041】
本発明において、シリカスラリーの濃度は、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下が好ましい。50重量%を超えると、スラリーの流動性が極端に悪くなるため処理が困難になる傾向がある。なお、粉砕後の平均粒子径が小さくなればなるほど、あるいはシリカスラリーの濃度が高くなればなるほどシリカスラリーの流動性が低下するため処理が困難になる。そのような場合には、まずスラリー濃度の低い原料スラリーを本発明の方法で処理し粘度を下げた後に、徐々にシリカを添加してスラリー濃度を上げて再び本発明の方法を適用するという方法が採用できる。
【0042】
本発明においては、上記方法において、さらに、シリカスラリーを対向衝突させる際のシリカスラリーのpHを8以上、さらに好ましくはpHを9以上とすることによってさらに保存安定性の優れたシリカ分散液が得られることを見い出した。
【0043】
即ち、従来の分散方法ではシリカスラリーのpHを8以上にして分散させても、必ずしも長期的に安定なシリカ分散液は得られなかった。それに対して、本発明の方法を採用した場合では、シリカスラリーのpHを8以上としたシリカ分散液は、長時間放置しても、あるいはさらにアルカリを添加しても再凝集する現象は見られなかった。
【0044】
アルカリの種類は公知のものが何等制限なく使用できる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0045】
アルカリの添加量は用いるシリカの種類によって異なるため一概には定義できない。通常はpHメーターでpHを確認しながら少量ずつアルカリを添加すれば良い。但し、原料シリカの一次粒子径が35nm以下で、スラリー濃度が10重量%以上のシリカスラリーでは、アルカリを添加するとゲル化してpHを測定できない場合がある。そのような場合には、シリカスラリーを対向衝突させることによって該スラリーの粘度を下げた後にpHを測定すれば良い。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の製造方法によって得られた平均粒子径100nm未満の粉砕乾式シリカ粒子5〜30重量%を分散してなるシリカ分散液は、長期間放置してもゲル化やシリカ粒子の沈降が起こらず、保存安定性、沈降安定性に優れたものである。
【0047】
また、本発明の製造方法によれば、平均凝集粒子径が0.2μm以上の乾式シリカを原料にして安定なシリカ分散液を効率よく製造することができる。
【0048】
そのため、本発明によれば、各種の研磨剤やコート剤用等の原料として好適なシリカ分散液を経済的に且つ効率よく提供することができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0050】
以下の方法によって、原料のシリカ及び処理したシリカ分散液を分析した。
【0051】
(比表面積)
BET式の比表面積計(島津製作所製、フローソーブII)を用いて測定した。
【0052】
(平均粒子径)
平均粒子径は、遠心沈降式光透過法の粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−DCP)を用いて重量平均粒子径を測定した。また、高分解能の走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6400F)を用いて、処理したシリカ分散液中のシリカ粒子の形状と上記粒度分布計の値の妥当性を確認した。
【0053】
(保存安定性及び沈降安定性)
保存安定性は、処理したシリカ分散液がゲル化して流動性がなくなるまでの日数を調べた。
【0054】
また、沈降安定性は、1ヶ月間静置後に生じた沈降成分を計量し、初期のシリカ分に対する重量%で示した。
【0055】
(pHの測定)
処理したシリカ分散液のpHをpHメーター(堀場製作所製、M−13)を用いて測定した。
【0056】
(粘度の測定)
シリカ分散液の粘度はB型粘度計(トキメック製、BL型)を用いて、20℃で測定した。
【0057】
(表面シラノール基密度の測定)
シリカを120℃で3時間真空乾燥後、脱水したジオキサン30mlに対して該シリカ1g加えて良く分散させた。次に、25mlのガラス製三角フラスコに0.3gのLiAlH4と脱水したジオキサン10mlを加えて撹拌し、さらに上記シリカ分散液1mlを加えて、シリカの表面シラノール基とLiAlH4とを反応させた。反応によって生成した水素をガスクロマトグラフィーを用いて定量した。表面シラノール基1個に対して水素分子1個が発生すると仮定し、別途求めておいた比表面積値を用いて、表面シラノール基密度(単位;個/nm2)を計算した。
【0058】
(nの測定)
シリカ分散液のスペクトルは、分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セルと試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、シリカ分散液の濃度が1.5重量%になるようにシリカ分散液をイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈液を入れて波長(λ)460〜700nmの範囲の吸光度(τ)を1nm毎に241個測定した。log(λ)とlog(τ)をプロットし、前述した式(1)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。このときのnを光散乱指数とした。
【0059】
実施例1
5リットルのポリ容器に乾式シリカ(トクヤマ製;レオロシールQS−10、比表面積;138m2/g)360gとイオン交換水2640gを入れて、棒でかき混ぜることによって予備混合を行った。できたペースト状のシリカスラリーを対向衝突ジェット粉砕機(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力700kgf/cm2、衝突相対速度105m/秒で3回処理した。なお、3回の合計処理時間は45分であった。分析の結果を表1に示す。
【0060】
スラリー濃度は12重量%、粘度は15.8cP、平均粒子径は78nmで、40〜90nmの範囲の粒度分布の狭い多少透明感のある乳白色の均質なシリカ分散液であった。また、ゲル化が起こるまでの日数は13日であったが、よく振り混ぜることによって流動性が回復するような軽いゲル化状態であった。
【0061】
なお、原料シリカと処理後のシリカを走査型電子顕微鏡で観察したところ、処理前後における一次粒子の形状の変化は特に観察されなかった。
【0062】
実施例2、3
処理圧力を1000kgf/cm2、衝突相対速度140m/秒及び1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例1と同様にシリカスラリーをそれぞれ処理し、できたシリカ分散液を分析した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
粉砕機にホモジナイザー(イカ製ウルトラタラックス、T−25)を用いた以外は実施例1と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例4の1/2の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例1〜3と比較して大きく、しかも粒度分布は50〜800nmと広いものであった。そのため保存安定性の評価も3日と悪かった。
【0064】
以上の結果からわかるように、本発明の方法は、従来法に比べて、粒度分布が狭く平均粒子径が小さい乾式シリカ分散液を高効率で製造できることがわかった。
【0065】
実施例4
乾式シリカとして、トクヤマ製;レオロシールQS−102(比表面積;205m2/g)を用い、処理圧力を1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例1と同様にシリカ分散液を製造した。分析の結果を表1に示す。
【0066】
上記シリカ分散液は、スラリー濃度が12重量%、粘度が23.5cP、平均粒子径が44nmで20〜60nmの範囲の比較的シャープな粒度分布を持った、やや青みがかった透明感のある均質なシリカ分散液であった。また、ゲル化が起こるまでの日数は15日であったが、よく振り混ぜることによって流動性が回復するような軽いゲル化状態であった。
【0067】
ところで、このとき用いたシリカの表面シラノール基密度を測定したところ、4.3個/nm2であった。特公平5−338では表面シラノール基密度が1nm2当り0.3個以上3個以下でないと、粒子が沈降したり、粘度が極端に高くなったり、ゲル化したりする問題があると述べているが、シリカスラリーを対向衝突させることによって粉砕する本発明の方法では、表面シラノール基密度が上記範囲外であっても粘度が低く、均質なシリカ分散液が得られることがわかった。
【0068】
なお、上記シリカと同じグレードの乾式シリカで、製造直後のものや数カ月間保存したシリカなどを用い、表面シラノール基密度が1〜3個/nm2の範囲のものについて上記と同様にシリカ分散液を製造したが、結果は上記とほぼ同じであった。
【0069】
実施例5
5リットルのポリ容器にイオン交換水2615gと1Nの水酸化カリウム水溶液25gを計り取り、混合した。次に、乾式シリカ(トクヤマ製;レオロシールQS−10、比表面積;138m2/g)360gを上記アルカリ水溶液に投入し、棒でかき混ぜることによって予備混合を行った。できたペースト状のシリカスラリーを対向衝突ジェット粉砕機(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力700kgf/cm2、衝突相対速度105m/秒で3回処理し、できたシリカ分散液を分析した。このときのスラリー濃度は12重量%、粘度は13.2cPの乳白色の均質なシリカ分散液であった。分析の結果を表1に示す。
【0070】
実施例6、7
処理圧力を1000kgf/cm2、衝突相対速度140m/秒及び1300kgf/cm2、衝突相対速度165m/秒とした以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理し、分析をおこなった。結果を表1に示す。
【0071】
以上のように、シリカスラリーのpHを8以上とすることによって平均粒子径はより小さくなり、しかも保存安定性が大幅に向上することがわかった。
【0072】
比較例2
粉砕機にホモジナイザー(イカ製ウルトラタラックス、T−25)を用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例5の1/2の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例5〜7と比較して大きく、しかも保存安定性も悪かった。
【0073】
比較例3
粉砕機に超音波洗浄機(出力200W)を用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理した。なお、処理したスラリーの量は実施例5の1/10の量で、処理時間は1時間とした。結果を表1に示すが、この方法では平均粒子径が実施例5〜7と比較して大きく、しかも保存安定性も悪かった。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例8〜10
比表面積の異なる乾式シリカを用いた以外は実施例5と同様にシリカスラリーを処理し、分析した。なお、1N−水酸化カリウム水溶液の量は実施例8では16g、実施例9では35g、実施例10では65gと変えたが、スラリー濃度は12重量%で一定にした。結果を表2に示す。
【0076】
実施例11〜12
1N−水酸化カリウム水溶液の量を88gと220gとした以外は実施例10と同様にシリカスラリーを処理し、分析した。結果を表2に示す。
【0077】
以上のように、アルカリの添加量を増して、pHをより高くした方が平均粒子径が小さくなることがわかった。
【0078】
【表2】
Claims (2)
- 乾式シリカ粒子を極性溶媒に分散してなるシリカスラリーを対向衝突させることによって平均粒子径100nm未満に粉砕することを特徴とする平均粒子径100nm未満の粉砕シリカ粒子5〜30重量%が極性溶媒に分散してなるシリカ分散液の製造方法。
- シリカスラリーとして、アルカリ性の極性溶媒に乾式シリカを混合してpHを8以上としたシリカスラリーを使用する請求項1記載のシリカ分散液の製造方法。
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Legal Events
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