JP2004043296A - 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法 - Google Patents

8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004043296A
JP2004043296A JP2003145760A JP2003145760A JP2004043296A JP 2004043296 A JP2004043296 A JP 2004043296A JP 2003145760 A JP2003145760 A JP 2003145760A JP 2003145760 A JP2003145760 A JP 2003145760A JP 2004043296 A JP2004043296 A JP 2004043296A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molecular sieve
hydrothermal treatment
oxygen
membered ring
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003145760A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4596116B2 (ja
Inventor
Katsumi Higuchi
樋口 克己
Akio Hashimoto
橋本 晃男
Toshihiro Nomura
野村 俊広
Sachiko Arie
有江 幸子
Takuro Oshida
大信田 卓朗
Takashi Kojima
小島 孝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Original Assignee
Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Gas Chemical Co Inc filed Critical Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
Priority to JP2003145760A priority Critical patent/JP4596116B2/ja
Publication of JP2004043296A publication Critical patent/JP2004043296A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4596116B2 publication Critical patent/JP4596116B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Abstract

【課題】非平衡型のメチルアミン合成用触媒である従来の8酸素員環細孔を有する結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブが抱えていた、触媒の製造上の問題点や性能上の問題点を解決する。
【解決手段】8酸素員環細孔を有する結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ製造時の水熱処理を特定の処理条件で制御することを特徴とする本発明によれば、Si/Alの原子比が結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有し、かつ、純度及び結晶化度が高いシャバサイト型結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを、少量の鋳型剤で収率良く安定的に製造することができる。また、非晶質酸化物層の厚さや組成は、ジメチルアミンの合成収率に大きな影響を及ぼすが、本発明の触媒合成条件で容易にこれを制御し再現することができる。このように、本発明によれば、性能的に優れた触媒を、低コストかつ廃棄物も少ない方法で、安定的に供給することが可能となる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ(以下原則として8員環SAPOと記す)とその製造方法、及びその方法により得られた8員環SAPOを触媒として用いるメチルアミン類の製造方法に関する。より詳しくは、触媒性能を大きく左右する非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有する、8員環SAPOであって、該非晶質酸化物層のアルミニウムに対するケイ素(Si/Al)の原子比が、結晶粒子全体での当該原子比よりも大きいことを特徴とする、8員環SAPOとその製造方法、及びその方法により得られた8員環SAPOを触媒として用いるメチルアミン類の製造方法に関する。なお、シャバサイト型の結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブは、International  Zeolite Association(IZA)が定めているIUPAC構造コードで表してCHA型である構造を持つ、ケイ素、アルミニウム、リン、及び酸素を主成分とする8員環SAPOのひとつである。
メチルアミン類、特にジメチルアミンは、ジメチルホルムアミドに代表される溶剤、ゴム製品、医薬品や界面活性剤などの原料として重要である。
【0002】
【従来の技術】
メチルアミン類は通常、メタノールとアンモニアからシリカ−アルミナなどの固体酸触媒を用いて400℃前後の温度で製造されている。良く知られているように、前記、シリカ−アルミナ触媒を用いた場合、生成物は熱力学的な平衡に従い、モノ、ジ、トリの3種類のメチルアミン中、需要の最も少ないトリメチルアミンが主生成物となる。しかし、メチルアミン類の需要のほとんどがジメチルアミンに偏っているため、近年、熱力学的な平衡組成を超える選択的なジメチルアミンの製造方法の開発が進められている。
【0003】
そのような方法として、例えば、ゼオライトA(例えば、特許文献1参照)、FU−1(例えば、特許文献2参照)、ZSM−5(例えば、特許文献3参照)、フェリエライト及びエリオナイト(例えば、特許文献4参照)、ZK−5、Rho、シャバサイト及びエリオナイト(例えば、特許文献5参照)、モルデナイト(例えば、特許文献6、7、8、9参照)などのゼオライト(結晶質アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ)を用いた方法が挙げられる。
これらの方法では、細孔入口径が小さいゼオライト類を、更にイオン交換、脱アルミニウム処理、特定の元素の添加やシリル化処理などを施して、細孔入口径を制御、或いは外表面酸性点を修飾することにより、ジメチルアミン選択性の向上と触媒活性の改善を図っている。
【0004】
また、非ゼオライト系モレキュラーシーブである結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ(以下原則としてSAPOと記す)を用いた、熱力学的な平衡組成を上回るモノメチルアミンなどの製造方法(例えば、特許文献10参照)も公知である。
本発明者らも、選択的なジメチルアミン製造技術について検討を重ねた結果、シリカ変性SAPOや、種々の酸化物で変性したSAPOが、ゼオライト触媒を用いた先行技術に比べて高活性、かつ高いジメチルアミン選択性を示す事を見出し、既に出願している(特許文献11、12、13参照)。
【0005】
一般的に、ゼオライトやSAPOなどの結晶質モレキュラーシーブの表面は、結晶表面が露出していると考えられている。従って、ゼオライトやSAPOの表面は、ケイ素とアルミニウムを含むモレキュラーシーブの特性である強い酸性点を有しており、ジメチルアミン選択性を向上させる目的で、ケイ素化合物を用いた気相化学蒸着処理や液相シリル化処理、ホウ素やリンなどを含む化合物による修飾など、表面酸性点の処理がしばしば行われている(例えば、特許文献14、15、16、17、18参照)。また、本発明者らの公報(特許文献11、12、13参照)の技術もこの概念に基づいている。
【0006】
しかし、これら従来公知の方法は、SAPOの合成後、遠心分離やろ過による分離と洗浄、場合によっては、焼成を施した触媒を更に修飾する方法であるため、工程数が多い。特にシリル化処理は、処理を行う触媒の含水量を精密に制御する必要があり、また、エタノールやトルエンなどの有機溶媒を使用するため、廃液処理の問題も発生する。
このように、合成したSAPOを更に修飾して活性や選択性の向上を図る従来公知の方法は、経済及び環境の両面に関わる改善すべき問題点を有するものでありSAPOの合成段階において活性や選択性を制御する、従来の後処理工程を必要とする方法とは異なる新たな方法の開発が望まれている。
【0007】
このような課題に対して、本発明者らは既に、先に述べた技術のほかに、SAPOのうち結晶の平均粒子径が5μm以下で結晶形状が直方体状、立方体状であるシャバサイト型の8員環SAPOが、メチルアミン類の製造触媒として優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を示すことを見出し出願している(特許文献19参照)。
このシャバサイト型の8員環SAPOは合成後の修飾を行わなくても優れた活性と選択性を示したが、本発明者らの更なる検討において、合成ロットによってはこれら触媒性能に差異が認められるという現象があり、最良の触媒を安定的に得るためにはよりいっそうの技術的改善を要するという問題点を有した。
【0008】
また、上記粒子径及び形状のシャバサイト型の8員環SAPOは、ジエタノールアミンや水酸化テトラエチルアンモニウムなどの、有機アミン類又は有機アンモニウム塩を、Alに換算したアルミニウム化合物のモル数に対して1.5±0.5倍量用いて合成されているが、焼成を行う前の合成されたままのシャバサイト型の8員環SAPOに取り込まれているこれらの有機アミン類又は有機アンモニウム塩の量は、Alのモル数に対して、結晶構造を構築するのに必要な0.37倍量程度である。そのため、結晶構造に取り込まれない有機アミン類又は有機アンモニウム塩は余剰となり、活性汚泥等で処理する必要がある。従って、有機アミン類又は有機アンモニウム塩の使用量を少なくして、純粋な8員環SAPOが合成できれば、経済及び環境の両面で優れた方法となり得る。
【0009】
8員環SAPOは、メチルアミン合成反応において、比較的高いジメチルアミン選択性を示すため、従来から、これらのSAPOを用いたメチルアミン合成反応について多くの検討が行われている(例えば、非特許文献4参照)。8員環SAPOとしては、SAPO−14、17、18、33、34、35、39、42、43、44、47、56が知られている(例えば、非特許文献5、非特許文献6参照)。そのうち、シャバサイト型の8員環SAPOは、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47の3種類が知られており、中でも、シャバサイト型構造のSAPO−34がメチルアミン合成反応やメタノール転化反応の触媒としてよく検討されている(例えば、特許文献10,21参照)。
【0010】
これらの8員環SAPOは、従来、水酸化テトラエチルアンモニウム、モルホリン、シクロヘキシルアミン、及びジエチルエタノールアミン等の化合物を鋳型剤として用い、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、及び水の混合物を水熱処理して合成できることが知られている(例えば、特許文献20参照)。しかし、このような8員環SAPOが、結晶粒子表面に非晶質酸化物層を有していること、この非晶質酸化物層が水熱合成中に結晶粒子表面で成長すること、及びメチルアミン合成反応の収率や選択性を大きく左右することについては知られていない。
【0011】
通常、8員環SAPOを合成する場合、水熱処理する混合物を下式(1)に示す組成式で表わして、使用する鋳型剤Rの量は、混合物中のAlのモル数に対して1〜3倍量(a/c=1〜3)用いるのが一般的である。
aR,bSiO,cAl,dP,eHO  ・・・・ 式(1)
【0012】
8員環SAPOの合成に用いられている鋳型剤の使用量について、種々の特許、文献を調べたところ、純粋で結晶化度の高いシャバサイト型の8員環SAPOを得るために、鋳型剤は少なくとも水熱処理をする混合物中のAlのモル数に対して1倍量以上が用いられており、それより少ない場合、International  Zeolite Association(IZA)が定めているIUPAC構造コードで表してAFI型に帰属される構造体(SAPO−5)やリン酸アルミニウムクリストバライト、ベルリナイトなどが不純物として存在するようになることが述べられている。
【0013】
水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)を鋳型剤に用いたSAPO−34の合成法について述べられた文献があり(例えば、非特許文献1参照)、純粋なSAPO−34はTEAOH/Alのモル比が2〜3の範囲で生成し、1〜2の範囲ではSAPO−5が、1以下では高密度相が生成することが記載されている。そして3以上のTEAOHを用いると、非結晶のアモルファス構造を有する粒子が生成することが記載されている。
また、モルホリンを鋳型剤に用いたSAPO−34の合成法について述べた文献があり(例えば、非特許文献2参照)、モルホリン/Alのモル比が0.5以下ではリン酸アルミニウムクリストバライトとアモルファス化合物の混合物となり、モルホリン/Alのモル比が1.0では80%のSAPO−34と20%のクリストバライトの混合物が得られ、純粋なSAPO−34はモルホリン/Alのモル比が2.0以上で得られることが記載されている。
更に、シクロヘキシルアミンを鋳型剤に用いたSAPO−44の合成法について述べた文献もあり(例えば、非特許文献3参照)、シクロヘキシルアミン/Alのモル比が1.9以下では、SAPO−5が混じることが記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開昭56−69846号公報
【特許文献2】特開昭54−148708号公報
【特許文献3】米国特許第4082805号明細書
【特許文献4】特開昭56−113747号公報
【特許文献5】特開昭61−254256号公報
【特許文献6】特開昭56−46846号公報、
【特許文献7】特開昭58−49340号公報
【特許文献8】特開昭59−210050号公報
【特許文献9】特開昭59−227841号公報
【特許文献10】特開平2−734号公報
【特許文献11】特開平11−35527号公報
【特許文献12】特開平11−239729号公報、
【特許文献13】特開2000−5604号公報
【特許文献14】特開平3−262540号公報
【特許文献15】特表平11−508901号公報
【特許文献16】特開平6−179640号公報、
【特許文献17】特開平7−2740号公報
【特許文献18】特開昭61−254256号公報
【特許文献19】特開2000−117114号公報
【特許文献20】米国特許第4440871号明細書
【特許文献21】米国特許第5126308号明細書
【非特許文献1】J. Liang, H. Li, S. Zhao, W. Guo, R. Wang, and M. Ying, Appl. Catal., 1991, 64, p.31−p.40
【非特許文献2】A. M. Prakash, S. Unnikrishnan, J. Chem. Soc. Faraday Trans., 1994, 90(15), p.2291−p.2296
【非特許文献3】S. Ashtekar, S. V. V. Chilukuri, D. K. Chakrabarty, J. Phys. Chem. 1994, 98, p.4878−p.4883
【非特許文献4】D. R. Corbin, S. Schwarz, and G. C. Sonnichsen, Catalysis Today, 1997, 37, p.71−p.102.
【非特許文献5】E. M. Flanigen, B. M. Lok, R. L. Patton, and S. T. Wilson, New Developments in Zeolite Science and Technology, Elsevier, 1986, p.103−p.112.
【非特許文献6】Structure Commission of the International Zeolite Association, Atlas of Zeolite Framework Types, Elsevier, 2001, p.14−p.15.
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
先に述べたように、本発明者らはSAPOのうち、結晶の平均粒子径が5μm以下で、結晶形状が直方体状、立方体状であるシャバサイト型の8員環SAPOが、合成後の修飾を行わなくてもメチルアミン類の製造触媒として優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を示す事を見出し、既に出願している(特開2000−117114号公報)。しかし、上記の粒子径及び形状であっても、ロットによっては触媒性能に差異が認められることがあった。
【0016】
また、上記シャバサイト型の8員環SAPOは、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)やジエタノールアミンなどの有機アミン類又は有機アンモニウム塩の使用量が、Alに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対して1.5±0.5倍量の範囲である原料混合物を水熱処理することにより得られるが、ここに挙げたような過剰の有機アミン類又は有機アンモニウム塩を必要とする方法は、得られる触媒の収量も低く、また、過剰分の有機アミン類又は有機アンモニウム塩を活性汚泥等で処理する必要が生じる。
このように、特開2000−117114号公報記載のSAPOはアミン合成触媒としての安定性や、鋳型剤の過剰使用に伴う問題など更に改善すべき課題を残していた。
【0017】
すなわち、本発明の目的は、上記問題点を解決し、優れた触媒活性及びジメチルアミン選択性を有する8員環SAPOと、その安価で安定した製造方法、及び該触媒を用いたメチルアミン類の製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、8員環SAPOの合成過程において、結晶質のモレキュラーシーブ粒子本体のまわりに、結晶質部分よりも大きなアルミニウムに対するケイ素(Si/Al)の原子比を持つ非晶質酸化物層が形成され、非晶質酸化物層のSi/Alの原子比が、結晶粒子全体での当該原子比よりも大きい8員環SAPOが得られること、非晶質酸化物層のSi/Alの原子比又は厚さは、触媒活性とジメチルアミン選択性に大きく影響し、非晶質酸化物層が形成される過程における水熱処理の温度と時間で精密に制御できることを見出した。この非晶質酸化物層のSi/Alの原子比又は厚さを制御する技術により、触媒活性とジメチルアミン選択性が安定した触媒が製造可能となることがわかった。
【0019】
また、水熱処理時の条件として、まず80℃〜130℃の間の温度範囲内で1時間以上水熱処理した後、次に150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理する工程(第1工程)、更に150〜200℃の温度範囲内で10時間以上水熱処理する工程(第2工程)を含む処理を行うことにより、鋳型剤である有機アミン類や有機アンモニウム塩の使用量をAlに対しモル比として1.0倍量未満に減らしても、結晶性が高く、純粋な8員環SAPOが得られ、かつ、従来の製造方法に比べて触媒収率も向上することを見出した。
【0020】
更に、このようにして得られた8員環SAPOは、従来の製造方法で得られるシャバサイト型のSAPOよりも優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を有することを見出し、この8員環SAPOの製造技術と、非晶質酸化物層のSi/Alの原子比又は厚さを制御する技術を組み合わせることにより、優れた活性とジメチルアミン選択性を有する触媒を安定して製造する方法を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、Si/Alの原子比が、結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有することを特徴とする、8員環SAPOと、非晶質酸化物層の厚さ又は結晶粒子の表面組成を非晶質酸化物層が形成される過程における水熱処理の温度と時間で精密に制御することを特徴とする8員環SAPOの製造方法に関するものである。また、鋳型剤である有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩とアルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、及び水を含む原料混合物を水熱処理して、8員環SAPOを製造するにあたり、Alに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対する、有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.4〜0.98の範囲であり、かつ該原料混合物を、第1工程として80〜130℃の温度範囲内で1時間以上水熱処理をした後、150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理し、次いで第2工程として150〜200℃の範囲内で10時間以上水熱処理する工程を含む処理を行うことを特徴とする8員環SAPOの製造方法に関するものである。また、更にこれらの8員環SAPOの製造技術を組み合わせて製造した8員環SAPOを触媒として用いるメチルアミン類の製造方法に関するものである。
【0022】
更に詳しくは、以下の(1)から(24)に示す8員環SAPOとその製造法、及びこれを触媒として用いたメチルアミン類の製造方法に関する。
(1)非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有する、8員環SAPOであって、非晶質酸化物層のアルミニウムに対するケイ素の原子比が、結晶粒子全体での当該原子比よりも大きいことを特徴とする、8員環SAPO。
(2)結晶粒子全体のアルミニウムに対するケイ素の原子比が0.05〜0.30の範囲であり、かつX線光電子分光法で測定される結晶粒子表面の非晶質酸化物層のアルミニウムに対するケイ素の原子比が0.50以上である、(1)記載の8員環SAPO。
(3)X線光電子分光法で測定される結晶粒子表面の非晶質酸化物層のリンに対するケイ素の原子比が0.55以上である、(1)、(2)の何れかに記載の8員環SAPO。
(4)結晶粒子表面の非晶質酸化物層の厚さが3〜20ナノメートルの範囲である、(1)〜(3)の何れかに記載の8員環SAPO。
(5)マグネシウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト及びスズから選択される一種類以上の元素を更に含む、(1)〜(4)の何れかに記載の8員環SAPO。
(6)結晶粒子の形状が直方体及び/又は立方体状であり、かつ平均粒子径が5μm以下である、(1)〜(5)の何れかに記載の8員環SAPO。
(7)結晶粒子全体より結晶粒子表面の非晶質酸化物層を除いた結晶粒子の本体部分の構造がシャバサイト型である、(1)〜(6)の何れかに記載の8員環細孔SAPO。
(8)X線回折で測定したシャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度に対するAFI型構造体の(100)面のピーク強度の比が0.02以下である、(7)記載のシャバサイト型の8員環SAPO。
(9)有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩、アルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、並びに水を含む原料混合物を水熱処理して、非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有する8員環SAPOを製造するにあたり、少なくともその結晶質部分を生成させる第1工程と、更に水熱処理を行って結晶粒子表面上に非晶質酸化物層を形成させる第2工程とからなる、(1)〜(8)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(10)第1工程の水熱処理が、80〜130℃の温度範囲内で1時間以上水熱処理する工程と150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理する工程の二つの工程を含むものである、請求項9記載の8員環SAPOの製造方法。
(11)第1工程の水熱処理のうち、80〜130℃の温度範囲内で1時間以上水熱処理する工程が、80〜130℃の間を1時間以上かけて昇温させる工程又は80〜130℃の間の一定温度を1時間以上保持する工程を含むものである、(10)記載の8員環SAPOの製造方法。
(12)第2工程の水熱処理が、150〜200℃の温度範囲内で10時間以上水熱処理する工程を含むものである、(9)〜(11)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(13)第1工程の水熱処理が、95〜125℃の間の一定温度で3〜24時間水熱処理する工程と150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理する工程の二つの工程を含み、かつ第2工程の水熱処理が、150〜200℃の温度範囲内で10〜150時間水熱処理する工程を含むものである、(9)記載の8員環SAPOの製造方法。
(14)有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩、アルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、並びに水を含む原料混合物中のAlに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対する、有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.4〜0.98の範囲である、(9)〜(13)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(15)有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩が水酸化テトラエチルアンモニウムである、(9)〜(14)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(16)アルミニウム化合物が擬ベーマイトである、(9)〜(15)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(17)リン化合物がリン酸である、(9)〜(16)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(18)ケイ素化合物がシリカゾルである、(1)〜(17)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(19)第2工程の前又は途中で、ケイ素化合物を更に添加する、(1)〜(18)の何れかに記載の8員環SAPOの製造方法。
(20)マグネシウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト及びスズから選択される一種類以上の元素を更に含む、(9)〜(19)の何れかに記載の、8員環SAPOの製造方法。
(21)8員環SAPOがシャバサイト型である、(9)〜(20)に記載の8員環SAPOの製造方法。
(22)(1)〜(8)の何れかに記載の8員環SAPOの存在下、メタノールとアンモニアを反応させるメチルアミン類の製造方法。
(23)(1)〜(8)の何れかに記載の8員環SAPOの存在下、メタノールとモノメチルアミンを反応させるメチルアミン類の製造方法。
(24)(1)〜(8)の何れかに記載の8員環SAPOの存在下、モノメチルアミンの不均化反応を行うメチルアミン類の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明におけるSAPOは、Si/Alの原子比が結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を表面に有する、8員環SAPOである。
SAPOとは、米国特許第4,440,871号明細書に記載されているように、結晶質であるとともに微孔質でありPO 、AlO 及びSiO四面体単位からなる三次元微孔質結晶骨格構造を有する化合物のことである。
また、ケイ素、アルミニウム、リン以外の金属の四面体単位を三次元微孔質結晶骨格構造に含む化合物も欧州特許第159,624号明細書などに開示されており、ELAPSOモレキュラーシーブと呼ばれている。しかし、これらの特許公報には、本発明のような非晶質酸化物層が表面に存在しているSAPOについては、記載されていない。
【0024】
本発明の8員環SAPOは、ケイ素、アルミニウム、リン以外の金属成分を含んでいても良い。マグネシウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト及びスズの中から選択される元素を含んでいる場合が好ましく、特にチタン及びジルコニウムは、触媒活性及び寿命性能を向上させる効果が有るので好ましい。これらの元素成分は、三次元微孔質結晶骨格構造及び/又は骨格構造外に存在していても良い。これら元素の含有量は特に限定されないが、アルミニウムに対するこれら元素を合わせた場合の原子比が0.0001〜0.1の範囲が好ましい。これら元素を含有した8員環SAPOは、鋳型剤、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、水と、上記元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酸化物ゾル、酸化物粉末、アルコキシド及び/又は錯体の混合物を水熱処理して合成できる。
【0025】
メタノールとアンモニアの反応において、メチルアミン類、特にジメチルアミンを選択的に得るには、SAPOの有効細孔径が0.3〜0.6ナノメートルの範囲にあることが望ましい。このような細孔は、トリメチルアミン分子の通過を阻害し、より小さな分子サイズのモノメチルアミンとジメチルアミンを通過させるため、最終的に反応の選択性は、モノメチルアミンとジメチルアミンに片寄る(D. R. Corbin, S. Schwarz, and G. C. Sonnichsen, Catalysis Today, 37 (1997), p.71−p.102)。前記有効細孔径は、SAPOの8〜10酸素員環の細孔径に相当するが、中でも8員環SAPOが、トリメチルアミンの選択性をより低くするために必要である。
【0026】
8員環SAPOとしては、例えば、SAPO−14、17、18、33、34、35、39、42、43、44、47及び56が挙げられる。これら、各SAPOに付された番号とInternational Zeolite Association(IZA)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードとの関係は、例えば、Structure Commission of the International Zeolite Association編 「Atlas of Zeolite Framework Types」 Elsevier社発行、に記載されている。前記SAPOのIUPAC構造コードは、それぞれ、AFN、ERI、AEI、ATT、CHA、LEV、ATN、LTA、GIS、CHA、CHA、AFXに対応する。前記SAPOの中で、SAPO−17、18、34、35、44、47及び56が好ましく、とりわけ、シャバサイト型構造を持つSAPO−34が特に好ましい。
【0027】
本発明におけるシャバサイト型の8員環SAPOとは、先に述べたInternational Zeolite Association(IZA)が定めているIUPAC構造コードで表してCHA型である構造を持つ、ケイ素、アルミニウム、リン、及び酸素を主成分とする結晶質のモレキュラーシーブのことである。詳しくは、米国特許第4,440,871号明細書に記載されているSAPOのうち、CHA型で表される構造を持つ化合物である。このようなCHA型の構造をもつSAPOとしては、文献E. M. Flanigen, R. L. Patton, andS. T. Wilson, Studies in Surface Science and Catalysis, Innovation in Zeolite Materials Science, p.13−p.27 (1988)にあるように、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47の3種類が知られている。
【0028】
本発明の8員環SAPOの、最大の特徴は、結晶粒子全体のSi/Alの原子比よりも大きな原子比を持つ非晶質酸化物層を表面に有することである。この非晶質酸化物層は、FIB−STEM分析によって観察することができる。図1と2はSAPO−34の例であるが、これは、1個の立方体をしたSAPO−34粒子の両側を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam,日立製作所製FB−2100装置)で削りとり、残った厚さ80ナノメートルの薄片の断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope,日立製作所製HD−2000薄膜評価装置)で観察したものである。図1には3層の構造が見られるが、最外層は、試料粒子を固定および導電性を高くするために蒸着したカーボン、白金、及びタングステンの層である。中央部が結晶粒子本体であり、両者の間の薄い層が非晶質酸化物層である。図2は、図1の表面から約100ナノメートルの部分を拡大観察したものである。格子模様のある部分が非晶質酸化物層を除いた結晶粒子本体に対応し、格子模様のない白い層が非晶質酸化物層に対応する。格子模様は規則構造であることを意味し、また、電子線回折により明瞭なラウエ斑点が観察されたことから、結晶粒子本体部分は結晶質であることがわかる(図3)。一方、格子模様が観察されない白い層は、電子線回折によるラウエ斑点が観察できなかったことから、規則構造を有しておらず、非晶質(アモルファス質)である(図4)。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−Ray Analysis)を用いた組成分析より、非晶質層は、結晶粒子本体よりもSi/Alの原子比が大きい、ケイ素成分が豊富な酸化物層であることが確かめられた。
【0029】
この非晶質酸化物層の存在とその厚さは、メタノールとアンモニアの反応やモノメチルアミンの不均化反応によるメチルアミン類の製造において、反応活性とジメチルアミン選択性に大きな影響を及ぼす。前記SAPO−34を例に説明すると、非晶質酸化物層が3ナノメートルよりも薄いSAPO−34を用いた反応では、反応活性は高いものの、トリメチルアミンが10%以上の選択率で生成するため、ジメチルアミン選択性は悪い。その一方で、非晶質酸化物層が20ナノメートルを越えると、トリメチルアミン選択率は1%以下と低いけれども、反応活性が低い。これらの結果は、非晶質酸化物層が薄い場合は、分子篩効果を示さない結晶粒子表面の活性酸点が充分に被覆されておらず、残された活性酸点により、熱力学的に最も安定なトリメチルアミンが生成することで、逆に厚すぎる非晶質酸化物層では、活性酸点の被覆は充分に進むが、活性点である結晶本体への反応物質の拡散や生成物質の結晶本体からの脱離が遅くなるために反応活性が低下すると考えることで説明できる。非晶質酸化物層は、主にケイ素とアルミニウムとリンの酸化物で構成され、しかもケイ素が主成分であるため、シリカ−アルミナのような強い酸性質は持たず、反応活性をほとんど持たない。
すなわち、本発明における非晶質酸化物層の好ましい厚さは、3〜20ナノメートルであり、より好ましくは、3.5〜16ナノメートルである。
【0030】
非晶質酸化物層の組成は、前記エネルギー分散型X線分析装置により分析できるが、X線光電子分光法(XPS、ESCA)を用いた結晶粒子の表面組成の分析によって、より簡便に測定できる。X線光電子分光法では、結晶粒子の最表面から深さ1.5〜4.0ナノメートルまでの範囲の組成が測定される。
一方、結晶粒子本体の組成は、非晶質酸化物層が非常に薄いため、結晶粒子全体の組成とほぼ同じと見なすことができ、例えば、SAPO粒子を鉱酸などで完全に溶解し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)により測定できる。
【0031】
本発明における表面組成は、VG Scientific Ltd.社製のESCALAB MKII装置を用い、X線源にはAl−Kα線(1486.7eV)を用いて測定を行い、文献J. H. Scofield,Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 8 (1976) p.129−p.137記載のスコフィールド補正係数を用いて求めた。また、結晶粒子全体の組成は、SAPOを低濃度のフッ化水素酸を含む溶液で溶解し、セイコー電子工業株式会社(Seiko Instruments Inc.)製のSPS−1200VR装置で測定した。
X線光電子分光法で測定した結晶粒子の表面組成は、非晶質酸化物層の厚さとともに変化し、Si/Alの原子比、Si/Pの原子比は非晶質酸化物層の厚さとともに増加する。例えば、前記SAPO−34の場合、非晶質酸化物層の厚さが2.5ナノメートルの時、X線光電子分光法によるSi/Alの原子比は0.49、Si/Pの原子比は0.53であり、非晶質酸化物層の厚さが7ナノメートルの時、Si/Alの原子比は1.61、Si/Pの原子比は2.45、非晶質酸化物層の厚さが13ナノメートルの時、Si/Alの原子比は1.98、Si/Pの原子比は2.92である。
このように、非晶質酸化物層の厚さが増すにしたがってSi/Alの原子比やSi/Pの原子比が大きくなるのは、後述する非晶質酸化物層の形成過程において、合成母液中に存在するケイ素、アルミニウム、リン成分のうち、ケイ素成分が選択的に結晶粒子表面に沈積していくためである。このことは、非晶質酸化物層の形成過程における合成母液のICP分析で、母液中のケイ素成分が選択的に減少していくことからわかる。
【0032】
すなわち、結晶粒子の表面組成は、非晶質酸化物層の厚さと対応する。優れた反応活性とジメチルアミン選択性を示す8員環SAPO表面のSi/Alの原子比は、後述の第2工程におけるケイ素化合物の添加を行わない場合、0.50〜2.20の範囲である。同様に、Si/Pの原子比は0.55〜3.10の範囲である。第2工程においてケイ素化合物を添加した場合、合成母液中のケイ素成分の濃度はアルミニウムやリンの濃度よりもかなり大きくなるため、優れた性能を示す8員環SAPO表面のSi/Alの原子比、Si/Pの原子比は、それぞれ0.50以上、0.55以上である。
一方、ICP分析で測定した8員環SAPO全体のSi/Alの原子比は、合成条件によって変わるが概ね0.05〜0.30の範囲である。
【0033】
以上のように、本発明の8員環SAPOは、X線源にAl−Kα線(1486.7eV)を用いたX線光電子分光法で測定した結晶粒子表面のSi/Alの原子比は、ICP分析で測定した結晶粒子全体のSi/Alの原子比よりも大きな0.50以上が好ましく、0.50〜2.20の範囲がより好ましい。一方、X線光電子分光法で測定した結晶粒子表面のSi/Pの原子比は0.55以上が好ましく、0.55〜3.10の範囲がより好ましい。一方、本発明の8員環SAPOの、結晶粒子全体のSi/Alの原子比は、0.05〜0.30の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の非晶質酸化物層は、主にケイ素、アルミニウム、及びリンを含む酸化物で構成されるが、ケイ素、アルミニウム、リン以外の元素を含有していても良い。
【0035】
非晶質酸化物層は、SAPOの結晶粒子本体の結晶化が大部分終わってから形成される。すなわち本発明の非晶質酸化物層を表面に有するSAPOは、有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩、アルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、及び水を含む原料混合物を水熱処理して、少なくともその結晶質部分を生成させる第1工程と、更に水熱処理を行って結晶粒子表面上に非晶質酸化物層を形成させる第2工程の、二つの工程を経て合成される。
【0036】
具体的には、第1工程は、ごく一般的に知られている8員環SAPOの製造法において、原料混合物の大部分が結晶化する過程であり、第2工程は、第1工程で結晶化した8員環SAPOを、ケイ素成分を含む溶液中で更に水熱処理する工程を指す。
後述の本発明における8員環SAPOの製造法では、第1工程は、結晶化が実質的に進まない80〜130℃の間で1時間以上水熱処理した後、結晶化が顕著に進む150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理するまでの過程にあたる。一方、第2工程は、150〜200℃の温度範囲内での1〜10時間の水熱処理で8員環SAPOが結晶化した後、引き続き150〜200℃の温度範囲内で水熱処理する工程に対応する。
【0037】
非晶質酸化物層の厚さや表面組成は、第2工程の水熱処理条件で制御できる。非晶質酸化物層の厚さは、水熱処理時間を長くするにつれて厚くなり、例えば、前記SAPO−34の場合、温度170℃の水熱処理では、5時間で2.5ナノメートル、50時間で7ナノメートル、100時間で13ナノメートル、175時間で25ナノメートルである。非晶質酸化物層の形成速度は温度によっても変わる。このような性質を利用し、水熱処理の温度と時間を変えることにより、非晶質酸化物層の厚さや表面組成を制御できる。また、非晶質酸化物層の厚さや表面組成を経時的に分析しながら、メタノールとアンモニアの反応によるメチルアミン類の製造などの反応に好適な厚さや表面組成に制御することもできる。
【0038】
この第2工程の水熱処理温度や時間は、第1工程の水熱処理によって、一旦、8員環SAPO結晶粒子ができてしまえば、室温まで冷却した後でも、結晶粒子を合成母液中に保持しておくことにより、ゆっくりではあるが室温でも非晶質酸化物層の形成が進むため、特に限定されない。ただ、実用的な観点から、第2工程の水熱処理は、150〜200℃の温度範囲内で10時間以上行うのが好ましい。
【0039】
非晶質酸化物層の形成速度は、前記の温度と時間のほかに、合成母液中のケイ素化合物の濃度でも制御できる。従って、本発明では、第2工程の前又は途中でケイ素化合物を更に添加しても良く、特に、非晶質酸化物層の形成速度が遅い場合に好ましい。使用できるケイ素化合物としては、粉末状のシリカ、シリカゾル、オルトケイ酸などが挙げられる。特に好ましいのはシリカゾルである。また、ケイ素化合物に加えて、イットリウム、チタン、ジルコニウム、鉄、スズなどの元素を含む化合物を適宜添加しても良い。
【0040】
従来の技術で述べたように、SAPO本体のまわりに純粋なシリカ層が形成された結晶質モレキュラーシーブは良く知られており、例えば、特表平11−508901号公報に開示されているように、アンモニウム型モルデナイトを気相でテトラクロロシランにより処理したものや、特開平7−2740号公報や特開平11−35527号公報などに開示されているように、モルデナイトやSAPOを液相で有機ケイ素化合物によりシリル化処理したものが挙げられる。
しかし、これらのSAPOにおける表面シリカ層の構造はほとんど調べられておらず、文献、丹羽幹,村上雄一,日本化学会誌,p.410−p.419(1989)によればSAPOの規則構造が露出している表面上に、シリカの四面体構造物が規則正しく並び、結晶質モレキュラーシーブ本体と類似した構造を形成しているものと考えられることが示されている(シリカのエピタキシー成長)。また、最近の文献、魯大凌,野村淳子,堂免一成,H. A. Begum,片田直伸,丹羽幹,触媒誌,Vol.44,p.483−p.485(2002)は、気相法で蒸着したシリカ層の透過型電子顕微鏡観察より、シリカ層は無定形構造ではなく、ゼオライト外表面の構造に規制されて成長した規則構造を持っていることを記載している。このように、従来公知のケイ素化合物による修飾方法で生成するシリカ層は結晶質であると考えられ、本発明の非晶質酸化物層とは異なる。
【0041】
更に、これらの従来公知の方法においては、シリカ層は、気相法の場合、制限された条件下での結晶質モレキュラーシーブの乾燥、特定の条件下でのテトラクロロシランによる処理、該処理により生成する塩素成分の洗浄除去といった、手のこんだ緻密な制御と多くの工程を重ねて作られる。一方、液相でのシリル化処理も、結晶質モレキュラーシーブの水分含有量の制御と有機ケイ素化合物の加水分解を利用した結晶質モレキュラーシーブ表面の処理といった、微妙な制御技術と多くの工程を重ねて作られる。これに対し、本発明における非晶質酸化物層は、8員環SAPOの合成過程において形成されるため、従来公知の方法に比べて工程数ははるかに少なく、触媒性能の制御も非常に簡単で経済的である。
【0042】
すなわち、合成した8員環SAPOの表面に非晶質酸化物層が存在すること、非晶質酸化物層の存在や厚さが触媒性能に大きく影響すること、非晶質酸化物層の厚さは8員環SAPO合成時における非晶質酸化物層の形成過程の水熱処理条件で精密に制御できることは、これまで全く知られておらず、本発明の非晶質酸化物層を表面に有する8員環SAPOは、液相でシリル化処理したシリカ変性SAPOなどのシリカで修飾された結晶質モレキュラーシーブとは、概念も本質も全く異なる物質である。
【0043】
本発明では、水熱処理条件として、原料混合物を、第1工程の水熱処理のうち、8員環SAPOの結晶化が実質的に進まない80〜130℃の間で1時間以上水熱処理した後、結晶化が顕著に進む150〜200℃の温度範囲内で水熱処理し、続いて、第2工程として、150〜200℃の温度範囲内で水熱処理する工程を含む処理を行う。これによってAlのモル数に対して1.0倍量未満と従来に比し少ない鋳型剤の使用量でも、純度及び結晶化度が高く、かつSi/Alのモル比及び厚さが制御された非晶質酸化物層を持った、優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を有する8員環SAPOを安定して製造することが可能となった。すなわち、第1工程において、比較的温和な80〜130℃の温度条件で1時間以上の水熱処理する工程を設け、鋳型剤が有効に利用されるようにしたことで、鋳型剤の使用量を結晶中に存在する本来の必要量程度まで低減できるようになった。
【0044】
本願製造法のもう一つの特徴は、鋳型剤の使用量が少なくなるにつれて、触媒収率が良くなることである。このことは、鋳型剤の使用量が少ないことと、触媒収率が良くなるという2つの効果により、従来公知の方法に比べて触媒収量が大幅に増加するため、触媒製造コストが大幅に低減でき、工業生産上極めて都合が良い。このように、過剰の鋳型剤を必要とする従来公知の方法に比べると、本願製造法は、単に鋳型剤の使用コストと廃棄処理コストを低減できるだけに止まらず、高い触媒収率による触媒製造コストの低減もはかれるため、経済性の点で、大きく改善されている。
【0045】
触媒収率が良くなる理由は、アルカリである鋳型剤を多く必要とする従来公知の方法では、必然的に原料混合物のpHが高くなり、SAPOの構成成分であるケイ素、アルミニウム、リン化合物の溶解度が高くなるため、触媒収量が少なくなると考えることで説明できる。従来公知の方法における水熱処理後のpHは8以上の範囲であるが、本願製造法では、概ね5.5〜7.5の範囲である。
【0046】
通常、8員環SAPOは、水酸化テトラエチルアンモニウム、モルホリン、シクロヘキシルアミン、及びジエチルエタノールアミン等の化合物を鋳型剤として用い、鋳型剤、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、及び水を均一に混合して、オートクレーブ中で、150〜200℃の温度下、数時間〜200時間水熱処理して合成される。
aR,bSiO,cAl,dP,eHO  ・・・・ 式(1)
鋳型剤は、水熱処理する混合物を上記式(1)に示した組成式で表わした際の、Alのモル数に対して1〜3倍量を用いるのが一般的である。
従来の技術で述べたように、鋳型剤の使用量がAlのモル数に対して1倍量未満では、純粋な8員環SAPOの合成は困難であるようで、合成に成功した例は知られていない。先に挙げた文献以外に、例えば、米国特許第5,126,308号明細書に、メタノールからオレフィンを製造するためのSAPOの合成法について記載しているが、鋳型剤である水酸化テトラエチルアンモニウムとジ−n−プロピルアミンの合計使用量はAlのモル数に対して1.0倍量以上である。また、米国特許第5,663,471号明細書は、SAPOの製造法について記載しているが、鋳型剤である水酸化テトラエチルアンモニウムの使用量はAlのモル数に対して2.0倍量である。
【0047】
焼成を行う前の8員環SAPOは、鋳型剤分子を細孔内に内包している。このような細孔に存在している鋳型剤の量は、焼成を行う前の試料をICPなどの組成分析、TGのような重量分析、焼成減量測定(LOI)を行う事により求めることができる。文献L Marchese, A.Frache, E. Gianotti, G.Marta, M.Causa, S.Coluccia,Microporous, and Mesoporous Materials 30 (1999) p.145−153は、鋳型剤にモルホリンを用いたSAPO−34の合成に関するものであるが、焼成前のSAPO−34のケージ中には、鋳型剤分子は1.5個内包されている事を述べている。この量はAlのモル数に対する比率に換算すると0.49倍量となる。この0.49倍量の鋳型剤使用量で純粋な8員環SAPOを合成できることが望ましいが、これまでそのような例は知られていない。
【0048】
後段の、実施例の項の比較例1〜3に示すように、80〜130℃の間の温度範囲内で1時間以上水熱処理する操作を行わず、従来の水熱処理条件で鋳型剤使用量をAlに対して1.0倍量よりも減らして合成を行うと、8員環SAPO以外に、SAPO−5のような8員環SAPOではないAFI型構造体やInternational Centre for Diffraction Dataが定めるところのJCPDSカード番号20−0045に記載のリン酸アルミニウムに帰属される構造体が生成するため、得られる8員環SAPOの純度及び結晶化度は低いものとなってしまう。
【0049】
第1工程の水熱処理のうち、80〜130℃の間で1時間以上水熱処理すると、鋳型剤の使用量がAlのモル数に対して1.0倍量未満でも、純粋で結晶性の高い8員環SAPOが安定して製造できる理由はよくわかっていないが、例えばシャバサイト型の8員環SAPOの場合、次のように考えることで説明できる。
第1工程の水熱処理のうち、80〜130℃の間で1時間以上水熱処理すると、シャバサイト型の8員環SAPOの骨格を構成している二重6員環構造(Double−six−ring−structure)やシャバサイト型の8員環SAPOの核が合成母液中に形成されるため、150〜200℃の温度で水熱処理した際、シャバサイト型の8員環SAPOが速やかに結晶化が進むと考えられる。
一方、80〜130℃の間で1時間以上水熱処理する操作を行わない場合、合成母液中の二重6員環構造やシャバサイト型の8員環SAPO核の形成量が不充分となり、150〜200℃の温度で水熱処理しても、8員環SAPOではないAFI型構造のSAPOが生成したり、結晶化が完全に進まなくなると考えられる。このような現象は、鋳型剤の使用量が多い場合には起こりにくいが、鋳型剤の量が少なくなるにつれて顕著になると考えられる。
【0050】
8員環SAPOの純度は、X線回折で求めることができる。例えば、シャバサイト型の8員環SAPOの純度は、X線回折で測定したシャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度に対するAFI型構造体の(100)面のピーク強度の比で求めることができる。シャバサイト型構造体の(100)面及びAFI型構造体の(100)面のピークは、CuKα線を用いた走査軸2θ/θ法で、2θがそれぞれ約9.5度および約7.4度の位置に現れる。
【0051】
8員環SAPOの有効細孔直径は約4オングストロームであるため、メタノールとアンモニアの反応でメチルアミン類を製造するにあたって、分子サイズが6.3×5.8×4.1オングストロームであるトリメチルアミンは細孔の外に出てくることができず、溶剤、医薬、界面活性剤などの原料として有用なジメチルアミンが選択的に製造できる特徴を持っている。これに対し、8員環SAPOではないAFI型構造のSAPO−5の有効細孔直径は約7オングストロームであるため、トリメチルアミン分子が通過できる。そのため、例えば、シャバサイト型の8員環SAPOの場合、シャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度に対するAFI型構造体の(100)面のピーク強度の比が0.02を越えるSAPOを反応に用いると、トリメチルアミンがより多く生成するため、ジメチルアミン選択性が低下する。このような理由から、本発明におけるシャバサイト型の8員環SAPOの好ましいシャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度に対するAFI型構造体の(100)面のピーク強度の比は、0.02以下である。
【0052】
本発明の方法により得られた、8員環SAPOは、高い純度と高い結晶化度、先に述べた好ましい範囲の厚さ又は表面組成比の非晶質酸化物層を持つため、メタノールとアンモニアの反応、メタノールとモノメチルアミンの反応、或いはモノメチルアミンの不均化反応によるメチルアミン類の製造において、優れた活性とジメチルアミン選択性を示す。
【0053】
本発明の水熱処理における温度制御方法は、第1工程において、80〜130℃の温度範囲内で1時間以上かけて水熱処理した後、150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理し、第2工程の水熱処理として150〜200℃の温度範囲内で10時間以上水熱処理する工程を含むものである。
中でも、第1工程の水熱処理として、95〜125℃の間の一定温度で3〜24時間水熱処理を行い、かつ第1工程の結晶化工程の一部と第2工程の水熱処理として、150〜200℃の温度範囲内で10〜150時間水熱処理する条件は、純粋で結晶性の高いシャバサイト型の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブが安定して得られるため、水熱処理における温度制御方法として特に好ましい。
【0054】
第1工程において、80〜130℃の間の温度範囲内で1時間以上水熱処理を行った後、150〜200℃の温度範囲内で水熱処理すると、優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を持つ触媒を安定的に製造できるが、例えば、前段の水熱処理を130℃を超える温度で1時間以上行うと、8員環SAPOではないAFI型の構造体の生成が顕著になり、ジメチルアミン選択性が低下する。一方、80℃未満の温度で1時間以上行った場合には、8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ全体のケイ素含有量が少なくなり触媒活性が低くなる。
【0055】
第1工程における80〜130℃の温度範囲で行う水熱処理において、昇温操作を行う場合の、好ましい昇温パターンを挙げると、室温から170℃までを6時間で定速度昇温するパターンや、室温から80℃までを1時間で上げて80℃から170℃までを3時間で定速度昇温するパターン、室温から110℃まで2時間で昇温して110℃で5時間保持し、その後170℃まで昇温するパターンなどが挙げられる。
これに対して、80〜130℃の間を70℃/時間以上の速度で昇温させるとAFI型構造体の生成が顕著になるので好ましくない。また、80℃までの昇温を100℃/h以上の速度で行うと原料混合物の固化が起こる場合があるので、これも好ましくない。なお、第1工程において、80〜130℃の温度範囲内で行う水熱処理と、150〜200℃の温度範囲内で行う水熱処理との間の昇温条件に特に制限はない。
【0056】
第2工程の150〜200℃の温度範囲内で行う水熱処理の好ましい処理時間は、水熱処理温度や原料混合物のケイ素使用量で変わるが、非晶質酸化物層の形成が十分に進む10時間以上であれば良い。より好ましくは、適切な厚さや表面組成比の非晶質酸化物層を、安定して結晶粒子表面に形成できる10〜150時間の範囲、更に好ましくは、20〜120時間の範囲である。その理由は優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を示す厚さや表面組成の非晶質酸化物層を有する8員環SAPOが、安定的に製造できるためである。
【0057】
水熱処理の際の攪拌は、静置よりも攪拌が好ましく、より好ましくは、水熱処理混合物が充分に均一に混合されていることである。
【0058】
本発明の8員環SAPOの製造において、原料に用いるケイ素化合物としては、粉末状のシリカ、シリカゾル、オルトケイ酸、及びテトラエトキシシランなどが挙げられる。特に好ましいのは、シリカゾルである。ケイ素化合物の使用量は、特に限定されないが、水熱処理する原料混合物を酸化物の比で表した場合、Alに対するSiOのモル比で0.1から0.6が好ましい。アルミニウム化合物としては、擬ベーマイト、ベーマイト、ジブサイト、バイヤライト、及びγ−アルミナなどの酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水和酸化アルミニウム、並びにアルミニウムトリイソプロポキシドのようなアルミニウムアルコキシドなどが原料として挙げられる。原料価格、入手のし易さ、反応性を考慮すると、この中で特に好ましいのは、擬ベーマイトである。逆に、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩の使用は、通常必要な焼成に加えて、ナトリウムイオン等の陽イオンのイオン交換が必要となり、後処理に手間がかかるので好ましくない。
【0059】
原料に用いるリン化合物として特に好ましいのはオルトリン酸であるが、これだけに限定されるものではない。リン酸の使用量は特に限定されないが、水熱処理に用いる原料混合物を酸化物の比で表した場合、Alに対するPのモル比で0.7〜1.1が好ましい。また、前記アルミニウム化合物及びリン化合物の代わりに、或いは、前記アルミニウム化合物、リン化合物とともに、リン酸アルミニウムを用いても良い。水の使用量は特に限定されるものではなく、均一に攪拌できるようなスラリー濃度であれば良いが、工業的な生産効率を考慮すれば、Alに対する水のモル比は100以下が好ましい。
【0060】
鋳型剤として用いられる有機アミン、有機アンモニウム塩は、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩やアミノアルコール、ジアミンを用いることができる。8員環SAPOを合成しやすい有機アミン、有機アンモニウム塩としては、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、メチルブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、キヌクリジン、シクロヘキシルアミン、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの有機アミン、有機アンモニウム塩は、単独で用いても、2種以上の有機アミン、有機アンモニウム塩を混合して用いても差し支えない。また、水酸化アルキルアンモニウム中には、その原料である塩化物や臭化物などが含まれていることがあるが、とくに差し支えはない。シャバサイト型の8員環SAPOを製造する場合、平均粒子径と粒子形状の点から、上記鋳型剤の中では、水酸化テトラエチルアンモニウムが好ましい
【0061】
8員環SAPOを合成する際の有機アミン、有機アンモニウム塩の使用量は特に限定されないが、Alに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対する、有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.4〜0.98の範囲でも、純度および結晶性の高い8員環SAPOが合成できるため、前記範囲が好ましい。特に、シャバサイト型の8員環SAPOを合成する場合、Alに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対する、有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.4〜0.98の範囲が、純度および結晶性の高いシャバサイト型の8員環SAPOが合成できるため、好ましい。Alに対する有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.98を越えても、シャバサイト型の8員環SAPOは合成できるが、好ましくない粒子形状である板状粒子が生成したり、余分なアミンとアンモニウム塩を使う事による原料コストの上昇や触媒収量の低下をまねく。また、これら余分のアミンとアンモニウム塩は水熱処理後の分離・洗浄工程で廃液として出るが、その処理コストの上昇や環境への負荷を考慮すると好ましい事ではない。有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.40を下回ると、JCPDSカード番号20−0045に記載のリン酸アルミニウムに帰属される構造体が生成するようになり、触媒活性やジメチルアミン選択性が低下する。
【0062】
一般的な8員環SAPOの形態としては、立方体状、直方体状、板状、棒状、針状、球状、及びこれらの形状の集合体などが挙げられる。これらの形態の中で、本発明におけるシャバサイト型の8員環SAPOの好ましい形態は、結晶の平均粒子径が5μm以下で、形状が立方体状、直方体状である。特に好ましいのは結晶の平均粒子径が1〜4μmで、形状が立方体状、直方体状である。逆に、結晶の平均粒子径が1μm以下の板状の形態や、板状粒子が集合して塊状になっている形態は好ましくない。その理由は、結晶の平均粒子径が5μm以下で、形状が立方体状、直方体状の形態を持つシャバサイト型の8員環SAPOがメタノールとアンモニアの反応でメチルアミン類を製造するにあたって、優れた活性、ジメチルアミン選択性と寿命性能を示すからである。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で容易に測定できる。粒子形状は、走査型電子顕微鏡で観察できる。
【0063】
上記、水熱処理条件で合成した8員環SAPOは、ろ過、デカンテーション又は遠心分離したのち、洗浄する。その後、80〜150℃の温度で乾燥し、焼成する。焼成は、通常、空気または空気と窒素の混合気流中で、400〜1000℃の温度範囲で行われる。特に好ましくは、500〜900℃の温度範囲である。
【0064】
本発明の8員環SAPOは、そのまま、圧縮成型、打錠成型又は押し出し成型して、メタノールとアンモニアとの反応、メタノールとモノメチルアミンの反応、或いはモノメチルアミンの不均化反応の触媒として使用される。また、メタノールからの低級オレフィン類の製造(MTO反応)など他の触媒反応へ適用することも可能である。
【0065】
本発明の、8員環SAPOを用いてメタノールとアンモニアの反応、メタノールとモノメチルアミンの反応、或いはモノメチルアミンの不均化反応を行ってメチルアミン類の製造を行う場合、反応の形態は、固定床方式、流動床方式の何れでも差し支えない。反応温度は、200〜400℃の範囲が好ましく、特に250〜350℃の範囲が好ましい。反応圧力は、特に制限はないが、通常0.1〜10MPaの圧力範囲で行うのが好ましい。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例をもって説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、本実施例で用いた物理的、化学的性状の測定方法、及びメチルアミンの合成方法は以下の通りである。
(1)触媒収率は、得られた固体物の焼成後の重量を、オートクレーブに仕込んだ原料混合物中のシリカ化合物、アルミニウム化合物、リン化合物、チタニウム化合物、及びジルコニウム化合物を各々SiO、Al、P、TiO、ZrOの重量に換算したうえ、それらの重量の総和で除し、これに100をかけて重量%で表した。なお、得られた固体物の重量は、焼成後、110℃で8時間乾燥して、十分に乾燥した状態(焼成粉末)で測定した。
(2)得られた固体物のシャバサイト型8員環SAPOの純度は、焼成粉末のX線回折で求め、AFI型構造体存在比で表した。AFI型構造体存在比は、X線回折で測定して、AFI型構造体の(100)面のピーク強度をシャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度で除して求めた。
(3)結晶化度は、焼成粉末をX線回折で測定し、特開2000−117114号公報記載の触媒調製例1の方法に従って合成した比較例8のシャバサイト型構造体の(100)面ピーク強度に対する、各々の焼成粉末の、シャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度の比で求めた。
(4)粒子性状は、走査型電子顕微鏡観察(FE−SEM観察)で求めた。
(5)平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で求めた。
(6)X線光電子分光分析は、焼成粉末を用いて測定し、表面組成比は、Si(2p)、Al(2p)、P(2p)帯のナロースペクトルのピーク面積から、スコフィールド補正係数で補正して求めた。
(7)反応試験は、焼成粉末を打錠成型又は圧縮成型した後、1〜2mmの大きさに整粒した触媒を用い、原料タンク、原料供給ポンプ、不活性ガス導入装置、反応管(内径13mmφ、長さ300mm、SUS316)、冷却装置、試料採取タンク、及び背圧弁等を備えた流通式反応装置で行った。
(8)反応生成物の組成は、試料を30分かけて採取し、ガスクロマトグラフで分析して求めた。
【0067】
1.8員環 SAPO の合成(鋳型剤使用量及び水熱処理条件との関係)
実施例1〜9と比較例1〜9は、鋳型剤である水酸化テトラエチルアンモニウムの使用量と水熱処理の昇温条件を変えた8員環SAPOの合成例である。実施例及び比較例の触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状と粒子径を表1にまとめた。また、反応試験の結果を表2にまとめた。反応試験は、整粒した触媒2.5g(3.5ml)を反応管に充填し、メタノールとアンモニアの1:1重量混合物を毎時8.62g、空間速度(GHSV)2500h−1で供給し、温度305℃、圧力2MPaで行った。
実施例1
85wt%リン酸(46.12g)と純水(191.16g)の均一な混合物を30℃以下に冷却し、これに擬ベーマイト(26.32g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL SB,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を30分間攪拌した後、35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(79.94g)を30℃以下に冷却および攪拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、シリカゾル(18.04g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)を添加し更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.95TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:75HO(TEAOHは水酸化テトラエチルアンモニウムを表す)。得られた混合物を内容積0.6Lのステンレス製オートクレーブ中、400rpmで撹拌しながら水熱処理した。水熱処理は、第1工程として、内容物の温度で、25℃から170℃までを25℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末(40.35g)を得た。触媒収率は77%であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.00であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.8μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績は、表2に示すように、メタノール転化率92wt%、モノメチルアミン選択率39wt%、ジメチルアミン選択率54wt%、トリメチルアミン選択率7wt%であった。
【0068】
実施例2
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを73℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを73℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例1と同様にして白色の焼成粉末(40.50g)を得た。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0069】
実施例3
35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の仕込み量を63.14g、純水の仕込み量を202.07gとした以外は、実施例2と同様にして白色の焼成粉末(46.15g)を得た。水熱処理した混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.75TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:75HO。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0070】
実施例4
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25〜80℃を73℃/h、80〜130℃を50℃/h、130〜170℃を70℃/hで昇温し、その後、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例3と同様にして白色の焼成粉末(46.05g)を得た。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0071】
実施例5
35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の仕込み量を42.10g、純水の仕込み量を215.74gとした以外は、実施例2と同様にして白色の焼成粉末(45.94g、触媒収率88%)を得た。水熱処理した混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.50TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:75HO。得られた焼成粉末はX線回折の結果、シャバサイト型構造体のピークのほかに、少量のJCPDS番号20−0045化合物のピークが観察されたが、同じTEAOH/Alのモル比で合成した比較例3の触媒に見られたAFI型構造体のピークは観察されなかった。また、結晶化度は0.65であり、比較例3よりも高かった。粒子形状は、立方状の結晶であり、平均粒子径は、1.1μmであった。この例から、第1工程の水熱処理を行う際、115℃で5時間保持することにより、比較例3と同じTEAOH/Alのモル比0.50でも、より純度及び結晶化度が良好なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOが得られることがわかった。
【0072】
実施例6
85wt%リン酸(46.12g)と純水(108.99g)及び、35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(63.14g)の均一な原料混合物を30℃以下に冷却し、これに擬ベーマイト(26.32g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL NF,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、シリカゾル(18.04g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)とチタニアゾル(4.04g,石原産業株式会社,STS−01,TiO含有量29.5wt%)を添加し更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.75TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:0.075TiO:50HO。得られた原料混合物を内容積0.6Lステンレス製オートクレーブ中、500rpmで撹拌しながら水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から110℃までを65℃/hで昇温し、110℃で5時間保持したのち、110℃から160℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として160℃で35時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、800℃で4時間焼成して、白色粉末(48.30g)を得た。触媒収率は90%であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.10であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.7μmであった。
原料流通開始後6h目の反応成績は、表2に示したように、メタノール転化率94wt%、モノメチルアミン選択率37wt%、ジメチルアミン選択率60wt%、トリメチルアミン選択率3wt%であった。
【0073】
実施例7
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から125℃までを65℃/hで昇温し、125℃で24時間保持したのち、125℃から170℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例6と同様にして白色の焼成粉末(47.81g)を得た。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0074】
実施例8
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から90℃までを65℃/hで昇温し、90℃で5時間保持したのち、90℃から165℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として165℃で12時間保持して行った以外は、実施例6と同様にして白色の焼成粉末(47.09g)を得た。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0075】
実施例9
35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の仕込み量を42.09g、純水の仕込み量を118.00g、シリカゾルの仕込み量を24.05gとし、水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で50時間保持して行った以外は、実施例6と同様にして白色の焼成粉末(50.43g、触媒収率92%)を得た。水熱処理した混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.50TEAOH:1.0Al:1.0P:0.4SiO:0.075TiO:50HO。触媒収率、AFI型構造体存在比、結晶化度、粒子形状、平均粒子径を表1に示した。また、原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0076】
比較例1
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から170℃までを79℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で42時間保持して行った以外は、実施例1と同様にして白色の焼成粉末(40.32g)を得た。この粉末はX線回折の結果、8員環SAPOであるシャバサイト型構造体のピークのほかに、8員環SAPOではないAFI型構造体のピークが見られた。AFI型構造体存在比は0.03であった。JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかったが、結晶化度は悪く、0.89であった。粒子性状は、立方体状の結晶であったが、AFI型構造体と見られる六角柱状結晶が観察された。平均粒子径は、1.8μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0077】
比較例2
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から170℃までを78℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例3と同様にして白色の焼成粉末(43.30g)を得た。この粉末はX線回折の結果、8員環SAPOであるシャバサイト型構造体のピークのほかに、8員環SAPOではないAFI型構造体のピークとJCPDS番号20−0045化合物のピークが見られた。AFI型構造体存在比は0.03であった。結晶化度は悪く0.79であった。粒子性状は、直方体状の結晶であったが、AFI型構造体と見られる六角柱状結晶、アモルファス化合物と見られる不定形物質が観察された。平均粒子径は、1.5μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0078】
比較例3
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から170℃までを78℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例5と同様にして白色の焼成粉末(43.40g)を得た。この粉末はX線回折の結果、8員環SAPOであるシャバサイト型構造体のピークのほかに、8員環SAPOではないAFI型構造体のピークおよびJCPDS番号20−0045化合物のピークが見られた。AFI型構造体存在比は0.10であった。結晶化度は悪く、0.32であった。
【0079】
比較例4
35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の仕込み量を21.05g、純水の仕込み量を229.43gとした以外は、実施例2と同様にして白色の焼成粉末(45.51g)を得た。水熱処理した混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.25TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:75HO。得られた焼成粉末はX線回折の結果、JCPDS番号20−0045化合物の構造体であり、シャバサイト型構造体、AFI型構造体のピークは観察されなかった。
【0080】
比較例5
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から135℃までを65℃/hで昇温し、135℃で5時間保持したのち、135℃から170℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例6と同様にして白色の焼成粉末(47.65g)を得た。この粉末はX線回折の結果、シャバサイト型構造体のピークのほかに、AFI型構造体のピークが見られた。JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。AFI型構造体存在比は0.04、結晶化度は0.98であった。粒子性状は、立方体状の結晶のほかに、AFI型構造体と見られる針状結晶が観察された。平均粒子径は、1.9μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0081】
比較例6
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から70℃までを65℃/hで昇温し、70℃で5時間保持したのち、70℃から170℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った以外は、実施例6と同様にして白色の焼成粉末(45.65g)を得た。この粉末はX線回折の結果、8員環SAPOであるシャバサイト型構造体のピークのほかに、AFI型構造体のピークが見られた。JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。AFI型構造体存在比は0.03、結晶化度は0.90であった。粒子性状は、厚みのある板状の結晶であった。平均粒子径は、1.5μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0082】
比較例7
35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液の仕込み量を105.23g、純水の仕込み量を76.93g、水熱処理時の攪拌速度を200rpmとした以外は、実施例9と同様にして白色の焼成粉末(36.40g、触媒収率66%)を得た。水熱処理した混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:1.25TEAOH:1.0Al:1.0P:0.4SiO:0.075TiO:50HO。X線回折の結果、得られた焼成粉末は、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は、0.65と悪かった。粒子性状は、薄い板状の結晶であり、平均粒子径は、0.6μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表2に示した。
【0083】
比較例8
特開2000−117114号公報記載の触媒調製例1と同様にして、ジルコニア変性SAPO−34を合成した。35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(151.41g)と純水(84.60g)の均一な混合物を5℃に冷却し、アルミニウムイソプロポキシド(81.80g:ナカライテスク株式会社)を添加し、15分間高速攪拌した。次にシリカゾル(18.04g)と酸化ジルコニウム粉末(2.40g,第一稀元素化学株式会社,RC−100)を加え、5分間均一になるまで高速攪拌した。更に、85wt%リン酸(46.20g)を加えて、同様に5分間攪拌し、引き続きライカイ処理を1時間行った。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:1.80TEAOH:1.0Al:1.0P:0.3SiO:0.097ZrO:57HO。得られた混合物を内容積0.6Lステンレス製オートクレーブ中、200rpmで撹拌しながら水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、25℃から200℃までを75℃/hで昇温し、200℃で4時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で4回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末(34.21g)を得た。触媒収率は62%であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体やJCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.4μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績は、表2に示したように、メタノール転化率90wt%、モノメチルアミン選択率41wt%、ジメチルアミン選択率54wt%、トリメチルアミン選択率5wt%であった。
【0084】
比較例9
比較例8と同様にして、ジルコニア変性SAPO−34を合成し、白色の焼成粉末(32.55g、触媒収率59%)を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体やJCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.6μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績は、表2に示した。
【0085】
【表1】
Figure 2004043296
【0086】
【表2】
Figure 2004043296
【0087】
水酸化テトラエチルアンモニウムの使用量を、Alに換算したアルミニウム化合物のモル数に対して1.0倍量以下とし、第1工程の水熱処理を80℃から130℃の間の温度ではあるものの1時間未満しか行わなかった比較例1〜3、5、6の触媒には、8員環SAPOではないAFI型構造体が見られ、結晶化度は低かった。また、これらの触媒を用いた反応のメタノール転化率及びジメチルアミン選択率は低いものであった。これに対し、第1工程の水熱処理を80℃から130℃の間の温度で1時間以上かけて行った実施例1〜9の触媒には、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物は見られず、結晶化度も良好であった。また、これらの触媒を用いた反応のメタノール転化率及びジメチルアミン選択率は、比較例1、2、5、6の触媒に比べて良好であった。特に、鋳型剤の水酸化テトラエチルアンモニウムを、Alに換算した擬ベーマイトのモル数に対して0.75倍量用いて、第1工程について温度115℃と125℃で保持し1時間以上かけて水熱処理した実施例3と6の触媒のメタノール転化率とジメチルアミン選択率は、優れていた。比較例7〜9は、水酸化テトラエチルアンモニウムを、Alに換算したアルミニウム化合物のモル数に対して1.0倍量以上用いて合成した例である。これらの例から、TEAOH/Alのモル比が0.98を越えても、純粋なシャバサイト型の8員環SAPOは合成できるが、触媒収率が59〜66%と低く、触媒の生産性が低いことがわかった。また、メタノール転化率、ジメチルアミン選択率も、実施例1〜9の触媒に比べて低く、特に、板状結晶である比較例7の触媒性能は低かった。これらの例から明らかなように、従来、困難と考えられてきた少ない鋳型剤量でも、水熱処理の際の温度を制御することにより、純度、結晶化度、触媒性能の良いシャバサイト型の8員環SAPOが得られ、むしろTEAOH/Alのモル比が0.75と小さい方が、結晶化度、触媒性能が優れていることがわかる。特に、比較例8と9は、特開2000−117114号公報記載の触媒調製例の合成再現性を調べた例であるが、比較例9のようにメタノール転化率が、再現しない場合があることがわかった。比較例4は、水酸化テトラエチルアンモニウムを、Alに換算した擬ベーマイトのモル数に対して0.25倍量用いて合成した例であるが、得られた固体生成物は、JCPDS番号20−0045化合物の構造体であり、シャバサイト型の8員環SAPOは得られなかった。一方、水酸化テトラエチルアンモニウムを0.50倍量用いた実施例9では、純粋なシャバサイト型の8員環SAPOが合成でき、触媒性能も良好であった。
【0088】
2.鋳型剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジエタノールアミン、シクロヘキシルアミンを用いた例
実施例10は、鋳型剤として水酸化テトラエチルアンモニウムとジエタノールアミンの混合物を、実施例11は鋳型剤としてシクロヘキシルアミンを用いたシャバサイト型の8員環SAPOの合成例である。得られた触媒の反応試験結果を表3に記載した。反応試験は、実施例1〜9と同様にして行った。
【0089】
実施例10
85wt%リン酸(41.51g)と純水(98.70g)、35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(42.10g)、及びジエタノールアミン(6.30g)の均一な混合物を30℃以下に冷却し、これに擬ベーマイト(26.32g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL NF,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、シリカゾル(30.06g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)と酸化ジルコニウム粉末(1.25g,第一稀元素化学工業株式会社,RC−100)を添加し更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.50TEAOH:0.30DEA:1.0Al:0.9P:0.5SiO:0.05ZrO:45HO(DEAはジエタノールアミンを表す)。得られた混合物をステンレス製オートクレーブ中で、撹拌しながら水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを65℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で35時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末(44.17g)を得た。触媒収率は85%であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体やJCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.03であった。粒子性状は、直方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、2.5μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表3に示した。
【0090】
実施例11
85wt%リン酸(43.82g)と純水(145.50g)の均一な混合物を30℃以下に冷却し、これにアルミニウムトリイソプロポキシド(81.70g:ナカライテスク株式会社)を撹拌しながら添加した。この混合物を30分間攪拌した後、シクロヘキシルアミン(15.90g)を攪拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、シリカゾル(24.05g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)を添加し更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:0.80シクロヘキシルアミン:1.0Al:0.95P:0.40SiO:47.5HO。得られた混合物をステンレス製オートクレーブ中で、撹拌しながら水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを65℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から180℃までを65℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として180℃で35時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末(43.90g)を得た。触媒収率は84%であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体やJCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.00であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、3.5μmであった。原料流通開始後6h目の反応成績を表3に示した。
【0091】
【表3】
Figure 2004043296
【0092】
何れの例も、Alに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対して1.0倍量未満の鋳型剤量で、純粋なシャバサイト型構造を有する8員環SAPOが得られ、触媒性能も良好であることがわかる。
【0093】
3.非晶質酸化物層の表面組成及び厚さと触媒性能との関係
実施例12〜17と比較例10、11は、シャバサイト型構造を有する8員環SAPOの非晶質酸化物層の表面組成、厚さと触媒性能に関する例である。各実施例及び比較例触媒の結晶粒子全体のSi/Alの原子比(バルクのSi/Alの原子比)、表面のSi/Alの原子比、表面のSi/Pの原子比、非晶質酸化物層の厚さを表4に、また、反応試験の結果を表5にまとめた。反応試験は、実施例1〜9と同様にして行った。
【0094】
実施例12
実施例2で得られた焼成粉末を、ICP及びXPSで分析した結果、結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.15であり、表面のSi/Alの原子比は0.60、表面のSi/Pの原子比は0.66であった。
【0095】
実施例13
実施例6で得られた焼成粉末を、ICP及びXPSで分析した結果、結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.14であり、表面のSi/Alの原子比は1.07、表面のSi/Pの原子比は1.24であった。
【0096】
実施例14
85%リン酸(89.8g)と純水(183.9g)及び、35wt%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(122.9g)の均一な混合物に、擬ベーマイト(51.3g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL NF,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、シリカゾル(46.8g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)とチタニアゾル(5.3g,石原産業株式会社,STS−01,TiO含有量29.5wt%)を添加し、更に30分間撹拌した。この混合物のpHは2.95であり、モル酸化物比における組成は次の通りであった:0.75TEAOH:1.0Al:1.0P:0.4SiO:0.05TiO:50HO。得られた混合物を内容積0.6Lのステンレス製オートクレーブ中、700rpmで撹拌しながら、水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で50時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末(88.2g)を得た。触媒収率は83%であり、良好であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.05であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、2.2μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.16であり、表面のSi/Alの原子比は1.61、表面のSi/Pの原子比は2.45であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、厚さ7ナノメートルの非晶質酸化物層を有していた。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。
【0097】
実施例15
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で100時間保持して行った以外は、実施例14と同様にして白色の焼成粉末(86.2g、触媒収率81%)を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型の構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は良好で、1.03であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、2.4μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.15であり、表面のSi/Alの原子比は1.98、表面のSi/Pの原子比は2.92であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より焼成粉末の結晶粒子は、厚さ13ナノメートルの非晶質酸化物層を有していた。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。
【0098】
実施例16
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で30時間保持して行った以外は実施例3と同様にして白色の焼成粉末(45.70g、触媒収率87%)を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は1.00であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.9μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.14であり、表面のSi/Alの原子比は0.65、表面のSi/Pの原子比は0.75であった。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。
【0099】
実施例17
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で20時間保持し、次いで、シリカゾル(6.1g:日産化学工業株式会社,スノーテックスN,SiO含有量20wt%)を水熱処理した混合物に添加し、更に170℃で10時間第2工程の水熱処理した以外は実施例16と同様にして白色の焼成粉末(46.21g、触媒収率88%)を得た。添加したシリカゾルのAlに対するモル酸化物比は、SiO/Al比で0.10であった。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型の構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は、1.00であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、1.9μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.15であり、表面のSi/Alの原子比は2.13、表面のSi/Pの原子比は3.01であった。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。この例から明らかなように、水熱処理の途中でシリカゾルを更に添加することにより、温度170℃での水熱処理時間が同じ実施例16よりも表面のSi/Alの原子比は大きく、また、ジメチルアミン選択性が改善されていることがわかった。
【0100】
比較例10
水熱処理を、内容物の温度で第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で5時間保持して行った以外は、実施例14と同様にして白色の焼成粉末(84.7g、触媒収率80%)を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型構造体であり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は0.98であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、2.5μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.14であり、表面のSi/Alの原子比は0.49、表面のSi/Pの原子比は0.53であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、厚さ2.5ナノメートルの非晶質酸化物層を有していた。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。
【0101】
比較例11
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で175時間保持して行った以外は、実施例14と同様にして白色の焼成粉末(85.0g、触媒収率80%)を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋なシャバサイト型の構造を有する8員環SAPOであり、AFI型構造体、JCPDS番号20−0045化合物のピークは見られなかった。結晶化度は1.01であった。粒子性状は、立方体状の結晶であり、大きさ、形とも良く揃っていた。平均粒子径は、2.7μmであった。得られた焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.14であり、表面のSi/Alの原子比は2.26、表面のSi/Pの原子比は3.13であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、厚さ25ナノメートルの非晶質酸化物層を有していた。原料流通開始後6h目の反応成績を表5に示した。
【0102】
【表4】
Figure 2004043296
【0103】
【表5】
Figure 2004043296
【0104】
これらの例から明らかなように、本発明のシャバサイト型の構造を有する8員環SAPOは、Si/Alの原子比が、結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有していることがわかった。また、メタノールとアンモニアとの反応によるメチルアミン類の製造における触媒性能は、非晶質酸化物層の厚さや、X線光電子分光法で測定される表面のSi/Alの原子比及び表面のSi/Pの原子比と相関関係があることもわかった。すなわち、非晶質酸化物層が厚くなるにつれて、また、表面のSi/Alの原子比、表面のSi/Pの原子比が大きくなるにつれて、メタノール転化率とトリメチルアミン選択率は低くなり、ジメチルアミン選択率は高くなる。メタノール転化率とジメチルアミン選択率の兼ね合いから、厚さ3〜20ナノメートルの範囲の非晶質酸化物層を有しているシャバサイト型SAPO又は、表面のSi/Alの原子比が0.50〜2.20の範囲のシャバサイトSAPO、又は、表面のSi/Pの原子比が0.55〜3.10の範囲であるシャバサイト型SAPOが優れた触媒性能を示すことがわかる。水熱処理時間の経過にともなう非晶質酸化物層の厚さ及び表面組成比の変化速度は、TEAOH/Alのモル比やHO/Alのモル比の影響を受けるが、水熱処理二段目時間が長くなるにつれて、非晶質酸化物層は厚く、表面のSi/Alの原子比、表面のSi/Pの原子比は大きくなり、メタノール転化率とトリメチルアミン選択率は低くなることがわかる。実施例14の触媒は、反応原料の供給が空間速度(GHSV)1500h−1、温度310℃、圧力2MPaの条件では、原料流通開始後1000時間目のメタノール転化率が95wt%で、モノメチルアミン選択率37wt%、ジメチルアミン選択率60wt%、トリメチルアミン選択率3wt%で、優れた寿命性能を示した。
【0105】
4. SAPO−56 SAPO−17 における非晶質酸化物層の表面組成及び厚さと触媒性能との関係
実施例18、19と比較例12は、8酸素員環細孔を有するSAPO−56とSAPO−17における非晶質酸化物層の表面組成及び厚さと触媒性能に関する例である。各実施例と比較例の結晶粒子全体のSi/Alの原子比(バルクSi/Alの原子比)、表面のSi/Alの原子比、表面のSi/Pの原子比、非晶質酸化物層の厚さを表6にまとめた。反応試験は、実施例1〜9と同様にして行った。
【0106】
実施例18
85%リン酸(75.6g)と純水(256.6g)及び、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(113.0g)の均一な混合物に、擬ベーマイト(43.1g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL NF,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、ヒュームドシリカ(11.8g:日本アエロジル株式会社,AEROSIL−200)を添加し、更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:2.0TMHD:1.0Al:1.0P:0.6SiO:50HO(TMHDはN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンを表す)。得られた混合物をステンレス製オートクレーブ中で撹拌しながら、水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で75時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋な8酸素員環細孔を有するSAPO−56であった。この焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.27であり、表面のSi/Alの原子比は1.75、表面のSi/Pの原子比は2.71であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、10ナノメートルの厚さの非晶質酸化物層を持っていた。原料流通開始後6h目の反応成績を表6に示した。
【0107】
実施例19
85%リン酸(52.0g)と純水(176.6g)及び、キヌクリジン(37.6g)の均一な混合物に、擬ベーマイト(29.7g:SASOL GERMANY GmbH,PURAL NF,Al含有量77.5%)を撹拌しながら添加した。この混合物を1時間撹拌した後、ヒュームドシリカ(4.1g:日本アエロジル株式会社,AEROSIL−200)を添加し、更に30分間撹拌した。この混合物のモル酸化物比における組成は次の通りであった:1.5Qn:1.0Al:1.0P:0.3SiO:50HO(Qnはキヌクリジンを表す)。得られた混合物をステンレス製オートクレーブ中で撹拌しながら、水熱処理した。水熱処理は、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で50時間保持して行った。水熱処理時の圧力は自生圧とした。室温まで冷却した後、オートクレーブを開け、生成スラリーを遠心分離して沈殿を得た。得られた沈殿を200mlの純水で3回、洗浄・遠心分離したのち、80℃で12h乾燥した。更に空気気流下、600℃で4時間焼成して、白色粉末を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋な8酸素員環細孔を有するSAPO−17であった。この焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.11であり、表面のSi/Alの原子比は1.01、表面のSi/Pの原子比は1.36であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、5ナノメートルの厚さの非晶質酸化物層を持っていた。原料流通開始後6h目の反応成績を表6に示した。
【0108】
比較例12
水熱処理を、内容物の温度で、第1工程として25℃から115℃までを20℃/hで昇温し、115℃で5時間保持したのち、115℃から170℃までを20℃/hで昇温し、第1工程の結晶化工程の一部と第2工程として170℃で5時間保持して行った以外は、実施例18と同様にして白色の焼成粉末を得た。この粉末はX線回折の結果、純粋な8酸素員環細孔を有するSAPO−56であった。この焼成粉末の結晶粒子全体のSi/Alの原子比は0.25であり、表面のSi/Alの原子比は0.48、表面のSi/Pの原子比は0.51であった。また、走査透過型電子顕微鏡観察より、焼成粉末の結晶粒子は、2ナノメートルの厚さの非晶質酸化物層を持っていた。原料流通開始後6h目の反応成績を表6に示した。
【0109】
これらの例から明らかなように、シャバサイト型以外の構造を有する8員環SAPOでも、本発明の、Si/Alの原子比が結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を、結晶粒子表面に有していることがわかる。また、好ましい範囲の厚さの非晶質酸化物層又は好ましい範囲の表面組成比を有するこれらの8員環SAPOは、メタノールとアンモニアとの反応によるメチルアミン類の製造において、優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を示すこともわかる。
【0110】
【表6】
Figure 2004043296
【0111】
5.モノメチルアミンを原料とした不均化反応例
実施例20と比較例13は、モノメチルアミンを原料とした不均化反応の例である。
【0112】
実施例20
反応管に実施例6で合成した触媒2.5g(体積3.5ml)を充填し、反応圧力2MPa、温度320℃において、モノメチルアミンをGHSV3000h−1で供給して反応を行った。モノメチルアミンからアンモニアとジメチルアミンへの不均化反応の反応開始6時間目における成績は、以下の通りであった。
モノメチルアミンの転化率:73モル%
ジメチルアミン選択率:99重量%
トリメチルアミン選択率:1重量%
【0113】
比較例13
比較例8で合成した触媒を用いて、実施例20と同様にモノメチルアミンの不均化反応を行った。反応開始6時間目における成績は、以下の通りであった。
モノメチルアミンの転化率:69モル%
ジメチルアミン選択率:98重量%
トリメチルアミン選択率:2重量%
【0114】
特開2000−117114号公報記載の触媒調製例1の方法に従って合成した比較例8の触媒を用いた比較例13の結果と比べ、実施例6のシャバサイト型の構造を有する8員環SAPOは実施例20に示すように、モノメチルアミンの不均化反応においても優れた性能を示すことがわかった。
【0115】
【発明の効果】
以上の実施例、比較例を用いた説明から明らかな様に、本発明の8員環SAPOは、アルミニウムに対するケイ素の原子比が、結晶粒子全体よりも大きな非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有しており、該モレキュラーシーブは、工業的に行われているメタノールとアンモニアとの反応、モノメチルアミンの不均化反応等によるメチルアミン類の製造において、従来技術よりも優れた触媒活性とジメチルアミン選択性を示す。この非晶質酸化物層の厚さや表面組成は、触媒性能に大きな影響を及ぼすが、本発明の触媒の合成条件で容易に制御できる。また、本発明の8員環SAPOの製造法によれば、従来合成が困難であった少量の鋳型剤量で、純度及び結晶化度が高い8員環SAPOを製造することができる。そのため、従来技術よりも原材料コスト、廃棄物処理コストともに低減できるため、安価に効率良く触媒が製造できる。また、廃棄物が少ないため、環境に対する負荷の低減の面でも貢献できる。従って、本発明の提供する8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブとその製造法及びメチルアミン類の製造方法の工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例14の触媒の走査透過型電子顕微鏡による像(×8万倍)
【図2】図1の左端白枠部分の拡大像(×100万倍)
【図3】図2の格子模様が見られる部分の電子線回折像
【図4】図2の格子模様が見られない白色層の電子線回折像

Claims (24)

  1. 非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有する、8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブであって、非晶質酸化物層のアルミニウムに対するケイ素の原子比が、結晶粒子全体での当該原子比よりも大きいことを特徴とする、8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  2. 結晶粒子全体のアルミニウムに対するケイ素の原子比が0.05〜0.30の範囲であり、かつX線光電子分光法で測定される結晶粒子表面の非晶質酸化物層のアルミニウムに対するケイ素の原子比が0.50以上である、請求項1記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  3. X線光電子分光法で測定される結晶粒子表面の非晶質酸化物層のリンに対するケイ素の原子比が0.55以上である、請求項1、2の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  4. 結晶粒子表面の非晶質酸化物層の厚さが3〜20ナノメートルの範囲である、請求項1〜3の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  5. マグネシウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト及びスズから選択される一種類以上の元素を更に含む、請求項1〜4の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  6. 結晶粒子の形状が直方体及び/又は立方体状であり、かつ平均粒子径が5μm以下である、請求項1〜5の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  7. 結晶粒子全体より結晶粒子表面の非晶質酸化物層を除いた結晶粒子の本体部分の構造がシャバサイト型である、請求項1〜6の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  8. X線回折で測定したシャバサイト型構造体の(100)面のピーク強度に対するAFI型構造体の(100)面のピーク強度の比が0.02以下である、請求項7記載のシャバサイト型の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ。
  9. 有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩、アルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、並びに水を含む原料混合物を水熱処理して、非晶質酸化物層を結晶粒子表面に有する8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブを製造するにあたり、少なくともその結晶質部分を生成させる第1工程と、更に水熱処理を行って結晶粒子表面上に非晶質酸化物層を形成させる第2工程とからなる、請求項1〜8の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  10. 第1工程の水熱処理が、80〜130℃の温度範囲内で1時間以上水熱処理する工程と150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理する工程の二つの工程を含むものである、請求項9記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  11. 第1工程の水熱処理のうち、80〜130℃の温度範囲内で1時間以上水熱処理する工程が、80〜130℃の間を1時間以上かけて昇温させる工程又は80〜130℃の間の一定温度を1時間以上保持する工程を含むものである、請求項10記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  12. 第2工程の水熱処理が、150〜200℃の温度範囲内で10時間以上水熱処理する工程を含むものである、請求項9〜11の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  13. 第1工程の水熱処理が、95〜125℃の間の一定温度で3〜24時間水熱処理する工程と150〜200℃の温度範囲内で1〜10時間水熱処理する工程の二つの工程を含み、かつ第2工程の水熱処理が、150〜200℃の温度範囲内で10〜150時間水熱処理する工程を含むものである、請求項9記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  14. 有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩、アルミニウム化合物、リン化合物、ケイ素化合物、並びに水を含む原料混合物中のAlに換算されたアルミニウム化合物のモル数に対する、有機アミンと有機アンモニウム塩の合計モル数の比が0.4〜0.98の範囲である、請求項9〜13の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  15. 有機アミン及び/又は有機アンモニウム塩が水酸化テトラエチルアンモニウムである、請求項9〜14の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  16. アルミニウム化合物が擬ベーマイトである、請求項9〜15の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  17. リン化合物がリン酸である、請求項9〜16の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  18. ケイ素化合物がシリカゾルである、請求項1〜17の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  19. 第2工程の前又は途中で、ケイ素化合物を更に添加する、請求項1〜18の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  20. マグネシウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト及びスズから選択される一種類以上の元素を更に含む、請求項9〜19の何れかに記載の、8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  21. 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブがシャバサイト型である、請求項9〜20に記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの製造方法。
  22. 請求項1〜8の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの存在下、メタノールとアンモニアを反応させるメチルアミン類の製造方法。
  23. 請求項1〜8の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの存在下、メタノールとモノメチルアミンを反応させるメチルアミン類の製造方法。
  24. 請求項1〜8の何れかに記載の8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブの存在下、モノメチルアミンの不均化反応を行うメチルアミン類の製造方法。
JP2003145760A 2002-05-24 2003-05-23 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法 Expired - Lifetime JP4596116B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003145760A JP4596116B2 (ja) 2002-05-24 2003-05-23 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002151551 2002-05-24
JP2003145760A JP4596116B2 (ja) 2002-05-24 2003-05-23 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004043296A true JP2004043296A (ja) 2004-02-12
JP4596116B2 JP4596116B2 (ja) 2010-12-08

Family

ID=31719751

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003145760A Expired - Lifetime JP4596116B2 (ja) 2002-05-24 2003-05-23 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4596116B2 (ja)

Cited By (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005060173A (ja) * 2003-08-13 2005-03-10 Mitsubishi Chemicals Corp アルミノフォスフェート類の製造方法
JP2006273623A (ja) * 2005-03-28 2006-10-12 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ゼオライトナノ粒子の製造方法及びゼオライトナノ粒子
JP2008514538A (ja) * 2004-10-01 2008-05-08 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、その合成及び使用
WO2011068206A1 (ja) 2009-12-04 2011-06-09 三菱瓦斯化学株式会社 光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法
JP2011167690A (ja) * 2007-03-26 2011-09-01 Pq Corp 8員環細孔開口構造を有するモレキュラーシーブまたはゼオライトを含んで成る新規マイクロポーラス結晶性物質およびその製法およびその使用
WO2012029159A1 (ja) * 2010-09-02 2012-03-08 イビデン株式会社 シリコアルミナリン酸塩、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置
JP2013511462A (ja) * 2009-11-24 2013-04-04 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア Cha構造を有するゼオライトの製造方法
JP2014501691A (ja) * 2010-12-22 2014-01-23 クラリアント プロデュクテ (ドイッチュラント) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング チタノシリコアルミノホスフェート
JP2014504255A (ja) * 2010-12-22 2014-02-20 クラリアント プロダクツ (ドイチェランド) ゲーエムベーハー チタノ−(シリコ)−アルミノ−ホスフェートの製造方法
JP2014114203A (ja) * 2012-09-10 2014-06-26 Tosoh Corp シリコアルミノリン酸塩及びその製造方法
JP2014530797A (ja) * 2011-09-06 2014-11-20 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se N,n−ジメチル有機テンプレートを用いるゼオライト系材料の合成
JP2015034117A (ja) * 2013-07-11 2015-02-19 三菱樹脂株式会社 ゼオライトの製造方法及びゼオライト
JP2015533765A (ja) * 2012-09-26 2015-11-26 ダリアン インスティテュート オブ ケミカル フィジックス,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ Sapo−34分子篩及びその合成方法
WO2017090382A1 (ja) * 2015-11-27 2017-06-01 三菱化学株式会社 酸素8員環ゼオライト及びaei型ゼオライトの製造方法
CN114618570A (zh) * 2020-12-11 2022-06-14 中国科学院大连化学物理研究所 一种涂层型甲醇胺化制甲胺催化剂及制备与应用
CN115108565A (zh) * 2022-08-29 2022-09-27 中国科学院山西煤炭化学研究所 一种氢型fer分子筛及其制备方法和应用

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2907571B1 (en) 2012-10-15 2017-12-13 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Method for producing catalyst for use in production of methylamine compound, and method for producing methylamine compound

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03164423A (ja) * 1989-08-18 1991-07-16 Kanebo Ltd 安定化された合成ゼオライト及びその製造法
JPH08310810A (ja) * 1995-05-17 1996-11-26 Nippon Kayaku Co Ltd 高純度結晶質シリコアルミノリン酸塩の製造方法
JPH11239729A (ja) * 1997-12-26 1999-09-07 Mitsubishi Gas Chem Co Inc シリカ変性シリコアルミノホスフェート触媒、その製造方法及びそれを用いるメチルアミン類等の製造方法
JP2000117114A (ja) * 1998-10-15 2000-04-25 Mitsubishi Gas Chem Co Inc メチルアミン製造触媒及び該触媒の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03164423A (ja) * 1989-08-18 1991-07-16 Kanebo Ltd 安定化された合成ゼオライト及びその製造法
JPH08310810A (ja) * 1995-05-17 1996-11-26 Nippon Kayaku Co Ltd 高純度結晶質シリコアルミノリン酸塩の製造方法
JPH11239729A (ja) * 1997-12-26 1999-09-07 Mitsubishi Gas Chem Co Inc シリカ変性シリコアルミノホスフェート触媒、その製造方法及びそれを用いるメチルアミン類等の製造方法
JP2000117114A (ja) * 1998-10-15 2000-04-25 Mitsubishi Gas Chem Co Inc メチルアミン製造触媒及び該触媒の製造方法

Cited By (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005060173A (ja) * 2003-08-13 2005-03-10 Mitsubishi Chemicals Corp アルミノフォスフェート類の製造方法
JP2008514538A (ja) * 2004-10-01 2008-05-08 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、その合成及び使用
JP2006273623A (ja) * 2005-03-28 2006-10-12 National Institute Of Advanced Industrial & Technology ゼオライトナノ粒子の製造方法及びゼオライトナノ粒子
JP2011167690A (ja) * 2007-03-26 2011-09-01 Pq Corp 8員環細孔開口構造を有するモレキュラーシーブまたはゼオライトを含んで成る新規マイクロポーラス結晶性物質およびその製法およびその使用
JP2013511462A (ja) * 2009-11-24 2013-04-04 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア Cha構造を有するゼオライトの製造方法
WO2011068206A1 (ja) 2009-12-04 2011-06-09 三菱瓦斯化学株式会社 光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法
US8808633B2 (en) 2010-09-02 2014-08-19 Ibiden Co., Ltd. Silico-alumino phosphate, honeycomb structural body and exhaust gas conversion apparatus
WO2012029159A1 (ja) * 2010-09-02 2012-03-08 イビデン株式会社 シリコアルミナリン酸塩、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置
JP2014501691A (ja) * 2010-12-22 2014-01-23 クラリアント プロデュクテ (ドイッチュラント) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング チタノシリコアルミノホスフェート
JP2014504255A (ja) * 2010-12-22 2014-02-20 クラリアント プロダクツ (ドイチェランド) ゲーエムベーハー チタノ−(シリコ)−アルミノ−ホスフェートの製造方法
JP2014530797A (ja) * 2011-09-06 2014-11-20 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se N,n−ジメチル有機テンプレートを用いるゼオライト系材料の合成
JP2014114203A (ja) * 2012-09-10 2014-06-26 Tosoh Corp シリコアルミノリン酸塩及びその製造方法
JP2015533765A (ja) * 2012-09-26 2015-11-26 ダリアン インスティテュート オブ ケミカル フィジックス,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ Sapo−34分子篩及びその合成方法
JP2015034117A (ja) * 2013-07-11 2015-02-19 三菱樹脂株式会社 ゼオライトの製造方法及びゼオライト
WO2017090382A1 (ja) * 2015-11-27 2017-06-01 三菱化学株式会社 酸素8員環ゼオライト及びaei型ゼオライトの製造方法
JPWO2017090382A1 (ja) * 2015-11-27 2018-09-13 三菱ケミカル株式会社 酸素8員環ゼオライト及びaei型ゼオライトの製造方法
CN114618570A (zh) * 2020-12-11 2022-06-14 中国科学院大连化学物理研究所 一种涂层型甲醇胺化制甲胺催化剂及制备与应用
CN114618570B (zh) * 2020-12-11 2023-04-28 中国科学院大连化学物理研究所 一种涂层型甲醇胺化制甲胺催化剂及制备与应用
CN115108565A (zh) * 2022-08-29 2022-09-27 中国科学院山西煤炭化学研究所 一种氢型fer分子筛及其制备方法和应用
CN115108565B (zh) * 2022-08-29 2022-11-25 中国科学院山西煤炭化学研究所 一种氢型fer分子筛及其制备方法和应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP4596116B2 (ja) 2010-12-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4596116B2 (ja) 8酸素員環細孔を持つ結晶質シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ及びその製造方法、並びにそれを触媒とするメチルアミン類の製造方法
US7115238B2 (en) Crystalline silicoaluminophosphate salt molecular sieve having octaoxygen-membered ring pore, process for producing the same and process for producing methylamine with the molecular sieve as catalyst
EP0993867B1 (en) Methods for the preparation of methylamines using SAPO-34 catalysts
JP6399557B2 (ja) ゼオライトの製造方法
JP6371476B2 (ja) モレキュラーシーブssz−98の製造方法
JP6381797B2 (ja) モレキュラーシーブssz−98
US7670589B2 (en) Synthesis of chabazite-containing molecular sieves and their use in the conversion of oxygenates to olefins
JP4221532B2 (ja) メチルアミン製造用触媒及び該触媒を用いたメチルアミン類の製造方法
US9889440B2 (en) Method for synthesizing silicoaluminophosphate-34 molecular sieves
US20140010722A1 (en) Catalyst, device for removing nitrogen oxide, and system for removing nitrogen oxide
US20190240648A1 (en) Chabazite zeolite for substrate coating
CN107848821B (zh) 制备沸石ssz-98的方法
US7622417B2 (en) Synthesis and use of AEI structure-type molecular sieves
JP5142123B2 (ja) ベータ(β)−ゼオライトの合成方法
JP6990923B2 (ja) 結晶性ミクロ多孔質材料の製造方法及び製造装置
JP2020503261A (ja) ゼオライト触媒を用いてエチレングリコールをエチレンジアミンに変換する方法
US20220097033A1 (en) Cha type zeolitic materials and methods for their preparation
JP7046641B2 (ja) リンを含有し、連晶構造を有する小細孔ゼオライト及びその製造方法
US20200010331A1 (en) Accelerated aluminosilicate zeolite crystallization
JPH04108607A (ja) レビーン沸石型のゼオライトおよびその製造方法
JPH09118640A (ja) シクロアルカノールの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060425

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090701

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090820

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100825

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100907

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4596116

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131001

Year of fee payment: 3

EXPY Cancellation because of completion of term