JP2004042904A - 車両用ミラーおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成で十分かつ持続性のよい水滴除去効果を得ることができる車両用ミラーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】車両用ミラー10のガラス基板16の表面に、SiO2等による親水性膜22を、PVD法によって多孔質状に固定成膜する。多孔質状の親水性膜22は、その表面に付着した水滴(雨滴等)を薄い水膜状に広げる作用をする。
【選択図】 図1

Description

 この発明は、フェンダーミラー、ドアミラー等の車両用ミラーおよびその製造方法に関し、水滴除去性能を向上させた車両用ミラーを提供するものである。
 車両を雨天走行している時にフェンダーミラー、ドアミラー等のアウターミラーに水滴が付着すると、後方視界の視認性が悪化し、安全運転に支障をきたすことがある。そこで、車両用ミラーに付着した水滴を除去するために、以下のような様々な手法が従来より提案されている。
(イ) アウターミラーの表面に洗剤(界面活性剤、ウォッシャー液)を吹き付けまたは流して、付着した水滴、汚れを除去する(実公昭47−34209号等)。
(ロ) アウターミラーの表面に有機系の防曇フィルム(吸水フィルム)を貼着する。
(ハ) ミラー裏面に発熱体を配設して、付着した水滴を蒸発させる(実公昭51−45803号等)。
(ニ) ミラー裏面に超音波振動装置と発熱体を配設して、付着した水滴を飛散および蒸発させる。
 前記(イ)の洗剤を用いる方法では、水滴除去効果の持続時間が短く、洗剤を頻繁に塗り直さなければならず、使用が面倒であった。また、前記(ロ)の防曇フィルムを貼着する方法では、フィルムであるため擦傷性、耐熱性が悪く、また粘着剤等で光が散乱し、夜間の映像がぎらつき、また昼間でも映像のコントラストが低下する欠点があった。また、若干でも濡れ性が低下すると、視認性を回復できなかった。
 また、前記(ハ)の発熱体により蒸発させる方法では、付着した水滴を蒸発させるのに通常7〜10分もかかり、実用性に欠けていた。また、前記(ニ)の超音波振動装置と発熱体を併用する方法では、装置が複雑となり、また部品点数が多く、コスト高となる欠点があった。
 この発明は、前記従来の技術における欠点を解決して、簡単な構成で十分かつ持続性のよい水滴除去効果が得られる車両用ミラーおよびその製造方法を提供しようとするものである。
 この発明の車両用ミラーは、最表面に親水性酸化膜を固定成膜し、該親水性酸化膜の表面をPVD法によって得られる多孔質状に構成してなるものである。
 この発明の車両用ミラーの製造方法は、多孔質状表面を有する親水性酸化膜を最表面に固定成膜した車両用ミラーを製造する方法であって、前記親水性酸化膜をPVD法で成膜する工程を含むものである。この発明の車両用ミラーの製造方法は、多孔質状表面を有する親水性酸化膜を最表面に固定成膜した車両用ミラーを製造する方法であって、前記親水性酸化膜をPVD法で多孔質状に成膜することにより、前記多孔質状表面を作製することができる。この発明の車両用ミラーの製造方法によれば、多孔質状表面を有する親水性酸化膜を最表面に固定成膜した車両用ミラーを製造することができる。
 この発明の車両用ミラーによれば、ミラーの最表面に親水性膜を固定成膜したので、ミラー面に付着した水滴は薄い水膜に広がりやすくなり、水滴によるレンズ効果が軽減されて、水が付着したままでも視認性の低下が軽減される。また、薄い水膜状に広がるので、水と空気との接触面積が広がり、付着した水が蒸発しやすくなる。しかも、洗剤のように流れないので、効果の持続性もよい。また、構成が簡単で安価に構成することができる。酸化膜は、親水基であるOH基を作りやすいので、良好な親水性が得られる。特にSiO は一般にガラス基板よりも屈折率が低く、水や空気に近いため、表面反射が低くて2重像が少ない。このため、雨滴が付着しても乱反射が少なく、視認性が良好である。また、無機質材料であるため、耐擦傷性、耐熱性が高く、耐久性、耐候性がよい。なお、SiO 膜に代えてTiO 膜、Al 膜を用いることもできる。また、親水性酸化膜の表面をPVD法によって得られる多孔質状に構成したので、毛細管現象による濡れ性が良好になり、親水性がより高められて、水滴除去効果が高められる。特に親水性膜の膜厚を1000オングストローム以上とすることにより、十分な多孔質状態を形成することができ、多孔質による親水性向上効果を十分得ることができる。また、裏面側に反射膜が形成されたガラス基板の表面側に親水性膜を成膜することにより、簡単な構造でかつ安価に水滴除去を行なうことができる。また、基板の表面側に反射膜を配置し、さらにその表面側に親水性膜を配置することにより、反射膜と親水性膜との間の距離を短くすることができ、2重像をほとんど解消することができる。しかも、反射膜は親水性膜によって保護されているので、反射膜を基板の表面側に配置したにもかかわらず、反射膜に傷がつくのが防止される。また、反射膜よりも後ろ側の位置に発熱体を積層して、親水性膜によって水滴が薄い水膜に広がっている状態で該発熱体によって加熱することにより、付着している水に対する伝熱効率が良好となり、水を短時間で蒸発させることができ、発熱体による水滴除去効果を高めることができる。反射膜が発熱体を兼ねることにより、構成を簡素化することができる。
 以下この発明の実施の形態を説明する。 
 (実施の形態1)
 この発明の車両用ミラーの実施の形態1を図1に示す。この車両用ミラー10は、自動車のアウターミラー(フェンダーミラー、ドアミラー等)として構成されたものである。車両用ミラー10は、ミラーボディー12内にミラーアッセンブリー14を収容配置している。ミラーアッセンブリー14は、ガラス基板16の裏面全体にCr、Al等による反射膜18が成膜されている。反射膜18の裏面のほぼ全域には、発熱体としてパネル状ヒータ20が粘着剤21によって貼着されている。パネル状ヒータ20は例えばPTC(正特性サーミスタ)パネルヒータであれば、自動車用バッテリ電源で直接駆動することができ、温度制御回路等は不要である。PTCパネルヒータは、PTC特性を付与された高分子面状発熱体(導電性樹脂に銀、銅等の電極を配設し、PETフィルムでラミネートしたもの等)等で構成される。
 ガラス基板16の表面全体には、親水性膜22が成膜されている。親水性膜22はSiO 等の親水性酸化膜で構成されている。親水性膜22は、水滴接触角が例えば40度以下の親水性の膜で構成され、その膜面に付着した水滴(雨滴等)を薄い水膜状に広げる作用をする。親水性膜22をSiO 等の親水性酸化膜で構成した場合は、親水基であるOH基が作られて、これが親水性を発揮する。
 親水性膜22の表面を図2に示すように多孔質状に構成すれば、毛細管現象により表面の濡れ性が向上し、より親水性が高められる。SiO 等をイオンプレーティングやスパッタリング等のPVD法で成膜することにより、このような多孔質状の親水性膜22を容易に得ることができる。この場合、膜厚を1000オングストローム以上に成膜すれば十分な多孔質状態を得ることができる。
 表面に親水性膜を形成した場合と形成してない場合での、ミラー表面に付着した水滴の挙動の違いを図3に示す。図3(a)は、親水性膜を形成してない場合で、水滴24は玉状になったまま撥水性のミラー表面(ガラス基板16の表面)に付着する。この状態では、水滴24が曲率の小さな半球状となり、レンズ効果で水滴24に映る後方像が上下反転するため、空、街灯等の明るい像が水滴24の下半分に映し出されて見にくさを増長する。
 これに対し、図3(b)のように親水性膜22を形成した場合には、ミラー表面(親水性膜22の表面)に付着した水滴24は薄い膜状に広がる。このためレンズ効果が起こりにくくなり、水が付着したままでも視認性の低下が防止される。また、このように膜状に広がることにより、空気との接触面積が大きくなって蒸発しやすくなる。しかも、親水性膜22はミラー表面に固く付着しているため、効果を持続させることができる。
 また、親水性膜22をSiO で構成した場合には、SiO は一般的にガラス基板16よりも屈折率が低いため(ガラス1.5、SiO 1.4、水1.3)、反射防止膜として作用し、図4に示すように、ガラス基板16の表面での反射像が少なくなり、視認性が向上する。また、SiO 膜は無機材料の薄膜であるため、耐擦傷性が高く、耐久性、耐候性がよく、この発明の親水性膜として好適である。
 また、ミラー表面に親水性膜22を形成することにより、発熱体20による水滴除去効果を高めることができる。図5は、ヒータ入力40W(13.5V、3A)のもとで、ミラー表面の親水性の違いによる水滴除去時間の違いを測定した結果を示すものである。これは、ミラー面に水を最大量付着させた場合の測定結果である。ミラー表面が撥水性の場合は、ミラー表面と水滴の接触面積が減少するため、ミラー表面から水滴への伝熱効率が低下し、除去時間が長くかかっている。これに対し、ミラー表面が親水性の場合は、ミラー表面と水滴の接触面積が増大し、伝熱効率が向上し、短時間で除去(蒸発)することができる。親水性膜+発熱体の効果の観点からは、親水性膜22は水滴接触角が40度以下であると特に効果的である。
 (実施の形態2)
 この発明の車両用ミラーの実施の形態2を図6に示す。この車両用ミラー26は、反射膜18をガラス基板16の表面側に形成したものである。車両用ミラー26は、ミラーボディー12内にミラーアッセンブリー28を収容配置している。ミラーアッセンブリー28は、ガラス基板16の裏面のほぼ全域に、発熱体としてパネル状ヒータ20を粘着剤21によって貼着している。パネル状ヒータ20は例えばPTC特性を付与された高分子面状発熱体等で構成される。
 ガラス基板16の表面全体には、Cr、Al等による反射膜18が形成され、その上に親水性膜22が成膜されている。親水性膜22はSiO 等の親水性酸化膜で構成されている。
 上記構成によれば、前記実施の形態1と同様に、親水性膜22の作用により、さらには親水性膜22とパネル状ヒータ20との組合せの作用により良好な水滴除去効果が得られる。また、反射膜18がガラス基板16の表面側に配されているので、反射膜18と親水性膜22との距離を短くすることができ、親水性膜22の表面と反射膜18の表面による2重像を目立ちにくくすることができる。しかも、反射膜18は親水性膜22によって覆われているので、反射膜18をガラス基板16の表面側に配置したにもかからわず、反射膜18に傷がつくのが防止される。なお、基板16内には光は透過しないので、基板16は必ずしもガラス製でなくてもよく、金属製、プラスチック製等で構成することもできる。
 (実施の形態3)
 この発明の車両用ミラーの実施の形態3を図7に示す。これは、反射膜が発熱体を兼ねたものである。車両用ミラー30は、ミラーボディー12内にミラーアッセンブリー32を収容配置している。ミラーアッセンブリー32は、ガラス基板16の裏面全体にCr,Ni−Cr,Ti等による反射膜兼発熱体(薄膜ヒータ)34が成膜されている。反射膜兼発熱体34の上下両辺部には、電極36,38が取り付けられている。
 ガラス基板16の表面全体には、親水性膜22が成膜されている。親水性膜22はSiO2 等の親水性酸化膜で構成されている。
 上記構成によれば、前記実施の形態1,2と同様に、親水性膜22の作用により、さらには親水性膜22と薄膜ヒータ34との組合せの作用により良好な水滴除去効果が得られる。また、反射膜34が薄膜ヒータを兼ねているので、構成を簡素化することができる。
 なお、前記各実施の形態では、親水性膜をSiO で構成した場合について説明したが、他の材料で構成することもできる。他の材料としては、吸収係数が小さな可視域で透光性の高い材料(硬質の無機材料、誘電体等)が望ましく、例えばTiO やAl 等がこれに適合する。
 また、前記実施の形態では親水性膜を蒸着によってミラー面に付着させて成膜したが、可能であれば、ガラス基板表面自体に化学処理等を施して、親水性膜に変質させて成膜したり、親水性材料を塗布して成膜させるなど各種方法で成膜することもできる。
 また、この発明は自動車用ミラーに限らず、オートバイ用ミラー、自転車用ミラー等各種車両用ミラーに適用することができる。
この発明の車両用ミラーの実施の形態1を示す断面図である。 多孔質状に構成した親水性膜の断面図である。 親水性膜の有無による、付着した水滴の挙動の違いを示す図である。 親水性膜の屈折率をガラス基板の屈折率よりも小さくした場合の反射防止効果を説明する図である。 親水性の違いによる発熱体による水滴除去効果の違いを示す線図である。 この発明の車両用ミラーの実施の形態2を示す断面図である。 この発明の車両用ミラーの実施の形態3を示す断面図である。
符号の説明
10,26,30 車両用ミラー
16 ガラス基板(基板)
18 反射膜
20 パネル状ヒータ(発熱体)
22 親水性膜(親水性酸化膜)
24 反射膜兼発熱体

Claims (2)

  1.  最表面に親水性酸化膜を固定成膜し、該親水性酸化膜の表面をPVD法によって得られる多孔質状に構成してなる車両用ミラー。
  2.  多孔質状表面を有する親水性酸化膜を最表面に固定成膜した車両用ミラーを製造する方法であって、前記親水性酸化膜をPVD法で成膜する工程を含む車両用ミラーの製造方法。
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