JP2004042157A - 刃先交換式チップ及びそれを用いた切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チップ1を、平行四辺形の鈍角コーナ部に凹部2を設けて中央をくびれさせた形状にし、そのチップ1をホルダ11の先端に設けた座溝に着座させ、板状部材13aに形成した対向一対の弾性挾持爪13dで凹部2の刃先から遠い側の側面3a、3bを加圧し、このときに生じる引き込み力で凹部2の刃先に近い側の側面3a’、3b’を拘束面15に圧接させてチップ1をクランプするようにした。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、刃先交換式チップと、そのチップをホルダに装着して構成される旋削加工用の切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の旋削加工用工具の中に、穴付き菱形チップ(スローアウェイチップ)をピンや押え金で押圧してホルダに装着するものがある。
【0003】
本願の改善対象となる切削工具としては、このほかに、特公平3−2604号公報や特許第3064789号公報に示されるものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
穴付き菱形チップを用いる切削工具は、中心穴の孔面や穴縁をピンや押え金で押圧し、チップの切削に関与しない側の2側面を座溝の座側面に圧接させてチップをクランプするが、一般的なこのクランプ構造では、チップの側面の拘束位置から刃先までの距離が長くなる。
【0005】
チップ及びホルダは切削時に変形を伴い、その変形で刃先側が拘束点を支点にして変位する。このときの変位量や切削時にチップに加わる回転モーメントは、刃先から拘束点までの距離が長くなるほど大きくなるので、上述したクランプ構造では切削時の刃先の位置精度が悪くなる。
【0006】
一方、特公平3−2604号公報の切削工具は、刃先の位置精度を高める目的で開発されており、切削時の刃先変位が抑えられる。しかし、この工具は、細長いチップの中心に穴を設けてその穴にチップを後方に押し動かす締めつけねじを通し、その締めつけねじよりも刃先に近い位置でチップの側面に設けた局部傾斜面やチップの幅方向中央にあけた局部穴の内面を拘束し、さらに、締めつけねじよりも後ろ側でチップの両側面を支持面で支える構造にしているのでチップサイズが必然的に大きくなり、経済的に不利になる。
【0007】
また、特許第3064789号公報の工具は、平行四辺形の穴付き板状チップ本体に、一方の鋭角コーナ部から対角線状にスリットを設け、このスリットによって画されるチップ本体の両側部分を弾性変形部をなしてその弾性変形部の先端にチップとの係合部を形成している。そして、前記係合部が適合して嵌まる凹部を両側部に設けた中心対称形状の刃先チップを弾性変形部の先端に挾み、チップ本体を中心穴に挿入した突起(ピン)で押圧してその本体を座側面に押しつけるようにしている。従って、使い捨てする刃先チップは小さなものを使える。しかし、この工具はチップ本体の2側面を拘束して刃先を位置決めするので、刃先から拘束点までの距離が穴付き菱形チップを用いる工具と同様に長くなる。
【0008】
また、この工具は、チップ本体がクランプ時に弾性変形して変位する。その移動を伴うチップ本体を拘束するので、チップの着脱を繰り返したときの刃先位置の再現性等にも問題があり、切削時の刃先位置精度が穴付き菱形チップを用いる工具よりも悪化し易い。
【0009】
この発明は、上記の不具合を解消してチップサイズを大きくせずにクランプ精度(刃先位置精度)を高めることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、平行四辺形を基本形とする刃先交換式チップであって、2箇所の鈍角コーナ部に鈍角コーナを除去してチップの中央部を鋭角コーナの頂角の2等分線を基準にして対称にくびれさせる凹部を有し、その凹部が平面視で相反する方向に傾く側面を備え、かつ鈍角コーナの頂角の2等分線に対しても対称形状をなしている刃先交換式チップと、ホルダの先端に、前述のチップを着座させる座溝と、その座溝にセットされたチップの2箇所の凹部の側面の一部を対向一対の弾性挾持爪で加圧するクランプ手段と、弾性挾持爪との干渉を避けた位置でチップの凹部の側面の一部を拘束する拘束面を設け、前記挾持爪でチップの凹部の切刃コーナから遠い側の側面を弾性的に挾みつけてチップに引き込み力を働かせ、凹部の切刃コーナに近い側の側面を前記拘束面に圧接させてチップをクランプするようにした切削工具を提供する。
【0011】
なお、この発明の刃先交換式チップは、凹部の側面の少なくとも上側部分をテーパ面に形成したり、少なくとも上面にチップブレーカを形成したりすることができる。
【0012】
この刃先交換式チップをホルダと組み合わせて構成されるこの発明の切削工具は、対向一対の弾性挾持爪にそれぞれ設けられるチップ把持面のなす角αを45°〜150°の範囲に設定するのがよい。
【0013】
また、弾性挾持爪の厚みをチップ厚みの1/2以下にしてこの弾性挾持爪をチップの上側部分に係合させ、その弾性挾持爪よりも下側において拘束面によるチップの拘束を行う構造や弾性挾持爪のチップ把持面及び若しくは凹部側面の拘束面を請求項2記載のチップのテーパ面に対応させた斜面にしてその面とチップとの係合部に座溝の底に向かう分力を発生させる構造にするとより好ましい工具を実現できる。
【0014】
【作用】
この発明の切削工具によれば、チップの側面の拘束がチップの中央よりも刃先側でなされるため、穴付き菱形チップの2側面を拘束する一般的なクランプ構造に比べて刃先から拘束点までの距離が短く、そのため、切削時にチップに加わる回転モーメントとチップ、ホルダの変形による刃先変位量が小さくなり、チップの刃先位置精度が向上する。
【0015】
また、この発明の刃先交換式チップは、平行四辺形の各鈍角コーナ部に設けた凹部の側面を利用して加圧と拘束を行うので、特公平3−2604号公報のチップに設けている中心穴、両側の支持面、ピン拘束用の2個の局部穴が不要であり、同公報のチップに比べてそのサイズを小さくすることができる。また、平行四辺形の鈍角コーナを除去して中央をくびれさせた分、一般の菱形チップ(内接円が同径のチップ)と比べても体積減少が図れる。
【0016】
なお、チップの凹部の側面の少なくとも上側部分をテーパ面にし、さらに、弾性挾持爪のチップ把持面やチップの側面を押圧して接触させる拘束面を前記テーパ面に対応した斜面にすると、チップ加圧時にそれ等の面の係合部に座底側に向かう分力が生じてチップが座底にも押圧され、クランプがより強固になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明の刃先交換式チップの実施形態を示す。例示の刃先交換式チップ1は、菱形チップの各鈍角コーナ部に、鈍角コーナを除去してチップの中央部をくびれさせる平面視V字状の凹部2を設けて成る。3は、側面である。2箇所の凹部2は、鋭角コーナの頂角の2等分線L1に対して対称形状をなす。また、それぞれの凹部2は、鈍角コーナの頂角の2等分線L2に対しても対称形状をなす。
【0018】
図示のチップ1には、上面にチップブレーカ4を設けており、切削時の切屑処理を良好に行うことができる。このチップブレーカ4は、菱形ポジティブチップをベースにしているものは設置が片面に制限されるが、図示のネガティブチップに対しては、上下両面に設けることができる。
【0019】
このチップブレーカ4は必要に応じて設けられ、ブレーカ無しのチップとすることもある。
【0020】
凹部2は、図2に示すように、平面視で彎曲した凹部にしてもよい。要は、凹部の側面の中に、線L2を基準にして対称で相反する方向に傾く側面3a、3b及び3a’、3b’が含まれる形状になっていればよい。この側面3a、3b、3a’、3b’を、平面視で少なくとも一部に直線部(好ましくは0.5mm以上の直線部)が含まれるものにして後述する弾性挾持爪による加圧、拘束面による拘束を直線部の位置で行うと、加圧と拘束の方向が安定して刃先位置の再現精度がより高まる。
【0021】
なお、左右の凹部の側面3aと3b及び3a’、3b’が平面視においてなす角αは45°〜150°、より好ましくは、70°〜100°とするのがよい。
【0022】
図2は、凹部2の側面の上側部分と下側部分をテーパ面5となしたチップである。テーパ面5は、上側部分のみに設けられていてもい。
【0023】
図3、図4は、図1のチップ1を採用した切削工具の実施形態を示している。
【0024】
この切削工具10は、ホルダ11の先端に、チップ1を着座させる座溝12と、チップ1を固定するクランプ手段13と、チップの各凹部2に入り込ませる突起14を設けて構成される。突起14は拘束面15を有する。
【0025】
クランプ手段13は、ボルト16でホルダ11に固定する板状部材13aに、チップ1のほぼ半分を受け入れる凹部13bと、その凹部の位置から後方に延びて2つに枝分かれするスリット13cを設けてそれ等の両側に対向一対の弾性挾持爪13dを形成したものを用いている。板状部材13aは、チップ1とほぼ同じ厚みをもつ。ホルダ11には、座溝12、突起14のほかに、板状部材13aを嵌める溝17とボルト16をねじ込むねじ孔18(図6参照)を設けている。
【0026】
なお、対向一対の弾性挾持爪に形成するチップ把持面fのなす角は、チップの凹部の側面3a、3bがなす角αと一致させている。角度αの設定がまずいと、チップに加わる挾持力と引き込み力のバランスが悪くなり、凹部2に入り込ませる弾性挾持爪13dの先端サイズや突起14のサイズ制限を受けることもある。
【0027】
このように構成した図3の切削工具10は、治具等を用いて弾性挾持爪13dを押し広げ、座溝12にチップ1をセットする。その後、爪13dを弾性復元させてチップ1の凹部の側面3a、3bを加圧する。これにより、チップ1に引き込み力が加わって凹部の側面3a’、3b’が拘束面15に圧接し、チップのクランプが完了する。
【0028】
図3から判るように、拘束面15による拘束点はチップ1の中央、即ち、線L2の位置よりも刃先側(鋭角コーナ側)にあり、刃先から拘束点までの距離が菱形チップの切削に関与しない2側面を拘束するものよりも短くなって切削時の位置精度が高まる。
【0029】
なお、チップ1は、基本になる平行四辺形の内接円を、一般的に使われる菱形チップと同等もしくはそれ以下、望ましくはφ12.7mm以下にすると、発明の効果がより顕著になる。
【0030】
図5〜図7は、工具の第2実施形態である。この切削工具10は、板状部材13aの厚みt(図7参照)をチップ1の厚みの1/2以下としたクランプ手段13を用いている。また、凹部13bの一部をホルダ11に設け、さらに、クランプ手段13よりも下側においてホルダ11に拘束面15を設けている。その他の構造は図3の切削工具と同じである。この図5〜図7の切削工具10は、チップ1の加圧と拘束を高さの異なる位置で行うので、弾性挾持爪13dの先端を太くして爪の強度を高め、かつ、座溝の側面を拘束面15にして拘束部の強度を高めることができる。
【0031】
図8は、凹部2の側面の一部をテーパ面5にしたチップ1を利用する場合の好ましい工具形態である。
【0032】
この図8の切削工具10は、弾性挾持爪13dのチップ把持面fをテーパ面5に対応させた斜面にしており、チップ1の引き込み時にチップ把持面fとテーパ面5の係合部に座溝12座底側に(図中下方)に向かう分力が生じ、その力でチップ1が座溝12の座底にも押圧されてクランプの安定性が更に高まる。拘束面15を図3の突起14に設けるものは、この拘束面15をテーパ面5に対応する斜面にしてもよく、この場合もチップを座底に押圧する力が生じてクランプが強固になる。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明においては、平行四辺形を基本形とするチップの鈍角コーナ部に、平面視で相反する方向に傾く側面を備えた凹部を設けてチップの中央部をくびれさせ、凹部の刃先から遠い側の側面を対向一対の弾性挾持爪で加圧し、凹部の刃先に近い側の側面をホルダに設けた面で拘束するので、チップサイズを一般的な菱形チップと同等或いはそれ以下にすることができる。
【0034】
また、刃先から拘束点までの距離が菱形チップを用いる従来工具よりも短くなり、切削時の刃先変位が小さくなる。
【0035】
さらに、位置固定のクランプ手段でチップを挾みつけるので、チップの脱着を繰り返しても刃先位置の再現性などが変化せず、小さくて経済ロスの少ないチップ、経済性と高いクランプ精度(刃先位置精度)を両立した切削工具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の刃先交換式チップの実施形態を示す斜視図
【図2】チップの他の実施形態の斜視図
【図3】この発明の切削工具の実施形態を示す平面図
【図4】図3のX−X線に沿った拡大断面図
【図5】切削工具の他の実施形態を示す平面図
【図6】クランプ手段を外した状態の平面図
【図7】図5のY−Y線に沿った拡大断面図
【図8】弾性挾持爪の変形例を示す断面図
【符号の説明】
1 刃先交換式チップ
2 凹部
3 側面
3a、3b、3a’、3b’ 凹部の側面
4 チップブレーカ
5 テーパ面
10 切削工具
11 ホルダ
12 座溝
13 クランプ手段
13a 板状部材
13b 凹部
13c スリット
13d 弾性挾持爪
14 突起
15 拘束面
16 ボルト
17 溝
18 ねじ孔
f チップ把持面
L1 鋭角コーナ頂角の2等分線
L2 鈍角コーナ頂角の2等分線
Claims (7)
- 平行四辺形を基本形とする刃先交換式チップであって、2箇所の鈍角コーナ部に鈍角コーナを除去してチップの中央部を鋭角コーナの頂角の2等分線を基準にして対称にくびれさせる凹部を有し、その凹部が平面視で相反する方向に傾く側面を備え、かつ鈍角コーナの頂角の2等分線に対しても対称形状をなしている刃先交換式チップ。
- 前記凹部の側面の少なくとも上側部分をテーパ面に形成した請求項1記載の刃先交換式チップ。
- 少なくとも上面にチップブレーカを形成した請求項1又は2に記載の刃先交換式チップ。
- ホルダの先端に、請求項1乃至3のいずれに記載の刃先交換式チップを着座させる座溝と、その座溝にセットされたチップの2箇所の凹部の側面の一部を対向一対の弾性挾持爪で加圧するクランプ手段と、弾性挾持爪との干渉を避けた位置でチップの凹部の側面の一部を拘束する拘束面を設け、前記挾持爪でチップの凹部の切刃コーナから遠い側の側面を弾性的に挾みつけてチップに引き込み力を働かせ、凹部の切刃コーナに近い側の側面を前記拘束面に圧接させてチップをクランプするようにした切削工具。
- 対向一対の弾性挾持爪にそれぞれ設けられるチップ把持面のなす角αを45°〜150°の範囲に設定した請求項4記載の切削工具。
- 前記弾性挾持爪の厚みをチップ厚みの1/2以下にしてこの弾性挾持爪をチップの上側部分に係合させ、その弾性挾持爪よりも下側において拘束面によるチップの拘束を行うようにした請求項4又は5に記載の切削工具。
- 弾性挾持爪のチップ把持面及び若しくは凹部側面の拘束面を請求項2記載のチップのテーパ面に対応させた斜面にしてその面とチップとの係合部に座溝の底に向かう分力を発生させるようにした請求項4に記載の切削工具。
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