JP2004039345A - 熱電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温環境下で、電池内部にアルゴンガス等の不活性ガスが充填された熱電池を用いた場合に生じる起動時の電圧立ち上がり時間の遅延を改善し、優れた放電特性を有する熱電池を提供する。
【解決手段】素電池、加熱剤および着火パッドを含む積層体と、前記積層体の外周に配された導火帯と、前記積層体へ点火する着火剤を含むイグナイタとを具備する熱電池であって、前記着火剤がホウ素および硝酸カリウムを含む。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電池、特に熱電池を起動させるイグナイタの着火剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱電池の構造を図1に示す。図1は、従来の内部加熱型熱電池の一部を切り欠いた構造を示す斜視図である。
素電池7と加熱剤5とを交互に積み重ね、さらにその最上部に着火パッド4を配して得られた積層体が金属製の外装ケース1に収納されている。この積層体の上部にはイグナイタ3が設置され、その周囲には導火帯6が配されている。金属製の外装ケース1と積層体の間には断熱材9が充填されている。
このような構造の熱電池では、起動信号が端子2に印加されるとイグナイタ3が燃焼し、着火パッド4や導火帯6へ燃焼が伝播され、加熱剤5が燃焼して素電池7が加熱される。そして、素電池7に含まれる溶融塩電解質が溶融してイオン伝導体となり、放電が可能となる。
【0003】
しかし、従来では、イグナイタ3の着火剤として、燃焼に酸素を必要とする硝酸カリウム、硫黄および炭素を含む黒色火薬を用いていたため、完全密封状態の電池内部にアルゴンガス等の不活性ガスを充填した電池では、着火剤に含まれ得る酸素のみが燃焼に寄与する酸素であり、イグナイタ3の燃焼が不充分となる。このため、着火パッド4や導火帯6への燃焼伝播が阻害され、特に、−10℃以下の低温環境下では電池電圧の立ち上がり時間が著しく遅延するという問題がある。
【0004】
これを解決する方法として、黒色火薬の量を多くし、火炎の勢いを増大させることにより、イグナイタを充分に燃焼させることが考えられるが、発生する熱量が大きくなり、放電初期に素電池が内部短絡を起こす可能性がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するため、低温環境下で、電池内部にアルゴンガス等の不活性ガスが充填された熱電池を用いた場合に生じる起動時の電圧立ち上がり時間の遅延を改善し、優れた放電特性を有する熱電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱電池は、素電池、加熱剤および着火パッドを含む積層体と、前記積層体の外周に配された導火帯と、前記積層体へ点火する着火剤を含むイグナイタとを具備する熱電池であって、前記着火剤がホウ素および硝酸カリウムを含むことを特徴とする。
前記着火剤におけるホウ素の含有割合は15〜60重量%、硝酸カリウムの含有割合は85〜40重量%が好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱電池は、イグナイタの着火剤に硝酸カリウムおよびホウ素の混合粉末を用いることを特徴とする。本発明に係るイグナイタは、従来用いていた黒色火薬とは違い、イグナイタの燃焼に酸素を必要とせずに、ホウ素と硝酸カリウムとの反応で生じる反応熱を利用してイグナイタを燃焼させることができる。このため、低温環境下で、電池内部をアルゴンガス等の不活性ガスを充填した熱電池を用いた場合でも確実にイグナイタが着火し、イグナイタの燃焼不足による電圧立ち上がり時間の遅延を解消することができる。
【0008】
着火剤中のホウ素の含有割合は15〜60重量%、硝酸カリウムの含有割合は85〜40重量%が好ましい。ホウ素の含有割合が15重量%未満では、燃焼速度(反応速度)が急激に増加し、その結果、反応が促進され、さらに燃焼速度(反応速度)が急激に増加する。これが繰り返されることによりイグナイタ近傍の素電池が熱破壊を生じてしまう。一方、ホウ素の含有割合が60重量%を超えると、反応熱が急速に低下し、着火剤の燃焼が不充分となる。
さらに、不活性ガス雰囲気下において着火するまでの時間が短くなるという理由で、着火剤中のホウ素の含有割合は23〜27重量%、硝酸カリウムの含有割合は77〜73重量%が特に好ましい。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0010】
《実施例1》
イグナイタの着火剤は、ホウ素と硝酸カリウムを25:75の重量比で混合することにより得られた。
素電池は、活物質としてのFeSおよび溶融塩電解質としてのLiCl−KClを混合してなる正極合剤層、LiCl−KCl共融混合塩等からなる電解質層、ならびにLi負極を積層することにより得られた。
【0011】
加熱剤はFeおよびKClOを均一に混合することにより得られた。着火パッドおよび導火帯はZr、BaCrOおよびガラス繊維を混合することにより得られた。
そして、素電池と加熱剤を交互に積層し、最上部に着火パッドを配して積層体を構成した。
上記の着火剤を含むイグナイタおよび積層体とリード板、端子、断熱材を用いて図1に示す構造を有する熱電池を作製した。この熱電池を熱電池Aとする。
【0012】
《実施例2》
イグナイタの着火剤は、ホウ素と硝酸カリウムを30:70の重量比で混合することにより得られた。実施例1で用いたイグナイタの代わりに、この着火剤を含むイグナイタを用いた以外は、実施例1と同様の方法で熱電池を作製した。この熱電池を熱電池Bとする。
【0013】
《比較例》
イグナイタの着火剤は、黒色火薬として硝酸カリウム、硫黄、および炭素を75:10:15の重量比で混合することにより得られた。実施例1のイグナイタの代わりに、この着火剤を含むイグナイタを用いた以外は、実施例1と同様の方法で熱電池を作製した。この熱電池を熱電池Cとする。
【0014】
[評価]
実施例1および2の熱電池AおよびBならびに比較例の熱電池Cについて、それぞれ−33℃の雰囲気下で電池起動時の電圧立ち上がり特性および放電特性を調べた。この時、放電持続時間は、起動信号が端子に印加された時点を基準として測定した。
その結果として、熱電池A、BおよびCの電池電圧と起動時間の関係を図2に示す。
【0015】
電池電圧が230Vに達するまでの電圧立ち上がり時間を比較すると、実施例1の熱電池Aは250ms、実施例2の熱電池Bは300ms、比較例の熱電池Cは450msであり、熱電池AおよびBが熱電池Cと比べて電圧の立ち上がりが早いことがわかった。また、熱電池AおよびBが熱電池Cに比べて優れた放電特性を示すことがわかった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、低温環境下で、電池内部にアルゴンガス等の不活性ガスが充填された熱電池を用いた場合に生じる起動時の電圧立ち上がり時間の遅延を改善し、優れた放電特性を有する熱電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内部加熱型熱電池の一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】実施例1および2ならびに比較例における熱電池について、起動後の電池電圧と起動時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 外装ケース
2 端子
3 イグナイタ
4 着火パッド
5 加熱剤
6 導火帯
7 素電池
8 リード板
9 断熱材

Claims (2)

  1. 素電池、加熱剤および着火パッドを含む積層体と、前記積層体の外周に配された導火帯と、前記積層体へ点火する着火剤を含むイグナイタとを具備する熱電池であって、前記着火剤がホウ素および硝酸カリウムを含むことを特徴とする熱電池。
  2. 前記着火剤におけるホウ素の含有割合は15〜60重量%、硝酸カリウムの含有割合は85〜40重量%である請求項1記載の熱電池。
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