JPH0234763Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は着火しにくいペレツト状発熱剤を用い
た熱電池に関するもので、組立時の安全性が高
く、活性化速度の早い熱電池を提供するものであ
る。

従来の技術 熱電池は溶融塩を電解質に用いており、常温で
は電流を流すことが出来ないが、高温に加熱する
と電解質が溶融して極めて高い導電性を示すよう
になり、大電流での放電が可能となる。このた
め、未使用状態では自己放電がなく、長期間の保
存が可能であり、信頼性の高い緊急用高出力電源
として優れた電池である。特に正極に二流化鉄
を、負極にリチウムもしくはリチウム合金を用い
た熱電池は高エネルギー密度であり、作動時にお
いても自己放電が少ないという特徴を有してい
る。

熱電池は発熱剤を内部に保持しており、この発
熱剤に点火することにより、電池内部を瞬時に作
動温度まで加熱して電池を活性化させる。このよ
うな発熱剤としてZr／BaCrO₄系のシート状発熱
剤がよく知られている。シート状発熱剤は発熱剤
粒子をアスベスト等の無機繊維と共に水中に分散
させた後、シート状に漉いたもので、軽量で発熱
量が多く、燃焼速度も早いが、発火しやすく、取
扱いに注意を要するという欠点があつた。

一方、Fe／KClO₄系等の発熱剤を加圧成型し
て得たペレツト状発熱剤は重量当りの発熱量が低
く、燃焼速度も遅いが、機械的強度が高く、発火
しにくいため取扱いが容易であるという特徴があ
る。

考案が解決しようとする問題点 然しながら、ペレツト状発熱剤の発火しにくい
性質は、熱電池を活性化する場合には欠点とな
る。即ち、シート状発熱剤の場合は極めて着火し
やすいため、積層された素電池の中央部に導火孔
を設けるのみで、該導火孔を通つてシート状発熱
剤の火炎が伝播し、全てのシート状発熱剤は瞬時
に着火するのに対し、ペレツト状発熱剤は着火が
容易でないため、シート状発熱剤の着火法で熱電
池を活性化することが出来なかつた。

このためペレツト状発熱剤を用いた熱電池で
は、従来、導火孔内へ棒状あるいは粉末状の導火
薬を充填し、各発熱剤を導火薬と接触させていた
が、導火薬の燃焼速度が遅いために、熱電池の活
性化速度が遅くなるという欠点があつた。

問題点を解決するための手段 本考案は上述の如き問題点を解決するため、中
央部に導火孔を設けた素電池と、同じく導火孔を
設けたペレツト状発熱剤とを交互に積層して得た
熱電池において、前記導火孔内に綿状の導火薬を
充填したことを特徴とするものである。

作 用 本考案においては綿状の導火薬を使用するた
め、燃焼速度が早くなり、熱電池の活性化速度も
早くなつた。すなわち、綿状の導火薬は空間率が
高く、燃焼時に火炎が空間を伝播して伝わるため
に棒状や粉末状の導火薬より燃焼速度が早くなる
のである。また、綿状の導火薬は軽量で移動しに
くいため、振動や加速度に対して安定であるとい
う長所もある。

実施例 以下、本考案をリチウム／二流化鉄系熱電池に
適用した一実施例について説明する。

第１図は本考案による熱電池用素電池の断面図
で、１は負極層であり、多孔体に含浸保持させた
リチウムやリチウム−アルミリウム合金、リチウ
ム−シリコン合金、リチウム−ホウ素合金等のリ
チウム合金が用いられる。２は電解質層で、
MgOやY₂O₃等のセラミツク粉末により流動性を
低下させた溶融塩電解質が用いられる。３は正極
層であり、二流化鉄（FeS₂）を主成分とし、電
解質とその電解質を保持するためのバインダー粉
末との混合物である。４は負極集電板、５は正極
集電板、６は素電池の中央部に設けた導火孔であ
る。

第２図はペレツト状発熱剤の断面図である。７
はペレツト状発熱剤であり、中央部に導火孔６′
を有している。ペレツト状発熱剤７は酸化剤と還
元剤との混合物を加圧成形により強固な板状にし
たもので、機械的強度が高く、発火しにくいため
に取扱いが容易である。このような発熱剤として
Fe／KClO₄，Ni／KClO₄，Fe／KBrO₃，Ni／
KIO₃，Mn／KClO₃等の組合せが使用可能であ
る。

第３図は上述した素電池および発熱剤を積層し
た本考案熱電池の断面図である。８は積層された
各素電池であり、ペレツト状発熱剤７と交互に積
層されている。９は積層された素電池８およびペ
レツト状発熱剤７の中心に形成された導火孔内に
充填された綿状の導火薬である。導火薬９は素電
池の積層後に導火孔の開孔部より充填するもので
あり、ペレツト状発熱剤７との接触が良く、着火
が確実である。１０は点火具であり、点火用端子
１１に瞬間電流を流すと、点火具１０が発火し、
直ちに導火薬９に着火して火炎を発して燃焼し、
順次ペレツト状発熱剤７に着火して熱電池が活性
化される。１２は正極端子、１３は負極端子であ
る。１４は熱電池内部を断熱保温するための断熱
材であり、１５は電池容器である。

本考案熱電池の実施例において、リチウム−ア
ルミニウム合金負極と二硫化鉄正極、MgOと
KCl−LiCl共晶塩混合物の電解質からなる素電池
およびFe／KClO₄系のペレツト状発熱剤を15組
積層して熱電池を構成した。点火具に電流を通電
後、熱電池の電位が22Vに立上るまでの活性化時
間は、試験温度−35℃において0.21秒であつた。
一方、導火孔に粉末状の導火薬を充填した従来電
池の活性化時間は0.45秒であつた。

綿状の導火薬はジルコニウムとクロム酸バリウ
ムの混合物をセラミツクやガラス、セルローズ等
の繊維の表面に保持させたものである。充填時の
綿状導火薬の空間率は80〜95％が好ましく、ペレ
ツト状発熱剤への着火が確実であり、燃焼速度も
早くなつた。

考案の効果 本考案によれば、着火しにくいペレツト状発熱
剤を用いて素電池の積層が行なわれるため、組立
時の安全性が高く、また、綿状の導火薬の使用に
より活性化時間も短くなつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案熱電池を構成する素電池の断面
図、第２図はペレツト状発熱剤の断面図、第３図
は本考案熱電池の断面図である。 ６，６′……導火孔、７……ペレツト状発熱剤、
８……素電池、９……導火薬。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 中央部に導火孔を設けた素電池と、同じく導火
   孔を設けたペレツト状発熱剤とを交互に積層した
   熱電池において、前記導火孔内に綿状の導火薬を
   充填したことを特徴とする熱電池。