JP2004037488A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004037488A JP2004037488A JP2002190208A JP2002190208A JP2004037488A JP 2004037488 A JP2004037488 A JP 2004037488A JP 2002190208 A JP2002190208 A JP 2002190208A JP 2002190208 A JP2002190208 A JP 2002190208A JP 2004037488 A JP2004037488 A JP 2004037488A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- photosensitive member
- layer
- electrophotographic
- electrophotographic photosensitive
- charge transport
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
Abstract
【課題】耐摩耗性、耐傷性、耐析出性に優れ繰り返し使用時の画像に問題が生じ難く、かつ現像された画像濃度の階調性の良好な電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型であり、該電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、該最表面層が電子線照射で硬化されたことを特徴とする電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型であり、該電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、該最表面層が電子線照射で硬化されたことを特徴とする電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは、最表面層に特定の化合物を電子線で硬化させた樹脂を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として有機光導電材料が、その無公害性や高生産性といった点で利点を有するため広く利用されている。これらの電子写真感光体は、電気的及び機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の電子写真感光体として利用される場合が多い。一方、当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度や電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に、繰り返し使用される電子写真感光体にあっては、その電子写真感光体の表面層にはコロナ帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。具体的には、コロナ帯電時に発生するオゾンによる劣化のために感度低下、電位低下及び残留電位増加が起こったり、摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生すること等に対する耐久性等が要求されている。
【0003】
更に、電子写真感光体表面層には、トナー像の転写性や転写後の残留トナーのクリーニング性に優れていることが要求され、そのためには表面エネルギーが小さく、滑り性が高いことが必須であり、かつこれが繰り返し使用時にも性能が低下しないことが望まれる。
【0004】
電子写真感光体の表面は一般に薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等が実用化されているが、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に電子写真感光体の高耐久化を図るうえでは該樹脂の被膜硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層形成用の樹脂として用いた場合でも繰り返し使用時において表面層の摩耗が起こり、更に傷が発生するという問題点があった。更に、近年の有機電子写真感光体の高感度化に対する要求から電荷輸送材料等の低分子量化合物が比較的大量に添加される場合が多く、電子写真感光体を長期にわたって保存する際に前述の低分子量成分が析出してしまい、層分離するといった問題があった。
【0005】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みが、例えば特開平2−127652号公報等に開示されている。このように電荷輸送層用の樹脂に硬化性の樹脂を用い、電荷輸送層を硬化、架橋することによって機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性は大きく向上する。しかしながら、有機物電荷輸送材料と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては電荷輸送能の樹脂に対する依存度が大きく、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなく、初期の残留電位の上昇により、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係が直線的でなくなり、特に低電位側で裾がきれなくなる。このような表面電位特性の電子写真感光体を用いると、画像としてはトナーの現像濃度の直線性、良好なコピー濃度階調性を発現することができない。
【0006】
また、繰り返し使用時に残留電位の上昇等の弊害も見られる等、これまでの系では高い硬度と十分な電荷輸送能の両立が達成されていなかった。
【0007】
先にも述べたが、有機物電荷輸送材料と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては電荷輸送能の樹脂に対する依存度が大きく、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなく繰り返し使用時に残留電位の上昇が見られる等の問題があった。従って、本発明者らは電荷輸送層上に電荷輸送材料と硬化性樹脂を含んでいる保護層を設け、この膜厚を薄くすることで、影響をできる限り抑えることが可能であるか検討を行った。もし、これが成立すれば樹脂を硬化、架橋することによって機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性が良好で、更に電位安定性をも実用上問題のない系を確立できるためである。しかし、繰り返し使用時に残留電位の上昇に少しだけ改善は見られたが、結果的には高い硬度と十分な電荷輸送能を両立することはできず、全く別の抜本的な対策が必要であることが確認された。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐摩耗性、耐傷性、耐析出性に優れ繰り返し使用時の画像に問題が生じ難く、かつ現像された画像濃度の階調性の良好な電子写真感光体を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型であり、該電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、該最表面層が電子線照射で硬化されたことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0011】
また、本発明に従って、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明の電子写真感光体の構成は、導電性支持体上に感光層として電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層し、電荷輸送層が2層以上の構成となっている。ただ少なくとも、その最表層に電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ電子線により硬化する化合物を含有すればよい。本発明においては、電子写真感光体としての特性、特に残留電位等の電気的特性及び耐久性、コストの点より電荷発生層/電荷輸送層1/最表面層(電荷輸送層2)の順に2層の電荷輸送層を積層した機能分離型の電子写真感光体構成が必須である。
【0014】
本発明で使用するアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物は、化合物中に含まれるアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)が電子線照射によって硬化可能な化合物である。
【0015】
本樹脂は、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を分子中に有すこと以外に特に制約はないが、硬度を十分に上げるためには1分子中に2つ以上のアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)をもつ化合物を含有することが好ましく、特に1分子中に3つ以上のアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を持った化合物を含有することが更に好ましい。
【0016】
本発明に用いる硬化性の化合物において、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)以外の部位の構造は特に限定されない。分子中にアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含有している市販のエポキシアクリレート(メタクリレート)、ウレタンアクリレート(メタクリレート)、ポリエステルアクリレート(メタクリレート)、ポリエーテルアクリレート(メタクリレート)、シリコーンアクリレート(メタクリレート)、ポリブタジエンアクリレート(メタクリレート)又はポリスチリルアクリレート(メタクリレート)等のモノマーやオリゴマー等が使用可能である。これらの化合物は、単独で使用しても2種類以上混合してもよい。また、上記化合物を他の市販の樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリスチレン樹脂等と混合して用いることも可能である。
【0017】
また、本化合物において良好な電子写真感光体特性を発現させる観点では、硬化後の化合物の誘電率が小さいことが重要であり、本発明に用いる電子写真感光体の最表面層の樹脂としては硬化後の誘電率が1MHzの交流電圧を印加したときの値で4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることが更に好ましい。
【0018】
なぜ本発明の系の、電子線照射によって硬化した化合物を電荷輸送層の最表面層に用いた場合に、十分な硬度を示す上に電荷輸送能等の電子写真感光体特性を劣化させず、繰り返し電位安定性が良いのかに関して、明確な理由は不明であるが、ただ、一つには、感光層においては良好な特性を発現させる上で極性の強い物質又は酸化電位の低い物質は大きな弊害となることが知られていることより、従来の硬化樹脂の系と比較して本発明の保護層の系では、そのような極性の強い物質又は酸化電位の低い物質が硬化反応の過程で生じないか又は非常に少ないことは想像できる。更にまた、同じアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂でもこれを熱又は紫外線で硬化する場合には、熱又は光反応開始剤の添加が必要となり、この硬化樹脂を感光層に用いた場合には残留電位の増加や感度の低下といった電子写真感光体特性の劣化が起こることより、本発明で反応開始剤を用いずに硬化を行っていることも良好な電子写真感光体特性発現のためには有効であるものと考えられる。
【0019】
本発明の電子写真感光体を製造する場合、導電性支持体としてはアルミニウムやステンレス等の金属や合金、紙、プラスチック等が用いられるが、その形状は円筒状シリンダー又はフィルム等が適用される電子写真装置に応じて任意のものとすることができる。
【0020】
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
【0021】
下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ及びゼラチン等が知られている。これらは、それぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μm程度が好ましい。
【0022】
本発明の電荷発生層に用いる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε又はX型等の結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンあるいは特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコン等が挙げられる。
【0023】
電荷発生層は、前記の電荷発生材料を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミル等の方法で均一に分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成されるか、又は前記電荷発生材料の蒸着膜等、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0024】
また、電荷輸送材料としては、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール及びN,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン及びp−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノリル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン及びスピロピラゾリン等のピラゾリン系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール及び2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル−)オキサゾール等のオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズチアゾール等のチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン等のトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス−4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニルエタン等のポリアリールアルカン類等が挙げられる。
【0025】
最表面層である電荷輸送層は、前記の電荷輸送材料とアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂を溶剤に溶解することによって得られた溶解液を塗布、乾燥し、更に電子線照射を行い硬化させることによって形成することが好ましい。アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂を予め電子線照射を行って硬化させた後、電荷輸送材料と共に溶剤に溶解し、この溶液を塗布、乾燥することによっても本発明の形成は可能であるが、電荷輸送材料の耐析出性の点より塗布、乾燥後、電子線照射により硬化という手順で形成する方が有効である。
【0026】
電荷輸送材料と結着剤樹脂との混合割合は2:1〜1:4程度が好ましく、またその溶剤としてはトルエン、キシレンあるいはモノクロロベンゼン等の芳香族系溶剤の以外、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等のエーテル類、溶質によってはケトン類、アルコール類又は飽和炭化水素類等も使用可能である。この溶解液を塗布する方法は、例えば、浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法等が知られている。電子写真感光体を効率良く大量生産するには、浸漬コーティング法が最良である。
【0027】
本発明においては、前述のように電子写真感光体の最表面層樹脂を電子線照射によって硬化する。電子線照射をする場合、加速器としては、スキャニング型、エレクトロカチオン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型等いずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、本発明の電子写真感光体においては、電気特性及び耐久性能を発現させる上で照射条件が非常に重要である。本発明において、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、照射線量は好ましくは1Mrad〜100Mradの範囲、より好ましくは3Mrad〜50Mradの範囲である。加速電圧が250KVを超えると電子写真感光体特性に対する電子線照射のダメージが顕著になる。また、照射線量が1Mradよりも少ない場合には硬化が不十分となり、線量が100Mradより多過ぎる場合には電子写真感光体特性の劣化が起こる。
【0028】
電荷発生層上に形成する電荷輸送層は、上記した電荷輸送材料と適当な樹脂を溶剤に溶解することによって得られた溶解液を塗布、乾燥し形成することが好ましい。上記樹脂としては広範囲な結着樹脂から選択でき、市販の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリスチレン樹脂等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独又は共重合体ポリマーとして1種又は2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
電荷発生層上に形成する電荷輸送層の電荷輸送材料と結着樹脂との混合割合、溶剤、またこの溶解液を塗布する方法等については、最表面の電荷輸送層で記載した内容と同様である。
【0030】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0031】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0032】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材7に、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー画像が転写手段6により順次転写されていく。
【0033】
トナー画像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0034】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0035】
電子写真感光体1の均一帯電手段3としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されていたが、近年オゾン発生の低減、装置の小型化に有利であるという理由から接触帯電装置の使用が広がってきている。中でもローラー状の帯電器を電子写真感光体に接触させるタイプのローラー帯電器は非常に一般的になりつつある。本発明の電子写真感光体はこの接触帯電方式の帯電を行う電子写真装置において、特に優れた耐久性、耐画像流れ、ボケ性を発揮する。
【0036】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0037】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動又は液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0038】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも幅広く適用し得るものである。
【0039】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0040】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料をφ30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布法で塗布し、140℃で30分間乾燥して、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0041】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗工液を調製した。この塗工液を前記の導電層上に浸漬塗布法によって塗布し、100℃で20分間乾燥し、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
【0042】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレツクBM2、積水化学(株)製)2部及びシクロヘキサノン35部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗工液を調製した。この塗工液を前記中間層上に浸漬塗布法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0043】
次いで、下記式のスチリル化合物である電荷輸送材料10部及びポリカーボネート(重量平均分子量=46000)10部を、ジクロロメタン30部/モノクロロベンゼン60部の混合溶剤中に溶解して溶液を作製し、この溶液を電荷発生層表面に浸漬塗布し、120℃で60分間乾燥させ、膜厚が10μmの電荷輸送層を形成した。
【0044】
【化1】
【0045】
次に、下記式で示されるアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)を含む化合物10部
【0046】
【化2】
をジクロロメタン60部/トルエン120部の混合溶剤中に、先に示した電荷輸送層に含まれるスチリル化合物10部と共に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷輸送層上にスプレー塗布で塗布し、120℃で60分間乾燥した後、加速電圧150KV、照射線量30Mradの条件にて電子線を照射し樹脂を硬化することによって、膜厚が10μmの2層目の電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。この時の表面層用樹脂の硬化後の誘電率は3.0であった。
【0047】
作製した電子写真感光体をApple Computer,lnc.製LBPであるLaser Writer 16/600PSに設置し、初期の電子写真感光体特性{E−V特性(露光量に対する電位減衰カーブ)、暗部電位Vd、感度Vl(暗部電位−500V設定で−200Vに光減衰させるために必要な露光量)、残留電位Vsl(電位減衰カーブの裾部のさちり電位)}を測定した。結果を図2、表3に示す。
【0048】
図2に示されるように電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的であり、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せた。この電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性を得ることができ、良好なコピー濃度階調性を発現できた。
【0049】
また、表3に示す通り、他の初期の電子写真感光体特性である暗部電位Vd、残留電位Vslも良好であり、かつ10000枚の画像出し耐久においても良好な画像を出し続けることができた。
【0050】
(実施例2〜5)
電子写真感光体の電荷輸送層に用いる電荷輸送材料及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含む化合物を表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0051】
結果は図2には記載していないが、どの樹脂を用いた場合も実施例1と同等の特性を示し、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的であり、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せた。
【0052】
これらの電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性を得ることができ、良好なコピー濃度階調性を発現できた。また、表3に示す通り、他の初期の電子写真感光体特性である暗部電位Vd、残留電位Vslも良好であり、かつ10000枚の画像出し耐久においても良好な画像を出し続けることができた。
【0053】
【表1】
【0054】
(比較例1)
実施例1における、最表面層の電荷輸送層を設けず電荷発生層上の電荷輸送層の膜厚を20μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0055】
評価した結果、比較例1においては耐久での表面層の削れが大きく、耐久枚数10000枚に達する前に、カブリ等の画像欠陥が発生した。
【0056】
(比較例2)
実施例1の最表面層の電荷輸送層用塗料に下記式の化合物を0.5部添加し、電子線照射の代わりにメタルハライド紫外線照射装置にて800mW/cm2の強度で10秒間紫外線を照射して電荷輸送層を硬化させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を図2、表3に示す。
【0057】
【化3】
【0058】
図2に示されるように電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的で無く、特に低電位側で裾を引いた状態となった。
【0059】
また、表3に示される評価結果のように、紫外線硬化を行った場合には、本発明と同様の化合物を用いた場合にも、重合開始剤の影響等もあり初期の電子写真感光体特性において感度が極端に悪く、また残留電位が高く、これによって耐久初期より画像が薄く、鮮明な画像が得られなかった。
【0060】
(比較例3)
実施例1の最表面層の電荷輸送層用塗料に下記式の化合物を0.5部添加し、電子線照射の代わりにメタルハライド紫外線照射装置にて800mW/cm2の強度で10秒間紫外線を照射して電荷輸送層を硬化させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0061】
【化4】
【0062】
この電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性は得られず、コピー濃度階調性の悪いものしか得られなかった。また、耐久での画像評価を行ったところ、残留電位の上昇による、画像濃度薄が発生し、初期画像より更にコピー濃度階調性の悪いサンプルを出力するようになってしまった。
【0063】
(実施例6〜9)
最表面層の電荷輸送層に用いる電荷輸送材料及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含む化合物を表2に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして実施例6〜9の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0064】
いずれの電子写真感光体においても、電子写真感光体特性、耐久特性は実用に耐えうる。しかし表3に見られるように硬化樹脂の比誘電率が4.0を超えると感度低下、残留電位増加の傾向が見られる。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例10〜14)
最表面層の電荷輸送層を塗布後の電子線照射条件を表4に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例10〜14の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0067】
いずれの電子写真感光体においても析出、クラックの発生は観察されず、電子写真感光体特性、耐久特性は実用に耐えうる。しかし表3に見られるように電子線の加速電圧が250KVを超える、又は照射線量が100Mradを超えると感度低下、残留電位の増加の傾向が見られる。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光層であり、電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、最表面層の硬化を電子線照射で行うことを特徴とするものであり、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係を直線的なものにし、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せ、ひいてはトナーの現像濃度の直線性、良好なコピー濃度階調性を発現することが可能となった。
【0071】
また、本発明の電子写真感光体は最表面層に前記アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有しているため、優れた耐析出性、耐クラック性、耐摩耗性及び耐傷性を有するという優れた効果を奏する。更に、本発明の電子写真感光体は感度や残留電位等の特性も良好であり、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる。該電子写真感光体の効果は、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ及び電子写真装置においても当然に該効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体を用いた場合のE−V特性を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは、最表面層に特定の化合物を電子線で硬化させた樹脂を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として有機光導電材料が、その無公害性や高生産性といった点で利点を有するため広く利用されている。これらの電子写真感光体は、電気的及び機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の電子写真感光体として利用される場合が多い。一方、当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度や電気的特性、更には光学的特性を備えていることが要求される。特に、繰り返し使用される電子写真感光体にあっては、その電子写真感光体の表面層にはコロナ帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性が要求される。具体的には、コロナ帯電時に発生するオゾンによる劣化のために感度低下、電位低下及び残留電位増加が起こったり、摺擦によって表面が摩耗したり傷が発生すること等に対する耐久性等が要求されている。
【0003】
更に、電子写真感光体表面層には、トナー像の転写性や転写後の残留トナーのクリーニング性に優れていることが要求され、そのためには表面エネルギーが小さく、滑り性が高いことが必須であり、かつこれが繰り返し使用時にも性能が低下しないことが望まれる。
【0004】
電子写真感光体の表面は一般に薄い樹脂層であり、樹脂の特性が非常に重要である。上述の諸条件をある程度満足する樹脂として、近年、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等が実用化されているが、前述したような特性の全てがこれらの樹脂で満足されるわけではなく、特に電子写真感光体の高耐久化を図るうえでは該樹脂の被膜硬度は十分高いとは言い難い。これらの樹脂を表面層形成用の樹脂として用いた場合でも繰り返し使用時において表面層の摩耗が起こり、更に傷が発生するという問題点があった。更に、近年の有機電子写真感光体の高感度化に対する要求から電荷輸送材料等の低分子量化合物が比較的大量に添加される場合が多く、電子写真感光体を長期にわたって保存する際に前述の低分子量成分が析出してしまい、層分離するといった問題があった。
【0005】
これらの問題点を解決する手段として、硬化性の樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いる試みが、例えば特開平2−127652号公報等に開示されている。このように電荷輸送層用の樹脂に硬化性の樹脂を用い、電荷輸送層を硬化、架橋することによって機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性は大きく向上する。しかしながら、有機物電荷輸送材料と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては電荷輸送能の樹脂に対する依存度が大きく、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなく、初期の残留電位の上昇により、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係が直線的でなくなり、特に低電位側で裾がきれなくなる。このような表面電位特性の電子写真感光体を用いると、画像としてはトナーの現像濃度の直線性、良好なコピー濃度階調性を発現することができない。
【0006】
また、繰り返し使用時に残留電位の上昇等の弊害も見られる等、これまでの系では高い硬度と十分な電荷輸送能の両立が達成されていなかった。
【0007】
先にも述べたが、有機物電荷輸送材料と結着樹脂とで構成される電荷輸送層においては電荷輸送能の樹脂に対する依存度が大きく、例えば硬度が十分高い硬化性樹脂では電荷輸送能が十分ではなく繰り返し使用時に残留電位の上昇が見られる等の問題があった。従って、本発明者らは電荷輸送層上に電荷輸送材料と硬化性樹脂を含んでいる保護層を設け、この膜厚を薄くすることで、影響をできる限り抑えることが可能であるか検討を行った。もし、これが成立すれば樹脂を硬化、架橋することによって機械的強度が増し、繰り返し使用時の耐削れ性、耐傷性が良好で、更に電位安定性をも実用上問題のない系を確立できるためである。しかし、繰り返し使用時に残留電位の上昇に少しだけ改善は見られたが、結果的には高い硬度と十分な電荷輸送能を両立することはできず、全く別の抜本的な対策が必要であることが確認された。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐摩耗性、耐傷性、耐析出性に優れ繰り返し使用時の画像に問題が生じ難く、かつ現像された画像濃度の階調性の良好な電子写真感光体を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型であり、該電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、該最表面層が電子線照射で硬化されたことを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0011】
また、本発明に従って、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明の電子写真感光体の構成は、導電性支持体上に感光層として電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層し、電荷輸送層が2層以上の構成となっている。ただ少なくとも、その最表層に電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ電子線により硬化する化合物を含有すればよい。本発明においては、電子写真感光体としての特性、特に残留電位等の電気的特性及び耐久性、コストの点より電荷発生層/電荷輸送層1/最表面層(電荷輸送層2)の順に2層の電荷輸送層を積層した機能分離型の電子写真感光体構成が必須である。
【0014】
本発明で使用するアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物は、化合物中に含まれるアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)が電子線照射によって硬化可能な化合物である。
【0015】
本樹脂は、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を分子中に有すこと以外に特に制約はないが、硬度を十分に上げるためには1分子中に2つ以上のアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)をもつ化合物を含有することが好ましく、特に1分子中に3つ以上のアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を持った化合物を含有することが更に好ましい。
【0016】
本発明に用いる硬化性の化合物において、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)以外の部位の構造は特に限定されない。分子中にアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含有している市販のエポキシアクリレート(メタクリレート)、ウレタンアクリレート(メタクリレート)、ポリエステルアクリレート(メタクリレート)、ポリエーテルアクリレート(メタクリレート)、シリコーンアクリレート(メタクリレート)、ポリブタジエンアクリレート(メタクリレート)又はポリスチリルアクリレート(メタクリレート)等のモノマーやオリゴマー等が使用可能である。これらの化合物は、単独で使用しても2種類以上混合してもよい。また、上記化合物を他の市販の樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリスチレン樹脂等と混合して用いることも可能である。
【0017】
また、本化合物において良好な電子写真感光体特性を発現させる観点では、硬化後の化合物の誘電率が小さいことが重要であり、本発明に用いる電子写真感光体の最表面層の樹脂としては硬化後の誘電率が1MHzの交流電圧を印加したときの値で4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることが更に好ましい。
【0018】
なぜ本発明の系の、電子線照射によって硬化した化合物を電荷輸送層の最表面層に用いた場合に、十分な硬度を示す上に電荷輸送能等の電子写真感光体特性を劣化させず、繰り返し電位安定性が良いのかに関して、明確な理由は不明であるが、ただ、一つには、感光層においては良好な特性を発現させる上で極性の強い物質又は酸化電位の低い物質は大きな弊害となることが知られていることより、従来の硬化樹脂の系と比較して本発明の保護層の系では、そのような極性の強い物質又は酸化電位の低い物質が硬化反応の過程で生じないか又は非常に少ないことは想像できる。更にまた、同じアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂でもこれを熱又は紫外線で硬化する場合には、熱又は光反応開始剤の添加が必要となり、この硬化樹脂を感光層に用いた場合には残留電位の増加や感度の低下といった電子写真感光体特性の劣化が起こることより、本発明で反応開始剤を用いずに硬化を行っていることも良好な電子写真感光体特性発現のためには有効であるものと考えられる。
【0019】
本発明の電子写真感光体を製造する場合、導電性支持体としてはアルミニウムやステンレス等の金属や合金、紙、プラスチック等が用いられるが、その形状は円筒状シリンダー又はフィルム等が適用される電子写真装置に応じて任意のものとすることができる。
【0020】
本発明においては導電性支持体の上には、バリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
【0021】
下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ及びゼラチン等が知られている。これらは、それぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。その際の膜厚としては0.1〜2μm程度が好ましい。
【0022】
本発明の電荷発生層に用いる電荷発生材料としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε又はX型等の結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンあるいは特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコン等が挙げられる。
【0023】
電荷発生層は、前記の電荷発生材料を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤と共に、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミル等の方法で均一に分散し、分散液を塗布、乾燥されて形成されるか、又は前記電荷発生材料の蒸着膜等、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0024】
また、電荷輸送材料としては、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール及びN,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン及びp−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[キノリル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[6−メトキシ−ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(3)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン及びスピロピラゾリン等のピラゾリン系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール及び2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル−)オキサゾール等のオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズチアゾール等のチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン等のトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス−4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニルエタン等のポリアリールアルカン類等が挙げられる。
【0025】
最表面層である電荷輸送層は、前記の電荷輸送材料とアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂を溶剤に溶解することによって得られた溶解液を塗布、乾燥し、更に電子線照射を行い硬化させることによって形成することが好ましい。アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ樹脂を予め電子線照射を行って硬化させた後、電荷輸送材料と共に溶剤に溶解し、この溶液を塗布、乾燥することによっても本発明の形成は可能であるが、電荷輸送材料の耐析出性の点より塗布、乾燥後、電子線照射により硬化という手順で形成する方が有効である。
【0026】
電荷輸送材料と結着剤樹脂との混合割合は2:1〜1:4程度が好ましく、またその溶剤としてはトルエン、キシレンあるいはモノクロロベンゼン等の芳香族系溶剤の以外、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等のエーテル類、溶質によってはケトン類、アルコール類又は飽和炭化水素類等も使用可能である。この溶解液を塗布する方法は、例えば、浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティング法等が知られている。電子写真感光体を効率良く大量生産するには、浸漬コーティング法が最良である。
【0027】
本発明においては、前述のように電子写真感光体の最表面層樹脂を電子線照射によって硬化する。電子線照射をする場合、加速器としては、スキャニング型、エレクトロカチオン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型等いずれの形式も使用することができる。電子線を照射する場合に、本発明の電子写真感光体においては、電気特性及び耐久性能を発現させる上で照射条件が非常に重要である。本発明において、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、照射線量は好ましくは1Mrad〜100Mradの範囲、より好ましくは3Mrad〜50Mradの範囲である。加速電圧が250KVを超えると電子写真感光体特性に対する電子線照射のダメージが顕著になる。また、照射線量が1Mradよりも少ない場合には硬化が不十分となり、線量が100Mradより多過ぎる場合には電子写真感光体特性の劣化が起こる。
【0028】
電荷発生層上に形成する電荷輸送層は、上記した電荷輸送材料と適当な樹脂を溶剤に溶解することによって得られた溶解液を塗布、乾燥し形成することが好ましい。上記樹脂としては広範囲な結着樹脂から選択でき、市販の樹脂、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリスチレン樹脂等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独又は共重合体ポリマーとして1種又は2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
電荷発生層上に形成する電荷輸送層の電荷輸送材料と結着樹脂との混合割合、溶剤、またこの溶解液を塗布する方法等については、最表面の電荷輸送層で記載した内容と同様である。
【0030】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0031】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0032】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材7に、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー画像が転写手段6により順次転写されていく。
【0033】
トナー画像の転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0034】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0035】
電子写真感光体1の均一帯電手段3としてはコロナ帯電装置が一般に広く使用されていたが、近年オゾン発生の低減、装置の小型化に有利であるという理由から接触帯電装置の使用が広がってきている。中でもローラー状の帯電器を電子写真感光体に接触させるタイプのローラー帯電器は非常に一般的になりつつある。本発明の電子写真感光体はこの接触帯電方式の帯電を行う電子写真装置において、特に優れた耐久性、耐画像流れ、ボケ性を発揮する。
【0036】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0037】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動又は液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0038】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも幅広く適用し得るものである。
【0039】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0040】
(実施例1)
まず、導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料をφ30mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布法で塗布し、140℃で30分間乾燥して、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0041】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗工液を調製した。この塗工液を前記の導電層上に浸漬塗布法によって塗布し、100℃で20分間乾燥し、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
【0042】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレツクBM2、積水化学(株)製)2部及びシクロヘキサノン35部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗工液を調製した。この塗工液を前記中間層上に浸漬塗布法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0043】
次いで、下記式のスチリル化合物である電荷輸送材料10部及びポリカーボネート(重量平均分子量=46000)10部を、ジクロロメタン30部/モノクロロベンゼン60部の混合溶剤中に溶解して溶液を作製し、この溶液を電荷発生層表面に浸漬塗布し、120℃で60分間乾燥させ、膜厚が10μmの電荷輸送層を形成した。
【0044】
【化1】
【0045】
次に、下記式で示されるアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)を含む化合物10部
【0046】
【化2】
をジクロロメタン60部/トルエン120部の混合溶剤中に、先に示した電荷輸送層に含まれるスチリル化合物10部と共に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。この塗料を前記の電荷輸送層上にスプレー塗布で塗布し、120℃で60分間乾燥した後、加速電圧150KV、照射線量30Mradの条件にて電子線を照射し樹脂を硬化することによって、膜厚が10μmの2層目の電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。この時の表面層用樹脂の硬化後の誘電率は3.0であった。
【0047】
作製した電子写真感光体をApple Computer,lnc.製LBPであるLaser Writer 16/600PSに設置し、初期の電子写真感光体特性{E−V特性(露光量に対する電位減衰カーブ)、暗部電位Vd、感度Vl(暗部電位−500V設定で−200Vに光減衰させるために必要な露光量)、残留電位Vsl(電位減衰カーブの裾部のさちり電位)}を測定した。結果を図2、表3に示す。
【0048】
図2に示されるように電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的であり、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せた。この電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性を得ることができ、良好なコピー濃度階調性を発現できた。
【0049】
また、表3に示す通り、他の初期の電子写真感光体特性である暗部電位Vd、残留電位Vslも良好であり、かつ10000枚の画像出し耐久においても良好な画像を出し続けることができた。
【0050】
(実施例2〜5)
電子写真感光体の電荷輸送層に用いる電荷輸送材料及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含む化合物を表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0051】
結果は図2には記載していないが、どの樹脂を用いた場合も実施例1と同等の特性を示し、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的であり、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せた。
【0052】
これらの電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性を得ることができ、良好なコピー濃度階調性を発現できた。また、表3に示す通り、他の初期の電子写真感光体特性である暗部電位Vd、残留電位Vslも良好であり、かつ10000枚の画像出し耐久においても良好な画像を出し続けることができた。
【0053】
【表1】
【0054】
(比較例1)
実施例1における、最表面層の電荷輸送層を設けず電荷発生層上の電荷輸送層の膜厚を20μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0055】
評価した結果、比較例1においては耐久での表面層の削れが大きく、耐久枚数10000枚に達する前に、カブリ等の画像欠陥が発生した。
【0056】
(比較例2)
実施例1の最表面層の電荷輸送層用塗料に下記式の化合物を0.5部添加し、電子線照射の代わりにメタルハライド紫外線照射装置にて800mW/cm2の強度で10秒間紫外線を照射して電荷輸送層を硬化させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を図2、表3に示す。
【0057】
【化3】
【0058】
図2に示されるように電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係は直線的で無く、特に低電位側で裾を引いた状態となった。
【0059】
また、表3に示される評価結果のように、紫外線硬化を行った場合には、本発明と同様の化合物を用いた場合にも、重合開始剤の影響等もあり初期の電子写真感光体特性において感度が極端に悪く、また残留電位が高く、これによって耐久初期より画像が薄く、鮮明な画像が得られなかった。
【0060】
(比較例3)
実施例1の最表面層の電荷輸送層用塗料に下記式の化合物を0.5部添加し、電子線照射の代わりにメタルハライド紫外線照射装置にて800mW/cm2の強度で10秒間紫外線を照射して電荷輸送層を硬化させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0061】
【化4】
【0062】
この電子写真感光体を用いて、上記LBPにて画像出しを行ったところ、トナーの現像濃度の直線性は得られず、コピー濃度階調性の悪いものしか得られなかった。また、耐久での画像評価を行ったところ、残留電位の上昇による、画像濃度薄が発生し、初期画像より更にコピー濃度階調性の悪いサンプルを出力するようになってしまった。
【0063】
(実施例6〜9)
最表面層の電荷輸送層に用いる電荷輸送材料及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含む化合物を表2に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして実施例6〜9の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0064】
いずれの電子写真感光体においても、電子写真感光体特性、耐久特性は実用に耐えうる。しかし表3に見られるように硬化樹脂の比誘電率が4.0を超えると感度低下、残留電位増加の傾向が見られる。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例10〜14)
最表面層の電荷輸送層を塗布後の電子線照射条件を表4に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例10〜14の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0067】
いずれの電子写真感光体においても析出、クラックの発生は観察されず、電子写真感光体特性、耐久特性は実用に耐えうる。しかし表3に見られるように電子線の加速電圧が250KVを超える、又は照射線量が100Mradを超えると感度低下、残留電位の増加の傾向が見られる。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光層であり、電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、最表面層の硬化を電子線照射で行うことを特徴とするものであり、電子写真感光体への露光量と電子写真感光体の表面電位との関係を直線的なものにし、特に低電位側で裾がきれた状態を作り出せ、ひいてはトナーの現像濃度の直線性、良好なコピー濃度階調性を発現することが可能となった。
【0071】
また、本発明の電子写真感光体は最表面層に前記アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有しているため、優れた耐析出性、耐クラック性、耐摩耗性及び耐傷性を有するという優れた効果を奏する。更に、本発明の電子写真感光体は感度や残留電位等の特性も良好であり、繰り返し使用時にも安定した性能を発揮することができる。該電子写真感光体の効果は、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ及び電子写真装置においても当然に該効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体を用いた場合のE−V特性を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
Claims (6)
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型であり、該電荷輸送層が2層以上の積層構成となっており、少なくとも最表面層が電荷輸送化合物及びアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を含有し、該最表面層が電子線照射で硬化されたことを特徴とする電子写真感光体。
- 前記最表面層に用いるアクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を含んだ化合物を電子線照射により硬化した樹脂の比誘電率が4.0以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記最表面層硬化用の電子線の加速電圧が250KV以下である請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記最表面層硬化用の電子線の照射線量が1Mrad〜100Mradである請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体を、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、静電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する現像手段及び転写工程後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成する露光手段、静電潜像の形成された電子写真感光体にトナーで現像する現像手段及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002190208A JP2004037488A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002190208A JP2004037488A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004037488A true JP2004037488A (ja) | 2004-02-05 |
Family
ID=31700189
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002190208A Pending JP2004037488A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004037488A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7473504B2 (en) | 2004-05-25 | 2009-01-06 | Ricoh Company, Ltd. | Electrophotographic photoreceptor, and image forming method, apparatus and process cartridge therefor using the photoreceptor |
US7786057B2 (en) * | 2007-02-08 | 2010-08-31 | Infineum International Limited | Soot dispersants and lubricating oil compositions containing same |
-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002190208A patent/JP2004037488A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7473504B2 (en) | 2004-05-25 | 2009-01-06 | Ricoh Company, Ltd. | Electrophotographic photoreceptor, and image forming method, apparatus and process cartridge therefor using the photoreceptor |
US7786057B2 (en) * | 2007-02-08 | 2010-08-31 | Infineum International Limited | Soot dispersants and lubricating oil compositions containing same |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6436597B2 (en) | Electrophotographic photosensitve member, process for producing electrophotographic photosensitive member, and process cartridge and electrophotographic apparatus which have the electrophotographic photosensitive member | |
JP4630806B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP6433238B2 (ja) | 電子写真感光体、その製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2001166510A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP3897522B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP2007178813A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2005062301A (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2007156081A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2005189765A (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP4143200B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004240305A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 | |
JPH03246551A (ja) | 電子写真感光体及びそれを用いたファクシミリ | |
JP3133548B2 (ja) | 電子写真感光体および該電子写真感光体を備えた電子写真装置 | |
JP4229352B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004037488A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2010164952A (ja) | 電子写真感光体と画像形成装置 | |
JP2007101807A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JPH0540358A (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2004093802A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP2006010816A (ja) | 電子写真感光体、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 | |
JP2001166514A (ja) | 電子写真感光体、電子写真装置、電子写真プロセスカートリッジ及びファクシミリ | |
JP2005227470A (ja) | 電子写真装置及びプロセスカートリッジ | |
JP5258468B2 (ja) | 電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、電子写真装置及びプロセスカートリッジ | |
JP2005055729A (ja) | 電子写真感光体、その製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2005091741A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 |