JP2004036670A - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】故障時切替えバルブ5において、油圧発生源の駆動に基づくライン圧PLを油室5aに入力し、ライン圧PLが供給されるとスプリング5s,5tの付勢力に反してプラグ5q及びスプール本体5pが左半位置に、供給されないとスプリング5sの付勢力によりプラグ5qだけが右半位置に切替えられる。また、故障時であって、クラッチC−1、C−2、ブレーキB−1の油圧サーボ6,7,8に同時に油圧が供給されると、油室5f、5g、5hに油圧が入力されてスプール本体5pに作用し、右半位置に切替えられる。即ち、正常時に油圧発生源の停止に基づきプラグ5qが動かされ、油室5aの油を排出して該油室5aに微小異物が蓄積されないので、たとえ故障が発生した場合でも、作動不良を起こさず右半位置に切替えられる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌等に搭載される自動変速機の油圧制御装置に係り、詳しくは、故障時において、自動変速機が所定の状態になることを防止するために切替えられる故障時切替えバルブを備えた油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動変速機においては、所定の3つの摩擦係合要素(例えばクラッチC1、クラッチC2、及びブレーキB1)が同時に係合することを、通常の変速状態で行わないものがある(例えば入力回転が2つのクラッチより入力される状態、いわゆる直結回転状態でブレーキを作用させることがないため)。このような自動変速機の油圧制御装置においては、故障(以下、「フェール」とする。)時に上述した3つの摩擦係合要素が同時に係合する状態となると、1つの摩擦係合要素(例えばブレーキB1)の供給油圧を遮断するように切替えられて、つまり3つの摩擦係合要素が同時に係合することを防止するフェールセーフ用のバルブが設けられているものがある。
【0003】
従来、このようなフェールセーフ用のバルブは、正常時に作動することがない(切替えを行わない)ように構成し、即ち通常の変速制御では使用せずに、該バルブ自体の故障(いわゆるバルブスティック)の可能性を低くするように構成されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したフェールセーフ用のバルブは、正常な状態であると、一度も切替えられないことになり、長い間正常な状態であることは、かえってバルブスティックを引起す可能性があった。そのような原因の1つとして、長年使用していることによって、例えばバルブにおけるスプールの摩耗などによって発生する摩耗粉など、微小異物がオイルに混入することがあげられる。通常、変速制御などにより常に作動されているバルブにおいては、そのような微小異物が、特にバルブを切替えるための油室に流入しても、その作動によりドレーンポートなどから押し流される形で排出されているが、上述したフェールセーフ用のバルブは、正常時に作動することがないように構成されているため、そのような微小異物が、特に油室内や、該バルブのボディとスプールとの間にある例えば製造上の誤差などによって形成される隙間に蓄積される虞がある。このような原因などから、実際のフェールとなった際に、該バルブが作動不良となってしまう虞があった。
【0005】
そこで本発明は、スプールの少なくとも一部を、油圧発生源の駆動に基づく油圧に対向作用する方向に付勢する付勢手段を設け、もって上記課題を解決する自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る本発明は、正常時に同時に発生することがない複数の油圧を同時に入力した際、故障時位置に切替えられる故障時切替えバルブ(5)を備えた自動変速機の油圧制御装置(1)において、
前記故障時切替えバルブ(5)は、
スプール(5p、5q)と、
油圧発生源の駆動に基づく油圧(例えばPL)を入力して、前記スプール(5p、5q)を一方向に押圧作用させる油室(5a)と、
前記正常時に同時に発生することがない複数の油圧を入力し、前記油室(5a)に入力される油圧(例えばPL)に対向作用する方向に前記スプール(5p、5q)を押圧作用させる複数の対向油室(5f,5g,5h)と、
前記スプール(5p、5q)の少なくとも一部を前記対向作用する方向に付勢する第1の付勢手段(5s)と、を有する、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記スプールは、前記油室(5a)に入力される油圧(例えばPL)により前記一方向に押圧される第1のスプール部(5q)と、前記複数の対向油室(5f,5g,5h)に入力される油圧を受圧する第2のスプール部(5p)と、からなり、
前記第1の付勢手段(5s)は、前記第1のスプール部(5q)を付勢してなる、
請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0008】
請求項3に係る本発明は、前記故障時切替えバルブ(5)は、前記一方向に前記第2のスプール部(5p)を付勢する第2の付勢手段(5t)を有してなる、
請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0009】
請求項4に係る本発明は、前記第1の付勢手段は、前記第1のスプール部(5q)と前記第2のスプール部(5p)との間に介在する第1のスプリング(5s)であり、
前記第2の付勢手段は、前記第1のスプリング(5s)の外周側に配置される第2のスプリング(5t)であり、
前記第2のスプール部(5p)は、前記油室(5a)に入力される油圧(例えばPL)に基づく前記第1のスプール部(5q)からの押圧を受圧する受圧部(5r)を備え、
前記第1のスプリング(5s)は、前記受圧部(5r)に位置決め支持されてなる、
請求項3記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0010】
請求項5に係る本発明は、前記自動変速機は、油圧サーボに供給される供給油圧に基づき係合状態が制御される複数の摩擦係合要素(例えばC−1〜C−3,B−1〜B−4)と、前記複数の摩擦係合要素(例えばC−1〜C−3,B−1〜B−4)の接・断により伝達経路を変更して入力回転を変速出力する歯車機構(10)と、を有してなり、
前記正常時に同時に発生することがない複数の油圧は、前記複数の摩擦係合要素(例えばC−1〜C−3,B−1〜B−4)のうちの所定の3つの摩擦係合要素(C−1,C−2,B−1)の油圧サーボ(6,7,8)に供給される油圧である、
請求項1ないし4のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0011】
請求項6に係る本発明は、前記故障時切替えバルブ(5)は、前記故障時位置にある際に、前記所定の3つの摩擦係合要素(C−1,C−2,B−1)のうちの、1つの摩擦係合要素(例えばB−1)の油圧サーボ(例えば7)に供給する油圧を遮断してなる、
請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0012】
請求項7に係る本発明は、信号圧を出力することにより、前記1つの摩擦係合要素(例えばB−1)の油圧サーボ(例えば7)に油圧を供給するように制御するソレノイドバルブ(SR)を備え、
前記故障時切替えバルブ(5)は、前記故障時位置にある際に、前記1つの摩擦係合要素(例えばB−1)の油圧サーボ(例えば7)に供給される油圧を入力する対向油室(5f)に、前記ソレノイドバルブ(SR)の信号圧を入力してなる、
請求項6記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0013】
請求項8に係る本発明は、前記油圧発生源の駆動に基づく油圧は、ライン圧(PL)である、
請求項1ないし7のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【0015】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明によると、故障時切替えバルブは、油圧発生源の駆動に基づく油圧を入力してスプールを一方向に押圧作用させる油室と、スプールの少なくとも一部を該油室に入力される油圧に対向作用する方向に付勢する第1の付勢手段と、を有しているので、油圧発生源の停止時に第1の付勢手段の付勢によって、スプールの少なくとも一部を動かすことができる。それにより、故障時切替えバルブのバルブスティックの可能性を低くすることができ、故障時に作動不良が生じることを防止することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、スプールは、油室に入力される油圧により一方向に押圧される第1のスプール部と、複数の対向油室に入力される油圧を受圧する第2のスプール部とからなり、第1の付勢手段が、第1のスプール部を付勢するので、油圧発生源の停止時に第1の付勢手段の付勢によって、第1のスプール部を動かすことができる。また、第1の付勢手段により第1のスプール部を付勢して油室の油を排出するので、第2のスプール部の位置、即ち故障時切替えバルブを切替えることなく、該油室の油を排出することができ、該油室に微小異物などが蓄積することを防止することができる。それにより、故障時切替えバルブのバルブスティックの可能性を低くすることができ、故障時に作動不良が生じることを防止することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、故障時切替えバルブは、油室に入力される油圧と同方向に第2のスプール部を付勢する第2の付勢手段を有しているので、第1の付勢手段の付勢により第1のスプール部が移動する際であっても、第2のスプール部の移動を防ぐことができ、該第2のスプール部が中間位置になることを防ぐことができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、第1の付勢手段は第1のスプール部と第2のスプール部との間に介在する第1のスプリングであり、第2の付勢手段は第1のスプリングの外周側に配置される第2のスプリングであって、第2のスプール部に第1のスプール部からの押圧を受圧する受圧部を備えて、第1のスプリングが該受圧部に位置決め支持されるので、組付けの際に第1のスプリングの位置を誤って組付けることや、第1のスプリングの位置ずれを防ぐことができる。
【0019】
請求項5に係る本発明によると、自動変速機は、油圧サーボに供給される供給油圧に基づき係合状態が制御される複数の摩擦係合要素と、複数の摩擦係合要素の接・断により伝達経路を変更して入力回転を変速出力する歯車機構とを有しており、正常時に同時に発生することがない複数の油圧は、複数の摩擦係合要素のうちの所定の3つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給される油圧であるので、それら3つの油圧が同時に作用することにより故障時切替えバルブを故障時位置に切替えることができる。
【0020】
請求項6に係る本発明によると、故障時切替えバルブは、故障時位置にある際に、所定の3つの摩擦係合要素のうちの1つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給する油圧を遮断するので、例えば自動変速機におけるストールが発生することを防止することができ、また、例えばエンジンストップの発生なども防止することができる。
【0021】
請求項7に係る本発明によると、信号圧を出力することにより、1つの摩擦係合要素の油圧サーボに油圧を供給するように制御するソレノイドバルブを備えて、故障時切替えバルブは、故障時位置にある際に、1つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給される油圧を入力する対向油室にソレノイドバルブの信号圧を入力するので、故障時切替えバルブを故障時位置に固定することができ、異音の発生や車両におけるショックの発生を防止することができる。
【0022】
請求項8に係る本発明によると、油圧発生源の駆動に基づく油圧がライン圧であるので、油圧発生源の駆動に連動する形で油室に油圧を作用させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に沿って説明する。図1は本発明を適用し得る自動変速機構を示すスケルトン図、図2は各変速段における摩擦係合要素の係合状態を示す作動表である。
【0024】
例えば車輌等に搭載される自動変速機には、本発明に係る油圧制御装置1と、該油圧制御装置1の油圧制御に基づき複数の摩擦係合要素(例えばクラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1〜B−4)の係合状態が制御されることで例えば前進5速段、後進1速段を形成する自動変速機構(歯車機構)10とが備えられている。
【0025】
図1に示すように、上記自動変速機構10は、入力軸11及び出力軸15を有しており、それら入力軸11及び出力軸15と同軸上に、サンギヤS1とキャリヤCR1とリングギヤR1とを有するダブルピニオンプラネタリギヤ12、サンギヤS2とキャリヤCR2とリングギヤR2とを有するシンプルプラネタリギヤ13、サンギヤS3とキャリヤCR3とリングギヤR3とを有するシンプルプラネタリギヤ14が配設されている。該自動変速機構10の入力側には、内周側にクラッチC−1が、また、2つのクラッチが並設された形の、いわゆるダブルクラッチとしてのクラッチC−2及びクラッチC−3が、それぞれ配設されている。
【0026】
上記クラッチC−3は上記サンギヤS1に接続されており、該サンギヤS1はブレーキB−3の係止によって係合するワンウェイクラッチF−1により一方向の回転が規制される。該サンギヤS1に噛合するキャリヤCR1は、ワンウェイクラッチF−1により一方向の回転が規制されていると共に、ブレーキB−1により固定自在となっている。該キャリヤCR1に噛合するリングギヤR1は、リングギヤR2に接続されており、該リングギヤR1及び該リングギヤR2はブレーキB−2により固定自在となっている。
【0027】
一方、上記クラッチC−2は、上記リングギヤR2に噛合するキャリヤCR2に接続されると共に、該キャリヤCR2はリングギヤR3に接続されており、該キャリヤCR2及び該リングギヤR3はワンウェイクラッチF−3により一方向の回転が規制されていると共に、ブレーキB−4により固定自在となっている。また、上記クラッチC−1は、上記サンギヤS2及びサンギヤS3に接続されており、該サンギヤS2はキャリヤCR2に、該サンギヤS3はキャリヤCR3にそれぞれ噛合している。そして、該キャリヤCR3は、上記リングギヤR3に噛合すると共に出力軸15に接続されている。
【0028】
ついで、上記自動変速機構10の作動について図1及び図2に沿って説明する。前進1速段(1ST)では、図2に示すように、クラッチC−1を係合し、ワンウェイクラッチF−3を作動する。すると、図1に示すように、クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS3に入力されると共に、ワンウェイクラッチF−3によってリングギヤR3の回転が一方向に規制され、入力回転のサンギヤS3と回転が規制されたリングギヤR3とによりキャリヤCR3が減速回転になる。それにより、出力軸15より前進1速段としての正転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は前進1速段を形成する。
【0029】
なお、前進1速段のエンジンブレーキ(コースト)時では、図2に示すように、ワンウェイクラッチF−3に代えてブレーキB−4を係止することでリングギヤR3の空転を防止する形でその回転を固定し、上述と同様に前進1速段を形成する。
【0030】
前進2速段(2ND)では、図2に示すように、クラッチC−1を係合すると共にブレーキB−3を係止し、ワンウェイクラッチF−1及びワンウェイクラッチF−2を作動する。すると、図1に示すように、ブレーキB−3の係止により係合するワンウェイクラッチF−2によってサンギヤS1の回転が一方向に規制されると共に、ワンウェイクラッチF−1によってキャリヤCR1の回転が一方向に規制され、リングギヤR1及びリングギヤR2の回転も一方向に規制される。クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS2に入力されると、入力回転のサンギヤS2と上記回転が規制されたリングギヤR2とによりキャリヤCR2及びリングギヤR3が減速回転となる。更に、クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS3に入力されると、入力回転のサンギヤS3と減速回転のリングギヤR3とによりキャリヤCR3が上記前進1速段より僅かに大きな減速回転となる。それにより、出力軸15より前進2速段としての正転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は前進2速段を形成する。
【0031】
なお、前進2速段のエンジンブレーキ(コースト)時では、図2に示すように、ワンウェイクラッチF−1及びワンウェイクラッチF−2に代えてブレーキB−2を係止することでリングギヤR1及びリングギヤR2の空転を防止する形でその回転を固定し、上述と同様に前進2速段を形成する。
【0032】
前進3速段(3RD)では、図2に示すように、クラッチC−1を係合すると共にクラッチC−3を係合し、ワンウェイクラッチF−1を作動する。すると、図1に示すように、クラッチC−3の係合によりサンギヤS1に入力回転が入力されると共に、ワンウェイクラッチF−1によってキャリヤCR1の回転が一方向に規制され、入力回転のサンギヤS1と回転が規制されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1及びリングギヤR2が減速回転となる。一方、クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS2に入力されると、入力回転のサンギヤS2と上記減速回転のリングギヤR2とによりキャリヤCR2及びリングギヤR3が比較的大きな減速回転となる。更に、クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS3に入力されると、入力回転のサンギヤS3と減速回転のリングギヤR3とによりキャリヤCR3が上記前進2速段より僅かに大きな減速回転となる。それにより、出力軸15より前進3速段としての正転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は前進3速段を形成する。
【0033】
なお、前進3速段のエンジンブレーキ(コースト)時では、図2に示すように、ワンウェイクラッチF−1に代えてブレーキB−1を係止することでキャリヤCR1の空転を防止する形でその回転を固定し、上述と同様に前進3速段を形成する。
【0034】
前進4速段(4TH)では、図2に示すように、クラッチC−1を係合すると共にクラッチC−2を係合する。すると、図1に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2及びリングギヤR3に入力回転が入力されると共に、クラッチC−1を介して入力軸11の回転がサンギヤS3に入力される。すると、入力回転のサンギヤS3と入力回転のリングギヤR3とにより、即ち直結回転となってキャリヤCR3が入力回転となる。それにより、出力軸15より前進4速段としての正転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は前進4速段を形成する。
【0035】
前進5速段(5TH)では、図2に示すように、クラッチC−2を係合すると共にクラッチC−3を係合し、ブレーキB−1を係止する。すると、図1に示すように、クラッチC−3の係合によりサンギヤS1に入力回転が入力されると共に、ブレーキB−1によりキャリヤCR1の回転が固定され、入力回転のサンギヤS1と固定されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1及びリングギヤR2が減速回転となる。一方、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2及びリングギヤR3に入力回転が入力され、入力回転のキャリヤCR2と減速回転のリングギヤR2とによりサンギヤS2及びサンギヤS3が増速回転となる。更に、増速回転のサンギヤS3と入力回転のリングギヤR3とによりキャリヤCR3が増速回転となる。それにより、出力軸15より前進5速段としての正転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は前進5速段を形成する。
【0036】
後進1速段(REV)では、図2に示すように、クラッチC−3を係合すると共にブレーキB−4を係止し、ワンウェイクラッチF−1を作動する。すると、図1に示すように、クラッチC−3の係合によりサンギヤS1に入力回転が入力されると共に、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR1の回転が一方向に規制され、入力回転のサンギヤS1と回転が規制されたキャリヤCR1とによりリングギヤR1及びリングギヤR2が減速回転となる。一方、ブレーキB−4の係止によりキャリヤCR2及びリングギヤR3の回転が固定される。すると、減速回転のリングギヤR2と固定されたキャリヤCR2とによりサンギヤS2及びサンギヤS3が逆転回転となり、逆転回転のサンギヤS3と固定されたリングギヤR3とによりキャリヤCR3が逆転回転となる。それにより、出力軸15より後進1速段としての逆転回転が出力されて、つまり該自動変速機構10は後進1速段を形成する。
【0037】
なお、後進1速段のエンジンブレーキ(コースト)時では、図2に示すように、ワンウェイクラッチF−1に代えてブレーキB−1を係止することでキャリヤCR1の空転を防止し、上述と同様に後進1速段を形成する。
【0038】
つづいて、本発明の要部となる油圧制御装置1について図3及び図4に沿って説明する。図3は本発明に係る油圧制御装置1を示す概略図、図4はB−1アプライコントロールバルブを示す拡大図である。なお、図3及び図4に示す油圧制御装置は、本発明に係る部分を概略的に示したものであり、実際の油圧制御装置1は更に多くのバルブや油路などを有して構成されるものであって、例えば上述した自動変速機構10における複数の摩擦係合要素の係合状態を制御する油圧サーボ、ロックアップクラッチ、潤滑油回路などを油圧制御するものである。
【0039】
図3に示すように、本発明に係る油圧制御装置1には、リニアソレノイドバルブSL1、リニアソレノイドバルブSL2、ソレノイドバルブSR、ブレーキコントロールバルブ2、クラッチアプライコントロールバルブ3、C−1コントロールバルブ4、及びB−1アプライコントロールバルブ5が備えられている。
【0040】
リニアソレノイドバルブSL1は、不図示のモジュレータバルブなどによりライン圧PLを調圧したモジュレータ圧Pmodが入力される入力ポートcを有しており、該リニアソレノイドバルブSL1の制御により調圧された制御圧PSL1を出力する出力ポートdを有している。該出力ポートdには油路d1が接続されており、該油路d1は、C−1コントロールバルブ4の油室4aに接続されている。
【0041】
該C−1コントロールバルブ4は、スプール4pと、上記油路d1を介して油室4aに入力される制御圧PSL1に対向して該スプール4pを付勢するスプリング4sと、を有しており、不図示のマニュアルシフトバルブが前進(D)レンジであると該マニュアルシフトバルブなどを介して前進レンジ時のライン圧PL(D)が入力されるポート4dを有している。更に該C−1コントロールバルブ4は、左半位置であると該ポート4dに連通するポート4bを有しており、該ポート4bには、チェックボール20及び油路j1などを介してクラッチC−1の油圧サーボ6が接続されると共に、油室(フィードバック室)4cに接続されてフィードバック圧を供給している。また、該油路j1には油路j2が接続されており、後述するB−1アプライコントロールバルブ5のポート5gに接続されている。
【0042】
また、リニアソレノイドバルブSL2は、不図示のモジュレータバルブなどによりライン圧PLを調圧したモジュレータ圧Pmodが入力される入力ポートaを有しており、該リニアソレノイドバルブSL2の制御により調圧された制御圧PSL2を出力する出力ポートbを有している。該出力ポートbには油路b1が接続されており、該油路b1は、ブレーキコントロールバルブ2の油室2aに接続されている。
【0043】
一方、ソレノイドバルブSRは、ライン圧PLを入力する入力ポートeを有しており、該ソレノイドバルブSRのオン制御により信号圧Psを出力する出力ポートfを有している。該出力ポートfには油路f1が接続されており、該油路f1は、クラッチアプライコントロールバルブ3の油室3aに接続されている。また、該出力ポートfには、油路f2及び油路f3が接続されており、該油路f2及び該油路f3は、後述するB−1アプライコントロールバルブ5のポート5b及びポート5dに接続されている。なお、ライン圧PLとは、車輌の走行状態(例えば入力トルク)に基づき制御部(不図示)により演算された信号を受けてリニアソレノイドバルブSLT(不図示)が制御圧を出力し、不図示のオイルポンプ(油圧発生源)からの油圧を、該制御圧に基づき制御されたプライマリレギュレータバルブなどによって調圧された油圧である。
【0044】
上記クラッチアプライコントロールバルブ3は、スプール3pと、上記油路f1を介して油室3aに入力される信号圧Psに対向して該スプール3pを付勢するスプリング3sと、を有しており、不図示のマニュアルシフトバルブが前進(D)レンジであると該マニュアルシフトバルブなどを介して前進レンジ時のライン圧PL(D)が入力されるポート3cを有している。更に該クラッチアプライコントロールバルブ3は、左半位置であると該ポート3cに連通するポート3bを有しており、該ポート3bには、油路gが接続されている。また、該クラッチアプライコントロールバルブ3は、油圧が入力されると上記スプリング3sの付勢方向と同方向に押圧作用する油室3dを有しており、該油室3dは、後述するB−1アプライコントロールバルブ5のポート5cに接続されている。そして、該油路gは、上記ブレーキコントロールバルブ2のポート2fに接続されている。
【0045】
上記ブレーキコントロールバルブ2は、スプール2pと、上記油路b1を介して油室2aに入力される制御圧PSL2に対向して該スプール2pを付勢するスプリング2sと、を有しており、右半位置であると、上記油路gに接続されているポート2fに連通するポート2bを有している。該ポート2bには、チェックボール21及び油路h2などを介してブレーキB−1の油圧サーボ7が接続されると共に、油室(フィードバック室)2c及び油室(フィードバック室)2dに接続されてフィードバック圧を供給している。また、該油路h2には油路h1が接続されており、後述するB−1アプライコントロールバルブ5のポート5iに接続されている。
【0046】
そして、本発明の要部となるB−1アプライコントロールバルブ5は、図4に示すように、第1のスプール部5qと第2のスプール部5pとからなるスプールを有しており、キー部材5wによりバルブボディに固定されているスリーブ5vと、該スリーブ5vの内周側にて図4中矢印A−B方向に摺動自在に支持されている第1のスプール部(以下、「プラグ」とする。)5qと、不図示のオイルポンプからの油圧をプライマリレギュレータバルブなどにより調圧したライン圧PLが入力され、該ライン圧に基づき矢印B方向(一方向)にプラグ5qを介して第2のスプール部(以下、「スプール本体」とする。)5pを押圧作用する油室5aと、該油室5aに入力されるライン圧PLに対向して該プラグ5qを矢印A方向に付勢する第1のスプリング(第1の付勢手段)5sと、スプール本体5pを矢印B方向に付勢する第2のスプリング(第2の付勢手段)5tと、を有して構成されている。
【0047】
また、スプール本体5pの図中上方側には、上記ライン圧PLによるプラグ5qの押圧を受圧する受圧部5rが設けられており、第1のスプリング5sが該受圧部5rの下方外周部分に沿って配置される形で位置決め支持されている。これにより、組付けの際に第1のスプリング5sの位置を誤って組付けることや、第1のスプリング5sの位置ずれを防いでいる。
【0048】
図4に示すように、B−1アプライコントロールバルブ5のポート5b及びポート5dは、油路f2及び油路f3を介して上記ソレノイドバルブSRの出力ポートfに接続されており、該ポート5bは、該B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置であるとポート5cに連通し、油路iを介して上記クラッチアプライコントロールバルブ3の油室3dに接続される。また、該ポート5dは、該B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置であるとポート5eに連通し、油路h3を介して油室5fに接続される。更に、ポート5iには、油路h2を介して上記ブレーキB−1の油圧サーボ7が接続されており、該ポート5iは、該B−1アプライコントロールバルブ5が左半位置であると上記ポート5eに連通し、上述と同様に油路h3を介して油室5fに接続される。
【0049】
一方、油室5gには、油路j2を介して上記クラッチC−1の油圧サーボ6が接続されており、また、油室5hには油路kを介して上記クラッチC−2の油圧サーボ8が接続されている。なお、上記スプール本体5pは、油室5fの油圧が作用するランド部5p1、油室5gの油圧が作用するランド部5p2、油室5hの油圧が作用するランド部5p3、が順に外径が小さくなるように形成されており、それら油室5f、油室5g、油室5hに油圧が入力された際に、受圧面積の差によって図中矢印A方向に油圧が作用すると共に、上記B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置にあっても、該B−1アプライコントロールバルブ5の内周面とそれらランド部5p1,5p2,5p3との間に隙間を有し、つまりB−1アプライコントロールバルブ5が右半位置にあっても油室5f、油室5g、油室5hが閉じることがない。
【0050】
ついで、上記油圧制御装置1の作用について説明する。例えば不図示のエンジンなどが駆動されてオイルポンプが駆動すると、ライン圧PLが発生し、B−1アプライコントロールバルブ5の油室5aに供給される。すると、該ライン圧PLの押圧作用により第1のスプリング5sの付勢力に反してプラグ5qが図4中矢印Bで示す方向に押圧され、該B−1アプライコントロールバルブ5は左半位置になる。また、該エンジンが停止されると、ライン圧PLが発生しないため、第1のスプリング5sの付勢力に基づきプラグ5qが矢印A方向に押圧され、該プラグ5qだけが右半位置となり、スプール本体5pは第2のスプリング5tの付勢力に基づき矢印B方向に押圧されて、該B−1アプライコントロールバルブ5は左半位置のままである。なお、このプラグ5qだけが右半位置になる際、第1のスプリング5sの付勢力だけであってもスプール本体5pを矢印B方向に押圧するが、第2のスプリング5tの付勢力があることによって該スプール本体5pの位置が中間位置に移動してしまうことを防いでいる。
【0051】
これにより、該B−1アプライコントロールバルブ5のプラグ5qが、オイルポンプの駆動により左半位置、停止により右半位置に切替えられ、つまり該プラグ5qを動すことができるので、バルブスティックの可能性を低くすることができる。また、特にその切替えにより、プラグ5qが油室5a内に移動する形で、油室5a内の油が該油室5aより排出され、一部がプラグ5qとスリーブ5vとの(製造上の誤差などによる)隙間を介してドレーンポートEXより排出されて、それに伴い微小異物が押し流される形で、微小異物の蓄積を防止することができる。
【0052】
一方、図2に示すように、例えば前進レンジ時であって、前進1速段ないし前進4速段である際は、図3に示すように、上記リニアソレノイドバルブSL1が例えば不図示の制御部などにより制御されて、出力ポートdから制御圧PSL1を出力する。すると、油路d1を介してC−1コントロールバルブ4の油室4aに該制御圧PSL1が入力され、スプリング4sの付勢力に反してスプール4pが該制御圧PSL1に基づき押圧されて、該C−1コントロールバルブ4が該制御圧PSL1に応じて右半位置から左半位置になる。そして、ポート4dとポート4bとが連通して、該ポート4dに入力されている前進レンジ時のライン圧PL(D)が、油路j1を介してクラッチC−1の油圧サーボ6に供給され、該クラッチC−1が係合する。なお、上述のように油室4cには、ポート4bからのフィードバック圧が入力されており、上記ライン圧PL(D)に基づきC−1コントロールバルブ4がフィードバック制御される。
【0053】
また、図2に示すように、例えば前進レンジ時であって、前進4速段及び前進5速段である際は、図3に示すクラッチC−2の油圧サーボ8に、不図示のシフトバルブ等を介して前進レンジ時のライン圧PL(D)が供給され、該クラッチC−2が係合する。
【0054】
更に、図2に示すように、例えば前進レンジ時であって、前進3速段のエンジンブレーキ時及び前進5速段である際は、図3に示すように、上記ソレノイドバルブSRが例えば不図示の制御部などによりオン制御されて、出力ポートfから信号圧Psを出力すると共に、上記リニアソレノイドバルブSL2が例えば不図示の制御部などにより制御されて、出力ポートbから制御圧PSL2を出力する。すると、油路f1を介してクラッチアプライコントロールバルブ3の油室3aに該信号圧Psが入力され、スプリング3sの付勢力に反してスプール3pが押圧されて、該クラッチアプライコントロールバルブ3が左半位置になる。該クラッチアプライコントロールバルブ3が左半位置になると、ポート3cとオート3bとが連通して、該ポート4dに入力されている前進レンジ時のライン圧PL(D)が、該ポート3bを介して油路gに出力される。
【0055】
一方、油路b1を介してブレーキコントロールバルブ2の油室2aに上記制御圧PSL2が入力され、スプリング2sの付勢力に反してスプール2pが該制御圧PSL2に基づき押圧されて、該ブレーキコントロールバルブ2が該制御圧PSL2に応じて左半位置から右半位置になる。そして、ポート2fとポート2bとが連通して、該ポート2fに油路gを介して入力されている前進レンジ時のライン圧PL(D)が、油路h2を介してブレーキB−1の油圧サーボ7に供給され、該ブレーキB−1が係合する。なお、上述のように油室2c及び油室2dには、ポート2bからのフィードバック圧が入力されており、上記ライン圧PL(D)に基づきブレーキコントロールバルブ2がフィードバック制御される。
【0056】
なお、例えば後進レンジ時であって、後進1速段のエンジンブレーキ時である際は、不図示のマニュアルシフトバルブからの後進レンジ時のライン圧PL(R)が、不図示の切替えバルブなどを介してブレーキB−1の油圧サーボ7に供給され、該ブレーキB−1が係合する。
【0057】
図2に示すように、正常時にはクラッチC−1、クラッチC−2及びブレーキB−1が同時に係合することはない。しかしながら、例えば前進5速段である際に、リニアソレノイドバルブSL1の故障(いわゆるソレノイドフェール)やC−1コントロールバルブ4のバルブスティックなどが発生すると、クラッチC−1の油圧サーボ6に油圧が供給される虞がある。また、例えば前進3速段である際に、不図示の3−4シフトバルブのバルブスティックなどが発生すると、クラッチC−2の油圧サーボ8に油圧が供給される虞がある。更に、例えば前進4速段である際に、例えばソレノイドバルブSRの故障(オンフェール)し、かつクラッチアプライコントロールバルブ3がバルブスティックした状態で、リニアソレノイドバルブSL2の故障、又はブレーキコントロールバルブ2のバルブスティック、などが発生すると、ブレーキB−1の油圧サーボ7に油圧が供給される虞がある。
【0058】
このように、例えばクラッチC−1、クラッチC−2及びブレーキB−1が同時に係合する状態(故障時)になると、図1に示すように、入力回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS2に、クラッチC−2を介してキャリヤCR2に、それぞれ入力されて、プラネタリギヤ13は、いわゆる直結回転となり、リングギヤR2も直結状態となる。しかし、ブレーキB−1が係合してキャリヤCR1が固定され、また、ブレーキB−3の係合によりワンウェイクラッチF−2が係合してサンギヤS1が固定されると、リングギヤR1が固定され、つまりリングギヤR2を固定してしまう。すると、自動変速機において、いわゆるストール状態になってしまい、不図示のエンジンの回転を固定する、即ちエンジンストップも発生させる虞がある。
【0059】
そこで、本発明に係る油圧制御装置1においては、例えばクラッチC−1、クラッチC−2及びブレーキB−1が同時に係合する状態になると、図4に示すように、クラッチC−1の油圧サーボ6に供給されている油圧(ライン圧PL(D))が油路j2を介してB−1アプライコントロールバルブ5の油室5gに、クラッチC−2の油圧サーボ8に供給されている油圧(ライン圧PL(D))が油路kを介して油室5hに、ブレーキB−1の油圧サーボ7に供給されている油圧(ライン圧PL(D))が油路h1、ポート5i,5eを介して油室5fに、それぞれ作用し、スプール本体5pを図4中矢印A方向に押圧して、該B−1アプライコントロールバルブ5を右半位置に切替える。
【0060】
すると、図3に示すように、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psが、クラッチアプライコントロールバルブ3の油室3aに入力されると共に、右半位置のB−1アプライコントロールバルブ5におけるポート5bとポート5cとの連通によって、クラッチアプライコントロールバルブ3の油室3dに入力され、つまり両油室3a,3dに信号圧Psが入力される。それにより、該クラッチアプライコントロールバルブ3は、スプリング3sの付勢力に基づいて右半位置となり、ポート3bとポート3cとを遮断することによって油路gに対するライン圧PL(D)の供給を遮断し、該油路g、ブレーキコントロールバルブ2のポート2f,2b、及び油路h2を介して供給されるブレーキB−1の油圧サーボ7の油圧を遮断する。
【0061】
これにより、上述のようなクラッチC−1、クラッチC−2及びブレーキB−1が同時に係合する状態を防止することができ、例えばエンジンがストールするようなことを防止することができる。なお、このようにクラッチC−1、クラッチC−2及びブレーキB−1が同時に係合する状態には、図2に示すように、前進3速段のエンジンブレーキ時、前進4速段、及び前進5速段である際に発生する可能性が大きく、ブレーキB−1の油圧を遮断することは前進4速段になることを意味しているので、特に走行中に上述のような同時係合が発生しても問題なく前進4速段に維持される。
【0062】
また、上記B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置になると、ポート5iとポート5eとは遮断されるが、ポート5dと該ポート5eとが連通し、上記ソレノイドバルブSRからの信号圧Psが、油路f3、ポート5d、ポート5e、及び油路h3を介して油室5fに入力され、つまり、上記遮断されたブレーキB−1の油圧サーボ7からの油圧に代わって、油室5fに信号圧Psが入力される。それにより、油室5gに作用するクラッチC−1の油圧サーボ6の油圧、油室5hに作用するクラッチC−2の油圧サーボ8の油圧が相俟って、該B−1アプライコントロールバルブ5を右半位置に固定することができる。
【0063】
例えば該B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置に固定されないと、ブレーキB−1の油圧サーボ7の油圧がポート5iとポート5eとにより遮断された際に、上記油室5aに入力されているライン圧PLの作用によって該B−1アプライコントロールバルブ5が左半位置になり、再びブレーキB−1の油圧サーボ7に油圧が供給されると共に再び油室5fに該油圧が入力されて、該B−1アプライコントロールバルブ5が右半位置になるような状態を繰り返し、つまりハンチングのようになってしまう。そのため、該B−1アプライコントロールバルブ5において異音が発生すると共に、該ブレーキB−1が係合することによって車輌全体にショックが生じる虞がある。しかしながら、上述のように該B−1アプライコントロールバルブ5が固定されるので、そのような異音や車輌におけるショックを防止することができる。
【0064】
以上のように、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置1によると、油圧発生源の停止時に、スプール本体5pの位置、即ちB−1アプライコントロールバルブ5を切替えることなく、プラグ5qを第1のスプリング5sにより動かすことができる。また、該油室5aの油を排出することができるので、正常時に該油室5aに微小異物などが蓄積することを防止することができる。それにより、バルブスティックの可能性を低くすることができ、故障時に作動不良が生じることを防止することができる。また、油室5aに入力される油圧と同方向にスプール本体5pを付勢する第2のスプリング5tを有しているので、第1のスプリング5sの付勢によりプラグ5qが移動する際であっても、スプール本体5pの移動を防ぐことができ、該スプール本体5pが中間位置になることを防ぐことができる。
【0065】
更に、B−1アプライコントロールバルブ5は、右半位置にある際に、ブレーキB−1の油圧サーボ7に供給する油圧を遮断するので、例えばストールが発生することを防止することができ、エンジンストップなどを防止することができる。また、B−1アプライコントロールバルブ5は、右半位置にある際に、油室5fにソレノイドバルブSRの信号圧Psを入力するので、右半位置に固定することができ、異音の発生や車両におけるショックの発生を防止することができる。
【0066】
なお、以上の本発明に係る実施の形態において、B−1アプライコントロールバルブ5の油室5aに油圧発生源の油圧(ライン圧)を入力しており、該油圧発生源はエンジンに連動して駆動するものとしているが、例えばハイブリッド車両における電動オイルポンプなどであってもよく、この際は、例えばイグニッションキーのオン・オフに基づいて油圧が発生し、B−1アプライコントロールバルブ5が切替えられる。また、油圧発生源としては、この限りでなく、少なくとも走行時に駆動して油圧を発生させ、例えば駐車時やキーを抜いた際などに停止して油圧を供給しないものであれば、何れの油圧発生源であってもよい。
【0067】
また、B−1アプライコントロールバルブ5の油室5aに入力される油圧として、油圧発生源の駆動に連動して発生するライン圧を用いているが、これに限らず、正常時の走行状態である際に該B−1アプライコントロールバルブ5が左半位置であって、走行状態でない際にプラグ5qを右半位置に動かすものであればよく、例えば不図示のマニュアルシフトバルブを介して走行レンジの際に供給される(発生する)、いわゆるレンジ圧(即ち、前進レンジ時のライン圧PL(D)や後進レンジ時のライン圧PL(R))を用いてもよい。この際は、パーキング(P)レンジ、及びニュートラル(N)レンジに切替えられる際にプラグ5qが動かされることになる。
【0068】
更に、本実施の形態では、スプールがプラグ5qとスプール本体5pとからなるものについて説明したが、スプールを一体的に形成したものであってもよく、この際は、油圧発生源の停止時に、スプール全体が動かされ、つまりB−1アプライコントロールバルブ5が切替えられることになる。また、本実施の形態では、油室5aに蓄積される微小異物を排出するため、プラグ5qだけをスプリング5sにより動かしているが、その他の場所(例えば油室5f,5g,5hなど)に微小異物が蓄積されるようなものであれば、スプールのその場所に該当する部分を付勢手段により付勢して動かすようにしてもよい。
【0069】
また、故障時に同時に係合する複数の摩擦係合要素として、クラッチC−1、クラッチC−2、ブレーキB−1を一例に説明したが、これに限らず、正常時に同時に係合することがないものであれば、いずれのものであってもよく、更にB−1アプライコントロールバルブ5を一例に説明しているが、これに限らず、走行中の故障時だけに切替えられるバルブであれば、何れのものであってもよい。
【0070】
更に、故障時の際に発生する自動変速機の状態は、例えばストール状態になるものを説明したが、これに限らず、例えば正常時に同時に係合することがない摩擦係合要素が同時に係合することで、自動変速機に何れかの不都合な状態が生じるものであれば、何れのものであっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用し得る自動変速機構を示すスケルトン図。
【図2】各変速段における摩擦係合要素の係合状態を示す作動表。
【図3】本発明に係る油圧制御装置1を示す概略図。
【図4】B−1アプライコントロールバルブを示す拡大図。
【符号の説明】
1 油圧制御装置
5 故障時切替えバルブ(B−1アプライコントロールバルブ)
5a 油室
5f 対向油室(油室)
5g 対向油室(油室)
5h 対向油室(油室)
5p スプール、第2のスプール部
5q スプール、第1のスプール部
5s 付勢手段、スプリング
6 油圧サーボ
7 油圧サーボ
8 油圧サーボ
10 歯車機構(自動変速機構)
C−1 所定の3つの摩擦係合要素(クラッチ)
C−2 所定の3つの摩擦係合要素(クラッチ)
B−1 所定の3つの摩擦係合要素、1つの摩擦係合要素(ブレーキ)
PL 油圧発生源の油圧(ライン圧)
SR ソレノイドバルブ
Claims (8)
- 正常時に同時に発生することがない複数の油圧を同時に入力した際、故障時位置に切替えられる故障時切替えバルブを備えた自動変速機の油圧制御装置において、
前記故障時切替えバルブは、
スプールと、
油圧発生源の駆動に基づく油圧を入力して、前記スプールを一方向に押圧作用させる油室と、
前記正常時に同時に発生することがない複数の油圧を入力し、前記油室に入力される油圧に対向作用する方向に前記スプールを押圧作用させる複数の対向油室と、
前記スプールの少なくとも一部を前記対向作用する方向に付勢する第1の付勢手段と、を有する、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。 - 前記スプールは、前記油室に入力される油圧により前記一方向に押圧される第1のスプール部と、前記複数の対向油室に入力される油圧を受圧する第2のスプール部と、からなり、
前記第1の付勢手段は、前記第1のスプール部を付勢してなる、
請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 前記故障時切替えバルブは、前記一方向に前記第2のスプール部を付勢する第2の付勢手段を有してなる、
請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 前記第1の付勢手段は、前記第1のスプール部と前記第2のスプール部との間に介在する第1のスプリングであり、
前記第2の付勢手段は、前記第1のスプリングの外周側に配置される第2のスプリングであり、
前記第2のスプール部は、前記油室に入力される油圧に基づく前記第1のスプール部からの押圧を受圧する受圧部を備え、
前記第1のスプリングは、前記受圧部に位置決め支持されてなる、
請求項3記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 前記自動変速機は、油圧サーボに供給される供給油圧に基づき係合状態が制御される複数の摩擦係合要素と、前記複数の摩擦係合要素の接・断により伝達経路を変更して入力回転を変速出力する歯車機構と、を有してなり、
前記正常時に同時に発生することがない複数の油圧は、前記複数の摩擦係合要素のうちの所定の3つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給される油圧である、
請求項1ないし4のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 前記故障時切替えバルブは、前記故障時位置にある際に、前記所定の3つの摩擦係合要素のうちの、1つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給する油圧を遮断してなる、
請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 信号圧を出力することにより、前記1つの摩擦係合要素の油圧サーボに油圧を供給するように制御するソレノイドバルブを備え、
前記故障時切替えバルブは、前記故障時位置にある際に、前記1つの摩擦係合要素の油圧サーボに供給される油圧を入力する対向油室に、前記ソレノイドバルブの信号圧を入力してなる、
請求項6記載の自動変速機の油圧制御装置。 - 前記油圧発生源の駆動に基づく油圧は、ライン圧である、
請求項1ないし7のいずれか記載の自動変速機の油圧制御装置。
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