JP2004036097A - 装飾用仕上げシート、建物の外壁面装飾用仕上げシートおよびコンクリート製プレキャスト部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期に亘る耐久性を有する装飾用仕上げシートを提供すること、外部環境での使用に耐えうる耐久性を有する建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートを提供することにある。
【解決手段】装飾用仕上げシートは、フッ素樹脂フィルムの裏面に、フッ素樹脂インキを用いて印刷層を形成して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側にアクリル樹脂フィルムを熱ラミネートにより積層して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側に着色されたフッ素樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとを熱ラミネートにより積層して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側に着色されたフッ素樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとプラスチック系シートからなる基材とを熱ラミネートにより積層して成る。
【選択図】 図1
【解決手段】装飾用仕上げシートは、フッ素樹脂フィルムの裏面に、フッ素樹脂インキを用いて印刷層を形成して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側にアクリル樹脂フィルムを熱ラミネートにより積層して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側に着色されたフッ素樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとを熱ラミネートにより積層して成る。建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートは、この装飾用仕上げシートの印刷層側に着色されたフッ素樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとプラスチック系シートからなる基材とを熱ラミネートにより積層して成る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、装飾用仕上げシート、建物の外壁面装飾用仕上げシートおよびコンクリート製プレキャスト部材(以下、PCaという)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、壁面装飾用の仕上げシートとしては、塩化ビニール樹脂製シート、オレフィン系樹脂製シート、ポリプロピレン系樹脂製シートなどの表面に図柄、絵柄、写真、文字などで構成される化粧模様から成る意匠を直接印刷したものがよく知られている。
しかし、この壁面装飾用の仕上げシートでは、アクリル樹脂系インキなどを用いているため、数年で意匠が色あせを起こし、充分な耐候性を得ることができず、その用途はほぼ内装に限定されている。
【0003】
そこで、この壁面装飾用の仕上げシートの耐久性を向上するために、シートの表面に透明のフッ素樹脂塗料を塗布したり、フッ素樹脂フィルムを積層したりすることが提案されている(例えば、特許第2890838号公報、特許第3156150号公報、特開平10−16151号公報など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらはシート表面の改質が目的であり、耐候性のないアクリル樹脂系インキなどを用いるため、高々数年の耐久性しかなく、印刷した意匠の色あせを防止することはできなかった。
従って、従来の壁面装飾用の仕上げシートでは、外装材として使用することはできなかった。
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、長期に亘る耐久性を有する装飾用仕上げシートを提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的は、外部環境での使用に耐えうる耐久性を有する建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートを提供することにある。
本発明の別の目的は、外部環境での使用に耐えうる耐久性を有する建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートを備えたPCaの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フッ素樹脂フィルムの裏面に、フッ素樹脂インキを用いて印刷層を形成して成ることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配される着色されたフッ素樹脂フィルムと、このフッ素樹脂フィルムに配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネートまたは接着剤により積層して成ることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネート処理または接着剤により積層して成ることを特徴とする。
【0008】
請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、エンボス加工により凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、繊維層が接着剤または熱ラミネートにより積層されていることを特徴とする。
【0009】
請求項8に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、前記プラスチック系シートと同じ材質の突起物が固着されていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項4ないし請求項8の何れか1項記載の外壁面装飾用仕上げシートの前記プラスチック系シート面に接着剤を塗布した後、その上からコンクリートを流し込むことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1を示す(請求項1に対応する)。
本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、厚さ40μm程度のクリア単層フッ素樹脂フィルム2の裏面2aに、フッ素樹脂インキを用いて任意の意匠を印刷した印刷層3を形成することによって構成されている。
【0011】
ここで、装飾用仕上げシート1の表面を形成するクリア単層フッ素樹脂フィルム2は、装飾用仕上げシート1全体の保護を目的として使用される。本実施形態では、クリア単層フッ素樹脂フィルム2として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂フィルムを用いた。ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムは、耐久性に優れ、表面の汚れに対する易洗浄性が特徴である。
【0012】
また、クリア単層フッ素樹脂フィルム2の裏面2aの印刷に用いるフッ素樹脂インキは、フッ素樹脂に焼成顔料を混入した印刷インキであり、優れた耐候性を有する。このフッ素樹脂インキとしては、例えば、特開平11−35866号公報に記載のフッ素樹脂印刷インキ組成物が知られている。
また、意匠を印刷する手法は、凸版印刷、凹版印刷(グラビア印刷)など任意であるが、グラビア印刷を用いれば、非常に鮮明な印刷仕上がりが得られる。これにより、石目調、木目調、金属パネル調などの柄はもちろん、写真、コンピュータグラフィックスなど自由な意匠が表現可能である。
【0013】
以上のように構成された本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、厚さ40μm程度と非常に薄く、破損しやすいため、コンクリートやモルタル、木製ボードなどに貼り付けるには適していないが、ガラスやプラスチック製ボード、金属パネルなど清浄な表面を有する材料への貼り付けに適している。
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、フッ素樹脂インキにより印刷したとしても、ある程度光が透過するため、特にガラスに貼り付けてガラスに装飾を施す材料として好適である。貼り付けには接着剤や粘着シートを使用し、特に材質は限定しないが、ガラスに貼り付ける方法としては、透明の接着剤や透明の粘着シートの使用、あるいは水貼りなどが適している。また、接着剤や粘着シートが、紫外線や水、温度変化に対して充分な耐久性を有していれば、ガラスの室外側に貼り付けて使用することが可能であるが、そうでない場合はガラスの室内側に貼り付けて使用することが望ましい。
【0014】
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、ガラスの表裏面に対向して貼り付けると、印刷する絵柄によってはガラスの厚みを感じさせる奥行きのある意匠とすることが可能である。
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1によれば、フッ素樹脂インキは、これまで多用されているアクリル樹脂インキと比較すると、フッ素樹脂が紫外線に対して安定であるため、インキの変色、退色はほとんど生じない。JIS K5400−1990「塗料一般試験方法」9.8.1促進耐候性試験(サンシャインカーボンアーク灯式)の結果、3000時間の紫外線照射に対して色差の変化はなく、また表層のクリア単層フッ素樹脂フィルム2の光沢保持率は90%以上であった。
【0015】
なお、本実施形態では、装飾用仕上げシート1の表面を形成するクリア単層フッ素樹脂フィルム2として、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを用いたが、本発明はこれに限らず、フッ素樹脂フィルムであれば良く、特にこれに限定するものではない。例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)樹脂などが使用可能である。
【0016】
図2は、本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を示す(請求項2に対応する)。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に、厚さ0.1〜0.2mm程度のアクリル樹脂フィルム6を熱ラミネートにより積層することによって構成されている。
【0017】
本実施形態において、アクリル樹脂フィルム6を第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に積層する理由は、下記の通りである。
アクリル樹脂フィルム6は、建物の外装用仕上げシート5としての厚みを増して強度と可撓性を付与することができる。
クリア単層フッ素樹脂フィルム2は非常に薄く、そのままでは透けてしまい、建物の外装用仕上げシート5の下にくるコンクリート、金属などの下地の色が支配的になるため、アクリル樹脂フィルム6に全体の色調を決定する役割を担わせることができる。
【0018】
アクリル樹脂フィルム6は、紫外線の透過を遮断するので、下地や接着剤などを保護する役目を担わせることができる。
アクリル樹脂フィルム6は、クリア単層フッ素樹脂フィルム2との相性が良く、熱ラミネートによる一体化が容易であるが、それ以外の材料では、クリア単層フッ素樹脂フィルム2と熱ラミネートが困難であるため、熱ラミネートによる一体化を図る本実施形態では必須の条件となる。
【0019】
次に、このように構成された本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を、打放ししたコンクリート面や押出成形セメント板などに接着剤などを用いて貼り付ける建築の外装用意匠性仕上げ材料として使用する適用例について説明する。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を接着剤でコンクリートに貼り付ける仕様の場合、仕上げ材料として重要な特性は、建物の外装用仕上げシート5の付着特件と建物の外装用仕上げシート5に膨れが発生しないことである。
【0020】
建物の外装用仕上げシート5の膨れは、下地のコンクリート中を水分が建物の外装用仕上げシート5側に移動する際に生じる水蒸気圧によって発生すると推察される。
そこで、建物の外装用仕上げシート5の膨れ防止対策として、▲1▼コンクリートに含浸して硬化するタイプのプライマー(含浸プライマー)を塗布し、圧力を抑制する方法、▲2▼通気タイプのモルタルを塗布し、圧力を緩和する方法の2種類の方法について検討した。
【0021】
図3に示すように、押出し成型セメント板(240×580×60mm)100の上に含浸プライマー(水溶性エポキシ樹脂系)101あるいは通気モルタル(厚さ約2mm、透気係数3.45×10−17cm/sec)102を塗布して、変性アクリル樹脂系接着剤103により建物の外装用仕上げシート5を貼り付けた試験体を作製した。
【0022】
さらに、比較用として、上記▲1▼、▲2▼の対策を施さない試験体(メタクリル酸エステル系プライマー104+変性アクリル樹脂系接着剤103+建物の外装用仕上げシート5)を作製した。
変性アクリル樹脂系接着剤103の硬化後、これらの試験体を40℃の温水に半浸漬させ、シートの付着強度(JIS A6906「建築用仕上塗材」付着強さ試験)の経時変化を測定し、同時にシートの膨れの有無を観察した。
【0023】
実験結果を図4に示す。
対策▲1▼、▲2▼を適用した工法では、付着強度はタイルの付着強度基準である0.4N/mm2以上を確保しており、また試験材齢40日まではシートの膨れは発生しなかった。これは、対策▲1▼では硬化した含浸プライマーが水蒸気圧を抑制し、また対策▲2▼では通気モルタルの端部を通じて水蒸気圧が緩和されたためと考えられる。付着破断は、対策▲1▼の場合が押出し成型セメント板、対策▲2▼の場合は通気モルタルで生じており、下地の強度の差が付着強度の差として現れていると考えられる。
【0024】
これに対し、対策を適用しない工法では、付着強度は0.4N/mm2以上を確保しているものの、試験開始直後にシートの膨れが発生した。シートの膨れは、シートと接着剤の間の剥離によって生じている。シートの剥離面では水分による湿潤が認められたが、これは押出し成型セメント板を移動してきた水蒸気が、硬化した接着剤を透過したことによるものと考えられる。接着剤は、極薄塗りとしているため、硬化しても水蒸気圧を抑制する効果は接着剤には期待できないといえる。
【0025】
以上のことから、シートの膨れを防止するためには、対策▲1▼、▲2▼のように接着剤と下地との間に、水蒸気圧を抑制あるいは緩和する層を設置することが効果的であることが確認された。
従って、例えば、建物の外装用仕上げシート5を貼り付ける下地のコンクリートやセメント板に、孔を下地の裏面まで貫通して穿孔し、通気性を有する材料、例えば連続気泡を多く含むモルタルや不織布などを下地コンクリートやセメント板の上に塗装、設置した後、その上に建物の外装用仕上げシート5を貼り付けるための接着剤、または接着用テープ(接着シート)を塗布、あるいは貼り付けし、その上から建物の外装用仕上げシート5を貼り付けるなどの処置を行えば対応できる。
【0026】
図5は、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5のコンクリートに対する剥離強さを示す。
ここでは、図3と同様に試験体を作製し、建物の外装用仕上げシート5の剥離強さを測定した結果を示す。
図5から明らかなように、容易に剥がすことができない強さ0.4N/mmより大きな強度を発現しており、実用に供することが可能である。
【0027】
図6は、建物の外装用仕上げシート5を粘着シートによりコンクリートに貼り付けた場合の付着強さを示す。
ここでは、図3に示す試験体を作製するに当たり、変性アクリル樹脂系接着剤103に代えてアクリル酸エステル系シートから成る粘着シートを用いた。
この場合においても、基準値0.4N/mm2以上を確保しており、変性アクリル樹脂系接着剤103を用いた場合と同様に使用することが可能である。
【0028】
図7は、図6に示す試験体におけるコンクリートに対する剥離強さを示す。
図7から明らかなように、容易に剥がすことができない強さ0.4N/mmより大きな強度を発現しており、実用に供することが可能である。
図8は、本発明の第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を示す(請求項3に対応する)。
【0029】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1と、この第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に配される厚さ40μm程度の着色されたフッ素樹脂フィルム11と、厚さ0.1〜0.2mm程度のアクリル樹脂フィルム6とを、熱ラミネートにより積層することによって構成されている。
【0030】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1とアクリル樹脂フィルム6との間に着色されたフッ素樹脂フィルム11を積層した点で、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5とは相違する。
着色されたフッ素樹脂フィルム11は、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10全体の色調を決定するために使用されている。従って、着色されたフッ素樹脂フィルム11の色調は、用途目的に応じて任意に設定される。
【0031】
従って、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10によれば、着色されたフッ素樹脂フィルム11によって、微妙な色調を出すことができ、その色調と印刷層3の重ね合わせによって、より鮮明な意匠表現が可能となる。
また、着色されたフッ素樹脂フィルムは、紫外線を遮蔽する効果もあるので、下層にあるアクリル樹脂フィルムやプラスチック系シートに対する耐紫外線をより高めることにもなる。
【0032】
また、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10においても、図4ないし図7に示す付着強さおよび剥離強さにおいても同様の結果を奏することが可能である。
図9は、本発明の第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を示す(請求項5に対応する)。
【0033】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15は、第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側に、厚さ1.0〜2.0mm程度のプラスチック系シート16を熱ラミネートまたはエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤などの接着剤で積層することにより構成されている。
【0034】
ここで、プラスチック系シート16としては、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートが挙げられる。
外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側にプラスチック系シート16を熱ラミネートする場合には、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートは、アクリル樹脂フィルムとの熱ラミネートによる接着性が良いので、外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側に確実に一体化される。
【0035】
また、外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側にプラスチック系シート16を接着剤で積層する場合には、例えば、エチレン酢酸ビニール樹脂系接着剤(水性)が良好な付着性能を発現することが確認できているが、これに限らず、その他の接着剤も使用できる。
このように構成された本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の作用を説明する(請求項9に対応する)。
【0036】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を型枠に敷き、その上からコンクリートを流し込んでPCa部材を製造する場合、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートなどのプラスチック系シート16を積層していることであるので、プラスチック系シート16によって、シワがよったり破れたりしないよう、シートに適度の強度と可撓性を付与することができる。
【0037】
そもそも、アクリル樹脂とコンクリートとの接着性は良くないため、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5や第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を型枠に敷き、その上からコンクリートを流し込んでも、コンクリートの硬化後はシートが容易にコンクリートから剥離してしまう。
しかし、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートなどのプラスチック系シート16は、コンクリートとの接着性が良いため、コンクリートの硬化後、コンクリートから剥離する心配は無い。
【0038】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15は、上述のPCa部材を製造するための使用以外にも、コンクリートやセメント板、金属板、木製板などに、接着剤を用いて貼り付けて使用することも可能である。
また、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15においても、図4ないし図7に示す付着強さおよび剥離強さにおいても同様の結果を奏することが可能である。
【0039】
また、接着剤は、付着力を高めることが期待できるものであれば、エチレン酢酸ビニール系接着剤(水性)に限らず、その他の接着剤を用いても良い。
なお、本実施形態では、第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を使用したが、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を使用することも可能である(請求項4に対応する)。
【0040】
図10は、本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20を示す(請求項6に対応する)。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20は、プラスチック系シート16の全面または一部にエンボス加工により凹凸部21に形成した点で、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15とは相違する。
【0041】
本実施形態によれば、プラスチック系シート16の全面または一部に形成された凸凹部21が、コンクリートとの接触面積を増大して付着効果を高めることができる。
その結果を図11に示す。
図11は、プラスチック系シート16として塩化ビニール樹脂系シートを用い、これにエンボス(凹凸部21)を4mm間隔と0.5mm間隔で設けた場合のデータを示す。
【0042】
なお、本実施形態において、エンボス加工は、予めエンボス加工を施したプラスチック系シート16を用いても、熱ラミネートしながら同時にエンボス加工を施しても良い。
図12は、本発明の第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25を示す(請求項7に対応する)。
【0043】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25は、プラスチック系シート16の全部または一部に不織布、寒冷紗などの繊維層26を形成した点で、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20とは相違する。
本実施形態においては、凹凸部21に代えて繊維層26によってコンクリートとの付着面積をさらに増大させている。
【0044】
ここで、寒冷紗とは、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維などからなる網目状布製品であり、コンクリートとの付着を高めるためには、その網目間隔は2mm程度の桝目が望ましいと考えられる。
図11にその付着強さを示す。
図13は、本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30を示す(請求項8に対応する)。
【0045】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30は、プラスチック系シート16の全部または一部にプラスチック製の突起物31を熱風溶接により固着した点で、第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25とは相違する。
本実施形態においては、凹凸部21および繊維層26に代えて突起部31によってコンクリートとの付着面積をさらに増大させている。
【0046】
ここで、プラスチック製の突起物31は、プラスチック系シート16が塩化ビニール樹脂系シートの場合には塩化ビニール樹脂製の棒を20〜30mmの長さに切断して種々の形状にして熱風溶接することにより形成され、プラスチック系シート16がオレフィン樹脂系シートの場合にはオレフィン樹脂製の棒を20〜30mmの長さに切断して種々の形状にして熱風溶接することにより形成される。
【0047】
また、プラスチック系シート16とプラスチック製の突起物31が塩化ビニール樹脂製であれば、塩化ビニール樹脂製の突起物を溶剤で溶かして、塩化ビニール製シートに固着することもできる。
その一例を図14ないし図19により説明する。
図14は、径が約5mm、長さが約40mmの棒材を中央で約50度折り曲げ、約20mmを溶着したピースタイプを示す。
【0048】
図15は、溶着部がそれぞれ約20mm、ループの高さが20〜30mmのループタイプ−1を示す。
図16は、溶着部がそれぞれ約20mm、ループの高さが30〜40mmのループタイプ−2を示す。
図17は、溶着部がそれぞれ約20mm、ブリッジの高さが約30mmのブリッジタイプを示す。
【0049】
図18は、棒材の全面を溶着した全溶接タイプを示す。
図19は、図14ないし図18に示す5種類の突起物31とコンクリートとの付着強さを示す。このデータから明らかなように、突起物31を設けることにより付着強さが増すことが確認できた。
突起物31の形状はこれらに限らず、例えば、図20に示すように、溶接部分と非溶接部分とを繰り返して波状に溶着したタイプとしても良い。また、溶接棒を連続的に溶接して平行、あるいは格子状に設置したものでも良い。
【0050】
図21および図22は、本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法(請求項9に対応する)により得られたPCaのコンクリートと建物の外装用仕上げシートとの付着強さおよび剥離強さを示す。
本実施形態では、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15と第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20について説明する。
【0051】
先ず、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の場合には、プラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布した後、型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、接着剤のみ(エンボスなし)と記載されている。
次に、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の場合には、2つの方法を実施した。
【0052】
その一は、エンボスを0.5mm間隔で形成したプラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布した後、型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、接着剤のみ(エンボス+接着剤)と記載されている。
その二は、エンボスを0.5mm間隔で形成したプラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布せずに型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、エンボスのみ(接着剤なし)と記載されている。
【0053】
図21および図22から明らかなように、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の場合には、エチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布することにより、付着強さおよび剥離強さが目標値よりを高い値を示しており、コンクリートが硬化した後に強度向上が期待できる。
また、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の場合には、付着強さにおいては、接着剤を用いても用いなくても、目標値より高い値を示した。しかし、剥離強さにおいては、接着剤との併用が望ましいことが確認できた。
【0054】
なお、本実施形態に係るPCaの製造方法では、エンボスを設けたプラスチック系シート16に限らず、第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25や第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30でも同様の効果が期待できる。
すなわち、コンクリートを流し込む前に、突起物31や、プラスチック系シート16の表面に接着剤を塗布し、その後にコンクリートを流し込めば、コンクリートが硬化した後に強度向上が期待できる。
【0055】
なお、接着剤の塗布は、型枠に敷き込む時点の前または後の何れでも良い。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、仕上げ部材がシート材料により構成されているので、石、タイル、金属パネルなどと比較してはるかに軽量であり、PCa外装パネルの軽量化が図られるとともに、PCa外装パネルの製造にともなう労力も大幅に軽減することが可能である。
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、コンクリートの付着は、シート裏面に施したエンボスあるいは繊維層による機械的付着機構、および接着剤の併用などにより面全体として付着する機構となっているので、石、金属パネルのアンカー部分で生じていた応力集中もなく、仕上げ材料の脱落、アンカー部の破損といった心配がない安全な仕上げ材料である。
【0057】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、石、タイルに見られるような色柄のバラツキがなく、常に安定した高品質な仕上げ面を提供することができる。
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、切断、加工が容易であり、パネル製造者の技量によらず安定したPCa外装パネル製品を提供することが可能である。
【0058】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、打込み前の外装用仕上げシート材料の破損などに対しても現地での対応が容易であり、PCa外装用パネル製造工程の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1を示す図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態における試験体の概要を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態における実験結果を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5のコンクリートに対する剥離強さを示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を粘着シートによりコンクリートに貼り付けた場合の付着強さを示す図である。
【図7】図6に示す試験体におけるコンクリートに対する剥離強さを示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を示す図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20を示す図である。
【図11】本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の付着効果を示す図である。
【図12】本発明の第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25を示す図である。
【図13】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30を示す図である。
【図14】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図15】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図16】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図17】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図18】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図19】図14ないし図18に示す5種類の突起物31とコンクリートとの付着強さを示す図である。
【図20】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図21】本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法により得られたコンクリートとの付着強さを示す図である。
【図22】本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法により得られたコンクリートとの剥離強さを示す図である。
【符号の説明】
1 装飾用仕上げシート
2 クリア単層フッ素樹脂フィルム
3 印刷層
5,10,15,20,25,30 建物の外装用仕上げシート
6 アクリル樹脂フィルム
11 着色されたフッ素樹脂フィルム
16 プラスチック系シート
21 凹凸部
26 繊維層
31 突起物
【発明の属する技術分野】
本発明は、装飾用仕上げシート、建物の外壁面装飾用仕上げシートおよびコンクリート製プレキャスト部材(以下、PCaという)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、壁面装飾用の仕上げシートとしては、塩化ビニール樹脂製シート、オレフィン系樹脂製シート、ポリプロピレン系樹脂製シートなどの表面に図柄、絵柄、写真、文字などで構成される化粧模様から成る意匠を直接印刷したものがよく知られている。
しかし、この壁面装飾用の仕上げシートでは、アクリル樹脂系インキなどを用いているため、数年で意匠が色あせを起こし、充分な耐候性を得ることができず、その用途はほぼ内装に限定されている。
【0003】
そこで、この壁面装飾用の仕上げシートの耐久性を向上するために、シートの表面に透明のフッ素樹脂塗料を塗布したり、フッ素樹脂フィルムを積層したりすることが提案されている(例えば、特許第2890838号公報、特許第3156150号公報、特開平10−16151号公報など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらはシート表面の改質が目的であり、耐候性のないアクリル樹脂系インキなどを用いるため、高々数年の耐久性しかなく、印刷した意匠の色あせを防止することはできなかった。
従って、従来の壁面装飾用の仕上げシートでは、外装材として使用することはできなかった。
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、長期に亘る耐久性を有する装飾用仕上げシートを提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的は、外部環境での使用に耐えうる耐久性を有する建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートを提供することにある。
本発明の別の目的は、外部環境での使用に耐えうる耐久性を有する建築の建物の外壁面装飾用仕上げシートを備えたPCaの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フッ素樹脂フィルムの裏面に、フッ素樹脂インキを用いて印刷層を形成して成ることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配される着色されたフッ素樹脂フィルムと、このフッ素樹脂フィルムに配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項2記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネートまたは接着剤により積層して成ることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネート処理または接着剤により積層して成ることを特徴とする。
【0008】
請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、エンボス加工により凹凸形状が形成されていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、繊維層が接着剤または熱ラミネートにより積層されていることを特徴とする。
【0009】
請求項8に係る発明は、請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、前記プラスチック系シートと同じ材質の突起物が固着されていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項4ないし請求項8の何れか1項記載の外壁面装飾用仕上げシートの前記プラスチック系シート面に接着剤を塗布した後、その上からコンクリートを流し込むことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1を示す(請求項1に対応する)。
本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、厚さ40μm程度のクリア単層フッ素樹脂フィルム2の裏面2aに、フッ素樹脂インキを用いて任意の意匠を印刷した印刷層3を形成することによって構成されている。
【0011】
ここで、装飾用仕上げシート1の表面を形成するクリア単層フッ素樹脂フィルム2は、装飾用仕上げシート1全体の保護を目的として使用される。本実施形態では、クリア単層フッ素樹脂フィルム2として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂フィルムを用いた。ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムは、耐久性に優れ、表面の汚れに対する易洗浄性が特徴である。
【0012】
また、クリア単層フッ素樹脂フィルム2の裏面2aの印刷に用いるフッ素樹脂インキは、フッ素樹脂に焼成顔料を混入した印刷インキであり、優れた耐候性を有する。このフッ素樹脂インキとしては、例えば、特開平11−35866号公報に記載のフッ素樹脂印刷インキ組成物が知られている。
また、意匠を印刷する手法は、凸版印刷、凹版印刷(グラビア印刷)など任意であるが、グラビア印刷を用いれば、非常に鮮明な印刷仕上がりが得られる。これにより、石目調、木目調、金属パネル調などの柄はもちろん、写真、コンピュータグラフィックスなど自由な意匠が表現可能である。
【0013】
以上のように構成された本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、厚さ40μm程度と非常に薄く、破損しやすいため、コンクリートやモルタル、木製ボードなどに貼り付けるには適していないが、ガラスやプラスチック製ボード、金属パネルなど清浄な表面を有する材料への貼り付けに適している。
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、フッ素樹脂インキにより印刷したとしても、ある程度光が透過するため、特にガラスに貼り付けてガラスに装飾を施す材料として好適である。貼り付けには接着剤や粘着シートを使用し、特に材質は限定しないが、ガラスに貼り付ける方法としては、透明の接着剤や透明の粘着シートの使用、あるいは水貼りなどが適している。また、接着剤や粘着シートが、紫外線や水、温度変化に対して充分な耐久性を有していれば、ガラスの室外側に貼り付けて使用することが可能であるが、そうでない場合はガラスの室内側に貼り付けて使用することが望ましい。
【0014】
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1は、ガラスの表裏面に対向して貼り付けると、印刷する絵柄によってはガラスの厚みを感じさせる奥行きのある意匠とすることが可能である。
また、本実施形態に係る装飾用仕上げシート1によれば、フッ素樹脂インキは、これまで多用されているアクリル樹脂インキと比較すると、フッ素樹脂が紫外線に対して安定であるため、インキの変色、退色はほとんど生じない。JIS K5400−1990「塗料一般試験方法」9.8.1促進耐候性試験(サンシャインカーボンアーク灯式)の結果、3000時間の紫外線照射に対して色差の変化はなく、また表層のクリア単層フッ素樹脂フィルム2の光沢保持率は90%以上であった。
【0015】
なお、本実施形態では、装飾用仕上げシート1の表面を形成するクリア単層フッ素樹脂フィルム2として、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを用いたが、本発明はこれに限らず、フッ素樹脂フィルムであれば良く、特にこれに限定するものではない。例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)樹脂などが使用可能である。
【0016】
図2は、本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を示す(請求項2に対応する)。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に、厚さ0.1〜0.2mm程度のアクリル樹脂フィルム6を熱ラミネートにより積層することによって構成されている。
【0017】
本実施形態において、アクリル樹脂フィルム6を第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に積層する理由は、下記の通りである。
アクリル樹脂フィルム6は、建物の外装用仕上げシート5としての厚みを増して強度と可撓性を付与することができる。
クリア単層フッ素樹脂フィルム2は非常に薄く、そのままでは透けてしまい、建物の外装用仕上げシート5の下にくるコンクリート、金属などの下地の色が支配的になるため、アクリル樹脂フィルム6に全体の色調を決定する役割を担わせることができる。
【0018】
アクリル樹脂フィルム6は、紫外線の透過を遮断するので、下地や接着剤などを保護する役目を担わせることができる。
アクリル樹脂フィルム6は、クリア単層フッ素樹脂フィルム2との相性が良く、熱ラミネートによる一体化が容易であるが、それ以外の材料では、クリア単層フッ素樹脂フィルム2と熱ラミネートが困難であるため、熱ラミネートによる一体化を図る本実施形態では必須の条件となる。
【0019】
次に、このように構成された本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を、打放ししたコンクリート面や押出成形セメント板などに接着剤などを用いて貼り付ける建築の外装用意匠性仕上げ材料として使用する適用例について説明する。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を接着剤でコンクリートに貼り付ける仕様の場合、仕上げ材料として重要な特性は、建物の外装用仕上げシート5の付着特件と建物の外装用仕上げシート5に膨れが発生しないことである。
【0020】
建物の外装用仕上げシート5の膨れは、下地のコンクリート中を水分が建物の外装用仕上げシート5側に移動する際に生じる水蒸気圧によって発生すると推察される。
そこで、建物の外装用仕上げシート5の膨れ防止対策として、▲1▼コンクリートに含浸して硬化するタイプのプライマー(含浸プライマー)を塗布し、圧力を抑制する方法、▲2▼通気タイプのモルタルを塗布し、圧力を緩和する方法の2種類の方法について検討した。
【0021】
図3に示すように、押出し成型セメント板(240×580×60mm)100の上に含浸プライマー(水溶性エポキシ樹脂系)101あるいは通気モルタル(厚さ約2mm、透気係数3.45×10−17cm/sec)102を塗布して、変性アクリル樹脂系接着剤103により建物の外装用仕上げシート5を貼り付けた試験体を作製した。
【0022】
さらに、比較用として、上記▲1▼、▲2▼の対策を施さない試験体(メタクリル酸エステル系プライマー104+変性アクリル樹脂系接着剤103+建物の外装用仕上げシート5)を作製した。
変性アクリル樹脂系接着剤103の硬化後、これらの試験体を40℃の温水に半浸漬させ、シートの付着強度(JIS A6906「建築用仕上塗材」付着強さ試験)の経時変化を測定し、同時にシートの膨れの有無を観察した。
【0023】
実験結果を図4に示す。
対策▲1▼、▲2▼を適用した工法では、付着強度はタイルの付着強度基準である0.4N/mm2以上を確保しており、また試験材齢40日まではシートの膨れは発生しなかった。これは、対策▲1▼では硬化した含浸プライマーが水蒸気圧を抑制し、また対策▲2▼では通気モルタルの端部を通じて水蒸気圧が緩和されたためと考えられる。付着破断は、対策▲1▼の場合が押出し成型セメント板、対策▲2▼の場合は通気モルタルで生じており、下地の強度の差が付着強度の差として現れていると考えられる。
【0024】
これに対し、対策を適用しない工法では、付着強度は0.4N/mm2以上を確保しているものの、試験開始直後にシートの膨れが発生した。シートの膨れは、シートと接着剤の間の剥離によって生じている。シートの剥離面では水分による湿潤が認められたが、これは押出し成型セメント板を移動してきた水蒸気が、硬化した接着剤を透過したことによるものと考えられる。接着剤は、極薄塗りとしているため、硬化しても水蒸気圧を抑制する効果は接着剤には期待できないといえる。
【0025】
以上のことから、シートの膨れを防止するためには、対策▲1▼、▲2▼のように接着剤と下地との間に、水蒸気圧を抑制あるいは緩和する層を設置することが効果的であることが確認された。
従って、例えば、建物の外装用仕上げシート5を貼り付ける下地のコンクリートやセメント板に、孔を下地の裏面まで貫通して穿孔し、通気性を有する材料、例えば連続気泡を多く含むモルタルや不織布などを下地コンクリートやセメント板の上に塗装、設置した後、その上に建物の外装用仕上げシート5を貼り付けるための接着剤、または接着用テープ(接着シート)を塗布、あるいは貼り付けし、その上から建物の外装用仕上げシート5を貼り付けるなどの処置を行えば対応できる。
【0026】
図5は、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5のコンクリートに対する剥離強さを示す。
ここでは、図3と同様に試験体を作製し、建物の外装用仕上げシート5の剥離強さを測定した結果を示す。
図5から明らかなように、容易に剥がすことができない強さ0.4N/mmより大きな強度を発現しており、実用に供することが可能である。
【0027】
図6は、建物の外装用仕上げシート5を粘着シートによりコンクリートに貼り付けた場合の付着強さを示す。
ここでは、図3に示す試験体を作製するに当たり、変性アクリル樹脂系接着剤103に代えてアクリル酸エステル系シートから成る粘着シートを用いた。
この場合においても、基準値0.4N/mm2以上を確保しており、変性アクリル樹脂系接着剤103を用いた場合と同様に使用することが可能である。
【0028】
図7は、図6に示す試験体におけるコンクリートに対する剥離強さを示す。
図7から明らかなように、容易に剥がすことができない強さ0.4N/mmより大きな強度を発現しており、実用に供することが可能である。
図8は、本発明の第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を示す(請求項3に対応する)。
【0029】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1と、この第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1の印刷層3の裏面3a側に配される厚さ40μm程度の着色されたフッ素樹脂フィルム11と、厚さ0.1〜0.2mm程度のアクリル樹脂フィルム6とを、熱ラミネートにより積層することによって構成されている。
【0030】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10は、第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1とアクリル樹脂フィルム6との間に着色されたフッ素樹脂フィルム11を積層した点で、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5とは相違する。
着色されたフッ素樹脂フィルム11は、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10全体の色調を決定するために使用されている。従って、着色されたフッ素樹脂フィルム11の色調は、用途目的に応じて任意に設定される。
【0031】
従って、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10によれば、着色されたフッ素樹脂フィルム11によって、微妙な色調を出すことができ、その色調と印刷層3の重ね合わせによって、より鮮明な意匠表現が可能となる。
また、着色されたフッ素樹脂フィルムは、紫外線を遮蔽する効果もあるので、下層にあるアクリル樹脂フィルムやプラスチック系シートに対する耐紫外線をより高めることにもなる。
【0032】
また、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10においても、図4ないし図7に示す付着強さおよび剥離強さにおいても同様の結果を奏することが可能である。
図9は、本発明の第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を示す(請求項5に対応する)。
【0033】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15は、第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側に、厚さ1.0〜2.0mm程度のプラスチック系シート16を熱ラミネートまたはエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤などの接着剤で積層することにより構成されている。
【0034】
ここで、プラスチック系シート16としては、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートが挙げられる。
外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側にプラスチック系シート16を熱ラミネートする場合には、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートは、アクリル樹脂フィルムとの熱ラミネートによる接着性が良いので、外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側に確実に一体化される。
【0035】
また、外装用仕上げシート10のアクリル樹脂フィルム6の裏面6a側にプラスチック系シート16を接着剤で積層する場合には、例えば、エチレン酢酸ビニール樹脂系接着剤(水性)が良好な付着性能を発現することが確認できているが、これに限らず、その他の接着剤も使用できる。
このように構成された本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の作用を説明する(請求項9に対応する)。
【0036】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を型枠に敷き、その上からコンクリートを流し込んでPCa部材を製造する場合、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートなどのプラスチック系シート16を積層していることであるので、プラスチック系シート16によって、シワがよったり破れたりしないよう、シートに適度の強度と可撓性を付与することができる。
【0037】
そもそも、アクリル樹脂とコンクリートとの接着性は良くないため、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5や第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を型枠に敷き、その上からコンクリートを流し込んでも、コンクリートの硬化後はシートが容易にコンクリートから剥離してしまう。
しかし、塩化ビニール樹脂系シートや酢酸ビニール樹脂系シートなどのプラスチック系シート16は、コンクリートとの接着性が良いため、コンクリートの硬化後、コンクリートから剥離する心配は無い。
【0038】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15は、上述のPCa部材を製造するための使用以外にも、コンクリートやセメント板、金属板、木製板などに、接着剤を用いて貼り付けて使用することも可能である。
また、本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15においても、図4ないし図7に示す付着強さおよび剥離強さにおいても同様の結果を奏することが可能である。
【0039】
また、接着剤は、付着力を高めることが期待できるものであれば、エチレン酢酸ビニール系接着剤(水性)に限らず、その他の接着剤を用いても良い。
なお、本実施形態では、第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を使用したが、第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を使用することも可能である(請求項4に対応する)。
【0040】
図10は、本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20を示す(請求項6に対応する)。
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20は、プラスチック系シート16の全面または一部にエンボス加工により凹凸部21に形成した点で、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15とは相違する。
【0041】
本実施形態によれば、プラスチック系シート16の全面または一部に形成された凸凹部21が、コンクリートとの接触面積を増大して付着効果を高めることができる。
その結果を図11に示す。
図11は、プラスチック系シート16として塩化ビニール樹脂系シートを用い、これにエンボス(凹凸部21)を4mm間隔と0.5mm間隔で設けた場合のデータを示す。
【0042】
なお、本実施形態において、エンボス加工は、予めエンボス加工を施したプラスチック系シート16を用いても、熱ラミネートしながら同時にエンボス加工を施しても良い。
図12は、本発明の第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25を示す(請求項7に対応する)。
【0043】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25は、プラスチック系シート16の全部または一部に不織布、寒冷紗などの繊維層26を形成した点で、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20とは相違する。
本実施形態においては、凹凸部21に代えて繊維層26によってコンクリートとの付着面積をさらに増大させている。
【0044】
ここで、寒冷紗とは、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維などからなる網目状布製品であり、コンクリートとの付着を高めるためには、その網目間隔は2mm程度の桝目が望ましいと考えられる。
図11にその付着強さを示す。
図13は、本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30を示す(請求項8に対応する)。
【0045】
本実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30は、プラスチック系シート16の全部または一部にプラスチック製の突起物31を熱風溶接により固着した点で、第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25とは相違する。
本実施形態においては、凹凸部21および繊維層26に代えて突起部31によってコンクリートとの付着面積をさらに増大させている。
【0046】
ここで、プラスチック製の突起物31は、プラスチック系シート16が塩化ビニール樹脂系シートの場合には塩化ビニール樹脂製の棒を20〜30mmの長さに切断して種々の形状にして熱風溶接することにより形成され、プラスチック系シート16がオレフィン樹脂系シートの場合にはオレフィン樹脂製の棒を20〜30mmの長さに切断して種々の形状にして熱風溶接することにより形成される。
【0047】
また、プラスチック系シート16とプラスチック製の突起物31が塩化ビニール樹脂製であれば、塩化ビニール樹脂製の突起物を溶剤で溶かして、塩化ビニール製シートに固着することもできる。
その一例を図14ないし図19により説明する。
図14は、径が約5mm、長さが約40mmの棒材を中央で約50度折り曲げ、約20mmを溶着したピースタイプを示す。
【0048】
図15は、溶着部がそれぞれ約20mm、ループの高さが20〜30mmのループタイプ−1を示す。
図16は、溶着部がそれぞれ約20mm、ループの高さが30〜40mmのループタイプ−2を示す。
図17は、溶着部がそれぞれ約20mm、ブリッジの高さが約30mmのブリッジタイプを示す。
【0049】
図18は、棒材の全面を溶着した全溶接タイプを示す。
図19は、図14ないし図18に示す5種類の突起物31とコンクリートとの付着強さを示す。このデータから明らかなように、突起物31を設けることにより付着強さが増すことが確認できた。
突起物31の形状はこれらに限らず、例えば、図20に示すように、溶接部分と非溶接部分とを繰り返して波状に溶着したタイプとしても良い。また、溶接棒を連続的に溶接して平行、あるいは格子状に設置したものでも良い。
【0050】
図21および図22は、本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法(請求項9に対応する)により得られたPCaのコンクリートと建物の外装用仕上げシートとの付着強さおよび剥離強さを示す。
本実施形態では、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15と第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20について説明する。
【0051】
先ず、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の場合には、プラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布した後、型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、接着剤のみ(エンボスなし)と記載されている。
次に、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の場合には、2つの方法を実施した。
【0052】
その一は、エンボスを0.5mm間隔で形成したプラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布した後、型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、接着剤のみ(エンボス+接着剤)と記載されている。
その二は、エンボスを0.5mm間隔で形成したプラスチック系シート16にエチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布せずに型枠に敷き、コンクリートを流し込んでPCaを製造した。図21および図22において、エンボスのみ(接着剤なし)と記載されている。
【0053】
図21および図22から明らかなように、第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15の場合には、エチレン酢酸ビニール系接着剤を塗布することにより、付着強さおよび剥離強さが目標値よりを高い値を示しており、コンクリートが硬化した後に強度向上が期待できる。
また、第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の場合には、付着強さにおいては、接着剤を用いても用いなくても、目標値より高い値を示した。しかし、剥離強さにおいては、接着剤との併用が望ましいことが確認できた。
【0054】
なお、本実施形態に係るPCaの製造方法では、エンボスを設けたプラスチック系シート16に限らず、第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25や第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30でも同様の効果が期待できる。
すなわち、コンクリートを流し込む前に、突起物31や、プラスチック系シート16の表面に接着剤を塗布し、その後にコンクリートを流し込めば、コンクリートが硬化した後に強度向上が期待できる。
【0055】
なお、接着剤の塗布は、型枠に敷き込む時点の前または後の何れでも良い。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、仕上げ部材がシート材料により構成されているので、石、タイル、金属パネルなどと比較してはるかに軽量であり、PCa外装パネルの軽量化が図られるとともに、PCa外装パネルの製造にともなう労力も大幅に軽減することが可能である。
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、コンクリートの付着は、シート裏面に施したエンボスあるいは繊維層による機械的付着機構、および接着剤の併用などにより面全体として付着する機構となっているので、石、金属パネルのアンカー部分で生じていた応力集中もなく、仕上げ材料の脱落、アンカー部の破損といった心配がない安全な仕上げ材料である。
【0057】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、石、タイルに見られるような色柄のバラツキがなく、常に安定した高品質な仕上げ面を提供することができる。
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、切断、加工が容易であり、パネル製造者の技量によらず安定したPCa外装パネル製品を提供することが可能である。
【0058】
本発明に係る建物の外装用仕上げシートによれば、打込み前の外装用仕上げシート材料の破損などに対しても現地での対応が容易であり、PCa外装用パネル製造工程の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る装飾用仕上げシート1を示す図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態における試験体の概要を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態における実験結果を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5のコンクリートに対する剥離強さを示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る建物の外装用仕上げシート5を粘着シートによりコンクリートに貼り付けた場合の付着強さを示す図である。
【図7】図6に示す試験体におけるコンクリートに対する剥離強さを示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る建物の外装用仕上げシート10を示す図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係る建物の外装用仕上げシート15を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20を示す図である。
【図11】本発明の第五実施形態に係る建物の外装用仕上げシート20の付着効果を示す図である。
【図12】本発明の第六実施形態に係る建物の外装用仕上げシート25を示す図である。
【図13】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30を示す図である。
【図14】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図15】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図16】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図17】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図18】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図19】図14ないし図18に示す5種類の突起物31とコンクリートとの付着強さを示す図である。
【図20】本発明の第七実施形態に係る建物の外装用仕上げシート30における突起物の例を示す図である。
【図21】本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法により得られたコンクリートとの付着強さを示す図である。
【図22】本発明の第八実施形態に係るPCaの製造方法により得られたコンクリートとの剥離強さを示す図である。
【符号の説明】
1 装飾用仕上げシート
2 クリア単層フッ素樹脂フィルム
3 印刷層
5,10,15,20,25,30 建物の外装用仕上げシート
6 アクリル樹脂フィルム
11 着色されたフッ素樹脂フィルム
16 プラスチック系シート
21 凹凸部
26 繊維層
31 突起物
Claims (9)
- フッ素樹脂フィルムの裏面に、フッ素樹脂インキを用いて印刷層を形成して成ることを特徴とする装飾用仕上げシート。
- 請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項1記載の装飾用仕上げシートと、この装飾用仕上げシートの前記印刷層側に配される着色されたフッ素樹脂フィルムと、このフッ素樹脂フィルムに配されるアクリル樹脂フィルムとを、熱ラミネートにより積層して成ることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項2記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネートまたは接着剤により積層して成ることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項3記載の建物の外壁面装飾用仕上げシートと、この建物の外壁面装飾用仕上げシートのアクリル樹脂フィルム側に配されるプラスチック系シートからなる基材とを、熱ラミネート処理または接着剤により積層して成ることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、エンボス加工により凹凸形状が形成されていることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、繊維層が接着剤または熱ラミネートにより積層されていることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項4または請求項5記載の外壁面装飾用仕上げシートにおいて、前記プラスチック系シートには、前記プラスチック系シートと同じ材質の突起物が固着されていることを特徴とする建物の外壁面装飾用仕上げシート。
- 請求項4ないし請求項8の何れか1項記載の外壁面装飾用仕上げシートの前記プラスチック系シート面に接着剤を塗布した後、その上からコンクリートを流し込むことを特徴とするコンクリート製プレキャスト部材の製造方法。
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