JP2004035401A - セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法 - Google Patents

セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004035401A
JP2004035401A JP2003296304A JP2003296304A JP2004035401A JP 2004035401 A JP2004035401 A JP 2004035401A JP 2003296304 A JP2003296304 A JP 2003296304A JP 2003296304 A JP2003296304 A JP 2003296304A JP 2004035401 A JP2004035401 A JP 2004035401A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
single crystal
magnetic garnet
containing cerium
garnet single
cerium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003296304A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Fujii
藤井 高志
Yuutoku Sekijima
関島 雄徳
Kikuo Wakino
脇野 喜久男
Masakatsu Okada
岡田 正勝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Murata Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Murata Manufacturing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Murata Manufacturing Co Ltd filed Critical Murata Manufacturing Co Ltd
Priority to JP2003296304A priority Critical patent/JP2004035401A/ja
Publication of JP2004035401A publication Critical patent/JP2004035401A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

【課題】 アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることのできる大きさを有する、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶セリウムは、セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を融帯と固体との固液界面に急峻でかつ大きな温度勾配を与えながら加熱溶融した後に冷却凝固させることにより得られる。多結晶体の加熱は、光学的加熱装置を用いることが好ましく、たとえばレーザー光を用いた主加熱装置12,14a,14b,16a,16bと、ハロゲンランプ20a,20bの反射光を用いた補助加熱装置18とを組み合わせたものが用いられる。
【選択図】  図1

Description

 この発明はセリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法に関し、特に、光磁気光学素子用材料や静磁波素子用材料として用いられ、たとえば光アイソレータなどの光通信用や光記録用に用いられる、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法に関する。
  従来、光通信の重要なデバイスである光アイソレータの材料としては、その使用波長帯での光の吸収の少ないこと、大きなファラデー効果を有すること、および温度変動の小さいことが求められている。従来から、これらの条件を満たす材料としてイットリウム・鉄・ガーネット単結晶(Y3Fe512:以下「YIG」と略称する)を代表とする鉄を含む磁性ガーネット単結晶が開発されている。
このYIGは、いわゆる分解溶融型の化合物であり、合致溶融組成の原料から直接YIG単結晶を得ることができない。そのため、フラックス法を用いてYIG単結晶を作製するのが一般的である。また、YIG単体ではファラデー回転角が小さく、ファラデー回転角の温度依存性が大きいという欠点があるため、従来より、前者の解決策としてYのサイトにBiを置換し、後者の解決策としてYサイトにGdなどの希土類元素を置換することが行われている。
 ところで、近年、スパッタ法でCe3+をYIG単結晶のY3+に置換すると大きなファラデー効果の得られることが見い出された。しかし、YサイトにCeを置換した磁性ガーネット単結晶(以下「Ce:YIG」と略記する)を製造する場合に、スパッタ法では、厚さが1〜2μm程度の膜しか作成できず、光通信や電子デバイスの材料として用いるには不十分であるという問題があった。そこで、膜厚の厚いCe:YIGを得るために、従来のアイソレータ材料であるBiおよびGdをYに置換した磁性ガーネット材料(以下「BiGd:YIG」と略記する)と同様の方法でCe:YIGを製造することが試みられている。
これを説明するために、まず、BiGd:YIGの製造方法について以下に説明する。
 YIGは、いわゆる分解溶融化合物として知られており、YIGを昇温すると、約1570℃で分解する。そして、YIGの化学量論組成の融液をそのまま凝固させてもYIGを得ることはできず、オルソフェライトと酸化鉄の混合物となる。
そのため、BiGd:YIG単結晶を作製するためには、フラックス法,フローティング法、液相成長法などの方法がとられる。たとえばフラックス法では、酸化鉛(PbO)と三酸化二硼素(B23)と混合した溶媒に、三酸化二鉄(Fe23)、三酸化二イットリウム(Y23)、三酸化二ビスマス(Bi23)および三酸化二ガドリニウム(Gd23)を溶質として溶かし込んだ溶液を準備し、この溶液に、種結晶を入れて除冷することによりバルク結晶が得られる。また、フローティング法の一種であるTSFZ法によっても同様にバルク結晶が得られる。一方、液相成長法(Liquid Phase Epitaxy法:以下「LPE法」と略記する)では、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(Gd3Ga512:以下「GGG」と略記する)単結晶基板上に、YIG単結晶薄膜を成長させることにより、YIG単結晶膜が得られる。
 そこで、光通信や電子デバイスの材料に用いることのできる大きさを有するCe:YIG単結晶を製造するために、上述の各方法が試みられた。しかし、たとえばLPE法では、YIG中へのCeの取り込み量が少なく、また、Ceが3価のイオンとしては取り込まれず、4価のイオンとして結晶中に取り込まれてしまうため、ファラデー効果が全く得られず、しかも、光吸収が大きくなって光学用材料としては不適になるという問題があった。このことは、フラックス法やTSFZ法によって得られた結晶においても同様であった。
 したがって、従来は、Ce:YIGは、スパッタ法によるGGG基板上の薄膜単結晶としてしか得られておらず、Ceを含む磁性ガーネット単結晶については、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることのできる大きさを有する単結晶を製造することができなかった。
 それゆえに、この発明の主たる目的は、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることのできる、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法を提供することである。
 本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶は、セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を固液界面に、500℃/10mmよりも大きい温度勾配を与えながら加熱溶融させた後、冷却凝固させることにより得られる、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶である。本発明によれば、従来得られなかった大きさのセリウムを含む磁性ガーネット単結晶が得られる。得られた単結晶は、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることができる。
 また、本発明において、原材料となる多結晶体は、一般式Cex3-xyFe5-y12で表され、RはYおよび原子番号59から71までの希土類元素のうちから選択される少なくとも1種であり、MはGa若しくはAlの少なくとも1種であり、0<x≦2、0≦y≦2であることが好ましい。この場合、一般式Cex3-xyFe5-y12で表され、RはYおよび原子番号59から71までの希土類元素のうち少なくとも1種であり、MはGa若しくはAlの少なくとも1種であり、0<x≦2、0≦y≦2であるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶が得られる。
 さらに、本発明において、原材料となる多結晶体は、一般式Cex3-xyFe5-y12で表されるものを用いてもよい。この場合、一般式Cex3-xyFe5-y12で表されるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶が得られる。
 また、本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法は、セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を準備するステップと、多結晶体を固液界面に大きな温度勾配を与えながら加熱溶融させるステップと、溶融した多結晶体を冷却凝固させるステップとを含む、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法である。本発明によれば、従来得られなかった大きさのセリウムを含む磁性ガーネット単結晶が得られる。得られた単結晶は、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることができる。
 さらに、本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法は、セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を準備するステップと、セリウムを含む磁性ガーネットの単結晶の種結晶を準備して、多結晶体に当接させるステップと、多結晶体の種結晶に当接した部分を固液界面に大きな温度勾配を与えるための光学的加熱装置で加熱し溶融させて溶融帯を形成するステップと、溶融帯を移動させることにより、直前に溶融していた部分を冷却させるステップとを含む、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法である。本発明によれば、光学的加熱装置により加熱することにより、固液界面に急峻で大きな温度勾配がつく。そのため、従来得られなかった大きさのセリウムを含む磁性ガーネット単結晶が得られる。得られた単結晶は、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることができる。
 また、本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法において、光学的加熱装置は、主加熱装置および補助加熱装置を含み、主加熱装置は、レーザー光を多結晶体の加熱部分に直接照射するためのレーザー装置を含み、補助加熱装置は、熱源としての光源および光源からの光を反射させて加熱部分に集光させる反射板を含むことが好ましい。この場合には、レーザー光および反射光の集光された部分が溶融するとともに、固液界面に急峻で大きくかつ均一性の良い温度勾配がつく。そして、集光位置を移動させれば、集光されていない部分は、急速に冷却される。そのため、従来得られなかった、大きくて、かつ品質の良い単結晶が得られる。
 さらに、本発明にかかるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法において、セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体は、棒状、薄板状あるいは薄膜状のいずれかの形状で準備されてもよい。この場合には、棒状、薄板状あるいは薄膜状のいずれかの形状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶を得ることができる。
 この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態および実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
 本発明によれば、アイソレータなどの光通信や電子デバイスの材料に用いることのできる大きさと品質を有するCe:YIG単結晶(セリウムを含む磁性ガーネット単結晶)が得られる。また、この発明によれば、材料の使用効率が上がり、製造時間も短く、有害物質である鉛を使用する必要もなくなり、価格の低減も図れる。
 本発明者らは、レーザー集光単結晶育成法を開発した。この方法によれば、YIGの合致溶融組成から、フラックスを用いることなく、YIG単結晶ファイバーやYIG単結晶膜を製造することができる。この方法は、レーザー光を集光させることにより、固液界面で500℃/10mmよりも大きい温度勾配を作り、その効果により、平衡状態では発生するはずのオルソフェライトを発生させることなく、単相のYIGを作製するものである。しかも、本発明者らは、レーザー集光単結晶育成法を用いて得られたCe:YIG単結晶(セリウムを含む磁性ガーネット単結晶)が、大きなファラデー効果を持つことを見い出した。
  図1(A)は本発明に係るセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造に用いられる単結晶育成装置の一例を正面からみた断面図であり、図1(B)は平面からみた断面図である。この単結晶育成装置10は、主加熱装置を構成するYAGレーザー発生装置12を含む。YAGレーザー発生装置12には、ファイバー14a,14bを介して、2つのレーザー光発射口16a,16bが形成される。
 また、単結晶育成装置10は、筐体17を含む。筐体17中には、反射板として、双楕円をその長軸の周りに回転させた双楕円回転面で囲まれた立体形状の双楕円ミラ−18が形成される。ここで双楕円とは、2つの楕円が一つの焦点を共有して組み合わされた形状をいう。レーザー光発射口16a,16bは、筐体17および双楕円ミラ−18を貫通し、双楕円ミラー18で囲まれた空間の中央部を挟んで対向して配置される。双楕円ミラー18内には、ハロゲンランプ20a,20bが、それぞれ異なる楕円の焦点に対応する位置に配置される。双楕円ミラー18とハロゲンランプ20a,20bとで補助加熱装置としての光学的加熱装置が構成される。ハロゲンランプ20a,20bは、熱源としての光源である。ハロゲンランプ20a,20bからの光は、双楕円ミラー18内面で反射されて、双楕円の共有焦点Fに集光される。また、上述のレーザー光発射口16a,16bからのレーザー光も、双楕円ミラー18内の双楕円の共有焦点Fに向かって発射される。したがって、双楕円ミラー18で囲まれた空間の中央部の共有焦点に試料を配置することにより、試料が加熱される。また、YAGレーザーの出力やハロゲンランプ20a,20bの出力を調整することにより、温度分布や温度勾配を最適な条件とすることができる。本発明では、共有焦点Fにおいては、たとえば1700℃程度の温度になるが、その周囲は加熱されていないため、共有焦点Fから遠ざかるにつれて急激に温度が低下する。したがって、加熱部分およびその近傍において、大きくかつ急峻な温度勾配が形成される。
 双楕円ミラー18で囲まれた内部には、原料棒および種結晶を保持するための上軸22aおよび下軸22bが共有焦点Fを間に挟んで対向して配置される。上軸22aおよび下軸22bは、それぞれ双楕円ミラー18の内側から外側へ延びだして、上軸移動装置23aおよび下軸移動装置23bに取り付けられる。上軸移動装置23aおよび下軸移動装置23bは、上軸22aおよび下軸22bを同期させて軸方向に移動させるものである。その移動速度は、好ましくは1mm〜8mm/hrである。上軸22aおよび下軸22bの移動速度は、それぞれ同一でもよく、異なる速度でもよい。たとえば上軸22aと下軸22bとの間の間隔が徐々に離れていくようにした場合には、太さの細い単結晶を得ることができ、上軸22aと下軸22bとの間の間隔が徐々に近づくようにした場合には、太さの太い単結晶を得ることができる。なお、この単結晶育成装置10は、加熱のためのレーザー光および反射光を集光させる位置を固定して、原料棒を移動させるものであるが、反対に原料棒を固定しておいて、レーザー光および反射光を集光させる位置を移動させるように装置を構成してもよい。
 上軸22aの下軸22bと対応した端部には、たとえば丸棒状、角棒状、板状その他の形状のセリウムを含む磁性ガーネット多結晶が原料棒24として固定される。このセリウムを含む磁性ガーネット多結晶の組成は、一般式Cex3-xyFe5-y12で表され、RはYおよび原子番号59から71までの希土類元素のうちから選択される少なくとも1種であり、MはGa若しくはAlの少なくとも1種である。原料棒24に丸棒状のものを用いれば、断面円形のファイバー状の単結晶が得られ、角棒状のものを用いれば、断面矩形のファイバー状ないし薄板状の単結晶が得られる。なお、断面矩形の単結晶を得ようとする場合には、照射するレーザー光のスポットを調整してたとえば長楕円形状にするなどすることにより、より得やすくなる。たとえば、図5に示すように、原料材24が幅広い場合には、レンズ40によってレーザー光を拡散させて、照射スポットを幅広にするようにしてもよい。また、下軸22bの上軸22aと対応した端部には、種結晶25が固定される。このように原料棒24と種結晶25とを保持することにより、両者が突き合わされていることになる。種結晶25は、Ce:YIG単結晶を使うことが好ましいが、YIG単結晶でもよい。なお、種結晶25を上軸22aに取り付け、原料棒24を下軸22bに取り付けてもよい。また、原料棒24の代わりに、たとえばGGG基板の表面にセリウムを含む磁性ガーネット多結晶体をスラリ状にして塗布し、乾燥させた原料材24を用いてもよい。その場合には、GGG基板上に薄板状ないし薄膜状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶を得ることができる。なお、この場合には、原料材24を保持し移動させるために、上軸22aまたは下軸22bのどちらか一方だけを用いればよい。また、上軸22a,下軸22b,原料棒24,種結晶25および得られる単結晶28は、石英管27内に収納される。この石英管27内の雰囲気は、単結晶製造条件に合わせてArガスやO2 ガスが入れられるなどして適宜調整される。
 次に、この単結晶育成装置10でセリウムを含む磁性ガーネット単結晶を製造する方法について説明する。まず、原料棒24の種結晶25と対向した端部を共有焦点Fに配置する。次に、主加熱装置および補助加熱装置によって原料棒24の当該端部を1700℃程度に加熱し溶融させ、そこに種結晶25の端部を当接させることにより、融帯26が形成される。すなわち、融帯26は、双楕円ミラー18の共有焦点Fに対応する位置に形成される。そして、上述したように上軸22aおよび下軸22bを軸方向に移動させることにより、原料棒24の一端から他端にわたって融帯26が移動し、加熱溶融と冷却凝固が連続的に行われる。
その結果、目的とするセリウムを含む磁性ガーネット単結晶28を得ることができる。
 ここで、図2は、試料位置と主加熱装置のレーザー光および補助加熱装置のハロゲンランプによるエネルギ分布との関係を示すグラフである。また、図3は、試料位置と温度との関係を示すグラフである。図3において黒く塗りつぶされている部分は、融帯26を示す。また、図2および図3において、試料位置とは、融帯26を原点にとったときの原料棒24上における融帯26からの距離をいう。
図2のグラフに示すように、ハロゲンランプによるエネルギ分布は、比較的幅広い形であるが、レーザーによるエネルギ分布は、幅狭でかつ強力である。
この単結晶育成装置10では、ハロゲンランプのエネルギとレーザーのエネルギとが組み合わされて、融帯26とその近傍との間に急峻でかつ大きなエネルギ分布が実現される。そのため、この単結晶育成装置10では、たとえば図3のグラフに示すように、約800℃/10mmという急峻でかつ大きな温度分布が単結晶形成部分としての固液界面に実現されることとなる。本実施例で用いた加熱装置ではこの範囲の温度勾配を実現できたが、レーザーの出力を上昇させ、温度勾配を更に大きくしても所望の目的が達成されるものと予想される。なお、温度勾配が約500℃/10mm以下になると、オルソフェライトが先に析出する傾向が増大するので、好ましくない。
 以下に、ファイバー状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶についての実施形態を説明する。本実施形態に用いられるYAGレーザー光の波長は1.064μmで、出力は20Wである。また、ハロゲンランプ20a,20bの出力は、それぞれたとえば250Wで合計500Wである。さらに、ハロゲンランプ20a,20bと試料との間の距離は、約10cmである。この場合、共有焦点Fにおける原料棒24の温度は約1700℃となる。また、この実施形態における集光スポットの形状は、縦1mm,横6mmの略楕円形状である。まず、原料棒の直径と移動速度との関係を調べた。そのため、結晶原料となるセリウムを含む磁性ガーネット多結晶体の原料棒として、種々の直径を持った(Ce0.32.7)Fe512を用意した。また、種結晶として、直径1mmの〈lll〉YIGを準備した。そして、上述の単結晶育成装置10に両者を保持させ、ランプ電力とレーザー出力を一定にして原料棒に照射し、原料棒の移動速度を変えて結晶作製を行った。得られた単結晶の組成を分析し、ファラデー回転角を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2004035401
 表1において、◎の範囲で、(Ce0.32.7)Fe512単結晶が得られ、しかも大きなファラデー効果が確認できた。しかし、○の領域では、(Ce0.32.7)Fe512単結晶は得られたが、ファラデー効果が観察されず、また、大きな光吸収が測定された。そのため、この領域ではCeが3価では存在せず、4価になっていると推測される。×の領域では、単結晶そのものが得られず、オルソフェライトの成分も観察された。
 また、図4は、本発明によるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶のファラデー効果を従来のYIGのものと比較して示すグラフである。このグラフは、本発明によるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶として、直径0.8mmの(Ce0.32.7)Fe512単結晶ファイバーを準備し、波長1.3μmの光について、単結晶1cmあたりのファラデー回転角を測定し示したものである。また、比較例としてのYIG単結晶ファイバーについても同様の条件でファラデー回転角を測定した。
 次に、セリウム濃度と原料棒の移動速度との関係を調べるため、上述と同様の条件で、(Cex3-x)Fe512の濃度xを変えた直径0.8mmのファイバー状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶を作製した。このときの単結晶育成条件は上述と同様にした。その結果を表2に示す。
Figure 2004035401
 表2において、◎の範囲で、(Cex3-x)Fe512単結晶が得られ、さらに大きなファラデー効果が確認できた。しかし、○の領域では、(Cex3-x)Fe512単結晶は得られたが、ファラデー効果が観察されず、また、大きな光吸収が測定された。そのため、この領域ではCeが3価では存在せず、4価になっていると推測される。×の領域では、単結晶そのものが得られず、オルソフェライトの成分も観察された。
 このように、本発明によれば、レーザー集光単結晶育成法を用い、育成条件を調整することにより、これまで作製が不可能とされてきた一定以上の大きさを有し、大きなファラデー効果を有するCe置換YIG単結晶(セリウムを含む磁性ガーネット単結晶)を得ることが可能となった。
 本発明では、融帯と固体との固液界面に急峻でかつ大きな温度勾配を与えることによって、異相すなわちオルソフェライトの析出する時間よりも短時間で、目的とする単結晶を析出させる。つまり、オルソフェライトの核が生成し、その核が大きく成長してしまうと異相が析出するが、本発明では、大きくかつ急峻な温度勾配下で単結晶を成長させるので、異相が析出する前に目的とする単結晶を析出させることができるのである。そのため、本発明では、固液界面での温度履歴が重要であり、固液界面での温度勾配の均一性が良いほど、目的とする単結晶育成に好ましい。上記の例ではファイバー径が細いほど固液界面での温度勾配の均一性が良くなる。また、融帯の移動速度が遅いほど熱的定常状態となり、同様に固液界面での温度勾配の均一性が良くなる。つまり、本発明の特徴は、固液界面に急峻でかつ大きな温度勾配を実現することにあり、さらに好ましくは、固液界面の温度勾配の均一性を良くすることにある。これらの条件を満足するのであれば、ファイバー状、板状、薄膜状等、どのような形状のセリウムを含む単結晶でも育成することが可能である。
 なお、加熱方法については、本発明の特徴とするところの条件を満足する方法であれば、レーザー集光法以外の方法を用いても同様の効果を得ることができる。
たとえば、ヒーターによって加熱する方法や、高周波誘導加熱される貴金属製ルツボ中で融液をつくり、その融液から単結晶を引く等して急速に冷却する方法等であっても、上述の条件を満足するものであれば同様の効果が得られる。
(実施例1)YサイトをGdで、FeサイトをAlで置換した(Ce0.5Gdx2.5-x)(AlyFe5-y)O12多結晶体を準備し、図1に示す単結晶育成装置10を用いて、上述の実施形態と同様の条件で、直径1mm、長さ30cmの断面円形のファイバー状の単結晶の作製を行った。得られた単結晶の組成は、(Ce0.5Gdx2.5-x)(AlyFe5-y)O12である。表3にその結果を示す。◎印の条件で単結晶化して大きなファラデー効果が確認できた。
Figure 2004035401
(実施例2)実施例1と同様の条件で、YサイトをPr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luでそれぞれ置換し、FeサイトをAlで置換した直径1mm、長さ30cmの断面円形のファイバ−状の単結晶の作製を行った。これらの単結晶の組成は、それぞれ(Ce0.5Prx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Ndx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Pmx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Smx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Eux2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Tbx2.5-x)(Aly Fe5-y)O12,(Ce0.5Dyx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Hox2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Erx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Tmx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,(Ce0.5Ybx2.5-x)(AlyFe5-y)O12,および(Ce0.5Lux2.5-x)(AlyFe5-y)O12である。
 その結果を表4から表15に示す。それぞれ◎印の条件で単結晶化して大きなファラデー効果が確認できた。
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
Figure 2004035401
 なお、上述の実施例1および実施例2の各組成において、イットリウムをたとえばサマリウムで全置換した磁性ガーネット単結晶であっても同様の効果が得られる。
 (実施例3)実施例1および実施例2と同様の条件で、FeサイトをAlに代えてGaで置換したセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の作製を行った。これらの単結晶の組成は、それぞれ(Ce0.5Gdx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Prx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Ndx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Pmx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Smx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Eux2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Tbx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Dyx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Hox2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Erx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Tmx2.5-x)(GayFe5-y)O12,(Ce0.5Ybx2.5-x)(GayFe5-y)O12,および(Ce0.5Lux2.5-x)(GayFe5-y)O12,である。
 これらについても表3から表15に示した効果と同様の効果を得ることができた。
(実施例4)図1に示す単結晶育成装置10を用いて、幅2mm、厚さ0.8mm、長さ20mmの薄板状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶を作製した。その組成は、実施例1から実施例3のものである。その結果、ファイバーと同様にセリウムを含む磁性ガーネット単結晶板が得られた。
(実施例5)幅2mm、厚さ0.5mm、長さ50mmの(lll)GGG単結晶板上に厚さ50μmのセリウムを含む磁性ガーネット多結晶体をスラリ状にして付着させ、図1に示した単結晶育成装置10で単結晶育成を行った。その結果、上述の実施例1から実施例4に示したものと同じ組成のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶膜がGGG基板上に得られた。そして、これらのYIG単結晶膜においても、それぞれ表3から表15に示した結果と同様にファラデー効果が認められた。さらに、得られたYIG単結晶膜に電極を付けて、図6に示すように、1.9GHzでのフィルター特性を測定した。図6において、GGG基板30上にYIG単結晶膜32が形成され、YIG単結晶膜32上に信号入力用トランスデューサ34aおよび信号出力用トランスデューサ34bが形成される。
その結果、図7に示すように、良好な特性が得られた。
(A)は、本発明に係るファイバー状のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造に用いられる単結晶育成装置の一例を正面からみた断面図であり、(B)は平面からみた断面図である。 試料位置と主加熱装置のレーザー光および補助加熱装置のハロゲンランプによるエネルギ分布との関係を示すグラフである。 試料位置と温度との関係を示すグラフである。 本発明によるセリウムを含む磁性ガーネット単結晶のファラデー効果を従来のYIGのものと比較して示すグラフである。 図1に示した単結晶育成装置の変形例の要部を示す図解図である。 実施例5におけるフィルター特性を測定する方法を示す図解図である。 実施例5におけるフィルター特性の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
10 単結晶育成装置
12 YAGレーザー発生装置
16a,16b レーザー光発射口
18 双楕円ミラー
20a,20b ハロゲンランプ
24 原料棒
26 融帯
28 セリウムを含む磁性ガーネット単結晶

Claims (7)

  1. セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を固液界面に、500℃/10mmよりも大きい温度勾配を与えながら加熱溶融させた後、冷却凝固させることにより得られる、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶。
  2. 前記多結晶体は、一般式Cex3-xyFe5-y12で表され、RはYおよび原子番号59から71までの希土類元素のうちから選択される少なくとも1種であり、MはGa若しくはAlの少なくとも1種であり、0<x≦2、0≦y≦2である、請求項1に記載のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶。
  3. 前記組成式において、Rはイットリウムである、請求項2に記載のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶。
  4. セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を準備するステップ、
    前記多結晶体を固液界面に大きな温度勾配を与えながら加熱溶融させるステップ、および溶融した前記多結晶体を冷却凝固させるステップを含む、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法。
  5. セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体を準備するステップ、
    セリウムを含む磁性ガーネットの単結晶の種結晶を準備して、前記多結晶体に当接させるステップ、
    前記多結晶体の前記種結晶に当接した部分を固液界面に大きな温度勾配を与えるための光学的加熱装置で加熱し溶融させて溶融帯を形成するステップ、および前記溶融帯を移動させることにより、直前に溶融していた部分を冷却させるステップを含む、セリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法。
  6. 前記光学的加熱装置は、主加熱装置および補助加熱装置を含み、
    前記主加熱装置は、レーザー光を多結晶体の加熱部分に直接照射するためのレーザー装置を含み、
    前記補助加熱装置は、熱源としての光源および前記光源からの光を反射させて加熱部分に集光させる反射器を含む、請求項5に記載のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法。
  7. 前記セリウムを含む磁性ガーネットの多結晶体は、棒状、薄板状あるいは薄膜状のいずれかの形状で準備される、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶。
JP2003296304A 1996-03-22 2003-08-20 セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法 Pending JP2004035401A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003296304A JP2004035401A (ja) 1996-03-22 2003-08-20 セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9358196 1996-03-22
JP2003296304A JP2004035401A (ja) 1996-03-22 2003-08-20 セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP04729897A Division JP3772933B2 (ja) 1996-03-22 1997-02-14 3価のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004035401A true JP2004035401A (ja) 2004-02-05

Family

ID=31718681

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003296304A Pending JP2004035401A (ja) 1996-03-22 2003-08-20 セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004035401A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012188303A (ja) * 2011-03-08 2012-10-04 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜と光アイソレータ
JP2016199411A (ja) * 2015-04-07 2016-12-01 国立研究開発法人理化学研究所 レーザ単結晶育成装置及び単結晶

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012188303A (ja) * 2011-03-08 2012-10-04 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜と光アイソレータ
JP2016199411A (ja) * 2015-04-07 2016-12-01 国立研究開発法人理化学研究所 レーザ単結晶育成装置及び単結晶

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3772933B2 (ja) 3価のセリウムを含む磁性ガーネット単結晶の製造方法
JP3237564B2 (ja) 単結晶育成方法
JP3642063B2 (ja) テルビウム・アルミニウム系常磁性ガーネット単結晶の製造方法
US6387178B1 (en) Single crystal producing method and apparatus
JP2004035401A (ja) セリウムを含む磁性ガーネット単結晶およびその製造方法
US6165263A (en) Method for growing single crystal
JP3731508B2 (ja) 磁性単結晶育成用原料棒及び磁性単結晶
JP3555098B2 (ja) ガーネット型構造単結晶の製造方法
US5851284A (en) Process for producing garnet single crystal
JP2004238239A (ja) 単結晶の製造方法
JPS6037505A (ja) 有機結晶を用いた光導波路の作製方法
JPH11195551A (ja) 磁石一体型ファラデー素子の製造方法
JP2681869B2 (ja) 磁気光学素子
JP2756273B2 (ja) 酸化物ガーネット単結晶およびその製造方法
JP2000264787A (ja) 非線形光学結晶の製造方法
JPH07277880A (ja) 酸化物単結晶およびその製造方法
JPH09188595A (ja) Feを含む磁性ガーネット単結晶膜の製造方法
JPH01305884A (ja) モリブデン酸鉛単結晶の育成方法
JP2002255689A (ja) 磁性ガーネット単結晶の製造方法および磁性ガーネット単結晶
JP2002255688A (ja) 磁性ガーネット単結晶の製造方法および磁性ガーネット単結晶
JPH0815534A (ja) 結晶性ファイバおよびその製造方法
JPH0797685B2 (ja) 固体レーザ用結晶
JPS60145986A (ja) 薄膜結晶成長法
JPH05105590A (ja) ニオブ酸リチウム単結晶および光素子
JPH02258692A (ja) 酸化物超伝導体の作製方法

Legal Events

Date Code Title Description
A072 Dismissal of procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073

Effective date: 20040316

A521 Written amendment

Effective date: 20040407

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A521 Written amendment

Effective date: 20040407

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050920

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20051121

A02 Decision of refusal

Effective date: 20060131

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02