JP2004031882A - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法 Download PDF

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長谷川 直也
Eiji Umetsu
梅津 英治
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Abstract

【課題】特に狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラックの広がりを抑制することでサイドリーディングの発生を抑えることが可能な磁気検出素子及びその製造方法を提供すること目的としている。
【解決手段】フリー磁性層28の素子両側端部上には非磁性中間層29を介して強磁性層30が形成され、強磁性層30間の間隔Dよりも広い間隔Cを有した第2反強磁性層31が強磁性層30上に形成され、強磁性層30が第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心方向に延出し、さらに電極層37が第2反強磁性層31上から前記延出形成された強磁性層30上にかけて形成されている。これによって再生出力の向上と実効再生トラック幅の広がりを抑えサイドリーディングの発生を適切に抑制できる。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エクスチェンジバイアス方式によってフリー磁性層の磁化制御を行う磁気検出素子に係り、特に狭トラック化においても再生出力の向上とサイドリーディングの発生を抑制することが可能な磁気検出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図24は従来の磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0003】
符号1はPtMnなどの第1反強磁性層であり、前記第1反強磁性層1の上にNiFe合金などで形成された固定磁性層2、Cuなどで形成された非磁性材料層3、およびNiFe合金などで形成されたフリー磁性層4が積層形成されている。
【0004】
図24に示すように前記フリー磁性層4の上にはトラック幅方向(図示X方向)にトラック幅Twを開けて第2反強磁性層5が形成され、その上に電極層6が形成されている。
【0005】
図24に示す実施形態では、前記フリー磁性層4と前記第2反強磁性層5とが重なる部分に交換結合磁界が発生し、素子両側端部の前記フリー磁性層4は図示X方向に磁化固定されるが、素子中央部の前記フリー磁性層4は外部磁界に対し磁化反転できる程度に弱く単磁区化されている。このようにして前記フリー磁性層4の磁化制御を行う方法をエクスチェンジバイアス方式と呼ぶ。
【0006】
図24に示す従来例では次のような問題があった。それは特に高記録密度化を図るために狭トラック化が進むと、前記素子中央部のフリー磁性層4に、外部磁界に対し磁化反転しにくい不感領域が増え、これによって前記外部磁界に対し前記フリー磁性層4の素子中央部が感度良く磁化反転せず再生出力の低下が問題となったのである。
【0007】
前記フリー磁性層4の素子中央部は、前記フリー磁性層4の素子両側端部の第2反強磁性層5とフリー磁性層4の界面で発生する交換結合バイアス磁界が磁性層内部の交換相互作用により、素子中央部まで媒介されて図示X方向に磁化される。前記バイアス磁界はフリー磁性層4の素子中央部の素子両側端部との境界付近で強く働き、トラック幅Twが小さくなるほど、前記バイアス磁界が強く働く領域が前記フリー磁性層4の素子中央部全体に及びやすくなる。
【0008】
強くバイアス磁界を受けたフリー磁性層4の素子中央部は、素子両側端部ほど強く磁化固定されないものの外部磁界に対し感度良く磁化反転しにくくなり、強くバイアス磁界を受けた領域が上記した不感領域となりやすく、この結果、狭トラック化を進めるほど再生出力の低下を招いたのである。
【0009】
一方、図25は前記図24と電極層6の形成位置が異なる従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図25において、図24と同じ符号がつけられている層は図24と同じ層を示している。
【0010】
図25では図24と異なり、前記電極層6のトラック幅方向(図示X方向)における内側先端部6aが、前記第2反強磁性層5間の間隔T1内から露出した前記フリー磁性層4上にまで延出形成され、前記電極層6のトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法でトラック幅Twが規制される。
【0011】
図25に示す従来例では、前記第2反強磁性層5間のトラック幅方向への間隔T1を図24の従来例よりも広く形成できる。図25に示す従来例では、前記第2反強磁性層5と膜厚方向で重ねて形成された前記フリー磁性層4の素子両側端部が図示X方向に強く磁化固定される。一方、前記電極層6の内側先端部6aが前記フリー磁性層4上にまでオーバーラップして形成された前記フリー磁性層4の中間領域では、前記フリー磁性層4の素子両側端部から強い前記バイアス磁界を受けることで不感領域となり、実質的に磁気抵抗変化に寄与しない領域となる。そして前記フリー磁性層4の素子中央部のみが弱く図示X方向に単磁区化され、この領域が外部磁界に対し感度良く磁化反転する感度領域となっている。
【0012】
そして前記電極層6から前記フリー磁性層4側に流れるセンス電流は、前記電極層6の内側先端部6aからフリー磁性層4の素子中央部に主に流れるので、前記フリー磁性層4の中間領域、すなわち不感領域にセンス電流を流れ難くでき、この不感領域を電気的に殺すことができる。
【0013】
このように図25に示す従来例では、図24に比べて第2反強磁性層5間のトラック幅方向における間隔T1を広げることができるとともに、電極層6間で規制されるトラック幅Twを、不感領域を避けて前記フリー磁性層4の感度領域の幅寸法と一致させることができるため、狭トラック化においても再生出力の大きい磁気検出素子を製造できると期待された。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図25に示す従来例でも次のような問題があった。すなわち前記フリー磁性層4の中間領域は不感領域として定義されるが、前記不感領域は電気的に死んでいるものの磁気的に完全に死んだ状態ではない。換言すれば、前記不感領域は外部磁界に対し磁化反転しにくくなっているが完全に磁化固定されているわけではなく外部磁界に対しわずかながら反転する場合がある。
【0015】
かかる場合、その磁化反転はフリー磁性層4内を感度領域となる素子中央部にまで伝播するため、前記不感領域に侵入してくる外部磁界が読み取られ、これがノイズとなり再生特性を低下させてしまう。
【0016】
上記した問題は、結局のところ、実質的にトラック幅Twとして機能する実効再生トラック幅が、図25において電極層6間で規制されたトラック幅Tw(これを光学的なトラック幅と呼ぶ)よりも広がり、メディア上の隣接トラック等から漏れてくる外部磁界を読み取ってしまうサイドリーディングの問題を引き起こし、従って図25に示す構造では、狭トラック化に適切に対応可能な磁気検出素子を実現できなかったのである。
【0017】
特に上記したサイドリーディングの問題は、前記電極層6の内側先端部6aのフリー磁性層4上面へのオーバーラップ長が長くなればなるほど(すなわち中間領域のトラック幅方向への幅が大きくなるほど)顕著化する。
【0018】
そこで本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、特に狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラックの広がりを抑制することでサイドリーディングの発生を抑えることが可能な磁気検出素子及びその製造方法を提供すること目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下から順に、第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層を有して積層された多層膜を有する磁気検出素子において、
前記フリー磁性層の素子両側端部上には非磁性中間層を介して強磁性層が形成され、前記強磁性層間のトラック幅方向に形成された間隔よりも広い間隔を有した第2反強磁性層が前記強磁性層上に形成されて、前記素子両側端部内で、前記強磁性層が前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出し、
電極層が前記第2反強磁性層上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
上記した磁気検出素子では、前記フリー磁性層の素子両側端部上に非磁性中間層を介して強磁性層が形成され、前記強磁性層間の前記間隔よりも広い間隔を有する第2反強磁性層が前記強磁性層上に形成されている。このため前記第2反強磁性層と膜厚方向で重なる前記強磁性層は前記第2反強磁性層との間で発生する交換結合磁界によってトラック幅方向に強固に磁化固定される。またこの磁化固定された強磁性層と膜厚方向で対向するフリー磁性層は、前記強磁性層との間で発生するRKKY相互作用による交換結合によって前記強磁性層とは反対方向に磁化固定される。
【0021】
一方、前記第2反強磁性層の内側端面よりも前記トラック幅方向の中心方向に延出した強磁性層の部分及びその部分と膜厚方向で対向するフリー磁性層には、前記強磁性層内部及びフリー磁性層内部で生じるバイアス磁界の他に、強磁性層とフリー磁性層との間で生じるRKKY相互作用による交換結合も作用するため、外部磁界に対する磁化反転のし難さ(感度の低下)は、図25に示す中間領域よりもさらに増す。
【0022】
また前記フリー磁性層の素子中央部には、前記膜厚方向に非磁性中間層を介して強磁性層は形成されておらず、したがって前記フリー磁性層の素子中央部には、磁性層内部で生じるバイアス磁界のみが働き、強磁性層との間でのRKKY相互作用による交換結合は働かないから、前記素子中央部は外部磁界に対し感度良く磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態となっている。
【0023】
さらに電極層は、前記第2反強磁性層の内側端面よりもトラック幅方向の中心方向へ延出形成された強磁性層上にまでオーバーラップして形成されているため、前記電極層からのセンス電流は、前記第2反強磁性層や前記延出形成された強磁性層下にある多層膜全体に分流しにくくなり、最短距離で前記フリー磁性層及びその下の素子中央部に流れる。
【0024】
そしてトラック幅Twは、前記強磁性層間のトラック幅方向への幅寸法で規制される。
【0025】
以上のように本発明では、前記第2反強磁性層間のトラック幅方向への間隔を前記強磁性層間の間隔で規制されるトラック幅Twよりも広げることができ、しかも電極層の内側先端部を前記第2反強磁性層よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された強磁性層上にオーバーラップさせることで、センス電流を分流ロスが少なく適切にフリー磁性層の素子中央部に流すことができ、さらにフリー磁性層の素子中央部には強磁性層との間でRKKY相互作用による交換結合が働かないから、前記素子中央部は感度良く磁化反転し、その結果、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0026】
しかも前記第2反強磁性層の内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された強磁性層の部分は、その下に非磁性中間層を介してフリー磁性層が形成された、いわゆる人工フェリ構造となっており、前記強磁性層とフリー磁性層間にRKKY相互作用による交換結合が作用する結果、外部磁界に対する感度をより効果的に鈍化させることができ、この部分に外部磁界が及んでも効果的に磁化反転しにくくできるため、図25に示す従来例よりもより適切に実効再生トラック幅の広がりを抑え、サイドリーディングの発生を抑制することが可能になる。
【0027】
以上のように本発明の磁気検出素子によれば、狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラック幅の広がりを抑えサイドリーディングの発生を適切に抑制できるため、従来に比べて高記録密度化においても再生特性の向上を効果的に図ることが可能な磁気検出素子を提供することが可能である。
【0028】
また本発明では、前記第2反強磁性層上から前記延出形成された強磁性層上にかけてストッパ層が設けられ、前記ストッパ層上に前記電極層が形成されていることが好ましい。
【0029】
また本発明では、前記電極層は、前記第2反強磁性層上に形成された第1電極層と、前記第1電極層及び第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて形成された第2電極層とで構成されていてもよい。これにより前記電極層(第2電極層)のオーバーラップ長をより左右対称の幅寸法で形成しやすくなる。
【0030】
また前記第1電極層と前記第2電極層とは別工程で形成されたものであることが好ましい。
【0031】
また本発明では、前記第1電極層と第2電極層は異なる材質の非磁性導電材料で形成されてもよい。
【0032】
さらに本発明では、前記第1電極層は前記第2電極層よりも延性が小さい材質で形成されることが好ましい。前記第1電極層及び第2電極層が共にAuなど延性が大きい軟らかい材質で形成されていると、例えばスライダ加工時の研磨によって、前記電極層の部分でスメアリングが発生し電極層と上部シールド層あるいは下部シールド層とが短絡し磁気検素子の再生機能が破壊される。オーバーラップされる第2電極層は導電性が高いことが重要であり、導電性の高いAuなどは延性が大きいが、本発明の構造上、第1電極層は前記第2電極層に比べて導電性の性質は低くても再生特性はさほど低下しない。また第1電極層の形成領域は第2電極層の形成領域に比べて大きくなりやすい。そこで第1電極層を第2電極層よりも延性が小さい材質で形成し、これによって効果的にスメアリングの発生を抑制することが可能になる。
【0033】
また本発明では、前記第1電極層は、Auと、Pd、Cr、Cuのうちいずれか1種以上とからなる合金材料、またはCr、Rh、Ru、Ta、Wのうちいずれか1種以上で形成され、前記第2電極層は、Au、CuあるいはAgのうちいずれか1種以上で形成されることが好ましい。
【0034】
また本発明では、前記第1電極層及び第2反強磁性層の前記内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけてストッパ層が形成され、前記ストッパ層上に前記第2電極層が形成されることが好ましい。
【0035】
また本発明では、前記ストッパ層は、さらに前記第1電極層と前記第2反強磁性層間にも形成されることが好ましい。
【0036】
さらに前記ストッパ層は前記電極層よりもエッチングレートが遅い材質で、具体的には、前記ストッパ層は、Ta、Cr、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種あるいは2種以上の元素で形成されることが好ましい。
【0037】
また本発明では、前記ストッパ層はCr層であり、その上にTa層が積層されていてもよい。
【0038】
また本発明では、前記第2反強磁性層の内側端面の下縁部から、前記第2反強磁性層の膜厚よりも薄い膜厚の内側先端部が、前記延出形成された前記強磁性層上にまで延びて形成されていてもよい。
【0039】
さらに前記強磁性層間の前記間隔からは前記フリー磁性層の素子中央部が露出し、前記露出したフリー磁性層上にスペキュラー層が形成されていることが好ましい。
【0040】
また前記電極層が形成される部分に絶縁材料で形成された絶縁層が設けられ、前記電極層は、前記多層膜の膜厚方向の上下に設けられる形態であってもよい。この形態の磁気検出素子は、CPP(current perpendicular to the plane)型と呼ばれる。
【0041】
また本発明では、前記フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)は、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下であることが好ましい。後述する実験によれば、前記Net Mstを上記した範囲内に設定することで、前記フリー磁性層と強磁性層とが膜厚方向で重なる部分の再生感度を適切に低減させることができ、具体的には感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を0.2以下に抑えることができる。
【0042】
またNet Mstをプラス側の値、すなわちフリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントを前記強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントよりも大きくする理由は、再生波形の安定性を向上させると共に、フリー磁性層の磁化方向を制御するための磁場中アニール工程を容易に且つ適切に行うことができるようにするためである。
【0043】
また本発明では、前記フリー磁性層の膜厚(t)から前記強磁性層の膜厚(t)を引いた膜厚差は、0Å以上で30Å以下であることが好ましい。後述する実験によれば、前記膜厚差を上記した範囲内に設定することで、前記フリー磁性層と強磁性層とが膜厚方向で重なる部分の再生感度を適切に低減させることができ、具体的には感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を0.2以下に抑えることができる。またフリー磁性層の膜厚を強磁性層の膜厚より厚くすると、上記したNet Mstをプラス側の値にする効果と同じ効果を得ることができる。
【0044】
また本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)基板上に、下から順に第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層、非磁性中間層及び強磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
(b)前記多層膜の上面のトラック幅方向の両側に第2反強磁性層を形成する工程と、
(c)前記多層膜上から前記第2反強磁性層上にかけて電極層を形成し、前記電極層上に、前記第2反強磁性層間のトラック幅方向における間隔よりも間隔の狭いマスク層を形成し、前記マスク層に覆われていない前記電極層を削る工程と、
(d)さらに前記電極層を削ったことで露出した前記強磁性層を削り、これにより前記強磁性層を前記フリー磁性層の素子両側端部上に非磁性中間層を介して、且つ前記強磁性層を、前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出して残し、さらに電極層を前記第2反強磁性層上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて残す工程。
【0045】
上記した本発明の磁気検出素子の製造方法によれば、前記強磁性層のトラック幅方向の間隔で規制されるトラック幅Twよりも前記第2反強磁性層のトラック幅方向への間隔を広げて形成でき、しかも前記第2反強磁性層よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された前記強磁性層上にまで前記電極層をオーバーラップして形成することができ、さらに前記フリー磁性層の素子中央部を除いて前記フリー磁性層の素子両側端部のみに、非磁性中間層を介して強磁性層が形成された人工フェリ構造を容易に且つ適切に形成できる。
【0046】
本発明では、前記(c)工程で、前記電極層を形成する前に、前記多層膜上から前記第2反強磁性層上にかけてストッパ層を形成し、そのストッパ層上に前記電極層を形成し、
前記(c)工程で、前記ストッパ層が露出するまで前記電極層を削り、前記(d)工程で、露出した前記ストッパ層を除去した後、露出する前記強磁性層を削ることが好ましい。
【0047】
前記ストッパ層を形成することで、前記(c)工程で前記電極層を削る際にオーバーエッチングしても、前記ストッパ層で前記エッチングが食い止められ、その後、例えばイオンミリング装置に内蔵されたSIMS分析装置でモニタしながらイオンミリングを制御し、前記イオンミリングの終点位置、すなわち前記強磁性層を除去した瞬間にイオンミリングを止め、その下のフリー磁性層の素子中央部に対するイオンミリングの影響を最小限に抑えることができる。
【0048】
また本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(e)基板上に、下から順に第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層、非磁性中間層及び強磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
(f)前記多層膜の上面のトラック幅方向の両側に第2反強磁性層及び第1電極層を積層形成する工程と、
(g)前記多層膜上から前記第2反強磁性層及び第1電極層のトラック幅方向における内側端面上、さらに前記第1電極層上にかけて第2電極層を形成する工程と、
(h)前記多層膜上に形成された前記第2電極層を除去し、前記第2電極層を除去したことで露出した強磁性層を除去し、これにより前記強磁性層を前記フリー磁性層の素子両側端部上に非磁性中間層を介して、且つ前記強磁性層を、前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出して残し、さらに前記第2電極層を前記第1電極層及び第2反強磁性層の前記内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて残す工程。
【0049】
上記した本発明の磁気検出素子の製造方法によれば、前記強磁性層のトラック幅方向の間隔で規制されるトラック幅Twよりも前記第2反強磁性層のトラック幅方向への間隔を広げて形成でき、しかも前記第2反強磁性層よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された前記強磁性層上にまで前記第2電極層をオーバーラップして形成することができ、さらに前記フリー磁性層の素子中央部を除いて前記フリー磁性層の素子両側端部のみに、非磁性中間層を介して強磁性層が形成された人工フェリ構造を容易に且つ適切に形成できる。またこの製造方法では、前記オーバーラップして形成される前記第2電極層のトラック幅方向への幅を左右均等に形成しやすく、より再生出力の向上及びサイドリーディングの発生を抑制できる磁気検出素子を製造することができる。
【0050】
また本発明では、前記(g)工程で第2電極層を形成するとき、基板に対して垂直方向から斜めに傾けたスパッタ角度で、前記第2電極層を成膜することで、前記内側端面上に形成された第2電極層の膜厚を、多層膜の上面、および第1電極層の上面に形成された第2電極層の膜厚よりも厚く形成することが好ましい。
【0051】
上記した第2電極層をスパッタ成膜したときの各箇所での膜厚の違いは本発明にとって極めて重要である。上記したように、第2電極層を成膜したとき、前記内側端面上に形成される第2電極層の膜厚は、多層膜の上面、および第1電極層の上面に形成された第2電極層の膜厚よりも厚く形成されなければならない。
【0052】
前記(h)工程で、前記多層膜の上面に形成された第2電極層を除去するが、この工程では、前記内側端面上に形成された第2電極層も一部削られる。しかし本発明ではこの内側端面上に形成された第2電極層は最終的に残されるようにしなければならず、この内側端面上に形成された第2電極層の膜厚が、多層膜の上面に形成された第2電極層の膜厚よりも薄いと、多層膜の上面の第2電極層が全て削り取られる前に前記内側端面上に形成された第2電極層の方が早く削り取られる可能性がある。そこで本発明では、第2電極層を形成するとき、基板に対して垂直方向から斜めに傾けたスパッタ角度で、前記第2電極層を成膜し、これにより前記内側端面上に形成された第2電極層の膜厚を、多層膜の上面、および第1電極層の上面に形成された第2電極層の膜厚よりも厚く形成している。
【0053】
また本発明では、前記(h)工程で、前記多層膜の上面に形成された第2電極層を除去するとき、その際のミリング角度を、前記第2電極層を形成するときのスパッタ角度よりも、垂直方向に近い角度とすることが好ましい。
【0054】
これにより前記多層膜の上面に形成された第2電極層の中央を適切に除去できると同時に、前記内側端面上に形成された第2電極層を所定膜厚で残すことが可能になり、左右均等の膜厚を有するオーバーラップ構造の電極層を精度良く形成することが可能になる。
【0055】
以上により前記多層膜の上面に形成された第2電極層を適切に除去できると同時に、前記内側端面上に形成された第2電極層を所定膜厚で残すことが可能になり、左右均等の膜厚を有するオーバーラップ構造の電極層を精度良く形成することが可能になる。
【0056】
また本発明では、前記(g)工程で、前記第2電極層を形成する前に、前記多層膜上から前記内側端面上、さらには前記第1電極層上にかけてストッパ層を形成し、その後、前記ストッパ層上に前記第2電極層を形成し、
前記(h)工程で、前記ストッパ層が露出するまで前記多層膜上に形成された前記第2電極層を除去し、前記第2電極層を除去したことで露出した前記ストッパ層を除去した後、前記強磁性層を除去することが好ましい。
【0057】
前記ストッパ層を形成することで、前記(h)工程で前記第2電極層を削る際にオーバーエッチングしても、前記ストッパ層で前記エッチングが食い止められ、その後、例えばイオンミリング装置に内蔵されたSIMS分析装置によりモニタしながらイオンミリングを制御し、前記イオンミリングの終点位置、すなわち前記強磁性層を除去した瞬間にイオンミリングを止め、その下のフリー磁性層の素子中央部に対するイオンミリングの影響を最小限に抑えることができる。
【0058】
また本発明では、前記ストッパ層を前記電極層よりもエッチングレートが遅い材質で形成することが好ましく、具体的には、前記ストッパ層を、Ta、Cr、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種あるいは2種以上の元素で形成することが好ましい。
【0059】
また本発明では、前記ストッパ層をCr層で形成し、さらにその上にTa層を積層してもよい。
【0060】
また本発明では、前記(b)及び(f)工程で、トラック幅方向の第2反強磁性層間に、前記第2反強磁性層と一体の前記第2反強磁性層よりも膜厚の薄い反強磁性層を残し、前記(d)及び(h)工程で、前記電極層あるいは第2電極層を削ったことで露出した前記反強磁性層を除去し、これにより前記第2反強磁性層の内側端面の下縁部から、前記第2反強磁性層の膜厚よりも薄い膜厚の反強磁性の内側先端部を、前記延出形成された前記強磁性層上に残してもよい。上記のように前記(b)及び(f)工程で、トラック幅方向の第2反強磁性層間に、前記第2反強磁性層と一体の前記第2反強磁性層よりも膜厚の薄い反強磁性層を残すことで、前記第2反強磁性層下の強磁性層がエッチング等の影響を受けることを回避できる。
【0061】
また本発明では、前記(c)工程で形成される電極層、前記(f)工程で形成される第1電極層及び前記(g)工程で形成される第2電極層に代えて、絶縁材料で形成された絶縁層を形成し、前記電極層を、前記多層膜の膜厚方向の上下に設けてもよい。
【0062】
このように本発明の磁気検出素子の製造方法は、CPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0063】
また本発明では、前記フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)が、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下となるように、前記フリー磁性層及び前記強磁性層の各単位面積当たりの磁気モーメントを調整することが好ましい。
【0064】
また本発明では、前記フリー磁性層の膜厚(t)から前記強磁性層の膜厚(t)を引いた膜厚差が0Å以上で30Å以下となるように、前記フリー磁性層及び前記強磁性層の各膜厚を調整することが好ましい。
【0065】
上記のようにNet Mstを所定範囲及び膜厚差を所定範囲内に設定することで、前記フリー磁性層及び強磁性層の磁化方向を制御するための磁場中アニールを容易且つ適切に行うことができ、前記フリー磁性層及び強磁性層を適切に磁化制御しやすい。
【0066】
【発明の実施の形態】
図1は本発明における磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0067】
符号20は基板である。前記基板20上には、NiFe合金、NiFeCr合金あるいはCrなどで形成されたシードレイヤ21が形成されている。前記シードレイヤ21は、例えば(Ni0.8Fe0.260at%Cr40at%の膜厚60Åで形成される。
【0068】
前記シードレイヤ21の上には第1反強磁性層22が形成されている。第1反強磁性層22は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。
【0069】
第1反強磁性層22として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1反強磁性層22及び固定磁性層23の交換結合膜を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1反強磁性層22及び固定磁性層23の交換結合膜を得ることができる。
【0070】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0071】
第1反強磁性層22の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0072】
前記第1反強磁性層22の上には、固定磁性層23が形成されている。前記固定磁性層23は人工フェリ構造である。前記固定磁性層23は磁性層24、26とその間に介在する非磁性中間層25の3層構造である。
【0073】
前記磁性層24、26は、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などの磁性材料で形成される。前記磁性層24と磁性層26は、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0074】
また、非磁性中間層25は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0075】
前記固定磁性層23の上には、非磁性材料層27が形成されている。非磁性材料層27は、固定磁性層23とフリー磁性層28との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0076】
前記非磁性材料層27の上にはフリー磁性層28が形成されている。図1に示す実施形態では前記フリー磁性層28上の全面に非磁性中間層29が形成されている。前記フリー磁性層28は、NiFe合金等の磁性材料で形成される。図1に示す実施形態では前記フリー磁性層28と非磁性材料層27との間にCoやCoFeなどからなる拡散防止層(図示しない)が形成されていてもよい。
【0077】
図1に示す実施形態では、前記フリー磁性層28の素子両側端部上に前記非磁性中間層29を介して強磁性層30が形成されている。前記強磁性層30はNiFe合金、CoFe合金、CoFeNi合金、あるいはCo等の既存の磁性材料で形成される。
【0078】
なお以下では前記基板20から前記強磁性層30までの積層体を多層膜40と呼ぶ。
【0079】
前記強磁性層30上には第2反強磁性層31が形成される。第2反強磁性層31は、第1反強磁性層22と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。
【0080】
また図1のように前記第2反強磁性層31内には、図面上点線が記載され、前記点線よりも上側に符号31c、下側に符号31dが記載されているが、これは後述する製造方法によれば前記第2反強磁性層31を2層に分けて形成したことを意味する。なお完成した第2反強磁性層31には符号31cと31d間に明確な境界線が現われているわけではない。
【0081】
図1に示す実施形態では、前記素子両側端部のうち前記素子中央部に近い領域B(以下、単に領域Bと呼ぶ)の強磁性層30上に形成された第2反強磁性層31よりも、前記素子両側端部のうち前記素子中央部から遠い領域A(以下、単に領域Aと呼ぶ)の強磁性層30上に形成された第2反強磁性層31の方が膜厚が厚くなっている。なお以下では、前記領域B上に形成された第2反強磁性層31を前記第2反強磁性層31の内側先端部31aと呼ぶ。
【0082】
図1に示すように、前記領域A上に形成された第2反強磁性層31の内側端面31bは、前記第2反強磁性層31間のトラック幅方向への間隔Cが、下方から上方に向う(図示Z方向に向う)にしたがって徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。前記領域A上の前記第2反強磁性層31の上面31eには例えばCrなどで形成された第1ストッパ層33が形成され、前記第1ストッパ層33の上にTaなどで形成された第1保護層34が形成される。前記第1保護層34の内側端面34aは、前記第2反強磁性層31の内側端面31bと同じ連続面で形成される。
【0083】
図1に示す実施形態では前記第1保護層34上から前記第1保護層34及び第2反強磁性層31の内側端面34a、31b上、さらに前記第2反強磁性層31の内側先端部31a上にかけてCrなどで形成された第2ストッパ層35が形成され、前記第2ストッパ層35上にTaなどで形成された第2保護層36が形成される。
【0084】
図1に示す実施形態では、前記第2保護層36の上に電極層37が形成される。前記電極層37はAuやCr、Rh、Ru、Ta、Wなどの非磁性導電材料で形成される。
【0085】
前記電極層37は、前記領域Aの第2反強磁性層31上のみならず、前記領域Bの強磁性層30上に第2反強磁性層31の内側先端部31a、第2ストッパ層35及び第2保護層36を介してオーバーラップ形成される。
【0086】
前記電極層37の内側端面37aは、強磁性層30、第2反強磁性層31の内側先端部31a、第2ストッパ層35及び第2保護層36の内側端面と連続面として形成され、図1に示す実施形態では、前記電極層37の内側端面37aは下方から上方に向けて(図示Z方向に向けて)徐々に前記電極層37間のトラック幅方向への間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。ただし、前記電極層37の内側端面37aは前記基板20表面に対し垂直方向(図示Z方向)と平行な方向に形成されていてもよい。
【0087】
前記電極層37上にはTaなどで形成された第3保護層38が形成され、また前記第3保護層38上から前記電極層37の内側端面37a上、さらには強磁性層30間の間隔D内に露出した非磁性中間層29上にかけて第4保護層39が形成される。前記第4保護層39は、AlやSiOなどの絶縁材料で形成され、例えば上部ギャップ層として機能させることができる。また後述するように前記第4保護層39をスペキュラー層として機能させることもできる。
【0088】
以下に図1に示す実施形態の特徴的部分について説明する。図1に示す磁気検出素子では、前記フリー磁性層28の素子両側端部上に非磁性中間層29を介して強磁性層30が形成され、前記強磁性層30間のトラック幅方向(図示X方向)における間隔Dよりも広い間隔Cを有する第2反強磁性層31が前記強磁性層30上に形成されている。
【0089】
前記第2反強磁性層31は、素子両側端部の領域A上では厚い膜厚で形成され、この部分と膜厚方向(図示Z方向)で重なる前記強磁性層30は前記第2反強磁性層31との間で発生する交換結合磁界によってトラック幅方向(図示X方向)に強固に磁化固定される。またこの磁化固定された強磁性層30と膜厚方向で対向する領域Aのフリー磁性層28は、前記強磁性層30との間で発生するRKKY相互作用による交換結合によって前記強磁性層30とは反対方向に磁化固定される。
【0090】
一方、前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりも前記トラック幅方向(図示X方向)の中心方向に延出する領域Bの強磁性層30及びその強磁性層30と膜厚方向(図示Z方向)で対向する領域Bのフリー磁性層28には、前記強磁性層30内部及びフリー磁性層28内部の交換相互作用により媒介されたバイアス磁界の他に、強磁性層30とフリー磁性層28との間で生じるRKKY相互作用による交換結合も作用し、これによって領域Bの強磁性層30及びフリー磁性層28の感度はより鈍化し、後述するように、この領域Bでの感度をゼロにすることもできる。
【0091】
また前記フリー磁性層28の素子中央部には、膜厚方向に非磁性中間層29を介して強磁性層30は形成されていない。したがって前記フリー磁性層28の素子中央部には、磁性層内部の交換相互作用により媒介されたバイアス磁界のみが働き、強磁性層30との間でのRKKY相互作用による交換結合は働かないから、前記フリー磁性層28の素子中央部は外部磁界に対し感度良く磁化反転できる程度に弱く単磁区化された状態となっている。
【0092】
さらに図1に示すように電極層37の内側先端部37bは、前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向(図示X方向)の中心方向へ延出形成された領域Bの強磁性層30上に前記第2反強磁性層31の内側先端部31a等を介してオーバーラップ形成されているため、前記電極層37からのセンス電流は、素子両側端部の第2反強磁性層31や強磁性層30の下に位置する多層膜全体に分流せず、前記電極層37のオーバーラップ部(内側先端部37b)から最短距離で前記フリー磁性層28やその下の多層膜の素子中央部に流れる。
【0093】
このように図1に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31間のトラック幅方向への間隔Cを前記強磁性層30の下面間の間隔Dで規制されるトラック幅Twよりも広げることができ、しかも電極層37の内側先端部37bを前記第2反強磁性層31よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30上にオーバーラップさせることで、センス電流の分流を抑えて前記センス電流を効果的にフリー磁性層28の素子中央部に流すことができ、さらに前記フリー磁性層28の素子中央部には強磁性層30との間でRKKY相互作用による交換結合が働かないから、前記フリー磁性層28の素子中央部は感度良く磁化反転し、その結果、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0094】
しかも前記第2反強磁性層31よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30は、その下に非磁性中間層29を介してフリー磁性層28が形成された、いわゆる人工フェリ構造となっており、前記強磁性層30とフリー磁性層28間にRKKY相互作用による交換結合が作用する結果、前記領域Bの強磁性層30とフリー磁性層28の外部磁界に対する感度をより効果的に鈍化させることができ、前記領域Bに外部磁界が及んでも磁化反転を効果的に抑制できるため、図25に示す従来例よりもより適切に実効再生トラック幅の広がりを抑え、サイドリーディングの発生を抑制することが可能になる。
【0095】
以上のように図1の磁気検出素子によれば、狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラック幅の広がりを抑えサイドリーディングの発生を適切に抑制できるため、従来に比べて高記録密度化においても再生特性の向上を効果的に図ることが可能な磁気検出素子を提供することが可能である。
【0096】
図1に示す実施形態のその他の特徴的部分について説明する。図1に示す実施形態では、強磁性層30とフリー磁性層28の素子両側端部とがその間に非磁性中間層29を挟んだ人工フェリ構造となっている。前記非磁性中間層29は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種または2種以上で形成されることが好ましい。
【0097】
ここで適切な人工フェリ構造とするため、前記強磁性層30とフリー磁性層28の磁化を互いに反平行状態し、且つ固定磁性層23の磁化と直交させるには、前記強磁性層30の単位面積当たりの磁気モーメント(飽和磁化Ms×膜厚t)とフリー磁性層28の単位面積当たりの磁気モーメントとを互いに違う値にしなければならない。
【0098】
上記したように、素子両側端部の領域Bでの感度を人工フェリ構造にすることで鈍化させることができると説明したが、前記感度は、特に上記した単位面積当たりの磁気モーメントを適切に調整することによってさらに効果的に鈍化させることができるものと考えられる。
【0099】
後述する実験によれば、前記フリー磁性層28の単位面積当たりの磁気モーメントから前記強磁性層30の単位面積当たりの磁気モーメントを引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)を−6(T・nm)以上で2.6(T・nm)以下の範囲内にすると再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を絶対値で0.2以下に抑えることができることがわかった。
【0100】
ここで再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}とは、外部磁界が±4000Oe(ここで+4000Oeの外部磁界とは例えばハイト方向への外部磁界の方向及び強さを指し、―4000Oeの外部磁界とはハイト方向と逆方向への外部磁界の方向及び強さを指す)時のときの電圧差(ΔV)に対する、外部磁界が±100Oe(ここで+100Oeの外部磁界とは例えばハイト方向への外部磁界の方向及び強さを指し、―100Oeの外部磁界とはハイト方向と逆方向への外部磁界の方向及び強さを指す)時のときの電圧差(ΔV)の比率である。この比率が絶対値で小さい値ほど再生感度は低くなる。
【0101】
また再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を絶対値で0.2以下とした理由は、後述する実験結果によれば0.2の部分で前記合成磁気モーメント(Net Mst)と再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}との関係に変曲点が存在するとともに、再生感度を0.2以下に抑えることでサイドリーディングを実用レベルに抑制することができるからである。なおここで言う「実用レベル」とは、素子中央部におけるフリー磁性層28の再生感度が0.8程度であり、この感度の1/4以下が効果的にサイドリーディングを抑制でき、実際に製品として使用できるレベルのことを指し、すなわち本発明において0.2以下の再生感度をサイドリーディングを抑制できる実用レベルとする。
【0102】
ただし本発明では、前記合成磁気モーメント(Net Mst)を0(T・nm)よりも大きく2.6(T・nm)以下とすることが好ましい。0(T・nm)の合成磁気モーメントを除いた理由は、前記合成磁気モーメントが0(T・nm)ということは、すなわち前記フリー磁性層28の単位面積当たりの磁気モーメントと強磁性層30の単位面積当たりの磁気モーメントが同じ値になることであり、かかる場合、磁場中アニールのときに、その磁場の影響を強く受ける支配的な層(すなわち磁場中アニール時に磁場方向に向く層)が、フリー磁性層28及び強磁性層30のどちらとも言えないため、前記フリー磁性層28と強磁性層30を反平行状態にしつつ固定磁性層23の磁化方向と交差する方向に磁化制御することが困難となる。よって本発明では、好ましい前記合成磁気モーメントの範囲から0(T・nm)を除いている。
【0103】
また好ましい前記合成磁気モーメントの値をプラス側の値にした理由は、まず合成磁気モーメントに対するスピンフロップ磁界Hsfの値が、前記合成磁気モーメントがマイナス側よりもプラス側の値の方が急激に大きい値になりやすいために、前記フリー磁性層28及び強磁性層30の磁化制御を行うための磁場中アニール時の磁場強度のマージンを広くとりやすく、容易に且つ適切に前記フリー磁性層28及び強磁性層30を反平行状態にしつつ固定磁性層の磁化方向と交差する方向に磁化制御できること、および前記合成磁気モーメントをマイナス側の値にすると、前記強磁性層30の内側端部から前記フリー磁性層28に漏れる双極子磁界(静磁界)が大きくなり、またこの静磁界は前記フリー磁性層28の磁化と逆方向に作用するため、再生波形の歪みや不安定性を招きやすくなるため、本発明では前記合成磁気モーメントをプラス側の値にしている。
【0104】
ところで
従来、人工フェリ構造は、それを構成する2つの強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントをほぼ同程度に近づけることで、前記合成磁気モーメントが小さくなるから、特にこの合成磁気モーメントが小さい人工フェリ構造をフリー磁性層に適用することで前記フリー磁性層の感度を向上させることができると考えられていた。しかしながら本発明者がエクスチェンジバイアス構造での実験を重ねたところ、上記のように前記合成磁気モーメントをある程度小さくすると感度が低下することを見出したのである。
【0105】
そこで本発明者はこの実験結果を応用し、感度を低下させたい領域Bでは、強磁性層30とフリー磁性層28との合成磁気モーメントを0(T・nm)よりも大きく2.6(T・nm)以下として、この領域Bの感度を0.2以下に低下させるとともに、素子中央部でのフリー磁性層28を人工フェリ構造とせずに、前記素子中央部を前記フリー磁性層28単体で構成し、前記素子中央部での前記フリー磁性層28の感度を向上させることとしたのである。
【0106】
なお上記した合成磁気モーメントの測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)等でフリー磁性層28及び強磁性層30の膜厚を測定し、前記透過型電子顕微鏡に備えられたエネルギー分散型X線分析装置(EDX)などで前記フリー磁性層28及び強磁性層30の材質の組成を測定する。文献等で前記フリー磁性層28及び強磁性層30の材質から飽和磁化Msを推定し、前記膜厚tと前記飽和磁化Msとの積で単位面積当たりの磁気モーメントを求めて前記合成磁気モーメントの値を算出する。
【0107】
また後述する実験によれば、前記フリー磁性層28の膜厚(t)から前記強磁性層30の膜厚(t)を引いた膜厚差を−30Å以上で30Å以下にすると、再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を絶対値で0.2以下に抑えることができることがわかった。
【0108】
ただし前記膜厚差がマイナス側の値であると、単位面積当たりの合成磁気モーメントがマイナス側の値であるときの不具合と同様の問題が発生しやすいので、前記膜厚差はプラス側の値であることが好ましい。本発明では前記膜厚差を0Å以上で30Å以下に設定した。これにより、再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を絶対値で0.2以下に抑えることができるとともに、前記フリー磁性層28及び強磁性層30の磁化制御を容易に且つ適切に行うことができ、しかも再生波形の安定性を図ることが可能である。
【0109】
なお前記フリー磁性層28の膜厚と強磁性層30の膜厚は、上記した合成磁気モーメントを求める上での一つのパラメータであるから、膜厚差は前記合成磁気モーメントの値にも関係してくる。前記膜厚差が小さければ、それだけ前記合成磁気モーメントも小さい値になる。合成磁気モーメントを求めるには飽和磁化Msというパラメータも必要なので、膜厚差のみで直接、合成磁気モーメントを求めることはできないが、前記フリー磁性層28及び強磁性層30はFeやCo、Niを主体とした強磁性材料で形成されるのが一般的で、本発明においても実験でCoやFe、Niを主体とした強磁性材料でフリー磁性層28及び強磁性層30を形成して好ましい膜厚差を求めていることからすると、本発明と全く異なる材質をフリー磁性層28及び強磁性層30に用いていない限り、本発明の好ましい膜厚差を有する磁気検出素子であれば、本発明と同様の目的、すなわち領域Bでの感度を鈍化させてサイドリーディングの発生を抑制するといった目的を達成することができるものと考えられる。
【0110】
次に、図1に示す実施形態では、前記第2反強磁性層31の内側端面31bの下縁部から領域Aでの第2反強磁性層31の膜厚よりも薄い膜厚の内側先端部31aが、前記強磁性層30の領域B上にまで延出形成されている。この第2反強磁性層31の内側先端部31aは形成されていなくてもよいが後述する磁気検出素子の製造方法によれば、前記内側先端部31aが形成されていた方がイオンミリングの影響を前記内側先端部31a下の層に及ばなくすることができるので好ましい。
【0111】
また前記内側先端部31aの膜厚は50Å以下の薄い膜厚で形成されていることが好ましい。前記内側先端部31aが50Å以上の厚い膜厚であると、前記内側先端部31aが反強磁性を帯びて前記領域Bでの強磁性層30との間で交換結合磁界が発生して、領域Bでの強磁性層30及びフリー磁性層28が強固に磁化固定され、前記フリー磁性層28の素子両側端部から磁性層内部の交換相互作用により媒介されるバイアス磁界が、前記フリー磁性層28の素子中央部の素子両側端部との境界付近で強まり、図24に示す従来例と同様に、前記フリー磁性層28の素子中央部で不感領域が形成される結果、再生出力が低下するからである。
【0112】
なお前記領域A上に形成された第2反強磁性層31は80Å以上で300Å以下の厚い膜厚で形成されることが好ましい。これによって前記領域Aでの第2反強磁性層31と強磁性層30間で適切な大きさの交換結合磁界が生じ、前記領域Aでの強磁性層30とフリー磁性層28をより効果的に磁化固定することが可能になる。
【0113】
次に図1に示す実施形態では、複数のストッパ層33、35が形成されている。前記ストッパ層33、35は、Ta、Cr、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種または2以上の元素で形成されることが好ましい。
【0114】
前記ストッパ層33、35のうち、第2ストッパ層35は、導電性であり、電極層37よりもエッチングレートが遅いことが必要である。導電性である必要性は、前記電極層37の内側先端部37bから前記第2ストッパ層35を介して多層膜40側にセンス電流が流れるからである。次に前記電極層37よりもエッチングレートが遅い必要性は、後述する製造方法によれば、前記多層膜40の素子中央部上に形成された前記電極層37をエッチングで除去する工程があるが、オーバーエッチングしたときでも、前記エッチングが前記素子中央部での電極層37下の層に影響を与えないようにするためである。オーバーエッチングしても露出するのはエッチングレートの遅い第2ストッパ層35であるから、前記第2ストッパ層35はオーバーエッチングによって全て除去される心配がなく、その下の層に前記エッチングの影響が及ぶのを回避することができる。
【0115】
また前記第2ストッパ層35は、反応性イオンエッチング(RIE)によってエッチングされない、あるいはされにくい材質である場合には、前記電極層37をオーバーエッチングして、前記第2ストッパ層35が露出しても、前記第2ストッパ層35はこのエッチングの影響をほとんど受けない。例えば後述する製造方法によれば前記素子中央部上の電極層37を反応性イオンエッチングによって除去する工程があるが、前記第2ストッパ層35が前記反応性イオンエッチングでエッチングされない材質であれば、そもそも第2ストッパ層35は前記反応性イオンエッチングでエッチングされず、そのような材質を第2ストッパ層35として使用してもかまわない。
【0116】
また前記第2ストッパ層35上にはTaからなる第2保護層36が形成され、このとき前記第2ストッパ層35の材質は例えばCr層である。Cr層は電極層37の材質であるAuと拡散を起しやすい。拡散すると素子抵抗が上昇するから好ましくない。前記電極層37が例えばAuで形成され、第2ストッパ層35がCr層で形成されるとき、上記した拡散を防止すべくTaからなる第2保護層36をCr層と前記電極層37間に介在させた方が好ましい。
【0117】
次に図1に示す磁気検出素子の素子中央部の膜構成について以下に説明する。図1に示す実施形態では、前記フリー磁性層28の素子中央部上に非磁性中間層29が形成されている。前記非磁性中間層29は上記したようにRuなどで形成され、この非磁性中間層29は素子両側端部でフリー磁性層28と強磁性層30とを人工フェリ構造とするために設けられた層である。
【0118】
従って強磁性層30が形成されていない素子中央部では前記フリー磁性層2830上に前記非磁性中間層29が設けられていないなくてもよく、かかる場合、前記フリー磁性層28の素子中央部上には直接、第4保護層39が形成される。このとき前記第4保護層39をスペキュラー層として機能させることができる。
【0119】
前記スペキュラー層の形成により、前記スペキュラー膜に達した伝導電子(例えばアップスピンを持つ伝導電子)は、そこでスピン状態(エネルギー、量子状態など)を保持したまま鏡面反射する。そして鏡面反射した前記アップスピンを持つ伝導電子は、移動向きを変えてフリー磁性層28内を通り抜けることが可能になる。
【0120】
このため前記スペキュラー膜を設けることで、前記アップスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ+を従来に比べて伸ばすことが可能になり、よって前記アップスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ+と、ダウンスピンを持つ伝導電子の平均自由行程λ−との差を大きくすることができ、従って抵抗変化率(ΔR/R)の向上とともに、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0121】
前記スペキュラー膜の形成は、例えば前記第4保護層39としてTa膜を10〜20Å程度成膜し、大気中でこのTa層を完全に酸化する。他に前記スペキュラー膜の材質としては、Fe−O、Ni−O、Co−O、Co−Fe−O、Co−Fe−Ni−O、Al−O、Al−Q−O(ここでQはB、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−O(ここでRはCu、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Wから選択される1種以上)の酸化物、Al−N、Al−Q−N(ここでQはB、Si、O、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以上)、R−N(ここでRはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)の窒化物、半金属ホイッスラー合金などを提示できる。
【0122】
また前記第4保護層39の形成により、特に素子のハイト方向(図示Y方向)奥側で前記電極層37と図示しない上部シールド層とがショートするのを適切に防止でき、また前記電極層37等の上面を適切に酸化から防止することが可能になる。
【0123】
また図1に示す実施形態では、前記電極層37の内側先端部37bのトラック幅方向におけるオーバーラップ長T9を図25に示す従来例よりも長く延ばすことができる。その理由は、前記素子中央部の領域Bでは人工フェリ構造となっていることで効果的に感度が鈍化した不感領域にでき、前記領域Bが図25に示す中間領域より長く延ばされていても前記領域Bでの感度の低下を適切に図ることができるからである。このため前記領域B上に重ねられる、電極層37のオーバーラップ長T9を従来より長く延ばして形成でき、例えば前記オーバーラップ長T9を、50Å以上で2000Å以下程度で形成できる。
【0124】
また図1に示す磁気検出素子の製造方法では、2度のマスク合わせをしなければならないが、この際のアライメント精度があまり高くない場合でも、上記した電極層37のオーバーラップ長T9を長く延ばして形成できる結果、素子の左右両側に適切に感度の低い領域Bを形成することが可能である。
【0125】
図1に示す磁気検出素子は、前記電極層37からのセンス電流が、多層膜40の各膜面に対しほぼ平行な方向に流れるCIP(current in the plane)型となっているが、図1に示す磁気検出素子の構成を、前記センス電流が前記多層膜40の各層を膜厚方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0126】
その実施形態は図2であり、図2は本発明における第2実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図1と同じ符号が付けられている層は図1と同じ層を示している。
【0127】
図2に示す実施形態では、基板20が下部電極層であり、例えば磁性材料で形成された下部シールド層である。
【0128】
図2に示す実施形態では、図1の電極層37が形成されていた位置にAlやSiOなどの絶縁材料で形成された絶縁層41が形成される。また図1のように第4保護層39を形成せず、前記絶縁層41上から素子中央部の非磁性中間層29上にかけて上部電極層42が形成される。前記上部電極層42は例えば磁性材料で形成された上部シールド層である。
【0129】
図2に示す実施形態では、第2反強磁性層31と上部電極層42間に絶縁層41が形成されるので、前記上部電極層42から多層膜40に膜厚方向に流れるセンス電流が前記第2反強磁性層31に分流するのを抑制でき再生出力の大きい磁気検出素子を製造することができる。
【0130】
また図1のように第4保護層39を設けなかったのは、絶縁性の第4保護層39が前記素子中央部の非磁性中間層29上に形成されると前記電極層から膜厚方向に素子中央部の多層膜40に流れるセンス電流の流れが前記第4保護層39の存在で流れにくくなりあるいは遮断され再生特性の低下を招くからである。ただし、前記第4保護層39が非磁性導電性材料で形成される場合、前記第4保護層39が設けられていてもよい。その場合、前記第4保護層39は上部ギャップ層の一部として構成される。
【0131】
なお図2に示す前記非磁性材料層27は、例えばCuで形成されているが、スピントンネル効果の原理を用いたトンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)の場合、前記非磁性材料層27は、例えばAl等の絶縁材料で形成される。
【0132】
図3は本発明における第3実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図1と同じ符号が付けられている層は図1と同じ層を示している。
【0133】
図3に示す磁気検出素子の特徴的部分について以下に説明する。前記フリー磁性層28の素子両側端部上に非磁性中間層29を介して形成された強磁性層30上には、前記素子両側端部のトラック幅方向の中心からトラック幅方向に離れた領域A上に第2反強磁性層31が形成され、この第2反強磁性層31の上に第1ストッパ層33及び第1保護層34を介して第1電極層43が形成されている。そして第1電極層43上には保護層55が形成されている。そして前記第1電極層43とは別工程で形成された第2電極層46が、前記第1電極層43の内側端面43a及び第2反強磁性層31の内側端面31b上から、前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心方向へ延出形成された領域Bの強磁性層30上にかけて、第2ストッパ層44及び第2保護層45を介して形成されている。トラック幅Twは前記強磁性層30の下面間のトラック幅方向(図示X方向)への間隔Dで規制される。
【0134】
図3に示す実施形態では、第2反強磁性層31上に形成される第1電極層43と、延出形成された領域Bの強磁性層30上にオーバーラップする第2電極層46とを別々に形成している点に特徴がある。
【0135】
本発明では後述する製造方法で詳述するように、第2電極層46を形成する際にレジスト層のマスク合わせが必要なく、左右均等の膜厚T2を有する第2電極層46を狭トラック化においても精度良く形成することが可能になる。ここで膜厚T2はオーバーラップ長であり、50Å以上で1000Å以下であることが好ましい。
【0136】
図3に示す実施形態では図1に示す実施形態に比べて電極層のオーバーラップ長を左右均等に形成しやすく、図1に比べてサイドリーディングの発生の抑制をより効果的に達成することが可能になる。
【0137】
なおこの図3に示す実施形態でも図1に示す実施形態と同様に、前記第2反強磁性層31間のトラック幅方向への間隔Cを前記強磁性層30間の間隔Dで規制されるトラック幅Twよりも広げることができ、しかも第2電極層46を前記第2反強磁性層31よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30上にオーバーラップさせることで、センス電流のオーバーラップ部分と重なる多層膜への分流を抑えて前記センス電流を効果的にフリー磁性層28の素子中央部に流すことができ、さらに前記フリー磁性層28の素子中央部には強磁性層30との間でRKKY相互作用による交換結合が働かないから、前記フリー磁性層28の素子中央部は感度良く磁化反転し、その結果、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0138】
しかも前記第2反強磁性層31よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30は、その下に非磁性中間層29を介してフリー磁性層28が形成された、いわゆる人工フェリ構造となっており、前記強磁性層30とフリー磁性層28間にRKKY相互作用による交換結合が作用する結果、前記領域Bの強磁性層30とフリー磁性層28の外部磁界に対する感度をより効果的に低下させることができ、前記領域Bに外部磁界が及んでも磁化反転を効果的に抑制できるため、図25に示す従来例よりもより適切に実効再生トラック幅の広がりを抑え、サイドリーディングの発生を抑制することが可能になる。
【0139】
本発明では、前記フリー磁性層28の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層30の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)は、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下であることが好ましい。
【0140】
また本発明では、前記フリー磁性層28の膜厚(t)から前記強磁性層30の膜厚(t)を引いた膜厚差は、0Å以上で30Å以下であることが好ましい。これにより、再生感度{Δv(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}を絶対値で0.2以下に抑えることができるとともに、前記フリー磁性層28及び強磁性層30の磁化制御を容易に且つ適切に行うことができ、しかも再生波形の安定性を図ることが可能である。
【0141】
以上のように図3の磁気検出素子によれば、狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラック幅の広がりを抑えサイドリーディングの発生を適切に抑制できるため、従来に比べて高記録密度化においても再生特性の向上を効果的に図ることが可能な磁気検出素子を提供することが可能である。
【0142】
また図3に示す実施形態では前記第1電極層43と第2電極層46とを別々に形成することができるため、前記第1電極層43と第2電極層46とを異なる材質で形成することも可能である。よって前記第1電極層43及び第2電極層46の材質の選択性を広げることができる。
【0143】
ここで前記第2電極層46は導電性の高い非磁性導電材料で形成されることが好ましい。例えば前記第2電極層46はAu、CuあるいはAg等のうちいずれか1種以上で形成されることが好ましい。前記第2電極層46に高い導電性が求められるのは、センス電流がこの第2電極層46を通って多層膜40側に流れやすくするためである。
【0144】
一方、第1電極層43も導電性が高いことが好ましいが、本実施形態ではこの第1電極層43が主に多層膜40にまでセンス電流を流す電流経路になるわけではないので、前記第1電極層43の導電性は第2電極層46の導電性より低くてもよい。ただし前記導電性は前記第2反強磁性層31より高いことが好ましい。
【0145】
ところで仮に前記第1電極層43が第2電極層46と同様に導電性に優れたAuなどで形成された場合、Auは延性が大きいからスライダ加工時に前記電極層表面を研磨したとき、電極層がスメアリングを起す可能性がある。このスメアリングの発生領域はできる限り小さいことが再生特性を向上させる上で好ましく、また第1電極層43の形成領域は第2電極層46の形成領域より大きくなりやすいから、第2電極層46ほど高い導電性を必要としない第1電極層43は導電性よりむしろ延性が小さい非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記第1電極層43は、Auと、Pd、Cr、Cuのうちいずれか1種以上とからなる合金材料、またはCr、Rh、Ru、Ta、Wのうちいずれか1種以上で形成されることが好ましい。ただし前記スメアリングが前記第1電極層43の形成領域でほとんど問題とならない場合には、前記第1電極層43を第2電極層46と同様の非磁性導電材料で形成してもよい。なお「延性」の大小については「延性試験」によって測定できるが、本発明のように薄膜状態であると「延性」を測定できないから、電極層の材質で形成されたバルク状態のもので「延性」の大小を測定して材質を選択したり、あるいは文献等で既に一般的に知られている化学的な知識により、第1電極層43及び第2電極層46の材質を選択できる。
【0146】
また図3に示す実施形態では、前記第1電極層43、第2反強磁性層31の内側端面43a、31b上から前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30上にかけて第2ストッパ層44が形成され、その上に第2保護層45が形成され、この第2保護層45上に第2電極層46が形成されるが、第2ストッパ層44として必要な性質は、まず導電性であることと、第2電極層46よりもエッチングレートが遅いことである。導電性である必要性は、前記第2電極層46から前記第2ストッパ層44を介して多層膜40側にセンス電流が流れるからである。次に前記第2電極層46よりもエッチングレートが遅い必要性は、後述する製造方法によれば、前記多層膜40の素子中央部上に形成された前記第2電極層46をエッチングで除去する工程があるが、オーバーエッチングしたときでも、前記エッチングが前記第2電極層46下の層に影響を与えないようにするためである。オーバーエッチングしても露出するのはエッチングレートの遅い第2ストッパ層44であるから、前記第2ストッパ層44はオーバーエッチングによって全て除去される心配がなく、その下の層に前記エッチングの影響が及ぶのを回避することができる。
【0147】
なお第2ストッパ層44の材質については図1で説明した通りであるのでそちらを参照されたい。
【0148】
また図3に示す実施形態のように前記第2反強磁性層31と第1電極層43間にも第1ストッパ層33及び第1保護層34が設けられていることが好ましい。前記第1ストッパ層33を設けることで、第1電極層43を所定形状にエッチング等の工程を施して形成した後、前記第2反強磁性層31の素子の中央をイオンミリングで削る工程において、削り深さを適切に制御でき、図3のように前記第2反強磁性層31の膜厚よりも薄い膜厚の前記第2反強磁性層31の内側先端部31aを精度良く所定膜厚で残すことが可能である。
【0149】
図3に示す磁気検出素子は、前記第2電極層46からのセンス電流が、多層膜40の各膜面に対しほぼ平行な方向に流れるCIP(current in the plane)型となっているが、図3に示す磁気検出素子の構成を、前記センス電流が前記多層膜40の各層を膜厚方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0150】
その実施形態は図4であり、図4は本発明における第4実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図3と同じ符号が付けられている層は図3と同じ層を示している。
【0151】
図4に示す実施形態では、基板20が下部電極層であり、例えば磁性材料で形成された下部シールド層である。
【0152】
図4に示す実施形態では、図3の第1電極層43及び第2電極層46が形成されていた位置にAlやSiOなどの絶縁材料で形成された絶縁層47、48が形成される。また図3のように第4保護層39を形成せず、前記絶縁層48、47上から素子中央部の非磁性中間層29上にかけて上部電極層42が形成される。前記上部電極層42は例えば磁性材料で形成された上部シールド層である。
【0153】
図4に示す実施形態では、第2反強磁性層31と上部電極層42間に絶縁層47、48が形成されるので、前記上部電極層42から多層膜40に膜厚方向に流れるセンス電流が前記第2反強磁性層31に分流するのを抑制でき再生出力の大きい磁気検出素子を製造することができる。
【0154】
図5ないし図13は図1に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。図5ないし図13に示す各工程は記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0155】
図5に示す工程では、基板20上に、シードレイヤ21、第1反強磁性層22、固定磁性層23、非磁性材料層27、フリー磁性層28、非磁性中間層29、強磁性層30、第2反強磁性層31d、及び非磁性層50を連続成膜する。成膜にはスパッタや蒸着法が使用される。スパッタ法には、dcマグネトロンスパッタ法、rfスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。図5に示す固定磁性層23は、例えばCoFe合金などで形成された磁性層24と磁性層26と、両磁性層24、26間に介在するRuなどの非磁性の中間層25との人工フェリ構造である。前記フリー磁性層28は、NiFe合金などの磁性材料で形成されるが、前記フリー磁性層28と非磁性材料層27との間にCoFe合金などで形成された拡散防止層が形成されていてもよい。また非磁性中間層29とフリー磁性層28の間にCoFeが挿入されてもよい。これによりフリー磁性層28と強磁性層30間に働くRKKY相互作用による交換結合を強くできる。
【0156】
図5に示す工程では、前記フリー磁性層28上に非磁性中間層29を介して強磁性層30が形成されており、この3層で人工フェリ構造が構成されている。
【0157】
図5に示す工程では、前記非磁性中間層29をRu、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成することが好ましい。また前記非磁性中間層29を例えば6Å〜11Åの膜厚で形成する。この程度の薄い膜厚であると、前記フリー磁性層28と前記強磁性層30間でRKKY相互作用による交換結合が発生し、前記フリー磁性層28と強磁性層30の磁化はトラック幅方向(図示X方向)と平行な方向であって且つ反平行状態になる。
【0158】
本発明では、前記フリー磁性層28の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層30の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)が、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下となるように、前記フリー磁性層28及び前記強磁性層30の各単位面積当たりの磁気モーメントを調整することが好ましい。
【0159】
前記単位面積当たりの磁気モーメントの大きさは、フリー磁性層28及び強磁性層30に使用される材質と膜厚を調整することで行われる。文献等により前記材質から飽和磁化Msを導き出し、前記飽和磁化Msと膜厚tとの積で前記単位面積当たりの磁気モーメントを求める。
【0160】
また本発明では、前記フリー磁性層28の膜厚(t)から前記強磁性層30の膜厚(t)を引いた膜厚差が0Å以上で30Å以下となるように、前記フリー磁性層28及び前記強磁性層30の各膜厚を調整することが好ましい。
【0161】
ここで前記フリー磁性層28及び強磁性層30に使用される材質の一例を挙げると、前記フリー磁性層28はCo90at%Fe10at%/Ni80at%Fe20at%/Co90at%Fe10at%で、強磁性層30はCo90at%Fe10at%、あるいは前記フリー磁性層28及び強磁性層30ともにCo90at%Fe10at%であり、かかる材質を使用して、前記膜厚差が0Å以上で30Å以下となるように、前記フリー磁性層28及び前記強磁性層30の各膜厚を調整する。また特に、前記フリー磁性層28及び強磁性層30ともにCo90at%Fe10at%を使用する場合には前記合成磁気モーメント(Net Mst)を、0(T・nm)より大きく1.5(T・nm)以下、前記膜厚差を0Åより大きく10Å以下とすることがより好ましい。
【0162】
上記のように合成磁気モーメントおよび膜厚差を適切な範囲内に収める理由は、完成した磁気検出素子の領域B(図1を参照されたい)での感度を鈍化させてサイドリーディングの発生を抑制するためであるが、特に前記合成磁気モーメントおよび膜厚差をプラス側の値にすることで製造工程上、以下のような効果を期待することができる。
【0163】
すなわち、合成磁気モーメントに対するスピンフロップ磁界Hsfの値は、前記合成磁気モーメントがマイナス側の値よりもプラス側の値の方が急激に大きい値になりやすい。前記フリー磁性層28及び強磁性層30の磁化制御を行うときの磁場中アニールでの印加磁場は、前記スピンフロップ磁界よりも小さい値である方が、前記フリー磁性層28及び強磁性層30が予期せぬ方向に磁化されてしまうことを防ぎ、前記フリー磁性層28及び強磁性層30を所定方向に磁化制御できて好ましいが、上記したように、前記合成磁気モーメントの大きさをプラス側の値にすることでスピンフロップ磁界を大きな値にできるから、前記フリー磁性層28及び強磁性層30の磁化制御を行うための磁場中アニール時の磁場強度のマージンを広くとりやすくなり、容易に且つ適切に前記フリー磁性層28及び強磁性層30を反平行状態にしつつ固定磁性層23の磁化方向と交差する方向に磁化制御できる。よって前記合成磁気モーメントの大きさをプラス側の値になるように調整している。また同様の理由から前記フリー磁性層28及び強磁性層30の膜厚差もプラス側の値であることが好ましい。
【0164】
図5に示す工程では前記第1反強磁性層22及び第2反強磁性層31dを、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成することが好ましい。
【0165】
また前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0166】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0167】
また図5工程では前記第1反強磁性層22の膜厚を80Å以上で300Å以下で形成することが好ましい。この程度の厚い膜厚で前記第1反強磁性層22を形成することにより磁場中アニールで、前記第1反強磁性層22と固定磁性層23間に大きな交換結合磁界を発生させることができる。具体的には、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を発生させることができる。
【0168】
また本発明では前記第2反強磁性層31dの膜厚を20Å以上で50Å以下で形成することが好ましく、より好ましくは30Å以上で40Å以下で形成する。
【0169】
上記のように前記第2反強磁性層31dを50Å以下の薄い膜厚で形成することにより、前記第2反強磁性層31dは非反強磁性の性質を帯びる。このため下記の第1の磁場中アニールを施しても、前記第2反強磁性層31dは規則化変態しにくく、前記第2反強磁性層31dと強磁性層30間に交換結合磁界が発生せずあるいは発生してもその値は小さく、前記強磁性層30及びフリー磁性層28の磁化が、固定磁性層23と同じように強固に固定されることがない。
【0170】
また前記第2反強磁性層31dが20Å以上、好ましくは30Å以上で形成されるとしたのは、この程度の膜厚がないと、後工程で前記第2反強磁性層31d上に重ねて第2反強磁性層31cを形成しても、第2反強磁性層31dと第2反強磁性層31cとを合わせた第2反強磁性層31が反強磁性の性質を帯び難く、前記第2反強磁性層31と強磁性層30間に適切な大きさの交換結合磁界が発生しないからである。
【0171】
また図5の工程のように前記第2反強磁性層31d上に非磁性層50を形成することで、図5に示す積層体が大気暴露されても前記第2反強磁性層31dが酸化されるのを適切に防止できる。
【0172】
ここで前記非磁性層50は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である必要がある。また熱拡散などにより前記非磁性層50を構成する元素が第2反強磁性層31d内部に侵入しても反強磁性層としての性質を劣化させない材質である必要がある。
【0173】
本発明では前記非磁性層50をRu、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rh、Cu、Crのいずれか1種または2種以上からなる元素で形成することが好ましい。
【0174】
Ruなどの元素からなる非磁性層50は大気暴露によって酸化されにくい緻密な層である。したがって前記非磁性層50の膜厚を薄くしても前記第2反強磁性層31dが大気暴露によって酸化されるのを適切に防止できる。
【0175】
本発明では前記非磁性層50を3Å以上で10Å以下で形成することが好ましい。この程度の薄い膜厚の非磁性層50によっても前記第2反強磁性層31dが大気暴露によって酸化されるのを適切に防止することが可能である。
【0176】
本発明では上記のように前記非磁性層50をRuなどの元素で形成し、しかも前記非磁性層50を3Å〜10Å程度の薄い膜厚で形成したことで、前記非磁性層50をイオンミリングで削り込む段階において、前記イオンミリングを低エネルギーで行うことができミリング制御を従来に比べて向上させることができる。
【0177】
図5に示すように基板20上に非磁性層50までの各層を積層した後、第1の磁場中アニールを施す。トラック幅Tw(図示X方向)と直交する方向である第1の磁界(図示Y方向)を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、第1反強磁性層22と固定磁性層23を構成する磁性層24との間に交換結合磁界を発生させて、前記磁性層24の磁化を図示Y方向に固定する。もう一方の磁性層26の磁化は、前記磁性層24との間で働くRKKY相互作用による交換結合によって図示Y方向とは逆方向に固定される。なお例えば前記第1の熱処理温度を270℃とし、磁界の大きさを800(kA/m)とする。
【0178】
また上記したように、この第1の磁場中アニールによって前記第2反強磁性層31dと強磁性層30との間には交換結合磁界は発生しないかあるいは発生してもその値は小さい。前記第2反強磁性層31dは50Å以下の薄い膜厚で形成されており、反強磁性としての性質を有していないからである。
【0179】
また上記した第1の磁場中アニールによって、非磁性層50を構成するRuなどの元素が、第2反強磁性層31d内部に拡散するものと考えられる。従って熱処理後における前記第2反強磁性層31dの表面近くの構成元素は、反強磁性層を構成する元素とRuなどの元素とから構成される。また前記第2反強磁性層31d内部に拡散したRuなどの元素は、前記第2反強磁性層31dの下面側よりも前記第2反強磁性層31dの表面側の方が多く、拡散したRuなどの元素の組成比は、前記第2反強磁性層31dの表面から下面に向うに従って徐々に減るものと考えられる。このような組成変調は、SIMS分析装置などで確認することが可能である。
【0180】
次に前記非磁性層50を、イオンミリングで削る。ここで前記非磁性層50を削る理由は、できる限り前記非磁性層50の膜厚を薄くしておかないと、次工程で前記第2反強磁性層31dの上にさらに積み重ねて付け足される第2反強磁性層31cとの間で反強磁性的な相互作用を生じさせることができないからである。
【0181】
図5工程では、このイオンミリング工程で、前記非磁性層50をすべて削りとってしまってもよいが、3Å以下であれば前記非磁性層50を残してもよい。この程度にまで前記非磁性層50の膜厚を薄くすることで、次工程で、付け足されて膜厚が厚くされた第2反強磁性層31を反強磁性体として機能させることができる。
【0182】
図5に示すイオンミリング工程では、低エネルギーのイオンミリングを使用できる。その理由は、前記非磁性層50が3Å〜10Å程度の非常に薄い膜厚で形成されているからである。またRuなどで形成された非磁性層50は3Å〜10Å程度の薄い膜厚であっても、その下に形成された第2反強磁性層31dが酸化されるのを十分に防止でき、低エネルギーのイオンミリングによって前記非磁性層50の削り量をミリング制御しやすい。
【0183】
次に図6工程を施す。図6に示す工程では、膜厚の薄い第2反強磁性層31d上(あるいは一部、非磁性層50が残されている場合には前記非磁性層50上)に第2反強磁性層31cを積み重ねて付け足す。そしてこの2つの第2反強磁性層31d、31cで膜厚の厚い第2反強磁性層31を構成する。このとき前記第2反強磁性層31を80Å以上で300Å以下の膜厚となるようにする。
【0184】
次に前記第2反強磁性層31の上に第1ストッパ層33を形成する。前記第1ストッパ層33を、Cr、Ta、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種または2種以上の元素で形成することが好ましい。前記第1ストッパ層33を30Å〜100Åの膜厚で形成することが好ましい。
【0185】
また前記第1ストッパ層33上に第1保護層34を形成することが好ましい。前記第1ストッパ層33及びその下の層を大気暴露による酸化から適切に保護するためである。また第1保護層34は第2反強磁性層31をエッチングする際のマスク層の一部としても機能する。前記第1保護層34を例えばTaで形成する。
【0186】
次に第2の磁場中アニールを施す。このときの磁場方向は、トラック幅方向(図示X方向)である。なおこの第2の磁場中アニールは、第2の印加磁界を、第1反強磁性層22の交換異方性磁界よりも小さく、またフリー磁性層28及び強磁性層30のスピンフロップ磁界よりも小さく、さらに前記フリー磁性層28及び強磁性層30の保磁力や異方性磁界よりも大きい値とする。
【0187】
また熱処理温度を、前記第1反強磁性層22のブロッキング温度よりも低くする。これによって、前記第1反強磁性層22と第2反強磁性層31を共に、上記したPtMn合金やPtMnX合金等で形成しても、前記第1反強磁性層22の交換異方性磁界の方向をハイト方向(図示Y方向)に向けたまま、前記第2反強磁性層31の交換異方性磁界をトラック幅方向(図示X方向)に向けることができる。なお第2の熱処理温度は例えば250℃であり、磁界の大きさは24(kA/m)である。
【0188】
上記の第2の磁場中アニールによって、前記第2反強磁性層31は適切に規則化変態し、前記第2反強磁性層31と強磁性層30間に適切な大きさの交換結合磁界が発生し、これによって前記強磁性層30の磁化は、トラック幅方向(図示X方向)に固定されるが、前記印加磁界が前記スピンフロップ磁界Hsfよりも大きいと、前記強磁性層30が所望の方向(トラック幅方向)からずれた状態でアニールされ、前記強磁性層30が意図しない方向に磁化固定されてしまう。このため本発明では前記印加磁界の大きさをスピンフロップ磁界Hsfよりも小さい値にする。また本発明では前記フリー磁性層28と強磁性層30との単位面積当たりの合成磁気モーメント及び膜厚差を所定範囲内に設定することで、前記スピンフロップ磁界を大きくできるから前記印加磁界のマージンを広くとることができ、第2の磁場中アニールを容易に且つ適切に行いやすい。
【0189】
また前記印加磁界が前記フリー磁性層28や強磁性層30の保磁力及び異方性磁界より小さいと前記フリー磁性層28及び強磁性層30が単磁区の状態でアニールされないので、本発明では前記印加磁界を前記フリー磁性層28及び強磁性層30の保磁力及び異方性磁界よりも大きい値に設定している。
【0190】
上記の第2の磁場中アニールによって、前記フリー磁性層28の磁化は前記強磁性層30との間で生じるRKKY相互作用による交換結合により、前記強磁性層30とは反平行に磁化され固定される。なおこの第2の磁場中アニールは、図6工程以降で行ってもよいが、図9工程以降に行うことがより好ましい。
【0191】
次に図7に示す工程では、前記第1保護層34上にトラック幅方向(図示X方向)に所定の間隔T3を開けたマスク層51を形成する。前記間隔T3は、少なくともトラック幅Twよりも広い間隔で形成する。またこの工程では前記マスク層51を反応性イオンエッチング(RIE)で削られない、あるいは削られ難い材質で形成する。前記マスク層51をレジストで形成してもよいが、金属層で形成すると前記マスク層51が残されてもこのマスク層51を電極として機能させることができる。図7工程では前記マスク層51を金属層で形成しており、例えば前記マスク層51をCr層で形成している。なお次工程で、このマスク層51に覆われていない第1保護層34、第1ストッパ層33、および第2反強磁性層31をエッチングしていくが、このエッチング工程が終るまで少なくとも前記マスク層51の下の第1保護層34は残されている必要がある。このため前記マスク層51を形成する際の前記マスク層51の材質や膜厚を工夫する必要がある。例えば前記マスク層51がCr層で形成されているとき、第1ストッパ層33もCrで形成されているときは、前記マスク層51の膜厚を前記第1ストッパ層33の膜厚よりも厚くしておかないと、第1ストッパ層33が削り取られた際に既に前記マスク層51が第1保護層34上に残されていないという事態が生じてしまう。また前記マスク層51及び第1保護層34は前記第2反強磁性層31に比べてエッチングレートが遅い、あるいは前記第2反強磁性層31をエッチングする際に使用されるエッチングガスに対してエッチングされない材質で形成されることが好ましい。
【0192】
なお前記マスク層51を金属層で形成する場合、前記マスク層51を100Å〜500Å程度の膜厚で形成することが好ましい。
【0193】
前記マスク層51は、例えば前記第1保護層34の間隔T3上にリフトオフ用のレジスト層(図示しない)を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記第1保護層34の両側端部上にCrなどで形成されたマスク層をスパッタ成膜し、その後、前記レジスト層を除去して形成される。
【0194】
図8工程では、前記マスク層51に覆われていない第1保護層34をエッチングで削り取っていく。このエッチングには反応性イオンエッチング(RIE)を使用することが好ましい。エッチングガスとして、CFやCあるいはArとCFの混合ガス、またはCとArとの混合ガスを使用する。
【0195】
図8に示す点線部分の第1保護層34を削り取ると、その下には第1ストッパ層33の表面が現れる。前記第1保護層34下は第1ストッパ層33であるので、前記第1保護層34をオーバーエッチングしても露出した前記第1ストッパ層33がすべて除去されることがない。前記マスク層51間に現われる第1保護層34をオーバーエッチングすることで、前記第1保護層34の内側端面34aを適切な傾斜面あるいは湾曲面として形成でき、露出した第1ストッパ層33上に前記第1保護層34が残らないようにすることができる。
【0196】
次に図9に示す工程では、前記マスク層51間に現れた第1ストッパ層33をイオンミリングで削り(点線部分が削られた第1ストッパ層33)、さらにその下に形成された第2反強磁性層31を途中までイオンミリングで削り込む(点線部分が削られた第2反強磁性層)。なおこの工程でマスク層51も削られる。また図9に示すように素子の中央に膜厚h1の第2反強磁性層31a(上記では符号31aを「内側先端部」と称していたが、ここでは便宜上、第2反強磁性層31aと称す)が残されるが、この膜厚h1は50Å以下、好ましくは40Å以下であることが好ましい。前記第2反強磁性層31aの膜厚h1を50Å以下の薄い膜厚にすることでその下に形成されている強磁性層30との間で発生していた交換結合磁界が弱まりあるいは消滅する。なお第2の磁場中アニールを図6工程後に行わず、図9工程後に行う場合は、この部分の第2反強磁性層31aは薄いために規則化変態しにくく反強磁性特性が発生しないか発生しても弱くすることができる。なお前記第2反強磁性層31の削り込み量はイオンミリング装置に内蔵されたSIMS分析装置によりモニタしながら制御することが可能である。また素子の中央の前記第2反強磁性層31aは全て削られ、この部分から強磁性層30の表面が現れてもよい。ただし素子の中央の第2反強磁性層31aを全て削り取った瞬間にエッチングを止めることは難しく、かかる場合、このエッチングの影響が強磁性層30にも及ぶので、図9のように50Å以下の薄い膜厚で素子の中央に第2反強磁性層31aを残すことが好ましい。
【0197】
またマスク層51間に現れた第1保護層34、第1ストッパ層33及び第2反強磁性層31をエッチングで削り込むことで、前記第1保護層34の内側端面34aと前記第2反強磁性層31の内側端面31bを連続した傾斜面あるいは湾曲面として形成することができる。なお図9に示すように上記イオンミリング工程で、前記マスク層51はすべて除去されてもよいが(点線で示されている)、若干、マスク層51が残されていてもよい。
【0198】
図9工程後、図9に示す製造途中の磁気検出素子の素子ハイト長さ(図示Y方向への長さ寸法)を規定するため、前記磁気検出素子を所定形状にパターニングして素子ハイト奥側を除去し、その除去された部分にAlなどで形成された絶縁層(これをバックフィルギャップ層とも呼ぶ)を形成する。
【0199】
次に図10に示す工程では、前記第1保護層34上から前記第1保護層34及び第2反強磁性層31の内側端面34a、31b上、さらには素子の中央に残された前記第2反強磁性層31a上にかけて第2ストッパ層35を形成し、さらにその上に第2保護層36を形成する。さらに図10に示す工程では前記第2保護層36上に電極層37を形成し、前記電極層37上に第3保護層38を形成する。前記第2ストッパ層35は第1ストッパ層33として使用可能な材質で形成される。また前記第2保護層36及び第3保護層38は第1保護層34として使用可能な材質で形成される。
【0200】
また前記電極層37は、Au、Pd、Cr、Rh、Ru、Ta、Wなどの非磁性導電材料で形成される。
【0201】
前記第2ストッパ層35として必要な性質はまず導電性であることである。前記第2ストッパ層35は、図1のように電極層37の内側先端部37b下に一部残され、センス電流は前記電極層37の内側先端部37bから多層膜40側にかけて流れるため、前記第2ストッパ層35が電気的に絶縁性であるとセンス電流の流れを阻害することになるからである。
【0202】
次に前記第2ストッパ層35は前記電極層37よりもエッチングレートが遅い材質であることが好ましい。あるいは前記電極層37のエッチング時に使用されるエッチングガスによってエッチングされない材質であることが好ましい。前記電極層37は例えばAuなどで形成され、この電極層37をエッチングする際にArガスやArとCの混合ガスなどを使用するが、このとき前記第2ストッパ層35をCrなどで形成することで、ArガスやArとCの混合ガスに対するエッチングレートを前記電極層37よりも遅らせることが可能になる。
【0203】
また前記第2ストッパ層35がCrで形成され、電極層37がAuで形成されているとき、前記第2ストッパ層35と電極層37とが元素拡散しやすくなるので、それを防ぐため前記第2ストッパ層35と電極層37間にTaなどで形成された第2保護層36を設けることが好ましい。上記のような元素拡散が生じない場合には前記第2保護層36を設けなくてもよい。
【0204】
また前記第3保護層38は前記電極層37を大気暴露による酸化から保護するための酸化防止層である。
【0205】
また上記したように、図10工程前に磁気検出素子は素子ハイト長さが所定寸法に規制されているので、前記電極層37のハイト側端面は、その下に形成された基板20から第2反強磁性層31までの多層膜のハイト側端面よりもさらにハイト方向(図示Y方向)に長く延ばして形成することができる。これにより素子抵抗を低下させて、再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能である。
【0206】
次に図11に示す工程では、前記第3保護層38上にトラック幅方向(図示X方向)に所定の間隔T4が開けられたマスク層52を形成する。このマスク層52間に開けられた間隔T4のトラック幅方向への中心が素子のトラック幅方向への中心と一致するように、前記マスク層52をアライメント形成する。またこの工程では前記マスク層52を反応性イオンエッチング(RIE)で削られない、あるいは削られ難い材質で形成する。前記マスク層52をレジストで形成してもよいが、金属層で形成してもよい。図11工程では前記マスク層52を金属層で形成しており、例えば前記マスク層52をCr層で形成している。なお次工程で、このマスク層52に覆われていない電極層37、素子の中央に残された第2反強磁性層31a、強磁性層30等をエッチングしていくが、このエッチング工程が終るまで少なくとも前記マスク層52あるいはその下の第3保護層38は残されている必要がある。このため前記マスク層52を形成する際の前記マスク層52の材質や膜厚を工夫する必要がある。また前記マスク層52は前記電極層37に比べてエッチングレートが遅い、あるいはエッチングされない材質で形成されることが好ましい。
【0207】
なお前記マスク層52を金属層で形成する場合、前記マスク層52を100Å〜500Å程度の膜厚で形成することが好ましい。
【0208】
前記マスク層52は、例えば前記第3保護層38の間隔T4上にリフトオフ用のレジスト層(図示しない)を形成し、前記レジスト層に覆われていない前記第3保護層38の両側端部上にCrなどで形成されたマスク層をスパッタ成膜し、その後、前記レジスト層を除去して形成される。
【0209】
また前記マスク層52のトラック幅方向(図示X方向)に開けられた間隔T4は、前記第2反強磁性層31の内側端面31bの下面間のトラック幅方向における間隔Cよりも狭くすることが好ましいが、電極層37の両側端面が傾斜面あるいは湾曲面で形成されるようにエッチングされる場合には、この限りでない。
【0210】
次に図12に示す工程では、前記マスク層52に覆われていない第3保護層38及び電極層37(図12では点線で示されている)をエッチングで削り取っていく。このエッチングには反応性イオンエッチング(RIE)を使用することが好ましい。エッチングガスとして、CFやCあるいはArとCFの混合ガス、またはCとArとの混合ガスを使用する。
【0211】
図12に示す点線部分の第3保護層38、電極層37及び第2保護層36を削り取ると、その下には第2ストッパ層35の表面が現れる。前記電極層37をすべて削り取ってもその下に現われる層は第2ストッパ層35であるから、オーバーエッチングしても前記第2ストッパ層35がすべて削り取られる心配はない。そしてオーバーエッチングすることで、前記電極層37の内側端面37aを下方から上方に向けて(図示Z方向)徐々に前記電極層37間の間隔が広がる適切な傾斜面あるいは湾曲面として形成でき、また上記エッチングで現われた第2ストッパ層35上に前記電極層37の一部が残らないようにすることができる。
【0212】
次に図13に示す工程では、前記マスク層52間に現れた第2ストッパ層35をイオンミリングで削り(点線部分が削られた第2ストッパ層35)、さらにその下に残された第2反強磁性層31aを削り、またこの図13工程では、その下に現われた強磁性層30をすべて除去してイオンミリングを止めている。このイオンミリング時の削り込み量はSIMS分析計によって制御することが可能である。特にこのイオンミリングは低エネルギーのイオンミリングを使用できる。削り込む層の膜厚が薄いからである。このためミリング制御を向上させることができ、強磁性層30をすべて除去した瞬間にミリングを止めることも精度良く行うことができる。
【0213】
ここで低エネルギーのイオンミリングとは、ビーム電圧(加速電圧)が1000V未満のイオンビームを用いたイオンミリングであると定義される。例えば、150V〜500Vのビーム電圧が用いられる。本実施の形態では、200Vの低ビーム電圧のアルゴン(Ar)イオンビームを用いている。
【0214】
図13工程ではイオンミリングで削り取られた強磁性層30下の非磁性中間層29をそのまま残しているが、一部削られてもよいし、全て削り取られフリー磁性層28の表面が露出してもよい。また図13工程では前記イオンミリングでマスク層52間に露出した強磁性層30がすべて除去されるが、一部残されていてもよい。
【0215】
図13工程を終了すると、素子中央部ではフリー磁性層28上に強磁性層30が形成されていない形態となり、また素子両側端部であって素子中央部に近い領域Bではフリー磁性層28上に非磁性中間層29を介して強磁性層30が積層された人工フェリ構造となるが、前記強磁性層30上には第2反強磁性層31は設けられておらず(図13では前記強磁性層30上に膜厚の非常に薄い第2反強磁性層31の内側先端部31aが残される)、さらに素子両側端部であって素子中央部から遠い領域Aではフリー磁性層28上に非磁性中間層29を介して強磁性層30が積層された人工フェリ構造となり、且つ前記強磁性層30上に膜厚の厚い第2反強磁性層31が積層された形態となる。
【0216】
トラック幅Twは前記強磁性層30の下面間のトラック幅方向への間隔Dで決定される。
【0217】
図13工程後、図1に示す第4保護層39を前記第3保護層38上から前記電極層37の内側端面37a、さらには露出した非磁性中間層29上にかけて形成する。例えば露出した非磁性中間層29も全て除去し、フリー磁性層28表面を露出させたときは、前記第4保護層39をスペキュラー層として機能させることができる。例えば前記第4保護層39を10〜20Å程度の膜厚のTaで形成し、このTa層を全て酸化させることで、前記第4保護層39をスペキュラー層として機能させることができる。前記第4保護層39を形成することで前記電極層37と、後工程で形成される上部シールド層間の電気的な絶縁性を高めることができる。
【0218】
以上、図5ないし図13工程を用いて図1に示す磁気検出素子の製造方法を説明したが、これら工程の特徴点は、まず図5工程で、フリー磁性層28上に非磁性中間層29及び強磁性層30を形成し、人工フェリ構造とした点、図9工程で、マスク層51に覆われていない第2反強磁性層31の素子の中央をイオンミリングで除去するが、このとき、前記第2反強磁性層31間にトラック幅Twよりも広い間隔Cを開ける点、また図12工程で、マスク層52に覆われていない電極層37をRIEで除去するが、このとき、前記電極層37のトラック幅方向に開けられる間隔を前記第2反強磁性層31間の間隔Cよりも狭くし、さらに図13工程で、前記削り取られた電極層37下の強磁性層30もイオンミリングで削り取る点にある。
【0219】
そしてこれによって前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心に延出する強磁性層30を残し、この強磁性層30間のトラック幅方向への間隔Dを前記第2反強磁性層31の間隔Cよりも狭くでき、さらに素子中央部を人工フェリ構造ではなくフリー磁性層28単体を残すことができ、また電極層37の内側先端部37bを延出形成された前記強磁性層30上にオーバーラップさせることができる。
【0220】
以上のように、フリー磁性層28上に非磁性中間層29及び強磁性層30を形成して人工フェリ構造とし、2度のマスク合わせを行うこと等で、図1に示す磁気検出素子を容易に且つ適切に形成することができる。
【0221】
ただし2度のマスク合わせはアライメント精度が高くないと、特に図12工程で、前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された強磁性層30上に、前記電極層37の内側先端部37bが左右均等な形状で形成されないといった問題がある。左右均等な形状で形成された方が再生出力の向上やサイドリーディングの発生の抑制の点からは好ましい。
【0222】
そこで図3に示す磁気検出素子のように電極層を第1電極層43と第2電極層46に分け、これら電極層43、46をそれぞれ別工程で形成する。図14ないし図17は図3に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図である。各工程図は製造工程中の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0223】
まず図6ないし図9工程を利用する。図6工程後、図7工程で第1保護層34上に第1電極層43及びTaなどの保護層55を成膜し、その上にマスク層51を形成する。そして図8工程で反応性イオンエッチング(RIE)を施して、前記マスク層51に覆われていない保護層55、第1電極層43及び第1保護層34を削り取って素子の中央に所定幅の間隔を形成し、その間隔内から第1ストッパ層33が露出した後、図9工程で、前記露出した第1ストッパ層33及び第2反強磁性層31をイオンミリングで削り取り、素子の中央に所定幅の間隔を形成する。その状態が図14である。
【0224】
図14に示すように前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端面43a、31bは連続面として形成され、また前記第1電極層43及び第2反強磁性層31のトラック幅方向に形成された間隔は下方から上方に向うにしたがって徐々に前記間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面として形成される。
【0225】
なお図14に示すように素子の中央には、その両側の第2反強磁性層31よりも膜厚の薄い第2反強磁性層31aが残されているが、この素子の中央の第2反強磁性層31aは全て除去され、その下に強磁性層30表面が露出していてもよい。
【0226】
次に図15工程では前記保護層55上から前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端面43a、31b、及び素子の中央に残された膜厚の薄い第2反強磁性層31a上にかけて第2ストッパ層44を形成し、さらに前記第2ストッパ層44上に第2保護層45を形成する。例えばこの工程ではイオンビームスパッタ法を使用して成膜する。
【0227】
前記第2ストッパ層44は、特に素子の中央に残された第2反強磁性層31a上に所定膜厚で形成されていることが望ましく、それは後の工程で、この部分での前記第2ストッパ層44を適切にストッパ層として機能させなければならないからである。よって前記第2ストッパ層44を成膜するときのスパッタ角度は、基板20表面に対し垂直方向と平行な方向かあるいは前記垂直方向に近い角度であることが好ましい。
【0228】
この工程では前記第2ストッパ層44をCrあるいはTa、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種または2種以上の元素で形成することが好ましい。前記第2ストッパ層44として必要な性質はまず導電性であることである。前記第2ストッパ層44は、後述する第2電極層46の下に一部残され、センス電流は前記第2電極層46から多層膜40側にかけて流れるため、前記第2ストッパ層44が電気的に絶縁性であるとセンス電流の流れを阻害することになるからである。
【0229】
次に前記第2ストッパ層44は後述する第2電極層46よりもエッチングレートが遅い材質であることが好ましい。あるいは前記第2電極層46のエッチング時に使用されるエッチングガスによってエッチングされない材質であることが好ましい。前記第2電極層46は例えばAuなどで形成され、この第2電極層46をエッチングする際にArガスやArとCの混合ガスなどを使用するが、このとき前記第2ストッパ層44をCrなどで形成することで、ArガスやArとCの混合ガスに対するエッチングレートを第2電極層46よりも遅らせることが可能になる。
【0230】
ただし前記第2電極層46がAuで形成され、前記第2ストッパ層44がCrで形成されていると、前記第2電極層46と第2ストッパ層44とが元素拡散を起すので、前記第2電極層46と前記第2ストッパ層44間にはTaなどで形成された第2保護層45を介在させることが好ましい。
【0231】
また前記第2電極層46を成膜するときのスパッタ角度はθ1{基板20に対し垂直方向(図示Z方向)からの傾き}である。前記θ1は50°から70°程度である。すなわち前記スパッタ角度θ1を大きくしてより斜め方向から前記第2電極層46がスパッタ成膜されるようにする。
【0232】
このように前記スパッタ角度θ1を大きくすることで、前記第1電極層43の内側端面43a、および第2反強磁性層31の内側端面31b上に前記第2ストッパ層44及び第2保護層45を介して成膜される第2電極層46のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚T5を、素子の中央に残された第2反強磁性層31a上に前記第2ストッパ層44及び第2保護層45を介して形成される第2電極層46の膜厚T6及び、第1電極層43の上面に保護層55、第2ストッパ層44及び第2保護層45を介して形成される第2電極層46の膜厚T7に比べて厚く形成できる。
【0233】
このように前記第2電極層46の膜厚を調整しないと次工程でのイオンミリングあるいは反応性イオンエッチング(RIE)で、前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端部43a、31b上に形成された第2電極層46がすべて除去されてしまい、あるいは第2電極層46が残ってもその膜厚は非常に薄くなり、適切なオーバーラップ構造の電極層を形成することができない。
【0234】
また前記第2反強磁性層31aに形成された第2電極層46の膜厚T6は、その両側に膜厚の厚い前記第2反強磁性層31及び第1電極層43が存在するため、スパッタ時にこの第2反強磁性層31及び第1電極層43の存在によって、素子の中央に残された前記第2反強磁性層31a上は影になる、いわゆるシャドー効果によって薄く形成されやすい。
この工程では、前記第1電極層43の内側端面43a上、及び第2反強磁性層31の内側端面31b上に形成された前記第2電極層46の膜厚T5を左右均等の大きさで形成しやすい。
【0235】
次に図16の矢印に示すように基板20に対し垂直方向(図示Z方向と平行な方向)あるいは垂直方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0°〜20°程度)から反応性イオンエッチング(RIE)で異方性エッチングする。このとき素子の中央に残された前記第2反強磁性層31a上に形成された第2電極層46を適切に除去できるまで前記RIEを施す。このイオンミリングやRIEによって第1電極層43上に形成された第2電極層46も一部除去されるが、依然として若干残されやすい。
【0236】
また前記第1電極層43の内側端面43a上、および第2反強磁性層31の内側端部31b上に形成された第2電極層46も若干削れるものの、図15に示すように前記第2反強磁性層31a上に形成された第2電極層46よりも厚い膜厚T5を有し、しかもエッチング方向は、前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端部34a、31b上に形成された第2電極層46から見ると斜め方向になるため、第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端部43a、31b上に形成された第2電極層46は、第2反強磁性層31a上に形成された第2電極層46に比べて削られ難く、よって前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端部43a、31b上には適度な膜厚T8の第2電極層46が残される。
【0237】
図16に示すように、前記第2電極層46が全て除去された素子中央部には第2ストッパ層44が現れている。前記第2ストッパ層44は例えば前記第2電極層46よりもエッチングレートが遅い材質で形成されている。このため前記素子中央部上の第2電極層46を全て除去するためにオーバーエッチングしても、第2ストッパ層44がその下の層を前記エッチングから適切に保護する。
【0238】
図16に示すRIE工程では、前記第1電極層43の内側端面43a上、および第2反強磁性層31の内側端面31b上に形成された第2電極層46を左右均等の膜厚で削り込んでいく。このため前記内側端面31b、43a上に残される第2電極層46の膜厚T8は左右均等な大きさとなる。
【0239】
次に図17工程を施す。図17工程ではイオンミリングを施して、素子中央部から露出する第2ストッパ層44、膜厚の薄い第2反強磁性層31a及び強磁性層30(図17では点線で示されている)を削り取る。これによって前記素子中央部からは非磁性中間層29表面が露出する。
【0240】
また前記イオンミリングで前記第1電極層43上に一部残されていた第2電極層46が除去され、前記第2電極層46は、前記第1電極層43及び第2反強磁性層31の内側端面43a、31b上にのみ残される。
【0241】
なお図17におけるイオンミリングのミリング角度は基板20に対し垂直方向に近い方向からのものである。これによって、前記第1電極層43の内側端面43a及び第2反強磁性層31の内側端面31bに形成された第2電極層46は、このイオンミリングの影響を受け難く、それでも若干削られて、前記第2電極層46の膜厚はT2となり、左右均等の膜厚を維持している。この膜厚T2は多層膜40へのオーバーラップ長となり、本発明では前記膜厚T2は50Å以上で1000Å以下であることが好ましい。
【0242】
なお図17工程では前記素子中央部から非磁性中間層29表面が露出するが、この露出した前記非磁性中間層29も除去して、前記素子中央部からフリー磁性層28表面を露出させてもよい。
【0243】
また図17工程では、素子中央部から露出した強磁性層30をすべて除去しているが、一部残してもかまわない。
【0244】
図17工程では、前記強磁性層30の下面間の間隔Dでトラック幅Twが規制される。
【0245】
その後、図3に示すように、前記保護層55上から前記第2電極層46の内側端面上、さらには素子中央部に露出した非磁性中間層29上にかけて第4保護層39を形成する。前記第4保護層39は例えばTaの酸化層などである。
【0246】
以上が図3に示す磁気検出素子の製造方法であるが、図3に示す磁気検出素子の製造方法では、図1に示す磁気検出素子の製造方法のように2度のマスク合わせを必要とせず、第1電極層43と第2電極層46とを別々に形成することができる。図3に示す磁気検出素子では、図7と同様の工程を施して、一度マスク合わせをし、第1電極層43を素子両側の第2反強磁性層31上に所定の形状で形成するが、図15ないし図17工程での第2電極層46の形成ではマスク合わせを必要とせず、スパッタ成膜及びイオンミリングやRIEの工程のみを施すことで、前記第2電極層46を左右均等の膜厚で形成することができ、左右均等のオーバーラップ構造を精度良く形成することができるのである。
【0247】
図3に示す磁気検出素子の製造方法でも図1に示す磁気検出素子の製造方法と同様に、まず図5工程で、フリー磁性層28上に非磁性中間層29及び強磁性層30を形成し、人工フェリ構造とした点、図9工程で、マスク層51に覆われていない第2反強磁性層31の素子の中央をイオンミリングで除去するが、このとき、前記第2反強磁性層31間にトラック幅Twよりも広い間隔Cを開ける点、また図16工程で、第2電極層46の素子中央部のみをRIEなどを用いて除去し、さらに図17工程で、素子中央部に現われた第2ストッパ層44、膜厚の薄い第2反強磁性層31a及び強磁性層30を除去している。
【0248】
そしてこれによって前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心に延出する強磁性層30を残し、この強磁性層30間のトラック幅方向への間隔Dを前記第2反強磁性層31の間隔Cよりも狭く形成することができ、さらに素子中央部を人工フェリ構造ではなくフリー磁性層28単体を残すことができ、また第2電極層46を延出形成された前記強磁性層30上にオーバーラップさせることができる。
【0249】
また図1及び図3に示す実施形態において、共に図9工程で、素子の中央に膜厚の薄い第2反強磁性層31aを残したが、前記第2反強磁性層31aを残すことで、その下の強磁性層30を図9工程時のイオンミリングから保護でき、また薄い膜厚で残された第2反強磁性層31aは、最終的に、前記第2反強磁性層31の内側端面31bよりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された領域Bの強磁性層30上に、内側先端部31aとして残される。
【0250】
また図10工程及び図15工程では、第2ストッパ層35、44を形成したが、この第2ストッパ層35、44を形成することで、図12及び図16工程時にオーバーエッチングしても前記第2ストッパ層35、44の存在でその下の層にエッチングの影響が及ばないようにでき、次の図13及び図17工程で、SIMS分析装置などを用いて低エネルギーのイオンミリングで削り量を容易に且つ精度良く調整できるので、特に素子中央部から露出したフリー磁性層28を削りすぎるなどの不具合を回避することができる。
【0251】
なお図2及び図4に示すCPP型の磁気検出素子を製造する場合には、図5ないし図17と同様の工程を用い、電極層を形成するときに、この電極層に代えてAlやSiOなどで形成された絶縁層を形成すればよい。なおCPP型の磁気検出素子を製造するには基板20を下部電極層とし、さらに各工程が終了した後、第4保護層39を成膜せず、その代わりに上部電極層を形成する。
【0252】
また本発明における磁気検出素子はハードディスク装置に内蔵される磁気ヘッドに装備されるほか磁気センサなどにも使用可能である。
【0253】
【実施例】
本発明では図18A及び図18Bに示す形態の磁気検出素子を形成し、各磁気検出素子の再生出力について調べた。
【0254】
図18に示す磁気検出素子は、フリー磁性層から上の層構造のみが模式図的に示されている。図18に示す磁気検出素子は図示しない基板上にPtMn合金で形成された第1反強磁性層、人工フェリ構造の固定磁性層、Cuで形成された非磁性材料層が積層され、前記非磁性材料層上にフリー磁性層、非磁性中間層及び強磁性層が形成されている。
【0255】
まず前記フリー磁性層を膜厚が32ÅのCo90at%Fe10at%、非磁性中間層は膜厚を9ÅのRu、および強磁性層を膜厚が14ÅのCo90at%Fe10at%で形成した。また第2反強磁性層を膜厚が200ÅのPt50at%Mn50at%で形成し、電極層をAuで形成した。
【0256】
図18Aに示す磁気検出素子は、前記強磁性層が素子中央部には形成されず素子両側端部上にのみ形成されているが、図18Bに示す磁気検出素子は、前記強磁性層が素子中央部上及び素子両側端部上の全域に形成される。
【0257】
トラック幅Tw(図18Aでは強磁性層間の間隔、図18Bでは第2反強磁性層間の間隔)は0.2μm程度である。また図18Aおよび図18Bには、フリー磁性層及び強磁性層に矢印が記載されているが、この矢印は磁化方向を示している。前記フリー磁性層及び強磁性層はその間に非磁性中間層を挟んだ人工フェリ構造となっており、前記フリー磁性層及び強磁性層の磁化が互いに反平行状態になっている。
【0258】
実験では、図18A及び図18Bに示す磁気検出素子を用い、外部磁界が±100Oe(ここで+100Oeの外部磁界とは例えばハイト方向への外部磁界の方向及び強さを指し、―100Oeの外部磁界とはハイト方向と逆方向への外部磁界の方向及び強さを指す)時のときの電圧差(ΔV)を求めた。この電圧差が大きいほど再生出力が大きいことを示している。なお100Oeは約7.9×10(A/m)である。
【0259】
その結果、図18Aに示す磁気検出素子では、1.17mVの電圧差が生じ、図18Bに示す磁気検出素子では、0.33mVの電圧差が生じた。このように図18Aに示す磁気検出素子の形態のように、素子中央部に強磁性層が形成されずフリー磁性層のみが形成された単層構造である方が、図18Bのように素子中央部も人工フェリ構造となっている構造に比べて再生出力の向上を図ることができるとわかった。そこで本発明では図1ないし図4のように、素子中央部はフリー磁性層28のみで構成し、その上に非磁性中間層29を介して強磁性層30を形成しないこととした。
【0260】
次に図18Bに示す磁気検出素子を用い、フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントから強磁性層との単位面積当たりの磁気モーメントを引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)と再生出力との関係、およびフリー磁性層の膜厚から強磁性層の膜厚を引いた膜厚差と再生出力との関係について調べた。
【0261】
実験に使用した磁気検出素子の膜構成は図18Bであり、各層の材質及び膜厚は上記した通りである。
【0262】
実験では、フリー磁性層及び強磁性層の膜厚を変化させ、前記フリー磁性層及び強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(飽和磁化Ms×膜厚t)を変化させた。そして図18Bに示す磁気検出素子を用いて、外部磁界が±4000Oe(ここで+4000Oeの外部磁界とは例えばハイト方向への外部磁界の方向及び強さを指し、―4000Oeの外部磁界とはハイト方向と逆方向への外部磁界の方向及び強さを指す)時のときの電圧差(ΔV)に対する、外部磁界が±100Oe(ここで+100Oeの外部磁界とは例えばハイト方向への外部磁界の方向及び強さを指し、―100Oeの外部磁界とはハイト方向と逆方向への外部磁界の方向及び強さを指す)時のときの電圧差(ΔV)の比率{以下、ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)とする}を求めた。ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)は、弱い磁場でフリー磁性層の磁化がどれくらい回転するかの指標、すなわち感度を示す。なお4000Oeは、約31.6×10(A/m)である。
【0263】
図19が、単位面積当たりの合成磁気モーメントと感度{ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}(以下、単に感度という)との関係を示すグラフである。図19に示すように単位面積当たりの合成磁気モーメントが小さくなるほど、徐々に前記感度が低下していくことがわかる。図19では、単位面積当たりの合成磁気モーメントが1(T.nm)付近で、感度が0になるものと考えられる。また前記単位面積当たりの合成磁気モーメントを1.5(T・nm)以下にすると前記感度を0.2以下に抑えることができるとわかった。
【0264】
この実験では、単位面積当たりの合成磁気モーメントをある範囲内で小さくすれば、効果的に感度を低下させることができるとわかった。
【0265】
図20は、フリー磁性層の膜厚から強磁性層の膜厚を引いた膜厚差と感度{ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}(以下、単に感度という)との関係を示すグラフであるが、このグラフでも図19と同様の傾向が見られ、前記膜厚差が小さくなるほど、徐々に前記感度が低下していくことがわかる。図20では、膜厚差が5Å付近で、前記感度が0になるものと考えられる。また前記膜厚差を10Å以下にすれば前記感度を0.2以下に抑えることができるとわかった。
【0266】
次に図18Bと同じ膜構成の磁気検出素子を用い、特にフリー磁性層の組成や膜厚が上記の実験で使用したものとは異なる磁気検出素子を製造し、図19及び図20と同様の実験を施した。
【0267】
この実験で使用したフリー磁性層は下から、Co90at%Fe10at%(10Å)/Ni80at%Fe20at%(30Å)/Co90at%Fe10at%(6Å)の3層構造で形成され、括弧書きは膜厚を示している。
【0268】
また非磁性中間層には膜厚が9ÅのRuを用い、強磁性層にはCo90at%Fe10at%を用い、前記強磁性層の膜厚を変化させることで、単位面積当たりの合成磁気モーメントの大きさ、およびフリー磁性層と強磁性層との膜厚差を変化させた。
【0269】
図21は、フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントから強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントを引いて求めた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)と感度{ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}(以下、単に感度という)との関係を示すグラフである。
【0270】
図21を見てわかるように前記感度は図19と同様に前記単位面積当たりの合成磁気モーメントが小さくなっていくほど低下していくことがわかった。また図21では、2.6(T・nm)の単位面積当たりの合成磁気モーメントを境として前記感度が急激に変化している。すなわち2.6(T・nm)の単位面積当たりの合成磁気モーメントを変曲点として前記感度が大きく変化している。
【0271】
図21に示すように前記単位面積当たりの合成磁気モーメントが2.6(T・nm)以下になると前記感度は0.2以下になることがわかった。
【0272】
図22は、フリー磁性層の膜厚から強磁性層の膜厚を引いた膜厚差と感度{ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)}(以下、単に感度という)との関係を示すグラフである。
【0273】
図22に示すように前記膜厚差が小さくなるほど図20と同様に前記感度は低下していくことがわかった。
【0274】
図22に示すように30Åの膜厚差を境として前記感度は急激に変化していることがわかった。すなわち30Åの膜厚差を変曲点として前記感度が大きく変化することがわかった。図22に示すように、前記膜厚差が30Å以下になると前記感度は0.2以下になることがわかった。
【0275】
図1ないし図4に示す実施形態において、素子両側端部の領域Bでは、フリー磁性層28と非磁性中間層29と強磁性層30との人工フェリ構造を保つが、この領域Bでの人工フェリ構造の感度は小さければ小さいほど、サイドリーディングの発生を抑制できるので好ましい。
【0276】
そこで図19ないし図22に示す実験結果を用いて、本発明において好ましい単位面積当たりの磁気モーメントの大きさ、および膜厚差を求めることとした。
【0277】
まず素子両側端部での感度の好ましい大きさについて説明する。素子中央部でのフリー磁性層の感度は0.8程度であるので、サイドリーディングを実用レベルに抑えるには、素子両側端部での感度を1/4以下、すなわち0.2以下にすることが好ましい感度範囲であると設定した。
【0278】
また図21を見てわかるように、2.6(T・nm)の単位面積当たりの磁気モーメントを境として急激に感度変化が見られ、前記単位面積当たりの合成磁気モーメントを2.6(T・nm)以下にすると感度を0.2以下に抑えることができるとわかった。
【0279】
以上の観点から、感度を0.2以下にすることができる、単位面積当たりの合成磁気磁気モーメント及び膜厚差を求めることとした。
【0280】
図21に示すグラフから、前記単位面積当たりの合成磁気モーメントを−6(T・nm)以上で2.6(T・nm)以下の範囲内に設定すると前記感度を絶対値で0.2以下に抑えることができるとわかった。
【0281】
しかしながら前記単位面積当たりの合成磁気モーメントがマイナス側の値とプラス側の値とで以下のような効果の違いが発生する。
【0282】
図23は単位面積当たりの合成磁気モーメントとスピンフロップ磁界Hsfとの関係を示すグラフである。ここでスピンフロップ磁界Hsfとは前記フリー磁性層と強磁性層との反平行の磁化状態が崩れるときの磁界の大きさを意味する。このスピンフロップ磁界が大きいほど前記フリー磁性層と強磁性層は反平行の磁化状態を適切に保つ。なお図23に示す実験で使用した磁気検出素子は図21及び図22の実験で使用した磁気検出素子と同じものである。
【0283】
図23に示すように前記スピンフロップ磁界は、単位面積当たりの合成磁気モーメントが0(T・nm)よりもプラス側に大きくなると大きくなり、一方、前記合成磁気モーメントが0(T・nm)よりもマイナス側に小さくなると大きくなることがわかった。
【0284】
ところで図23に示すように前記スピンフロップ磁界はプラス側に大きくなると、マイナス側に小さくなるときに比べて急激に大きい値になることがわかった。
【0285】
前記スピンフロップ磁界の大きさは、前記フリー磁性層及び強磁性層の磁化制御のときの磁場中アニール時の磁場の大きさに影響を与える。すなわち前記磁場中アニール時の磁場の大きさは前記スピンフロップ磁界よりも小さい値にしておくことで前記フリー磁性層及び強磁性層を適切に単磁区化すると同時に反平行の磁化状態にすることができる。仮に前記磁場中アニール時の磁場の大きさが前記スピンフロップ磁界の大きさよりも大きいと、前記強磁性層が所定の方向(トラック幅方向)からずれた状態でアニールされてしまい、前記強磁性層が意図しない向きで固定されやすくなる。このため前記フリー磁性層と強磁性層はトラック幅方向に適切に反平行の磁化状態を保つことができなくなる。
【0286】
よって前記磁場中アニール時の磁場の大きさはスピンフロップ磁界の大きさよりも小さいことが好ましいが、前記スピンフロップ磁界の大きさが大きいほど前記磁場中アニール時の磁場強度のマージンを広く取ることが可能になるから、かかる場合、前記磁場中アニールを容易に行いやすくなり、また前記強磁性層とフリー磁性層を適切にトラック幅方向に反平行に磁化制御しやすい。
【0287】
よって上記した理由から前記スピンフロップ磁界が急激に大きくなる前記合成磁気モーメントのプラス側の領域が、製造工程を容易化及び適正化できて、好ましい。
【0288】
また前記合成磁気モーメントがマイナス側の値であると、強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントがフリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントよりも大きくなり、かかる場合、前記強磁性層の膜厚がフリー磁性層の膜厚よりも厚い膜厚で形成されやすい。前記強磁性層の膜厚が厚いと図1に示す強磁性層30の内側端部にできる磁荷が大きく、この内側端部から前記フリー磁性層28に漏れる双極子磁界(静磁界)が前記フリー磁性層28の磁化方向と逆方向に作用するため再生波形の歪みや不安定性を招きやすいといった問題が発生する。
【0289】
よってかかる観点からも前記合成磁気モーメントはプラス側の値であることが好ましい。
【0290】
また前記合成磁気モーメントが0(T・nm)であると、フリー磁性層と強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメントが等しくなるため、磁場中アニール時に支配的な層(すなわち磁場をかけたときのその磁場方向に向く層)がフリー磁性層及び強磁性層のどちらでもなくなり、前記フリー磁性層と強磁性層を反平行にしつつ固定磁性層の磁化方向と交差する方向に磁化制御しにくい。従って前記合成磁気モーメントは0(T・nm)でないことが必要である。
【0291】
以上の結果、本発明での好ましい合成磁気モーメントは0(T・nm)よりも大きく2.6(T・nm)以下の範囲内とした。これによって感度を0.2以下に抑えることができると共に、前記フリー磁性層及び強磁性層の磁化制御の際の磁場中アニール工程を容易化・適正化でき、また再生波形の安定性が高い磁気検出素子を製造できる。
【0292】
ただし図19に示す実験では、フリー磁性層及び強磁性層がともにCoFe合金で形成された磁気検出素子を用いて行ったものであり、かかる場合、前記合成磁気モーメントを1.5(T・nm)以下Å以下にすると前記感度を0.2以下に抑えることができる。よってフリー磁性層及び強磁性層をともにCoFe合金で形成する場合、より好ましい前記合成磁気モーメントを0(T・nm)より大きく1.5(T・nm)以下とした。
【0293】
次に膜厚差の好ましい範囲について説明する。感度を絶対値で0.2以下に抑えるには図22に示すように前記膜厚差を−30Å以上で30Å以下にすればよいとわかった。しかしながら前記膜厚差がマイナス側の値であると上記した合成磁気モーメントがマイナス側の値である場合と同様の不具合が生じ易いので、前記膜厚差はプラス側の値であることが好ましい。
【0294】
なお図22に示す実験ではフリー磁性層にCoFe/NiFe/CoFeの3層構造を用い、強磁性層にはCoFeの単層構造を用いているので、フリー磁性層と強磁性層の飽和磁化Msは異なる値であり、よって前記フリー磁性層と強磁性層が共に同じ値であっても、すなわち膜厚差が0Åであっても、単位面積当たりの合成磁気モーメントは0(T・nm)にならない。
【0295】
よって本発明における好ましい膜厚差は0Å以上で30Å以下であるとした。
ただし図20に示す実験では、フリー磁性層及び強磁性層がともにCoFe合金で形成された磁気検出素子を用いて行ったものであり、かかる場合、前記膜厚差を10Å以下にすると前記感度を0.2以下に抑えることができる。またかかる場合、前記膜厚差が0Åであると合成磁気モーメントは0(T・nm)になってしまうため、より好ましい膜厚差を0Åよりも大きく10Å以下と設定した。
【0296】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明の磁気検出素子では、フリー磁性層の素子両側端部上には非磁性中間層を介して強磁性層が形成され、前記強磁性層間のトラック幅方向に形成された間隔よりも広い間隔を有した第2反強磁性層が前記強磁性層上に形成されて、前記素子両側端部内で、前記強磁性層が前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出し、さらに電極層が前記第2反強磁性層上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて形成されている。
【0297】
このように第2反強磁性層間のトラック幅方向への間隔を強磁性層の下面間の間隔で規制されるトラック幅Twよりも広げることができ、しかも電極層の内側先端部を前記第2反強磁性層よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された強磁性層上にオーバーラップさせることで、センス電流の前記オーバーラップ部下の多層膜への分流を抑えて前記センス電流を効果的にフリー磁性層の素子中央部に流すことができ、さらに前記フリー磁性層の素子中央部には強磁性層との間でRKKY相互作用による交換結合が働かないから、前記フリー磁性層の素子中央部は感度良く磁化反転し、その結果、再生出力の向上を図ることが可能になる。
【0298】
しかも前記第2反強磁性層よりもトラック幅方向の中心方向に延出形成された強磁性層は、その下に非磁性中間層を介してフリー磁性層が形成された、いわゆる人工フェリ構造となっており、前記強磁性層とフリー磁性層間にRKKY相互作用による交換結合が作用する結果、前記強磁性層とフリー磁性層の外部磁界に対する感度をより効果的に鈍化させることができ、従来例よりもより適切に実効再生トラック幅の広がりを抑え、サイドリーディングの発生を抑制することが可能になる。
【0299】
以上のように本発明の磁気検出素子によれば、狭トラック化においても再生出力の向上と実効再生トラック幅の広がりを抑えサイドリーディングの発生を適切に抑制できるため、従来に比べて高記録密度化においても再生特性の向上を効果的に図ることが可能な磁気検出素子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態である磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図5】図1の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図
【図6】図5の次に行なわれる一工程図、
【図7】図6の次に行なわれる一工程図、
【図8】図7の次に行なわれる一工程図、
【図9】図8の次に行なわれる一工程図、
【図10】図9の次に行なわれる一工程図、
【図11】図10の次に行なわれる一工程図、
【図12】図11の次に行なわれる一工程図、
【図13】図12の次に行なわれる一工程図、
【図14】図3の形態の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図
【図15】図14の次に行なわれる一工程図、
【図16】図15の次に行なわれる一工程図、
【図17】図16の次に行なわれる一工程図、
【図18】実験に使用した磁気検出素子のフリー磁性層以上の構造を示す部分模式図、
【図19】図18Bに示す磁気検出素子を用い、単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)と、ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)との関係を示すグラフ、
【図20】図18Bに示す磁気検出素子を用い、フリー磁性層の膜厚から強磁性層の膜厚を引いた膜厚差と、ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)との関係を示すグラフ、
【図21】図19とは異なる材質によって図18Bに示す磁気検出素子を製造して、かかる場合の単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)と、ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)との関係を示すグラフ、
【図22】図19とは異なる材質によって図18Bに示す磁気検出素子を製造して、かかる場合のフリー磁性層の膜厚から強磁性層の膜厚を引いた膜厚差と、ΔV(±100Oe)/ΔV(±4000Oe)との関係を示すグラフ、
【図23】フリー磁性層と強磁性層の単位面積当たりの合成磁気モーメントと、スピンフロップ磁界との関係を示すグラフ、
【図24】従来における磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【図25】従来における別の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図、
【符号の説明】
20 基板
21 シードレイヤ
22 第1反強磁性層
23 固定磁性層
27 非磁性材料層
28 フリー磁性層
29 非磁性中間層
30 強磁性層
31 第2反強磁性層
33 第1ストッパ層
34 第1保護層
35、44 第2ストッパ層
36、45 第2保護層
37 電極層
38 第3保護層
39 第4保護層
40 多層膜
41、47、48 絶縁層
42 上部電極層
43 第1電極層
46 第2電極層
50 非磁性層
51、52 マスク層

Claims (30)

  1. 下から順に、第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層を有して積層された多層膜を有する磁気検出素子において、
    前記フリー磁性層の素子両側端部上には非磁性中間層を介して強磁性層が形成され、前記強磁性層間のトラック幅方向に形成された間隔よりも広い間隔を有した第2反強磁性層が前記強磁性層上に形成されて、前記素子両側端部内で、前記強磁性層が前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出し、
    電極層が前記第2反強磁性層上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記第2反強磁性層上から前記延出形成された強磁性層上にかけてストッパ層が設けられ、前記ストッパ層上に前記電極層が形成されている請求項1記載の磁気検出素子。
  3. 前記電極層は、前記第2反強磁性層上に形成された第1電極層と、前記第1電極層及び第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて形成された第2電極層とで構成される請求項1記載の磁気検出素子。
  4. 前記第1電極層と前記第2電極層とは別工程で形成されたものである請求項3記載の磁気検出素子。
  5. 前記第1電極層と第2電極層は異なる材質の非磁性導電材料で形成される請求項3または4に記載の磁気検出素子。
  6. 前記第1電極層は前記第2電極層よりも延性が小さい材質で形成される請求項5記載の磁気検出素子。
  7. 前記第1電極層は、Auと、Pd、Cu、Crのうちいずれか1種以上とからなる合金材料、またはCr、Rh、Ru、Ta、Wのうちいずれか1種以上で形成され、前記第2電極層は、Au、CuあるいはAgのうちいずれか1種以上で形成される請求項6記載の磁気検出素子。
  8. 前記第1電極層及び第2反強磁性層の前記内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけてストッパ層が形成され、前記ストッパ層上に前記第2電極層が形成される請求項3ないし7のいずれかに記載の磁気検出素子。
  9. 前記ストッパ層は、さらに前記第1電極層と前記第2反強磁性層間にも形成される請求項8記載の磁気検出素子。
  10. 前記ストッパ層は前記電極層よりもエッチングレートが遅い材質である請求項2、8または9に記載の磁気検出素子。
  11. 前記ストッパ層は、Ta、Cr、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種あるいは2種以上の元素で形成される請求項10記載の磁気検出素子。
  12. 前記ストッパ層はCr層であり、その上にTa層が積層されている請求項2、8、9または10に記載の磁気検出素子。
  13. 前記第2反強磁性層の内側端面の下縁部から、前記第2反強磁性層の膜厚よりも薄い膜厚の内側先端部が、前記延出形成された前記強磁性層上にまで延びて形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の磁気検出素子。
  14. 前記強磁性層間の前記間隔からは前記フリー磁性層の素子中央部が露出し、前記露出したフリー磁性層上にスペキュラー層が形成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の磁気検出素子。
  15. 前記電極層が形成される部分に絶縁材料で形成された絶縁層が設けられ、前記電極層は、前記多層膜の膜厚方向の上下に設けられる請求項1ないし14のいずれかに記載の磁気検出素子。
  16. 前記フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)は、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下である請求項1ないし15のいずれかに記載の磁気検出素子。
  17. 前記フリー磁性層の膜厚(t)から前記強磁性層の膜厚(t)を引いた膜厚差は、0Å以上で30Å以下である請求項1ないし16のいずれかに記載の磁気検出素子。
  18. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (a)基板上に、下から順に第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層、非磁性中間層及び強磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
    (b)前記多層膜の上面のトラック幅方向の両側に第2反強磁性層を形成する工程と、
    (c)前記多層膜上から前記第2反強磁性層上にかけて電極層を形成し、前記電極層上に、前記第2反強磁性層間のトラック幅方向における間隔よりも間隔の狭いマスク層を形成し、前記マスク層に覆われていない前記電極層を削る工程と、
    (d)さらに前記電極層を削ったことで露出した前記強磁性層を削り、これにより前記強磁性層を前記フリー磁性層の素子両側端部上に非磁性中間層を介して、且つ前記強磁性層を、前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出して残し、さらに電極層を前記第2反強磁性層上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて残す工程。
  19. 前記(c)工程で、前記電極層を形成する前に、前記多層膜上から前記第2反強磁性層上にかけてストッパ層を形成し、そのストッパ層上に前記電極層を形成し、
    前記(c)工程で、前記ストッパ層が露出するまで前記電極層を削り、前記(d)工程で、露出した前記ストッパ層を除去した後、露出する前記強磁性層を削る請求項18記載の磁気検出素子の製造方法。
  20. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (e)基板上に、下から順に第1反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層及びフリー磁性層、非磁性中間層及び強磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
    (f)前記多層膜の上面のトラック幅方向の両側に第2反強磁性層及び第1電極層を積層形成する工程と、
    (g)前記多層膜上から前記第2反強磁性層及び第1電極層のトラック幅方向における内側端面上、さらに前記第1電極層上にかけて第2電極層を形成する工程と、
    (h)前記多層膜上に形成された前記第2電極層を除去し、前記第2電極層を除去したことで露出した強磁性層を除去し、これにより前記強磁性層を前記フリー磁性層の素子両側端部上に非磁性中間層を介して、且つ前記強磁性層を、前記第2反強磁性層のトラック幅方向における内側端面よりもトラック幅方向の中心方向に延出して残し、さらに前記第2電極層を前記第1電極層及び第2反強磁性層の前記内側端面上から前記延出形成された前記強磁性層上にかけて残す工程。
  21. 前記(g)工程で第2電極層を形成するとき、基板に対して垂直方向から斜めに傾けたスパッタ角度で、前記第2電極層を成膜することで、前記内側端面上に形成された第2電極層の膜厚を、多層膜の上面、および第1電極層の上面に形成された第2電極層の膜厚よりも厚く形成する請求項20記載の磁気検出素子の製造方法。
  22. 前記(h)工程で、前記多層膜の上面に形成された第2電極層を除去するとき、その際のミリング角度を、前記第2電極層を形成するときのスパッタ角度よりも、垂直方向に近い角度とする請求項21記載の磁気検出素子の製造方法。
  23. 前記(g)工程で、前記第2電極層を形成する前に、前記多層膜上から前記内側端面上、さらには前記第1電極層上にかけてストッパ層を形成し、その後、前記ストッパ層上に前記第2電極層を形成し、
    前記(h)工程で、前記ストッパ層が露出するまで前記多層膜上に形成された前記第2電極層を除去し、前記第2電極層を除去したことで露出した前記ストッパ層を除去した後、前記強磁性層を除去する請求項20ないし22のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  24. 前記ストッパ層を前記電極層よりもエッチングレートが遅い材質で形成する請求項19または23に記載の磁気検出素子の製造方法。
  25. 前記ストッパ層を、Ta、Cr、V、Nb、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pt、Rhのうち1種あるいは2種以上の元素で形成する請求項24記載の磁気検出素子の製造方法。
  26. 前記ストッパ層をCr層で形成し、さらにその上にTa層を積層する請求項19、23または24に記載の磁気検出素子の製造方法。
  27. 前記(b)及び(f)工程で、トラック幅方向の第2反強磁性層間に、前記第2反強磁性層と一体の前記第2反強磁性層よりも膜厚の薄い反強磁性層を残し、前記(d)及び(h)工程で、前記電極層あるいは第2電極層を削ったことで露出した前記反強磁性層を除去し、これにより前記第2反強磁性層の内側端面の下縁部から、前記第2反強磁性層の膜厚よりも薄い膜厚の反強磁性の内側先端部を、前記延出形成された前記強磁性層上に残す請求項18ないし26のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  28. 前記(c)工程で形成される電極層、前記(f)工程で形成される第1電極層及び前記(g)工程で形成される第2電極層に代えて、絶縁材料で形成された絶縁層を形成し、前記電極層を、前記多層膜の膜厚方向の上下に設ける請求項18ないし27のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  29. 前記フリー磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)から前記強磁性層の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms・t)を引いた単位面積当たりの合成磁気モーメント(Net Mst)が、0(T・nm)より大きく2.6(T・nm)以下となるように、前記フリー磁性層及び前記強磁性層の各単位面積当たりの磁気モーメントを調整する請求項18ないし28のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  30. 前記フリー磁性層の膜厚(t)から前記強磁性層の膜厚(t)を引いた膜厚差が0Å以上で30Å以下となるように、前記フリー磁性層及び前記強磁性層の各膜厚を調整する請求項18ないし29のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
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