JP2004027037A - インクジェットインク、インクジェット記録方法及び記録画像 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットインク、インクジェット記録方法及び記録画像に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録液においては、その使用される記録方式に適合すること、高い記録画像濃度を有し色調が良好であること、耐光性や耐熱性及び耐水性といった色画像堅牢性に優れること、被記録媒体に対して定着が速く記録後ににじまないこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性や引火性といった安全性に問題がないこと、安価であること等が要求され、このような観点から、種々のインクジェット用インク及び記録方法が提案、検討されているが、要求の多くを同時に満足するようなインクジェット記録液はきわめて限られている。
【0003】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを用いたカラー画像記録においては、たとえばC.I.(カラーインデックス)に記載されている従来から公知のC.I.ナンバーを有する染料、顔料が広く検討されてきた。特にマゼンタのインクジェット記録液においてはキサンテン系(例えばC.I.アシッドレッド52等)、アゾ系(例えばC.I.アシッドレッド249等)の水溶性染料を使用したものが知られているが、一般に耐光堅牢性などに問題を有している。
【0004】
また、インクジェット専用紙では問題にはならないが、非インクジェット専用紙であるコピー紙等の普通紙では、画像の輪郭に不規則なにじみが発生することが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、色画像の耐光性に優れ、普通紙においても滲みのないインクジェットインク、特に主な対象としてはマゼンタ色のインクジェットインク、インクジェット記録方法及び記録画像を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0007】
1.水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェットインクにおいて、該水溶性染料に前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク。
【0008】
2.水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェットインクにおいて、該水溶性染料に前記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク。
【0009】
3.水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェットインクにおいて、該水溶性染料が前記一般式(1)及び(2)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク。
【0010】
4.一般式(1)と一般式(2)で表される化合物を1:4〜4:1の質量比率で含有することを特徴とする前記3に記載のインクジェットインク。
【0011】
5.1,2−アルカンジオールを含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0012】
6.ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、テトラエチレングリコールのアルキルエーテル、プロピレングリコールのアルキルエーテル、ジプロピレングリコールのアルキルエーテル及びトリプロピレングリコールのアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0013】
7.分岐2価アルコールを含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0014】
8.炭素数1〜3の1価アルコールを含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0015】
9.アセチレンジオール又はアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0016】
10.ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【0017】
11.普通紙にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが前記1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0018】
12.水溶性バインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが前記1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0019】
13.インク受容層が多孔質構造を有することを特徴とする前記12に記載のインクジェット記録方法。
【0020】
14.記録がオンデマンド方式で行われることを特徴とする前記11〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0021】
15.電気・機械変換方式によりインクを吐出して記録を行うことを特徴とする前記14に記載のインクジェット記録方法。
【0022】
16.電気・熱変換方式によりインクを吐出して記録を行うことを特徴とする前記14に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
17.前記1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いることを特徴とする記録画像。
【0024】
18.前記11〜16のいずれか1項に記載の記録方法を用いることを特徴とする記録画像。
【0025】
本発明を更に詳しく説明する。本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェットインクにおいて、該水溶性染料に一般式(1)で表される化合物を含有したインクジェットインクは、色画像の堅牢性に優れていることを見出した。
【0026】
一般式(1)において、X1、X2はそれぞれ異なっていてもよくアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム等)、アルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等)の4級塩、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール等)の4級塩又はアンモニウムを表す。X1及びX2としてはアルカリ金属又はアルカノールアミンの4級塩が好ましい。
【0027】
Rはアルキル基を表し、直鎖又は分岐であってもよく、分岐アルキル基が好ましい。
【0028】
一般式(1)で表される化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化3】
【0030】
一般式(2)において、X3、X4はそれぞれ異なっていてもよくアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等)の4級塩、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール等)の4級塩又はアンモニウムを表す。X3及びX4としてはアルカリ金属又はアルカノールアミンの4級塩が好ましい。
【0031】
一般式(2)で表される化合物を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化4】
【0033】
一般式(1)及び一般式(2)は単独で用いてもよいが、併用することで良好なマゼンタ色を再現でき、1:4〜4:1の比率で用いることが好ましい。更に、1:2〜2:1の比率で用いることが好ましい。
【0034】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、水溶性有機溶剤として1,2−アルカンジオールを含有することで、耐光性に優れ、コピー紙等の普通紙においてもにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0035】
1,2−アルカンジオールとしては炭素数4以上が好ましく、1,2−ヘキサンジオール又は1,2−ペンタンジオールがより好ましい。
【0036】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、水溶性有機溶剤としてジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、テトラエチレングリコールのアルキルエーテル、プロピレングリコールのアルキルエーテル、ジプロピレングリコールのアルキルエーテル及びトリプロピレングリコールのアルキルエーテルを含有することで、耐光性に優れ、コピー紙等の普通紙においてもにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0037】
ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、テトラエチレングリコールのアルキルエーテル、プロピレングリコールのアルキルエーテル、ジプロピレングリコールのアルキルエーテル及びトリプロピレングリコールのアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルを挙げることが出来る。
【0038】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、水溶性有機溶剤として分岐2価アルコールを含有することで、耐光性に優れ、普通紙においてもにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0039】
分岐2価アルコールとしては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
【0040】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、水溶性有機溶剤として炭素数1〜3のアルコールを含有することで、耐光性に優れ、コピー紙等の普通紙においてもにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0041】
炭素数1〜3の1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましく、2−プロパノールがより好ましい。
【0042】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、アセチレンジオール又はそのエチレンオキサイド付加物を含有することで、耐光性に優れ、コピー紙等の非インクジェット専用紙においてにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0043】
アセチレンジオール又はそのエチレンオキサイド付加物としては以下の化学式で表される化合物が好ましい。
【0044】
【化5】
【0045】
式中、m及びnは整数を表す。
また、アセチレンジオール又はそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等が挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、水溶性染料として一般式(1)又は一般式(2)で表される染料を含有し、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含有することで、耐光性に優れ、コピー紙等の普通紙においてもにじみのない画像を形成できることを見出した。
【0047】
ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物としては下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化6】
【0049】
式中、x、y、zは整数を表すが、yは12〜60の整数、x+zは5〜25の整数が好ましい。
【0050】
一般式(3)で表される化合物としては、旭電化株式会社製アデカプルロニックL61、アデカプルロニックL62、アデカプルロニックL63、アデカプルロニックL64、アデカプルロニックL42、アデカプルロニックL43、アデカプルロニックL44、アデカプルロニックL31、アデカプルロニックL34等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
本発明のインクジェットインクに用いる水溶性有機溶媒としては、前記水溶性有機溶剤の他に、例えば、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタンミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0052】
本発明のインクジェットインクにおいて、さらに他の水溶性染料を併用していてもよく、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料等を挙げることができる。水溶性染料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示した化合物に限定されるものではない。
【0053】
〔C.I.アシッドレッド〕
1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415
〔C.I.ダイレクトレッド〕
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254
〔C.I.ベイシックレッド〕
1、2、12、13、14、15、18、23、24、27、29、35、36、39、46、51、52、69、70、73、82、109
〔C.I.リアクティブレッド〕
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235。
【0054】
本発明のインクジェットインクにおいて、さらに顔料を併用していてもよく、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、無機顔料等が挙げられる。顔料の具体的化合物を以下に示す。ただし、これら例示した化合物に限定されるものではない。
【0055】
〔C.I.ピグメントレッド〕
2、3、5、6、7、15、16、48:1、53:1、57:1、122、123、139、144、149、166、177、178、222。
【0056】
本発明のインクジェットインクは、その表面張力を制御するためにさらに界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等、カチオン系の界面活性剤としては、アミン塩、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩等、ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0057】
これら界面活性剤の添加量はインク中に含まれる染料、水溶性有機溶剤、その他添加剤の種類、量により決まるが、インク全質量に対して0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
【0058】
さらに、本発明のインクジェットインクには、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジへの適合性、保存安定性、その他諸特性向上を目的として、それぞれの目的に適合する、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤、pH調整剤、染料溶解助剤、消泡剤、金属キレート剤等を添加することもできる。
【0059】
本発明に用いられる記録媒体としては、普通紙であり一般に使用されているコピー用紙等に代表される事務用紙だけでなく、より高画質な画像を得るためには支持体の上に記録液受容層が塗布された記録体を用いることが好ましい。
【0060】
本発明に用いられる記録媒体のインク受容層は空隙を有する空隙型受容層と空隙を有しないいわゆる膨潤型受容層が含まれる。膨潤型受容層の場合はインク受容層は吸水性樹脂からなり、吸水性樹脂はインク溶媒と染料を樹脂の分子の間に取りこんで吸収する。このようなインク受容層は画像の褪色に対しては色素が空気に直接触れないため、空隙型より有利である点で好ましい。
【0061】
吸水性樹脂とは、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0062】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0063】
インク受容層は親水性バインダーのほかに硬化剤、界面活性剤、を含有することが好ましい。またブロッキング防止のため、マット剤などのフィラーを空隙を生じない程度に添加することができる。
【0064】
一方、本発明に係る空隙型インク受容層を用いた場合はカラーブリーディングをより改善できる点で好ましい。
【0065】
本発明に用いられる記録媒体の空隙型インク受容層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成されるのが好ましい。
【0066】
本発明で用いることのできる微粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を用いることができるが、特には、高光沢で、かつ高発色濃度が得られ、更に微粒子が容易に得やすいことから無機微粒子が好ましい。そのような無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。上記無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、また、二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0067】
本発明においては、インクジェット記録媒体で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、アルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカが好ましい。
【0068】
このうち、擬ベーマイトのアルミナ水和物は高湿度環境下でのプリント画像の滲み防止の点で好ましい。この擬ベーマイトの代表例としては特開平7−89221号公報の実施例に記載されたアルミナ水和物Aが挙げられる。このアルミナ水和物Aは、まず米国特許明細書第4,242,271号に記載された方法でアルミニウムアルコキサイドを製造し、米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で前記アルミニウムアルコキサイドを加水分解して、オーブンで30℃、2時間熟成してアルミナのコロイダルゾルが得られる。このアルミナ水和物Aは無定形で、平板状であって、BET比表面積76g/m、BET細孔容積0.57ml/gである。
【0069】
このような擬ベーマイトが高いインク受容性を有する理由は、その細孔半径と細孔径分布が、インク受容に非常に適した範囲にあるという事実にあると考えられる。擬ベーマイトの細孔径分布は、2つ以上の極大を有する。比較的大きい細孔で、インク中の溶媒成分を吸収し、比較的小さい細孔でインク中の染料を吸着する。擬ベーマイトの細孔径分布の極大の一つは細孔半径10nm以下が好ましく、より好ましくは1〜6nmである。他の極大は細孔半径10〜20nmの範囲が好ましい。
【0070】
そして、本発明において前記無機微粒子の中で最も好ましいのは、気相法で合成された微粒子シリカである。カラーブリード、光沢、画像濃度、およびコストの点で好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がAlで修飾されたものであっても良い。表面がAlで修飾された気相法シリカのAl含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0071】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下であれば、光沢性や発色性がより良好であり、そのため、特には、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、概ね0.003μm以上、特に0.005μm以上が好ましい。
【0072】
上記無機微粒子の平均粒径は、空隙型インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0073】
また、微粒子の分散度は、光沢性や発色性の観点から0.5以下が好ましい。0.5以下であれば、光沢やプリント時の発色性がより良好である。特に、0.3以下が好ましい。ここで、微粒子の分散度とは、上記平均粒径を求めるのと同様に電子顕微鏡で空隙型インク受容層の微粒子を観察し、その粒径に標準偏差を平均粒径で割った値で表す。
【0074】
上記微粒子は、一次粒子のままで、あるいは二次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜中に存在していても良いが、上記の平均粒径は、電子顕微鏡で観察したときに空隙型インク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径を言う。
【0075】
上記微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。
【0076】
空隙型インク受容層に含有される水溶性バインダーとしては、特に制限はなく、従来公知の水溶性バインダーを用いることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0077】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子との相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に、吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明で好ましく用いられるポリビリルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0078】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0079】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0080】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0081】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0082】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなどの2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め、無機微粒子分散液に重合度が1000以下のポリビニルアルコールを無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい粘度上昇が無く好ましい。
【0083】
空隙型インク受容層の水溶性バインダーに対する微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比が2倍未満である場合には、空隙型インク受容層の空隙率が低下し、充分な空隙容量が得にくくなるだけでなく、過剰の水溶性バインダーがインクジェット記録時に膨潤して空隙を塞ぎ、インク吸収速度を低下させる要因となる。一方、この比率が20倍を越える場合には、空隙型インク受容層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じやすくなり好ましくない。特に好ましい水溶性バインダーに対する微粒子の比率は、2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0084】
上記の気相法シリカを用いた空隙型インク受容層において、ジルコニウム原子やアルミニウム原子を分子内に含む化合物を添加すると、カラーブリードや滲みが向上する点で好ましい。
【0085】
本発明で用いる記録媒体に用いることのできるジルコニウム原子を分子内に有する化合物の具体例としては、酸化ジルコニウム、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えばカリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えばリチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナート)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0086】
これらの化合物の中でも、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、特に炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが最も好ましい。
【0087】
本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0088】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。
【0089】
前記化合物は、インクジェット記録用紙1m2当たり、通常0.05〜25mmol、好ましくは0.25〜10mmol、特に好ましくは0.5〜5mmolの範囲で用いられる。
【0090】
シリカを用いた空隙型インク受容層において、シランカップリング剤を添加するとカラーブリードを低減する効果があり好ましい。
【0091】
シランカップリング剤としては、第四級アンモニウム塩とジまたはトリアルコキシシラニル基とを有する化合物が好ましい。好ましいシランカップリング剤の例としては、(イ)3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ロ)N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(ハ)3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド及び(ニ)イミダゾール基を有するシランカップリング剤等を挙げることができる。これらの化学式を下記に示す。
【0092】
【化7】
【0093】
上記シランカップリング剤の硬化は、複数のアルコキシシラニル基が水(空気中の水分で可能)の存在下にシラノール基に変化し、シランカップリング剤同士が、(好ましくは加熱により)シラノール基間の縮合反応により結合して、架橋構造を形成することにより行われる。
【0094】
これらのカチオン性物質は、透明多孔質層塗布液に添加するとシリカ等の無機微粒子の表面のアニオン電荷と相互作用して凝集を生じる虞があるが、架橋剤塗布液中に含有させる場合、その問題がなく、有効量を添加して透明多孔質層の膜質の向上に効果を上げることができる。カチオン性物質の添加量としては、0.01〜3.6g/m2であることが好ましく、0.05〜2g/m2程度であることがさらに好ましい。
【0095】
本発明に用いることのできる記録媒体に用いられる支持体としては、吸水性支持体(例えば、紙など)や非吸水性支持体を用いることができるが、より高品位なプリントが得られる観点から、非吸水性支持体が好ましい。
【0096】
吸水性支持体では、単に高品位なプリントが得にくいだけでなく、オーバーコートした各添加剤成分が、塗布後に紙中に拡散して、添加剤本来の効果を損なう結果となる。
【0097】
好ましく用いられる非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアテセート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明または不透明のフィルム、あるいは基紙の両面をポリオレフィン樹脂被覆層で被覆した樹脂被覆紙、いわゆるRCペーパー等が用いられる。
【0098】
上記空隙型インク受容層を形成する水溶性塗布液中には、各種の添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、カチオン性媒染剤、架橋剤、界面活性剤(カチオン、ノニオン、アニオン、両性)、白地色調調整剤、蛍光増白剤、防黴剤、粘度調整剤、低沸点有機溶媒、高沸点有機溶媒、ラテックスエマルジョン、退色防止剤、紫外線吸収剤、多価金属化合物(水溶性もしくは非水溶性)、マット剤、シリコンオイル等が挙げられるが、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0099】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、長期保存での変色や耐光性の劣化が少ないことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0100】
好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0101】
また、水溶性バインダーの架橋剤を含有させることも特に好ましい。架橋剤により、空隙型インク受容層の耐水性が改善され、また、インクジェット記録時に水溶性バインダーの膨潤が抑制されるためにインク吸収速度が向上する。
【0102】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができ、無機系架橋剤(例えば、クロム化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、ホウ酸類など)や有機系架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、N−メチロール系架橋剤、アクリロイル系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、活性ハロゲン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エチレンイミノ系架橋剤等)等を使用することができる。
【0103】
これらの架橋剤は、水溶性バインダーに対して、概ね1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%である。
【0104】
水溶性バインダーがポリビニルアルコール類であり、微粒子がシリカである場合、架橋剤としては、ホウ酸類やジルコニウム化合物などの無機系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が、特に好ましい。
【0105】
本発明に用いることができる記録媒体の作製において用いることのできる塗布方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができ、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0106】
本発明に用いることができる記録媒体の空隙型インク受容層は、単層であっても多層であっても良く、多層構成の場合には、全ての層を同時に塗布することが、製造コスト低減の観点から好ましい。
【0107】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0108】
実施例1
[記録媒体1の作製]
〔シリカ分散液D1、D2の調製〕
予め均一に分散されている1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製:A200)を25%、水溶性蛍光増白剤UVITEXNFW LIQUID(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.3%含むシリカ分散液B1(pH=2.3、エタノール1質量%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とほう砂の1:1質量比の混合水溶液A1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0109】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D1を得た。
【0110】
一方、上記シリカ分散液B1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0111】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D2を得た。
【0112】
上記シリカ分散液D1、D2を、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0113】
〔オイル分散液の調製〕
ジイソデシルフタレート20kgと酸化防止剤(AO−1)20kgとを45kgの酢酸エチルに加熱溶解し、酸処理ゼラチン8kg、カチオン性ポリマーP−1を2.9kgおよびサポニン10.5kgとを含有するゼラチン水溶液210Lと55℃で混合し、高圧ホモジナイザーで乳化分散した後、全量を純水で300Lに仕上げて、オイル分散液を調製した。
【0114】
【化8】
【0115】
〔塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当たりの量で表示した。
【0116】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D1 580ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 290ml
オイル分散液 30ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 AE803) 42ml
エタノール 8.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D1 600ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 20ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製:AE803) 22ml
エタノール 8ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D2 630ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 270ml
オイル分散液 10ml
ラテックス分散液(昭和高分子社製 AE803) 5ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D2 660ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)
6.5%水溶液 250ml
ベタイン型界面活性剤−1の4%水溶液 3ml
サポニンの25%水溶液 2ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げる
【0117】
【化9】
【0118】
上記の様にして調製した各塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
【0119】
〔記録媒体の塗布〕
次に、上記の各塗布液を下記に記載の湿潤膜厚となるよう、40℃で両面にポリエチレンを被覆した紙支持体上に、スライドホッパー型コーターを用いて4層同時塗布した。
【0120】
〈湿潤膜厚〉
第1層:42μm
第2層:39μm
第3層:44μm
第4層:38μm
なお、上記紙支持体は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0121】
使用した紙支持体は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを6%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを押し出し溶融塗布した。表面側は、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA235)を記録媒体1m2当たり0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電加工した後、Tgが約80℃のスチレン・アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0122】
インク受容層用塗布液の塗布後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させたあと、複数設けた乾燥ゾーンの温度を適宜設定して乾燥を行った後、ロール状に巻き取って記録媒体1を得た。
【0123】
[記録媒体2の作製]
記録媒体1の作製において、第4層用塗布液の代わりに、第4層用塗布液を純水で仕上げる前に更に13.1mmolの酢酸ジルコニル(分子量215)の20%水溶液を徐々に添加し、0.01mmolの硝酸ジルコニルの水溶液を添加し、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液を用いた以外は、記録媒体1の作製と同様にして記録媒体2を作製した。
【0124】
[記録媒体3の作製]
記録媒体1の作製において、第4層用塗布液の代わりに、第4層用塗布液を純水で仕上げる前に塩基性ポリ水酸化アルミニウム(理研グリーン株製のピュラケムWT)3gを加え、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えた塗布液を用いた以外は記録媒体1の作製と同様にして記録媒体3を作製した。
【0125】
[記録媒体4の作製]
記録媒体1のインク受容層表面に下記オーバーコート液20g/m2を塗布後、乾燥して記録媒体4を作製した。
【0126】
[オーバーコート液]
ホウ砂1部に水97.8部、界面活性剤(大日本インク株式会社製:F−144D)0.2部及びカチオン性シランカップリング剤(信越化学工業製POLON−MF−50)1部を添加、攪拌してオーバーコート液を得た。
【0127】
[インク1〜18の作製]
下記成分を混合、十分に攪拌した後、細孔径0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過してインク1を作製した。
前記化合物M−1 4.0質量%
グリセリン 10.0質量%
1,2−ペンタンジオール 5.0質量%
プロキセルGXL(D)(アビシア株式会社) 0.1質量%
イオン交換水 80.9質量%
さらに表1に記載の組成を有する各インク組成物をインク1と同様に作製した。
【0128】
[画像記録試料の作製]
ノズル直径23μm、駆動周波数5kHz、ノズル数128、ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cmあたりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタにインク1をセットし、さらに記録媒体として記録媒体1をセットして、10cm×10cmのべた画像である画像記録試料を作製した。同様にインク1をインク2〜14に変えて画像記録試料2〜14を作製した。
【0129】
同様に記録体を2、3、4を上記インクジェットプリンタにセットし、それぞれインク2〜14を用いて画像記録試料を作製した。
【0130】
同様に比較例として、表1に記載の組成を有するインク15〜18を作製、同様に各記録体に出力して画像記録試料を作製した。
【0131】
【表1】
【0132】
【化10】
【0133】
表1で使用した溶剤は以下の通り。
溶剤1:エチレングリコール
溶剤2:ジエチレングリコール
溶剤3:グリセリン
溶剤4:プロピレングリコール
溶剤5:トリプロピレングリコール
溶剤6:1,2−ペンタンジオール
溶剤7:1,2−ヘキサンジオール
溶剤8:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
溶剤9:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
溶剤10:プロピレングリコールブチルエーテル
溶剤11:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
溶剤12:2−メチル−1,3−プロパンジオール
溶剤13:2−メチルペンタン−2,4−ジオール
溶剤14:2−プロパノール
溶剤15:サーフィノール104
溶剤16:サーフィノール465
溶剤17:ブルロニックL62
溶剤18:ブルロニックL61
溶剤19:プロキセルGXL(D)
溶剤20:イオン交換水。
【0134】
[画像記録試料の耐光性評価]
得られた各画像記録試料をXeフェードメーター(7万lux)にて48時間曝射したときの画像試料及び未曝射の画像サンプルのそれぞれについてX−rite938 Spectrodensitmeter(測定条件C光源)でマゼンタ濃度を測定し、下記評価基準により耐光性を評価した。
【0135】
残存率(%)=(曝射試料の反射濃度)÷(未曝射試料の反射濃度)
◎: 残存率が80%以上
○: 残存率が50%以上80%未満
×: 残存率が50%未満
[画像記録試料の色相評価]
得られた各画像記録試料を目視で、下記評価基準により色相を評価した。
◎: 良好なマゼンタの色相
○: やや赤みのマゼンタの色相
○′: やや青みのマゼンタの色相
×: 色相がマゼンタより大きくずれている
上記、評価方法により耐光性、色相評価を行った結果を表2に示す。
【0136】
同様に記録体を普通紙としてコピー用紙であるコニカコピーペーパーNR−A80(コニカ(株)製)、コピー用紙Xerox4024(ゼロックス(株)製)を上記、インクジェットプリンタにセットし、それぞれインク1〜18を用いて画像記録試料を作製した。
【0137】
[画像記録試料の普通紙にじみ評価]
得られた各画像記録試料において、印字部と非印字部の境界を目視で、下記評価基準によりにじみを評価した。
◎: 滲みなし
○: 不規則な滲みややあり
×: 不規則な滲み多い
上記、評価方法により耐光性、色相、普通紙にじみ評価を行った結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2の結果から明らかなように、本発明のインクジェットインクは耐光性、色相、普通紙にじみに優れていることがわかる。
【0140】
更に連続吐出実験においても問題なく使用でき、本発明のインクジェットインクの電気−機械変換方式に対する高い適合性を確認した。
【0141】
次に、プリンタをセイコーエプソン製インクジェットプリンタMJ−810C(電気−機械変換方式)とし、記録媒体を記録媒体3、セイコーエプソン社製フォトプリント2としてそれぞれインク1〜18を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相を評価した結果を表3に示す。
【0142】
同様に記録媒体をコニカコピーペーパーNR−A80(コニカ(株)製)としてそれぞれインク1〜18を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相、普通紙にじみを評価した結果を表3に示す。
【0143】
【表3】
【0144】
表3の結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録液は耐光性、色相、普通紙にじみに優れていることがわかる。
【0145】
更に連続吐出実験においても問題なく使用でき、本発明のインクジェット記録液の電気−機械変換方式に対する高い適合性を確認した。
【0146】
[インク19〜36の作製]
下記成分を混合、十分に攪拌した後、細孔径0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過してインク19を作製した。
前記化合物M−2 5.0質量%
エチレングリコール 10.0質量%
2−メチルペンタン−2,4−ジオール 5.0質量%
イオン交換水 75.0質量%
さらに表4に記載の組成を有する各インク20〜36をインク19と同様に作製した。
【0147】
【表4】
【0148】
表4で使用した溶剤は表1と同様の溶剤で以下の通り。
溶剤1:エチレングリコール
溶剤2:ジエチレングリコール
溶剤3:グリセリン
溶剤4:プロピレングリコール
溶剤5:トリプロピレングリコール
溶剤6:1,2−ペンタンジオール
溶剤7:1,2−ヘキサンジオール
溶剤8:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
溶剤9:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
溶剤10:プロピレングリコールブチルエーテル
溶剤11:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
溶剤12:2−メチル−1,3−プロパンジオール
溶剤13:2−メチルペンタン−2,4−ジオール
溶剤14:2−プロパノール
溶剤15:サーフィノール104
溶剤16:サーフィノール465
溶剤17:ブルロニックL62
溶剤18:ブルロニックL61
溶剤19:プロキセルGXL(D)
溶剤20:イオン交換水。
【0149】
プリンタをキヤノン製インクジェットプリンタBJ S700(電気−熱変換方式)とし、記録媒体を記録媒体1及びピクトリコ社製ピクトリコプロとしてそれぞれインク19〜36を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相を評価した結果を表5に示す。
【0150】
同様に記録媒体をコニカコピーペーパーNR−A80(コニカ(株)製)としてそれぞれインク19〜36を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相、普通紙にじみを評価した結果を表5に示す。
【0151】
【表5】
【0152】
表5の結果から明らかなように、本発明のインクジェットインクは耐光性、色相、普通紙にじみに優れていることがわかる。
【0153】
更に連続吐出実験においても問題なく使用でき、本発明のインクジェットインクの電気−熱変換方式に対する高い適合性を確認した。
【0154】
次にプリンタをヒューレットパッカード社製インクジェットプリンタhp cp1160とし、記録媒体を記録媒体2及びヒューレットパッカード社製耐光プレミアムフォト用紙(厚手)とし、それぞれインク19〜36を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相を評価した結果を表6に示す。
【0155】
同様に記録媒体をコピー用紙Xerox4024(ゼロックス(株)製)とし、それぞれインク19〜36を用いて画像記録試料を作製、上記評価方法に従い耐光性、色相、普通紙にじみを評価した結果を表6に示す。
【0156】
【表6】
【0157】
表6の結果から明らかなように、本発明のインクジェットインクは耐光性、色相、普通紙にじみに優れていることがわかる。
【0158】
更に連続吐出実験においても問題なく使用でき、本発明のインクジェットインクの電気−熱変換方式に対する高い適合性を確認した。
【0159】
【発明の効果】
本発明により、色画像の耐光性に優れ、普通紙においても滲みのないインクジェットインク、特に主な対象としてはマゼンタ色のインクジェットインクを提供することができた。
Claims (18)
- 水溶性染料、水、水溶性有機溶剤を含有するインクジェットインクにおいて、該水溶性染料が前記一般式(1)及び(2)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク。
- 一般式(1)と一般式(2)で表される化合物を1:4〜4:1の質量比率で含有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットインク。
- 1,2−アルカンジオールを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- ジエチレングリコールのアルキルエーテル、トリエチレングリコールのアルキルエーテル、テトラエチレングリコールのアルキルエーテル、プロピレングリコールのアルキルエーテル、ジプロピレングリコールのアルキルエーテル及びトリプロピレングリコールのアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 分岐2価アルコールを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 炭素数1〜3の1価アルコールを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- アセチレンジオール又はアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 普通紙にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 水溶性バインダーを含有するインク受容層を有する記録媒体にインクで記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インク受容層が多孔質構造を有することを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- 記録がオンデマンド方式で行われることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 電気・機械変換方式によりインクを吐出して記録を行うことを特徴とする請求項14に記載のインクジェット記録方法。
- 電気・熱変換方式によりインクを吐出して記録を行うことを特徴とする請求項14に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いることを特徴とする記録画像。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載の記録方法を用いることを特徴とする記録画像。
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