JP2004026726A - 光学活性フラバノン及びクロマノン類の製造法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬品、化粧品等の配合成分として有用なフラバノン及びクロマノン類の光学活性体の選択的な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然には種々のフラバノン誘導体やクロマノン誘導体が存在しており、その中には様々な生理活性を示す物質が含まれている。例えば、フラバノン誘導体としては、ナリンゲニン(Naringenin)、ヘスペレチン(Hesperetin)等が、クロマノン誘導体としてはディクタホリン−A(Dictafolin−A)、LL−D253α等が知られている。これらの化合物は、2位に不斉炭素原子を有しており、天然には光学活性体として存在する。
【0003】
これらの化合物のラセミ体の合成はいくつか報告されているものの、光学活性体の合成法については、光学活性なメチル p−トリルスルホキシドを用いる方法が報告されているにすぎない(TETRAHEDRON:Asymmetry 10(1999) 2739−2747,Tetrahedron Vol. 46, No. 18. pp6565−6574, 1990)。
しかしながら、これら従来の方法においては、(1)メチル p−トリルスルホキシドの反応部位がクロマン骨格の3位であることから不斉炭素を2個にしてしまうため副生物を多く経由することになる;(2)クロマン骨格の2位へのメチル化やフェニル化反応後は光学分割が必要になる等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、チオアセタール化合物に光学活性なエポキシ化合物を反応させ、閉環し、次いでチオアセタール基を加水分解して選択的に光学活性なフラバノン及びクロマノン類を製造する方法(特願2001−136978)を提案した。この製造法は閉環反応に光延反応を用いているので、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置とは反転したフラバノン及びクロマノン類が得られるものであった。
本発明の目的は、光学分割操作をすることなく、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置がそのまま維持された光学活性なフラバノン及びクロマノン類を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オルト−ハロベンズアルデヒドにアルカンジチオールを反応させて得たジチアン誘導体を塩基処理し、これに光学活性エポキシ化合物を反応させて光学活性アルコールを製造し、次いで塩基処理してベンザイン中間体を経由して閉環し、更にジチアン部を加水分解すると、光学活性エポキシ化合物の立体配置が維持された光学活性なフラバノン及びクロマノン類が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明の製造法は次の反応式で表すことができる。
【0007】
【化8】
【0008】
(式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R3はヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基が置換されていてもよいフェニル基、又はメチル基を示し、Xはフッ素原子又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、*は不斉炭素原子の位置を示す)
【0009】
すなわち、本発明は、ジチアン誘導体(4)を塩基処理した後、これに光学活性エポキシ化合物(5)を反応させて光学活性アルコール(6)を得、これを塩基処理して閉環させて光学活性スピロ化合物(7)を得、次いでこれを加水分解することを特徴とする一般式(1)で表される光学活性フラバノン又はクロマノン類の製造法を提供するものである。
なお、ジチアン誘導体(4)は、2−ハロベンズアルデヒド誘導体(2)とアルカンジチオール(3)とを反応させて得るのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記反応式中、R1及びR2で示されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられるが、このうちメトキシ基が特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられるが、このうちメチル基が特に好ましい。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基が挙げられるが、ヒドロキシメチル基が特に好ましい。R1及びR2としては水素原子、ヒドロキシ基又はメトキシ基が特に好ましい。
【0011】
R3で示されるアルコキシ置換フェニル基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が置換したフェニル基が挙げられ、メトキシフェニル基が好ましい。R3としては、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシ基とメトキシ基が置換したフェニル基、ジメトキシフェニル基、メチル基が好ましい。特に、フェニル基、メチル基が好ましい。
【0012】
Xとしては、フッ素原子が好ましい。
【0013】
nとしては、3が好ましい。
【0014】
2−ハロベンズアルデヒド誘導体とα,ω−アルカンジチオールとの反応は、2−ハロベンズアルデヒド誘導体をクロロホルム、塩化メチレン等の溶媒に溶解し、α,ω−アルカンジチオール及びBF3・Et2O等の触媒を加え、室温で数時間〜40時間撹拌することにより行なわれる。
【0015】
得られたジチアン誘導体と光学活性エポキシ化合物との反応は、ジチアン誘導体をn−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウム等の塩基で処理し、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で光学活性エポキシ化合物を反応させることにより行なわれる。
ジチアン誘導体の塩基処理は、例えばジチアン誘導体の無水テトラヒドロフラン溶液中に約−20℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を滴下して撹拌することにより行なわれる。
【0016】
得られた光学活性アルコールの閉環反応は、テトラヒドロフラン等の溶媒中でt−ブトキシカリウム等のアルコラート、水素化ナトリウム等の塩基を加えて、0.5時間〜数時間加熱還流することにより行なわれる。この反応により、例えば次式で示されるように立体配置はそのまま維持される。
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、Bは塩基を示し、R3は前記と同じ)
【0019】
得られた光学活性スピロ化合物の加水分解は、例えば塩化水銀(II)、酸化水銀(II)(赤色)、N−ブロモスクシンイミド等の触媒を用いて行なうのが好ましい。反応は、例えば塩化水銀(II)と炭酸カルシウムをアセトニトリル−水の混合溶液に懸濁させ、これに光学活性スピロ化合物を加えて室温で撹拌すればよい。
【0020】
本発明の製造法で得られるフラバノン及びクロマノン類は、原料として用いる光学活性エポキシ化合物(5)の立体配置が、光学活性の閉環反応においても、ベンザイン中間体を経由して光学活性スピロ化合物、更に加水分解反応においても維持されるもので、光学純度の極めて高いものである。
【0021】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(i)ジチアン誘導体の合成
アルゴンガス雰囲気下、2−フルオロベンズアルデヒド500mg(4mmol)をクロロホルム10mLに溶解後、撹拌しながら1,3−プロパンジチオール0.6mL(6mmol)及びBF3・Et2O 0.28mL(1.2mmol)を加え、一昼夜、室温で撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させた後、水層を塩化メチレンで3回抽出し、飽和食塩水で塩化メチレン層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルエーテル、n−ヘキサン=1:20)にて分離し、下記式のジチアン誘導体を得た(852.9mg、収率98%)。
【0023】
【化10】
【0024】
(ii)光学活性アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得たジチアン誘導体400mg(1.8mmol)をテトラヒドロフラン8mLに溶解し、−18℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.5mL(2.4mmol)を滴下し、−18℃で撹拌した。3時間後にヘキサメチルホスホルアミド0.33mLを加え、更に1時間後に(S)−(−)−プロピレンオキシド0.38mL(5.6mmol)を滴下し、一昼夜撹拌した。反応混合物に希釈した塩酸を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:3、1:2、1:1)、薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)で分離し、下記の光学活性アルコール368.6mg(収率71.0%)を黄色粘状物質として得た。
[α]D 20−30.6°(c0.5,CHCl3)。
【0025】
【化11】
【0026】
(iii)光学活性スピロ化合物の合成
アルゴンガス雰囲気下、(ii)で得た光学活性アルコール260mg(0.96mmol)をテトラヒドロフラン5mLに溶解後、t−ブトキシカリウム215mg(1.92mmol)を加え80℃にて撹拌し、30分後、更にt−ブトキシカリウム215mg(1.92mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:10)で分離し、下記の光学活性スピロ化合物224.3mg(収率90.7%)を無色結晶として得た。
[α]D 19−168.4°(c0.5,CHCl3)。
【0027】
【化12】
【0028】
(iv)クロマノンの合成
アルゴンガス雰囲気下、塩化水銀(II)738mg(2.72mmol)をアセトニトリル/水(=4/1)混合物15mLに懸濁させ、更に炭酸カルシウム212mg(2.72mmol)を加えて1時間、室温で撹拌した。次いでアセトニトリル5mLに溶解した(iii)で得た光学活性スピロ化合物172mg(0.68mmol)を滴下し、更に3時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:2)で分離し、下記の光学活性クロマノン79.1mg(収率74.0%)を無色針状結晶として得た。
[α]D 20−46.7°(c0.7,CHCl3)。
【0029】
【化13】
【0030】
実施例2
(i)光学活性アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、実施例1の(i)で得たジチアン誘導体300mg(1.4mmol)をテトラヒドロフラン6mLに溶解し、−18℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.2mL(1.8mmol)を滴下し、−18℃で撹拌した。3時間後にヘキサメチルホスホルアミド0.24mLを加え、更に1時間後に(R)−(+)−スチレンオキシド0.48mL(4.2mmol)を滴下し、一昼夜撹拌した。反応混合物に希釈した塩酸を加え反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:n−ヘキサン=20:1、塩化メチレン、エチルエーテル=20:1)、薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)で分離し、下記の光学活性アルコール205.8mg(収率43.8%)を黄色粘状物質として得た。
[α]D 20+26.2°(c0.8,CHCl3)。
【0031】
【化14】
【0032】
(ii)光学活性スピロ化合物の合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得た光学活性アルコール130mg(0.39mmol)をテトラヒドロフラン3mLに溶解後、t−ブトキシカリウム87.5mg(0.78mmol)を加え80℃にて撹拌し、30分後、更にt−ブトキシカリウム87.5mg(0.78mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:5、1:2)で分離し、下記の光学活性スピロ化合物62.1mg(収率50.9%)を無色結晶として得た。
[α]D 20+62.8°(c0.5,CHCl3)。
mp.149.5〜150.5℃。
【0033】
【化15】
【0034】
(iii)フラバノンの合成
アルゴンガス雰囲気下、塩化水銀(II)206mg(0.76mmol)をアセトニトリル/水(=4/1)混合物4mLに懸濁させ、更に炭酸カルシウム76mg(0.76mmol)を加えて1時間、室温で撹拌した。次いでアセトニトリル3mLに溶解した(ii)で得た光学活性スピロ化合物60mg(0.19mmol)を滴下し、更に3時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:2)で分離し、下記の光学活性フラバノン29.1mg(収率69.0%)を無色針状結晶として得た。
[α]D 20−66.7°(c0.3,CHCl3)。
mp.74〜77℃。
【0035】
【化16】
【0036】
【発明の効果】
本発明方法によれば、医薬品や化粧品原料として有用な光学活性フラバノン及びクロマノン類が、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置を維持して高収率で得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬品、化粧品等の配合成分として有用なフラバノン及びクロマノン類の光学活性体の選択的な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然には種々のフラバノン誘導体やクロマノン誘導体が存在しており、その中には様々な生理活性を示す物質が含まれている。例えば、フラバノン誘導体としては、ナリンゲニン(Naringenin)、ヘスペレチン(Hesperetin)等が、クロマノン誘導体としてはディクタホリン−A(Dictafolin−A)、LL−D253α等が知られている。これらの化合物は、2位に不斉炭素原子を有しており、天然には光学活性体として存在する。
【0003】
これらの化合物のラセミ体の合成はいくつか報告されているものの、光学活性体の合成法については、光学活性なメチル p−トリルスルホキシドを用いる方法が報告されているにすぎない(TETRAHEDRON:Asymmetry 10(1999) 2739−2747,Tetrahedron Vol. 46, No. 18. pp6565−6574, 1990)。
しかしながら、これら従来の方法においては、(1)メチル p−トリルスルホキシドの反応部位がクロマン骨格の3位であることから不斉炭素を2個にしてしまうため副生物を多く経由することになる;(2)クロマン骨格の2位へのメチル化やフェニル化反応後は光学分割が必要になる等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、チオアセタール化合物に光学活性なエポキシ化合物を反応させ、閉環し、次いでチオアセタール基を加水分解して選択的に光学活性なフラバノン及びクロマノン類を製造する方法(特願2001−136978)を提案した。この製造法は閉環反応に光延反応を用いているので、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置とは反転したフラバノン及びクロマノン類が得られるものであった。
本発明の目的は、光学分割操作をすることなく、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置がそのまま維持された光学活性なフラバノン及びクロマノン類を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オルト−ハロベンズアルデヒドにアルカンジチオールを反応させて得たジチアン誘導体を塩基処理し、これに光学活性エポキシ化合物を反応させて光学活性アルコールを製造し、次いで塩基処理してベンザイン中間体を経由して閉環し、更にジチアン部を加水分解すると、光学活性エポキシ化合物の立体配置が維持された光学活性なフラバノン及びクロマノン類が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明の製造法は次の反応式で表すことができる。
【0007】
【化8】
【0008】
(式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R3はヒドロキシ基及び/又はアルコキシ基が置換されていてもよいフェニル基、又はメチル基を示し、Xはフッ素原子又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、*は不斉炭素原子の位置を示す)
【0009】
すなわち、本発明は、ジチアン誘導体(4)を塩基処理した後、これに光学活性エポキシ化合物(5)を反応させて光学活性アルコール(6)を得、これを塩基処理して閉環させて光学活性スピロ化合物(7)を得、次いでこれを加水分解することを特徴とする一般式(1)で表される光学活性フラバノン又はクロマノン類の製造法を提供するものである。
なお、ジチアン誘導体(4)は、2−ハロベンズアルデヒド誘導体(2)とアルカンジチオール(3)とを反応させて得るのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記反応式中、R1及びR2で示されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられるが、このうちメトキシ基が特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられるが、このうちメチル基が特に好ましい。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基が挙げられるが、ヒドロキシメチル基が特に好ましい。R1及びR2としては水素原子、ヒドロキシ基又はメトキシ基が特に好ましい。
【0011】
R3で示されるアルコキシ置換フェニル基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が置換したフェニル基が挙げられ、メトキシフェニル基が好ましい。R3としては、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシ基とメトキシ基が置換したフェニル基、ジメトキシフェニル基、メチル基が好ましい。特に、フェニル基、メチル基が好ましい。
【0012】
Xとしては、フッ素原子が好ましい。
【0013】
nとしては、3が好ましい。
【0014】
2−ハロベンズアルデヒド誘導体とα,ω−アルカンジチオールとの反応は、2−ハロベンズアルデヒド誘導体をクロロホルム、塩化メチレン等の溶媒に溶解し、α,ω−アルカンジチオール及びBF3・Et2O等の触媒を加え、室温で数時間〜40時間撹拌することにより行なわれる。
【0015】
得られたジチアン誘導体と光学活性エポキシ化合物との反応は、ジチアン誘導体をn−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウム等の塩基で処理し、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中で光学活性エポキシ化合物を反応させることにより行なわれる。
ジチアン誘導体の塩基処理は、例えばジチアン誘導体の無水テトラヒドロフラン溶液中に約−20℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液を滴下して撹拌することにより行なわれる。
【0016】
得られた光学活性アルコールの閉環反応は、テトラヒドロフラン等の溶媒中でt−ブトキシカリウム等のアルコラート、水素化ナトリウム等の塩基を加えて、0.5時間〜数時間加熱還流することにより行なわれる。この反応により、例えば次式で示されるように立体配置はそのまま維持される。
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、Bは塩基を示し、R3は前記と同じ)
【0019】
得られた光学活性スピロ化合物の加水分解は、例えば塩化水銀(II)、酸化水銀(II)(赤色)、N−ブロモスクシンイミド等の触媒を用いて行なうのが好ましい。反応は、例えば塩化水銀(II)と炭酸カルシウムをアセトニトリル−水の混合溶液に懸濁させ、これに光学活性スピロ化合物を加えて室温で撹拌すればよい。
【0020】
本発明の製造法で得られるフラバノン及びクロマノン類は、原料として用いる光学活性エポキシ化合物(5)の立体配置が、光学活性の閉環反応においても、ベンザイン中間体を経由して光学活性スピロ化合物、更に加水分解反応においても維持されるもので、光学純度の極めて高いものである。
【0021】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(i)ジチアン誘導体の合成
アルゴンガス雰囲気下、2−フルオロベンズアルデヒド500mg(4mmol)をクロロホルム10mLに溶解後、撹拌しながら1,3−プロパンジチオール0.6mL(6mmol)及びBF3・Et2O 0.28mL(1.2mmol)を加え、一昼夜、室温で撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させた後、水層を塩化メチレンで3回抽出し、飽和食塩水で塩化メチレン層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルエーテル、n−ヘキサン=1:20)にて分離し、下記式のジチアン誘導体を得た(852.9mg、収率98%)。
【0023】
【化10】
【0024】
(ii)光学活性アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得たジチアン誘導体400mg(1.8mmol)をテトラヒドロフラン8mLに溶解し、−18℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.5mL(2.4mmol)を滴下し、−18℃で撹拌した。3時間後にヘキサメチルホスホルアミド0.33mLを加え、更に1時間後に(S)−(−)−プロピレンオキシド0.38mL(5.6mmol)を滴下し、一昼夜撹拌した。反応混合物に希釈した塩酸を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:3、1:2、1:1)、薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)で分離し、下記の光学活性アルコール368.6mg(収率71.0%)を黄色粘状物質として得た。
[α]D 20−30.6°(c0.5,CHCl3)。
【0025】
【化11】
【0026】
(iii)光学活性スピロ化合物の合成
アルゴンガス雰囲気下、(ii)で得た光学活性アルコール260mg(0.96mmol)をテトラヒドロフラン5mLに溶解後、t−ブトキシカリウム215mg(1.92mmol)を加え80℃にて撹拌し、30分後、更にt−ブトキシカリウム215mg(1.92mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:10)で分離し、下記の光学活性スピロ化合物224.3mg(収率90.7%)を無色結晶として得た。
[α]D 19−168.4°(c0.5,CHCl3)。
【0027】
【化12】
【0028】
(iv)クロマノンの合成
アルゴンガス雰囲気下、塩化水銀(II)738mg(2.72mmol)をアセトニトリル/水(=4/1)混合物15mLに懸濁させ、更に炭酸カルシウム212mg(2.72mmol)を加えて1時間、室温で撹拌した。次いでアセトニトリル5mLに溶解した(iii)で得た光学活性スピロ化合物172mg(0.68mmol)を滴下し、更に3時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:2)で分離し、下記の光学活性クロマノン79.1mg(収率74.0%)を無色針状結晶として得た。
[α]D 20−46.7°(c0.7,CHCl3)。
【0029】
【化13】
【0030】
実施例2
(i)光学活性アルコールの合成
アルゴンガス雰囲気下、実施例1の(i)で得たジチアン誘導体300mg(1.4mmol)をテトラヒドロフラン6mLに溶解し、−18℃に冷却した反応混合物に、n−ブチルリチウム1.2mL(1.8mmol)を滴下し、−18℃で撹拌した。3時間後にヘキサメチルホスホルアミド0.24mLを加え、更に1時間後に(R)−(+)−スチレンオキシド0.48mL(4.2mmol)を滴下し、一昼夜撹拌した。反応混合物に希釈した塩酸を加え反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:n−ヘキサン=20:1、塩化メチレン、エチルエーテル=20:1)、薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:1)で分離し、下記の光学活性アルコール205.8mg(収率43.8%)を黄色粘状物質として得た。
[α]D 20+26.2°(c0.8,CHCl3)。
【0031】
【化14】
【0032】
(ii)光学活性スピロ化合物の合成
アルゴンガス雰囲気下、(i)で得た光学活性アルコール130mg(0.39mmol)をテトラヒドロフラン3mLに溶解後、t−ブトキシカリウム87.5mg(0.78mmol)を加え80℃にて撹拌し、30分後、更にt−ブトキシカリウム87.5mg(0.78mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:5、1:2)で分離し、下記の光学活性スピロ化合物62.1mg(収率50.9%)を無色結晶として得た。
[α]D 20+62.8°(c0.5,CHCl3)。
mp.149.5〜150.5℃。
【0033】
【化15】
【0034】
(iii)フラバノンの合成
アルゴンガス雰囲気下、塩化水銀(II)206mg(0.76mmol)をアセトニトリル/水(=4/1)混合物4mLに懸濁させ、更に炭酸カルシウム76mg(0.76mmol)を加えて1時間、室温で撹拌した。次いでアセトニトリル3mLに溶解した(ii)で得た光学活性スピロ化合物60mg(0.19mmol)を滴下し、更に3時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、水層をエチルエーテルで3回抽出し、飽和食塩水でエチルエーテル層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧下で留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(エチルエーテル:n−ヘキサン=1:2)で分離し、下記の光学活性フラバノン29.1mg(収率69.0%)を無色針状結晶として得た。
[α]D 20−66.7°(c0.3,CHCl3)。
mp.74〜77℃。
【0035】
【化16】
【0036】
【発明の効果】
本発明方法によれば、医薬品や化粧品原料として有用な光学活性フラバノン及びクロマノン類が、原料の光学活性エポキシ化合物の立体配置を維持して高収率で得られる。
Claims (2)
- 一般式(4)
で表されるジチアン誘導体を塩基処理した後、これに一般式(5)
で表される光学活性エポキシ化合物を反応させて一般式(6)
で表される光学活性アルコールを得、これを塩基処理して閉環させて一般式(7)
で表される光学活性スピロ化合物を得、次いでこれを加水分解することを特徴とする一般式(1)
で表される光学活性フラバノン又はクロマノン類の製造法。
Priority Applications (1)
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JP2002185820A JP2004026726A (ja) | 2002-06-26 | 2002-06-26 | 光学活性フラバノン及びクロマノン類の製造法 |
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Publications (1)
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- 2002-06-26 JP JP2002185820A patent/JP2004026726A/ja active Pending
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