JP2004024518A - 高機能性歯ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、且つ低吸湿性を備えた理想のブラシであり、かつ長期間使用時の耐久性や歯肉を痛めることなく優れたマッサージ効果を有する高機能性ブラシを提供する。
【解決手段】プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)を主構成成分とするモノフィラメントから成るブリッスルが植毛されてなるブラシにおいて、前記ポリエステ(A)の極限粘度が0.5以上であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)を主構成成分とするモノフィラメントから成るブリッスルが植毛されてなるブラシにおいて、前記ポリエステ(A)の極限粘度が0.5以上であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性回復および耐久性に極めて優れ、歯肉を痛めることなく優れたマッサージ効果を有する歯ブラシ、弾性回復および耐久性に極めて優れた化粧用ブラシや塗料用ブラシなどの高機能性ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のブラシ用素材はその衛生性や加工性により合成重合体系素材を用いられるのが一般的である。しかしながら、ナイロンに代表されるそれら重合体素材は基本的に吸湿しやすく、吸湿後の物性低下や形態の安定性さらには、例えば歯ブラシのような用途では吸水した毛に口腔内菌が繁殖しやすいなど衛生面等の見知から必ずしも理想的な素材では無かった。かかるナイロンに変わる素材としては、例えば特開昭60−45606号公報に開示されているように素材としてポリブチレンテレフタレートを毛材として用いることで、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿のブラシ毛を提供できるという先行技術がある。確かにポリブチレンテレフタレートで吸湿性は低く抑えられるものの、弾性回復性はナイロン並もしくはそれに劣るものであり、さらに高性能の歯ブラシ用毛材が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの課題を解決する方法として、例えば、特開平8−173244公報では、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とすることにより、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿性のブラシ構成のブラシが得られることが開示されている。しかしながら、この場合でも長期間使用時の耐久性やマッサージ効果が悪いという問題があり、解決が待たれている。すなわち、本発明は、弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、且つ低吸湿性を備えた理想のブラシであり、かつ長期間使用時の耐久性や歯肉を痛めることなく優れたマッサージ効果を有する高機能性ブラシを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の高機能性ブラシは、プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)を主構成成分とするモノフィラメントから成るブリッスルが植毛されてなるブラシにおいて、前記ポリエステ(A)の極限粘度が0.5以上であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下であることを特徴とする。ただし、前記ポリエステ(A)は、モノフィラメント中の少なくとも全体の50重量%以上であることが好ましく、50重量%未満では弾性回復性の点劣る。
【0005】
この場合において、前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(A)よりも高い初期モジュラスを有し、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(B)との溶融混合物からなることが好ましい。
また、 前記ポリエステル(B)が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートのうち少なくともいずれか一つから選ばれるポリエステルであり、さらに、前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)をシース成分とし、熱可塑性ポリエステルエラストマーをコア成分とする複合モノフィラメントであり、また、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーが、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などに代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量400〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントと、から構成されるポリエステルエーテルブロック共重合体であり、さらに、前記モノフィラントあるいは複合モノフィラメントのカルボキシル末端基濃度が30当量/トン以下であり、さらにまた、モノフィラメントからなるブリッスルの先端をテーパー化してなる、ことが望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に係るプロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)(以下PTTと称することがある)は、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0007】
前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0008】
前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0009】
さらに、前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0010】
本発明に係るポリエステル(A)の極限粘度は、0.50デシリットル/グラム以上、より好ましくは0.55デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.60デシリットル/グラム以上である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度の上限値は、2.00デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。また、前記上限値以上のポリエステル(A)は、固相重合法で製造するのが一般的であるが、コストが非常に高くつき経済性の点で問題である。
【0011】
また、本発明に係るポリエステル(A)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。また、カルボキシル末端基濃度の下限値は、3当量/トンである。この下限値以下のポリエステル(A)を得るためには、経済性を度外視した製造法を採用しなければならず、問題である。
【0012】
前記のポリエステル(A)は、テレフタ−ル酸と1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化反応度が85%以上になるようにエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。また、ポリエステル(A)の極限粘度を増大させ、カルボキシル末端基濃度を前記の範囲以内に抑えるための他の製造方法としてに、0.35〜0.60デシリットル/グラムの溶融重縮合プレポリマーを固相重合する方法を採用してもよい。
【0013】
本発明に係るポリエステル(B)としては、ポリエステル(A)より初期モジュラスが高いポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが挙げられる。本発明に係るポリエチレンテレフタレート(以下PETと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に係るポリエチレンナフタレート(以下PENと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
本発明に係るポリエステル(B)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0014】
また、ポリエステル(B)の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムの範囲が好ましい。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。
【0015】
本発明の、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0016】
また、前記ポリエステル(A)と前記ポリエステル(B)との混合割合は、重量比で98:2〜52:48であることが好ましい。
前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度を30当量/トン以下に抑えるためには、例えば、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(A)およびポリエステル(B)を用いてモノフィラメントを溶融紡糸することが必要である。
【0017】
前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントは、例えば、あらかじめポリエステル(A)のチップと前記ポリエステル(B)のチップとをブレンドし、乾燥したあと、溶融紡糸機により紡糸することによって得ることができる。
この際、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とのエステル交換反応度が出来るだけ抑えることが望ましい。このためには、ポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。
【0018】
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の両者共に、溶融重縮合後や固相重合後にそれぞれのポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0019】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0020】
また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0021】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0022】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0023】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明に係る複合モノフィラメントのコア成分に用いる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などに代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量400〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントと、から構成されるポリエステルエーテルブロック共重合体である。特に高融点ポリエステルハードセグメントと分子量400〜6000程度の低融点脂肪族ポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルハードセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、低融点ソフトセグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステルエラストマーと呼ばれる熱可塑性ポリエステル型ブロック共重合体が好ましく、さらに低融点ソフトセグメントの含有量が8〜50重量%であることが、各種ブラシ用途で要求される強度、耐熱性、弾性回復性のバランスに優れることから望ましい。
【0025】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーのカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0026】
また本発明に係る複合モノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0027】
また複合フィラメントのコア成分およびシース成分の重量比は、95:5〜30:70であることが望ましい。より好ましくは90:10から40:60である。シース成分の比率が5重量%未満であると、ブラシとしての使用時にシース成分が剥離し易く、使用とともに初期の清掃性能が低下するからである。また、コア成分の比率が40重量%未満であると、ブラシとしてのコシが不足するからである。
【0028】
前記複合モノフィラメントにおけるモノフィラメントおよびコア部の断面形状については、必ずしも円形断面である必要はないが、口金ノズル製作上の簡便さから円形断面に設定することが工業上最も有利である。
本発明のブラシ用モノフィラメントからなるブリッスルは、その先端をテーパー化してあることが望ましい。
【0029】
先細のブリッスルを持ったブラシは、とくに歯ブラシとして使用した場合に、歯と歯の間又は歯と歯茎との境目を清掃し易く、また歯茎へのあたりが柔らかくて感触がよく、商品価値が非常に高いブラシとなる。
また、本発明のブラシ用モノフィラメントは、その先端のテーパー化と共に表面に多数の微細凹部を形成することによって、歯との摩擦抵抗を高め、清掃性を改良することも可能である。
【0030】
また、本発明に係るモノフィラメントの直径は、用途によって異なり、特に限定するものではないが、例えば、歯ブラシの場合には、0.01〜0.5mm程度の範囲が適当である。
【0031】
前記ポリエステル(A)、前記ポリエステル(B)および熱可塑性ポリエステルエラストマーには、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、耐熱剤、耐候剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、および着色剤などの通常の添加剤を含むことができる。
【0032】
前記の前記ポリエステル(A)、前記ポリエステル(A)と前記ポリエステル(B)からなるポリエステル組成物、あるいは熱可塑性ポリエステルエラストマーなどは、通常の溶融紡糸機により紡糸されモノフィラメントに成形される。モノフィラメントは植毛に供するカット長に切断された後、各種ブラシに植毛され所望の高性能ブラシを作成する事ができる。
【0033】
紡糸設備や条件は特に限定されないが、溶融吐出後に、冷却固化した後、加熱延伸する方法が好ましい。また、延伸倍率は適宜設定できるが、本発明で用いる樹脂の特性から、3倍以上5倍以下が望ましい。このような条件を設定することにより、ブラシとして優れた物性のフィラメントを形成できる。フィラメントの物性としては、破断伸度が、40%以上160%となるように条件設定することが、その弾性回復性、耐久性などの観点から良好である。また、紡糸されたモノフィラメントは、そのまま植毛に供しても良いし、植毛に供する前に、緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理することにより、フィラメントへ直線性を付与することもできる。熱処理温度がガラス転移温度以下では、直線性を付与する効果がなく、220℃以上では、芯成分の樹脂が軟化し、糸物性の低下が生じるからである。より好ましい熱処理温度は、130℃以上200℃以下である。
【0034】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。
なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0035】
(1)ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0036】
(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元比粘度(ηsp/c)
ポリマー0.05gを25mlの1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0037】
(3)カルボキシル末端基濃度(以下「AV」という)
ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、Analytical Chemistry 第26巻、1614頁(1954年)記載のPholの方法に準拠して測定した。単位は当量/トン。
【0038】
(4)弾性回復性
ブラシのモノフィラメントを20mmに切断し、室温にて平坦なガラス面上に置いた後、予め接着剤(コニシ(株)製「アロンアルファー」)を片面に塗ったカバーグラスをモノフィラメント20mmが埋まるようにはさみガラス面と接着した。自由になっている片方の端を丁度二つ折りになるように曲げてから、接着剤の付着していないカバーグラスをその上に乗せ、カバーグラスの上に底辺がカバーグラスの大きさに合わせた100gの重しを30分間乗せた。30分経過後荷重をはずし、10分後に折り曲げた位置から戻った角度a(度)で下記の式を用いて回復率を計算した。すなわち180度戻れば回復率は100%である。実験は10回繰り返しその平均値を採用した。
弾性回復率=100×a/180 (%)
【0039】
(5)耐久性
歯形模型の表面に、約40℃おいて通常の押し圧よりもかなり強い約500gfの押し圧でペーストをつけないで往復運動を1000回行った後、ブラシ毛の表面を顕微鏡で観察し、亀裂の状態を観察し、次のような評価基準で判定した。
判定:◎・・・亀裂ほとんどなし
○・・・亀裂少し有り
×・・・亀裂が非常に多い
【0040】
(6)歯肉のマッサージ効果
10人パネラーに実際に歯ブラシ(約45℃の温水で100時間処理したもの)を使用依頼した場合のマッサージ効果の官能評価結果を、次の判定1〜5としてとりまとめた。
判定:1・・・良好
2・・・普通
3・・・効果小
4・・・全く効果なし。
【0041】
(実施例1)
ジメチルテレフタレートおよび1,3−プロパンジオールを出発原料として用いて溶融重縮合反応によって極限粘度が0.70デシリットル/グラム、カルボキシル末端基濃度が10当量/トン、Co−b値が2.0のポリプロピレンテレフタレート(PTT)を得た。
このPTTレジンを0.1mmHgの真空度で80℃で4時間予備乾燥した後、同真空度条件で120℃で12時間乾燥後、280℃に調節したスクリュー型押し出し機にて溶融した後、同じく280℃に調節した1.2mm径の孔を有する紡糸口金を通じて紡糸し、ノズル直下に配した水冷浴で冷却後、直ちに85℃に調節したホットローラーで予備加熱したあと、120℃のスチーム下で4倍に延伸し巻き取った。その後140℃で10分の条件で定長下で熱処理し、最終直径0.22mmのモノフィラメントを得た。また、モノフィラメントへ直線性を付与するために、緊張下、180℃で5秒間の熱処理を行った。
この繊維を植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性を持ち、また歯肉のマッサージ効果も優れることが判明した。
【0042】
(実施例2)
実施例1で得られたPTTおよびGe触媒を用いて製造した固相重合PET(IV=0.85デシリットル/グラム、AV=12当量/トン)をいずれも85℃で熱水処理した。これらのPTT90重量部およびPET10重量部を十分に混合後、実施例1とほぼ同様にして乾燥した。実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。
この繊維を植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性を持ち、また歯肉のマッサージ効果も優れることが判明した。
【0043】
(比較例1)
実施例1とは溶融重縮合条件を変更して、極限粘度が0.48デシリットル/グラム、AV=40当量/トンのPTTを得た。
実施例1とほぼ同様にして乾燥した。実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。
ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、実施例と比較し、耐久性および歯肉のマッサージ効果の点で劣ることが分かった。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
以上の様に、本発明ブラシは、その毛材の弾性回復性に優れ、耐久性および歯肉のマッサージ効果に優れた今までにない高性能のブラシを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性回復および耐久性に極めて優れ、歯肉を痛めることなく優れたマッサージ効果を有する歯ブラシ、弾性回復および耐久性に極めて優れた化粧用ブラシや塗料用ブラシなどの高機能性ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のブラシ用素材はその衛生性や加工性により合成重合体系素材を用いられるのが一般的である。しかしながら、ナイロンに代表されるそれら重合体素材は基本的に吸湿しやすく、吸湿後の物性低下や形態の安定性さらには、例えば歯ブラシのような用途では吸水した毛に口腔内菌が繁殖しやすいなど衛生面等の見知から必ずしも理想的な素材では無かった。かかるナイロンに変わる素材としては、例えば特開昭60−45606号公報に開示されているように素材としてポリブチレンテレフタレートを毛材として用いることで、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿のブラシ毛を提供できるという先行技術がある。確かにポリブチレンテレフタレートで吸湿性は低く抑えられるものの、弾性回復性はナイロン並もしくはそれに劣るものであり、さらに高性能の歯ブラシ用毛材が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの課題を解決する方法として、例えば、特開平8−173244公報では、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とすることにより、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿性のブラシ構成のブラシが得られることが開示されている。しかしながら、この場合でも長期間使用時の耐久性やマッサージ効果が悪いという問題があり、解決が待たれている。すなわち、本発明は、弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、且つ低吸湿性を備えた理想のブラシであり、かつ長期間使用時の耐久性や歯肉を痛めることなく優れたマッサージ効果を有する高機能性ブラシを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の高機能性ブラシは、プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)を主構成成分とするモノフィラメントから成るブリッスルが植毛されてなるブラシにおいて、前記ポリエステ(A)の極限粘度が0.5以上であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下であることを特徴とする。ただし、前記ポリエステ(A)は、モノフィラメント中の少なくとも全体の50重量%以上であることが好ましく、50重量%未満では弾性回復性の点劣る。
【0005】
この場合において、前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(A)よりも高い初期モジュラスを有し、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(B)との溶融混合物からなることが好ましい。
また、 前記ポリエステル(B)が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートのうち少なくともいずれか一つから選ばれるポリエステルであり、さらに、前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)をシース成分とし、熱可塑性ポリエステルエラストマーをコア成分とする複合モノフィラメントであり、また、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーが、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などに代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量400〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントと、から構成されるポリエステルエーテルブロック共重合体であり、さらに、前記モノフィラントあるいは複合モノフィラメントのカルボキシル末端基濃度が30当量/トン以下であり、さらにまた、モノフィラメントからなるブリッスルの先端をテーパー化してなる、ことが望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に係るプロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)(以下PTTと称することがある)は、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0007】
前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0008】
前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0009】
さらに、前記ポリエステル(A)が共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0010】
本発明に係るポリエステル(A)の極限粘度は、0.50デシリットル/グラム以上、より好ましくは0.55デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.60デシリットル/グラム以上である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度の上限値は、2.00デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。また、前記上限値以上のポリエステル(A)は、固相重合法で製造するのが一般的であるが、コストが非常に高くつき経済性の点で問題である。
【0011】
また、本発明に係るポリエステル(A)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。また、カルボキシル末端基濃度の下限値は、3当量/トンである。この下限値以下のポリエステル(A)を得るためには、経済性を度外視した製造法を採用しなければならず、問題である。
【0012】
前記のポリエステル(A)は、テレフタ−ル酸と1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化反応度が85%以上になるようにエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。また、ポリエステル(A)の極限粘度を増大させ、カルボキシル末端基濃度を前記の範囲以内に抑えるための他の製造方法としてに、0.35〜0.60デシリットル/グラムの溶融重縮合プレポリマーを固相重合する方法を採用してもよい。
【0013】
本発明に係るポリエステル(B)としては、ポリエステル(A)より初期モジュラスが高いポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが挙げられる。本発明に係るポリエチレンテレフタレート(以下PETと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明に係るポリエチレンナフタレート(以下PENと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
本発明に係るポリエステル(B)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0014】
また、ポリエステル(B)の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムの範囲が好ましい。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。
【0015】
本発明の、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0016】
また、前記ポリエステル(A)と前記ポリエステル(B)との混合割合は、重量比で98:2〜52:48であることが好ましい。
前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度を30当量/トン以下に抑えるためには、例えば、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(A)およびポリエステル(B)を用いてモノフィラメントを溶融紡糸することが必要である。
【0017】
前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントは、例えば、あらかじめポリエステル(A)のチップと前記ポリエステル(B)のチップとをブレンドし、乾燥したあと、溶融紡糸機により紡糸することによって得ることができる。
この際、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とのエステル交換反応度が出来るだけ抑えることが望ましい。このためには、ポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。
【0018】
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の両者共に、溶融重縮合後や固相重合後にそれぞれのポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0019】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0020】
また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0021】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0022】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0023】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明に係る複合モノフィラメントのコア成分に用いる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などに代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量400〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントと、から構成されるポリエステルエーテルブロック共重合体である。特に高融点ポリエステルハードセグメントと分子量400〜6000程度の低融点脂肪族ポリエーテルソフトセグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルハードセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が150℃以上であり、低融点ソフトセグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステルエラストマーと呼ばれる熱可塑性ポリエステル型ブロック共重合体が好ましく、さらに低融点ソフトセグメントの含有量が8〜50重量%であることが、各種ブラシ用途で要求される強度、耐熱性、弾性回復性のバランスに優れることから望ましい。
【0025】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーのカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0026】
また本発明に係る複合モノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0027】
また複合フィラメントのコア成分およびシース成分の重量比は、95:5〜30:70であることが望ましい。より好ましくは90:10から40:60である。シース成分の比率が5重量%未満であると、ブラシとしての使用時にシース成分が剥離し易く、使用とともに初期の清掃性能が低下するからである。また、コア成分の比率が40重量%未満であると、ブラシとしてのコシが不足するからである。
【0028】
前記複合モノフィラメントにおけるモノフィラメントおよびコア部の断面形状については、必ずしも円形断面である必要はないが、口金ノズル製作上の簡便さから円形断面に設定することが工業上最も有利である。
本発明のブラシ用モノフィラメントからなるブリッスルは、その先端をテーパー化してあることが望ましい。
【0029】
先細のブリッスルを持ったブラシは、とくに歯ブラシとして使用した場合に、歯と歯の間又は歯と歯茎との境目を清掃し易く、また歯茎へのあたりが柔らかくて感触がよく、商品価値が非常に高いブラシとなる。
また、本発明のブラシ用モノフィラメントは、その先端のテーパー化と共に表面に多数の微細凹部を形成することによって、歯との摩擦抵抗を高め、清掃性を改良することも可能である。
【0030】
また、本発明に係るモノフィラメントの直径は、用途によって異なり、特に限定するものではないが、例えば、歯ブラシの場合には、0.01〜0.5mm程度の範囲が適当である。
【0031】
前記ポリエステル(A)、前記ポリエステル(B)および熱可塑性ポリエステルエラストマーには、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、耐熱剤、耐候剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、および着色剤などの通常の添加剤を含むことができる。
【0032】
前記の前記ポリエステル(A)、前記ポリエステル(A)と前記ポリエステル(B)からなるポリエステル組成物、あるいは熱可塑性ポリエステルエラストマーなどは、通常の溶融紡糸機により紡糸されモノフィラメントに成形される。モノフィラメントは植毛に供するカット長に切断された後、各種ブラシに植毛され所望の高性能ブラシを作成する事ができる。
【0033】
紡糸設備や条件は特に限定されないが、溶融吐出後に、冷却固化した後、加熱延伸する方法が好ましい。また、延伸倍率は適宜設定できるが、本発明で用いる樹脂の特性から、3倍以上5倍以下が望ましい。このような条件を設定することにより、ブラシとして優れた物性のフィラメントを形成できる。フィラメントの物性としては、破断伸度が、40%以上160%となるように条件設定することが、その弾性回復性、耐久性などの観点から良好である。また、紡糸されたモノフィラメントは、そのまま植毛に供しても良いし、植毛に供する前に、緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理することにより、フィラメントへ直線性を付与することもできる。熱処理温度がガラス転移温度以下では、直線性を付与する効果がなく、220℃以上では、芯成分の樹脂が軟化し、糸物性の低下が生じるからである。より好ましい熱処理温度は、130℃以上200℃以下である。
【0034】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。
なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0035】
(1)ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0036】
(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元比粘度(ηsp/c)
ポリマー0.05gを25mlの1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0037】
(3)カルボキシル末端基濃度(以下「AV」という)
ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、Analytical Chemistry 第26巻、1614頁(1954年)記載のPholの方法に準拠して測定した。単位は当量/トン。
【0038】
(4)弾性回復性
ブラシのモノフィラメントを20mmに切断し、室温にて平坦なガラス面上に置いた後、予め接着剤(コニシ(株)製「アロンアルファー」)を片面に塗ったカバーグラスをモノフィラメント20mmが埋まるようにはさみガラス面と接着した。自由になっている片方の端を丁度二つ折りになるように曲げてから、接着剤の付着していないカバーグラスをその上に乗せ、カバーグラスの上に底辺がカバーグラスの大きさに合わせた100gの重しを30分間乗せた。30分経過後荷重をはずし、10分後に折り曲げた位置から戻った角度a(度)で下記の式を用いて回復率を計算した。すなわち180度戻れば回復率は100%である。実験は10回繰り返しその平均値を採用した。
弾性回復率=100×a/180 (%)
【0039】
(5)耐久性
歯形模型の表面に、約40℃おいて通常の押し圧よりもかなり強い約500gfの押し圧でペーストをつけないで往復運動を1000回行った後、ブラシ毛の表面を顕微鏡で観察し、亀裂の状態を観察し、次のような評価基準で判定した。
判定:◎・・・亀裂ほとんどなし
○・・・亀裂少し有り
×・・・亀裂が非常に多い
【0040】
(6)歯肉のマッサージ効果
10人パネラーに実際に歯ブラシ(約45℃の温水で100時間処理したもの)を使用依頼した場合のマッサージ効果の官能評価結果を、次の判定1〜5としてとりまとめた。
判定:1・・・良好
2・・・普通
3・・・効果小
4・・・全く効果なし。
【0041】
(実施例1)
ジメチルテレフタレートおよび1,3−プロパンジオールを出発原料として用いて溶融重縮合反応によって極限粘度が0.70デシリットル/グラム、カルボキシル末端基濃度が10当量/トン、Co−b値が2.0のポリプロピレンテレフタレート(PTT)を得た。
このPTTレジンを0.1mmHgの真空度で80℃で4時間予備乾燥した後、同真空度条件で120℃で12時間乾燥後、280℃に調節したスクリュー型押し出し機にて溶融した後、同じく280℃に調節した1.2mm径の孔を有する紡糸口金を通じて紡糸し、ノズル直下に配した水冷浴で冷却後、直ちに85℃に調節したホットローラーで予備加熱したあと、120℃のスチーム下で4倍に延伸し巻き取った。その後140℃で10分の条件で定長下で熱処理し、最終直径0.22mmのモノフィラメントを得た。また、モノフィラメントへ直線性を付与するために、緊張下、180℃で5秒間の熱処理を行った。
この繊維を植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性を持ち、また歯肉のマッサージ効果も優れることが判明した。
【0042】
(実施例2)
実施例1で得られたPTTおよびGe触媒を用いて製造した固相重合PET(IV=0.85デシリットル/グラム、AV=12当量/トン)をいずれも85℃で熱水処理した。これらのPTT90重量部およびPET10重量部を十分に混合後、実施例1とほぼ同様にして乾燥した。実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。
この繊維を植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性を持ち、また歯肉のマッサージ効果も優れることが判明した。
【0043】
(比較例1)
実施例1とは溶融重縮合条件を変更して、極限粘度が0.48デシリットル/グラム、AV=40当量/トンのPTTを得た。
実施例1とほぼ同様にして乾燥した。実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。
ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、実施例と比較し、耐久性および歯肉のマッサージ効果の点で劣ることが分かった。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
以上の様に、本発明ブラシは、その毛材の弾性回復性に優れ、耐久性および歯肉のマッサージ効果に優れた今までにない高性能のブラシを提供することができる。
Claims (7)
- プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とするポリエステル(A)を主構成成分とするモノフィラメントから成るブリッスルが植毛されてなるブラシにおいて、前記ポリエステ(A)の極限粘度が0.5以上であり、かつカルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下であることを特徴とする高機能性ブラシ。
- 前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)と、前記ポリエステル(A)よりも高い初期モジュラスを有し、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(B)との溶融混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の高機能性ブラシ。
- 前記ポリエステル(B)が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートのうち少なくともいずれか一つから選ばれるポリエステルであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の高機能性ブラシ。
- 前記モノフィラメントが、前記ポリエステル(A)をシース成分とし、熱可塑性ポリエステルエラストマーをコア成分とする複合モノフィラメントであることを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の高機能性ブラシ。
- 前記熱可塑性ポリエステルエラストマーが、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などに代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメントと、分子量400〜6000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントと、から構成されるポリエステルエーテルブロック共重合体であることを特徴とする請求項1または4のいずれかに記載の高機能性ブラシ。
- 前記モノフィラメントあるいは複合モノフィラメントのカルボキシル末端基濃度が30当量/トン以下であることを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載の高機能性ブラシ。
- モノフィラメントからなるブリッスルの先端をテーパー化してなることを特徴とする請求項1または6のいずれかに記載の高機能性ブラシ。
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Cited By (1)
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JP2005334432A (ja) * | 2004-05-28 | 2005-12-08 | Kikusui Chemical Industries Co Ltd | 塗装用ブラシ |
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2002
- 2002-06-25 JP JP2002184926A patent/JP2004024518A/ja active Pending
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