JP2004024517A - 触感に優れる高性能ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、かつ低吸湿性であり、さらに触感にも優れる理想的なブラシ毛材を提供する。
【解決手段】合成重合体のブラシ毛が植毛されてなるブラシにおいて、該ブラシ毛のフィラメントが芯成分および鞘成分からなる複合糸であり、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリアミドであることを特徴とする高性能ブラシであり、さらに好ましくは、ブラシ毛は熱処理されてなるものである。
【選択図】なし
【解決手段】合成重合体のブラシ毛が植毛されてなるブラシにおいて、該ブラシ毛のフィラメントが芯成分および鞘成分からなる複合糸であり、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリアミドであることを特徴とする高性能ブラシであり、さらに好ましくは、ブラシ毛は熱処理されてなるものである。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイピング特性とソフト感に優れ、しかも使用上充分なコシ(腰)及び弾性回復に優れるワイピングブラシ、歯ブラシ、化粧用ブラシ、あるいは塗料用ブラシなどの高機能ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在のブラシ用素材はその衛生性や加工性により合成重合体系素材を用いられるのが一般的である。しかしながら、ナイロンに代表されるそれら重合体素材は基本的に吸湿しやすく、吸湿後の物性低下や形態の安定性さらには、例えば歯ブラシのような用途では吸水した毛に口腔内菌が繁殖しやすいなど衛生面等の見知から必ずしも理想的な素材では無かった。かかるナイロンに変わる素材としては、例えば特開昭60−45606号公報に開示されているように素材としてポリブチレンテレフタレートを毛材として用いることで、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿のブラシ毛を提供できるという先行技術がある。確かにポリブチレンテレフタレートで吸湿性は低く抑えられるものの、弾性回復性はナイロン並もしくはそれに劣るものであり、さらに高性能の歯ブラシ用毛材が求められていた。また、これらの課題を解決する方法として、例えば、特開平8−173244号公報では、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とすることにより、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿性のブラシ構成のブラシが得られることが開示されている。しかしながら、ポリプロピレンテレフタレートを主成分としたフィラメントを毛材として用いたブラシの場合、ナイロンを用いた場合と比較し、表面の摩擦特性が異なることから、多くの場合、触感が好まれない、という課題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、かつ低吸湿性であり、さらに触感にも優れる理想的なブラシ毛材を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上の観点に基づき、本発明は鋭意検討の結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、合成重合体のブラシ毛が植毛されてなるブラシにおいて、該ブラシ毛のフィラメントが芯成分および鞘成分からなる複合糸であり、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリアミドであることを特徴とする高性能ブラシである。
なお、本発明の高性能ブラシにおいては、鞘成分のポリアミドがナイロン6−12であること、ブラシ毛のフィラメントの芯成分および鞘成分の重量比が95:5〜30:70であること、ブラシ毛のフィラメントの破断伸度が、40〜160%であること、及びブラシ毛のフィラメントが、植毛前に緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理されてなることが好ましく、これらの構成を採用することにより、さらに優れた効果を得ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリプロピレンテレフタレートを主成分とする合成重合体とは、プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とし、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり(以下PTTと称することがある)、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0007】
前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0008】
前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0009】
さらに、前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0010】
本発明におけるPTTの極限粘度は、0.50デシリットル/グラム以上、より好ましくは0.60デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.70デシリットル/グラム以上である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度の上限値は、2.00デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。また、前記上限値以上のPTTは、固相重合法で製造するのが一般的であるが、コストが非常に高くつき経済性の点で問題である。
【0011】
また、本発明におけるPTTのカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。また、カルボキシル末端基濃度の下限値は、3当量/トンである。この下限値以下のポリエステル(A)を得るためには、経済性を度外視した製造法を採用しなければならず、問題である。
【0012】
前記のPTTは、テレフタ−ル酸と1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化反応度が85%以上になるようにエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として275℃未満の温度で減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。また、ポリエステル(A)の極限粘度を増大させ、カルボキシル末端基濃度を前記の範囲以内に抑えるための他の製造方法としてに、0.35〜0.60デシリットル/グラムの溶融重縮合プレポリマーを固相重合する方法を採用してもよい。
【0013】
本発明におけるPTTは、他のポリエステルと溶融混合して使用することができる。このポリエステル(以下、ポリエステル(B)と称することがある)は、PTTより初期モジュラスが高いポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが挙げられる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート(以下PETと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明におけるポリエチレンナフタレート(以下PENと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
本発明におけるポリエステル(B)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0014】
また、ポリエステル(B)の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムの範囲が好ましい。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。
【0015】
本発明の、前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0016】
また、前記PTTと前記ポリエステル(B)との混合割合は、重量比で98:2〜52:48であることが好ましい。
PTTのブラシ毛中の含有量が少なくとも全体の50重量%未満では、弾性回復性の点で劣る傾向がある。
前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度を30当量/トン以下に抑えるためには、例えば、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(A)およびポリエステル(B)を用いてモノフィラメントを溶融紡糸することが必要である。
【0017】
前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントは、例えば、あらかじめポリエステル(A)のチップと前記ポリエステル(B)のチップとをブレンドし、乾燥したあと、溶融紡糸機により紡糸することによって得ることができる。
この際、PTTとポリエステル(B)とのエステル交換反応度が出来るだけ抑えることが望ましい。このためには、ポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。
【0018】
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、PTTおよびポリエステル(B)の両者共に、溶融重縮合後や固相重合後にそれぞれのポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0019】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0020】
また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0021】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0022】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0023】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明におけるブラシ毛のフィラメントは、鞘成分が主としてポリアミドであるが、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであることにより、ナイロンと比較し優れた弾性回復性や耐久性を保ちながら、触感が好まれているポリアミドを鞘成分として用いることにより、優れた触感を兼ね備えることができる。
【0025】
また、鞘成分に用いるポリポリアミドとしては、ポリアミドの中では、吸湿率が少なく、水分を含んだ状態での物性に優れるナイロン6−12が望ましい。
【0026】
また、ブラシ毛のフィラメントの芯成分および鞘成分の重量比は、95:5〜30:70であることが望ましい。より好ましくは90:10から40:60である。
鞘成分の比率が5重量%未満であると、ブラシとしての使用時に鞘成分が剥離し易く、使用とともに初期の清掃性能が低下するからである。また、芯成分の比率が40重量%未満であると、ブラシとしてのコシが不足するからである。
【0027】
この様にして選択された重合体又はそれらの組成物は通常の溶融紡糸機により紡糸されモノフィラメントに成形される。この場合、紡糸設備や条件は特に限定されないが、溶融吐出後に、冷却固化した後、加熱延伸する方法が好ましい。また、延伸倍率は適宜設定できるが、本発明で用いる樹脂の特性から、3倍以上5倍以下が望ましい。このような条件を設定することにより、ブラシとして優れた物性のフィラメントを形成できる。フィラメントの物性としては、破断伸度が、40〜160%となるように条件設定することが、その弾性回復性、耐久性などの観点から良好である。また、紡糸されたモノフィラメントは、そのまま植毛に供しても良いし、植毛に供する前に、緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理することにより、フィラメントへ直線性を付与することもできる。熱処理温度がガラス転移温度以下では、直線性を付与する効果がなく、220℃以上では、芯成分の樹脂が軟化し、糸物性の低下が生じるからである。より好ましい熱処理温度は、130〜200℃である。モノフィラメントは植毛に供するカット長に切断された後、各種ブラシに植毛され所望の高性能ブラシを作成する事ができる。
【0028】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。しかしながら、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
実施例1
ジメチルテレフタレートおよび1,3−プロパンジオールを出発原料として用いて溶融重縮合反応によって極限粘度が0.70デシリットル/グラム、カルボキシル末端基濃度が10当量/トン、Co−b値が2.0のポリプロピレンテレフタレート(PTT)を得た。極限粘度0.70のポリプロピレンテレフタレートレジンを0.1mmHgの真空度で80℃で4時間予備乾燥した後、同真空度条件で120℃で12時間乾燥した。また、ナイロン6−12を0.1mmHgの真空度で120℃で4時間予備乾燥した。これらの原料を用い、複合ノズルを用いた通常の溶融紡糸方法により、芯成分が前述のポリプロピレンテレフタレート、鞘成分が前述のナイロン6−12であり、かつ芯成分および鞘成分の重量比率が80:20である直径0.20mmの芯鞘構造のモノフィラメントを製造した。また、モノフィラメントへ直線性を付与するために、緊張下、180℃で5秒間の熱処理を行った。このモノフィラメントを植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性、触感を有することが分かった。
【0029】
比較例1
実施例1においてモノフィラメントの原料としてナイロン6−12を用い、直径0.20mmの単一成分からなるモノフィラメントを製造する以外は、実施例1と全く同じ操作でブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、比較例1では、実施例と比較し、弾性回復性、耐久性の点で劣ることが分かった。
【0030】
比較例2
実施例1においてモノフィラメントの原料としてポリプロピレンテレフタレートを用い、直径0.20mmの単一成分からなるモノフィラメントを製造する以外は、実施例1と全く同じ操作でブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、比較例2では、実施例と比較し、触感が若干劣ることが分かった。
【0031】
【表1】
【0032】
なお、評価方法は以下の方法によった。
(1)ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0033】
(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元比粘度(ηsp/c)
ポリマー0.05gを25mlの1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0034】
(3)カルボキシル末端基濃度(以下「AV」という)
ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、Analytical Chemistry 第26巻、1614頁(1954年)記載のPholの方法に準拠して測定した。単位は当量/トン。
【0035】
(4)(弾性回復性)
ブラシのモノフィラメントを20mmに切断し、室温にて平坦なガラス面上に置いた後、予め接着剤(コニシ(株)製「アロンアルファー」)を片面に塗ったカバーグラスをモノフィラメント20mmが埋まるようにはさみ、ガラス面と接着した。自由になっている片方の端を丁度二つ折りになるように曲げてから、接着剤の付着していないカバーグラスをその上に乗せ、カバーグラスの上に底辺がカバーグラスの大きさに合わせた100gの重しを30分間乗せた。30分経過後荷重をはずし、10分後に折り曲げた位置から戻った角度a(度)で下記の式を用いて回復率を計算した。すなわち180度戻れば回復率は100%である。実験は10回繰り返しその平均値を採用した。
弾性回復率=100×a/180 (%)
【0036】
(5)(耐久性)
歯形模型の表面に通常の押し圧よりもかなり強い約500gfの押し圧でペーストをつけないで往復運動を行い、ブラシ毛がその植毛時の方向、すなわち軸部に対して垂直な位置から平均して20度曲がるまでの回数で評価した。すなわち本発明ではその繰り返し数が100回以上を◎、100回未満50回以上を○、50回未満25回以上を△、25回未満を×と判定した。
【0037】
(触感)
ペーストをつけないで指先でブラシ先端部を触感する。実際の歯磨きペーストを付けて洗浄するときの使用感、特に歯肉との接触感を、通常の高度を合わせた獣毛ブラシと比較した触感を、男女5名ずつ(30ないし40才)の10名の被験者でモニターした。獣毛に比べて総合的に触感・使用感に優れると判断した人の割合を求め、それが80%以上の場合を◎、80%未満50%以上を○、50%未満20%以上を△、25%未満を×と判定した。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、ブラシ用毛およびそれを用いた各種ブラシは、その毛材のはりコシや弾性回復性や耐久性に優れ、さらには触感にも優れた今までにない高性能のブラシを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイピング特性とソフト感に優れ、しかも使用上充分なコシ(腰)及び弾性回復に優れるワイピングブラシ、歯ブラシ、化粧用ブラシ、あるいは塗料用ブラシなどの高機能ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在のブラシ用素材はその衛生性や加工性により合成重合体系素材を用いられるのが一般的である。しかしながら、ナイロンに代表されるそれら重合体素材は基本的に吸湿しやすく、吸湿後の物性低下や形態の安定性さらには、例えば歯ブラシのような用途では吸水した毛に口腔内菌が繁殖しやすいなど衛生面等の見知から必ずしも理想的な素材では無かった。かかるナイロンに変わる素材としては、例えば特開昭60−45606号公報に開示されているように素材としてポリブチレンテレフタレートを毛材として用いることで、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿のブラシ毛を提供できるという先行技術がある。確かにポリブチレンテレフタレートで吸湿性は低く抑えられるものの、弾性回復性はナイロン並もしくはそれに劣るものであり、さらに高性能の歯ブラシ用毛材が求められていた。また、これらの課題を解決する方法として、例えば、特開平8−173244号公報では、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とすることにより、弾性回復性に優れ、かつ低吸湿性のブラシ構成のブラシが得られることが開示されている。しかしながら、ポリプロピレンテレフタレートを主成分としたフィラメントを毛材として用いたブラシの場合、ナイロンを用いた場合と比較し、表面の摩擦特性が異なることから、多くの場合、触感が好まれない、という課題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は弾性回復性が従来のナイロンに比べはるかに高く、かつ低吸湿性であり、さらに触感にも優れる理想的なブラシ毛材を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上の観点に基づき、本発明は鋭意検討の結果、本発明に至った。
【0005】
すなわち本発明は、合成重合体のブラシ毛が植毛されてなるブラシにおいて、該ブラシ毛のフィラメントが芯成分および鞘成分からなる複合糸であり、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリアミドであることを特徴とする高性能ブラシである。
なお、本発明の高性能ブラシにおいては、鞘成分のポリアミドがナイロン6−12であること、ブラシ毛のフィラメントの芯成分および鞘成分の重量比が95:5〜30:70であること、ブラシ毛のフィラメントの破断伸度が、40〜160%であること、及びブラシ毛のフィラメントが、植毛前に緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理されてなることが好ましく、これらの構成を採用することにより、さらに優れた効果を得ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリプロピレンテレフタレートを主成分とする合成重合体とは、プロピレンテレフタレートを主繰り返し単位とし、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり(以下PTTと称することがある)、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0007】
前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0008】
前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコ−ルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ルなどが挙げられる。
【0009】
さらに、前記PTTが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコ−ル成分としてグリセリン、ペンタエリスリト−ルを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0010】
本発明におけるPTTの極限粘度は、0.50デシリットル/グラム以上、より好ましくは0.60デシリットル/グラム以上、さらに好ましくは0.70デシリットル/グラム以上である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度の上限値は、2.00デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。また、前記上限値以上のPTTは、固相重合法で製造するのが一般的であるが、コストが非常に高くつき経済性の点で問題である。
【0011】
また、本発明におけるPTTのカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。また、カルボキシル末端基濃度の下限値は、3当量/トンである。この下限値以下のポリエステル(A)を得るためには、経済性を度外視した製造法を採用しなければならず、問題である。
【0012】
前記のPTTは、テレフタ−ル酸と1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化反応度が85%以上になるようにエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルと1,3−プロパンジオールおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Al化合物またはTi化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて主として275℃未満の温度で減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。また、ポリエステル(A)の極限粘度を増大させ、カルボキシル末端基濃度を前記の範囲以内に抑えるための他の製造方法としてに、0.35〜0.60デシリットル/グラムの溶融重縮合プレポリマーを固相重合する方法を採用してもよい。
【0013】
本発明におけるPTTは、他のポリエステルと溶融混合して使用することができる。このポリエステル(以下、ポリエステル(B)と称することがある)は、PTTより初期モジュラスが高いポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが挙げられる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート(以下PETと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本発明におけるポリエチレンナフタレート(以下PENと称することがある)は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
本発明におけるポリエステル(B)のカルボキシル末端基濃度は、20当量/トン以下、好ましくは18当量/トン以下、さらに好ましくは15当量/トン以下、特に好ましくは13当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、20当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0014】
また、ポリエステル(B)の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムの範囲が好ましい。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られたブラシの弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下及びカルボキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。
【0015】
本発明の、前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度は、30当量/トン以下、好ましくは25当量/トン以下、さらに好ましくは20当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。カルボキシル末端基濃度は、30当量/トンを超える場合は、得られたブラシの耐久性が悪くなり問題である。
【0016】
また、前記PTTと前記ポリエステル(B)との混合割合は、重量比で98:2〜52:48であることが好ましい。
PTTのブラシ毛中の含有量が少なくとも全体の50重量%未満では、弾性回復性の点で劣る傾向がある。
前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度を30当量/トン以下に抑えるためには、例えば、カルボキシル末端基濃度が20当量/トン以下のポリエステル(A)およびポリエステル(B)を用いてモノフィラメントを溶融紡糸することが必要である。
【0017】
前記PTTと、前記ポリエステル(B)との溶融混合物からなるモノフィラメントは、例えば、あらかじめポリエステル(A)のチップと前記ポリエステル(B)のチップとをブレンドし、乾燥したあと、溶融紡糸機により紡糸することによって得ることができる。
この際、PTTとポリエステル(B)とのエステル交換反応度が出来るだけ抑えることが望ましい。このためには、ポリエステルの重縮合触媒を失活処理することが必要である。
【0018】
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、PTTおよびポリエステル(B)の両者共に、溶融重縮合後や固相重合後にそれぞれのポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0019】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエステル1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエステルと水蒸気とを接触させる。この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0020】
また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0021】
溶融重縮合ポリエステルの場合には、溶融重縮合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステル樹脂とを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合して重縮合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0022】
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、重縮合触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
【0023】
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、本発明におけるブラシ毛のフィラメントは、鞘成分が主としてポリアミドであるが、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであることにより、ナイロンと比較し優れた弾性回復性や耐久性を保ちながら、触感が好まれているポリアミドを鞘成分として用いることにより、優れた触感を兼ね備えることができる。
【0025】
また、鞘成分に用いるポリポリアミドとしては、ポリアミドの中では、吸湿率が少なく、水分を含んだ状態での物性に優れるナイロン6−12が望ましい。
【0026】
また、ブラシ毛のフィラメントの芯成分および鞘成分の重量比は、95:5〜30:70であることが望ましい。より好ましくは90:10から40:60である。
鞘成分の比率が5重量%未満であると、ブラシとしての使用時に鞘成分が剥離し易く、使用とともに初期の清掃性能が低下するからである。また、芯成分の比率が40重量%未満であると、ブラシとしてのコシが不足するからである。
【0027】
この様にして選択された重合体又はそれらの組成物は通常の溶融紡糸機により紡糸されモノフィラメントに成形される。この場合、紡糸設備や条件は特に限定されないが、溶融吐出後に、冷却固化した後、加熱延伸する方法が好ましい。また、延伸倍率は適宜設定できるが、本発明で用いる樹脂の特性から、3倍以上5倍以下が望ましい。このような条件を設定することにより、ブラシとして優れた物性のフィラメントを形成できる。フィラメントの物性としては、破断伸度が、40〜160%となるように条件設定することが、その弾性回復性、耐久性などの観点から良好である。また、紡糸されたモノフィラメントは、そのまま植毛に供しても良いし、植毛に供する前に、緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理することにより、フィラメントへ直線性を付与することもできる。熱処理温度がガラス転移温度以下では、直線性を付与する効果がなく、220℃以上では、芯成分の樹脂が軟化し、糸物性の低下が生じるからである。より好ましい熱処理温度は、130〜200℃である。モノフィラメントは植毛に供するカット長に切断された後、各種ブラシに植毛され所望の高性能ブラシを作成する事ができる。
【0028】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。しかしながら、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
実施例1
ジメチルテレフタレートおよび1,3−プロパンジオールを出発原料として用いて溶融重縮合反応によって極限粘度が0.70デシリットル/グラム、カルボキシル末端基濃度が10当量/トン、Co−b値が2.0のポリプロピレンテレフタレート(PTT)を得た。極限粘度0.70のポリプロピレンテレフタレートレジンを0.1mmHgの真空度で80℃で4時間予備乾燥した後、同真空度条件で120℃で12時間乾燥した。また、ナイロン6−12を0.1mmHgの真空度で120℃で4時間予備乾燥した。これらの原料を用い、複合ノズルを用いた通常の溶融紡糸方法により、芯成分が前述のポリプロピレンテレフタレート、鞘成分が前述のナイロン6−12であり、かつ芯成分および鞘成分の重量比率が80:20である直径0.20mmの芯鞘構造のモノフィラメントを製造した。また、モノフィラメントへ直線性を付与するために、緊張下、180℃で5秒間の熱処理を行った。このモノフィラメントを植毛し、歯ブラシを成形した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、極めて優れた弾性回復性、耐久性、触感を有することが分かった。
【0029】
比較例1
実施例1においてモノフィラメントの原料としてナイロン6−12を用い、直径0.20mmの単一成分からなるモノフィラメントを製造する以外は、実施例1と全く同じ操作でブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、比較例1では、実施例と比較し、弾性回復性、耐久性の点で劣ることが分かった。
【0030】
比較例2
実施例1においてモノフィラメントの原料としてポリプロピレンテレフタレートを用い、直径0.20mmの単一成分からなるモノフィラメントを製造する以外は、実施例1と全く同じ操作でブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。ブラシ毛の特性を評価したところ表1に示したように、比較例2では、実施例と比較し、触感が若干劣ることが分かった。
【0031】
【表1】
【0032】
なお、評価方法は以下の方法によった。
(1)ポリエステル(A)およびポリエステル(B)の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0033】
(2)熱可塑性ポリエステルエラストマーの還元比粘度(ηsp/c)
ポリマー0.05gを25mlの1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0034】
(3)カルボキシル末端基濃度(以下「AV」という)
ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、Analytical Chemistry 第26巻、1614頁(1954年)記載のPholの方法に準拠して測定した。単位は当量/トン。
【0035】
(4)(弾性回復性)
ブラシのモノフィラメントを20mmに切断し、室温にて平坦なガラス面上に置いた後、予め接着剤(コニシ(株)製「アロンアルファー」)を片面に塗ったカバーグラスをモノフィラメント20mmが埋まるようにはさみ、ガラス面と接着した。自由になっている片方の端を丁度二つ折りになるように曲げてから、接着剤の付着していないカバーグラスをその上に乗せ、カバーグラスの上に底辺がカバーグラスの大きさに合わせた100gの重しを30分間乗せた。30分経過後荷重をはずし、10分後に折り曲げた位置から戻った角度a(度)で下記の式を用いて回復率を計算した。すなわち180度戻れば回復率は100%である。実験は10回繰り返しその平均値を採用した。
弾性回復率=100×a/180 (%)
【0036】
(5)(耐久性)
歯形模型の表面に通常の押し圧よりもかなり強い約500gfの押し圧でペーストをつけないで往復運動を行い、ブラシ毛がその植毛時の方向、すなわち軸部に対して垂直な位置から平均して20度曲がるまでの回数で評価した。すなわち本発明ではその繰り返し数が100回以上を◎、100回未満50回以上を○、50回未満25回以上を△、25回未満を×と判定した。
【0037】
(触感)
ペーストをつけないで指先でブラシ先端部を触感する。実際の歯磨きペーストを付けて洗浄するときの使用感、特に歯肉との接触感を、通常の高度を合わせた獣毛ブラシと比較した触感を、男女5名ずつ(30ないし40才)の10名の被験者でモニターした。獣毛に比べて総合的に触感・使用感に優れると判断した人の割合を求め、それが80%以上の場合を◎、80%未満50%以上を○、50%未満20%以上を△、25%未満を×と判定した。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、ブラシ用毛およびそれを用いた各種ブラシは、その毛材のはりコシや弾性回復性や耐久性に優れ、さらには触感にも優れた今までにない高性能のブラシを提供することができる。
Claims (5)
- 合成重合体のブラシ毛が植毛されてなるブラシにおいて、該ブラシ毛のフィラメントが芯成分および鞘成分からなる複合糸であり、芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリアミドであることを特徴とする高性能ブラシ。
- 鞘成分のポリアミドがナイロン6−12であることを特徴とする請求項1記載の高性能ブラシ。
- ブラシ毛のフィラメントの芯成分および鞘成分の重量比が95:5〜30:70であることを特徴とする請求項2記載の高性能ブラシ。
- ブラシ毛のフィラメントの破断伸度が、40〜160%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高性能ブラシ。
- ブラシ毛のフィラメントが、植毛前に緊張下で、芯成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、220℃以下の温度で熱処理されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高性能ブラシ。
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