WO2004002261A1

WO2004002261A1 - 高機能性ブラシ

Info

Publication number: WO2004002261A1
Application number: PCT/JP2002/006505
Authority: WO
Inventors: Tetsushi Oka
Original assignee: Toyo Boseki Kabushiki Kaisha
Priority date: 2002-06-27
Filing date: 2002-06-27
Publication date: 2004-01-08
Also published as: AU2002311283A1

Description

高機能性ブラシ技術分野本発明は、ワイピング特性とソフト感に優れ、しかも使用明

時に十分なコシ（腰）を有すると共に弾性回復性に優れた高機能性ブラシに関するもので、田この高機能性ブラシは、例えばワイピンダブラシ、歯ブラシ、化粧用ブラシ、或いは塗料用ブラシなどとして有用である。背景技術ブラシ材の先端形状を種々工夫する技術は古くから知られており、特に先端をテーパー状にする技術として、例えば特公昭 4 9 — 6 1 5 9号公報、特公昭 4 9 一 1 0 5 5 8 号公報特公昭 5 0 — 4 0 1 9 4号公報などが開示されている。また最近では実開平 5 — 1 5 8 3 4号公報にもポリエステルをァルカリなどの薬剤で処理して先端をテーパー状にし、且つ特殊な手法で歯ブラシに植毛する技術が開示されている。

しかし、これらの先行技術は繊維の先端をただ細くするのみであり、その先端が細く、例えば歯ブラシ用毛材として使用した場合は、歯と歯肉の間隙に先端が入り易いという利点はあるものの、当然ながら歯に接触する部分は先鋭化することでコシ（腰）が低下するため挿入実感がなく、プラーク等を除去するには、むしろ歯磨き効果が低下するという難点があった。また先鋭化した先端部の毛先は、使用回数の増大と共にへタリが生じ易く、繰り返し使用時の耐久性が極めて乏しいものであった。

また、現在実用化されているブラシ用素材としては、衛生性や加工性、コスト等の観点から合成重合体よりなる素材が汎用されているが、例えばポリアミド（ナイロン）に代表される重合体は基本的に吸湿し易く、吸湿による物性低下や形態変化を起こし易く、更には、例えば歯ブラシ等に用いた場合、吸水したブラシ毛に口腔内菌が付着して繁殖し易いなど衛生面からも必ずしも理想的な素材とは言えない。

そこで、ポリアミドに代わる合成重合体として、例えば特開昭 6 0 - 4 5 6 0 6 号公報には、毛材として低吸湿性のポリブチレンテレフタレートを用いることで、衛生性と弹性回復性を改善したブラシ毛が開示されている。確かに、この公報に見られる如くポリブチレンテレフ夕レートを使用するとポリアミド（ナイロン）に比べて吸湿性は低くなるが、弹性回復性についてはナイロン並もしくはそれに劣ることから、更に高機能のブラシ用毛材が求められていた。

また上記課題の改善策として、例えば特開平 8 — 1 7 3 2 4 4号公報には、ポリプロピレンテレフタレートを主たる重合体成分として使用すると、低吸湿性で弾性回復性に優れたブラシが得られることを開示している。しかし、ポリプロピレンテレフタレ一トを主成分とするフィラメントを毛材として用いたブラシの場合、ポリアミドを用いたブラシに比べて表面の摩擦抵抗が小さいことから、清掃性の点で問題が残されている。

本発明は上記の様な従来技術の問題点に着目してなされたものであって、その目的は、従来のポリアミド（ナイロン）等に比べて卓越した弹性回復性を有し、しかも低吸湿性で且つ優れた清掃性を有する他、各種ブラシ用毛材として使用可能な剛直性、特に先端部のコシ（腰）を十分に備え、更にはワイピング特性や除去特性が良好で、尚且つ使用感がソフトなブラシを提供しょうとするものである。発明の開示本発明の高機能性ブラシは、合成重合体からなるブラシ毛が基台部に植毛されたブラシにおいて、該ブラシ毛を構成するフィラメントは芯成分と鞘成分とからなる複合糸であり、該芯成分と鞘成分のアルカリ減量速度が異なるものであるところに特徴を有している

そして、該ブラシを構成するフィラメントとして、芯成分のアルカリ減量速度が、鞘成分のアルカリ減量速度より遅いものを使用すると、基台部に植毛されたフィラメン卜からなるブラシ毛をアルカリ処理することにより、当該フイラメントを、基台部側から毛先に向かって、その断面積が 2段階に小さくなつていくテーパ一さ 1 I5を有する構造にすることができる。

また、該ブラシを構成するフィラメントとして、芯成分のアルカリ減量速度が、鞘成分のアルカリ減量速度より速いものを使用すると、基台部に植毛されたフィラメン卜からなるブラシ毛をアルカリ処理することにより、当該フイラメン卜からなるブラシ毛は毛先部が窪んだ筒状となる。

なお本発明において、アルカリ減量速度の異なる上記芯成分および鞘成分の組合せとして特に好ましいのは、アルカリ減量速度が相対的に小さいものとしてポリプロピレンテレフタレ一ト主体の重合体と、アルカリ減量速度が相対的に大きい樹脂としてポリエチレンテレフ夕レートまたはポリエチレンナフタレート主体の重合体との組合せである。

また、芯成分としてポリプロピレンテレフタレート主体の重合体（樹脂）を使用し、鞘成分としてポリエーテルエステル系エラストマ一主体の重合体（樹脂）を使用すると、ブラシ毛を構成するフィラメントの外面側の摩擦力が向上し、清掃性が高められるばかりでなく、ブラシ材としての弾性回復性も向上するので好ましい。この様なポリエーテルエステル系エラストマ一の中でも特に好ましいのは、高融点ポリエステルセグメントと分子量 4 0 0 〜 6 0 0 0の低融点重合体セグメントからなる共重合体で、高融点ポリエステルセグメントの構成成分の融点が 1 5 0 °C以上、低融点重合体セグメントの構成成分の融点もしくは軟化温度が 8 0 °C以下で、且つ低融点重合体セグメントの含有量が 8〜 5 0質量％であるポリエーテルエステル系エラストマ一である。

そして、ブラシ毛を構成する芯 · 鞘構造のフィラメントの上記特性をより効果的に発揮させるには、芯成分と鞘成分の質量比率を 9 5 / 5 〜 3 0 / 7 0 、より好ましくは 9 0 / 1 0 〜 4 0 / 6 0 の範囲に設定することが望ましく、また、ブラシ毛を構成する該フィラメントは、ブラシ毛としての前記特性を有効に発揮させるため、破断伸度が 4 0 〜 1 6 0 %、より好ましくは 5 0 〜 1 4 0 %であるものが好ましい。

更に、ブラシ毛を構成する上記フィラメントは、製造後リ —ル等に巻き取るのが普通であり、これを使用時に繰り出して所定長さに切断し複数本を引き揃えてから基台部に植毛されるため、該フィラメントには巻癖がついて直線性が悪くなることがある。しかし、該フィラメントを基台部に植毛する前に、緊張下で、芯成分または鞘成分を構成する樹脂のガラス転移温度以上、 2 2 0 °C以下の温度で熱処理すると、該フイラメントに直線性が付与され、植毛を直線状で確実に行うことができるので好ましい。図面の簡単な説明図 1 は、本発明に係る高機能性ブラシを構成するブラシ毛の好ましい先端形状を例示する断面拡大説明図、図 2 は、本発明に係る高機能性ブラシを構成するブラシ毛の他の好ましい先端形状を例示する断面拡大説明図である。発明を実施するための最良の形態上記の様に本発明は、合成重合体からなるのブラシ毛が基台部に植毛されてなるブラシであって、該ブラシ毛を構成するフィラメントは芯成分と鞘成分からなる複合糸を含み、該芯成分と鞘成分のアルカリ減量速度が異なるところに基本的な特徴を有している。そして、該アルカリ減量速度の違いから、以下に詳述する如くブラシ毛を構成するフィラメントのアルカリ処理後の先端部を特異な構造にすることができ、それによりブラシとして高機能性が与えられる。

即ち、芯部分を構成する合成重合体としてアルカリ減量速度の遅いものを選択し、鞘部分を構成する合成重合体としてアル力リ減量速度の速いものを使用し、これらの複合体からなる芯鞘構造のフィラメントを基台部に植毛した後、通常の方法でその先端部をアルカリ処理すると、アルカリ減量速度の遅い芯部分よりも、アルカリ減量速度の速い鞘部分が先に溶解することになり、アルカリ減量処理後のブラシ毛は、例えば図 1 (図中、 1 は芯材、 2 は鞘材を示す）に略示する如く、植毛された基台部側から毛先に向かって、断面積が 2段階に小さくなつていくテーパー部 T t , T ₂を有するものとなる。

そしてこの様な先端部構造のブラシ毛であれば、付根部は芯 · 鞘の二重構造を有しており、コシ（腰）が良好でへタリも起こし難く耐久性に優れ、且つ先端側は先細で優れた洗浄性を発揮すると共に、弾性回復性を含めてブラシとして求められる性能をバランスよく兼ね備えたものとなる。

他方、芯部分を構成する合成重合体としてアルカリ減量速度の速いものを選択し、鞘部分を構成する合成重合体としてアルカリ減量速度の遅いものを使用し、これらの複合体からなる芯鞘構造のフィラメントを基台部に植毛した後、同様にしてその先端部をアルカリ処理すると、アルカリ減量速度の遅い鞘部分よりも、アルカリ減量速度の速い芯部分が先に溶解することになり、アルカリ減量処理後のブラシ毛は、例えば図 2 に略示する如く、先端が窪んだ筒状のものとなる。

そしてこの様な先端部構造のブラシ毛であれば、同様に付根側は芯 · 鞘の二重構造であるため、コシが強くてへタリを起こし難く耐久性に優れると共に、先端部は中空筒状であるため先端部は適度の柔軟性が与えられて優れた洗浄性を有するものとなり、弾性回復性を含めてブラシとして求められる性能をバランスよく兼ね備えたものとなる。この様に、芯成分と鞘成分のアルカリ減量速度や断面寸法を変えることによって、ブラシ毛を構成するフィラメントのアルカリ減量処理後の先端形状を多様に変えることができ、例えば図 1 に示した先鋭化の形状や傾斜角度（ T i , T ₂ ) 、図 2 に示した先端窪みの内径（ d ) や深さ（ h ) 等を様々に変化させることができる。

上記の様に、芯 · 鞘成分としてのアルカリ減量速度は、当該芯 · 鞘成分を構成する合成重合体の種類を変えることによ' つて調整することができる。例えば、アルカリ減量速度の異なる 2種のポリエステル系樹脂（ A ) とポリエステル系樹脂 ( B ) を使用することによって、先端構造を任意に変更することができる。

上記アル力リ減量速度の異なる 2種のポリエステル系樹脂 ( A ) ， ( B ) の好ましい組合せは、アルカリ減量速度の小さいポリエステル系樹脂（ A ) としてポリプロピレンテレフタレート主体の合成重合体を選択し、アルカリ減量速度の大きいポリエステル系樹脂（ B ) としてポリエチレンテレフ夕レートまたはポリエチレンナフ夕レ一ト主体の合成重合体を選択した組合せである。

ここで、アルカリ減量速度の小さいポリエステル系樹脂

( A ) として好ましく使用されるのは、プロピレンテレフ夕レートを主な繰り返し単位とするポリエステル系樹脂（以下 P T Tと称することがある）であり、より具体的には、 1 , 3 —プロパンジオール（ 1， 3 —プロピレングリコ一ルともいう）成分とテレフタル酸成分とからなる 1， 3 —プロピレンテレフタレート単位を 7 0 モル％以上含む線状ポリエステルであり、好ましくは 8 0 モル％以上、更に好ましくは 9 0 モル％以上、特に好ましくは 9 5 モル％以上含む線状ポリエステルである。

該ポリエステル系樹脂（ A ) が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、 2 , 6 —ナフ夕レンジカルボン酸、ジフエ二ルー 4 , 4 ' ージカルボン酸、ジフエノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、 p —ォキシ安息香酸、ォキシカブロン酸等のォキシ酸及びその機能的誘導体アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シユウ酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、シクロへキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。

該ポリエステル系樹脂（A ) が共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テ卜ラメチレングリコ一ル、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ダリコール、シクロへキサンジメタノール等の脂環族グリコ一ル、ビスフエノール A、ビスフエノール Aのアルキレンォキサイド付加物等の芳香族ダリコールなどが挙げられる。

更に、前記ポリエステル系樹脂（ A ) が共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としては、グリセリンやペン夕エリスリトール等が挙げられる。これら共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸やナフトェ酸等を共重合させてもよい。本発明で好ましく使用される上記ポリエステル系樹脂

( A ) の極限粘度は、 0 . 5 0 デシリットル/グラム以上、より好ましくは 0 . 5 5 デシリットル Zグラム以上、更に好ましくは 0 . 6 0 デシリットル/グラム以上である。極限粘度が 0 . 5 0 デシリットル Zグラム未満では、得られるブラシの弾性回復性や耐久性が悪くなる。また極限粘度の上限値は、 2 . 0 0 デシリットル/グラムであり、これを超える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなつて熱分解が激しくなり、分子量の低下及び力ルポキシル末端基の増加が激しく、また黄色に着色する等の問題が生じ易くなる。また極限粘度の高いポリエステル系樹脂を製造する場合は、製造コストの高い固相重合法を採用しなければならないので経済的にも好ましくない。

また、上記ポリエステル系樹脂（ A ) の力ルポキシル末端基濃度は、 2 0 当量/ トン以下、好ましくは 1 8 当量/ トン以下、更に好ましくは 1 5 当量/ トン以下、特に好ましくは 1 3 当量ノトン以下である。力ルポキシル末端基濃度が 2 0 当量 Z トンを超えると、得られるブラシの耐久性が悪くなり問題である。また、力ルポキシル末端基濃度の下限値は、 3 当量ノ卜ンである。この下限値を下回ると、ポリエステル系樹脂（ A ) を得るのに、経済性を度外視した製造法を採用しなければならず、実用的でなくなる。

上記ポリエステル系樹脂（ A ) は、例えば

①テレフタル酸と 1 , 3 —プロパンジオールおよび必要により前記共重合成分を直接反応させて水を留去し、エステル化反応度が 8 5 %以上になるようにエステル化した後、重縮合触媒として S b化合物、 G e化合物、 A 1 ィ匕合物または T i 化合物から選ばれる 1 種またはそれ以上の化合物を用いて 2 7 5 °C未満の温度で減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、

②例えばテレフ夕ル酸ジメチルと 1 , 3 _プロパンジォール、および必要により前述した共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させ、メチルアルコールを留去しつつエステル交換させた後、重縮合触媒として S b化合物、 G e化合物、 A 1 化合物または T i 化合物から選ばれる 1 種またはそれ以上の化合物を使用し、好ましくは 2 7 5 °C未満の温度で減圧下に重縮合を行うエステル交換法

などによって製造される。

このとき、ポリエステル系樹脂の極限粘度を増大させ、力ルポキシル末端基濃度を前記好適範囲に抑えるための他の製法として、 0 . 3 5 〜 0 . 6 0 デシリットル Zグラムの溶融重縮合プレボリマーを固相重合する方法を採用することも有効である。

一方、アルカリ減量速度の大きいポリエステル系樹脂 ( B ) としては、前記ポリエステル系樹脂（ A ) よりも初期モジュラスが高いポリエチレンテレフタレートゃポリエチレンナフタレート主体の樹脂が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート（以下、 P E T ということがある）は、主な繰り返し単位がエチレンテレフ夕レートで構成されるポリエステルであり、更に好ましくはエチレンテレフ夕レート単位を 9 0 モル％以上含む線状ポリエステルである。

またポリエチレンナフタレート（以下、 P E Nということがある）は、主たる繰り返し単位がエチレン一 2 , 6 —ナフ夕レートで構成されるポリエステルであり、更に好ましくはエチレン— 2 、 6 _ナフ夕レート単位を 9 0 モル％以上含む線状ポリエステルである。

これらのポリエステル系樹脂（ B ) の力ルポキシル末端基濃度は、 2 0 当量 Z トン以下、好ましくは 1 8 当量/ トン以下、更に好ましくは 1 5 当量 Z トン以下、特に好ましくは 1 3 当量/ トン以下である。力ルポキシル末端基濃度は、 2 0 当量 Z トンを超える場合は、得られるブラシの耐久性が悪くなる傾向がある。

また、ポリエステル系樹脂（ B ) の極限粘度は、 0 . 5 5 〜 1 . 5 0デシリットル Zグラムの範囲が好ましい。極限粘度が 0 . 5 5 デシリットル/グラム未満では、得られるブラシの弾性回復性と耐久性が悪くなる傾向が生じてくる。また極限粘度が 1 . 5 0 デシリットル/グラムを超える場合は、溶融紡糸時に樹脂温度が高くなつて熱分解が激しくなり、分子量が低下するばかりでなく、カルボキシル末端基の増加が激しくなり、更には黄色に着色する等の問題が起こる。

上記の様な基準で選択されたポリエステル系樹脂（ A ) , ( B ) 、またはそれらを含む組成物は、通常の方法で同時もしくは逐次に同軸溶融紡糸することによって紡糸され、芯 ' 鞘構造のフィラメント状に成形される。この場合、紡糸設備や条件は特に限定されないが、溶融吐出後に、冷却固化してから加熱延伸する方法が好ましい。延伸倍率は適宜設定できるが、本発明で好ましく用いられる前記ポリエステル系樹脂 ( A ) ， ( B ) の特性からすると、 3倍以上、 5倍以下が望ましい。この様な条件を設定すると、ブラシとして優れた物性の芯 · 鞘構造のフィラメントが得られ易くなるからであるフィラメントの物性としては、破断伸度が 4 0 〜 1 6 0 % となるように条件設定することが、その弾性回復性と耐久性を高める上で特に好ましい。

紡糸されたフィラメントは、そのまま植毛に供してもよいが、植毛する前に、緊張下で、芯成分及び Z又は鞘成分を構成する重合体（樹脂）のガラス転移温度以上、 2 2 0 °C以下の温度で熱処理すると、巻癖の付いたフィラメントの直線性を高めることができるので好ましい。このときの熱処理温度がガラス転移温度以下では、直線性付与効果が得られ難く、また 2 2 0 °Cを超えると、芯 · 鞘成分の樹脂が軟化しフイラメントの物性が低下するからである。より好ましい熱処理温度は、 1 3 0 〜 2 0 0 °Cである。

得られた芯 · 鞘構造のフィラメントは、植毛に適したカツト長に切断された後、各種ブラシ基台に植毛することで、所望の高機能性ブラシを得ることができる。

ブラシ毛を構成する上記フィラメントの芯成分と鞘成分の質量比は、 9 5 Z 5 〜 3 0 / 7 0 であることが望ましく、より好ましくは 9 0 1 0 〜 4 0 6 0 でぁる。鞘成分の比率が 5 質量％未満では、ブラシとしての使用時に鞘成分が剥離し易く、使用回数の増大と共に初期の清掃性能が低下するからである。また、芯成分の比率が 3 0質量％未満では、ブラシとしての腰が不足気味となるからである。

本発明で使用するブラシ毛は、上記の様にアルカリ減量速度の異なる 2種類のポリエステル系樹脂（ A ) , ( B ) を用いて芯 · 鞘構造としたフィラメントを素材として使用するもので、この様にアルカリ減量速度の異なる 2種類のポリエステル系樹脂を複合してフィラメントを製造した後、基台部に植毛してからその先端部をアルカリ減量加工すると、前記第 1 ， 2 図に例示した如く、従来のブラシ毛には見られない特異な先端形状のブラシ毛を得ることができる。

この際に採用されるアルカリ減量処理法には格別特殊な条件が要求されるわけではなく、公知のアルカリ処理法を採用できるが、標準的な条件としては、 1 〜 2 モル％程度の濃度のアルカリ金属水酸化物の水溶液を使用し、 7 0 〜 1 0 0 °C で 2 0 〜 1 8 0 分程度浸漬する方法である。この際、アル力リ処理液を適度に撹拌したり、植毛されたブラシを適度に揺動させたり振動させることも有効である。

なお、本発明でアルカリ減量速度の遅い素材として好ましく使用されるポリプロピレンテレフタレート主体のポリエステル系樹脂（ A ) よりなるフィラメントのアルカリ減量速度は、一般に、 9 0 °C X 6 0 g / Lの N a O H水溶液中、 3 0 分で：！〜 5質量％、 4 5 分で 1 〜 1 0 質量％、 9 0 分でも 1 0 〜 2 0質量％であるのに対し、アルカリ減量速度の速い素材として好ましく使用される P E T主体のポリエステル系樹脂 ( B ) よりなるフィラメントのアルカリ減量速度は、同様の濃度の温熱 N a O H水溶液中、 3 0分で約 1 0 質量％、 4 5 分で約 1 5 質量％、 9 0分で約 3 0質量％であり、こうしたアルカリ減量速度の差によって、前記図 1 ， 2 に示した様な先端構造に加工することが可能になるのである。

尚、芯成分のポリエステル系樹脂が鞘成分のポリエステル系樹脂よりもアルカリ減量速度の遅いものを組合せてアル力リ減量処理すると、図 1 に示した如く先端部が基部側から毛先に向かって、その断面積が 2段階に小さくなつていくテーパー部を有する、より機能性の高いブラシを得ることができるので好ましい。なお本発明では、上記の様にアルカリ減量速度の異なる 2 種類の重合体を芯成分および鞘成分とする芯 · 鞘構造のフィラメントとし、アルカリ減量速度の差を利用してアルカリ減量処理後の先端構造を改変するところに最大の特徴を有しているが、別途研究を行ったところ、前掲のポリエステル系樹脂（A ) 、即ちポリプロピレンテレフ夕レートを主たる繰り返し単位とするポリエステルを主成分とするフィラメントで該ポリエステルの極限粘度が 0 . 5 デシリットル Zグラム以上、より好ましくは 0 . 6 デシリットル Zグラム以上で、且つカルボキシル末端濃度が 2 0 当量/ トン以下、より好ましくは 1 8 当量/ トン以下であるものは、この樹脂を用いて単層構造のフィラメントとした場合でも、これをブラシ毛材として使用することにより、高機能性のブラシが得られることを確認している。

また、上記ポリエステル系樹脂（ A ) に前記ポリエステル系榭脂（ B ) をブレンドしたものも、これを用いて単層構造のフィラメントとした場合でも、同様にこれをブラシ毛材として使用することにより、高機能性のブラシが得られる。

この場合、ポリエステル系樹脂（A ) ， ( B ) の溶融混合物からなるフィラメントの好ましい力ルポキシル末端基濃度は、 3 0 当量 Z トン以下、より好ましくは 2 5 当量/ トン以下、更に好ましくは 2 0 当量 Z トン以下、特に好ましくは 1 5 当量/ トン以下である。力ルポキシル末端基濃度が、 3 0 当量 Z トンを超える場合は、得られる単層構造のブラシの耐久性が悪くなるからである。

前記ポリエステル系樹脂（ A ) とポリエステル系樹脂 ( B ) との好ましい混合割合は、重量比で 9 8 Z 2〜 5 2 Z 4 8 、より好ましくは 9 5 / 5〜 6 0 4 0 である。

尚、ポリエステル系樹脂（ A ) と同（ B ) との溶融混合物からなる単層フィラメントの力ルポキシル末端基濃度を 3 0 当量/ トン以下に抑えるには、例えば、力ルポキシル末端基濃度が 2 0 当量 Z トン以下のポリエステル系樹脂（ A ) と ( B ) を用いてフィラメントを溶融紡糸すればよい。

また、本発明のブラシ毛を構成する芯鞘構造のフィラメントにおいては、芯成分をポリプロピレンテレフ夕レート主体とし、且つ特に鞘成分をポリエーテルエステル系エラストマ一主体のものとすると、ポリアミド等からなる従来のブラシ毛に対して、優れた弾性回復性や耐久性を保ちながら、ブラシ毛表面の摩擦力を高め、清掃性を一段と高めることができるので好ましい。

この様なポリエーテルエステル系エラストマ一として特に好ましいのは、高融点ポリエステルセグメントと分子量 4 0 0〜 6 0 0 0 の低融点重合体セグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルセグメントの構成成分の融点が 1 5 0 °C以上、低融点重合体セグメントの構成成分の融点または軟化温度が 8 0 °C以下で、且つ低融点重合体セグメントの含有量が 8〜 5 0 質量％であるものである。この様なポリェ一テルエステル系エラストマ一を鞘成分として使用すると、該エラストマ一主体で摩擦係数の高い鞘成分の作用で、ブラシ材としての摩擦洗浄力や弾性回復性が一段と高められるからである。実施例以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前 · 後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。

なお、実験で採用した測定法および評価法は下記の通りである。

(ポリエステル系樹脂の極限粘度： I V )

1 ， 1 , 2 , 2 —テトラクロルェタン/フエノール（ 2 : 3 質量比）混合溶媒中 3 0 °Cでの溶液粘度から求めた。

(力ルポキシル末端基濃度： A V )

ポリエステルの力ルポキシル末端基濃度は、 Ana 1 y t i c a 1 Chemistry 第 2 6 巻、 1 6 1 4 頁（ 1 9 5 4 年）記載の Phol の方法に準拠して測定した。単位は当量/ トン。

(弾性回復性）

ブラシ毛を構成するフィラメントを 2 0 mmに切断し、室温条件下で平坦なガラス面上に置いた後、予め接着剤 [コニシ（株）製、商品名「ァロンアルファ一」 ] を片面に塗ったカバーグラスを、モノフィラメント 2 0 mmが埋まる様に挟み、ガラス面と接着した。自由になつている片方の端をちようど二つ折りになる様に折り曲げ、その上に接着剤の付着していないカバーグラスを載せ、カバ一グラスの上に底辺を力バ一グラスの大きさに合わせた 1 0 0 g の重しを 3 0分間載せた。 3 0 分経過した後に荷重を外し、 1 0 分後に折り曲げた位置から戻った角度 a (度）から、下記の式を用いて回復率を求めた。即ち、 1 8 0 度戻れば回復率は 1 0 0 %であるこの実験を 1 0 回繰り返し、その平均値を採用した。弾性回復率（％ ) = 1 0 0 x a / 1 8 0

(耐久性）

歯形模型の表面に、歯磨き時の通常の押し付け圧よりもかなり強い約 5 0 0 g f の圧力で押し付け、ペーストを付けないで往復運動を行い、ブラシ毛がその植毛時の方向、即ち軸部に対し垂直な位置から平均して 2 0度曲がるまでの回数で評価した。即ち本発明では、その繰り返し数が 1 0 0 回以上を◎、 1 0 0 回未満 5 0 回以上を〇、 5 0 回未満 2 5 回以上を△、 2 5 回未満を Xと判定した。

(清掃性）

嚙み合わせた成人歯形模型の歯表面に、グルコース 5 m l と人から直接採取した唾液成分 1 0 m 1 の混合液を均一に塗布し、 3 6 °C X湿度 8 5 %に調整された恒温 · 恒湿槽に 1 2 時間静置することにより、口腔内細菌を全面に繁殖させる。各実施例、比較例で作製したモノフィラメントを、 5 0本のバンドルを基本単位とし各々 8列に 8 つのバンドルが等間隔に配列する様に、軸方向に平行に 4列植毛して歯ブラシを形成した。この際、ブラシ毛は軸から先端まで約 1 0 mm長であつた。このブラシに歯磨剤（ライオン株式会社製の歯磨きべ一スト、商品名「ホワイトアンドホワイト」）を l g付け、上記歯形模型を 5 分間、通常の押し付け圧で 5分間ブラッシングした後、蒸留水で充分に洗浄した。丸型シャーレに予め準備した寒天培地に歯表面を約 1 分間押し付けてからシヤーレを密封し、 4 0 °Cの恒温槽に入れて 1 2 時間繁殖させ、コロニーの成長状態でその清掃除去性能を評価した。表中に示した◎は、菌の繁殖が殆ど無いことを示し、以下その成長状況をコロニー数で相対的に評価し、良好なものから◎、〇、 △、 Xの順で判定した。

(挿入実感）

男女 5 名ずつ（ 3 0 ないし 4 0才）の 1 0 名の被験者に、実施例および比較例で作製した歯ブラシを 5 回、順次交換しながら使用してもらい、挿入実感について聞き取り調査を行つた。揷入実感を感じる人が 1 0 人中 8 人以上いた場合を〇、 1 0 人中 4人以上 7 人以下の場合を△、 1 0 人中 3 人以下の場合を Xとして、歯の隙間への挿入実感を評価した。

(歯肉のマッサージ効果）

1 0 人パネラーに実際に歯ブラシ（約 4 5 °Cの温水で 1 0 0 時間処理したもの）を使用してもらい、マッサージ効果を下記の基準で官能評価した。 '

1 : 良好、 2 : 普通、 3 : 効果、 4 : 全く効果なし。実施例 1

ジメチルテレフタレートと 1 , 3 一プロパンジオールを出発原料として使用し、溶融重縮合反応によって極限粘度が 0 . 7 0 デシリットル Zグラム、力ルポキシル末端基濃度が 1 0 当量 Z トン、 C o — b値が 2 . 0 のポリプロピレンテレフ夕レート（ P T T ) を得た。得られた極限粘度が 0 . 7 0 デシリットル/グラムのポリプロピレンテレフタレ一ト樹脂を、 0 . 1 m m H g の真空度で 8 0 °C X 4時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X 1 2 時間乾燥した。

また、極限粘度が 0 . ' 6 2 デシリットル Zグラムのポリエチレンテレフ夕レート樹脂を、 0 . I mmH g の真空度で 8 0 °C X 4時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X I 2 時間乾燥した。これらの原料を用い、複合ノズルを用いた通常の溶融紡糸方法により、芯成分が上記ポリプロピレンテレフタレ一ト榭脂、鞘成分が上記ポリエチレンテレフ夕レート樹脂であり、芯成分と鞘成分の質量比率が 7 0 ： 3 0 である直径 0 . 2 O m mの芯 · 鞘構造のモノフィラメントを製造した。

このモノフィラメントに直線性を付与するため、緊張下に 1 8 0 °C X 5秒間の熱処理を行った。

このモノフィラメントを基台に植毛して歯ブラシを作製し、ブラシ毛の先端部 1 / 3 を、苛性ソーダ濃度が 9 0 g Z Lで 9 0 °Cに調整したアルカリ温浴に浸漬し、ブラシの毛材全体の 1 0 %が減量される条件を選択してアルカリ処理を行った。

尚、上記各原料素材を単独で溶融押出しして得たフィラメントのアルカリ減量速度は、 6 0 g Z L濃度で温度 9 0 :の苛性ソーダ水溶液中、芯成分は 3 0分で約 3 質量％であるのに対し、鞘成分は 3 0分で約 9質量％であった。

得られた歯ブラシの先端形状は、前記図 1 に示した如く鞘材部分が溶出すると共に芯材部分が露出して 2段のテーパーを有する先細になっていた。該ブラシ毛としての特性を評価したところ、表 1 に示す如く優れた弾性回復性、耐久性、清掃性を有することが確認された。

実施例 2

ジメチルテレフ夕レートと 1 , 3 一プロパンジオールを出発原料として使用し、溶融重縮合反応によって極限粘度が 0 . 7 0デシリットル Zグラム、力ルポキシル末端基濃度が 1 0 当量/ トン、 C o — b値が 2 . 0 のポリプロピレンテレフタレート（ P T T ) を得た。得られた極限粘度が 0 . 7 0 デシリットル Zグラムのポリプロピレンテレフ夕レート樹脂を、 0 . I mmH g の真空度で 8 0 °C X 4時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X 1 2 時間乾燥した。

また、極限粘度が 0 . 6 2 デシリットル/グラムのポリエチレンテレフ夕レート樹脂を、 0 . I mmH g の真空度で 8 0 °C X 4時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X 1 2 時間乾燥した。これらの原料を用い、複合ノズルを用いた通常の溶融紡糸方法により、鞘成分が上記ポリプロピレンテレフ夕レート樹脂、芯成分が上記ポリエチレンテレフタレ一ト樹脂であり、芯成分と鞘成分の質量比率が 7 0 ： 3 0 である直径 0 . 2 0 mmの芯 · 鞘構造のモノフィラメントを製造した。

このモノフィラメントを基台に植毛して歯ブラシを作製し、ブラシ毛の先端部 1 Z 3 を、苛性ソーダ濃度が 9 0 g / Lで 9 0 ⁿCに調整したアルカリ温浴に浸漬し、ブラシの毛材全体の 1 0 %が減量される条件を選択してアル力リ処理を行った。

尚、上記各原料素材を単独で溶融押出しして得たフィラメントのアルカリ減量速度は、 6 0 _§ノし濃度で温度 9 0 の苛性ソーダ水溶液中、芯成分は 3 0分で約 9 質量％であるのに対し、鞘成分は 3 0分で約 3質量％であった。

得られた歯ブラシの先端形状は、前記図 2 に示した如く芯材部分が溶出して鞘材部分が筒状に残存した形状になっていた。このブラシのブラシ毛としての特性を評価したところ、表 1 に示す如く優れた弹性回復性、耐久性、清掃性を有することが確認された。

比較例 1 上記実施例 1 において、モノフィラメントの原料として極限粘度が 0 . 6 2デシリツトル Zグラムのポリブチレンテレフタレートを用い、直径 0 . 2 O m mの単一成分からなるモノフィラメントを使用した以外は、実施例 1 と全く同様にしてラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。

なお、比較例 1 においては、 1 0 %のアルカリ減量加工を行っても基部から先端部に向かって断面積が単調に減少していくのみで、 2 段階のテーパー形状を得ることはできなかつた。

このブラシ毛の特性を評価したところ、表 1 に示す如く、比較例 1 は、実施例 1， 2 に比べて弾性回復性、耐久性、清掃性、挿入実感の点で劣ることが分かった。

比較例 2

前記実施例 1 において、モノフィラメントの原料としてポリプロピレンテレフ夕レートを用い、直径 0 . 2 0 m mの単一成分からなるモノフィラメントを使用した以外は、前記実施例 1 と全く同様にしてブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。

なお、比較例 2では、 1 0 %のアルカリ減量加工を行っても基部から先端部に向かって断面積が単調に減少していくのみで、 2 段階のテーパー形状を得ることはできなかった。

ブラシ毛の特性を評価したところ表 1 に示したように、比較例 2 は、実施例 1， 2 に比べて清掃性、挿入実感の点で劣ることが分かった。

比較例 3

前記実施例 1 において、モノフィラメントの原料としてナィロン 6 — 1 2 を用い、直径 0 . 2 0 mmの単一成分からなるモノフィラメントを製造した以外は、実施例 1 と全く同様にしてブラシ用毛材を作製し、同様に歯ブラシとしての特性を評価した。

尚この比較例 3 では、アル力リ減量加工は行わなかった。このブラシ毛の特性を評価したところ表 1 に示したように、比較例 3 は、実施例 1 , 2 に比べて弹性回復性、耐久性、清掃性、挿入実感の点で劣ることが確認された。

実施例 3

極限粘度が 0 . 7 0 デシリットル Zグラムのポリプロピレンテレフタレ一ト樹脂を 0 . I mmH g の真空度で 8 0 °C X 4 時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X 1 2時間乾燥した。また、ポリブチレンテレフタレ一卜をハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合体からなり、ポリテトラメチレンダリコールの比率が 4 0 質量％であるポリエーテルエステル系ェラストマーを、 0 . I mmH g の真空度で 1 2 0 °C X 4時間予備乾燥した。

これらの原料を使用し、複合ノズルを用いた通常の芯 ' 鞘溶融紡糸法により、芯成分がポリプロピレンテレフタレート鞘成分がポリエステルエ一テル系エラストマ一からなり、且つ芯成分と鞘成分の質量比率が 7 0 ： 3 0 である直径 0 . 2 0 mmの芯 · 鞘構造のモノフィラメントを製造した。

尚、上記各原料素材を単独で溶融押出しして得たフィラメントのアルカリ減量速度は、 6 0 濃度で温度 9 0 の N a O H水溶液中、芯成分は 3 0 分で約 1 質量％であるのに対し、鞘成分は 3 0 分で約 3 質量％であった。上記で得たフィラメントに直線性を付与するため、緊張下に 1 8 0 °C X 5 秒間の熱処理を施した。このフィラメントを植毛した後、植毛したフィラメントの先端側 1 / 3 を、 6 0 g ノ L濃度で温度 9 0 °Cの苛性ソーダ水溶液に 1 2 0分間浸漬し、先端部のアルカリ減量処理を行った。

得られた歯ブラシの先端形状は、前記図 1 に示した如く鞘材部分が溶出すると共に芯材部分が露出して 2 段のテーパーを有する先細になっていた。該ブラシ毛としての特性を評価したところ、表 1 に示す如く優れた弾性回復性、耐久性、清掃性を有することが確認された。 1

参考例 1

ジメチルテレフタレートと 1 ， 3 —プロパンジオールを出発原料として使用し、溶融重縮合反応によって極限粘度が 0 7 0 デシリツトル Zグラム、力ルポキシル末端基濃度が 1 0 当量 Zトン、 C o — b値が 2 . 0 のポリプロピレンテレフ夕レート（ P T T ) 樹脂を得た。

この P T T樹脂を、 0 . I mmH g の真空度で 8 0 °C X 4 時間予備乾燥した後、同真空度条件で 1 2 0 °C X 1 2 時間乾燥し、更に、 2 8 0 °Cに調節したスクリユー型押し出し機で溶融した後、同じく 2 8 0 °Cに調節した 1 . 2 m m径の孔を有する紡糸口金を通して紡糸した。紡糸ノズルの直下に設けた水冷浴で冷却した後、直ちに 8 5 °Cに調節したホットローラーで予備加熱し、 1 2 0 °Cのスチーム下で 4倍に延伸して巻き取った。その後、 1 4 0 °Cで 1 0 分の条件で定長下に熱処理し、最終直径 0 . 2 2 m mのモノフィラメントを得た。また、該モノフィラメントに直線性を付与するため、緊張下に 1 8 0 °C X 5秒間の熱処理を行った。

この繊維を植毛して歯ブラシを作製し、ブラシ毛の特性を評価したところ、表 2 に示したように優れた弾性回復性、耐久性を有し、また歯肉のマッサ一ジ効果も優れていることが確認された。

参考例 2

前記参考例 1 で得た P T T樹脂と、 G e触媒を用いて製造した固相重合 P E T (極限粘度： 0 . 8 5 デシリットル /グラム、力ルポキシル末端基濃度： 1 2 当量 Z トン）樹脂を、各々 8 5 °Cで熱水処理した。これらの P T T樹脂 9 0 質量部と P E T樹脂 1 0質量部を十分に混合した後、前記参考例 1 と同様にして乾燥し、更に参考例 1 と同様にしてモノフイラメントを得た。

この繊維を植毛して歯ブラシを作製し、同様にしてブラシ毛の特性を評価したところ、表 2 に示す如く優れた弾性回復性、耐久性を有し、また歯肉のマッサージ効果も優れていることが確認された。

参考比較例 1

前記参考例 1 とは溶融重縮合条件を変更し、極限粘度が 0 4 8 デシリットル Zグラム、カルボキシル末端基濃度が 4 0 当量 Z トンのポリプロピレンテレフ夕レート樹脂を得、更に同参考例例 1 と同様にして乾燥し、同様にしてモノフィラメントを得た。

得られたブラシ毛の特性を前記と同様にして評価したところ、表 2 に示す如く、参考例 1 ， 2 に比べて耐久性および歯肉のマッサージ効果の点で劣ることが分かった。第 2表

産業上の利用可能性前述の如く本発明で使用するブラシ用の毛材は、腰（コシ）ゃ弹性回復性に優れ、且つ耐久性に優れる他、表面の摩擦力が高くて清掃性にも優れており、今までにない高機能性のブラシを提供できる。

Claims

請求の範囲

1 . 合成重合体からなるブラシ毛が基台部に植毛されたブラシにおいて、該ブラシ毛を構成するフィラメントは芯成分と鞘成分とからなる複合糸であり、該芯成分と鞘成分のアルカリ減量速度が異なるものであることを特徴とする高機能性ブラシ。

2 . 前記芯成分のアルカリ減量速度が、前記鞘成分のアルカリ減量速度より遅いものである請求項 1 に記載の高機能性ブラシ。

3 . 前記芯成分のアルカリ減量速度が、前記鞘成分のアルカリ減量速度より速いものである請求項 1 に記載の高機能性ブラシ。

4 . 前記ブラシ毛は、植毛された基台部側から毛先に向かつて、その断面積が 2段階に小さくなつていくテーパー部を有するフィラメントを含んでいる請求項 2 に記載の高機能性ブラシ。

5 . 前記ブラシ毛は、毛先部が窪んだ形状のフィラメントを含んでいる請求項 3 に記載の高機能性ブラシ。

6 -前記芯成分が主としてポリプロピレンテレフ夕レートであり、鞘成分が主としてポリエチレンテレフタレートである請求項 4 に記載の高機能性ブラシ。

7 .前記鞘成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、芯成分が主としてポリエチレンテレフタレートである請求項 5 に記載の高機能性ブラシ。

8 .前記芯成分が主としてポリプロピレンテレフタレートであり、鞘成分が主としてポリエ一テルエステル系エラストマ一である請求項 1 に記載の高機能性ブラシ。

9 . 前記鞘成分のポリエ一テルエステル系エラストマ一が高融点ポリエステルセグメントと分子量 4 0 0〜 6 0 0 0 の低融点重合体セグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルセグメントの構成成分の融点が 1 5 0 °C以上で、低融点重合体セグメントの構成成分の融点もしくは軟化温度が 8 0 °C以下であり、且つ低融点重合体セグメントの含有量が 8〜 5 0質量％である請求項 8 に記載の高機能性ブラシ。

1 0 . ブラシ毛を構成するフィラメントの芯成分と鞘成分の質量比率が 9 5 ： 5 〜 3 0 ： 7 0である請求項 1 〜 9 のいずれかに記載の高機能性ブラシ。 '

1 1 . ブラシ毛を構成するフィラメントの破断伸度が、 4 0 〜 1 6 0 %である請求項 1 〜 1 0 のいずれかに記載の高機能性ブラシ。

1 2 . ブラシ毛を構成するフィラメントが、植毛前に緊張下で、芯成分または鞘成分に用いている樹脂のガラス転移温度以上、 2 2 0 °C以下の温度で熱処理されたものである請求項 1 〜 1 1 のいずれかに記載の高機能性ブラシ。