JP2004022554A - 強誘電体メモリ装置およびその設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロスポイント型の強誘電体メモリ装置において、最適な強誘電体薄膜を備えた強誘電体メモリ装置およびその設計方法を提供する
【解決手段】強誘電体薄膜17を下部電極15、上部電極18間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲に設定されてデバイス動作が成されるものである。
【選択図】 図1
【解決手段】強誘電体薄膜17を下部電極15、上部電極18間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲に設定されてデバイス動作が成されるものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電体薄膜を用いたキャパシタを備えた不揮発性の強誘電体メモリ装置に関し、特にクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
不揮発性の強誘電体メモリ装置としては、二つのトランジスタと二つのキャパシタ(2T2C)を備えたもの(以下2T2C型という)、一つのトランジスタと一つのキャパシタ(1T1C)を備えたもの(以下1T1C型という)、一つのトランジスタ(1T)を備えたもの(以下1T型という)、チェーンFeRAMなどが提案され、材料特性、プロセス技術の検討が成されてきた。
【0003】
さらに、近年、ビット線に複数のメモリキャパシタが並列に繋がれていることを特徴とする不揮発性の強誘電体メモリ装置(以下クロスポイント型の強誘電体メモリ装置という)が提案された(特許第3246294号、特開平9−121032号、特開平9−116107号、特開2000−349248号等を参照されたい)。この強誘電体メモリ装置では、従来、提案されている2T2C型、1T1C型、1T型、チェーンFeRAMなど不揮発性の強誘電体メモリ装置における強誘電体薄膜に要求される特性とは異なった特性がより重要になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在までに、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置に最適な材料設計、プロセス設計、デバイス仕様設計の検討はなされてこなかった。そこで、本発明では、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置において、最適な強誘電体薄膜を備えた強誘電体メモリ装置およびその設計方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされた強誘電体メモリ装置およびその設計方法である。
【0006】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲に設定されてデバイス動作が成されるものである。
【0007】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなるものである。
【0008】
ここで、上記クロスポイント型の強誘電体メモリ装置に要求される、強誘電体薄膜の抗電界について説明する。一般に、強誘電体の抗電界Ecは、キュリー温度(強誘電体相転移温度)Tcと下記の(1)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。
【0009】
Ec=a(Tc−T)3/2 …(1)
【0010】
理想的な分極反転が成される(つまり、Ec に対応する印加電圧がかけられた時に瞬時に分極反転が起きる)強誘電体材料を用いた時における上記クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の動作限界は、下記の(2)式で表される条件で決まる。
【0011】
Vc<Vcc<3*Vc …(2)
【0012】
ここで、Vcは理想的には、Vc=t*Ec(tは膜厚)となり、強誘電体薄膜の抗電圧である。Vccはメモリ動作パルスのパルス電圧(強誘電体メモリ装置の駆動電圧)である。
【0013】
クロスポイント型の強誘電体メモリ装置では、Vcc/3の擾乱パルスが印加される。この擾乱パルスからデータを保護する必要があり、かつデータを書き込むために必要な抗電圧以上のパルス電圧の印加が必要となる。上記式(2)はこのような条件を満たすように決められている。ある温度範囲での動作を保証するためには更に制限が加わる。いま、メモリの動作保証温度を−40℃から125℃までであるとすると、(2)式は、(Vcは温度と共に減少するので)下記(3)式のようになる。
【0014】
Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃) …(3)
【0015】
上記(3)式で決まるVccの許容幅は、相転移温度、Tcが高くなるほど拡がる。
【0016】
ここで、内部動作における電源電圧の変動、強誘電体薄膜における膜厚、配向性のばらつきの影響を排除して、強誘電体メモリ装置の動作を保証するために、Vcc、Vc共に±8%のばらつきを許容するとした時のTcの値を見積もる。
【0017】
仮にTc=380℃、室温(25℃)での抗電圧をVcrtとする。上記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.287*Vcrt、0.609*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(4)式のようになる。
【0018】
1.287*Vcrt<Vcc<1.827*Vcrt …(4)
【0019】
Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、(4)式は下記(5)式のようになる。
【0020】
1.39*Vcrt<Vcc<1.68*Vcrt …(5)
【0021】
Vccの中心値を(5)式から求めると、Vcc=1.54*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.42*Vcrtと1.67*Vcrtの範囲にあることなり、(5)式を満たすことになる。
【0022】
したがって、Vcc、Vc共に±8%のばらつきを許容し、メモリの動作保証温度を−40℃から125℃とすると、クロスポイント型において使用すべき強誘電体薄膜はキュリー温度Tcが380℃を超える材料を選択することとなる。
【0023】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692を満たすものである。
【0024】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcrt)<2.300
を満たすものである。
【0025】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たすものである。
【0026】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926を満たすものである。
【0027】
ここで、強誘電体キャパシタのP(分極率)−E(抗電界)ヒステリシス特性における、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の適切な角型性・飽和性に関して説明する。
【0028】
強誘電体の抗電界Ecは、Tc(キュリー温度)と前記(1)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。また残留自発分極Prは、Tc(キュリー温度)と下記(6)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。
【0029】
Pr=b(Tc−T)1/2 …(6)
【0030】
前述のように、理想的な分極反転が成される強誘電体材料を用いたとする時のクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の動作限界は、前記(2)式のVc<Vcc<3*Vcなる条件で決まる。ここで、Vcは理想的には、Vc=t*Ec(ただしtは膜厚を表す)となり、強誘電体薄膜の抗電圧である。
【0031】
いま、強誘電体メモリ装置の動作保証温度を−40℃から125℃までであるとし、Vccがある値に固定されているとする。この場合には、読み出し可能な残留自発分極値は、前記(1)式に従う温度依存性と同時に、Vcの温度による変動によって、VccのVcに対する割合(倍率)の変化により影響を受ける。この影響は相補的であるので、材料の設計の仕方を工夫すると読み出し可能な電荷量の温度変動を減らすことができる。
【0032】
以下、例を用いて具体的な条件を説明する。
【0033】
仮に、Vcc=1.54*Vcrtとする(ここでVcrtは、室温での抗電界である)。ヒステリシス曲線から得られる残留分極の印加電圧依存性は温度変化に対し相似であるとする。図6に模式的に示したように、「残留分極の相対値を、抗電圧で規格化した印加電圧の関数として表すと、温度によらず共通の関数になる」と仮定する。図6の(a)には室温でのヒステリシス曲線の印加電圧依存性が示されている。図6の(b)には、その左図にVccがVcに近い値(室温:25℃)に固定されている状態のヒステリシス曲線を示し、サンプルの温度が上昇した場合には、その右図に示すように、破線で示すヒステリシス曲線の状態から実線で示すヒステリシス曲線の状態となるので、Vcc>Vcとなり、かつ残留分極Prは小さくなる。一方、図6の(c)の右図に示すように、Vcc>Vcで固定されている(室温:25℃)状態を示し、サンプルの温度が下がると、その左図に示すように、破線で示すヒステリシス曲線の状態から実線で示すヒステリシス曲線の状態となるので、Vcc≒Vcとなり、かつ残留分極Prは大きくなる。ここで、(1)と(1’)、(2)と(2’)とは、ヒステリシス曲線の形状が類似している。これは、残留分極−印加電圧特性曲線は相似であることを仮定している。すなわち、相似であることは、分極値と電圧とを規格化すれば同じ曲線で表せることを意味している。
【0034】
Tc=380℃の場合には、前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(420/355)0.5*Prrt=1.088*Prrt、Pr(125℃)=(255/355)0.5*Prrt=0.847*Prrtとなる。
【0035】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(420/355)0.5*Ecrt=1.288*Ecrt、Ec(125℃)=(255/355)1.5*Ecrt=0.609*Ecrtとなる。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧Vccを、それぞれの温度でのVcで規格化すると、下記(7)式、(8)式のようになる。
【0036】
Vcc=(1.54/1.288)*Vc(−40℃)=(1.196)*Vc(−40℃) …(7)
【0037】
Vcc=(1.54/0.609)*Vc(125℃)=(2.529)*Vc(125℃) …(8)
【0038】
したがって、もし室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.53*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.20*Vcrt)=1.088/0.847=1.285であったとすると、−40℃および125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0039】
仮に−40℃および125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、下記(9)式で表される範囲であればよい。
【0040】
0.643<Pr(印加電圧が2.53*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.20*Vcrt)<1.926 …(9)
【0041】
前記と同様にTc=500℃の場合について以下に説明する。
【0042】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.212*Vcrt、0.701*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(10)式のように記述し直せる。
【0043】
1.212*Vcrt<Vcc<2.103*Vcrt …(10)
【0044】
いま、Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(11)式のように表せる。
【0045】
1.309*Vcrt<Vcc<1.935*Vcrt …(11)
【0046】
Vccの中心値を(11)式から求めると、Vcc=1.622*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.49*Vcrtと1.76*Vcrtの範囲にあることになり、(11)式を満たすことになる。相転移温度が500℃と更に高くなっている為に、プロセスおよび、回路設計に更に余裕がうまれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±16%のばらつきが許されることになる。
【0047】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(540/475)0.5*Prrt=1.072*Prrt、Pr(125℃)=(375/475)0.5*Prrt=0.889*Prrtとなる。
【0048】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(540/475)1.5*Ecrt=1.212*Ecrt、Ec(125℃)=(375/475)1.5*Ecrt=0.701*Ecrtとなる。Vcc=1.62*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧Vccを、それぞれの温度でのVcで規格化すると、下記(12)式、(13)式になる。
【0049】
Vcc=(1.62/1.212)*Vc(−40℃)=(1.34)*Vc(−40℃) …(12)
【0050】
Vcc=(1.62/0.701)*Vc(125℃)=(2.31)*Vc(125℃) …(13)
【0051】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)=1.072/0.889=1.206であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0052】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(14)式で表される範囲であればよい。
【0053】
0.603<Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)<1.808 …(14)
【0054】
前記と同様にTc=625℃の場合について以下に説明する。
【0055】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.167*Vcrt、0.761*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(15)式のようになる。
【0056】
1.167*Vcrt<Vcc<2.238*Vcrt …(15)
【0057】
室温(25℃)での抗電圧Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(16)式のようになる。
【0058】
1.261*Vcrt<Vcc<2.100*Vcrt …(16)
【0059】
Vccの中心値を上記(16)式から求めると、Vcc=1.681*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.55*Vcrtと1.81*Vcrtの範囲にあることなり、上記(16)式を満たすことになる。相転移温度が625℃と更に高くなっているために、プロセスおよび、回路設計に更に余裕が生まれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±20%のばらつきが許されることになる。
【0060】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(665/600)0.5*Prrt=1.053*Prrt、Pr(125℃)=(500/600)0.5*Prrt=0.913*Prrtとなる。
【0061】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(665/600)1.5*Ecrt=1.167*Ecrt、Ec(125℃)=(500/600)1.5*Ecrt=0.761*Ecrtとなる。Vcc=1.681*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧を、それぞれの温度でのVcで規格化すると下記(17)式、(18)式のようになる。
【0062】
Vcc=(1.681/1.167)*Vc(−40℃)=(1.440)*Vc(−40℃) …(17)
【0063】
Vcc=(1.681/0.761)*Vc(125℃)=(2.209)*Vc(125℃) …(18)
【0064】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.209*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.440*Vcrt)=1.053/0.913=1.153であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0065】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(19)式で表される範囲であればよい。
【0066】
0.767<Pr(印加電圧が2.209*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.440*Vcrt)<2.300 …(19)
【0067】
前記と同様にTc=725℃の場合について以下に説明する。
【0068】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.142*Vcrt、0.794*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(20)式のようになる。
【0069】
1.142*Vcrt<Vcc<2.382*Vcrt …(20)
【0070】
Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(21)式になる。
【0071】
1.234*Vcrt<Vcc<2.191*Vcrt …(21)
【0072】
Vccの中心値を上記(21)式から求めると、Vcc=1.713*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.58*Vcrtと1.85*Vcrtの範囲にあることなり、上記(21)式を満たすことになる。相転移温度が725℃とさらに高くなっているために、プロセスおよび回路設計に更に余裕がうまれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±22%のばらつきが許されることになる。
【0073】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(765/700)0.5*Prrt=1.045*Prrt、Pr(125℃)=(600/700)0.5*Prrt=0.926*Prrtとなる。
【0074】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(765/700)1.5*Ecrt=1.142*Ecrt、Ec(125℃)=(600/700)1.5*Ecrt=0.794*Ecrtとなる。Vcc=1.713*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧を、それぞれの温度でのVcで規格化すると下記(22)式、(23)式のようになる。
【0075】
Vcc=(1.713/1.142)*Vc(−40℃)=(1.5)*Vc(−40℃) …(22)
【0076】
Vcc=(1.713/0.794)*Vc(125℃)=(2.157)*Vc(125℃) …(23)
【0077】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)=1.045/0.926=1.129であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0078】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(24)式で表される範囲であればよい。
【0079】
0.564<Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)<1.692 …(24)
【0080】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲で、デバイス動作が成されるように設計される。
【0081】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲が規定される。
【0082】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、前記強誘電体薄膜にその相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜を用いる。
【0083】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、前記強誘電体薄膜にその相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜を用いることが規定される。
【0084】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0085】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcrt)<2.300を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0086】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcr t)<1.808を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0087】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0088】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、25℃における分極反転電荷量Prが、上記各条件を満たす強誘電体薄膜を用いることが規定される。
【0089】
【発明の実施の形態】
本発明の強誘電体メモリ装置に係る第1実施の形態を、図1の概略構成断面図および図2の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0090】
第1実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が99nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0091】
例えば、図1に示すように、半導体基板10に素子分離領域11を形成し、この素子分離領域11で分離された半導体基板10の領域にCMOSトランジスタ12を形成し、CMOSトランジスタ12を覆う絶縁膜13を形成する。次いで、キャパシタとCMOSトランジスタとの接続に必要とされるプラグ14を絶縁膜13に形成する。次いで、下部電極を作製するために必用なバリア膜(図示せず)を形成した後、スパッタ法によって、下部電極薄膜を成膜する。下部電極薄膜は、例えば、Pt/IrO2 /Ir積層構造薄膜(先に記した金属が上部側)で形成する。続いて、上記下部電極薄膜を所定の幅に加工して、下部電極15とする。次に、下部電極15を保護するための被膜(図示せず)、下部電極15を埋め込むための絶縁膜16を作製した後、CMPもしくはエッチバック技術などを用いて、下部電極15表面が露出するように絶縁膜16表面を平坦化し、必要に応じて下部電極15の表面の適正化処理(酸化膜除去、洗浄等)を行う。
【0092】
次に、例えば、溶液塗布法により強誘電体薄膜17を作製する。PbOを10%過剰に含む(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを33nmとして、3回の塗布と熱処理とを繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。3層の塗布とRTA処理とが終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、拡散炉を用いた700℃の酸素雰囲気中で1時間の熱処理である。結晶化の熱処理が終了した後、必要に応じて、エッチング処理により、強誘電体薄膜17を複数のキャパシタ、ここでは一例として4個のキャパシタをまとめたサイズに分割する。もし16bitのメモリならば16個のキャパシタをまとめたサイズに分割する。すなわち、bit数に応じて必要な数のキャパシタをまとめたサイズに分割する。
【0093】
次に下部電極15と対称な構造の上部電極薄膜を作製し、エッチングにより所望のパターンに加工して上部電極18を形成する。その後、拡散炉中で700℃、1時間の熱処理を行うことにより、特性の回復を図る。次いで、酸化アルミニウム(Al2 O3 )などの保護被膜(図示せず)を成膜した後、層間絶縁膜19を成膜する。層間絶縁膜19および保護被膜に必要な熱処理を行い、さらにクロスポイント型の強誘電体メモリ装置のデバイス動作に必要な配線構造(コンタクトホール20、配線21等)を作製する。
【0094】
ここでは、上記製造方法は一例であって、上記製造方法に限定はされない。本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0095】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図2にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図2に示す強誘電体は、抗電圧Vc=2.0V、相転移温度は約480℃である。
【0096】
図2から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.18となる。もし、Tc=500℃であれば、この比の値が1.206の時、残留分極の変動がない。したがって、このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。
【0097】
また、前記(9)式の比の値「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.275となる。この薄膜のキュリー温度は、480℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに足りる、「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0098】
したがって、膜厚が99nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0099】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る第2実施の形態を、前記図1の概略構成断面図および図3の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0100】
第2実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が150nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0101】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は、以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを50nmとして、3回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。3層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、強誘電体薄膜を形成したものである。
【0102】
また本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0103】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図3にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図3に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1.4V、相転移温度は約460℃である。
【0104】
図2から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.28となる。このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。また、前記(9)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.65となる。この薄膜のキュリー温度は、460℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに足りる、「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0105】
したがって、膜厚が150nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0106】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る第3実施の形態を、前記図1の概略構成断面図および図4の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0107】
第3実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が150nmのPZT(Zr/Ti=30/70)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0108】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むPZT(Zr/Ti=30/70)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを25nmとして、2回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。2層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、強誘電体薄膜を形成したものである。
【0109】
また本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0110】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図4にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図4に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1V、相転移温度は約445℃である。
【0111】
図4から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.36となる。このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。また、前記(9)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.75となる。この薄膜のキュリー温度は、445℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに十分な程度の「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0112】
したがって、膜厚が150nmのPZT(Zr/Ti=30/70)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0113】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る比較例を、前記図1の概略構成断面図および図5の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0114】
比較例の強誘電体メモリ装置は、膜厚が280nmのPZT(Zr/Ti=40/60)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。
【0115】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むPZT(Zr/Ti=40/60)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを95nmとして、3回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。2層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、結果として、膜厚が280nmのPZTからなる強誘電体薄膜を形成したものである。
【0116】
図5にPb(Zr0.4Ti0.6)O3 キャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図5に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1.4V、相転移温度は380℃である。
【0117】
図5から、前記(24)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)」を求めると、3となり、前記(24)式の条件を満たさない。クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるには、印加電圧に対する2Pr値の、Vc近傍における変化の急峻性が不十分であることが分かる。
【0118】
以上、説明したように、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるには、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置において使用すべき強誘電体薄膜はTcが380℃を超える材料を選択することが必要になる。また、前記(9)式、(14)式、(19)式、(24)式等の条件を満たす強誘電体薄膜を用いたキャパシタは、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるに十分な程度の「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。言いかえれば、上記条件を満たす強誘電体薄膜を用いたキャパシタを備えた強誘電体メモリ装置は、−40℃以上125℃の動作温度内で安定した動作が補償されることになる。また、上記条件を満たすように、強誘電体キャパシタの強誘電体薄膜を選択すれば、−40℃以上125℃の動作温度内で安定した動作が補償される強誘電体メモリ装置を設計することが可能になる。
【0119】
上記説明では、Vcc,Vc共に±8%のばらつきを許容している。この許容値は、最大で±10%、好ましくは±8%とする。さらに、許容値を厳しく、例えば±5%に制限することも可能である。
【0120】
ここに記載した実施の例示はPZT系材料薄膜キャパシタに限られているが、材料をPZT系に限る必要がないことは勿論のことである。表1に高いキュリー温度を有する酸化物強誘電体材料の例として、Tc>380℃の酸化物強誘電体材料の代表例を示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示した材料組成は典型的なものを示しており、表1に示した組成系に元素の置換、添加などを行い材料特性の改善を図ったものを用いることもまた可能である。例えば、PbをLa、Sr、Caで置換したPZT、PLSCZT(Pb0.96La0.1Sr0.2Ca0.1Zr0.3Ti0.7O3 )や、Bi層状強誘電体Bi4Ti3 O12のBiをNdで置換したBi3.54Nd0.46Ti3 O12など、他の強誘電体薄膜キャパシタ材料(酸化物に限らない)も同様の基準を用いて、材料の組成、成膜、加工条件の選択をすることが可能である。本発明にしたがう選択を通して、安定した動作が可能なクロスポイント型の強誘電体メモリ装置を実現することができる。
【0123】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の強誘電体メモリ装置およびその設計方法によれば、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccおよび強誘電体薄膜の抗電圧Vcともに±8%のばらつきを許容することができ、強誘電体メモリ装置の動作保証温度が−40℃から125℃までの不揮発性の強誘電体メモリ装置を実現することができる。また、一旦、強誘電体薄膜の材料組成を決定した後は、各請求項に記載した基準にしたがって強誘電体薄膜の良否、すなわち、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるに十分な程度の「抗電圧Vc近傍における、印加電圧に対する残留分極2Pr値の変化の急峻性」を有しているか否かを判定することができる。よって、デバイス設計が容易になり、また、デバイス生産における歩留まりの改善に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強誘電体メモリ装置に係る第1実施の形態を示す概略構成断面図である。
【図2】PZT(Zr/Ti=10/90)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図3】PZT(Zr/Ti=20/80)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図4】PZT(Zr/Ti=30/70)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図5】PZT(Zr/Ti=40/60)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図6】Vccが固定されている時のP−Eヒステリシス曲線の温度変化を示す模式図であり、「残留分極の相対値を、抗電圧で規格化した印加電圧の関数として表すと、温度に依らず共通の関数になる」と仮定することの妥当性を示す図である。
【符号の説明】
15…下部電極、17…強誘電体薄膜、18…上部電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、強誘電体薄膜を用いたキャパシタを備えた不揮発性の強誘電体メモリ装置に関し、特にクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
不揮発性の強誘電体メモリ装置としては、二つのトランジスタと二つのキャパシタ(2T2C)を備えたもの(以下2T2C型という)、一つのトランジスタと一つのキャパシタ(1T1C)を備えたもの(以下1T1C型という)、一つのトランジスタ(1T)を備えたもの(以下1T型という)、チェーンFeRAMなどが提案され、材料特性、プロセス技術の検討が成されてきた。
【0003】
さらに、近年、ビット線に複数のメモリキャパシタが並列に繋がれていることを特徴とする不揮発性の強誘電体メモリ装置(以下クロスポイント型の強誘電体メモリ装置という)が提案された(特許第3246294号、特開平9−121032号、特開平9−116107号、特開2000−349248号等を参照されたい)。この強誘電体メモリ装置では、従来、提案されている2T2C型、1T1C型、1T型、チェーンFeRAMなど不揮発性の強誘電体メモリ装置における強誘電体薄膜に要求される特性とは異なった特性がより重要になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在までに、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置に最適な材料設計、プロセス設計、デバイス仕様設計の検討はなされてこなかった。そこで、本発明では、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置において、最適な強誘電体薄膜を備えた強誘電体メモリ装置およびその設計方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされた強誘電体メモリ装置およびその設計方法である。
【0006】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲に設定されてデバイス動作が成されるものである。
【0007】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなるものである。
【0008】
ここで、上記クロスポイント型の強誘電体メモリ装置に要求される、強誘電体薄膜の抗電界について説明する。一般に、強誘電体の抗電界Ecは、キュリー温度(強誘電体相転移温度)Tcと下記の(1)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。
【0009】
Ec=a(Tc−T)3/2 …(1)
【0010】
理想的な分極反転が成される(つまり、Ec に対応する印加電圧がかけられた時に瞬時に分極反転が起きる)強誘電体材料を用いた時における上記クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の動作限界は、下記の(2)式で表される条件で決まる。
【0011】
Vc<Vcc<3*Vc …(2)
【0012】
ここで、Vcは理想的には、Vc=t*Ec(tは膜厚)となり、強誘電体薄膜の抗電圧である。Vccはメモリ動作パルスのパルス電圧(強誘電体メモリ装置の駆動電圧)である。
【0013】
クロスポイント型の強誘電体メモリ装置では、Vcc/3の擾乱パルスが印加される。この擾乱パルスからデータを保護する必要があり、かつデータを書き込むために必要な抗電圧以上のパルス電圧の印加が必要となる。上記式(2)はこのような条件を満たすように決められている。ある温度範囲での動作を保証するためには更に制限が加わる。いま、メモリの動作保証温度を−40℃から125℃までであるとすると、(2)式は、(Vcは温度と共に減少するので)下記(3)式のようになる。
【0014】
Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃) …(3)
【0015】
上記(3)式で決まるVccの許容幅は、相転移温度、Tcが高くなるほど拡がる。
【0016】
ここで、内部動作における電源電圧の変動、強誘電体薄膜における膜厚、配向性のばらつきの影響を排除して、強誘電体メモリ装置の動作を保証するために、Vcc、Vc共に±8%のばらつきを許容するとした時のTcの値を見積もる。
【0017】
仮にTc=380℃、室温(25℃)での抗電圧をVcrtとする。上記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.287*Vcrt、0.609*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(4)式のようになる。
【0018】
1.287*Vcrt<Vcc<1.827*Vcrt …(4)
【0019】
Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、(4)式は下記(5)式のようになる。
【0020】
1.39*Vcrt<Vcc<1.68*Vcrt …(5)
【0021】
Vccの中心値を(5)式から求めると、Vcc=1.54*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.42*Vcrtと1.67*Vcrtの範囲にあることなり、(5)式を満たすことになる。
【0022】
したがって、Vcc、Vc共に±8%のばらつきを許容し、メモリの動作保証温度を−40℃から125℃とすると、クロスポイント型において使用すべき強誘電体薄膜はキュリー温度Tcが380℃を超える材料を選択することとなる。
【0023】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692を満たすものである。
【0024】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcrt)<2.300
を満たすものである。
【0025】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たすものである。
【0026】
本発明の強誘電体メモリ装置は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926を満たすものである。
【0027】
ここで、強誘電体キャパシタのP(分極率)−E(抗電界)ヒステリシス特性における、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の適切な角型性・飽和性に関して説明する。
【0028】
強誘電体の抗電界Ecは、Tc(キュリー温度)と前記(1)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。また残留自発分極Prは、Tc(キュリー温度)と下記(6)式の関係に従い温度変化(温度と共に減少)する。
【0029】
Pr=b(Tc−T)1/2 …(6)
【0030】
前述のように、理想的な分極反転が成される強誘電体材料を用いたとする時のクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の動作限界は、前記(2)式のVc<Vcc<3*Vcなる条件で決まる。ここで、Vcは理想的には、Vc=t*Ec(ただしtは膜厚を表す)となり、強誘電体薄膜の抗電圧である。
【0031】
いま、強誘電体メモリ装置の動作保証温度を−40℃から125℃までであるとし、Vccがある値に固定されているとする。この場合には、読み出し可能な残留自発分極値は、前記(1)式に従う温度依存性と同時に、Vcの温度による変動によって、VccのVcに対する割合(倍率)の変化により影響を受ける。この影響は相補的であるので、材料の設計の仕方を工夫すると読み出し可能な電荷量の温度変動を減らすことができる。
【0032】
以下、例を用いて具体的な条件を説明する。
【0033】
仮に、Vcc=1.54*Vcrtとする(ここでVcrtは、室温での抗電界である)。ヒステリシス曲線から得られる残留分極の印加電圧依存性は温度変化に対し相似であるとする。図6に模式的に示したように、「残留分極の相対値を、抗電圧で規格化した印加電圧の関数として表すと、温度によらず共通の関数になる」と仮定する。図6の(a)には室温でのヒステリシス曲線の印加電圧依存性が示されている。図6の(b)には、その左図にVccがVcに近い値(室温:25℃)に固定されている状態のヒステリシス曲線を示し、サンプルの温度が上昇した場合には、その右図に示すように、破線で示すヒステリシス曲線の状態から実線で示すヒステリシス曲線の状態となるので、Vcc>Vcとなり、かつ残留分極Prは小さくなる。一方、図6の(c)の右図に示すように、Vcc>Vcで固定されている(室温:25℃)状態を示し、サンプルの温度が下がると、その左図に示すように、破線で示すヒステリシス曲線の状態から実線で示すヒステリシス曲線の状態となるので、Vcc≒Vcとなり、かつ残留分極Prは大きくなる。ここで、(1)と(1’)、(2)と(2’)とは、ヒステリシス曲線の形状が類似している。これは、残留分極−印加電圧特性曲線は相似であることを仮定している。すなわち、相似であることは、分極値と電圧とを規格化すれば同じ曲線で表せることを意味している。
【0034】
Tc=380℃の場合には、前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(420/355)0.5*Prrt=1.088*Prrt、Pr(125℃)=(255/355)0.5*Prrt=0.847*Prrtとなる。
【0035】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(420/355)0.5*Ecrt=1.288*Ecrt、Ec(125℃)=(255/355)1.5*Ecrt=0.609*Ecrtとなる。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧Vccを、それぞれの温度でのVcで規格化すると、下記(7)式、(8)式のようになる。
【0036】
Vcc=(1.54/1.288)*Vc(−40℃)=(1.196)*Vc(−40℃) …(7)
【0037】
Vcc=(1.54/0.609)*Vc(125℃)=(2.529)*Vc(125℃) …(8)
【0038】
したがって、もし室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.53*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.20*Vcrt)=1.088/0.847=1.285であったとすると、−40℃および125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0039】
仮に−40℃および125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、下記(9)式で表される範囲であればよい。
【0040】
0.643<Pr(印加電圧が2.53*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.20*Vcrt)<1.926 …(9)
【0041】
前記と同様にTc=500℃の場合について以下に説明する。
【0042】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.212*Vcrt、0.701*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(10)式のように記述し直せる。
【0043】
1.212*Vcrt<Vcc<2.103*Vcrt …(10)
【0044】
いま、Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(11)式のように表せる。
【0045】
1.309*Vcrt<Vcc<1.935*Vcrt …(11)
【0046】
Vccの中心値を(11)式から求めると、Vcc=1.622*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.49*Vcrtと1.76*Vcrtの範囲にあることになり、(11)式を満たすことになる。相転移温度が500℃と更に高くなっている為に、プロセスおよび、回路設計に更に余裕がうまれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±16%のばらつきが許されることになる。
【0047】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(540/475)0.5*Prrt=1.072*Prrt、Pr(125℃)=(375/475)0.5*Prrt=0.889*Prrtとなる。
【0048】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(540/475)1.5*Ecrt=1.212*Ecrt、Ec(125℃)=(375/475)1.5*Ecrt=0.701*Ecrtとなる。Vcc=1.62*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧Vccを、それぞれの温度でのVcで規格化すると、下記(12)式、(13)式になる。
【0049】
Vcc=(1.62/1.212)*Vc(−40℃)=(1.34)*Vc(−40℃) …(12)
【0050】
Vcc=(1.62/0.701)*Vc(125℃)=(2.31)*Vc(125℃) …(13)
【0051】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)=1.072/0.889=1.206であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0052】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(14)式で表される範囲であればよい。
【0053】
0.603<Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)<1.808 …(14)
【0054】
前記と同様にTc=625℃の場合について以下に説明する。
【0055】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.167*Vcrt、0.761*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(15)式のようになる。
【0056】
1.167*Vcrt<Vcc<2.238*Vcrt …(15)
【0057】
室温(25℃)での抗電圧Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(16)式のようになる。
【0058】
1.261*Vcrt<Vcc<2.100*Vcrt …(16)
【0059】
Vccの中心値を上記(16)式から求めると、Vcc=1.681*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.55*Vcrtと1.81*Vcrtの範囲にあることなり、上記(16)式を満たすことになる。相転移温度が625℃と更に高くなっているために、プロセスおよび、回路設計に更に余裕が生まれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±20%のばらつきが許されることになる。
【0060】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(665/600)0.5*Prrt=1.053*Prrt、Pr(125℃)=(500/600)0.5*Prrt=0.913*Prrtとなる。
【0061】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(665/600)1.5*Ecrt=1.167*Ecrt、Ec(125℃)=(500/600)1.5*Ecrt=0.761*Ecrtとなる。Vcc=1.681*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧を、それぞれの温度でのVcで規格化すると下記(17)式、(18)式のようになる。
【0062】
Vcc=(1.681/1.167)*Vc(−40℃)=(1.440)*Vc(−40℃) …(17)
【0063】
Vcc=(1.681/0.761)*Vc(125℃)=(2.209)*Vc(125℃) …(18)
【0064】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.209*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.440*Vcrt)=1.053/0.913=1.153であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0065】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(19)式で表される範囲であればよい。
【0066】
0.767<Pr(印加電圧が2.209*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.440*Vcrt)<2.300 …(19)
【0067】
前記と同様にTc=725℃の場合について以下に説明する。
【0068】
室温(25℃)での抗電圧の平均値をVcrtとする。前記(1)式から、−40℃、125℃での抗電圧Vc(−40℃)、Vc(125℃)を求めると、それぞれ、1.142*Vcrt、0.794*Vcrtとなる。したがって、前記(3)式は下記(20)式のようになる。
【0069】
1.142*Vcrt<Vcc<2.382*Vcrt …(20)
【0070】
Vcrtに±8%の変動を許すと(Vcrtのばらつきは、膜厚のばらつき、組成ばらつきなどに起因し、温度による変動とは別の事象であるので)、前記(4)式は、下記(21)式になる。
【0071】
1.234*Vcrt<Vcc<2.191*Vcrt …(21)
【0072】
Vccの中心値を上記(21)式から求めると、Vcc=1.713*Vcrtとなる。この中心値に±8%のばらつきを許容すると、Vccは1.58*Vcrtと1.85*Vcrtの範囲にあることなり、上記(21)式を満たすことになる。相転移温度が725℃とさらに高くなっているために、プロセスおよび回路設計に更に余裕がうまれており、仮に抗電圧に余裕を廻すとすると、±22%のばらつきが許されることになる。
【0073】
前記(6)式より、−40℃および125℃での残留自発分極は、Pr(−40℃)=(765/700)0.5*Prrt=1.045*Prrt、Pr(125℃)=(600/700)0.5*Prrt=0.926*Prrtとなる。
【0074】
前記(1)式より、−40℃および125℃での強誘電体の抗電界は、Ec(−40℃)=(765/700)1.5*Ecrt=1.142*Ecrt、Ec(125℃)=(600/700)1.5*Ecrt=0.794*Ecrtとなる。Vcc=1.713*Vcrtとする。tは一定であるから、−40℃および125℃での印加電圧を、それぞれの温度でのVcで規格化すると下記(22)式、(23)式のようになる。
【0075】
Vcc=(1.713/1.142)*Vc(−40℃)=(1.5)*Vc(−40℃) …(22)
【0076】
Vcc=(1.713/0.794)*Vc(125℃)=(2.157)*Vc(125℃) …(23)
【0077】
もし、室温におけるヒステリシスの角型性が、Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)=1.045/0.926=1.129であったとすると、−40℃と125℃での読み出し可能電荷量は変化しないことになる。
【0078】
仮に−40℃と125℃の温度範囲で±50%のPr値の変動を許すとすると、(24)式で表される範囲であればよい。
【0079】
0.564<Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)<1.692 …(24)
【0080】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲で、デバイス動作が成されるように設計される。
【0081】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)なる式で表される範囲が規定される。
【0082】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、前記強誘電体薄膜にその相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜を用いる。
【0083】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、前記強誘電体薄膜にその相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜を用いることが規定される。
【0084】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0085】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcrt)<2.300を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0086】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcr t)<1.808を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0087】
本発明の強誘電体メモリ装置の設計方法は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、25℃における分極反転電荷量Prが、0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926を満たす強誘電体薄膜を用いる。
【0088】
上記強誘電体メモリ装置の設計方法では、前記説明した強誘電体メモリ装置と同様な理由で、25℃における分極反転電荷量Prが、上記各条件を満たす強誘電体薄膜を用いることが規定される。
【0089】
【発明の実施の形態】
本発明の強誘電体メモリ装置に係る第1実施の形態を、図1の概略構成断面図および図2の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0090】
第1実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が99nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0091】
例えば、図1に示すように、半導体基板10に素子分離領域11を形成し、この素子分離領域11で分離された半導体基板10の領域にCMOSトランジスタ12を形成し、CMOSトランジスタ12を覆う絶縁膜13を形成する。次いで、キャパシタとCMOSトランジスタとの接続に必要とされるプラグ14を絶縁膜13に形成する。次いで、下部電極を作製するために必用なバリア膜(図示せず)を形成した後、スパッタ法によって、下部電極薄膜を成膜する。下部電極薄膜は、例えば、Pt/IrO2 /Ir積層構造薄膜(先に記した金属が上部側)で形成する。続いて、上記下部電極薄膜を所定の幅に加工して、下部電極15とする。次に、下部電極15を保護するための被膜(図示せず)、下部電極15を埋め込むための絶縁膜16を作製した後、CMPもしくはエッチバック技術などを用いて、下部電極15表面が露出するように絶縁膜16表面を平坦化し、必要に応じて下部電極15の表面の適正化処理(酸化膜除去、洗浄等)を行う。
【0092】
次に、例えば、溶液塗布法により強誘電体薄膜17を作製する。PbOを10%過剰に含む(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを33nmとして、3回の塗布と熱処理とを繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。3層の塗布とRTA処理とが終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、拡散炉を用いた700℃の酸素雰囲気中で1時間の熱処理である。結晶化の熱処理が終了した後、必要に応じて、エッチング処理により、強誘電体薄膜17を複数のキャパシタ、ここでは一例として4個のキャパシタをまとめたサイズに分割する。もし16bitのメモリならば16個のキャパシタをまとめたサイズに分割する。すなわち、bit数に応じて必要な数のキャパシタをまとめたサイズに分割する。
【0093】
次に下部電極15と対称な構造の上部電極薄膜を作製し、エッチングにより所望のパターンに加工して上部電極18を形成する。その後、拡散炉中で700℃、1時間の熱処理を行うことにより、特性の回復を図る。次いで、酸化アルミニウム(Al2 O3 )などの保護被膜(図示せず)を成膜した後、層間絶縁膜19を成膜する。層間絶縁膜19および保護被膜に必要な熱処理を行い、さらにクロスポイント型の強誘電体メモリ装置のデバイス動作に必要な配線構造(コンタクトホール20、配線21等)を作製する。
【0094】
ここでは、上記製造方法は一例であって、上記製造方法に限定はされない。本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0095】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図2にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図2に示す強誘電体は、抗電圧Vc=2.0V、相転移温度は約480℃である。
【0096】
図2から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.18となる。もし、Tc=500℃であれば、この比の値が1.206の時、残留分極の変動がない。したがって、このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。
【0097】
また、前記(9)式の比の値「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.275となる。この薄膜のキュリー温度は、480℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに足りる、「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0098】
したがって、膜厚が99nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=10/90)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0099】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る第2実施の形態を、前記図1の概略構成断面図および図3の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0100】
第2実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が150nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0101】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は、以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを50nmとして、3回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。3層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、強誘電体薄膜を形成したものである。
【0102】
また本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0103】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図3にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図3に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1.4V、相転移温度は約460℃である。
【0104】
図2から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.28となる。このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。また、前記(9)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.65となる。この薄膜のキュリー温度は、460℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに足りる、「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0105】
したがって、膜厚が150nmのチタン(Ti)リッチPZT(Zr/Ti=20/80)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0106】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る第3実施の形態を、前記図1の概略構成断面図および図4の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0107】
第3実施の形態の強誘電体メモリ装置は、膜厚が150nmのPZT(Zr/Ti=30/70)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。なお、PZTは、Pb(Zr,Ti)O3 :チタン酸ジルコン酸鉛である。
【0108】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むPZT(Zr/Ti=30/70)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを25nmとして、2回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。2層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、強誘電体薄膜を形成したものである。
【0109】
また本発明は、強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置に対して有効である。
【0110】
本発明の特徴は、キャパシタの強誘電体薄膜材料系の選択にある。図4にPZTキャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図4に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1V、相転移温度は約445℃である。
【0111】
図4から、前記(14)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.31*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.34*Vcrt)」を求めると、1.36となる。このキャパシタでは、試料温度の上昇に伴い、有効残留分極量は僅かに減少する(ほとんど変化しない)ことが分かる。また、前記(9)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.53*Vc)/Pr(印加電圧が1.20*Vc)」を求めると、1.75となる。この薄膜のキュリー温度は、445℃と、380℃に比較して高いので、前記(9)式の条件を満たすことは、更に特性に余裕があることを意味する。つまり、この薄膜キャパシタは、クロスポイント型のメモリを安定に動作させるに十分な程度の「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。
【0112】
したがって、膜厚が150nmのPZT(Zr/Ti=30/70)からなる強誘電体薄膜を用いて強誘電体メモリ装置の強誘電体キャパシタを構成すれば、動作温度が−40℃から125℃までの安定した動作保証がなされた、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を提供することが可能になる。
【0113】
次に、本発明の強誘電体メモリ装置に係る比較例を、前記図1の概略構成断面図および図5の分極反転電荷量2Prと印加電圧との関係図によって説明する。
【0114】
比較例の強誘電体メモリ装置は、膜厚が280nmのPZT(Zr/Ti=40/60)を用いて強誘電体キャパシタを作製したものである。
【0115】
この強誘電体メモリ装置は、一例として前記図1によって説明した構成のものである。この強誘電体薄膜は以下のようにして形成したものである。すなわち、PbOを10%過剰に含むPZT(Zr/Ti=40/60)のゾルゲル溶液を用意し、回転塗布法により塗布する。1層の厚みを95nmとして、3回の塗布と熱処理を繰り返す。ここで行う熱処理は酸素雰囲気中でのRTA(急速加熱処理:昇温速度125℃/s;650℃、30秒保持)である。2層の塗布とRTA処理が終了した後に結晶化の熱処理を行う。典型的には、酸素雰囲気中での拡散炉を用いた700℃での1時間の処理を行って、結果として、膜厚が280nmのPZTからなる強誘電体薄膜を形成したものである。
【0116】
図5にPb(Zr0.4Ti0.6)O3 キャパシタの2Prの印加電圧依存性を示す。図5に示す強誘電体は、抗電圧Vc=1.4V、相転移温度は380℃である。
【0117】
図5から、前記(24)式に示した比の値、「Pr(印加電圧が2.157*Vcrt)/Pr(印加電圧が1.5*Vcrt)」を求めると、3となり、前記(24)式の条件を満たさない。クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるには、印加電圧に対する2Pr値の、Vc近傍における変化の急峻性が不十分であることが分かる。
【0118】
以上、説明したように、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるには、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置において使用すべき強誘電体薄膜はTcが380℃を超える材料を選択することが必要になる。また、前記(9)式、(14)式、(19)式、(24)式等の条件を満たす強誘電体薄膜を用いたキャパシタは、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるに十分な程度の「Vc近傍における、印加電圧に対する2Pr値の変化の急峻性」を有していることが分かる。言いかえれば、上記条件を満たす強誘電体薄膜を用いたキャパシタを備えた強誘電体メモリ装置は、−40℃以上125℃の動作温度内で安定した動作が補償されることになる。また、上記条件を満たすように、強誘電体キャパシタの強誘電体薄膜を選択すれば、−40℃以上125℃の動作温度内で安定した動作が補償される強誘電体メモリ装置を設計することが可能になる。
【0119】
上記説明では、Vcc,Vc共に±8%のばらつきを許容している。この許容値は、最大で±10%、好ましくは±8%とする。さらに、許容値を厳しく、例えば±5%に制限することも可能である。
【0120】
ここに記載した実施の例示はPZT系材料薄膜キャパシタに限られているが、材料をPZT系に限る必要がないことは勿論のことである。表1に高いキュリー温度を有する酸化物強誘電体材料の例として、Tc>380℃の酸化物強誘電体材料の代表例を示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示した材料組成は典型的なものを示しており、表1に示した組成系に元素の置換、添加などを行い材料特性の改善を図ったものを用いることもまた可能である。例えば、PbをLa、Sr、Caで置換したPZT、PLSCZT(Pb0.96La0.1Sr0.2Ca0.1Zr0.3Ti0.7O3 )や、Bi層状強誘電体Bi4Ti3 O12のBiをNdで置換したBi3.54Nd0.46Ti3 O12など、他の強誘電体薄膜キャパシタ材料(酸化物に限らない)も同様の基準を用いて、材料の組成、成膜、加工条件の選択をすることが可能である。本発明にしたがう選択を通して、安定した動作が可能なクロスポイント型の強誘電体メモリ装置を実現することができる。
【0123】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の強誘電体メモリ装置およびその設計方法によれば、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccおよび強誘電体薄膜の抗電圧Vcともに±8%のばらつきを許容することができ、強誘電体メモリ装置の動作保証温度が−40℃から125℃までの不揮発性の強誘電体メモリ装置を実現することができる。また、一旦、強誘電体薄膜の材料組成を決定した後は、各請求項に記載した基準にしたがって強誘電体薄膜の良否、すなわち、クロスポイント型の強誘電体メモリ装置を安定に動作させるに十分な程度の「抗電圧Vc近傍における、印加電圧に対する残留分極2Pr値の変化の急峻性」を有しているか否かを判定することができる。よって、デバイス設計が容易になり、また、デバイス生産における歩留まりの改善に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強誘電体メモリ装置に係る第1実施の形態を示す概略構成断面図である。
【図2】PZT(Zr/Ti=10/90)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図3】PZT(Zr/Ti=20/80)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図4】PZT(Zr/Ti=30/70)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図5】PZT(Zr/Ti=40/60)薄膜の残留分極の印加電圧依存性を示す図である。
【図6】Vccが固定されている時のP−Eヒステリシス曲線の温度変化を示す模式図であり、「残留分極の相対値を、抗電圧で規格化した印加電圧の関数として表すと、温度に依らず共通の関数になる」と仮定することの妥当性を示す図である。
【符号の説明】
15…下部電極、17…強誘電体薄膜、18…上部電極
Claims (22)
- 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、
Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)
なる式で表される範囲に設定されてデバイス動作が成される
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなる
ことを特徴とする請求項1記載の強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692
を満たす
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692
を満たす
ことを特徴とする請求項1記載の強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcr t)<2.300
を満たす
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcr t)<2.300
を満たす
ことを特徴とする請求項1記載の強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たす
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たす
ことを特徴とする請求項1記載の強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926
を満たす
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926
を満たす
ことを特徴とする請求項1記載の強誘電体メモリ装置。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
−40℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(−40℃)とし、125℃における当該強誘電体メモリ装置に用いられるキャパシタの強誘電体薄膜の抗電圧値をVc(125℃)として、前記強誘電体メモリ装置の駆動電圧Vccが、
Vc(−40℃)<Vcc<3*Vc(125℃)
なる式で表される範囲で、デバイス動作が成されるように設計される
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
前記強誘電体薄膜にその相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなる
ことを特徴とする請求項12記載の強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.564<Pr(V=2.157*Vcrt)/Pr(V=1.5*Vcrt)<1.692
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする請求項12記載の強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、 25℃における分極反転電荷量Prが、
0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcr t)<2.300
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.767<Pr(V=2.209*Vcrt)/Pr(V=1.440*Vcr t)<2.300
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする請求項12記載の強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.603<Pr(V=2.31*Vcrt)/Pr(V=1.340*Vcrt)<1.808
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする請求項12記載の強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 強誘電体薄膜を電極間に挟んでなるキャパシタを備え、ビット線に複数の前記キャパシタが並列に接続されているクロスポイント型の強誘電体メモリ装置の設計方法であって、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする強誘電体メモリ装置の設計方法。 - 前記強誘電体薄膜の相転移温度(Tc)が380℃を超える強誘電体薄膜からなり、
Vcrtを25℃における強誘電体薄膜の抗電圧の平均値とし、
前記強誘電体薄膜の分極反転電荷量Prを印加電圧Vの関数Pr(V)として、
25℃における分極反転電荷量Prが、
0.643<Pr(V=2.53*Vcrt)/Pr(V=1.20*Vcrt)<1.926
を満たす強誘電体薄膜を用いる
ことを特徴とする請求項12記載の強誘電体メモリ装置の設計方法。
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US7528490B2 (en) | 2004-06-25 | 2009-05-05 | Seiko Epson Corporation | Semiconductor device and ferroelectric memory, and method for manufacturing semiconductor device |
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US7998362B2 (en) * | 2005-08-23 | 2011-08-16 | Canon Kabushiki Kaisha | Piezoelectric substance, piezoelectric element, liquid discharge head using piezoelectric element, liquid discharge apparatus, and production method of piezoelectric element |
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2002
- 2002-06-12 JP JP2002170985A patent/JP2004022554A/ja active Pending
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