JP2004018747A - セメント用処理剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】セメント硬化体の表面に上塗り層を形成する場合に、上塗り層とセメント硬化体との密着性を向上させ得るセメント用処理剤を提供する。
【解決手段】セメント硬化体とその表面の上塗り層との密着性を向上させるために用いられるセメント用処理剤であって、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有することを特徴とする。
【解決手段】セメント硬化体とその表面の上塗り層との密着性を向上させるために用いられるセメント用処理剤であって、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有することを特徴とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント硬化体の表面を化粧仕上げすること等によって形成される上塗り層とセメント硬化体との密着性を向上させることのできるセメント用処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、セメントモルタルやコンクリート(以下、セメント硬化体という)等が、ビルの外装用や住宅用外装材として賞用されているが、通常、意匠性を付与したり、耐久性向上のために、塗料等で表面を化粧仕上げする等の上塗りが行われている。しかし、セメント硬化体は微細な多孔質であるため、そのままの表面状態で上塗りを行っても、上塗り用塗料(仕上げ材)が内部へ浸透してしまったり、吸水や吸湿後に凍結融解が繰り返されることによって上塗り層が剥離してしまう等、美装性や耐久性の点で問題がある。
【0003】
このため、通常は、シーラーを塗布し、必要に応じてさらにプライマーを塗装してから、上塗り用塗料による塗装が行われている。このシーラーとしては、従来から、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ビニル樹脂系などの溶剤系シーラーが主として用いられているが、シーラー処理の後、上塗り塗装処理までの間に長時間を要した場合、シーラーの硬化が進み過ぎて上塗り層との密着性が低下してしまうという問題があった。また、溶剤系であるため、環境上好ましくなく、さらに、希釈剤である溶剤の使用がコスト高につながるという問題があった。
【0004】
一方、溶剤系ではなく、アクリルエマルション等を主成分とする水系シーラーも利用されている。このような水系シーラーは、溶剤をほとんど使用しないという利点はあるものの、セメント硬化体との密着性が元々低いため、やはりシーラー処理の後、上塗り塗装処理まで時間が経過した場合には、セメント硬化体と上塗り層との間で剥離を生じることがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、セメント硬化体の表面に上塗り層を形成する場合に、上塗り層とセメント硬化体との密着性を向上させ得るセメント用処理剤を提供することを課題として掲げた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のセメント用処理剤は、セメント硬化体とその表面の上塗り層との密着性を向上させるために用いられるセメント用処理剤であって、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有するところに要旨を有する。
【0007】
また、前記重合体のカルボキシル基の一部が金属塩となっていることが好ましく、この場合は、カルシウムよりイオン化ポテンシャルの大きい金属の塩であることが推奨される。
【0008】
前記カルボキシル基を有する重合体がさらに水酸基を有するものであると、セメント硬化体中の処理剤の安定性が高まり、処理剤が流出しにくくなって、セメント硬化体との密着性付与効果の持続性が高くなるため、一層好ましい実施態様である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、セメント硬化体に化粧仕上げ等の上塗り塗装を行う前の処理について鋭意検討を重ねた結果、セメント硬化体中のアルカリ成分と反応し得るカルボキシル基を有する重合体を主成分として含有する処理剤を用いて、硬化反応の完了していないセメント成形体またはセメント硬化体を処理することにより、上塗り層とセメント硬化体との密着性を劇的に向上させることを見出し、本発明に想倒した。なお、本発明のセメント用処理剤は、硬化反応が完了していないセメント成形体、すなわちセメントペーストの状態ではなく、賦形されているが硬化養生する前または硬化養生中のもの(これを「硬化反応が完了していないセメント成形体」とする)、もしくは硬化反応が終了したセメント硬化体に適用することが好ましい。以下の説明では、「硬化反応が完了していないセメント成形体」と「セメント硬化体」との両方を「セメント成形・硬化体」と表現し、硬化後の「セメント硬化体」とは区別することとする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のセメント用処理剤は、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有する。
【0011】
重合体の重量平均分子量Mwが3000より小さいと、水に溶けやすい上に低分子量であるため、重合体がセメント硬化体表面や内部から流出し易くなって、セメント硬化体と上塗り層との密着性が経時的に劣化するおそれがある。より好ましいMwの下限は8000である。一方、Mwが10万を超えると、セメント成形・硬化体に処理剤を含浸させる場合に、重合体をセメント成形・硬化体の内部へ浸透させにくくなるため、最終的に得られるセメント硬化体と上塗り層との密着性向上効果が充分発現しないおそれがある。より好ましいMwの上限は7万である。
【0012】
一方、カルボキシル基を有する重合体の酸価は、80mgKOH/g以上であることが必要である。重合体中のカルボキシル基がセメント中のカルシウム成分等のアルカリ成分と反応するため、重合体とセメント成形・硬化体とが化学的にも結合し、両者の密着性が著しく向上する。そして、重合体とセメント硬化体とが良好に密着した結果、その後に塗装される上塗り層との密着性も向上すると考えられる。
【0013】
上塗り層との密着性向上効果を発揮させるには、重合体の酸価が80mgKOH/g以上の範囲内であることが必要であり、80mgKOH/g未満の重合体では、充分な密着性向上効果が得られない。より好ましい酸価の下限は100mgKOH/gである。酸価が大きい方がアルカリ成分との作用が増大するため好ましいが、あまり大きすぎると処理されたセメント硬化体の耐水性が低下するおそれがあることから、1000mgKOH/g以下とすることが好ましい。より好ましい酸価は800mgKOH/g以下である。なお、本発明における「酸価」とは、カルボキシル基を有する重合体1gを水等の良溶媒の溶液とし、KOHで中和滴定を行ったときに要したKOH量をmgで表した値である。
【0014】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体としては、上記酸価の要件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とマレイン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体との共重合体、(メタ)アクリル酸とマレイン酸と共重合可能な他の単量体との共重合体、ポリアルキレングリコールに(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはマレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸をグラフト重合させたグラフト重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基は、金属塩になっていないカルボキシル基によって上記酸価の要件を満足することを条件に、その一部が金属塩となっているものが好ましい。カルボキシル基の一部を金属塩とすることにより、セメント硬化体の表面や内部に存在する重合体の安定性が高まるため、密着性付与効果の持続性が長くなる。
【0016】
また、上記金属塩は、カルシウムよりもイオン化ポテンシャルの大きい金属の塩であることが好ましい。カルシウムそのものあるいはカルシウムよりもイオン化ポテンシャルの小さな金属の塩では、セメント硬化体中の重合体の安定性を充分に高めることができないことがあり、その結果、密着性向上効果が不充分となることがあるからである。カルシウムよりもイオン化ポテンシャルの大きい金属として好ましいものは、マグネシウム、亜鉛、コバルト等の多価金属である。
【0017】
上記重合体が有するカルボキシル基の一部が金属塩になっている場合の金属塩の割合は、上記酸価の要件を満たす限り特に限定されず、重合体中の酸価に応じて適宜設定可能であるが、重合体中の全カルボキシル基(金属塩になっているものも含む)100モル%中、70モル%以下の範囲内が好ましい。
【0018】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体は、さらに水酸基を有することが好ましい。重合体が分子内に水酸基を有することにより、セメント硬化体中の重合体の安定性が高まるため、密着性向上効果の持続性が高くなるからである。上記重合体における水酸基の量は特に限定されないが、重合体中のカルボキシル基と水酸基とのモル比として、カルボキシル基/水酸基が99/1〜20/80の範囲内が好ましい。この比が99/1を超えると水酸基の導入効果が発揮されないことがある。20/80を超えて水酸基を導入すると、カルボキシル基の量が相対的に減少するため、密着性付与効果が低下するおそれがある。カルボキシル基と水酸基のモル比は95/5以下であることが好ましく、90/10以下がさらに好ましい。また、カルボキシル基と水酸基のモル比は30/70以上がより好ましく、50/50以上がさらに好ましい。
【0019】
上記重合体への水酸基の導入方法は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはマレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸と、水酸基を有する単量体とを共重合させる方法が挙げられる。水酸基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシエチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシエチル)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体は、公知の方法により合成することができ、合成方法は特に限定されない。
【0021】
本発明のセメント用処理剤は、取扱いが容易で、塗布・浸漬作業性等を勘案すると、常温で液状形態であることが好ましく、環境への排出影響が少ないことから水溶液であることが好ましい。ただし、処理効率の向上や、併用する副資材の溶解性または分散性の向上のため、アルコール等の有機溶媒を併用することができる。
【0022】
本発明のセメント用処理剤中、カルボキシル基を有する重合体の量は特に限定されないが、1〜99質量%の範囲内で含まれていることが好ましい。1質量%未満では、充分な密着性向上効果が得られないおそれがある。より好ましい下限は5質量%である。一方、99質量%を超えると、セメント用処理剤が高粘度となって、取扱い性、塗布・浸漬作業性等に劣る上、処理剤がセメント成形・硬化体内部への浸透製が低下するおそれがあるため好ましくない。より好ましいカルボキシル基を有する重合体量の上限は50質量%、さらに好ましい上限は30質量%である。
【0023】
本発明のセメント用処理剤は、前記したように、硬化反応が完了していないセメント成形体、もしくは硬化反応が終了したセメント硬化体に適用することが好ましい。
【0024】
セメント成形・硬化体にセメント用処理剤を適用する場合は、セメント成形・硬化体の表面に、刷毛塗り・スプレー塗布法等のシーラー塗布に際して一般的に行われている塗布方法で塗布し、その後乾燥させる方法、あるいは、セメント用処理剤中にセメント成形・硬化体を浸漬し、処理剤をセメント成形・硬化体の内部にまで浸透させ、その後乾燥させる方法等が好ましい方法として採用できる。このとき、セメント用処理剤の粘度を調整する等して、処理剤をセメントの空隙に染み込ませ、セメント内部へ浸透させることが好ましい。これにより、セメント硬化体表面の質感が損なわれることなく、密着性向上効果が一層強力に発揮されると共に、この効果の持続性が増大する。
【0025】
セメント用処理剤の使用量は特に限定されないが、セメント成形・硬化体の質量に対して、カルボキシル基を有する重合体の量を0.001〜10質量%の範囲内とすることが好ましい。より好ましい下限は0.01質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。
【0026】
本発明のセメント用処理剤を適用することのできるセメント成形・硬化体は、特に限定されないが、一般的なセメント材料を水和反応により硬化させるセメントモルタルやコンクリート等が挙げられる。
【0027】
セメント材料としては、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントにシリカが混入されたシリカセメント、アルミナが混入されたアルミナセメント、フライアッシュが混入されたフライアッシュセメント、高炉スラグが混入されたスラグセメント、これらが混合された混合セメント等が挙げられる。また、これらのセメント材料中に、例えば、パーライト、マイカ、有機繊維、無機繊維等を含有させることもできる。
【0028】
上塗り層は、特に限定されないが、セメント用処理剤が乾燥してから、必要により、プライマー処理を行ってから、化粧仕上げ材等を塗布・乾燥することで形成することができる。上塗り層の組成や内容等は特に限定されない。
【0029】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、本実施例の重量平均分子量の測定方法を以下に示す。
【0030】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
▲1▼GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはGF−7M HQ(昭和電工製)であり、移動相としては、リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液を用いた。
【0031】
▲2▼ポンプはL−7110(日立製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/minに設定した。検出器には、RI(昭和電工製 SE−61)を用いた。その際、カラム温度は35℃一定とした。
【0032】
▲3▼検量線は、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いて作製した。
【0033】
▲4▼重合体サンプルを移動相の溶媒で希釈し、0.1質量%の重合体溶液を調製した。これらにより、各重合体の重量平均分子量を測定した。
【0034】
実施例1
温度計、攪拌機および還流冷却器を備えたSUS製セパラブルフラスコにイオン交換水226.1部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液(以下80%AAと記す)450.0部を重合開始から180分間に亘って、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと略す)133.3部を重合開始から190分間に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後20分間に亘って、沸点還流状態を維持した。最後にイオン交換水1724.4部を添加し、本発明のセメント用処理剤1を得た。得られた処理剤1の固形分濃度(重合体の濃度に相当する;以下同じ)は15.3%であり、重合体の酸価は746mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは50,000であった。
【0035】
実施例2
実施例1と同様の反応容器にイオン交換水1292.4部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AAを365.5部、重合開始から180分間に亘って、また、15%NaPSを119.1部、重合開始から190分間に亘って、さらに、イオン交換水238.3部を重合開始から190分に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下終了後20分間に亘って沸点還流状態を維持し、本発明のセメント用処理剤2を得た。得られた処理剤2の固形分濃度は15.4%であり、重合体の酸価は701mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは10,000であった。
【0036】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、実施例1で得られた重合体(処理剤1)2000.0部とイオン交換水259.0部を仕込み、室温で攪拌しながら、酸化マグネシウム38.7部を投入した。投入後、120分間攪拌を続け、酸化マグネシウムが完全に溶解したことを確認し、本発明のセメント用処理剤3を得た。得られた処理剤3中の固形分濃度は15.0%であった。また、重合体の酸価は373mgKOH/gで、重合体のカルボキシル基の50モル%がMg2+塩となっていた。
【0037】
実施例4
実施例1と同様の反応容器にイオン交換水1600.0部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AAを405.0部、重合開始から180分間に亘って、100%ヒドロキシエチルメタクリレートを36.0部、重合開始から180分間に亘って、15%NaPSを138.9部、重合開始から190分間に亘って、さらにイオン交換水359.0部を重合開始から180分に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下終了後50分間に亘って沸点還流状態を維持して、本発明のセメント用処理剤4を得た。得られた処理剤4中のカルボキシル基と水酸基を有する重合体の濃度(固形分濃度)は15.4%であった。また、重合体の酸価は591mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは36,000であった。
【0038】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、実施例1で得られた重合体(処理剤1)2000.0部とイオン交換水492.0部を仕込み、室温で攪拌しながら、酸化マグネシウム77.4部を投入した。投入後、120分間攪拌を続け、酸化マグネシウムが完全に溶解したことを確認し、比較用のセメント用処理剤5を得た。得られた処理剤5の固形分濃度は15.0%であり、重合体のカルボキシル基の100モル%がMg2+塩となったものであった。すなわち、酸価は0mgKOH/gである。
【0039】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に、イオン交換水3000部、ラウリル硫酸ナトリウム1.0部、過硫酸ナトリウム0.5部を仕込み、65℃まで昇温した後、チオ硫酸ナトリウムを0.5部加えた後、メタクリル酸メチル200.0部、アクリル酸2−エチルヘキシル250.0部、メタクリル酸25.0部の混合物を滴下ロートより120分間かけて連続滴下した。滴下終了後、過硫酸ナトリウム1.0部、チオ硫酸ナトリウム1.0部を追加して、さらに120分間反応後、イオン交換水2392.0部を追加して、比較用のセメント用処理剤6を得た。得られた処理剤6の固形分濃度は15.0%であり、重合体の酸価は34.3mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは22,000であった。
【0040】
[評価実験]
(1)セメント試験体の製作方法
ポルトランドセメント1000.0部、珪砂3000.0部、水750.0部、顔料100.0部の割合で配合したモルタルを60℃の養生槽にて硬化させ、所定の硬度に達したブロックを、さらにオートクレーブ養生(180℃、10時間)を行ってモルタルブロック硬化体を得た。
【0041】
得られたモルタルブロック硬化体から、50×50×20mmの大きさの供試体を切り出した。これらの供試体表面に、実施例1〜4および比較例1〜2で得られた処理剤1〜6を、1m2当たり200部となるように刷毛塗りして、供試体内部へ塗布浸透させた後、室温で2時間、さらに80℃の恒温槽内で2時間乾燥させた。
【0042】
続いて、水系クリアー塗料(アクリルエマルション系;トウペ製)を塗布して(塗布量約150g/m2)、2日間乾燥し、セメント試験体を得た。
【0043】
(2)密着性試験
JIS K−5400に準じ、試験体の塗膜面に2mm間隔で10×10のクロスカットを施し、セロファンテープを圧着した後、瞬間的に引き剥がした。剥離せずに残ったマス目の数を数え、密着性の基準とした。結果を表1に示す。
【0044】
(3)耐候性試験
各試験体に対し、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)を用いて、耐候性試験を行った。250時間後と500時間後の塗膜表面の外観を目視で観察することにより評価した。評価基準は、◎:変化無し、○:ほとんど変化無し、△:塗膜が部分的に剥離して塗膜とセメント試験体の界面で白化している、×:大部分が剥離して界面で白化している、とした。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
酸価が本発明の規定範囲を満足する実施例では、いずれも優れた密着性付与効果と耐候性が得られ、耐久性も高いことが認められた。一方、カルボキシル基の残存していない比較例1や、酸価が本発明の規定量に至らない比較例2では、充分な密着性が付与されず、耐久性も劣るものであった。
【0047】
【発明の効果】
特定範囲内の酸価のカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含むセメント用処理剤でセメント成形・硬化体を処理することによって、セメント硬化体と上塗り層との密着性を向上させることができた。従って、セメント硬化体に化粧仕上げ等を行って上塗り層を形成する用途、例えば、パネル、ブロック、管状体、瓦、塀、蓋、ポール等への適応に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント硬化体の表面を化粧仕上げすること等によって形成される上塗り層とセメント硬化体との密着性を向上させることのできるセメント用処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、セメントモルタルやコンクリート(以下、セメント硬化体という)等が、ビルの外装用や住宅用外装材として賞用されているが、通常、意匠性を付与したり、耐久性向上のために、塗料等で表面を化粧仕上げする等の上塗りが行われている。しかし、セメント硬化体は微細な多孔質であるため、そのままの表面状態で上塗りを行っても、上塗り用塗料(仕上げ材)が内部へ浸透してしまったり、吸水や吸湿後に凍結融解が繰り返されることによって上塗り層が剥離してしまう等、美装性や耐久性の点で問題がある。
【0003】
このため、通常は、シーラーを塗布し、必要に応じてさらにプライマーを塗装してから、上塗り用塗料による塗装が行われている。このシーラーとしては、従来から、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ビニル樹脂系などの溶剤系シーラーが主として用いられているが、シーラー処理の後、上塗り塗装処理までの間に長時間を要した場合、シーラーの硬化が進み過ぎて上塗り層との密着性が低下してしまうという問題があった。また、溶剤系であるため、環境上好ましくなく、さらに、希釈剤である溶剤の使用がコスト高につながるという問題があった。
【0004】
一方、溶剤系ではなく、アクリルエマルション等を主成分とする水系シーラーも利用されている。このような水系シーラーは、溶剤をほとんど使用しないという利点はあるものの、セメント硬化体との密着性が元々低いため、やはりシーラー処理の後、上塗り塗装処理まで時間が経過した場合には、セメント硬化体と上塗り層との間で剥離を生じることがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、セメント硬化体の表面に上塗り層を形成する場合に、上塗り層とセメント硬化体との密着性を向上させ得るセメント用処理剤を提供することを課題として掲げた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のセメント用処理剤は、セメント硬化体とその表面の上塗り層との密着性を向上させるために用いられるセメント用処理剤であって、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有するところに要旨を有する。
【0007】
また、前記重合体のカルボキシル基の一部が金属塩となっていることが好ましく、この場合は、カルシウムよりイオン化ポテンシャルの大きい金属の塩であることが推奨される。
【0008】
前記カルボキシル基を有する重合体がさらに水酸基を有するものであると、セメント硬化体中の処理剤の安定性が高まり、処理剤が流出しにくくなって、セメント硬化体との密着性付与効果の持続性が高くなるため、一層好ましい実施態様である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、セメント硬化体に化粧仕上げ等の上塗り塗装を行う前の処理について鋭意検討を重ねた結果、セメント硬化体中のアルカリ成分と反応し得るカルボキシル基を有する重合体を主成分として含有する処理剤を用いて、硬化反応の完了していないセメント成形体またはセメント硬化体を処理することにより、上塗り層とセメント硬化体との密着性を劇的に向上させることを見出し、本発明に想倒した。なお、本発明のセメント用処理剤は、硬化反応が完了していないセメント成形体、すなわちセメントペーストの状態ではなく、賦形されているが硬化養生する前または硬化養生中のもの(これを「硬化反応が完了していないセメント成形体」とする)、もしくは硬化反応が終了したセメント硬化体に適用することが好ましい。以下の説明では、「硬化反応が完了していないセメント成形体」と「セメント硬化体」との両方を「セメント成形・硬化体」と表現し、硬化後の「セメント硬化体」とは区別することとする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のセメント用処理剤は、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有する。
【0011】
重合体の重量平均分子量Mwが3000より小さいと、水に溶けやすい上に低分子量であるため、重合体がセメント硬化体表面や内部から流出し易くなって、セメント硬化体と上塗り層との密着性が経時的に劣化するおそれがある。より好ましいMwの下限は8000である。一方、Mwが10万を超えると、セメント成形・硬化体に処理剤を含浸させる場合に、重合体をセメント成形・硬化体の内部へ浸透させにくくなるため、最終的に得られるセメント硬化体と上塗り層との密着性向上効果が充分発現しないおそれがある。より好ましいMwの上限は7万である。
【0012】
一方、カルボキシル基を有する重合体の酸価は、80mgKOH/g以上であることが必要である。重合体中のカルボキシル基がセメント中のカルシウム成分等のアルカリ成分と反応するため、重合体とセメント成形・硬化体とが化学的にも結合し、両者の密着性が著しく向上する。そして、重合体とセメント硬化体とが良好に密着した結果、その後に塗装される上塗り層との密着性も向上すると考えられる。
【0013】
上塗り層との密着性向上効果を発揮させるには、重合体の酸価が80mgKOH/g以上の範囲内であることが必要であり、80mgKOH/g未満の重合体では、充分な密着性向上効果が得られない。より好ましい酸価の下限は100mgKOH/gである。酸価が大きい方がアルカリ成分との作用が増大するため好ましいが、あまり大きすぎると処理されたセメント硬化体の耐水性が低下するおそれがあることから、1000mgKOH/g以下とすることが好ましい。より好ましい酸価は800mgKOH/g以下である。なお、本発明における「酸価」とは、カルボキシル基を有する重合体1gを水等の良溶媒の溶液とし、KOHで中和滴定を行ったときに要したKOH量をmgで表した値である。
【0014】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体としては、上記酸価の要件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とマレイン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体との共重合体、(メタ)アクリル酸とマレイン酸と共重合可能な他の単量体との共重合体、ポリアルキレングリコールに(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはマレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸をグラフト重合させたグラフト重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体のカルボキシル基は、金属塩になっていないカルボキシル基によって上記酸価の要件を満足することを条件に、その一部が金属塩となっているものが好ましい。カルボキシル基の一部を金属塩とすることにより、セメント硬化体の表面や内部に存在する重合体の安定性が高まるため、密着性付与効果の持続性が長くなる。
【0016】
また、上記金属塩は、カルシウムよりもイオン化ポテンシャルの大きい金属の塩であることが好ましい。カルシウムそのものあるいはカルシウムよりもイオン化ポテンシャルの小さな金属の塩では、セメント硬化体中の重合体の安定性を充分に高めることができないことがあり、その結果、密着性向上効果が不充分となることがあるからである。カルシウムよりもイオン化ポテンシャルの大きい金属として好ましいものは、マグネシウム、亜鉛、コバルト等の多価金属である。
【0017】
上記重合体が有するカルボキシル基の一部が金属塩になっている場合の金属塩の割合は、上記酸価の要件を満たす限り特に限定されず、重合体中の酸価に応じて適宜設定可能であるが、重合体中の全カルボキシル基(金属塩になっているものも含む)100モル%中、70モル%以下の範囲内が好ましい。
【0018】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体は、さらに水酸基を有することが好ましい。重合体が分子内に水酸基を有することにより、セメント硬化体中の重合体の安定性が高まるため、密着性向上効果の持続性が高くなるからである。上記重合体における水酸基の量は特に限定されないが、重合体中のカルボキシル基と水酸基とのモル比として、カルボキシル基/水酸基が99/1〜20/80の範囲内が好ましい。この比が99/1を超えると水酸基の導入効果が発揮されないことがある。20/80を超えて水酸基を導入すると、カルボキシル基の量が相対的に減少するため、密着性付与効果が低下するおそれがある。カルボキシル基と水酸基のモル比は95/5以下であることが好ましく、90/10以下がさらに好ましい。また、カルボキシル基と水酸基のモル比は30/70以上がより好ましく、50/50以上がさらに好ましい。
【0019】
上記重合体への水酸基の導入方法は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはマレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸と、水酸基を有する単量体とを共重合させる方法が挙げられる。水酸基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシエチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシエチル)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられるカルボキシル基を有する重合体は、公知の方法により合成することができ、合成方法は特に限定されない。
【0021】
本発明のセメント用処理剤は、取扱いが容易で、塗布・浸漬作業性等を勘案すると、常温で液状形態であることが好ましく、環境への排出影響が少ないことから水溶液であることが好ましい。ただし、処理効率の向上や、併用する副資材の溶解性または分散性の向上のため、アルコール等の有機溶媒を併用することができる。
【0022】
本発明のセメント用処理剤中、カルボキシル基を有する重合体の量は特に限定されないが、1〜99質量%の範囲内で含まれていることが好ましい。1質量%未満では、充分な密着性向上効果が得られないおそれがある。より好ましい下限は5質量%である。一方、99質量%を超えると、セメント用処理剤が高粘度となって、取扱い性、塗布・浸漬作業性等に劣る上、処理剤がセメント成形・硬化体内部への浸透製が低下するおそれがあるため好ましくない。より好ましいカルボキシル基を有する重合体量の上限は50質量%、さらに好ましい上限は30質量%である。
【0023】
本発明のセメント用処理剤は、前記したように、硬化反応が完了していないセメント成形体、もしくは硬化反応が終了したセメント硬化体に適用することが好ましい。
【0024】
セメント成形・硬化体にセメント用処理剤を適用する場合は、セメント成形・硬化体の表面に、刷毛塗り・スプレー塗布法等のシーラー塗布に際して一般的に行われている塗布方法で塗布し、その後乾燥させる方法、あるいは、セメント用処理剤中にセメント成形・硬化体を浸漬し、処理剤をセメント成形・硬化体の内部にまで浸透させ、その後乾燥させる方法等が好ましい方法として採用できる。このとき、セメント用処理剤の粘度を調整する等して、処理剤をセメントの空隙に染み込ませ、セメント内部へ浸透させることが好ましい。これにより、セメント硬化体表面の質感が損なわれることなく、密着性向上効果が一層強力に発揮されると共に、この効果の持続性が増大する。
【0025】
セメント用処理剤の使用量は特に限定されないが、セメント成形・硬化体の質量に対して、カルボキシル基を有する重合体の量を0.001〜10質量%の範囲内とすることが好ましい。より好ましい下限は0.01質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。
【0026】
本発明のセメント用処理剤を適用することのできるセメント成形・硬化体は、特に限定されないが、一般的なセメント材料を水和反応により硬化させるセメントモルタルやコンクリート等が挙げられる。
【0027】
セメント材料としては、ポルトランドセメント、ポルトランドセメントにシリカが混入されたシリカセメント、アルミナが混入されたアルミナセメント、フライアッシュが混入されたフライアッシュセメント、高炉スラグが混入されたスラグセメント、これらが混合された混合セメント等が挙げられる。また、これらのセメント材料中に、例えば、パーライト、マイカ、有機繊維、無機繊維等を含有させることもできる。
【0028】
上塗り層は、特に限定されないが、セメント用処理剤が乾燥してから、必要により、プライマー処理を行ってから、化粧仕上げ材等を塗布・乾燥することで形成することができる。上塗り層の組成や内容等は特に限定されない。
【0029】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。また、本実施例の重量平均分子量の測定方法を以下に示す。
【0030】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
▲1▼GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはGF−7M HQ(昭和電工製)であり、移動相としては、リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液を用いた。
【0031】
▲2▼ポンプはL−7110(日立製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/minに設定した。検出器には、RI(昭和電工製 SE−61)を用いた。その際、カラム温度は35℃一定とした。
【0032】
▲3▼検量線は、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いて作製した。
【0033】
▲4▼重合体サンプルを移動相の溶媒で希釈し、0.1質量%の重合体溶液を調製した。これらにより、各重合体の重量平均分子量を測定した。
【0034】
実施例1
温度計、攪拌機および還流冷却器を備えたSUS製セパラブルフラスコにイオン交換水226.1部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液(以下80%AAと記す)450.0部を重合開始から180分間に亘って、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと略す)133.3部を重合開始から190分間に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後20分間に亘って、沸点還流状態を維持した。最後にイオン交換水1724.4部を添加し、本発明のセメント用処理剤1を得た。得られた処理剤1の固形分濃度(重合体の濃度に相当する;以下同じ)は15.3%であり、重合体の酸価は746mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは50,000であった。
【0035】
実施例2
実施例1と同様の反応容器にイオン交換水1292.4部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AAを365.5部、重合開始から180分間に亘って、また、15%NaPSを119.1部、重合開始から190分間に亘って、さらに、イオン交換水238.3部を重合開始から190分に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下終了後20分間に亘って沸点還流状態を維持し、本発明のセメント用処理剤2を得た。得られた処理剤2の固形分濃度は15.4%であり、重合体の酸価は701mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは10,000であった。
【0036】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、実施例1で得られた重合体(処理剤1)2000.0部とイオン交換水259.0部を仕込み、室温で攪拌しながら、酸化マグネシウム38.7部を投入した。投入後、120分間攪拌を続け、酸化マグネシウムが完全に溶解したことを確認し、本発明のセメント用処理剤3を得た。得られた処理剤3中の固形分濃度は15.0%であった。また、重合体の酸価は373mgKOH/gで、重合体のカルボキシル基の50モル%がMg2+塩となっていた。
【0037】
実施例4
実施例1と同様の反応容器にイオン交換水1600.0部を初期仕込し、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AAを405.0部、重合開始から180分間に亘って、100%ヒドロキシエチルメタクリレートを36.0部、重合開始から180分間に亘って、15%NaPSを138.9部、重合開始から190分間に亘って、さらにイオン交換水359.0部を重合開始から180分に亘って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。全ての滴下終了後50分間に亘って沸点還流状態を維持して、本発明のセメント用処理剤4を得た。得られた処理剤4中のカルボキシル基と水酸基を有する重合体の濃度(固形分濃度)は15.4%であった。また、重合体の酸価は591mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは36,000であった。
【0038】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、実施例1で得られた重合体(処理剤1)2000.0部とイオン交換水492.0部を仕込み、室温で攪拌しながら、酸化マグネシウム77.4部を投入した。投入後、120分間攪拌を続け、酸化マグネシウムが完全に溶解したことを確認し、比較用のセメント用処理剤5を得た。得られた処理剤5の固形分濃度は15.0%であり、重合体のカルボキシル基の100モル%がMg2+塩となったものであった。すなわち、酸価は0mgKOH/gである。
【0039】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に、イオン交換水3000部、ラウリル硫酸ナトリウム1.0部、過硫酸ナトリウム0.5部を仕込み、65℃まで昇温した後、チオ硫酸ナトリウムを0.5部加えた後、メタクリル酸メチル200.0部、アクリル酸2−エチルヘキシル250.0部、メタクリル酸25.0部の混合物を滴下ロートより120分間かけて連続滴下した。滴下終了後、過硫酸ナトリウム1.0部、チオ硫酸ナトリウム1.0部を追加して、さらに120分間反応後、イオン交換水2392.0部を追加して、比較用のセメント用処理剤6を得た。得られた処理剤6の固形分濃度は15.0%であり、重合体の酸価は34.3mgKOH/gであり、重量平均分子量Mwは22,000であった。
【0040】
[評価実験]
(1)セメント試験体の製作方法
ポルトランドセメント1000.0部、珪砂3000.0部、水750.0部、顔料100.0部の割合で配合したモルタルを60℃の養生槽にて硬化させ、所定の硬度に達したブロックを、さらにオートクレーブ養生(180℃、10時間)を行ってモルタルブロック硬化体を得た。
【0041】
得られたモルタルブロック硬化体から、50×50×20mmの大きさの供試体を切り出した。これらの供試体表面に、実施例1〜4および比較例1〜2で得られた処理剤1〜6を、1m2当たり200部となるように刷毛塗りして、供試体内部へ塗布浸透させた後、室温で2時間、さらに80℃の恒温槽内で2時間乾燥させた。
【0042】
続いて、水系クリアー塗料(アクリルエマルション系;トウペ製)を塗布して(塗布量約150g/m2)、2日間乾燥し、セメント試験体を得た。
【0043】
(2)密着性試験
JIS K−5400に準じ、試験体の塗膜面に2mm間隔で10×10のクロスカットを施し、セロファンテープを圧着した後、瞬間的に引き剥がした。剥離せずに残ったマス目の数を数え、密着性の基準とした。結果を表1に示す。
【0044】
(3)耐候性試験
各試験体に対し、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製)を用いて、耐候性試験を行った。250時間後と500時間後の塗膜表面の外観を目視で観察することにより評価した。評価基準は、◎:変化無し、○:ほとんど変化無し、△:塗膜が部分的に剥離して塗膜とセメント試験体の界面で白化している、×:大部分が剥離して界面で白化している、とした。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
酸価が本発明の規定範囲を満足する実施例では、いずれも優れた密着性付与効果と耐候性が得られ、耐久性も高いことが認められた。一方、カルボキシル基の残存していない比較例1や、酸価が本発明の規定量に至らない比較例2では、充分な密着性が付与されず、耐久性も劣るものであった。
【0047】
【発明の効果】
特定範囲内の酸価のカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含むセメント用処理剤でセメント成形・硬化体を処理することによって、セメント硬化体と上塗り層との密着性を向上させることができた。従って、セメント硬化体に化粧仕上げ等を行って上塗り層を形成する用途、例えば、パネル、ブロック、管状体、瓦、塀、蓋、ポール等への適応に有用である。
Claims (4)
- セメント硬化体とその表面の上塗り層との密着性を向上させるために用いられるセメント用処理剤であって、重量平均分子量が3000〜10万の範囲内で、かつ、酸価が80mgKOH/g以上であるカルボキシル基を有する重合体を必須成分として含有することを特徴とするセメント用処理剤。
- 前記重合体のカルボキシル基の一部が金属塩となっている請求項1に記載のセメント用処理剤。
- 前記金属塩が、カルシウムよりイオン化ポテンシャルの大きい金属の塩である請求項2に記載のセメント用処理剤。
- 前記カルボキシル基を有する重合体が、さらに水酸基を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のセメント用処理剤。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002177678A JP2004018747A (ja) | 2002-06-18 | 2002-06-18 | セメント用処理剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20210061721A1 (en) * | 2018-01-08 | 2021-03-04 | Gcp Applied Technologies Inc. | Surface retarder formulation and method for replicating an acid etch or sand blast aspect on cementitious material |
-
2002
- 2002-06-18 JP JP2002177678A patent/JP2004018747A/ja not_active Withdrawn
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US20210061721A1 (en) * | 2018-01-08 | 2021-03-04 | Gcp Applied Technologies Inc. | Surface retarder formulation and method for replicating an acid etch or sand blast aspect on cementitious material |
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