JP2004016746A - 循環動態評価装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表示器79に、最高血圧値軸98と振幅増加指数軸100と脈波伝播速度軸102とを有する三次元散布図96を表示し、その三次元散布図96に、測定した最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVを示す丸印104および測定値枠108を表示する。さらに、その三次元散布図96に、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVの正常範囲の上限値を示す基準枠110を表示する。このようにすれば、測定値枠108と基準枠110との比較から、或いは、基準枠110に対する丸印104の位置から、容易に循環動態を評価することができる。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体の循環動態を評価する循環動態評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の循環動態は、第1に心臓のポンプ機能によって規定され、さらに、血管壁の収縮・伸展の程度(すなわち動脈硬化度)や血管径などの影響を受ける。
【0003】
そのため、循環動態を評価するためには、たとえば血圧が測定される。そして、高血圧であると診断された場合には、降圧剤の投与などの治療が行われる。また、血圧は動脈硬化度の影響を受けることから、動脈硬化度も併せて評価するために、生体の所定の2部位間を脈波が伝播する速度に関連する情報である脈波伝播速度情報が測定されることがある。たとえば、特開平9−140679号公報に記載された装置がそれである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、血圧や脈波伝播速度情報の他に、生体の循環動態を評価する指標として振幅増加指数が知られている。この振幅増加指数は、一般的にはAI(=Augmentation Index)として知られており、脈波の進行波成分に対する反射波成分の割合を表したものである。循環動態を正確に評価するためには、血圧および脈波伝播速度情報に加えて、振幅増加指数も同時に測定し、それらの測定結果から総合的に循環動態を評価することが好ましい。
【0005】
しかし、循環動態を評価するために、血圧、脈波伝播速度情報および振幅増加指数の3つの指標を測定する場合、単に血圧、脈波伝播速度情報、振幅増加指数の測定値を表示しただけでは、振幅増加指数および脈波伝播速度情報の血圧への影響や、逆に、血圧の振幅増加指数や脈波伝播速度情報への影響は分かりにくい。そのため、単に上記3つの測定値が表示されただけでは循環動態の評価が困難な場合もある。特に、治療前に今後の治療方針の説明を受けたり、治療の効果について説明を受ける患者にとっては、単に数値を示されただけでは循環動態の評価が困難である。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、循環動態の評価を容易に行うことができる循環動態評価装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、血圧値と、振幅増加指数と、脈波伝播速度情報とを同時にグラフに表示する表示器が備えられていることを特徴とする循環動態評価装置である。
【0008】
【発明の効果】
この発明によれば、表示器に表示されたグラフから、血圧値、振幅増加指数、および脈波伝播速度情報の値が図形的に認識できるので、循環動態の評価が容易になる。
【0009】
【発明の他の態様】
ここで、前記表示器には、血圧値のグラフ、振幅増加指数のグラフ、および脈波伝播速度情報のグラフが別々に表示されてもよいが、好ましくは、前記表示器には、前記血圧値と前記振幅増加指数と前記脈波伝播速度情報とを少なくとも表示する多次元グラフが表示される。このようにすれば、血圧値、振幅増加指数、および脈波伝播速度情報の3つの値が1つの多次元グラフから図形的に認識できるので、それら3つの値に基づく循環動態の総合的な評価が容易となる。
【0010】
また、好ましくは、前記多次元グラフには、前記血圧値の基準値、前記振幅増加指数の基準値、および前記脈波伝播速度情報の基準値に基づいて決定される基準図形が表示される。このようにすれば、測定された血圧値、振幅増加指数、および脈波伝播速度情報を表す図形と、基準図形と比較することにより、一層容易に循環動態を評価することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記多次元グラフは、前記血圧値、前記振幅増加指数、および前記脈波伝播速度情報のそれぞれの経時変化を表示するものである。このようにすれば、血圧値、振幅増加指数、および脈波伝播速度情報の経時変化が図形的に認識できるので、循環動態の経時変化の評価が容易になる。従って、投薬の効果や生活習慣改善の効果を容易に評価することができる。
【0012】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された循環動態評価装置10の回路構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、カフ12はゴム製袋を布製帯状袋内に有し、上腕部14に巻回される。カフ12には、圧力センサ16、調圧弁18が配管20を介してそれぞれ接続されている。また、調圧弁18には、配管22を介して空気ポンプ24が接続されている。調圧弁18は、空気ポンプ24により発生させられた圧力の高い空気を、その空気の圧力を調圧してカフ12内へ供給し、或いは、カフ12内の空気を排気することによりカフ12内の圧力を調圧する。
【0014】
圧力センサ16は、カフ12内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路26および脈波弁別回路28にそれぞれ供給する。静圧弁別回路26はローパスフィルタを備えており、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ12の圧迫圧力(以下、この圧力をカフ圧PCという)を表すカフ圧信号SCを弁別してそのカフ圧信号SCを図示しないA/D変換器を介して電子制御装置32へ供給する。脈波弁別回路28はバンドパスフィルタを備えており、圧力信号SPの振動成分であるカフ脈波信号SM1を弁別してそのカフ脈波信号SM1を図示しないA/D変換器を介して電子制御装置32へ供給する。このカフ脈波信号SM1は、カフ12により圧迫される図示しない上腕動脈からの上腕脈波wbを表す。
【0015】
また、循環動態評価装置10は、図2に示す圧脈波検出プローブ36を備えている。圧脈波検出プローブ36は頸動脈波検出装置として機能するものであり、図2に示すように、患者の頸部38に装着バンド40により装着されている。この圧脈波検出プローブ36の構成を図3に示す。図3に詳しく示すように、圧脈波検出プローブ36は、容器状を成すセンサハウジング42と、そのセンサハウジング42を収容するケース44と、センサハウジング42を頸動脈46の幅方向に移動させるためにそのセンサハウジング42に螺合され且つケース44内に設けられた図示しないモータによって回転駆動されるねじ軸48とを備えている。この圧脈波検出プローブ36は、センサハウジング42の開口端が頸部38の体表面50に対向する状態で頸部38に装着されている。
【0016】
上記センサハウジング42の内部には、ダイヤフラム52を介して圧脈波センサ54が相対移動可能かつセンサハウジング42の開口端からの突出し可能に設けられており、これらセンサハウジング42およびダイヤフラム52等によって圧力室56が形成されている。この圧力室56内には、図1に示すように、空気ポンプ58から調圧弁60を経て圧力の高い空気が供給されるようになっており、これにより、圧脈波センサ54は圧力室56内の圧力に応じた押圧力で前記体表面50に押圧させられる。
【0017】
上記センサハウジング42およびダイヤフラム52は、圧脈波センサ54を頸動脈46に向かって押圧する押圧装置62を構成しており、上記ねじ軸48および図示しないモータは、圧脈波センサ54が体表面50に向かって押圧させられる押圧位置を、頸動脈46の幅方向に移動させる幅方向移動装置64を構成している。
【0018】
上記圧脈波センサ54の押圧面66には、多数の半導体感圧素子(以下、感圧素子という)Eが、頸動脈46の幅方向すなわちねじ軸48と平行な圧脈波センサ54の移動方向において、その頸動脈46の直径よりも長くなるように、且つ一定の間隔で配列されており、たとえば、図4に示すように、配列間隔が0.6mm程度とされた15個の感圧素子E(a)、E(b)、…E(o)が配列されている。
【0019】
このように構成された圧脈波検出プローブ36が、頸部38の体表面50の頸動脈46上に押圧されると、圧脈波センサ54により、頸動脈46から発生して体表面50に伝達される圧脈波(頸動脈波wc)が検出され、その頸動脈波wcを表す圧脈波信号SM2が図示しないA/D変換器を介して電子制御装置32へ供給される。図5の実線は、圧脈波センサ54により逐次検出される圧脈波信号SM2すなわち頸動脈波wcの一例を示している。
【0020】
図1に戻って、循環動態評価装置10には、さらに心音マイク68、入力装置70、記憶装置72が備えられている。心音マイク68は、図示しない患者の胸部上に図示しない粘着テープ等により固着される。心音マイク68は図示しない内部に圧電素子を備え、その圧電素子により患者の心臓から発生する心音等を電気信号すなわち心音信号SHに変換する。心音信号増幅器74は、心音の高音成分をよく記録するためにエネルギーの大きい低音成分を弱める図示しない4種類のフィルタを備えており、心音マイク68から供給される心音信号SHを増幅し且つろ波した後に、図示しないA/D変換器を介して電子制御装置32へ出力する。
【0021】
入力装置70は、患者の識別コードおよび身長Tが入力されるための図示しないキーボードを備えており、入力された患者の識別コードおよび身長Tを表す信号を電子制御装置32へ供給する。
【0022】
記憶装置72は、磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性半導体メモリなどのよく知られた記憶装置により構成され、電子制御装置32において決定された血圧値BP、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVを、患者毎に所定の記憶領域に記憶する。
【0023】
電子制御装置32は、CPU76、ROM77、RAM78、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU76は、ROM77に予め記憶されたプログラムに従ってRAM78の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して空気ポンプ24、58および調圧弁18、60を制御する。CPU76は、その空気ポンプ24、58および調圧弁18、60を制御することにより、カフ圧PCおよび圧力室56内の圧力を制御する。また、CPU76は、電子制御装置32に供給されるカフ脈波信号SM1、圧脈波信号SM2、カフ圧信号SC、心音信号SH等の信号に基づいて、血圧値BP、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVを決定するとともに、表示器79および記憶装置72を制御する。
【0024】
図6は、電子制御装置32の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【0025】
最適押圧位置制御手段80は、圧脈波センサ54に備えられた複数の感圧素子Eのうち最大圧力を検出する素子(以下、この素子を最大圧力検出素子EMという)の配列位置が、配列の端を基準として、それから所定数または所定距離内側までに位置するものであることを条件とする押圧位置更新条件が成立するか否かを判断する。そして、その押圧位置更新条件が成立した場合には、以下の押圧位置更新作動を実行する。すなわち、押圧位置更新作動は、圧脈波センサ54を体表面50から一旦離隔させるとともに、幅方向移動装置64により押圧装置62および圧脈波センサ54を所定距離移動させた後、押圧装置62により圧脈波センサ54を、後述する最適押圧力HDPOよりも小さくなるような比較的小さい値に予め設定された第1押圧力HDP1で押圧させる。そして、その状態で再び上記押圧位置更新条件が成立するか否かを判断し、押圧位置更新条件が成立しなくなるまで、より好ましくは、前記最大圧力検出素子EMが配列位置の略中央に位置するまで上記の作動および判断を実行する。なお、上記押圧位置更新条件における配列の端からの所定数または所定距離は、圧脈波センサ54により押圧される動脈(本実施例では頸動脈46)の直径に基づいて決定され、たとえば、その直径の1/4に設定される。
【0026】
押圧力制御手段82は、圧脈波センサ54が最適押圧位置制御手段80により最適押圧位置に位置させられた後、押圧装置62による圧脈波センサ54の押圧力HDP(Hold Down Pressure)を、所定の押圧力範囲内で拍動に対応して逐次変化させ、或いは所定の押圧力範囲内を比較的緩やかな一定速度で連続的に変化させる。そして、その押圧力HDPの変化過程で得られる頸動脈波wcに基づいて最適押圧力HDPOを決定し、押圧装置62による圧脈波センサ54の押圧力HDPをその最適押圧力HDPOに制御する。ここで、最適押圧力HDPOとは、たとえば、最大圧力検出素子EMにより検出される頸動脈波wcの脈圧PP(すなわち頸動脈波wcの一拍分において最大圧力値から最小圧力値を引いた値)が予め設定された最低脈圧PPL以上となる押圧力HDPであり、この最低脈圧PPLは、脈圧PPが小さすぎると頸動脈波wcが不明瞭になることから、頸動脈波wcが明確に検出できるような脈圧PPの最低値として実験に基づいて予め設定されている。
【0027】
カフ圧制御手段84は、静圧弁別回路26から供給されるカフ圧信号SCに基づいて調圧弁18および空気ポンプ24を制御して、カフ圧PCを最高血圧値BPSYSよりも高い値に設定された昇圧目標圧力値(たとえば180mm/Hg程度)まで急速に昇圧させた後、その圧迫圧力を2〜3mmHg/sec程度の速度で徐速降圧させ、次述する血圧値決定手段86によって血圧値BPが決定された後にその圧迫圧力を大気圧まで排圧する。
【0028】
血圧値決定手段86は、カフ圧制御手段84によるカフ圧PCの徐速降圧過程において静圧弁別回路26から逐次供給されるカフ圧信号SCおよび脈波弁別回路28から逐次供給されるカフ脈波信号SM1に基づきよく知られたオシロメトリック法を用いて最高血圧値BPSYS、平均血圧値BPMEAN、および最低血圧値BPDIAを決定する。
【0029】
振幅増加指数算出手段88は、まず、圧脈波センサ54の押圧力HDPが上記最適押圧力HDPOに制御されている状態で圧脈波センサ54の最大圧力検出素子EMにより逐次検出される頸動脈波wcについて、その頸動脈波wcに含まれる進行波成分(Incident wave)wiのピークpiの発生時点および反射波成分(Reflected wave)wrのピークprの発生時点を決定する。そして、反射波成分wrのピーク発生時点における頸動脈波wcの大きさから進行波成分wiのピーク発生時点における頸動脈波wcの大きさを引いた圧力差ΔPを算出し、さらに頸動脈波wcの脈圧PPを決定する。そして、それら圧力差ΔPおよび脈圧PPを、式1に示す振幅増加指数算出式に代入することにより振幅増加指数AIを算出する。
(式1) AI=(ΔP/PP)×100 (%)
【0030】
ここで、頸動脈波wcの進行波成分wiのピーク発生時点の決定方法を説明する。頸動脈波wcの進行波成分wiを概念的に示すと図5の破線のようになり、進行波成分wiのピークpiは、全体の頸動脈波(観測波)wcの立ち上がり点からピークpcまでの間において、変曲点或いは極大点として現れる。(なお、図5では進行波成分wiのピークpiは観測波の変曲点として現れている。)この変曲点或いは極大点は、逐次検出される圧脈波信号SM2に、所定の次数の微分処理またはフィルタ処理など、変曲点或いは極大点検出のための一般的な処理を施すことにより決定することができる。
【0031】
また、反射波成分wrのピーク発生時点は、一般的には、進行波成分wiのピークpi以降における最初の極大点の発生時点を用いる。すなわち、図5に示す頸動脈波wcのように、進行波成分wiのピークpiが頸動脈波wcのピークpcと一致しない場合には、頸動脈波wcのピークpcの発生時点を反射波成分wrのピーク発生時点とし、進行波成分wiのピークpiが大きいために、そのピークが頸動脈波wcのピークにもなる場合には、そのピークpi以降の最初の極大点を反射波成分wrのピーク発生時点とする。
【0032】
脈波伝播速度情報算出手段90は、心音マイク68から逐次供給される心音信号SHが表す心音波形の所定部位(たとえばII音の開始点)と、圧脈波信号SM2が表す頸動脈波wcにおいて心音波形の上記所定部位に対応する所定部位(たとえばノッチ)とを決定し、その心音波形の所定部位が検出された時間と頸動脈波wcの所定部位が検出された時間との時間差を算出する。この時間差は、大動脈弁と頸部38の圧脈波検出プローブ36が装着されている部位との間における脈波伝播時間DTである。そして、さらに入力装置70から供給される患者の身長Tを、身長Tと伝播距離Lとの間の予め記憶された関係である式2に代入することにより、大動脈弁と頸部38の圧脈波検出プローブ36が装着されている部位との間の伝播距離Lを求め、得られた伝播距離Lと上記脈波伝播時間DTとを、式3に代入することにより脈波伝播速度PWV(cm/sec)を算出する。
(式2) L=aT+b
(a,bは、実験に基づいて決定された定数)
(式3) PWV=L/DT
【0033】
評価情報記憶手段92は、血圧値決定手段86により決定された血圧値BP、振幅増加指数算出手段88により算出された振幅増加指数AI、および脈波伝播速度情報算出手段90により算出された脈波伝播速度PWV、すなわち、循環動態を評価するために決定した評価情報を、患者の識別コードによって特定された患者の評価情報として、測定日(または測定日時)とともに記憶装置72の所定の記憶領域に記憶する。
【0034】
グラフ表示手段94は、表示器79に、血圧値軸と振幅増加指数軸と脈波伝播速度情報軸とを有する三次元グラフを表示し、その三次元グラフに、血圧値決定手段86により決定された血圧値BP、振幅増加指数算出手段88により算出された振幅増加指数AI、脈波伝播速度情報算出手段90により算出された脈波伝播速度PWVを表す図形を表示し、さらに、記憶装置72に患者の過去の血圧値BP、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVが記憶されている場合には、その過去の血圧値BP、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVを表す図形もその三次元グラフに表示する。
【0035】
図7は、このグラフ表示手段94により表示される三次元グラフの一例であり、三次元グラフとして三次元散布図96が用いられている。この三次元散布図96は、最高血圧値軸98と振幅増加指数軸100と脈波伝播速度軸102とを有している。そして、その三次元散布図96に、今回測定された最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVを示す図形、および記憶装置72に記憶されている過去の最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVを示す図形として、丸印104、106がそれぞれの測定日とともに表示されている。これにより、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVの経時変化が確認できる。また、今回の測定については、測定値を表す立方体形状の測定値枠108も表示されている。
【0036】
三次元散布図96には、さらに、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVの正常範囲の上限値(すなわち基準値)に基づいて定まる図形である直方体形状の基準枠110が表示されている。なお、図7では、正常範囲の上限値は、最高血圧値BPSYSが140mmHg、振幅増加指数AIが20%、脈波伝播速度PWVが1400cm/sとされている。
【0037】
図7に示す三次元散布図96において、測定値枠108と基準枠110との比較から、或いは、基準枠110に対する丸印104の位置から、患者は脈波伝播速度PWVと振幅増加指数AIは正常であるが、最高血圧値BPSYSが高すぎることが容易に判断できる。さらに、丸印106と丸印104とを比較することで、最高血圧値BPSYSは改善に向かっていることも分かる。
【0038】
図8および図9は、図6の機能ブロック線図に示したCPU76の制御作動を説明するフローチャートである。
【0039】
図8において、まず最適押圧位置制御手段80に相当するステップS1(以下、ステップを省略する。)乃至S3を実行する。まずS1では、押圧装置62を制御することにより圧力室56内の圧力を制御して、圧脈波センサ54の押圧力HDPを予め設定された第1押圧力HDP1とする。上記第1押圧力HDP1は、各感圧素子Eにより検出される頸動脈波wcのS/N比が、それら複数の頸動脈波wcのピークpcの大きさを比較的高い精度で決定できる程度に大きくなるような押圧力HDPとして、予め実験に基づいて決定されている。
【0040】
続くS2では、圧脈波センサ54の押圧面66に配列された感圧素子Eのうち最大圧力検出素子EMの配列位置が、配列の端から所定数または所定距離内側までに位置するものであるかを条件とする押圧位置更新条件(APS起動条件)が成立したか否かを判断する。この判断が否定された場合には、後述するS4以降を実行する。
【0041】
一方、S2の判断が肯定された場合、すなわち、圧脈波センサ54の頸動脈46に対する装着位置が不適切である場合には、続くS3において、APS制御ルーチンを実行する。このAPS制御ルーチンは、最大圧力検出素子EMが感圧素子Eの配列の略中央位置となる最適押圧位置を決定するための制御であり、以下の連続的な作動により構成される。すなわち、APS制御ルーチンは、圧脈波センサ54を一旦体表面50から離隔させ、幅方向移動装置64により押圧装置62および圧脈波センサ54を所定距離移動させた後、押圧装置62により圧脈波センサ54を再び前記第1押圧力HDP1で押圧させ、その状態における最大圧力検出素子EMが配列略中央位置にある感圧素子Eであるか否かを判断し、この判断が肯定されるまで上記作動が繰り返し実行する制御である。
【0042】
上記S3において、圧脈波センサ54の押圧位置を最適押圧位置とした場合、または、前記S2の判断が否定された場合には、S4において、その状態における最大圧力検出素子EMを決定し、続いて押圧力制御手段82に相当するS5において、HDP制御ルーチンを実行する。このHDP制御ルーチンでは、押圧装置62により圧脈波センサ54の押圧力HDPを前記第1押圧力HDP1から連続的に増加させ、その押圧力増加過程で、前記S4で決定した最大圧力検出素子EMによって検出される頸動脈波wcの脈圧PPが予め設定された最低脈圧PPL以上となったか否かに基づいて最適押圧力HDPOを決定し、圧脈波センサ54の押圧力HDPをその決定した最適押圧力HDPOに維持する。
【0043】
続くS6では、圧脈波センサ54の最大圧力検出素子EMから供給される圧脈波信号SM2、心音マイク68から供給される心音信号SHをそれぞれ一拍分読む。そして、信号の読み込みが終了したら、続くS7において、空気ポンプ58を停止させ且つ調圧弁60を制御することにより、圧脈波センサ54の押圧力HDPを大気圧まで排圧する。
【0044】
続いて振幅増加指数算出手段88に相当するS8乃至S11を実行する。まずS8では、S6で読み込んだ一拍分の圧脈波信号SM2すなわち頸動脈波wcのうち、立ち上がり点からピークpcまでの間の信号を4次微分処理することにより、立ち上がり点からピークpcまでの間に存在する変曲点または極大点を検出し、その変曲点または極大点の大きさを進行波成分wiのピークpiの大きさに決定する。
【0045】
続くS9では、S6で読み込んだ頸動脈波wcについて、反射波成分wrのピーク発生時点における頸動脈波wcの大きさを決定する。すなわち、S8で決定した進行波成分wiのピークpiが頸動脈波wcの全体の最大値とならない場合には、頸動脈波wcの最大値を反射波成分wrのピーク発生時における頸動脈波wcの大きさに決定し、S8で決定した進行波成分wiのピークpiが頸動脈波wcの全体の最大値となる場合には、進行波成分wiのピークpi以降における最初の極大値の大きさを反射波成分wrのピーク発生時における頸動脈波wcの大きさに決定する。
【0046】
続くS10では、S6で読み込んだ頸動脈波wcの脈圧PPを決定する。そして、S11では、S9で決定した反射波成分wrのピーク発生時における頸動脈波wcの大きさから、S8で決定した進行波成分wiのピーク発生時における頸動脈波wcの大きさを引くことにより圧力差ΔPを算出し、その圧力差ΔPと、S10で決定した脈圧PPとを前記式1に示す振幅増加指数算出式に代入することにより振幅増加指数AI(%)を算出し、その算出した振幅増加指数AIを表示器79に数値で表示する。
【0047】
続いて脈波伝播速度情報算出手段90に相当するS12乃至S14を実行する。S12では、本フローチャートの実行に先立って入力装置72から予め入力された身長Tを、前記式2に代入することにより伝播距離Lを算出する。そして、S13では、前記S6で読み込んだ一拍分の心音信号SHが表す心音のII音の開始点を決定し、且つ、同じく前記S6で読み込んだ一拍分の圧脈波信号SM2が表す頸動脈波wcのノッチを決定し、心音のII音の開始点が検出された時間と頸動脈波wcのノッチが検出された時間との時間差を脈波伝播時間DTとして算出する。そして、続くS14では、上記S12乃至S13で算出した伝播距離Lおよび脈波伝播時間DTを前記式3に代入することにより脈波伝播速度PWVを算出し、その算出した脈波伝播速度PWVを表示器79に数値で表示する。
【0048】
続いて、図9に示すS15以降を説明する。S15では、空気ポンプ24を起動させ、且つ、調圧弁18を制御することにより、カフ圧PCの急速昇圧を開始する。そして、S16では、カフ圧PCが180mmHgに設定された昇圧目標圧力値PCMを超えたか否かを判断する。このS16の判断が否定されるうちは、S16の判断を繰り返し実行し、カフ圧PCの急速昇圧を継続する。一方、S16の判断が肯定された場合には、S17において、空気ポンプ24を停止させ、且つ、調圧弁18を制御することにより、カフ圧PCの3mmHg/sec程度での徐速降圧を開始する。
【0049】
続いて血圧値決定手段86に相当するS18乃至S20を実行する。S18では、カフ圧PCの徐速降圧過程で逐次得られるカフ脈波信号SM1が表す上腕脈波wbの振幅の変化に基づいて、良く知られたオシロメトリック方式の血圧測定アルゴリズムに従って最高血圧値BPSYS、平均血圧値BPMEAN、および最低血圧値BPDIAを決定する。続くS19では、上記S18において血圧値BPの決定が完了したか否かを判断する。
【0050】
上記S19の判断が否定されるうちは、S18を繰り返し実行し、血圧測定アルゴリズムを継続する。血圧測定アルゴリズムの継続によりS19の判断が肯定された場合には、S20において、血圧測定アルゴリズムの実行により決定した最高血圧値BPSYS、平均血圧値BPMEAN、最低血圧値BPDIAを表示器79に数値で表示する。そして、続くS21では、調圧弁18を制御することによりカフ圧PCを大気圧まで排圧する。本フローチャートではS15乃至S17およびS21がカフ圧制御手段84に相当する。
【0051】
続くS22は評価情報記憶手段92に相当し、S11で算出した振幅増加指数AI、S14で算出した脈波伝播速度PWV、S18で決定した最高血圧値BPSYSを、本フローチャートの実行前に入力された患者識別コードに基づいて特定された患者の測定値として記憶装置72の所定の記憶領域に記憶する。
【0052】
そしてグラフ表示手段94に相当するS23では、たとえば前述の図7に示すように、三次元散布図96に、S11で算出した振幅増加指数AIと、S14で算出した脈波伝播速度PWVと、S18で決定した最高血圧値BPSYSとを示す丸印104および測定値枠108を表示し、さらに、基準枠110および本フローチャートの実行前に入力された患者識別コードに基づいて特定された患者について記憶装置72に記憶されている過去の測定値を表す丸印106も三次元散布図96に表示する。
【0053】
上述の実施例によれば、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVの3つの値が、表示器79に表示された三次元散布図96から図形的に認識できるので、それら3つの値に基づく循環動態の総合的な評価が容易となる。
【0054】
また、上述の実施例によれば、三次元散布図96には、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVの正常範囲の上限値を表す基準枠110が表示されるので、測定された最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVを表す測定値枠108或いは丸印104と、基準枠110と比較することにより、一層容易に循環動態を評価することができる。
【0055】
また、上述の実施例によれば、三次元散布図96には、丸印104、106により、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVのそれぞれの経時変化が表示されていることから、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVの経時変化が図形的に認識できるので、循環動態の経時変化の評価が容易になる。従って、投薬の効果や生活習慣改善の効果を容易に評価することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0057】
たとえば、前述の実施例では、三次元グラフとして三次元散布図96が用いられていたが、レーダーチャートなど他の種類のグラフが用いられてもよい。図10は、三次元グラフとしてレーダーチャート112が用いられた図である。図10において、実線で示される三角形114は今回の測定値を示す図形であり、破線で示される三角形116は前回の測定値を示す図形であり、一点鎖線で示される基準三角形118は正常範囲の上限値(基準値)を示す図形である。
【0058】
また、前述の実施例の三次元散布図96には、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVが表示されていたが、最高血圧値BPSYSに代えて平均血圧値BPMEANあるいは最低血圧値BPDIAが表示されてもよく、また、脈波伝播速度PWVに代えて脈波伝播時間DTが表示されてもよい。
【0059】
また、前述の実施例では、表示器79に三次元グラフである三次元散布図96が表示されていたが、最高血圧値BPSYS、振幅増加指数AI、脈波伝播速度PWVに加えて、循環動態を評価するための他の評価情報(たとえば心拍数HR)が測定され、その他の評価情報も同時に表示するために4次元以上のグラフが表示されてもよい。
【0060】
また、前述の循環動態評価装置10は、血圧値BP、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVを測定する機能を備えていたが、それらを測定する機能は設けられず、他の装置で血圧値BP等が測定され、その装置から測定値の供給を受けてもよい。
【0061】
また、前述の実施例では、血圧値BP、振幅増加指数AI、および脈波伝播速度PWVは略同時に測定されていたが、それらの測定値が表示器79に同時に表示されれば、測定自体は略同時に行われる必要はない。
【0062】
また、前述の実施例では、血圧値BPは上腕部14で測定され、振幅増加指数AIは頸部38で測定され、脈波伝播速度PWVは心臓(大動脈弁)と頸部38との間で測定されていたが、測定部位は特に限定されず、たとえば、血圧値BPは大腿部や足首で血圧が測定されてもよいし、振幅増加指数AIは上腕部14で測定されてもよいし、脈波伝播速度PWVは上腕と足首との間で測定されてもよい。
【0063】
また、振幅増加指数の算出式(式1)は、分母が脈圧PPであることが一般的であるが、分母が進行波成分wiのピーク発生時点における頸動脈波wcの振幅であっても、算出される値は動脈硬化を反映するので、式1において脈圧PPに代えて進行波成分wiのピーク発生時点における頸動脈波wcの振幅を用いてもよい。
【0064】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において、その他種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の循環動態評価装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】図1の循環動態評価装置に備えられた圧脈波検出プローブが、頸部に装着された状態を示す図である。
【図3】図2の圧脈波検出プローブを一部切り欠いて説明する拡大図である。
【図4】図1の圧脈波センサの押圧面に配列された感圧素子の配列状態を説明する図である。
【図5】図1の圧脈波センサの感圧素子から出力される圧脈波信号SM2が表す頸動脈波wcを例示する図である。
【図6】図1の循環動態評価装置における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図6のグラフ表示手段により表示される三次元グラフの一例として三次元散布図を示す図である。
【図8】図6の機能ブロック線図に示したCPUの制御作動を説明するフローチャートである。
【図9】図6の機能ブロック線図に示したCPUの制御作動を説明するフローチャートである。
【図10】図6のグラフ表示手段により表示される三次元グラフの一例としてレーダーチャートを示す図である。
【符号の説明】
10:循環動態評価装置
79:表示器
94:グラフ表示手段
96:三次元散布図(三次元グラフ)
110:基準枠(基準図形)
112:レーダーチャート(三次元グラフ)
118:基準三角形(基準図形)
Claims (4)
- 血圧値と、振幅増加指数と、脈波伝播速度情報とを同時にグラフに表示する表示器が備えられていることを特徴とする循環動態評価装置。
- 前記表示器には、前記血圧値と前記振幅増加指数と前記脈波伝播速度情報とを少なくとも表示する多次元グラフが表示されることを特徴とする請求項1に記載の循環動態評価装置。
- 前記多次元グラフには、前記血圧値の基準値、前記振幅増加指数の基準値、および前記脈波伝播速度情報の基準値に基づいて決定される基準図形が表示されていることを特徴とする請求項2に記載の循環動態評価装置。
- 前記多次元グラフは、前記血圧値、前記振幅増加指数、および前記脈波伝播速度情報のそれぞれの経時変化を表示するものであることを特徴とする請求項2または3に記載の循環動態評価装置。
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