JP2004014287A - Ito膜およびその製造方法ならびに有機el素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機EL素子10は、基板12、陽極電極14、および陽極電極14上に順次成膜される素子本体、陰極電極で構成される。基板12は、樹脂基板あるいは樹脂フィルムである。陽極電極14は、ITO膜である。陽極電極14は、基板12の上に形成された第1層22および第1層22の上に形成された第2層20からなる2層構造を有する。第1層22は、結晶性の低い構造を有する層であり、一方、第2層20は、結晶性の高い構造を有する層である。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ITO膜およびその製造方法ならびに有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化スズと酸化インジウムの固溶体からなるITO(Indium Tin Oxide)膜は、比抵抗が小さくまたエッチング加工し易いことから、各種の表示用デバイスの電極として広く用いられている。
【0003】
このような表示用デバイスの一例として有機EL(Electroluminescence)素子を挙げることができる。
【0004】
例えば、図1に示す有機EL素子1aは、ガラス基板2a上に陽極電極6aが形成され、陽極電極6a上に素子本体4aが形成され、素子本体4a上に陰極電極7aが形成された構造を有する。この場合、素子の発光形態に応じて、陽極電極6aおよび陰極電極7aのうちのいずれか一方または双方が透明電極で形成される。そして、透明電極として上記したITO膜が好適に用いられる。ここで、素子本体4aは、発光材料成分としての蛍光体等の発光体を含む有機物からなる層であり、単層で用いる場合にはさらに正孔輸送材料および電子輸送材料を合わせて含む。
【0005】
有機EL素子1aは、陽極電極6aと陰極電極7aとの間に電圧を印加することにより、例えば陽極電極6aよりホール注入が、また陰極電極7aより電子注入が、それぞれ行われる。そして、素子本体4aにおいて発光材料成分の分子の電子とホールが再結合することで発光を生じる。素子本体4aから発せられる光は図1中ガラス基板2a側から外部に取り出される。
【0006】
ところで、EL素子は、水分に非常に弱い。特に、有機EL素子は、無機EL素子に比べて発光層の寿命が著しく短く、そして、発光層は水分を含むと劣化が加速される。このため、有機EL素子の発光層への水分(水蒸気)の浸入を防止することが必須である。
【0007】
上記の有機EL素子1aの場合、素子本体4aを封止用メタル缶5aで覆い、乾燥剤5bを入れた状態で封止することが行われている。
【0008】
しかしながら、有機EL素子1aは、ガラス基板2aおよび封止用メタル缶5aを有するために素子の小型化、軽量化が阻害される。
【0009】
このため、例えば図2に示す有機EL素子1bのように、厚みの薄い樹脂基板2bを用い、樹脂基板2bを通して水分が素子本体4bに浸入することを防止するために、樹脂基板2bと陽極電極6bとの間に水分の透過を防止する防止膜(水蒸気透過防止膜、防湿バリア膜)8aを設けるとともに、陰極電極7b上を封止用保護膜8bで成膜することが行われている。このような防止膜8aあるいは封止用保護膜8bとしては、酸化ケイ素膜や酸化アルミニウム膜等が広く用いられている。また、防止膜8aあるいは封止用保護膜8bに透明性が必要な場合は窒化ケイ素も用いられる。樹脂基板2bを用いた有機EL素子1bは、フレキシブルな素子としての利点も有する。
【0010】
なお、例えば図3に示す有機EL素子1cのように、発光した光を陰極電極7cの上面から放出するトップエミッション型の場合、表示装置の画素単位に配列された、陽極電極6cおよび素子本体4c間を隔壁9aで仕切るとともに、陰極電極7cを透明なITO膜で形成し、さらに陰極電極7cの上に透明な封止膜8cを成膜し、さらに封止膜8c上に透明なシール層8dを形成することも行われている。図3中、参照符号2cはガラス基板を示し、参照符号9bはTFTを含む駆動回路を示す。なお、陰極電極または陽極電極については、発光した光が放射される側の電極として用いられない場合、すなわち、反発光側の電極の場合には、通常アルミニウムに代表される金属膜が用いられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した水蒸気の透過を防止するための各種の構造は、必ずしも充分な水蒸気透過防止性を与えるものではない。また、充分な水蒸気透過防止性を確保しようとすると、水蒸気の透過を防止するための各種の構造が複雑となり、素子の小型化が阻害されることにもなる。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、良好な水蒸気透過防止性を有するITO膜およびその製造方法ならびにITO膜を備えた有機EL素子を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、水蒸気透過防止構造について鋭意検討した結果、例えば有機EL素子の必須構成要素であるITO膜からなる透明電極に水蒸気透過防止性を付与することができれば、水蒸気透過防止構造構造の簡略化が期待できることに思い至った。そして、ITO膜の結晶構造に着目して検討したところ、ITO膜が高い結晶性を有する場合、小さい比抵抗が得られるものの水蒸気透過防止膜としては機能せず、一方、ITO膜の結晶性を敢えて低くした場合、比抵抗が大きくなるものの良好な水蒸気透過防止性を有する膜が得られることが分かった。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。なお、ITO膜の結晶性の高低は、X線回折(XRD)による(222)面のピークの大小で比較することができる。
【0014】
本発明に係るITO膜は、結晶性の高い構造の層と結晶性の低い構造の層とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るITO膜は、結晶性の高い構造の層と結晶性の低い構造の層とで構成した積層構造の組を1つまたは2つ以上含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るITO膜は、結晶性の高い構造と結晶性の低い構造とが膜の厚み方向両端に形成されるとともに、厚み方向に連続的に構造を変化させて形成されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の上記の構成により、従来の結晶性の高い均質な構造のITO膜と同等の低い比抵抗を有するとともに良好な水蒸気透過防止性を合わせ備えたITO膜を得ることができる。
【0018】
また、本発明に係るITO膜は、樹脂基板または樹脂シート上に成膜され、結晶性の高い構造を有する層と結晶性の低い構造を有する層の2層構造からなり、該結晶性の低い構造を有する層の側が該樹脂基板または該樹脂シートに向けて成膜されてなると、水蒸気透過防止性のより高いITO膜を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係るITO膜の製造方法は、上記のITO膜の製造方法であって、スパッタ法またはイオンプレーティング法を用い、成膜時圧力を成膜過程で変化させ、または、基板に印加するバイアス電位を成膜過程で変化させ、または、基板温度を成膜過程で変化させ、あるいはまた、イオンプレーティング法を用い、蒸着材料が装填され、電圧を印加されるハースの電位を成膜過程で変化させることを特徴とする。
【0020】
本発明の上記の構成により、本発明の上記の効果を奏するITO膜を好適に得ることができる。
【0021】
また、本発明に係る有機EL素子は、上記のITO膜を電極として備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の上記の構成により、素子の水蒸気透過防止性の向上を図ることができ、あるいは、水蒸気透過防止構造の簡略化を図ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係るITO膜およびその製造方法ならびに有機EL素子の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0024】
まず、本実施の形態例に係るITO膜およびITO膜を有する有機EL素子について、図4〜図6を参照して説明する。
【0025】
本実施の形態例に係る有機EL素子10は、図4に示すように基板12と、基板12の上に成膜された陽極電極14と、陽極電極14の上に成膜された素子本体16と、素子本体16の上に成膜された陰極電極18とで構成されている。なお、素子本体16は、正孔輸送層、電子輸送層および発光層からなる(図示せず。)。
【0026】
基板12は、例えば、ポリカーボネート樹脂からなる樹脂基板あるいは樹脂フィルムである。このような基板12は、ガラス基板等と異なり、水分(水蒸気)透過性を有する。このため、水分の浸入による素子本体16の劣化を防止するために、従来技術では基板12に水分透過防止膜を積層して水分透過防止性を付与している。基板12は、樹脂フィルムの場合、例えば0.1〜0.5mm程度の厚みに形成される。このような基板12を用いた素子はフレキシブルであるため、好適である。
【0027】
陽極電極14は、ITO材料で形成され、透明性を有する、本実施の形態例に係るITO膜である。陽極電極14は、図5の部分拡大図に示すように、基板12の上に形成された第1層22および第1層22の上に形成された第2層20からなる2層構造を有する。第1層22は、図6のX線回折図(XRD図)に示したように、(222)面のピークが小さな、結晶性の低い構造を有する層である。一方、第2層20は、図7のX線回折図に示したように、(222)面のピークが大きな、結晶性の高い構造を有する層である。なお、図6および図7中、回折角(2θ)20°付近の大きなピークは、ITO膜が成膜される基板12に由来するものである。第1層22および第2層20は、例えば、それぞれ50nmの厚みに形成される。
【0028】
素子本体16は、蛍光体等の発光体を含む有機物からなる層であり、例えば、100nm程度の厚みに形成される。素子本体16は、前記したように、寿命が短く、また、水分の浸入によって劣化が加速される性質を有する。
【0029】
陰極電極18は、陽極電極14と同様の第1層および第2層の2層構造からなる本実施の形態例に係るITO膜である(2層構造の図示を省く。図5参照。)。
【0030】
上記のように構成される有機EL素子10は、例えば、従来例の図3と同様のトップエミッションタイプである。この場合、陽極電極14をITO材料に変えて不透明でかつ高い反射率を有する金属材料で形成してもよい。また、有機EL素子10が発光した光が基板12側から放射されるボトムエミッションタイプの場合、すなわち、図4中下側電極が陽極電極であり、上側電極が陰極電極の場合は、上側電極をITO材料に変えて不透明でかつ高い反射率を有する金属材料で形成してもよい。
【0031】
上記本実施の形態例に係る、透明な電極としてのITO膜の製造方法について説明する。
【0032】
ITO膜は、各種の成膜方法を用いて製造することができるが、好適には、スパッタ法またはイオンプレーティング法により製造することができる。本実施の形態例では後者のイオンプレーティング法によりITO膜を成膜する。
【0033】
本実施の形態例で用いるイオンプレーティング装置について装置の構成および作用の概略を、図8を参照して説明する。
【0034】
図8に示すイオンプレーティング装置24では、圧力勾配型のプラズマガン26からプラズマビームPBが真空容器(成膜室)28中に照射される。真空容器(成膜室)28の下部には、ハース30が配設されており、ハース30の貫通孔THにITO材料からなる成膜材料ロッド32が挿入される。プラズマビームPBはハース30に入射するが、このとき、ハース30が適当な正電位に制御されることにより、プラズマビームPBは確実にハース30に導かれる。プラズマビームPBによって加熱された成膜材料ロッド32は、上端を蒸発されつつ供給装置34によって徐々に突き上げられる。
【0035】
ハース30と対向して真空容器28の上部には搬送機構WHによって搬送された基板Wが配置される。蒸発した成膜材料粒子は、プラズマビームPB中でイオン化され、イオン化した成膜材料粒子が基板Wの表面に付着し、これにより基板Wが成膜される。
【0036】
なお、図8中、ハース30の周囲には永久磁石およびコイルが配置されており、これらによりカスプ状磁場が形成され、ハース30に入射するプラズマビームPBの向きが制御される。
【0037】
イオンプレーティング装置24を用いた陽極電極14あるいは陰極電極18のITO膜の成膜条件について説明する。
【0038】
例えば、ハース30の電位が17.7eV、Arガス流量が120sccm、O2ガス流量が10sccm、成膜圧力が3.0mTorr(0.39Pa)、基板温度が室温の各条件下で、基板12の上にITO膜の成膜を開始する。そして、ITO膜の厚みが50nmとなった時点、すなわち、50nmの厚みの第1層22が形成された時点で、上記の成膜条件のうちハース30の電位を23.3eVに上げ、また、成膜圧力を1.0mTorr(0.13Pa)に下げる以外は他の条件は一定としたまま成膜を続け、ITO膜の全体の厚みが100nmとなった時点、すなわち、50nmの厚みの第2層20が形成された時点で、ITO膜の成膜を完了する。なお、これらの成膜条件において、成膜圧力の調整は、ハース30の電位を変更する際に、プラズマ密度を変化させるために行うものであり、結晶構造を制御する観点からは、実質的には、ハース30の電位のみを変更することおよび成膜圧力のみを変更することは等価である。
【0039】
以上説明した本実施の形態例に係るITO膜の比抵抗および水蒸気透過度の測定結果について図9の表図を参照して説明する。図9中、実施例1は、本実施の形態例に係るITO膜である。また、参考例1、2は、本実施の形態例の効果を確認するために調製したITO膜である。参考例1はハース電位を23.3eV、成膜圧力1.0mTorr(0.13Pa)で100nmの厚みに調製した、結晶性の高いITO膜であり、参考例2はハース電位を17.7eV、成膜圧力3.0mTorr(0.39Pa)で100nmの厚みに調製した、結晶性の低いITO膜である。なお、比抵抗はJIS R1637(4探針法)によって測定し、水蒸気透過度はJIS K7129A(感湿センサー法)によって測定した。また、水蒸気透過度は、後述する実施例2を含め、いずれも基板を含んだ状態における値である。
【0040】
図9より、実施例1の本実施の形態例に係るITO膜は、比抵抗の大きな参考例2のITO膜より小さな比抵抗を有し、一方、水蒸気透過性の大きな参考例1のITO膜より小さくかつ参考例2のITO膜と同様の小さな水蒸気透過性を有することがわかる。
【0041】
本実施の形態例に係るITO膜(陽極電極14、陰極電極18)は、従来の結晶性の高い均質な構造のITO膜と同等の低い比抵抗を有するとともに良好な水蒸気透過防止性を合わせ備える。また、本実施の形態例に係るITO膜を透明電極として有する本実施の形態例に係る有機EL素子10は、水蒸気透過防止性の向上を図ることができ、あるいは、水蒸気透過防止構造の簡略化を図ることができる。
【0042】
なお、本実施の形態例に係る、透明電極としてのITO膜に変えて、透明電極の材料として酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)または酸化亜鉛(ZnO)を用い、これらの材料を成膜して本実施の形態例に係るITO膜と同様に結晶性の高い膜と結晶性の低い膜とを含む構造に形成した導電性膜を透明電極として用いてもよい。
【0043】
また、本実施の形態例に係る上記の成膜方法では、ITO膜の成膜過程で、成膜条件としてハース電位を変化させることで、第1層と第2層の結晶性を変えて成膜品質を変えた。すなわち、成膜時圧力を高くすることによりハース電位を低くして成膜材料粒子の基板への入射エネルギーを小さくすることで、結晶性の低い第1層を形成するとともに、これとは逆に成膜時圧力を低くすることによりハース電位を高くして成膜することで、結晶性の高い第2層を形成した。これと同様の考え方で、成膜条件として、基板12にバイアスを印加させて成膜を行うときのバイアス電位を低くしてITO膜の第1層を形成した後、バイアス電位を高くしてITO膜の第2層を形成してもよい。あるいはまた、基板12に付着したときの成膜材料粒子のマイグレーション促進効果を得るべく、基板温度を低くしてITO膜の第1層を形成した後、基板温度を高くしてITO膜の第2層を形成してもよい。
【0044】
また、これらの場合において、ITO膜の成膜過程で、成膜条件の上記の変更を4回以上行うことにより、ITO膜を第1層および第2層からなる組が複数組積層された構成としてもよく、また、成膜条件を徐々に変えることにより、ITO膜の下表面近傍が結晶性の低い構造を有し、一方、上表面近傍が結晶性の高い構造を有し、厚み方向に連続的に構造を変化させて形成された構成としてもよい。このとき、好適には、ITO膜の結晶性の低い構造の側が基板に接する構成とする。
【0045】
つぎに、本実施の形態例に係るITO膜を用いた有機EL素子10の変形例について、図10を参照して説明する。
【0046】
変形例の有機EL素子10aは、陽極電極14a以外の他の構成要素については有機EL素子10と同じであるため、同一の参照符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0047】
有機EL素子10aは、陽極電極14aが本実施の形態例に係る陽極電極14のITO膜の積層順が反転した構成を有する。すなわち、陽極電極14aは、基板12上に形成される第1層36が結晶性の高い構造を有する層であり、一方、第1層36の上に形成される第2層38が結晶性の低い構造を有する層である。
【0048】
陽極電極14aを構成するITO膜の成膜は、前記したITO膜の成膜方法に準じて行うことができる。ITO膜の第1層および第2層はそれぞれ膜厚が50nmである。
【0049】
陽極電極14aを構成するITO膜の成膜品質を前記した図9の表図に併せて示した。図9中、実施例2が陽極電極14aを構成するITO膜である。
【0050】
図9より、実施例2のITO膜は、実施例1のITO膜と同様に参考例2のITO膜よりも低い比抵抗を有するとともに、参考例1のITO膜よりも良好な低い水蒸気透過度を有する。言い換えれば、実施例2(変形例)のITO膜は、比抵抗と水蒸気透過防止性のバランスのよい膜であり、実施例1(本実施の形態例)のITO膜と略同様の効果を奏する。
【0051】
なお、実施例1、2のITO膜の水蒸気透過性が相違する原因は明らかではないが、実施例2のように高い結晶性を有する層を基板上に形成する第1層とする場合は、高い入射エネルギが樹脂材料からなる基板に加わるため、基板にダメージが与えられて基板からの脱ガス等の影響により、均質な第1層を得ることができず、例えば孔欠陥を生じる等の理由によりITO膜の水蒸気透過性が十二分に向上しないのではないかと考えられる。
【0052】
【発明の効果】
本発明に係るITO膜によれば、結晶性の高い構造の層と結晶性の低い構造の層とを含むため、従来の結晶性の高い均質な構造のITO膜と同等の低い比抵抗を有するとともに良好な水蒸気透過防止性を合わせ備えたITO膜を得ることができる。
【0053】
また、本発明に係るITO膜によれば、樹脂基板または樹脂シート上に成膜され、結晶性の高い構造を有する層と結晶性の低い構造を有する層の2層構造からなり、結晶性の低い構造を有する層の側が樹脂基板または該樹脂シートに向けて成膜されてなるため、水蒸気透過防止性のより高いITO膜を得ることができる。
【0054】
また、本発明に係るITO膜の製造方法によれば、スパッタ法またはイオンプレーティング法を用い、成膜時圧力を成膜過程で変化させ、または、基板に印加するバイアス電位を成膜過程で変化させ、または、基板温度を成膜過程で変化させ、あるいはまた、イオンプレーティング法を用い、蒸着材料が装填され、電圧を印加されるハースの電位を成膜過程で変化させるため、本発明の上記の効果を奏するITO膜を好適に得ることができる。
【0055】
また、本発明に係る有機EL素子は、上記のITO膜を電極として備えるため、素子の水蒸気透過防止性の向上を図ることができ、あるいは、水蒸気透過防止構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の有機EL素子の一例の概略構成を示す図である。
【図2】従来の有機EL素子の他の一例の概略構成を示す図である。
【図3】従来の有機EL素子のさらに他の一例の概略構成を示す図である。
【図4】本実施の形態例に係るITO膜を設けた有機EL素子の概略構成を示す図である。
【図5】図4の有機EL素子の陰極電極部分の拡大図である。
【図6】本実施の形態例に係るITO膜の第1層のX線回折図である。
【図7】本実施の形態例に係るITO膜の第2層のX線回折図である。
【図8】本実施の形態例に係るITO膜をイオンプレーティング法により成膜するときに用いるイオンプレーティング装置の概略構成を示す図である。
【図9】ITO膜の成膜品質を示す表図である。
【図10】変形例に係るITO膜を設けた有機EL素子の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
10、10a 有機EL素子
12 基板
14、14a 陽極電極
16 発光層
18 陰極電極
20、38 第2層
22、36 第1層
24 イオンプレーティング装置
26 プラズマガン
28 真空容器
30 ハース
32 成膜材料ロッド
34 供給装置
Claims (9)
- 結晶性の高い構造の層と結晶性の低い構造の層とを含むことを特徴とするITO膜。
- 結晶性の高い構造の層と結晶性の低い構造の層とで構成した積層構造の組を1つまたは2つ以上含むことを特徴とする請求項1記載のITO膜。
- 結晶性の高い構造と結晶性の低い構造とが膜の厚み方向両端に形成されるとともに、厚み方向に連続的に構造を変化させて形成されてなることを特徴とする請求項1記載のITO膜。
- 樹脂基板または樹脂シート上に成膜され、結晶性の高い構造を有する層と結晶性の低い構造を有する層の2層構造からなり、該結晶性の低い構造を有する層の側が該樹脂基板または該樹脂シートに向けて成膜されてなることを特徴とするITO膜。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のITO膜の製造方法であって、
スパッタ法またはイオンプレーティング法を用い、成膜時圧力を成膜過程で変化させることを特徴とするITO膜の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のITO膜の製造方法であって、
スパッタ法またはイオンプレーティング法を用い、基板に印加するバイアス電位を成膜過程で変化させることを特徴とするITO膜の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のITO膜の製造方法であって、
スパッタ法またはイオンプレーティング法を用い、基板温度を成膜過程で変化させることを特徴とするITO膜の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のITO膜の製造方法であって、
イオンプレーティング法を用い、蒸着材料が装填され、電圧を印加されるハースの電位を成膜過程で変化させることを特徴とするITO膜の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のITO膜を電極として備えることを特徴とする有機EL素子。
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