JP2010287383A - 有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents

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聡 森
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Abstract

【課題】発光効率が高く、量産性も高い有機EL素子の透明電極の製造方法を提供する。
【解決手段】有機電界発光素子の製造方法は、基板の上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、前記画素電極の上に有機層を形成する有機層形成工程と、前記有機層の上に対向電極を形成する対向電極形成工程と、を含み、前記対向電極形成工程は、前記有機層側に第1の電極層を成膜する工程と、前記第1の電極層を成膜する工程の後に、前記第1の電極層の成膜速度よりも高速の成膜速度で第2の電極層を成膜する工程と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機電界発光素子の製造方法に関する。
有機電界発光素子は、2つの電極間に有機発光層を挟持した構造を有し、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させる。この場合、発光した光を取り出すために、どちらか一方の電極を透明にする必要がある。そして、透明電極としてITO、IZOからなる透明導電膜等を用いることがある。
有機電界発光素子をディスプレイ等に使用する場合、駆動素子にTFTを使用する場合、基板側から発光した光を取り出す(ボトムエミッション)と、光の取り出し効率が悪くなる。そこで、基板と反対側の電極を透明電極とし、上部光取り出し(トップエミッション)型の有機電界発光素子が有力視されてきた。図3は、従来のトップエミッション型の有機電界発光素子の構成を示す断面図である。基板1上に陽極2となる下部電極をスパッタ法等で形成し、有機発光層3を真空蒸着法等で形成した後、透過性の透明導電膜を陰極4として形成する。透明導電膜からなる陰極4の形成には、従来から行われている真空蒸着法、プラズマやイオンビームによるアシスト蒸着法を用いている。
特許第2850906号公報 特開2008−196023号公報 特開2001−85163号公報
しかしながら、蒸着法により基板上に導電膜を形成する場合、蒸着法は熱的なエネルギーのみで基板に粒子を堆積させるため、基板に入射する粒子のエネルギーは0.1eV程度であり、膜質や下地層への密着性が悪くなってしまう。これに対し、スパッタリング法にて基板上に透明導電膜をパターン形成する場合、基板に入射する粒子のエネルギーは〜600eV程度と非常に高い。一般的に基板に入射する粒子のエネルギーが50eV程度以上になると、粒子が基板内に入り込んだり、基板を構成する原子が叩き出されたり、あるいは基板に欠陥を発生させるといった問題が発生する。
特に、有機薄膜上にスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した場合、高エネルギー粒子である反跳Arプラズマ、γ電子、ターゲット粒子などの飛散・衝突により有機薄膜の分子構造が破壊(結合断裂)され、有機発光材料本来の発光効率が低下するという課題があった。また、発光効率を下げないようなスパッタリング法も提案されているが、成膜時間に時間がかかり量産性に問題があった。
本発明の目的は、上記問題に鑑みなされたもので、発光効率が高く、量産性も高い有機電界発光素子の製造方法を提供することである。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、
基板の上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、
前記画素電極の上に有機層を形成する有機層形成工程と、
前記有機層の上に対向電極を形成する対向電極形成工程と、
を含み、
前記対向電極形成工程は、
前記有機層側に第1の電極層を成膜する工程と、
前記第1の電極層を成膜する工程の後に、前記第1の電極層の成膜速度よりも高速の成膜速度で第2の電極層を成膜する工程と、
を含むことを特徴とする。
また、前記第1の電極層を成膜する工程の成膜速度は、5nm/秒以下であってもよい。
さらに、前記第1の電極層を成膜する工程の成膜雰囲気の酸素濃度は、前記第2の電極層を成膜する工程の成膜雰囲気の酸素濃度よりも低くてもよい。
またさらに、前記第2の電極層を成膜する工程の成膜電力は、前記第1の電極層を成膜する工程の成膜電力よりも大きくてもよい。
また、前記第1の電極層を成膜する工程と、
前記第2の電極層を成膜する工程と、
がともにマグネトロンスパッタ法による成膜であってもよい。
さらに、前記第1の電極層を成膜する工程が対向式スパッタ法による成膜であって、
前記第2の電極層を成膜する工程がマグネトロンスパッタ法による成膜であってもよい。
またさらに、前記第2の電極層を成膜する工程において、前記第2の電極層を前記第1の電極層の厚さより厚く成膜してもよい。
また、前記第1の電極層を成膜する工程において、前記第1の電極層を10nm以上の厚さに成膜してもよい。
以上のように、本発明の有機電界発光素子の製造方法によれば、第1の電極層を比較的低速の成膜速度で成膜し、第1の電極層を成膜後に、第1の電極層の成膜速度よりも高速の成膜速度で第2の電極層を成膜する。これによって、対向電極の成膜時における有機層へのダメージを抑えることができると共に、全体としての成膜速度をあまり低下させないで有機電界発光素子を製造できる。これによって、有機層における有機発光材料の発光効率を低下させることなく、トップエミッション型の有機電界発光素子を量産性よく作成することができる。
本発明の実施の形態1における有機電界発光素子の構成を示す部分断面図である。 本発明の実施の形態1における低ダメージ層膜厚と発光効率を示す図である。 従来の有機電界発光素子の構成を示す部分断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機電界発光素子の構成を示す部分断面図である。この有機電界発光素子は、ガラス基板1の上に、透明導電膜からなる陽極(下部電極:画素電極)2、有機層3、透明導電膜からなる陰極(対向電極)4が順に積層されて構成されている。この有機電界発光素子では、陰極(対向電極)4が、有機層3から近い側からみて第1の陰極層4aと第2の陰極層4bとの2層で構成されている。この第1の陰極層4aの膜厚は、第2の陰極層4bの膜厚より薄い。また、第1の陰極層4aの膜厚は、10nm以上である。
なお、本実施の形態1における有機電界発光素子では、基板1の上に、陽極(画素電極)2、有機層3、陰極(対向電極)4の順に積層されて構成されているが、これに限られず、陽極と陰極が逆であっても良い。つまり、基板の上に、陰極(画素電極)、有機層、陽極(対向電極)の順に積層されて構成されていてもよい。
また、この有機電界発光素子の製造方法では、陰極(対向電極)を上記第1の陰極層4a及び第2の陰極層4bの2層構造で成膜する。第1の陰極層4aの成膜する工程において、第2の陰極層4bを成膜する工程の成膜速度よりも低い成膜速度である5nm/秒以下、例えば、1nm/秒の低速の成膜速度で成膜する。これによって、陰極(対向電極)4a、4bの成膜時における有機層3へのダメージを抑制できる。また、第2の陰極層4bを通常の成膜速度で、第1の陰極層4aよりも厚く成膜するので、全体としての成膜速度をあまり低下させないで有機電界発光素子を製造できる。これによって、有機層3における有機発光材料の発光効率を低下させることなく、トップエミッション型の有機電界発光素子を量産性よく作成することができる。
以下に、この有機電界発光素子の各構成部材について説明する。
<基板>
基板1としては、例えば、ガラス基板を用いることができる。なお、トップエミッション型の場合、基板は透明でなくてもよい。
<陽極(下部電極:画素電極)>
陽極(下部電極:画素電極)2としては、上記の例では透明導電膜を用いたが、これに限られない。トップエミッションの場合には、例えば、金属電極を陽極(画素電極)2として使用してもよい。
<有機層>
この有機電界発光素子においては、有機層3は、少なくとも有機発光層を含み、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、および/または電子注入層を介在させた構造を有する。具体的には、下記のような層構成からなるものが採用される(ただし、陽極(画素電極)2は有機発光層または正孔注入層に接続され、第1の陰極層4aは有機発光層または電子注入層に接続される)。なお、下記は陽極(画素電極)2に近い側から第1の陰極層4aに近い側への順に記載している。
1)有機発光層
2)正孔注入層/有機発光層
3)有機発光層/電子注入層
4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
また、後述するように、陽極(画素電極)2と陰極(対向電極)4の極性を逆にして、陰極(画素電極)2と陽極(対向電極)4としてもよい。この場合には、上記有機層3の各層の順番は上記記載と左右を逆にしたものとなる。
<有機発光層>
有機発光層には、発光材料としては、有機電界発光素子用の公知の発光材料を用いることができる。このような発光材料は、低分子発光材料、高分子発光材料およびその前駆体などに分類され、以下に例示するような材料を使用しても同様の効果が得られるが、その他、同様の材料を使用できる。
低分子発光材料としては、例えば、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)などの芳香族ジメチリデン化合物、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾールなどのオキサジアゾール化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのトリアゾール誘導体、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼンなどのスチリルベンゼン化合物、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体などの蛍光性有機材料、ならびにアゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq3)などの蛍光性有機金属化合物などが挙げられる。
高分子発光材料としては、例えば、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)などのポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ビニレンフェニレン)(PDFBP)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン)(PDFDBFDAB)などのポリスピロ誘導体が挙げられる。
なお、有機発光層の形成は、真空蒸着法を用いて行うことができるが、真空蒸着法のほか、塗布法やインクジェット法などを用いてもよい。
<陰極>
陰極(対向電極)4a、4bは、有機層3に近い側からみて第1の陰極層4aと第2の陰極層4bとの2層で構成されている。この第1の陰極層4aの膜厚は、第2の陰極層4bの膜厚より薄い。また、第1の陰極層4aの膜厚は、10nm以上である。第1の陰極層4a及び第2の陰極層4bは、例えば、ITOで形成してもよい。あるいは、ITO以外にIZO、SnO、AZO、GZO、IGZO、ZnO等の透明電極材料を用いてもよい。この場合にも同様の効果が得られる。
<有機電界発光素子の製造方法>
この有機電界発光素子の製造方法では、陰極(対向電極)4を上記第1の陰極層4a及び第2の陰極層4bの2層構造で成膜する。特に、第1の陰極層4aを成膜する工程において、第2の陰極層4bを成膜する工程の成膜速度よりも低い成膜速度である5nm/秒以下、例えば、1nm/秒の低速の成膜速度で成膜する。これによって、陰極4a、4bの成膜時における有機層3へのダメージを抑制できる。また、第1の陰極層4aの形成には、平行平板型スパッタ装置でターゲット−基板間距離を長めにして50mm〜150mmの範囲内として、放電電力を上げることで成膜速度をかせぐようにしてもよい。さらに、成膜時のスパッタガスとして、ArとOをArに対するO流量が体積百分率で0.2%〜5%の範囲内が望ましい。また、スパッタガスとしては、Arのみでもよく、Ar、O以外の成分例えば水やHを添加してもよい。成膜の形態として、スパッタ成膜時の放電にはDC、RF、あるいはDC+RFの重畳でプラズマ放電を実施してもよい。また、ターゲットに対して基板を相対的に移動させて成膜してもよい。
具体的な有機電界発光素子の製造方法を以下に説明する。
(a)基体となるガラス基板1にITO等からなる透明導電膜をスパッタ法により成膜し、パターンニングすることで陽極(下部電極:画素電極)2とする。
(b)パターンニング後の基板1上の陽極(画素電極)2の表面を酸素プラズマ洗浄した後、複数層からなる有機層3を順次、蒸着法にて形成した。有機層3として、例えば、正孔輸送層/有機発光層(電子輸送層)/電子注入層の3層で構成する場合を説明する。
b−1)まず、正孔輸送層として4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPB)を35nmの厚さで形成する。
b−2)更にその上に、電子輸送層と発光層を兼ねる8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)を50nmの厚さで形成する。
b−3)さらに、電子の注入効率を上げるための電子注入層として、LiFを、例えば、5nmの厚さで形成した。
(c)次に、透明導電膜からなる陰極(対向電極)4を形成するため、基板1を真空蒸着装置に取り付けられている窒素置換可能なグローブボックス内へ搬送する。その後、密閉容器に移した後、スパッタ装置に取り付けられている同様のグローブボックスに移送する。陰極(対向電極)4を構成する透明導電膜としては、ITO系の材料を用いた。本発明では、対向ターゲット式スパッタ装置により第1の陰極層4aを形成した後、平行平板型スパッタ装置で第2の陰極層4bを形成した。この陰極(対向電極)の成膜方法の詳細については以下に説明する。
<陰極(対向電極)の成膜方法>
さらに、具体的な陰極(対向電極)の成膜方法を以下に説明する。
(c−1)先ず、対向ターゲット式スパッタ装置のロードロック室に基板1を投入する。
(c−2)スパッタガスとしてArを用い、基板1を室温に保持し、電力をDC1000Wに設定し、チャンバ内圧力を0.6Paに設定してターゲット表面を逆スパッタで清浄にする。
(c−3)この後、基板1をロードロック室から成膜室に移動させ、ターゲット−基板(T−S)距離を50mmに保持し、第1の陰極層4aを成膜する。スパッタガスとしてArとOをArに対するO流量が体積百分率で1%となるように成膜室に流し、基板1を室温に保持し、スパッタ成膜を10秒間行った。これにより、第1の陰極層4aがおよそ10nm堆積された。
(c−4)基板1をロードロック室に戻し、続いて、平行平板スパッタ装置に投入する。
(c−5)スパッタガスとしてArを用い、電力をDC1000Wに設定し、チャンバ内圧力を0.6Paに設定してターゲット表面を逆スパッタで清浄にする。
(c−6)この後、ロードロック室から成膜室に移動し、ターゲット−基板(T−S)間距離を50mmに保持し、第2の陰極層4bを成膜する。スパッタガスとしてArとOをArに対するO流量が体積百分率で1%となるように成膜室に流し、基板1を室温に保持し、スパッタ成膜を15秒間行った。これにより、第2の陰極層4bがおよそ90nm堆積された。以上により、第1の陰極層4aと第2の陰極層4bとを合わせた透明導電膜からなる陰極4の総厚は100nmになった。
以上によって、第1の陰極層4a及び第2の陰極層4bとからなる2層構造の陰極(対向電極)を形成した有機電界発光素子が得られる。
なお、第1の陰極層4aの成膜時間を20秒、30秒とすることで、膜厚を20nm、30nmに調整する。また、第2の陰極層4bの成膜時間を13秒、12秒とすることで、膜厚を80nm、70nmに調整し、第1の陰極層4aと第2の陰極層4bを総厚100nmとなるように積層した。表1に本実施の形態1で成膜したITO薄膜の抵抗値と透過率を示す。
Figure 2010287383
このようにして作製した有機電界発光素子は緑色の発光を示し、リーク電流の発生がない良好な特性が得られた。
<発光効率の測定>
図2は、第1の陰極層4aの膜厚と有機電界発光素子の発光効率の関係を示す概略図である。絶対PL量子収率装置(浜松ホトニクス製 型番:C9920−02)を使用し、フォトルミネッセンス法(PL法)により発光材料の絶対発光量子収率(内部量子効率)を測定した。陰極層成膜前の材料の量子効率に対する陰極層成膜後の量子効率の比率を計算して、発光効率(=(陰極層成膜後の量子効率)/(陰極層成膜前の材料の量子効率))とした。
図2に示すように、有機層3上に第1の陰極層4aが無く、有機層3上に直接第2の陰極層4bを形成した場合、量子効率測定から算出した発光効率は約50%程度であった。また、有機発光層上に第1の陰極層4aが5nmを形成し、その上に第2の陰極層4bを形成した場合、量子効率測定から算出した発光効率は約55%程度となり、第1の陰極層4aの厚さが10nm以上で発光効率は95%以上となった。したがって、量子効率測定時のハンドリング等の誤差を考慮すると、第1の陰極層4aの厚さが10nm以上の場合に、ほぼ100%の発光効率が得られる。
また、作成した有機電界発光素子を、初期輝度300cd/mの条件で連続発光させたところ、5000h後もダークスポットは発生せず、電圧上昇は1.5V〜2Vであった。本願で作成した有機電界発光素子を、透明導電膜からなる陰極を真空蒸着で作成した有機電界発光素子と比較したところ、同様の結果が得られた。以上の結果により、本発明の有機電界発光素子の製造方法によれば、透明導電膜からなる陰極(対向電極)の成膜時にも有機発光層へのダメージが無いことが確認された。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、陽極(画素電極)と有機層と陰極(対向電極)を順次積層して構成される有機電界発光素子の製造方法であって、基板の上に陽極(画素電極)を形成する陽極(画素電極)形成工程と、該陽極(画素電極)の上に有機層を形成する有機層形成工程と、該有機層の上に透明導電膜の陰極(対向電極)を形成する陰極(対向電極)形成工程とからなる。前記陰極(対向電極)形成工程は、成膜の初期に低速の成膜速度で第1の陰極層を形成し、その後、通常の成膜速度で第2の陰極層を形成することで、下地の有機層に対するダメージを抑制することができる。また第1の陰極層と第2の陰極層の膜比率として、第1の陰極層の膜厚を第2の陰極層の膜厚より薄くするように選ぶことで、全体として量産レベルに適合する成膜速度を確保できる。
なお、本実施の形態では、基板の上に陽極(画素電極)を形成した後、当該陽極(画素電極)上に有機層を設け、その後、当該有機層の上に陰極(対向電極)を形成する形態を一例として示したが、陽極と陰極が逆であっても良い。つまり、基板の上に陰極(画素電極)を形成した後、当該陰極(画素電極)上に有機層を設け、その後、当該有機層の上に陽極(対向電極)を形成する形態でも良い。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、下層にダメージを与えることなく薄膜を形成する特徴を有し、有機電界発光素子の製造に利用できると共に、これに限られず、太陽電池等の用途にも適用できる。
1 基板
2 陽極(下部電極:画素電極)
3 有機層
4a 第1の陰極層
4b 第2の陰極層
4 陰極(対向電極)

Claims (8)

  1. 基板の上に画素電極を形成する画素電極形成工程と、
    前記画素電極の上に有機層を形成する有機層形成工程と、
    前記有機層の上に対向電極を形成する対向電極形成工程と、
    を含み、
    前記対向電極形成工程は、
    前記有機層側に第1の電極層を成膜する工程と、
    前記第1の電極層を成膜する工程の後に、前記第1の電極層の成膜速度よりも高速の成膜速度で第2の電極層を成膜する工程と、
    を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
  2. 前記第1の電極層を成膜する工程の成膜速度は、5nm/秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  3. 前記第1の電極層を成膜する工程の成膜雰囲気の酸素濃度は、前記第2の電極層を成膜する工程の成膜雰囲気の酸素濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  4. 前記第2の電極層を成膜する工程の成膜電力は、前記第1の電極層を成膜する工程の成膜電力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  5. 前記第1の電極層を成膜する工程と、
    前記第2の電極層を成膜する工程と、
    がともにマグネトロンスパッタ法による成膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  6. 前記第1の電極層を成膜する工程が対向式スパッタ法による成膜であって、
    前記第2の電極層を成膜する工程がマグネトロンスパッタ法による成膜である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  7. 前記第2の電極層を成膜する工程において、前記第2の電極層を前記第1の電極層の厚さより厚く成膜することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  8. 前記第1の電極層を成膜する工程において、前記第1の電極層を10nm以上の厚さに成膜することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
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