JP4423589B2 - スパッタ装置、スパッタ方法、有機el発光素子の製造装置および有機el発光素子の製造方法 - Google Patents

スパッタ装置、スパッタ方法、有機el発光素子の製造装置および有機el発光素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は有機EL発光素子に関するもので、特に有機EL発光素子の製造方法および装置に関する。
1987年にイーストマンコダック社のC.W.Tangにより2層積層構成のデバイスで高い効率の有機EL発光素子が発表されて以来、現在に至る間に様々な有機EL発光素子が開発されて一部実用化し始めている(非特許文献1)。こうした中、フルカラー有機EL発光素子パネルの実用化は、次世代の有機EL発光素子パネルとして開発が急がれている。
ボトムエミッション型有機EL発光素子において、カラー化の方法には、3色塗り分け法、色変換法(以下CCM法)、カラーフィルタ法などがある(非特許文献2)。この方式の中で、CCM法、カラーフィルタ法は、成膜時にメタルマスクを用いる必要が無く、色変換層やカラーフィルタはフォトプロセスで基板上に作製すればよいため、大面積、高精細化に関して有利である。
しかし、色変換法やカラーフィルタ法では一般的にアクティブマトリックス駆動ディスプレイを作製するのが難しい。その理由は、TFT基板と有機EL層の間に色変換層やフィルタ層が存在し、有機EL層とTFTの間を結線するためにコンタクトホールを作製する必要があるからである。色変換層やカラーフィルタは有機物で、しかもフォトプロセスでパターニングをするため、水分が多く含まれている。色変換法やカラーフィルタ法のカラーパネルは、これら水分が有機EL層に浸入しないようパッシベーション膜で保護している。しかし、TFTと有機EL層を結線させるためにコンタクトホールを作製するには、このパッシベーション層に穴を開ける必要があり、パッシベーション効果が期待できなくなる。
このような問題の解決策は、支持基板とは反対側に光を取り出すトップエミッション型でフルカラー化を実現することである(非特許文献2)。具体的には、TFT基板上にトップエミッション型有機EL発光素子を作製し、その上から、色変換基板あるいはカラーフィルタ基板を貼り合わせてカラーディスプレイを作製する。トップエミッション型有機EL発光素子と基板とを貼り合わせる工程は、前述のコンタクトホールの問題を回避でき、かつ工程的にも簡略されて量産性も向上できる。
一方、3色塗り分け法では、TFT基板に直接有機EL層を作製できるため、アクティブマトリックス駆動のパネルを作製するのは容易である。しかし、有機EL層のばらつきおよびTFTのばらつきを抑え、アクティブマトリックス駆動を安定的に動作させるためには、一つの画素に多くのTFTが必要である。TFT上には光を透過させることができないので、TFTの数が多くなるといわゆるボトムエミッション型有機EL発光素子では開口率が小さくなる。そこで、色変換法やカラーフィルタ法とは別の理由ではあるが、支持基板と反対側に光を取り出すトップエミッション型有機EL発光素子の開発が望まれている。
トップエミッション型有機EL発光素子は、例えば支持基板上に反射電極、その上に有機EL層、最後に透明電極が積層された構造を有する。したがって、有機発光層から出る光は、支持基板と反対の方向に取り出される。透明電極は一般的に、ITO、IZOまたはZnO等の透明半導体酸化物が用いられる。これらを積層するには、量産性および特性の面において優れたスパッタ法で作製することが望ましい。しかし、スパッタ法を用いて有機EL層上に透明電極を積層すると、有機EL層がダメージを受けてしまう。この有機EL層のダメージは、素子の効率劣化や電圧上昇等の動作上大きな問題になる。
C.W.Tang、S.A.VanSlyke,Appl.Phys.Lett.51、913(1987) 桜井 建弥、「色変換法によるフルカラー有機ELの技術開発状況と展望」、月刊ディスプレイ10月号、59頁(2002年)
従って、本発明は、有機層などの劣化しやすい層のダメージを最小限にして、上部(透明)電極をスパッタ法により形成するためのスパッタ装置、成膜方法、該装置を用いた有機EL発光素子の製造装置および有機EL発光素子の製造方法を提供する。
本発明の第1の実施態様であるスパッタ装置は、真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含むトップエミッション型有機EL発光素子の透明電極作製用スパッタ装置において、前記装置が有害物を基板に寄せ付けない手段を有し、前記手段が、a)基板ホルダーにバイアスを印加する手段、b)基板と電極の間に、遮蔽板を設け、この遮蔽板にバイアスを印加する手段、およびc)基板と電極の間に、基板と平行に磁界を印加する手段から選択される1つまたは複数の手段を含むことを特徴とするスパッタ装置である。
本発明の第2の実施態様であるスパッタ方法は、真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含むトップエミッション型有機EL発光素子の透明電極作製用スパッタ装置を用いて前記基板に膜を形成する方法であって、a)基板ホルダーにバイアスを印加すること、b)基板と電極の間に、遮蔽板を設け、この遮蔽板にバイアスを印加すること、およびc)基板と電極の間に、基板と平行に磁界を印加することから選択される1つまたは複数の有害物を基板に寄せ付けない方法を含むことを特徴とする方法である。
本発明の第3の実施態様であるトップエミッション型有機EL発光素子の製造装置は、少なくとも有機蒸着用チャンバーと、透明電極作製用スパッタ装置とを含むトップエミッション型有機EL発光素子の製造装置であって、前記透明電極作製用スパッタ装置が有害物を基板に寄せ付けない手段を有し、前記手段が、a)基板ホルダーにバイアスを印加する手段、b)基板と電極の間に、遮蔽板を設け、この遮蔽板にバイアスを印加する手段、およびc)基板と電極の間に、基板と平行に磁界を印加する手段から選択される1つまたは複数の手段を含むことを特徴とする製造装置である。
本発明の第4の実施態様であるトップエミッション型有機EL発光素子の製造方法は、支持基板上に少なくとも反射電極を積層する工程と、有機EL層を積層する工程と、透明電極を積層する工程とを含むトップエミッション型有機EL発光素子の製造方法において、前記透明電極を積層する工程が、真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含むスパッタ装置を用いて、基板上に膜を形成する工程であり、この工程中に、a)基板ホルダーにバイアスを印加すること、b)基板と電極の間に、遮蔽板を設け、この遮蔽板にバイアスを印加すること、およびc)基板と電極の間に、基板と平行に磁界を印加することから選択される1つまたは複数の有害物を基板に寄せ付けない方法を適用しながら成膜すること特徴とする製造方法である。
本発明の装置または方法を用いることにより、トップエミッション型有機EL発光素子の透明電極をスパッタ法により積層する際に、有機EL層まで積層された基板への酸素イオンの衝突を低減させ、有機EL層に与えるダメージを最小限にすることができる。また、ボトムエミッション型と同等の特性を有する有機EL発光素子の作製を可能にする。
本発明は、スパッタ法により基板にターゲットを積層する際に、基板へのダメージを最小限にする方法およびスパッタ装置に関する。
スパッタにより、基板表面にダメージを与える有害物として考えられるものは、(1)ガス中またはターゲットから叩き出されて積層する表面に衝突する酸素イオン、(2)積層する表面に衝突するスパッタの際に用いるAr等のイオン、(3)プラズマ中から発生する紫外線の影響、(4)積層する表面に衝突するスパッタされたターゲット粒子、(5)酸素ラジカル等である。また(6)スパッタ時の温度上昇等もスパッタによるダメージの要因となる。
図1には、透明電極を作製する前の有機EL層にArプラズマ、および酸素プラズマを照射した後、陰極としてAlを蒸着した際の有機EL発光素子の特性を示している。図1に示されるように、有機EL発光素子の輝度の劣化は、Arイオンの照射の場合よりも酸素イオンの照射の場合の方が著しい。このことから、有機EL層の劣化には酸素イオンが大きく影響していることが予想できる。
さらに、透明電極を作製する場合に、対向スパッタ等を用いて直接スパッタされた粒子が基板に衝突しない方法や、スパッタガス圧を高くしてスパッタ粒子の運動エネルギーを小さくした場合においても、素子が劣化することが実験により確かめられている。したがって、基板に到達する高エネルギー粒子の衝突を緩和するだけでは有機EL層へのダメージを緩和させるのには十分ではない。
以上のように、スパッタの際の酸素イオンの基板への衝突は有機EL層に重大な影響を与えるため、本発明は、有機EL層に与えるダメージが大きい有害物である酸素イオンを基板に到達させずに、透明電極を有機EL層上へ堆積させる技術を提案する。
以下に、支持基板上に、少なくとも反射電極および有機層を積層した基板に、透明電極を積層するためのスパッタ装置より基板に透明電極を積層する際に、有害物である酸素イオンを基板に寄せ付けないように成膜する本発明のスパッタ装置の構造について詳細に説明する。
本発明のスパッタ装置の3つの具体的な実施形態を図2〜4に示す。図2〜4の3つの実施形態は、DCスパッタ用電源16およびRFスパッタ用電源25に接続されて、DCおよびRFが同時に印加可能な一対の電極17、電極17の陰極に設置されたターゲット18、基板ホルダー19、および基板ホルダー19に設置された基板21は共通している。また、それぞれの実施形態は、図示されていないが、これらの装置は真空ポンプを備えた真空槽に囲まれている。電極17間に電圧をかけ、真空ポンプにより排気していくと、一定の真空度でグロー放電が起こり、陽イオンが電界によって加速され、陰極にぶつかり、その運動エネルギーによって陰極にあるターゲットを叩き出す。叩き出され、飛び出したターゲットが基板に付着し、膜を形成する。この場合に、基板には、ターゲットのみならず、材料から生じるか、またはガスとして存在する酸素イオンも衝突する。この酸素イオンの衝突は、トップエミッション型有機EL発光素子の透明電極をスパッタ法により積層する場合には、透明電極を成膜する前の有機EL層にダメージを与えてしまう。これを回避するための装置が、以下の図2〜4の実施形態である。
図2に示される実施形態は、基板ホルダー19にバイアス用電源20が接続されている点に特徴を有する。基板ホルダー19に接続したバイアス用電源20により、基板ホルダー19にマイナスのバイアスを印加することができる。したがって、基板ホルダーは導電性のものである必要があり、具体的にはSUS(Steel Use Stainless)またはアルミ板に導電性金属をメッキ等で付着させたものが考えられる。好ましくはSUSである。バイアス用電源20により、基板ホルダー19にマイナスのバイアスを印加すると、スパッタ時に、ターゲット材料と共に基板表面に衝突してくる酸素イオンなどのマイナスイオンは、基板ホルダー19に設置された基板21に到達することができなくなる。これにより、酸素イオンの衝突により基板21の表面が受けるダメージを抑えることができる。図2は基板ホルダー19にマイナスのバイアスをかけているが、基板21に直接マイナスのバイアスをかけることも可能である。しかし、有機EL発光素子の製造に用いる場合は、絶縁性支持基板上(ガラスまたはプラスチック)に成膜されて直接基板にバイアスをかけられないことがあるため、そのような場合は、図2のように基板ホルダー19にバイアスを印加するのが有効である。
図3に示される実施形態は、基板21と電極17との間に、基板21と平行に遮蔽板22を設置している点に特徴を有する。基板21と電極17との間に設置された遮蔽板22にバイアス用電源を接続することにより、バイアスを印加することができる。こうすることにより、スパッタ時に、ターゲット材料と共に基板表面に衝突してくる酸素イオンなどのマイナスイオンが、マイナスのバイアスをかけられた遮蔽板22を通過せず、酸素イオンの基板表面への衝突を防ぐことができ、酸素イオンの衝突による基板表面が受けるダメージを抑えることができる。図3に示される実施形態において用いられる遮蔽板22は、穴が開いている導電性の板であり、具体的にはSUSまたはアルミ板に導電性金属をメッキ等で付着させたものが考えられる。好ましくはSUSである。遮蔽板は、基板ホルダーより大きく、直径0.1mm〜10mm、好ましくは0.1mm〜2mmの穴が、1または複数個開いている。穴の個数は、ターゲット粒子がその穴を通って基板21に到達し、積層可能な程度の個数であり、遮蔽板の面積に応じて適宜変更する。遮蔽板に開けられた穴は、中性の粒子は貫通できるが、酸素イオン等のマイナスイオンは通ることができない。この遮蔽板は、電極17と基板21の間に、基板21から0.5cm〜20cm、好ましくは1cm〜10cmの位置に、基板21と平行に設置される。
図4に示される実施形態は、基板21と電極17との間に一対の磁石23を設置している点に特徴を有する。基板21と電極17との間に設置された一対の磁石23により、基板21と電極17との間に、磁界24を発生させることができる。図4に示されるように、この磁界24は、電極17と基板21の間に、基板21から0.5cm〜20cm、好ましくは1cm〜10cmの位置に、基板21と平行に印加される。ターゲット材料と共に基板表面に衝突してくる酸素イオンの経路を曲げ、酸素イオンの基板表面への衝突を防ぐことができ、酸素イオンの衝突による基板表面が受けるダメージを抑えることができる。
さらにこれらの装置は、通常の平行平板のスパッタ装置に限らず、基板をオフアクシスに設置した対向スパッタ等にも適用可能である。
各々の実施形態は、組み合わされてもよい。すなわち、基板ホルダー、基板または遮蔽板へバイアスを印加する手段と、基板と平行な磁力を印加する手段とは、単独で設置される場合に制限されることなく、同時に設置されてもよい。
次に、上記スパッタ装置を用いて、以下に、支持基板上に、少なくとも反射電極および有機層を積層した基板に、透明電極を積層するためのスパッタ装置より基板に透明電極を積層する際に、有害物である酸素イオンなどのマイナスイオンを基板に寄せ付けない方法について図2〜4を用いて詳細に説明する。
まず、図2〜4の方法における共通の操作を説明する。基板ホルダー19に、成膜する基板21をセットし、電極17の陰極側にターゲットをセットする。スパッタ装置内に、Kr、Xe、好ましくはAr、Ar+Oなどのガスを導入させる。Ar+Oを用いる場合には、例えばAr:O=9:1の混合ガスを用いることができる。スパッタ時の基板温度は、室温〜100℃、好ましくは室温に設定する。これらの条件は、一般的な条件に過ぎず、実際は、用いるターゲット材料または装置等により異なるため、場合に応じて適宜変更する。次に、DCスパッタ用電源16および/またはRFスパッタ用電源25により、電極17間に電圧を1W〜5kW、好ましくは10W〜1000W印加し、真空ポンプにより、スパッタ装置内を0.01Pa〜10Pa、好ましくは0.05Pa〜2Paにする。するとグロー放電が起こり、陽イオンが電界によって加速され、陰極にぶつかり、その運動エネルギーによって陰極にあるターゲットを叩き出す。叩き出され、飛び出したターゲットが基板に付着し、膜を形成する。この場合に、基板には、ターゲットのみならず、材料から生じるか、またはガスとして存在する酸素から発生した酸素イオンも基板に衝突する。この酸素イオンの衝突は、トップエミッション型有機EL発光素子の透明電極をスパッタ法により積層する場合に、透明電極を成膜する前の有機EL層にダメージを与えてしまう。これを回避する方法が、以下の図2〜4の実施形態を用いた方法である。次に、図2〜4の実施形態によって、有害物である酸素イオンを基板に寄せ付けない方法について説明する。
図2に示されるスパッタ装置を用いる方法の場合は、基板ホルダー19にバイアス用電源20を接続して、前述のスパッタの間に、基板ホルダー19にマイナスのバイアスを印加する。スパッタの間に、基板ホルダー19にマイナスのバイアスを印加すると、スパッタ時に、ターゲット材料と共に基板表面に衝突してくる酸素イオンは、基板ホルダー19に設置された基板表面には酸素イオンなどのマイナスイオンが到達することができないため、酸素イオンの衝突により基板表面が受けるダメージを抑えることができる。図2は基板ホルダー19にマイナスのバイアスをかけているが、基板21に直接マイナスのバイアスをかけることも可能である。しかし、有機EL発光素子の透明電極の積層に用いる場合は、有機EL発光素子が絶縁性基板上(ガラスまたはプラスチック)に積層されていることが多いので、バイアスを直接基板にかけられない場合がある。そのような場合には、図2のように基板ホルダーにバイアスを印加するのが有効である。印加するバイアスは、0V〜−600V(0Vを除く)、好ましくは0V〜−400V(0Vを除く)、さらに好ましくは−200V〜−300V、最も好ましくは−300Vである。スパッタ時に酸素イオンに印加される電圧(Vdc)と同じ程度〜強い程度(約2〜3倍まで)の、反対のバイアスを印加するのが有効であるからである。−600Vを下回るバイアスは、透明電極の積層に支障をきたし、好ましくない。
図3に示されるスパッタ装置を用いる方法の場合は、基板21と電極17との間の遮蔽板22にバイアス用電源20を接続して、前述のスパッタの間に、遮蔽板22にバイアスを印加する。こうすることにより、スパッタ時に、ターゲット材料と共に基板表面に衝突してくる酸素イオンなどのマイナスイオンは、マイナスのバイアスをかけられた遮蔽板22を通過せず、酸素イオンの基板21への到達を防ぐことができ、酸素イオンの衝突による有機EL層表面のダメージを抑えることができる。遮蔽板22は、穴が開いている導電性の板であり、具体的にはSUSまたはアルミ板に導電性金属をメッキ等で付着させたものが考えられる。好ましくはSUSである。遮蔽板は、基板ホルダーより大きく、直径0.1mm〜10mm、好ましくは0.1mm〜2mmの穴が、1または複数個開いている。穴の個数は、ターゲット粒子がその穴を通って基板に到達し、積層可能な程度の個数であり、遮蔽板の面積に応じて適宜変更する。この穴は、中性の粒子は貫通できるが、酸素イオン等のマイナスイオンは通ることができない。この遮蔽板22と基板21との距離は、0.5cm〜20cm、好ましくは1cm〜10cmである。遮蔽板22に印加するバイアスは、前述の基板ホルダー19に印加するバイアスと同様の理由により、0V〜−600V(0Vを除く)、好ましくは0V〜−400V(0Vを除く)、さらに好ましくは−200V〜−300V、最も好ましくは−300Vである。
図4に示されるスパッタ装置を用いる方法の場合は、基板21と電極17との間に一対の磁石23を設置することにより、前述のスパッタの間に、基板21と電極17との間に磁界24を発生させる。こうすることにより、酸素イオンが基板21に衝突する際の経路を曲げ、酸素イオンが磁界24を通過せず、酸素イオンの基板21への到達を防ぐことができる。その結果、スパッタ法により有機EL発光素子の透明電極を作製する場合に、酸素イオンの衝突による透明電極作製前の有機EL層表面のダメージを抑えることができる。磁場の磁束密度は、大きいほど酸素イオンが基板に衝突する際の経路を大きく曲げることが可能である。したがって、磁束密度は、0Tより大きく0.5T(出願時で印加可能な最大磁束密度)以下、好ましくは0.5Tである。この磁界24と基板21との距離は、0.5cm〜20cm、好ましくは1cm〜10cmである。
これらのスパッタ法は、透明電極の厚さが50nm〜1000nm、好ましくは100nm〜500nmになるまで積層する。
これらの方法は、組み合わされて用いられてもよい。すなわち、基板ホルダー、基板または遮蔽板へのバイアスの印加と、基板と平行な磁力の印加とは、単独で用いる場合に制限されることなく、同時に印加することも可能である。
本発明のスパッタ装置および方法は、有機EL発光素子の透明電極をスパッタ法により成膜する際に用いることにより、透明電極を作製する際に、ターゲット材料と共に生じる酸素イオンの有機EL層への衝突を回避し、有機EL層が受けるダメージを抑えることができる。したがって、本発明のスパッタ装置を、有機EL発光素子の製造装置に、透明電極用スパッタ装置として組み込むことができる。
次に本発明のスパッタ装置を透明電極用スパッタ装置として組み込んだ有機EL発光素子の製造装置について説明する。
本発明の有機EL発光素子の製造装置の一の実施形態を図5に示す。図5の製造装置には、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10、有機蒸着用チャンバー12、金属蒸着用チャンバー13、および透明電極用スパッタ装置14が設置されている。本発明の有機EL発光素子の製造装置という場合は、少なくとも有機蒸着用チャンバー12および透明電極用スパッタ装置14を備えており、好ましくは酸素プラズマ+ロード/アンロード室10および金属蒸着用チャンバー13を備えている。この他にも、さらに任意の処理室が設置されてもよい。各処理室は真空槽であり、図示されていないが、各処理室には真空ポンプが取り付けられ、各処理室を独立して真空排気することが可能となっている。各処理室の互いに隣接する処理室(容器)の間には、それぞれゲートバルブ11が取り付けられて連結しており、基板21はその中をマグネティックフィードスロー15によって移動し、これにより、製造途中の基板表面を大気中の水分や酸素に暴露することなく、真空状態を維持したまま搬送することができ、表面を清浄に保つことが可能になる。
次に本発明の有機EL発光素子の製造装置の各部分について説明する。
酸素プラズマ+ロード/アンロード室10は、反射電極まで積層された基板を導入する搬入口である。この処理室には酸素プラズマ処理を行うことができる装置が設置されており、搬入した基板に酸素プラズマ処理を行うことにより、基板の表面を表面改質することができる。図5ではロード/アンロード室と酸素プラズマ処理室は1つの処理室に記載されているが、別個の処理室であってもよい。また、図5では、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10が、搬入口として金属蒸着用チャンバー13の前と、搬出口として透明電極用スパッタ装置14の後ろに2つ設置されているが、この配置は適宜変更することができる。例えば、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10を1つ設置した構造にし、そこから基板を出し入れすることも可能である。
次に、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10とゲートバルブ11によって連結された処理室は、有機蒸着用チャンバー12である。この有機蒸着用チャンバー12は、有機EL層を作製するためのチャンバーである。図5の装置では、有機蒸着用チャンバー12は、単一処理室としているが、複数の処理室としてもよい。この装置の中には、有機EL層の各層の材料が充填された坩堝、およびそれを加熱する手段等の従来の真空蒸着装置が設置されている。
次に、有機蒸着用チャンバー12とゲートバルブ11によって連結された処理室は、金属蒸着用チャンバー13である。この金属蒸着用チャンバー13は、透明電極を、電子注入性の金属等の極薄膜(10nm以下)との複数構造とする場合に、真空蒸着により極薄膜を作製するためのチャンバーである。この装置の中には、極薄膜の材料が充填された坩堝、およびそれを加熱する手段等の従来の真空蒸着装置が設置されている。
次に、金属蒸着用チャンバー13とゲートバルブ11によって連結されているのが、透明電極用スパッタ装置14である。このスパッタ装置14は、前述の本発明のスパッタ装置であり、スパッタ法により透明電極を積層するチャンバーである。スパッタ装置14には、図2〜4のような本発明の実施形態が用いられ、前述のようなスパッタ方法で透明電極を積層する。これにより、透明電極が形成される前の有機EL層に、ターゲット材料と共に酸素イオンが衝突した場合の有機EL層の表面のダメージを回避することができる。スパッタ装置14には酸素プラズマ+ロード/アンロード室10が取り付けられており、スパッタ装置14で透明電極を作製することにより完成した有機EL発光素子を矢印の方に搬出することができる。
これらの装置は以下のように稼働させることができる。まず、反射電極まで積層された基板を酸素プラズマ+ロード/アンロード室10から搬入し、酸素プラズマ処理により表面改質を行う。次に基板を有機蒸着用チャンバー12に移動し、有機EL層を積層後、金属蒸着用チャンバー13に移動させ、超薄膜を積層する。その後、基板を透明電極用スパッタ装置14に移動させ、透明電極を積層し、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10から搬出する。
次に、前述の有機EL発光素子の製造装置を用いた有機EL発光素子の製造方法について説明する。
本発明の有機EL発光素子の製造方法は、少なくとも支持基板上に反射電極を積層する工程と、反射電極上に有機EL層を形成する工程と、有機EL層上に透明電極を形成する工程とを含む。以下に各工程について前述の本発明の装置(図5)に基づいて説明する。
第1の工程は、支持基板上に反射電極を積層する工程である。
蒸着、スパッタ、CVD、イオンプレーティングまたはレーザアブレーションなどの当該技術において知られている方法を用いて支持基板上に積層することができる。本明細書においては、支持基板とは、何も積層されていない、有機EL発光素子の基礎となる基板を指し、基板とは、支持基板上に電極、有機EL層等が積層されたものの全体を指す。次に積層された反射電極のパターニングを行う。パターニングの方法は、フォトリソグラフィーなどの従来の方法により行うことができる。反射電極の厚さは、20nm以上、好ましくは70〜150nmの厚さを有する。
反射電極として透明導電性酸化物を用いる場合などには、Al、Ag、Mo、Wなどの金属またはそれらの合金、NiP、NiB、CrP、CrBなどのアモルファス金属または合金、あるいはNiAlなどの微結晶性合金などの反射性金属層との積層構造にすることにより、有機発光層の発光を透明電極に向かって反射させることが必要である。反射性金属層は、蒸着、スパッタ、CVD、イオンプレーティングまたはレーザアブレーションなどの当該技術において知られている方法を用いて積層され、反射性金属層の厚さは、10nm〜1000nm、好ましくは100nm〜500nmの厚さを有する。必要に応じて、透明導電性金属酸化物の表面を、UV、プラズマ等を用いて処理して、有機EL層に対する正孔注入性を向上させてもよい。
第2の工程は、反射電極上に有機EL層を形成する工程である。この工程から本発明の有機EL発光素子製造装置(図5)を用いることができる。
まず反射電極を積層した基板を酸素プラズマ+ロード/アンロード室10に搬入する。酸素プラズマ+ロード/アンロード室10内を、付属の真空ポンプにより減圧後、酸素プラズマ処理により表面改質を行う。
次に反射電極を積層した基板を有機蒸着用チャンバーに移動させ、有機EL層を、真空蒸着により通常の厚さまで形成する。有機EL層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および/または電子注入層などからなるがこれらに制限されない。
第3の工程は、有機EL層上に透明電極を形成する工程である。
支持基板上に、前記工程により反射電極と有機EL層を積層した基板21を、スパッタ装置14まで移動させ、スパッタ法により透明電極を作製する。スパッタ装置14には、図2〜4のような本発明の実施形態が用いられ、前述のようなスパッタ方法で透明電極を積層する。これにより、透明電極が形成される前の有機EL層に、ターゲット材料と共に酸素イオンが衝突した場合の有機EL層の表面のダメージを回避することができる。
また、透明電極を、電子注入性の金属等の極薄膜(10nm以下)との複数構造としてもよい。この場合には、前記工程により有機EL層まで積層した基板を、スパッタ装置14で透明電極を積層する前に、金属蒸着用チャンバー13に移動し、真空蒸着により10nm以下の極薄膜を作製する工程が必要となる。
この工程によって透明電極が作製され、有機EL発光素子が完成する。完成した有機EL発光素子は、マグネティックフィードスロー15により、スパッタ装置14から酸素プラズマ+ロード/アンロード室10に移動後、製造装置から搬出される。
次に、本発明の有機EL発光素子の製造方法および製造装置により作製される有機EL発光素子の一般的な構造について説明する。
本発明により作製されるトップエミッション型有機EL発光素子の一例を図6に示す。図6の有機EL発光素子は、支持基板1上に、反射電極2と、有機EL層3と、透明電極4とが積層されている。したがって、有機発光層から出る光は、支持基板と反対の、矢印の方向に取り出される。以下各層について説明する。
本発明に用いられる支持基板1は、積層される層の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐えることができ、かつ寸法安定性に優れているものが好ましい。好ましい支持基板1は、ガラス、プラスチックまたはセラミックなどからなる絶縁性基板、半導電性や金属等の導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板、またはポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムなどを用いることができる。
反射電極2は、有機EL層3の発光を透明電極側に反射する働きをし、それぞれ有機EL層に対して正孔または電子を注入する陽極または陰極のいずれかとして用いられる。
反射電極を陽極として用いる場合、正孔注入性を向上するために仕事関数の大きい材料により反射電極を形成する。適当な材料は、ITOまたはIZOのような透明導電性酸化物を含む。透明導電性酸化物を反射電極に用いる場合には、Al、Ag、Mo、Wなどの金属またはそれらの合金、NiP、NiB、CrP、CrBなどのアモルファス金属または合金、あるいはNiAlなどの微結晶性合金などの反射性金属層との積層構造にすることにより、有機EL層の発光を透明電極に向かって反射させることが必要である。必要に応じて、透明導電性金属酸化物の表面を、UV、プラズマ等を用いて処理して、有機EL層に対する正孔注入性を向上させてもよい。
反射電極を陰極として用いる場合、電子注入性を付与するために仕事関数が小さい材料により反射電極を形成する。適当な材料は、Li、Na等のアルカリ金属、K、Ca、Mg、Sr等のアルカリ土類金属、これらのフッ化物、またはAlのような電子注入性金属またはそれらの合金が望ましい。良好な成膜性および低い抵抗率を達成するためには、アルミニウム合金(特にアルカリ金属、アルカリ土類金属との合金など)、AgMg合金などを用いることが好ましい。この場合にも前述の反射性金属層との積層構造としてもよい。
反射電極は、蒸着、スパッタ、CVD、イオンプレーティングまたはレーザアブレーションなどの当該技術において知られている方法を用いて形成することができる。反射電極の厚さは、20nm以上、好ましくは70〜150nmの厚さを有する。
有機EL層3は、正孔および電子の注入を受けて、近紫外から可視領域の光、好ましくは青色から青緑色領域の光を発する層である。白色光を発する有機EL層3を用いてもよい。
有機EL層3は、少なくとも有機発光層7を含み、必要に応じて、正孔注入層5、正孔輸送層6、電子輸送層8および/または電子注入層9を介在させた構造を有する。具体的には、下記のような層構成からなるものが採用される。
(1)有機発光層7
(2)正孔注入層5/有機発光層7
(3)有機発光層7/電子注入層9
(4)正孔注入層5/有機発光層7/電子注入層9
(5)正孔注入層5/正孔輸送層6/有機発光層7/電子注入層9
(6)正孔注入層5/正孔輸送層6/有機発光層7/電子輸送層8/電子注入層9
(上記において、陽極は有機発光層7または正孔注入層5に接続され、陰極は有機発光層7または電子注入層9に接続される)
上記各層の材料としては、公知のものが使用される。青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層7中に、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。あるいはまた、ホスト化合物にドーパントを添加することによって、白色光を含む種々の波長域の光を発する有機発光層7を形成してもよい。ホスト化合物としては、ジスチリルアリーレン系化合物、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)等を用いることができる。ドーパントとしては、ペリレン(青紫色)、クマリン6(青色)、キナクリドン系化合物(青緑色〜緑色)、ルブレン(黄色)、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM、赤色)、白金オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP、赤色)などを用いることができる。
電子注入層9の材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらを含む合金、アルカリ金属フッ化物などの電子注入性材料の薄膜(膜厚10nm以下)としてもよい。あるいはまた、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属をドープしたアルミニウムのキノリノール錯体を用いてもよい。
電子輸送層8の材料としては、2−(4−ビフェニル)−5−(p−tブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、アルミニウムのキノリノール錯体(たとえばAlq)などを用いることができる。
正孔輸送層6の材料としては、TPD、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(α−NPD)、4,4’,4”−トリス(N−3−トリル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などのトリアリールアミン系材料を含む公知の材料を用いることができる。
正孔注入層5の材料としては、フタロシアニン類(銅フタロシアニンなど)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。
透明電極4は、前述の反射電極2が陽極である場合には、陰極となり、前述の反射電極2が陰極である場合には、陽極となる。
透明電極4を陰極として用いる場合、その材料は、電子を効率よく注入するために仕事関数が小さいことが求められる。さらに、有機EL層3の発する光の波長域において透明であることが必要とされる。これら2つの特性を両立するためには、透明電極4を複数層からなる積層構造とすることが好ましい。なぜなら、仕事関数の小さい材料は、一般的に透明性が低いからである。すなわち、有機EL層3と接触する部位に、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物の超薄膜(10nm以下)を用いる。これらの仕事関数の小さい材料を用いることにより効率の良い電子注入性を可能とし、さらに超薄膜とすることによりこれらの材料による透明性低下を最低限とすることが可能となる。該極薄膜の上には、ITOまたはIZOなどの透明導電膜を形成する。これらの導電膜は補助電極として機能し、透明電極全体の抵抗値を減少させ有機EL層3に対して十分な電流を供給することを可能にする。
透明電極4を陽極として用いる場合、正孔注入効率を高めるために仕事関数の大きな材料を用いる必要がある。また、有機EL層3からの発光が、透明電極4を通過するために透明性の高い材料を用いる必要がある。したがって、この場合には、ITOまたはIZOのような透明導電性材料を用いることが好ましい。
透明電極4は、本発明の方法または装置により、スパッタ法によって積層される。透明電極4は、波長400〜800nmの光に対して好ましくは50%以上、より好ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。また、発光効率を向上させるためには、透明電極は十分に低い抵抗率を与えるような厚さ、好ましくは30nm以上、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
次に、反射電極および透明電極の形状について説明する。有機EL発光素子の駆動方法にはパッシブ型とアクティブ型の2種類が存在し、どちらの駆動方法を選択するかにより電極の形状が異なるが、トップエミッション型有機EL素子の場合はアクティブ型が用いられる。アクティブ型の場合は、基板上に、発光部に1対1に対応させたスイッチング素子(TFTなど)を形成して、該スイッチング素子を複数の部分電極から構成される反射電極と1対1に対応させて接続し、有機EL層3上に一体として形成された透明電極4と組み合わせた構造とする。
以上の有機EL層3に、カラーフィルタ層ないし色変換層をさらに設けて、所望の色相の光を発する有機EL発光素子を形成してもよい。カラーフィルタ層とは、有機発光層7からの発光のうち、特定波長域の光のみを透過させる層である。色変換フィルタとは、有機EL層3からの発光の特定波長域の成分を吸収し別の波長域の光を放出する、いわゆる波長分布変換を行う層である。たとえば、青色〜青緑色の成分を吸収して、赤色光を放射する赤色変換層を設けてもよい。色変換層とカラーフィルタ層を組み合わせて用いて、放出される光の色純度を向上させてもよい。さらに、独立して制御される複数の発光部を有する有機EL発光素子を用いる場合、複数種のカラーフィルタ層ないし色変換層を組み合わせて、多色表示ディスプレイを形成することが可能である。色変換層およびカラーフィルタ層は、当該技術において知られている任意の材料から形成することが可能である。
カラーフィルタ層ないし色変換層は、透明電極4上に積層されるか、または別基板上で形成された後、有機EL発光素子に貼り合わせられる。
次に、以上に説明した本発明の有機EL発光素子の製造装置および製造方法を、実施例によってより具体的に説明する。それらは本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
図5の有機EL発光素子製造装置を用いて有機EL発光素子を作製し、本発明の有機EL発光素子製造装置および方法が輝度の電流効率に与える効果を試験した。
5cm×5cmの寸法を有するガラス支持基板上に、反射金属としてAlを、蒸着によって100nm成膜し、その上に反射電極として、ITOをスパッタ法により100nm成膜した。その後この基板を研磨し、フォトリソグラフィを用いてパターニングを行った。ITOとAlのエッチャントには王水を用いた。
反射電極が形成された基板を、洗浄後、酸素プラズマ+ロード/アンロード室10から図5の有機EL発光素子製造装置に搬入した。酸素プラズマ+ロード/アンロード室10に付属される酸素プラズマ装置により、反射電極が形成された基板をAr/O=1:1雰囲気下で100W、5分間表面改質した。次にこの基板を有機蒸着用チャンバーに搬入し、有機EL層の蒸着を開始した。正孔輸送層として、α―NPDを0.5nm/sで40nm堆積させ、その次に、有機発光層としてAlqを0.5nm/sで60nm堆積させた。蒸着時の圧力は5×10−5Paとし、室温で成膜を実施した。次に、有機EL層まで積層された基板をスパッタ装置14に移動させ、スパッタ法により透明電極としてIZOを積層した。スパッタ装置は、図2に示されるような基板ホルダーにバイアスを印加する実施形態のスパッタ装置と、図4に示されるような基板と電極17との間に一対の磁石23を設置することにより、基板と電極17との間に、基板と平行に磁界24を発生させる実施形態のスパッタ装置を用いた。基板ホルダーにバイアスを印加する実施形態の場合には、比較例として、バイアスが0Vの場合と、実施例1としてバイアスが−200Vの場合とを行った。基板と電極17との間に磁界24を発生させる実施形態の場合には、実施例2として磁束密度を0.3T印加した。その他のスパッタ条件は、ガスの種類がAr、ガス圧が、0.5Pa〜1Pa、電力量が、DC100WまたはDC100WおよびRF50W、および基板温度が室温であった。以上の条件で、IZOを20nm/分で75nm積層した。
上記製造工程により比較例1、実施例1および2の有機EL発光素子を作製した。これらの輝度の電流効率を通常の電流−電圧−輝度により測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004423589
表1に示されるように、基板ホルダーにバイアスを−200V印加した実施例1および基板と電極の間に磁力を0.3T印加した有機EL発光素子は、2.7〜2.8cd/Aという高い電流効率を示した一方で、バイアスおよび磁力の印加を行わなかった比較例は、電流効率が2.0cd/Aという低い電流効率であった。この結果は、DCおよびRFを同時に印加しても同様であった。これは、本発明の装置を用いることで、酸素イオンが直接基板に到達できなくなり、有機EL層に与えられるダメージが低減し、トップエミッション型有機EL発光素子の電流効率が向上したものと考えられる。
また、陰極がAlであること以外はトップエミッション型有機EL発光素子と同一の構成のボトムエミッション型有機EL発光素子の電流効率は、2.8cd/Aであった。したがって、本発明により作製されたトップエミッション型有機EL発光素子は、ボトムエミッション型有機EL発光素子と同等の電流効率を有する。
本発明により、有機EL層まで積層された基板への酸素イオンの衝突を低減させることができ、有機EL層に与えるダメージを最小限にすることができた。従来、スパッタによりトップエミッション型用の透明電極を作製する場合には、ボトムエミッション型に比べて特性が低下していたが、本発明により、ボトムエミッション型と特性が同等な有機EL発光素子の作製が可能になった。
酸素プラズマまたはArプラズマを照射後、Alを蒸着した有機EL発光素子の輝度と電圧との関係を示した図である。 基板ホルダーにバイアスを印加する場合の本発明のスパッタ装置の構成を概略的に示した図である。 遮蔽板にバイアスを印加する場合の本発明のスパッタ装置の構成を概略的に示した図である。 基板と平行に磁力を印加する場合の本発明のスパッタ装置の構成を概略的に示した図である。 本発明の有機EL発光素子の製造装置の一の実施形態を示す模式図である。 トップエミッション型有機EL発光素子の構造を示す断面模式図である。
符号の説明
1 支持基板
2 反射電極
3 有機EL層
4 透明電極
5 正孔注入層
6 正孔輸送層
7 有機発光層
8 電子輸送層
9 電子注入層
10 酸素プラズマ+ロード/アンロード室
11 ゲートバルブ
12 有機蒸着用チャンバー
13 金属蒸着用チャンバー
14 スパッタ装置
15 マグネティックフィードスロー
16 DCスパッタ用電源
17 電極
18 ターゲット
19 基板ホルダー
20 バイアス用電源
21 基板
22 遮蔽板
23 磁石
24 磁界
25 RFスパッタ用電源

Claims (13)

  1. 真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含み、前記基板上に、反射電極、有機EL層、及び透明電極をこの順に積層したトップエミッション型有機EL発光素子の透明電極作製用スパッタ装置において、前記装置が有害物を基板に寄せ付けない手段を有し、前記手段が、
    基板ホルダーにマイナスのバイアスを印加する手段を含み、前記バイアスの印加が、スパッタ時に酸素イオンに印加される電圧の2〜3倍の反対のバイアスの印加であることを特徴とするスパッタ装置。
  2. 前記有害物が酸素イオンであることを特徴とする請求項1に記載のスパッタ装置。
  3. 印加するバイアスが、0V〜−600V(0Vを除く)であることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタ装置。
  4. 真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含み、前記基板上に、反射電極、有機EL層、及び透明電極をこの順に積層したトップエミッション型有機EL発光素子の透明電極作製用スパッタ装置を用いて前記基板に透明電極を形成する方法であって、
    基板ホルダーにマイナスのバイアスを印加する有害物を基板に寄せ付けない方法を含み、前記バイアスの印加が、スパッタ時に酸素イオンに印加される電圧の2〜3倍の反対のバイアスの印加であることを特徴とする方法。
  5. 前記有害物が酸素イオンであることを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 印加するバイアスが、0V〜−600V(0Vを除く)であることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
  7. 少なくとも有機蒸着用チャンバーと、透明電極作製用スパッタ装置とを含み、前記基板上に、反射電極、有機EL層、及び透明電極をこの順に積層したトップエミッション型有機EL発光素子の製造装置であって、前記透明電極作製用スパッタ装置が有害物を基板に寄せ付けない手段を有し、前記手段が、
    基板ホルダーにマイナスのバイアスを印加する手段を含み、前記バイアスの印加が、スパッタ時に酸素イオンに印加される電圧の2〜3倍の反対のバイアスの印加であることを特徴とする製造装置。
  8. 前記有害物が酸素イオンであることを特徴とする請求項に記載の製造装置。
  9. 印加するバイアスが、0V〜−600V(0Vを除く)であることを特徴とする請求項7または8に記載の製造装置。
  10. 有機蒸着用チャンバーと透明電極作製用スパッタ装置が、真空を維持しながら基板を搬送することができるように連結されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造装置。
  11. 支持基板上に少なくとも反射電極を積層する工程と、有機EL層を積層する工程と、透明電極を積層する工程とを含み、前記基板上に、反射電極、有機EL層、及び透明電極をこの順に積層したトップエミッション型有機EL発光素子の製造方法において、前記透明電極を積層する工程が、真空槽中に、少なくとも電極、ターゲット、基板および基板を保持する基板ホルダーを含むスパッタ装置を用いて、基板上に膜を形成する工程であり、この工程中に、
    基板ホルダーにマイナスのバイアスを印加する有害物を基板に寄せ付けない方法を適用しながら成膜し前記バイアスの印加が、スパッタ時に酸素イオンに印加される電圧の2〜3倍の反対のバイアスの印加であること特徴とする製造方法。
  12. 前記有害物が酸素イオンであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
  13. 印加するバイアスが、0V〜−600V(0Vを除く)であることを特徴とする請求項11または12に記載の製造方法。
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