JP2004011779A - 産業車両の走行制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アクセルペダルの踏込み量が小さい領域での減速操作性を向上できる産業車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】油圧式の前進及び後進クラッチを持った変速機と、ポンプからの油圧を増減して前進及び後進クラッチの係合状態をそれぞれ制御する前進用及び後進用比例電磁弁と、制動手段と、アクセルペダル操作量検出手段と、車速検出手段と、アクセルペダル操作量に応じた目標車速を設定し、実車速が目標車速となるように制動手段、前進用及び後進用比例電磁弁を制御する制御手段とを備えた産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、目標車速がゼロであるニュートラル領域に隣接する所定操作領域において目標車速を所定値に維持し、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域の場合に目標車速とは無関係に車速を徐々に減速させる第1の制動力特性に基づいて制動出力を前記制動手段に出力する構成とする。
【選択図】 図4
【解決手段】油圧式の前進及び後進クラッチを持った変速機と、ポンプからの油圧を増減して前進及び後進クラッチの係合状態をそれぞれ制御する前進用及び後進用比例電磁弁と、制動手段と、アクセルペダル操作量検出手段と、車速検出手段と、アクセルペダル操作量に応じた目標車速を設定し、実車速が目標車速となるように制動手段、前進用及び後進用比例電磁弁を制御する制御手段とを備えた産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、目標車速がゼロであるニュートラル領域に隣接する所定操作領域において目標車速を所定値に維持し、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域の場合に目標車速とは無関係に車速を徐々に減速させる第1の制動力特性に基づいて制動出力を前記制動手段に出力する構成とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォークリフト等の産業車両の走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォークリフト等の産業車両においては、エンジンの駆動力はトルクコンバータを介して変速機に伝達され、さらに、変速機内に収容された前進クラッチ及び後進クラッチのいずれかを経て駆動輪に伝達され走行可能なように構成されている。前進クラッチ及び後進クラッチは、インチングバルブ及び方向切換弁を経た圧油により入切操作される。
【0003】
上記産業車両において荷役作業を行う場合には、通常エンジンを最大出力にして作業を行う。このため、荷役作業を行いながら車両を微速で走行させる場合には、オペレータはインチングバルブをインチングペダルにより操作して、前記前進クラッチまたは後進クラッチを半クラッチ状態にして、エンジンの駆動力の伝達を減少させて所望の車速を得ている。また、アクセルを踏まない状態で走行レバーを前進または後進に入れると、エンジンのアイドル回転に応じた速度(クリープ速度)で車両が走行してしまうが、このクリープ速度以下で走行したい場合には、オペレータはインチングペダルを操作して半クラッチ状態にして所望の車速を得ている。
しかしながら、この半クラッチ状態を調節するインチングペダル操作は微妙な操作であり、特に荷役操作との複合操作を行うには熟練を要し、熟練者にとっても疲労しやすく作業効率が悪化してしまう。
【0004】
比例電磁弁によりクラッチ圧を制御することにより、上述したような微妙な操作を要するインチングペダル操作が不要となる走行制御装置が、例えば、特許登録第2811523号公報に記載されている。すなわち、荷役作業を行いながら車両を微速で走行させる場合には、アクセルペダルの操作量に基づく目標車速と車速センサが検出する実車速との差に応じた出力を比例電磁弁に出力して、前進クラッチ、後進クラッチ又は補助ブレーキを制御することにより、エンジンの回転数に関係なく車両が目標車速で走行するように制御している。これにより、インチングペダル操作という微妙な操作が不要となり、操作性の良い走行制御装置が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の技術においては、以下のような問題がある。
インチングペダルを廃止して比例電磁弁を用いた電子制御による走行制御装置であるので、アクセルペダルは速度指令設定器(目標車速の設定器)として機能することになる。すなわち、アクセルペダルを踏み込むことにより加速し、アクセルペダルを戻すことにより戻し具合に応じた制動が作動して減速するので、電気駆動式の産業車両と同様に、ブレーキペダルを使わずにアクセルペダルのみの操作で制動による減速が可能である。なお、ブレーキペダルは、より強い制動力を得たい場合(緊急停止時等)に操作される。
【0006】
このように、「アクセルペダル操作量=目標車速」となっているので、アクセルペダルから足を離すと、アクセルペダル操作量がゼロ、すなわち「目標車速=0」となるため、車両は減速して停止してしまう。このため、停止させずに減速させたい場合には、オペレータはアクセルペダルから完全に足を離すことはできない。高速を操作する領域では、アクセルペダルの操作量(踏込み量)が大きいため、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が小さく、操作が比較的容易である。これに対して、低速を操作する領域や、この低速よりも更に車速が遅い微速を操作する領域では、アクセルペダルの踏込み量が小さいため、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きくつま先を持ち上げた操作姿勢となるので、操作しにくく疲労しやすいという問題があった。特に、このアクセルペダルの踏込み量が小さい領域で減速する場合には、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きい状態にてアクセルペダルから足を離す方向で車速を制御する必要があるため、操作し辛かった。
【0007】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、アクセルペダルの踏込み量が小さい領域での減速操作性を向上できる産業車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを持った変速機と、エンジンの出力により駆動するクラッチ用ポンプと、該クラッチ用ポンプから前記変速機の前進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する前進用比例電磁弁と、該クラッチ用ポンプから前記変速機の後進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する後進用比例電磁弁と、制動力を発生する制動手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、実車速を検出する車速検出手段と、アクセルペダル操作量に応じた目標車速を設定し、前記車速検出手段が検出する実車速が目標車速となるように前記制動手段、前記前進用比例電磁弁及び前記後進用比例電磁弁を制御する制御手段とを備えた産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、目標車速がゼロであるニュートラル領域に隣接する所定操作領域において目標車速を所定値に維持し、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域の場合に目標車速とは無関係に車速を徐々に減速させる第1の制動力特性に基づいて制動出力を前記制動手段に出力する構成としている。
【0009】
上記構成によると、アクセルペダル操作量が所定操作領域内であれば、操作量が増減した場合でも同一の減速制御(所定の目標車速から第1の制動力特性に従う制動制御)が働くので、所定操作領域で減速させたい場合には、アクセルペダルを所定幅を有するこの操作領域内に保持することにより減速でき、従来のようにフロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きい状態で徐々にアクセルペダルを離す方向に操作する(すなわち、つま先を持ち上げた状態で更につま先を上げる)といった難しい操作が不要となる。
【0010】
さらに、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域である場合の前記第1の制動力特性を調整する第1の調整手段を備えた構成としている。
上記構成によると、第1の制動力特性の勾配をより小さく設定することにより、前記所定操作領域内での減速は緩やかになり、勾配をゼロに設定すると、制動力は作用せず所定の車速で走行し続けることになり、前記領域にアクセルペダルを保持した場合の減速感覚をオペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができ、操作性が向上する。
【0011】
また、前記制御手段は、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域からニュートラル領域に戻された場合、前記第1の制動力特性を該第1の制動力特性とは異なる特性を有する第2の制動力特性に切り換えて制動出力を前記制動手段に出力する構成としている。
さらに、前記第2の制動力特性を調整する第2の調整手段を備えた構成としている。
【0012】
上記構成によると、アクセルペダルから足を離してニュートラルとしたときに異なる制動特性となる。この第2の制動特性は第2の調整手段により調整可能であり、オペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができる。例えば、大きな制動力が得られるように設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことによりブレーキペダルを踏むことなく減速しすぐに停止することができるし、制動力が発生しないように設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことにより車両は停止せず惰走し、ブレーキペダルを踏んで減速させることもでき、自動車やクラッチ/トルクコンバータタイプの産業車両と同様の操作感覚を得ることも可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、産業車両であるフォークリフトにおいては、エンジン1の出力はトルクコンバータ2を介して変速機3に伝達され、変速機3内に収容された前進クラッチ4及び後進クラッチ5のいずれかを経て駆動輪6に伝達され、これにより車両が走行するようになっている。駆動輪6には多板式ブレーキ34が設けられており、制動力が作用するようになっている。トルクコンバータ2内にはエンジン1により駆動される油圧ポンプ7が設けられており、この油圧ポンプ7からの吐出圧油はリリーフ弁8により調圧された後、前進用比例電磁弁9、後進用比例電磁弁10及びブレーキ用比例電磁弁33を介して前進クラッチ4、後進クラッチ5及びブレーキ34にそれぞれ供給される。
【0015】
荷役用油圧ポンプ11は、エンジン1により駆動され、この油圧ポンプ11からの吐出圧油は、操作弁12を介してリフトシリンダ13に供給され、リフトシリンダ13の伸縮によりフォーク14が昇降駆動されるように構成されている。
【0016】
操作弁12を切換操作する作業機レバー15にはその操作量を検出する作業機レバーセンサ16が設けられ、アクセルペダル17にはその操作量を検出するアクセルペダルセンサ18が設けられ、走行レバー19にはレバー操作位置が前進、中立及び後進のいずれであるかを検出する前後進検出スイッチ20が設けられ、ブレーキペダル31にはその操作量を検出するブレーキペダルセンサ32が設けられている。なお、作業機レバーセンサ16は、作業機レバー15の操作の有無を検出する機能を兼備しており、その出力が所定値を超えた場合がレバー操作信号である。
【0017】
エンジン1には、燃料噴射量を調整するガバナ21を制御してエンジン回転を増減するガバナアクチュエータ22が設けられている。エンジン1の出力軸23にはエンジン1の回転速度を検出するエンジン回転センサ24が設けられ、変速機3の出力軸27には車両の実車速を検出する車速センサ28が設けられている。
【0018】
コントローラ30は、上記センサ類(作業機レバーセンサ16、アクセルペダルセンサ18、前後進検出スイッチ20、エンジン回転センサ24、車速センサ28、ブレーキペダルセンサ32)からの各検出信号を入力すると共に、これらの検出信号及びコントローラ30内に記憶されたデータに基づいて、詳細は後述するようにして、前進、中立、後進及び単独荷役、単独走行、荷役兼走行を判断し、前進用比例電磁弁9、後進用比例電磁弁10、ブレーキ用比例電磁弁33及びガバナアクチュエータ22のそれぞれに指令電流を出力している。
【0019】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号により、走行レバー19の操作位置が前進、中立及び後進のいずれであるかを判断する。
【0020】
また、コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が中立であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号を入力した場合には、単独荷役と判断する。単独荷役の場合には、コントローラ30は、作業機レバーセンサ16からの作業機レバー操作量信号を入力し、コントローラ30に記憶された図2に示すような作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係より、作業機レバー15の操作量に応じたエンジン回転数となるようにガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転を制御する。
これにより、作業機レバー15の操作量に応じて油圧ポンプ11の吐出油量が制御されリフトシリンダ13に供給され、フォーク14は作業機操作レバー15の操作量に応じた昇降速度で駆動される。
【0021】
なお、走行レバー19が中立の場合、アクセルペダル17の操作によりエンジン回転数を増減可能であるので、単独荷役において、作業機レバー15とアクセルペダル17とを併用して荷役作業を行うことも可能である。この場合、コントローラ30には、図3に示すようなアクセルペダル操作量に対するエンジン回転数の関係が記憶されており、コントローラ30は、作業機レバー15によるエンジン回転数及びアクセルペダル17によるエンジン回転数のいずれか大きな方に従ってエンジン1を制御する。
【0022】
走行する場合は、アクセルペダル17の操作量に応じた車速に制御するべく、コントローラ30には、図4に示すようなアクセルペダル操作量と目標車速との関係が記憶されている。すなわち、アクセルペダル操作量がゼロからθ0までのニュートラル領域において目標車速はゼロであり、アクセルペダル操作量がθ0からθ1までのペダル踏込み量の小さい減速領域において目標車速は所定の目標車速v0であり、アクセルペダル操作量がθ1以降の通常領域においては操作量に応じて目標車速が漸増する特性である。ここで、所定の目標車速v0は、その車速で走行中に、一般的なブレーキペダル操作で車両が短い距離でショック無く停止できる程度の非常に遅い速度である。また、減速領域の幅は、オペレータの疲労や車両の揺れ等によってオペレータの意思に反して足が動いても、アクセルペダル17をその領域内に容易に保持できる量から決定する。
コントローラ30は、車速センサ28が検出する実車速が目標車速となるように、前進クラッチ4及び後進クラッチ5の少なくともいずれかのクラッチ係合状態、ブレーキ34の制動力またはエンジン回転を、以下に述べるように制御する。
【0023】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が前進または後進であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号を入力した場合には、荷役兼走行と判断する。荷役兼走行の場合には、コントローラ30は、作業機レバーセンサ16からの作業機レバー操作量信号を入力し、コントローラ30に記憶された図2に示すような作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係より作業機レバー15の操作量に応じたエンジン回転数となるようにガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転数を制御する。これにより、単独荷役の場合と同様に、フォーク14の昇降速度を作業機操作レバー15に応じた速度で駆動できる。
【0024】
同時にコントローラ30は、図4に示すアクセルペダル操作量と目標車速との関係よりアクセルペダル17の操作量に応じた目標車速を算出し、この算出した目標車速と車速センサ28が検出する実車速との偏差に基づいて、前進用比例電磁弁9及び後進用比例電磁弁10のうち、前後進検出スイッチ20の出力信号に対応する側(以降、進行方向側と呼ぶ)の比例電磁弁への指令電流を算出し出力する。これにより、進行方向側のクラッチの係合状態が制御されて、エンジン1の駆動力の駆動輪6への伝達量が調整され、実車速が目標車速に近づくような走行制御が行なわれる。ここで、作業機レバー15の操作量が小さく、進行方向のクラッチを全係合させても目標車速に達しない場合には、エンジン回転数を上げることにより実車速が目標車速に近づくように制御が行なわれる。
【0025】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が前進または後進であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号が入力されない場合には、単独走行と判断する。単独走行の場合、アクセルペダル17による目標車速が、エンジンのアイドル回転に応じたクリープ速度以上か否かにより制御が異なる。
【0026】
単独走行で目標車速がクリープ速度以上の場合には、コントローラ30は、前進クラッチ4及び後進クラッチ5のうち、進行方向側のクラッチが全係合となるような指令電流を進行方向側の比例電磁弁に出力すると共に、車速センサ28が検出する実車速がアクセルペダル17の操作量に応じた目標車速となるように、ガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転数を制御して走行する。
【0027】
また、単独走行で目標車速がクリープ速度以下の場合には、コントローラ30は、荷役兼走行の場合の走行制御と同様の制御を行う。すなわち、目標車速と実車速との偏差に応じた指令電流を、進行方向側の比例電磁弁に出力し進行方向側のクラッチの係合状態を制御しており、これにより、クリープ速度以下という微速の目標車速に近づくような走行制御が行われる。
【0028】
前進用比例電磁弁9及び後進用比例電磁弁10には、常に最低基準電流が加えられている。この最低基準電流は、クラッチが係合し始める直前程度の電流値が設定されている。これにより、前進クラッチ4及び後進クラッチ5が係合し始めるまでの遊び時間を短縮して、係合作動の応答性を向上させている。
【0029】
ブレーキペダルセンサ32が検出する信号が所定値を超えた場合や、アクセルペダル17の操作量に応じた目標車速に対して車速センサ28が検出する実車速が所定以上速い場合、コントローラ30は、制動が必要と判断し、ブレーキ用比例電磁弁33に制動用指令電流を出力する。これにより、車両はブレーキ34による制動力を得て減速する。
【0030】
上述の走行制御において、アクセルペダル操作量がθ0からθ1までの減速領域での制御について説明する。前述したように、この減速領域における目標車速は所定の目標車速v0が設定されている。アクセルペダル操作量が減速領域となり、時刻t0にて実車速と所定の目標車速v0との差が規定値以内(すなわち、実車速が略v0)となると、コントローラ30は、図5に示すように、時間の経過と共に制動力が漸次増加するような制動力特性Aに従って制動用指令電流をブレーキ用比例電磁弁33に出力する。この制動力特性Aは、車両が車速v0からゆっくり減速するように設定されている。
【0031】
減速領域において上記制動力特性Aに従い走行制御が行われている状態で、アクセルペダル操作量がニュートラル領域になった場合(図5の時刻t1)、コントローラ30は、上記制動力特性Aよりも大きな増加率となる制動力特性Bに従ってブレーキ用比例電磁弁33への制動用指令電流を出力する。この制動力特性Bは、通常のブレーキ操作で得られる程度の制動力が作用するように設定されており、通常領域で制動必要時に作用する制動力と同等である。
【0032】
アクセルペダル操作量が減速領域の場合には、実車速が略v0となると、上記制動力特性Aに従って徐々に制動力が作用し、減速領域内にアクセルペダル17をそのまま保持しておくと制動力が増加して車両は徐々に減速し停止する。停止したくない場合には、オペレータはアクセルペダル17を操作量θ1以上の通常領域に操作すればよい。
また、減速領域において制動力特性Aに従った緩やかな減速走行中に、すぐに停止したい場合には、オペレータが車両を停止させたいという意思表示としてアクセルペダル17から足を離すことにより、制動力特性Bに従って制動力が大きく作用して停止することができる。
【0033】
上記構成によれば、アクセルペダル操作量が減速領域内であれば、操作量が増減した場合でも同一の減速制御(所定の目標車速v0から制動力特性Aに従う制動制御)が働くので、減速領域で減速させたい場合には、アクセルペダル17を所定幅を有する減速領域内に保持することにより減速でき、従来のようにフロアプレートとアクセルペダル17との角度が大きい状態で徐々にアクセルペダルを離す方向に操作する(すなわち、つま先を持ち上げた状態で更につま先を上げる)といった難しい操作が不要となる。
【0034】
なお、減速領域の上記制動力特性Aは、図6に示すように、勾配ゼロから所定勾配までボリュームや入力キーを備えた調整器(図示せず)により調整可能となっている。
制動力特性Aの勾配をより小さく設定することにより、減速領域内での減速は緩やかになり、勾配をゼロに設定すると、制動力は作用せず車速v0で走行し続けることになり、前記減速領域にアクセルペダル17を保持した場合の減速感覚をオペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができ、操作性が向上する。
【0035】
コントローラ30に切換スイッチを設けて、上述のニュートラル領域での制動力特性Bを変更可能となるような調整機能を前記調整器に持たせ、図7に示すように、制動力が急速に減少する特性B1から急速に増加する特性B2までを自由に設定できるようにするのが望ましい。これにより、ニュートラル領域での制動力を急速にゼロまで減少する特性B1を設定した場合には、アクセルペダル17から足を離しても車両は停止せず惰走し、ブレーキペダル31を踏んで減速させることもでき、自動車やクラッチ/トルクコンバータタイプの産業車両と同様の操作感覚を得ることも可能になる。また、急速に増加する特性B2を設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことによりブレーキペダルを踏むことなく減速しすぐに停止することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、本発明の範囲内において変更や修正を加えることができるのは言うまでもない。
例えば、産業車両としてフォークリフトを例に挙げて説明したが、ショベルローダ等に本発明を適用しても構わない。
制動手段として、駆動輪6に装着した多板式のブレーキ34を用いる例にて説明したが、ドラム式のブレーキを用いても構わないし、進行方向とは逆方向のクラッチの係合を制御して逆方向の駆動力により制動力を得るように構成してもよい。
アクセルペダル操作量がθ1以降の目標車速の特性は、図4に実線にて示す一定勾配の特性に限定されず、同図に一点鎖線にて示すように曲線状の特性であっても構わない。
【0037】
また、減速領域における制動力特性Aは、図5に一点鎖線にて示すように曲線状の特性でもよい。さらに、図8(a)に示すように、一定の制動力が作用する特性Aaであってもよい。この場合、前記調整器により、特性を上下に移動可能として制動力を調整すればよい。さらに、図8(b)に示すように、所定デューティの矩形状の特性Abであっても構わない。この場合、デューティ比を調整して制動力を調整すればよい。
【0038】
また、ニュートラル時の制動力特性Bも、図5に示すような線形の特性に限定するものではなく、図9に示すように、減速領域での制動力よりも大きい一定の制動力が作用する特性Baであってもよい。さらに、前記調整器により、この特性を上下に移動調整可能としても構わない。
【0039】
各センサ16,18は、ポテンショメータを用いてもエンコーダを用いてもよく、検出形態に応じて直動型または回転型から適宜選択すればよい。
コントローラ30からの出力はPWM信号でも電流信号でもよい。
エンジン回転は、コントローラ30からの指令によりガバナアクチュエータ22がガバナ21を制御する例にて説明したが、リンケージ又はプッシュプルワイヤにより、作業機レバー15やアクセルペダル17とガバナ21とを連結する構成でも構わない。また、エンジン制御は、コントローラを搭載した電子制御エンジンを使用し、コントローラ30からのエンジン回転指令にて動作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る走行制御装置のブロック図である。
【図2】作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図3】アクセルペダル操作量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図4】アクセルペダル操作量と目標車速との関係を示す図である。
【図5】減速領域における制動特性を示す図である。
【図6】減速領域における制動特性の調整を説明する図である。
【図7】ニュートラル領域の制動特性の調整を説明する図である。
【図8】別態様の減速領域における制動特性を示す図である。
【図9】別態様のニュートラル領域の制動特性を説明する図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…トルクコンバータ、3…変速機、4…前進クラッチ、5…後進クラッチ、6…駆動輪、7,11…油圧ポンプ、8…リリーフ弁、9…前進用比例電磁弁、10…後進用比例電磁弁、12…操作弁、15…作業機レバー、16…作業機レバーセンサ、17…アクセルペダル、18…アクセルペダルセンサ、19…走行レバー、20…前後進検出スイッチ、22…ガバナアクチュエータ、24…エンジン回転センサ、26…入力側回転センサ、28…車速センサ、30…コントローラ、31…ブレーキペダル、32…ブレーキペダルセンサ、33…ブレーキ用比例電磁弁、34…ブレーキ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォークリフト等の産業車両の走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォークリフト等の産業車両においては、エンジンの駆動力はトルクコンバータを介して変速機に伝達され、さらに、変速機内に収容された前進クラッチ及び後進クラッチのいずれかを経て駆動輪に伝達され走行可能なように構成されている。前進クラッチ及び後進クラッチは、インチングバルブ及び方向切換弁を経た圧油により入切操作される。
【0003】
上記産業車両において荷役作業を行う場合には、通常エンジンを最大出力にして作業を行う。このため、荷役作業を行いながら車両を微速で走行させる場合には、オペレータはインチングバルブをインチングペダルにより操作して、前記前進クラッチまたは後進クラッチを半クラッチ状態にして、エンジンの駆動力の伝達を減少させて所望の車速を得ている。また、アクセルを踏まない状態で走行レバーを前進または後進に入れると、エンジンのアイドル回転に応じた速度(クリープ速度)で車両が走行してしまうが、このクリープ速度以下で走行したい場合には、オペレータはインチングペダルを操作して半クラッチ状態にして所望の車速を得ている。
しかしながら、この半クラッチ状態を調節するインチングペダル操作は微妙な操作であり、特に荷役操作との複合操作を行うには熟練を要し、熟練者にとっても疲労しやすく作業効率が悪化してしまう。
【0004】
比例電磁弁によりクラッチ圧を制御することにより、上述したような微妙な操作を要するインチングペダル操作が不要となる走行制御装置が、例えば、特許登録第2811523号公報に記載されている。すなわち、荷役作業を行いながら車両を微速で走行させる場合には、アクセルペダルの操作量に基づく目標車速と車速センサが検出する実車速との差に応じた出力を比例電磁弁に出力して、前進クラッチ、後進クラッチ又は補助ブレーキを制御することにより、エンジンの回転数に関係なく車両が目標車速で走行するように制御している。これにより、インチングペダル操作という微妙な操作が不要となり、操作性の良い走行制御装置が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の技術においては、以下のような問題がある。
インチングペダルを廃止して比例電磁弁を用いた電子制御による走行制御装置であるので、アクセルペダルは速度指令設定器(目標車速の設定器)として機能することになる。すなわち、アクセルペダルを踏み込むことにより加速し、アクセルペダルを戻すことにより戻し具合に応じた制動が作動して減速するので、電気駆動式の産業車両と同様に、ブレーキペダルを使わずにアクセルペダルのみの操作で制動による減速が可能である。なお、ブレーキペダルは、より強い制動力を得たい場合(緊急停止時等)に操作される。
【0006】
このように、「アクセルペダル操作量=目標車速」となっているので、アクセルペダルから足を離すと、アクセルペダル操作量がゼロ、すなわち「目標車速=0」となるため、車両は減速して停止してしまう。このため、停止させずに減速させたい場合には、オペレータはアクセルペダルから完全に足を離すことはできない。高速を操作する領域では、アクセルペダルの操作量(踏込み量)が大きいため、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が小さく、操作が比較的容易である。これに対して、低速を操作する領域や、この低速よりも更に車速が遅い微速を操作する領域では、アクセルペダルの踏込み量が小さいため、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きくつま先を持ち上げた操作姿勢となるので、操作しにくく疲労しやすいという問題があった。特に、このアクセルペダルの踏込み量が小さい領域で減速する場合には、フロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きい状態にてアクセルペダルから足を離す方向で車速を制御する必要があるため、操作し辛かった。
【0007】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、アクセルペダルの踏込み量が小さい領域での減速操作性を向上できる産業車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを持った変速機と、エンジンの出力により駆動するクラッチ用ポンプと、該クラッチ用ポンプから前記変速機の前進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する前進用比例電磁弁と、該クラッチ用ポンプから前記変速機の後進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する後進用比例電磁弁と、制動力を発生する制動手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、実車速を検出する車速検出手段と、アクセルペダル操作量に応じた目標車速を設定し、前記車速検出手段が検出する実車速が目標車速となるように前記制動手段、前記前進用比例電磁弁及び前記後進用比例電磁弁を制御する制御手段とを備えた産業車両の走行制御装置において、前記制御手段は、目標車速がゼロであるニュートラル領域に隣接する所定操作領域において目標車速を所定値に維持し、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域の場合に目標車速とは無関係に車速を徐々に減速させる第1の制動力特性に基づいて制動出力を前記制動手段に出力する構成としている。
【0009】
上記構成によると、アクセルペダル操作量が所定操作領域内であれば、操作量が増減した場合でも同一の減速制御(所定の目標車速から第1の制動力特性に従う制動制御)が働くので、所定操作領域で減速させたい場合には、アクセルペダルを所定幅を有するこの操作領域内に保持することにより減速でき、従来のようにフロアプレートとアクセルペダルとの角度が大きい状態で徐々にアクセルペダルを離す方向に操作する(すなわち、つま先を持ち上げた状態で更につま先を上げる)といった難しい操作が不要となる。
【0010】
さらに、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域である場合の前記第1の制動力特性を調整する第1の調整手段を備えた構成としている。
上記構成によると、第1の制動力特性の勾配をより小さく設定することにより、前記所定操作領域内での減速は緩やかになり、勾配をゼロに設定すると、制動力は作用せず所定の車速で走行し続けることになり、前記領域にアクセルペダルを保持した場合の減速感覚をオペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができ、操作性が向上する。
【0011】
また、前記制御手段は、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域からニュートラル領域に戻された場合、前記第1の制動力特性を該第1の制動力特性とは異なる特性を有する第2の制動力特性に切り換えて制動出力を前記制動手段に出力する構成としている。
さらに、前記第2の制動力特性を調整する第2の調整手段を備えた構成としている。
【0012】
上記構成によると、アクセルペダルから足を離してニュートラルとしたときに異なる制動特性となる。この第2の制動特性は第2の調整手段により調整可能であり、オペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができる。例えば、大きな制動力が得られるように設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことによりブレーキペダルを踏むことなく減速しすぐに停止することができるし、制動力が発生しないように設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことにより車両は停止せず惰走し、ブレーキペダルを踏んで減速させることもでき、自動車やクラッチ/トルクコンバータタイプの産業車両と同様の操作感覚を得ることも可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、産業車両であるフォークリフトにおいては、エンジン1の出力はトルクコンバータ2を介して変速機3に伝達され、変速機3内に収容された前進クラッチ4及び後進クラッチ5のいずれかを経て駆動輪6に伝達され、これにより車両が走行するようになっている。駆動輪6には多板式ブレーキ34が設けられており、制動力が作用するようになっている。トルクコンバータ2内にはエンジン1により駆動される油圧ポンプ7が設けられており、この油圧ポンプ7からの吐出圧油はリリーフ弁8により調圧された後、前進用比例電磁弁9、後進用比例電磁弁10及びブレーキ用比例電磁弁33を介して前進クラッチ4、後進クラッチ5及びブレーキ34にそれぞれ供給される。
【0015】
荷役用油圧ポンプ11は、エンジン1により駆動され、この油圧ポンプ11からの吐出圧油は、操作弁12を介してリフトシリンダ13に供給され、リフトシリンダ13の伸縮によりフォーク14が昇降駆動されるように構成されている。
【0016】
操作弁12を切換操作する作業機レバー15にはその操作量を検出する作業機レバーセンサ16が設けられ、アクセルペダル17にはその操作量を検出するアクセルペダルセンサ18が設けられ、走行レバー19にはレバー操作位置が前進、中立及び後進のいずれであるかを検出する前後進検出スイッチ20が設けられ、ブレーキペダル31にはその操作量を検出するブレーキペダルセンサ32が設けられている。なお、作業機レバーセンサ16は、作業機レバー15の操作の有無を検出する機能を兼備しており、その出力が所定値を超えた場合がレバー操作信号である。
【0017】
エンジン1には、燃料噴射量を調整するガバナ21を制御してエンジン回転を増減するガバナアクチュエータ22が設けられている。エンジン1の出力軸23にはエンジン1の回転速度を検出するエンジン回転センサ24が設けられ、変速機3の出力軸27には車両の実車速を検出する車速センサ28が設けられている。
【0018】
コントローラ30は、上記センサ類(作業機レバーセンサ16、アクセルペダルセンサ18、前後進検出スイッチ20、エンジン回転センサ24、車速センサ28、ブレーキペダルセンサ32)からの各検出信号を入力すると共に、これらの検出信号及びコントローラ30内に記憶されたデータに基づいて、詳細は後述するようにして、前進、中立、後進及び単独荷役、単独走行、荷役兼走行を判断し、前進用比例電磁弁9、後進用比例電磁弁10、ブレーキ用比例電磁弁33及びガバナアクチュエータ22のそれぞれに指令電流を出力している。
【0019】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号により、走行レバー19の操作位置が前進、中立及び後進のいずれであるかを判断する。
【0020】
また、コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が中立であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号を入力した場合には、単独荷役と判断する。単独荷役の場合には、コントローラ30は、作業機レバーセンサ16からの作業機レバー操作量信号を入力し、コントローラ30に記憶された図2に示すような作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係より、作業機レバー15の操作量に応じたエンジン回転数となるようにガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転を制御する。
これにより、作業機レバー15の操作量に応じて油圧ポンプ11の吐出油量が制御されリフトシリンダ13に供給され、フォーク14は作業機操作レバー15の操作量に応じた昇降速度で駆動される。
【0021】
なお、走行レバー19が中立の場合、アクセルペダル17の操作によりエンジン回転数を増減可能であるので、単独荷役において、作業機レバー15とアクセルペダル17とを併用して荷役作業を行うことも可能である。この場合、コントローラ30には、図3に示すようなアクセルペダル操作量に対するエンジン回転数の関係が記憶されており、コントローラ30は、作業機レバー15によるエンジン回転数及びアクセルペダル17によるエンジン回転数のいずれか大きな方に従ってエンジン1を制御する。
【0022】
走行する場合は、アクセルペダル17の操作量に応じた車速に制御するべく、コントローラ30には、図4に示すようなアクセルペダル操作量と目標車速との関係が記憶されている。すなわち、アクセルペダル操作量がゼロからθ0までのニュートラル領域において目標車速はゼロであり、アクセルペダル操作量がθ0からθ1までのペダル踏込み量の小さい減速領域において目標車速は所定の目標車速v0であり、アクセルペダル操作量がθ1以降の通常領域においては操作量に応じて目標車速が漸増する特性である。ここで、所定の目標車速v0は、その車速で走行中に、一般的なブレーキペダル操作で車両が短い距離でショック無く停止できる程度の非常に遅い速度である。また、減速領域の幅は、オペレータの疲労や車両の揺れ等によってオペレータの意思に反して足が動いても、アクセルペダル17をその領域内に容易に保持できる量から決定する。
コントローラ30は、車速センサ28が検出する実車速が目標車速となるように、前進クラッチ4及び後進クラッチ5の少なくともいずれかのクラッチ係合状態、ブレーキ34の制動力またはエンジン回転を、以下に述べるように制御する。
【0023】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が前進または後進であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号を入力した場合には、荷役兼走行と判断する。荷役兼走行の場合には、コントローラ30は、作業機レバーセンサ16からの作業機レバー操作量信号を入力し、コントローラ30に記憶された図2に示すような作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係より作業機レバー15の操作量に応じたエンジン回転数となるようにガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転数を制御する。これにより、単独荷役の場合と同様に、フォーク14の昇降速度を作業機操作レバー15に応じた速度で駆動できる。
【0024】
同時にコントローラ30は、図4に示すアクセルペダル操作量と目標車速との関係よりアクセルペダル17の操作量に応じた目標車速を算出し、この算出した目標車速と車速センサ28が検出する実車速との偏差に基づいて、前進用比例電磁弁9及び後進用比例電磁弁10のうち、前後進検出スイッチ20の出力信号に対応する側(以降、進行方向側と呼ぶ)の比例電磁弁への指令電流を算出し出力する。これにより、進行方向側のクラッチの係合状態が制御されて、エンジン1の駆動力の駆動輪6への伝達量が調整され、実車速が目標車速に近づくような走行制御が行なわれる。ここで、作業機レバー15の操作量が小さく、進行方向のクラッチを全係合させても目標車速に達しない場合には、エンジン回転数を上げることにより実車速が目標車速に近づくように制御が行なわれる。
【0025】
コントローラ30は、前後進検出スイッチ20の出力信号が前進または後進であり、かつ作業機レバーセンサ16からのレバー操作信号が入力されない場合には、単独走行と判断する。単独走行の場合、アクセルペダル17による目標車速が、エンジンのアイドル回転に応じたクリープ速度以上か否かにより制御が異なる。
【0026】
単独走行で目標車速がクリープ速度以上の場合には、コントローラ30は、前進クラッチ4及び後進クラッチ5のうち、進行方向側のクラッチが全係合となるような指令電流を進行方向側の比例電磁弁に出力すると共に、車速センサ28が検出する実車速がアクセルペダル17の操作量に応じた目標車速となるように、ガバナアクチュエータ22に指令電流を出力してエンジン回転数を制御して走行する。
【0027】
また、単独走行で目標車速がクリープ速度以下の場合には、コントローラ30は、荷役兼走行の場合の走行制御と同様の制御を行う。すなわち、目標車速と実車速との偏差に応じた指令電流を、進行方向側の比例電磁弁に出力し進行方向側のクラッチの係合状態を制御しており、これにより、クリープ速度以下という微速の目標車速に近づくような走行制御が行われる。
【0028】
前進用比例電磁弁9及び後進用比例電磁弁10には、常に最低基準電流が加えられている。この最低基準電流は、クラッチが係合し始める直前程度の電流値が設定されている。これにより、前進クラッチ4及び後進クラッチ5が係合し始めるまでの遊び時間を短縮して、係合作動の応答性を向上させている。
【0029】
ブレーキペダルセンサ32が検出する信号が所定値を超えた場合や、アクセルペダル17の操作量に応じた目標車速に対して車速センサ28が検出する実車速が所定以上速い場合、コントローラ30は、制動が必要と判断し、ブレーキ用比例電磁弁33に制動用指令電流を出力する。これにより、車両はブレーキ34による制動力を得て減速する。
【0030】
上述の走行制御において、アクセルペダル操作量がθ0からθ1までの減速領域での制御について説明する。前述したように、この減速領域における目標車速は所定の目標車速v0が設定されている。アクセルペダル操作量が減速領域となり、時刻t0にて実車速と所定の目標車速v0との差が規定値以内(すなわち、実車速が略v0)となると、コントローラ30は、図5に示すように、時間の経過と共に制動力が漸次増加するような制動力特性Aに従って制動用指令電流をブレーキ用比例電磁弁33に出力する。この制動力特性Aは、車両が車速v0からゆっくり減速するように設定されている。
【0031】
減速領域において上記制動力特性Aに従い走行制御が行われている状態で、アクセルペダル操作量がニュートラル領域になった場合(図5の時刻t1)、コントローラ30は、上記制動力特性Aよりも大きな増加率となる制動力特性Bに従ってブレーキ用比例電磁弁33への制動用指令電流を出力する。この制動力特性Bは、通常のブレーキ操作で得られる程度の制動力が作用するように設定されており、通常領域で制動必要時に作用する制動力と同等である。
【0032】
アクセルペダル操作量が減速領域の場合には、実車速が略v0となると、上記制動力特性Aに従って徐々に制動力が作用し、減速領域内にアクセルペダル17をそのまま保持しておくと制動力が増加して車両は徐々に減速し停止する。停止したくない場合には、オペレータはアクセルペダル17を操作量θ1以上の通常領域に操作すればよい。
また、減速領域において制動力特性Aに従った緩やかな減速走行中に、すぐに停止したい場合には、オペレータが車両を停止させたいという意思表示としてアクセルペダル17から足を離すことにより、制動力特性Bに従って制動力が大きく作用して停止することができる。
【0033】
上記構成によれば、アクセルペダル操作量が減速領域内であれば、操作量が増減した場合でも同一の減速制御(所定の目標車速v0から制動力特性Aに従う制動制御)が働くので、減速領域で減速させたい場合には、アクセルペダル17を所定幅を有する減速領域内に保持することにより減速でき、従来のようにフロアプレートとアクセルペダル17との角度が大きい状態で徐々にアクセルペダルを離す方向に操作する(すなわち、つま先を持ち上げた状態で更につま先を上げる)といった難しい操作が不要となる。
【0034】
なお、減速領域の上記制動力特性Aは、図6に示すように、勾配ゼロから所定勾配までボリュームや入力キーを備えた調整器(図示せず)により調整可能となっている。
制動力特性Aの勾配をより小さく設定することにより、減速領域内での減速は緩やかになり、勾配をゼロに設定すると、制動力は作用せず車速v0で走行し続けることになり、前記減速領域にアクセルペダル17を保持した場合の減速感覚をオペレータの好みや作業内容に合わせて調整することができ、操作性が向上する。
【0035】
コントローラ30に切換スイッチを設けて、上述のニュートラル領域での制動力特性Bを変更可能となるような調整機能を前記調整器に持たせ、図7に示すように、制動力が急速に減少する特性B1から急速に増加する特性B2までを自由に設定できるようにするのが望ましい。これにより、ニュートラル領域での制動力を急速にゼロまで減少する特性B1を設定した場合には、アクセルペダル17から足を離しても車両は停止せず惰走し、ブレーキペダル31を踏んで減速させることもでき、自動車やクラッチ/トルクコンバータタイプの産業車両と同様の操作感覚を得ることも可能になる。また、急速に増加する特性B2を設定した場合には、アクセルペダルから足を離すことによりブレーキペダルを踏むことなく減速しすぐに停止することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、本発明の範囲内において変更や修正を加えることができるのは言うまでもない。
例えば、産業車両としてフォークリフトを例に挙げて説明したが、ショベルローダ等に本発明を適用しても構わない。
制動手段として、駆動輪6に装着した多板式のブレーキ34を用いる例にて説明したが、ドラム式のブレーキを用いても構わないし、進行方向とは逆方向のクラッチの係合を制御して逆方向の駆動力により制動力を得るように構成してもよい。
アクセルペダル操作量がθ1以降の目標車速の特性は、図4に実線にて示す一定勾配の特性に限定されず、同図に一点鎖線にて示すように曲線状の特性であっても構わない。
【0037】
また、減速領域における制動力特性Aは、図5に一点鎖線にて示すように曲線状の特性でもよい。さらに、図8(a)に示すように、一定の制動力が作用する特性Aaであってもよい。この場合、前記調整器により、特性を上下に移動可能として制動力を調整すればよい。さらに、図8(b)に示すように、所定デューティの矩形状の特性Abであっても構わない。この場合、デューティ比を調整して制動力を調整すればよい。
【0038】
また、ニュートラル時の制動力特性Bも、図5に示すような線形の特性に限定するものではなく、図9に示すように、減速領域での制動力よりも大きい一定の制動力が作用する特性Baであってもよい。さらに、前記調整器により、この特性を上下に移動調整可能としても構わない。
【0039】
各センサ16,18は、ポテンショメータを用いてもエンコーダを用いてもよく、検出形態に応じて直動型または回転型から適宜選択すればよい。
コントローラ30からの出力はPWM信号でも電流信号でもよい。
エンジン回転は、コントローラ30からの指令によりガバナアクチュエータ22がガバナ21を制御する例にて説明したが、リンケージ又はプッシュプルワイヤにより、作業機レバー15やアクセルペダル17とガバナ21とを連結する構成でも構わない。また、エンジン制御は、コントローラを搭載した電子制御エンジンを使用し、コントローラ30からのエンジン回転指令にて動作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る走行制御装置のブロック図である。
【図2】作業機レバー操作量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図3】アクセルペダル操作量とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図4】アクセルペダル操作量と目標車速との関係を示す図である。
【図5】減速領域における制動特性を示す図である。
【図6】減速領域における制動特性の調整を説明する図である。
【図7】ニュートラル領域の制動特性の調整を説明する図である。
【図8】別態様の減速領域における制動特性を示す図である。
【図9】別態様のニュートラル領域の制動特性を説明する図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…トルクコンバータ、3…変速機、4…前進クラッチ、5…後進クラッチ、6…駆動輪、7,11…油圧ポンプ、8…リリーフ弁、9…前進用比例電磁弁、10…後進用比例電磁弁、12…操作弁、15…作業機レバー、16…作業機レバーセンサ、17…アクセルペダル、18…アクセルペダルセンサ、19…走行レバー、20…前後進検出スイッチ、22…ガバナアクチュエータ、24…エンジン回転センサ、26…入力側回転センサ、28…車速センサ、30…コントローラ、31…ブレーキペダル、32…ブレーキペダルセンサ、33…ブレーキ用比例電磁弁、34…ブレーキ。
Claims (4)
- エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを持った変速機と、
エンジンの出力により駆動するクラッチ用ポンプと、
該クラッチ用ポンプから前記変速機の前進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する前進用比例電磁弁と、
該クラッチ用ポンプから前記変速機の後進クラッチに供給する油圧を増減して該クラッチの係合状態を制御する後進用比例電磁弁と、
制動力を発生する制動手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
実車速を検出する車速検出手段と、
アクセルペダル操作量に応じた目標車速を設定し、前記車速検出手段が検出する実車速が目標車速となるように前記制動手段、前記前進用比例電磁弁及び前記後進用比例電磁弁を制御する制御手段とを備えた産業車両の走行制御装置において、
前記制御手段は、目標車速がゼロであるニュートラル領域に隣接する所定操作領域において目標車速を所定値に維持し、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域の場合に目標車速とは無関係に車速を徐々に減速させる第1の制動力特性に基づいて制動出力を前記制動手段に出力する
ことを特徴とする産業車両の走行制御装置。 - さらに、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域である場合の前記第1の制動力特性を調整する第1の調整手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の産業車両の走行制御装置。 - 請求項1又は2記載の産業車両の走行制御装置において、
前記制御手段は、アクセルペダル操作量が前記所定操作領域からニュートラル領域に戻された場合、前記第1の制動力特性を該第1の制動力特性とは異なる特性を有する第2の制動力特性に切り換えて制動出力を前記制動手段に出力する
ことを特徴とする産業車両の走行制御装置。 - さらに、前記第2の制動力特性を調整する第2の調整手段を備えた
ことを特徴とする請求項3記載の産業車両の走行制御装置。
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-
2002
- 2002-06-07 JP JP2002166489A patent/JP2004011779A/ja active Pending
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