JP2004007989A - 半導体パワーモジュールおよび複合パワーモジュール - Google Patents

半導体パワーモジュールおよび複合パワーモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】一部の半導体パワースイッチング素子に負担が集中するのを防止する。
【解決手段】モジュール10a(10b)の診断回路PCは、例えばセンシング回路Seから送出され、IGBT素子のコレクタ電流に比例するセンシング信号SSEを、基準電圧と比較することによって、コレクタ電流における異常の発生の有無を判定する。異常があれば、遮断信号SSDを遮断回路SDへ送出してIGBT素子を遮断すると同時に、異常検出信号SFO1(SFO2)を他方のモジュール10b(10a)へ送出する。モジュール10b(10a)の診断回路PCは、異常検出信号SFO1(SFO2)を受信すると、遮断信号SSDを遮断回路SDへ送出してIGBT素子を遮断する。双方の遮断信号SSDの送出の時期が同一となるので、双方のIGBT素子が同時に遮断する。したがって、一方のIGBT素子が先に遮断して、遅れた他方のIGBT素子に負担が集中するということがない。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、並列接続に適した半導体パワーモジュールおよび複数の半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールに関し、特に、一部の半導体パワースイッチング素子に負担が集中しないための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体パワーモジュールは、主電流をスイッチングする半導体パワースイッチング素子と、この素子を駆動する駆動回路と、この素子の保護を行う保護回路とが、一つの装置内に組み込まれて成る装置である。負荷へ供給すべき電流の定格値、すなわち定格電流を高めるためには、複数の半導体パワーモジュールを互いに並列接続して複合パワーモジュールを構成することが有効である。
【0003】
図28は、従来の複合パワーモジュールの構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール100は、互いに並列接続された同一構造の2つの半導体パワーモジュール107a,107bを備えている。モジュール107a,107bのそれぞれは、1個の主回路素子1および1個ないし複数の主回路素子2を備えている。これらの主回路素子1、2は互いに並列接続されており、それぞれ、IGBT素子およびこの素子と並列接続されたフリーホイールダイオード(FWD)素子とを有している。
【0004】
モジュール107aに備わるコレクタ端子Cには、モジュール107a内のすべてのIGBT素子のコレクタ電極が接続されており、エミッタ端子Eには、すべてのIGBT素子のエミッタ電極が接続されている。同様に、モジュール107bに備わるコレクタ端子Cには、モジュール107b内のすべてのIGBT素子のコレクタ電極が接続されており、エミッタ端子Eには、すべてのIGBT素子のエミッタ電極が接続されている。
【0005】
そして、モジュール107aのコレクタ端子Cとモジュール107bのコレクタ端子Cとが互いに接続されており、双方のエミッタ端子Eも互いに接続されている。このように、2個のモジュール107a,107bは、互いに並列接続されることによって、負荷へ供給する電流を分担し合っている。
【0006】
主回路素子1には、駆動回路Dr、遮断回路SD、センシング回路Se、過大電圧検出回路OV、および過小電圧検出回路UVが接続されており、主回路素子2には、駆動回路Drと遮断回路SDとが接続されている。また、モジュール107a,107bのそれぞれには、さらに、温度検出回路OT、入出力インタフェース(I/O)104、および診断回路105が備わっている。
【0007】
駆動回路Drは、I/O104からの駆動信号を増幅してIGBT素子のゲート電極へと入力する。センシング回路Seは、主回路素子1に含まれるIGBT素子を流れる主電流に比例した大きさの電圧信号すなわちセンシング信号を送出する。遮断回路SDは、診断回路105が出力する遮断信号に応答して、IGBT素子を遮断するようにゲート電極を駆動する。また、過大電圧検出回路OVは、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧の大きさを検出する。さらに、過小電圧検出回路UVは、駆動回路Dr等の電源電圧が許容値以下にまで低いことを検出する。
【0008】
温度検出回路OTは、モジュール107a,107bのそれぞれに備わる図示しない銅ベース板の温度を検出して、温度検出信号を送出する。銅ベース板は、主回路素子1,2が搭載される図示しないパワー回路基板の底面に固着された導熱板であり、主回路素子1,2で発生する損失熱を外部へと放出する機能を果たす。主回路素子1,2に比べて発熱量が無視できるほどに小さい回路部分である、駆動回路Dr、遮断回路SD、センシング回路Se、過大電圧検出回路OV、過小電圧検出回路UV、I/O104、および診断回路105は、パワー回路基板とは別個に設けられた制御回路基板103の上に展開されている。
【0009】
I/O104は、モジュール107a,107bの外部に備わるインタフェース回路(I/F)106aと駆動回路Drとを中継する回路部分であり、I/F106aからの制御信号を、駆動信号として駆動回路Drへと伝達する。診断回路105は、過小電圧検出回路UV、過大電圧検出回路OV、センシング回路Se、および温度検出回路OTからの検出信号にもとづいて異常の発生の有無を判定するとともに、異常発生時には、遮断信号を遮断回路SDへと送出する。同時に、診断回路105は、異常の発生を報知する報知信号をモジュール107a,107bの外部に備わるもう一つのインタフェース回路(I/F)106bへと送出する。
【0010】
I/F106a,106bは、装置100の外部に接続される装置すなわち外部装置と各モジュール107a,107bとの間を中継する回路部分であり、フォトカプラ等の光結合素子を有している。一方のI/F106aは、外部から入力される制御信号を、I/O104に適した入力信号に変換して伝達する。I/F106aの出力信号線は、分岐して各モジュール107a,107bのI/O104へと接続されており、I/F106aが送出する入力信号は、各I/O104へ入力される。
【0011】
他方のI/F106bは、診断回路105が送出する報知信号を外部装置に適した信号に変換して伝達する。各モジュール107a,107bに備わる診断回路105の出力信号線は、互いに合流して単一のI/F106bへと接続されており、各診断回路105のいずれかが報知信号を送出すると、この報知信号はI/F106bを介して外部装置へと送出される。すなわち、外部装置は、複数のモジュール107a,107bのすべてが正常に作動しているか、または、それらのいずれかで異常が発生しているか、のいずれであるかを認識可能である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の複合パワーモジュールは、以上のように構成されるために、異常が発生したときの各モジュール107a,107bの動作に時間的なずれが生じるという問題点があった。図29は、この問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【0013】
図29には、2個のモジュール107a,107bのそれぞれにおける、駆動回路Dr、診断回路105等の電源電圧VD1,VD2、駆動回路Drへ入力される駆動信号SDr1,SDr2、診断回路105から送出される報知信号SFO1,SFO2、温度検出回路OTで検出される銅ベース板の温度Tb1,Tb2、IGBT素子のゲート・エミッタ間電圧VGE1,VGE2、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧VCE1,VCE2、IGBT素子を流れる主電流すなわちコレクタ電流IC1,IC2の波形が描かれている。また、図29において、駆動信号SDr1,SDr2については電圧波形が、報知信号SFO1,SFO2については電流波形がそれぞれ描かれている。
【0014】
図29に示すように、装置100に電源が投入されると、電源電圧VD1,VD2が立ち上がる。電源電圧VD1,VD2がある一定以上に達すると、過小電圧検出回路UVが作動可能な状態となる。そして、過小電圧検出回路UVは電源電圧VD1,VD2が許容値以下であることを検出し、検出信号を診断回路105へと送出する。診断回路105は、この検出信号にもとづいて、異常の発生を検出し、報知信号SFO1,SFO2を出力する。
【0015】
電源電圧VD1,VD2が正常値に達すると、過小電圧検出回路UVは検出信号の送出を停止する。その結果、診断回路105は報知信号SFO1,SFO2の送出を停止する。図29には、電源電圧VD1,VD2の立ち上がりにともなう、報知信号SFO1,SFO2の立ち上がりと回復の過程が描かれている。
【0016】
正常動作に移行した後、駆動回路Dr等の動作に支障のない短い時間幅で電源電圧VD1が低下しても、過小電圧検出回路UVは検出信号を送出せず、装置100は正常動作を継続する。正常動作期間において、駆動信号SDr1,SDr2がアクティブレベルに相当するロウレベルにあるとき、IGBT素子は導通し、それにともなってコレクタ電流IC1,IC2が増加する。逆に、駆動信号SDr1,SDr2がノーマルレベルに相当するハイレベルにあるときは、IGBT素子は遮断し、それにともなってコレクタ電流IC1,IC2はゼロに引き戻される。
【0017】
図29中の符号”UV”が付された時期において、駆動回路Dr等の動作上許容できない時間幅で電源電圧VD2が低下すると、この異常はモジュール107bの過小電圧検出回路UVによって検出される。その結果、モジュール107bの診断回路105は報知信号SFO2を送出する。同時に、モジュール107bの診断回路105は、遮断信号を遮断回路SDへと送出する。
【0018】
図29の例では、時期”UV”の前後の期間において、駆動信号SDr1,SDr2はアクティブレベルに相当するロウレベルとなっている。このため、少なくとも遮断回路SDが作動するまでは、双方のモジュール107a,107bのIGBT素子は導通状態となっており、コレクタ電流IC1,IC2は上昇の過程にある。その後、モジュール107bの遮断回路SDが遮断信号に応答して作動すると、一方のモジュール107bのIGBT素子は遮断し、コレクタ電流IC2はゼロへと減少する。
【0019】
しかしながら、他方のモジュール107aにおいては、遮断回路SDが作動しないので、IGBT素子は導通を継続する。このため、コレクタ電流IC1は上昇を続ける。しかも、一方のモジュール107bのIGBT素子が遮断したために、負荷へ供給する電流が、他方のモジュール107aのIGBT素子に集中する。その結果、コレクタ電流IC1は過剰に上昇することとなる。すなわち、遮断しないモジュール107aのIGBT素子に過剰な負担が加わるという問題点があった。
【0020】
つぎに、負荷が短絡する異常が発生しているときに、駆動信号SDr1,SDr2がロウレベルとなって双方のモジュール107a,107bのIGBT素子が導通したとする。そうすると、モジュール107a,107bの双方においてIGBTのコレクタ電流が過度に上昇する。その結果、モジュール107a,107bのそれぞれにおいて、センシング回路Seからのセンシング信号にもとづいて、診断回路105が異常発生を検出する(図29の符号”SC”が付された時期)。その結果、遮断回路SDの働きで、各モジュール107a,107bのIGBT素子は遮断される。
【0021】
しかしながら、双方のモジュール107a,107bのそれぞれにおいて、診断回路105が異常発生を判定する時期は必ずしも一致しない。このため、モジュール107a,107bのそれぞれに属するIGBT素子が遮断する時期には、ずれが現れる。その結果、遮断の時期が遅れたIGBT素子(図29の例ではモジュール107bに属するIGBT素子)には、過剰な負担が加わる。
【0022】
図30は、時期”SC”の前後の期間におけるコレクタ・エミッタ間電圧VCE1,VCE2およびコレクタ電流IC1,IC2の波形を拡大して示すタイミングチャートである。図30に示すように、遮断の時期が遅れたモジュール107bのIGBT素子のコレクタ電流IC2が過剰に上昇する。すなわち、遮断の時期が遅れたIGBT素子には、負荷へ供給する電流が集中する。
【0023】
図29に戻って、IGBT素子が導通から遮断へと転じた時に、コレクタ電極とエミッタ電極との間に過大な電圧が印加される場合がある(符号”OV”が付された時期)。例えば、コレクタ端子Cおよびエミッタ端子Eと負荷とを接続する配線が異常に長い場合、あるいは、コレクタ端子Cとエミッタ端子Eの間に介挿されるサージ吸収回路(図示を略する)が十分な機能を果たさない場合などに、この過大電圧が発生し得る。
【0024】
モジュール107a,107bのそれぞれに属する過大電圧検出回路OVがそれぞれ検出するコレクタ・エミッタ間電圧VCE1,VCE2の検出値にもとづいて、診断回路105は、過大電圧の発生を検出する。しかしながら、モジュール107a,107bの双方において、診断回路105が異常を検出する時期は、必ずしも一致しない。このため、双方においてIGBT素子が導通から遮断へと転じる時期にはずれが生じる。その結果、遮断の時期が遅れたIGBT素子には、負荷へ供給する電流が集中し、コレクタ電流が異常に上昇する。図29には、モジュール107bに属するIGBT素子の遮断の時期が遅れたために、コレクタ電流IC2に異常な上昇が現れる例が描かれている。
【0025】
つぎに、正常動作を行っている中で、銅ベース板の温度が異常な高さに上昇すると、温度検出回路OTが送出する温度検出信号にもとづいて、診断回路105は異常発生を検出する(符号”OT”が付された時期)。図29に示すように、この時期”OT”の直前までモジュール107a,107bのそれぞれに属するIGBT素子が導通状態にあったとすると、診断回路105と遮断回路SDの働きによって、これらのIGBT素子は導通状態から遮断状態へと転じる。そうすることで、IGBT素子等を異常な温度上昇から保護する。
【0026】
しかしながら、モジュール107a,107bの双方において、診断回路105が異常を検出する時期は、必ずしも一致しない。このため、双方においてIGBT素子が導通から遮断へと転じる時期にはずれが生じる。その結果、遮断の時期が遅れたIGBT素子には、負荷へ供給する電流が集中し、コレクタ電流が異常に上昇する。図29には、モジュール107bに属するIGBT素子の遮断の時期が遅れたために、コレクタ電流IC2に異常な上昇が現れる例が描かれている。
【0027】
以上に述べたように、従来の複合パワーモジュールでは、並列接続された半導体パワーモジュールの間で、異常が発生したときの保護動作に時間的なずれが生じ、その結果、一方のモジュールに属する半導体パワースイッチング素子に負担が集中するという問題点があった。
【0028】
さらに、図29には明示されないが、従来装置では、正常動作時においても、I/F106aからI/O104までの配線の長さが、モジュール107a,107bの間で不均等であることなどに起因して、双方のモジュールの間で、入力信号の伝搬遅延時間に差異が生じていた。その結果、I/O104に入力される入力信号が変化する時期に、双方のモジュールの間でずれが現れていた。このために、I/F106aへ入力される制御信号に応答してIGBT素子が導通および遮断する時期に、双方のモジュールの間でずれが生じ、その結果、正常動作時においても一部のIGBT素子に過渡的に負担が集中するという問題点があった。
【0029】
この発明は、従来の装置における上記した問題点を解消するためになされたもので、正常動作時および異常発生時の半導体パワースイッチング素子の動作に現れる時期的ずれを解消し、そのことによって、一部の半導体パワースイッチング素子に負担が集中することを回避し得る複合パワーモジュール、および、この複合パワーモジュールに適した半導体パワーモジュールを提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
第1の発明の装置は、主電流をスイッチングする半導体パワースイッチング素子と、当該素子を駆動する駆動回路と、異常時の損傷から前記素子を保護する保護回路と、を備える半導体パワーモジュールにおいて、前記保護回路に結合した少なくとも1個の入力端子と、前記保護回路に結合した出力端子と、をさらに備え、前記保護回路が、遮断信号が入力されると、前記駆動回路の動作に優先して、前記素子を遮断するように駆動する遮断回路と、前記素子の動作に関わる量を検出する検出回路と、診断回路と、を備え、当該診断回路は、前記検出回路で検出された前記量を基準値と比較することによって、異常が発生したか否かに対応する信号を出力する比較回路と、前記比較回路が異常発生に対応する信号を出力したときに、前記遮断回路へ前記遮断信号を送出するとともに、前記出力端子へ異常検出信号を送出し、更に前記少なくとも1個の入力端子のいずれかに特定の信号が入力されたときに、前記遮断回路へ前記遮断信号を送出するとともに、前記出力端子へ異常検出信号を送出する判定回路と、を備えることを特徴とする。
【0031】
第2の発明の装置は、第1の発明の半導体パワーモジュールにおいて、もう一つの入力端子と、もう一つの出力端子と、前記もう一つの入力端子へ外部より入力される制御信号を前記駆動回路と前記もう一つの出力端子とに振り分けて伝達するインタフェース回路と、をさらに備えることを特徴とする。
【0032】
第3の発明の装置は、主電流をスイッチングする半導体パワースイッチング素子と、当該素子を駆動する駆動回路と、異常時の損傷から前記素子を保護する保護回路と、を備える半導体パワーモジュールにおいて、前記保護回路に結合した入力端子と、前記保護回路に結合した出力端子と、を備え、前記保護回路が、前記入力端子へ遮断信号が入力されると、前記駆動回路の動作に優先して、前記素子を遮断するように駆動する遮断回路と、前記素子の動作に関わる量を検出する検出回路と、診断回路と、を備え、当該診断回路は、前記検出回路で検出された前記量を基準値と比較することによって、異常が発生したか否かに対応する信号を出力する比較回路と、前記比較回路が異常発生に対応する信号を出力したときに、前記出力端子へ異常検出信号を送出する判定回路と、を備えることを特徴とする。
【0033】
第4の発明の装置は、第1または第3の発明の半導体パワーモジュールにおいて、前記検出回路、前記駆動回路、および前記遮断回路を含む回路部分が、1個の半導体チップに集積化されていることを特徴とする。
【0034】
第5の発明の装置は、並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、前記複数の半導体パワーモジュールの各1が、第1の発明の半導体パワーモジュールであり、前記複数の半導体パワーモジュールの個数が、当該複数の半導体パワーモジュールの各1が備える前記少なくとも1個の入力端子の個数に1を加算した個数以下であり、前記複数の半導体パワーモジュールの各1の前記出力端子が、当該各1を除くすべての半導体パワーモジュールの前記少なくとも1個の入力端子の一つに、前記各1とは別の半導体パワーモジュールの前記出力端子とは重複しないように、接続されていることを特徴とする。
【0035】
第6の発明の装置は、並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、前記複数の半導体パワーモジュールの1つである主モジュールが第1の発明の半導体パワーモジュールであり、残りすべての半導体パワーモジュールである少なくとも1個の副モジュールの各1が第3の発明の半導体パワーモジュールであって、前記少なくとも1個の副モジュールの個数が、前記主モジュールの前記少なくとも1個の入力端子の個数以下であり、前記主モジュールの前記出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールのそれぞれの前記入力端子に接続されており、前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記出力端子が、前記主モジュールの前記入力端子の一つに、重複することなく接続されていることを特徴とする。
【0036】
第7の発明の装置は、並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、前記複数の半導体パワーモジュールの1つである主モジュールが第2の発明の半導体パワーモジュールであり、残りすべての半導体パワーモジュールである少なくとも1個の副モジュールの各1が第3の発明の半導体パワーモジュールであって、前記少なくとも1個の副モジュールの個数が、前記主モジュールの前記少なくとも1個の入力端子の個数以下であり、前記主モジュールの前記出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールのそれぞれの前記入力端子に接続されており、前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記出力端子が、前記主モジュールの前記入力端子の一つに、重複することなく接続されており、前記主モジュールの前記もう一つの出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記駆動回路に結合していることを特徴とする。
【0037】
【発明の実施の形態】
<1.実施の形態1>
はじめに、実施の形態1の複合パワーモジュールについて説明する。
【0038】
<1−1.装置の全体構成>
図1は、実施の形態1の複合パワーモジュールの構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール201は、互いに並列接続された同一構造の2つの半導体パワーモジュール10a,10bを備えている。そして、モジュール10a,10bのそれぞれは、1個の主回路素子1および1個ないし複数の主回路素子2を備えている。これらの主回路素子1、2は、図28の同一符号が付された素子と同一構造を有しており、しかも、図28の従来装置と同様に、互いに並列接続されている。
【0039】
モジュール10aに備わるコレクタ端子Cには、モジュール10a内のすべてのIGBT素子のコレクタ電極が接続されており、エミッタ端子Eには、すべてのIGBT素子のエミッタ電極が接続されている。同様に、モジュール10bに備わるコレクタ端子Cには、モジュール10b内のすべてのIGBT素子のコレクタ電極が接続されており、エミッタ端子Eには、すべてのIGBT素子のエミッタ電極が接続されている。
【0040】
そして、モジュール10aのコレクタ端子Cとモジュール10bのコレクタ端子Cとが互いに接続されており、双方のエミッタ端子Eも互いに接続されている。このように、2個のモジュール10a,10bは、互いに並列接続されることによって、負荷へ供給する電流を分担し合っている。
【0041】
図2は、装置201の代表的な利用形態であるインバータにおける装置201と負荷との関係を示す回路図である。図2に示すように、インバータでは、2個の装置201が直列に接続されて成る直列回路が、高電位電源線220と低電位電源線221との間に並列に3個介挿されている。直列回路を構成する2個の装置201の中の一方のコレクタ端子Cが高電位電源線220へ接続され、他方のエミッタ端子Eが低電位電源線221へ接続されている。そして、直列回路を構成する双方の装置201の接続部がモータなどの負荷Mへと接続されている。
【0042】
各装置201には、図示しない外部装置が接続され、この外部装置から装置201へと遮断および導通を指示する制御信号が入力される。この制御信号は、各直列回路を構成する2個の装置201が交互に導通、遮断するように、しかも、3個の直列回路の間で、動作の位相が120゜ずつずれるように入力される。その結果、三相モータとしての負荷Mが適切に駆動される。
【0043】
図1に戻って、主回路素子1には、駆動回路Dr、遮断回路SD、センシング回路Se、過大電圧検出回路OV、および過小電圧検出回路UVが接続されており、主回路素子2には、駆動回路Drと遮断回路SDとが接続されている。また、モジュール10a,10bのそれぞれには、さらに、温度検出回路OT、入出力インタフェースI/O、ロジック回路L、および診断回路PCが備わっている。
【0044】
駆動回路Drは、ロジック回路Lからの信号を増幅し、IGBT素子のゲート電極へ駆動信号SDrを入力する。センシング回路Seは、主回路素子1に含まれるIGBT素子を流れる主電流に比例した大きさの電圧信号すなわちセンシング信号SSEを送出する。遮断回路SDは、診断回路PCが出力する遮断信号SSDに応答して、IGBT素子を遮断するようにゲート電極を駆動する。また、過大電圧検出回路OVは、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧の大きさを検出し、検出信号SOVを送出する。さらに、過小電圧検出回路UVは、駆動回路Dr等の電源電圧が許容値以下にまで低いことを検出し、検出信号SUVを送出する。
【0045】
温度検出回路OTは、モジュール10a,10bのそれぞれに備わる図示しない銅ベース板の温度を検出して、温度検出信号SOTを送出する。銅ベース板は、主回路素子1,2が搭載される図示しないパワー回路基板の底面に固着された導熱板であり、主回路素子1,2で発生する損失熱を外部へと放出する機能を果たす。
【0046】
主回路素子1,2に比べて発熱量が無視できるほどに小さい回路部分である、駆動回路Dr、遮断回路SD、センシング回路Se、過大電圧検出回路OV、過小電圧検出回路UV、入出力インタフェースI/O、ロジック回路L、および診断回路PCは、パワー回路基板とは別個に設けられた制御回路基板3の上に展開されている。
【0047】
入出力インタフェースI/Oは、モジュール10a,10bの外部に備わるI/F106a,106bおよび並列接続される他のモジュールと、ロジック回路Lおよび診断回路PCとの間を中継する回路部分である。I/F106aの出力信号線は、分岐して各モジュール10a,10bの入出力インタフェースI/Oへと、それぞれの端子11を介して接続されている。そして、外部装置から入力される制御信号はI/F106aで変換された後、モジュール10a,10bのそれぞれに属する入出力インタフェースI/Oへと入力される。この入力信号は、入出力インタフェースI/Oを経由した後に、ロジック回路Lへ送出されると同時に、端子16を介して他のモジュールの端子12へも送出される。
【0048】
入出力インタフェースI/Oには、I/F106aから端子11を介して入力される上述の入力信号とともに、並列接続される他のモジュールに属する入出力インタフェースI/Oの出力信号が、端子12を介して入力される。これらの双方の入力信号は、入出力インタフェースI/Oを通過してロジック回路Lへと入力される。
【0049】
ロジック回路Lは、2つの入力信号、すなわち並列接続されるモジュール10a,10bの双方の入出力インタフェースI/Oの出力信号の中で、最も遅い信号を選択して駆動回路Drへと送出する。このため、並列接続される2個のモジュール10a,10bの間で、IGBT素子の正常時における導通・遮断の動作(オン・オフ動作)に時間的なずれがなく、正常時の動作が互いに同期して行われるという利点が得られる。
【0050】
診断回路PCは、過小電圧検出回路UV、過大電圧検出回路OV、センシング回路Se、および温度検出回路OTからの各種検出信号にもとづいて異常の発生の有無を判定するとともに、異常発生時には、遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。その結果、IGBT素子は遮断状態へと遷移するので、異常時の動作によるIGBT素子の破壊、損傷が回避される。
【0051】
診断回路PCは、異常発生時にはさらに、入出力インタフェースI/Oおよび端子13を介して、報知信号SFOSをインタフェース回路106bへと送出するとともに、端子15を介して、並列接続される他のモジュールに属する診断回路PCへと、異常検出信号SFO1(例えばモジュール10aの場合)を送出する。診断回路PCは、上記した過小電圧検出回路UVなどからの各種検出信号とともに、並列接続される他のモジュール(例えば10b)に属する診断回路PCが送出する異常検出信号SFO2を、端子14を介して受信する。そして、診断回路PCは、異常検出信号SFO2が入力されると、遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。
【0052】
このように、並列接続されるモジュール10a,10bのそれぞれの診断回路PCの判断結果が相手の診断回路PCへと入力されており、一方の診断回路PCで異常発生が検出されると、それに応答して他方の診断回路PCでも異常発生が検出され、それぞれの診断回路PCが同時に遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。このため、異常発生時のIGBT素子の遮断が、各モジュール10a,10bの間で同時に行われる。すなわち、異常発生時に一部のIGBT素子へ負担が集中するという従来装置における問題点が解消される。
【0053】
各モジュール10a,10bに備わる診断回路PCの報知信号SFOSを伝達する信号線は、互いに合流して単一のI/F106bへと接続されており、各診断回路PCのいずれかが報知信号SFOSを送出すると、変換された信号が外部装置へと送出される。すなわち、外部装置は、複数のモジュール10a,10bのすべてが正常に作動しているか、または、それらのいずれかで異常が発生しているか、のいずれであるかを認識可能である。
【0054】
なお、入出力インタフェースI/O、ロジック回路L、および診断回路PCを含む回路部分4は、好ましくは、単一の半導体チップに集積化するのが望ましい。そうすることで、装置の小型化およびコスト低減が促進されるだけでなく、装置の信頼性も向上する。
【0055】
<1−2.各種検出回路の構成>
図3は、過小電圧検出回路UV等の各種検出回路、および主回路素子1の、内部構成を示す回路図である。主回路素子1は、IGBT素子とこれに並列に接続されたFWD素子とによって構成されている。すなわち、FWD素子のアノード電極はIGBT素子のエミッタ電極へ接続され、カソード電極はコレクタ電極へ接続されている。FWD素子は、逆電圧の印加によるIGBT素子の損傷を防止する機能を果たす。
【0056】
この主回路素子1には、過小電圧検出回路UV、温度検出回路OT、駆動回路Dr、遮断回路SD、センシング回路Se、および、過大電圧検出回路OVが結合している。以下に、これら各種回路の構成を動作とともに説明する。
【0057】
まず、駆動回路Drでは、駆動信号SDrが比較器33によって一定の基準電位と比較され、その出力がバッファ34および抵抗RDRを通過して増幅器35へと入力される。増幅器35の出力はゲート抵抗Rを介してIGBT素子のゲート電極Gへと入力される。すなわち、駆動回路Drは、駆動信号SDrが基準電位よりも高いか低いかに応じて、IGBT素子がそれぞれ導通または遮断するような電圧信号をゲート・エミッタ間に付与する。なお、図示を略するが、駆動回路Drには基準電圧を生成する回路が備わっている。
【0058】
遮断回路SDでは、遮断信号SSDが抵抗RSDを介して駆動回路Drの増幅器35へと入力される。このため、遮断信号SSDがアクティブレベルすなわちロウレベルであるときには、増幅器35は、駆動信号SDrの値とは無関係に、IGBT素子を遮断する。
【0059】
過小電圧検出回路UVには、電圧監視素子32が備わっている。この電圧監視素子32には従来周知の素子が利用可能であり、接続された2本の電源線、すなわち高電位電源線30とIGBT素子のエミッタ電極に接続される低電位電源線31との間の電圧を常時監視する。これらの電源線30,31は、駆動回路Drに備わる増幅器35などの回路素子の電源電圧Vを供給しており、電圧監視素子32は、駆動回路Drの正常動作を保証する許容値以上の電圧が供給されているか否かを判定する。電圧監視素子32は、電源線30,31の間の電圧が許容値を下回るときには、検出信号SUVを出力する。
【0060】
センシング回路Seは、IGBT素子に備わるセンス電極Sとエミッタ電極E(低電位電源線31)との間に介挿されるセンス抵抗Rを備えている。センス電極Sには、コレクタ電流に比例した微弱な電流すなわちセンス電流が流れる。センス抵抗Rには、このセンス電流が流れる。このため、センス抵抗Rには、センス電流に比例した電圧、言い替えるとコレクタ電流に比例した電圧が発生する。センシング回路Seは、この電圧をセンシング信号SSEとして出力する。
【0061】
温度検出回路OTでは、ツェナーダイオードSAとダイオードDiとが直列に接続されて成る直列回路が、IGBT素子のコレクタ電極Cとゲート電極Gの間に介挿されている。すなわち、ツェナーダイオードSAのカソード電極とダイオードDiのアノード電極とが接続されており、ツェナーダイオードSAのアノード電極はIGBT素子のコレクタ電極に接続され、ダイオードDiのカソード電極はIGBT素子のゲート電極Gへ接続されている。
【0062】
また、ゲート電極Gとエミッタ電極Eとの間には、トランジスタQが介挿されている。すなわち、トランジスタQのコレクタ電極はIGBT素子のゲート電極Gに接続されており、エミッタ電極はIGBT素子のエミッタ電極Eに接続されている。そして、トランジスタQのベース電極はツェナーダイオードSAとダイオードDiとの接続部に接続されている。さらに、この接続部は、抵抗ROVを介して過大電圧検出回路OVの外部の診断回路PCへも接続される。すなわち、この接続部の電位は、検出信号SOVとして診断回路PCへ入力される。
【0063】
IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧が、ツェナーダイオードSAのツェナー電圧、ダイオードDiの順方向電圧、およびトランジスタQのベース・エミッタ間電圧の総和の値を超えると、トランジスタQが導通してゲート・エミッタ間電圧を引き下げるので、IGBT素子が遮断状態へと遷移する。同時に、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧は、この総和の値を超えないようにクランプされる。
【0064】
このように、過大電圧検出回路OVは、診断回路PCへ検出信号SOVを送出し、診断回路PCを介して間接的にIGBT素子を保護するだけでなく、コレクタ・エミッタ間電圧の過剰な上昇を直接に防止する機能をも併せて備えている。ただし、トランジスタQによるIGBT素子の遮断は過渡的なものであって、最終的には遮断回路SDの働きによって十分な遮断が行われる。
【0065】
温度検出回路OTには、高電位電源線30と低電位電源線31とに接続されて一定の基準電圧を生成する基準電圧生成素子36、および、この基準電圧生成素子36が出力する基準電圧を分圧する抵抗RrefとサーミスタTHとの直列回路が備わっている。そして、抵抗RrefとサーミスタTHとの接続部の電位が温度検出信号SOTとして診断回路PCへ入力される。サーミスタTHは、銅ベース板の温度を測定するのに適した装置内の部位に設置されており、温度変化に応じて抵抗値が変化する。したがって、温度検出信号SOTは、銅ベース板の温度を一意に反映した値となる。
【0066】
<1−3.診断回路PCの構成>
図4は、診断回路PCの内部構成を示す回路図である。診断回路PCには、多入力の論理和回路37が備わっている。そして、この論理和回路37の入力端子には比較器38,39,40,41およびインバータ42が接続されており、出力端子にはトランジスタ43,44および信号線21が接続されている。
【0067】
比較器38は、過小電圧検出回路UVからの検出信号SUVを所定の基準電圧と比較し、検出信号SUVが基準値を下回ると異常発生に対応するハイレベルの信号を出力する。比較器38の基準電圧は、電源電圧Vが許容値を超えて低下すると、それに対応して検出信号SUVがその基準電圧以下となるように設定されている。
【0068】
比較器39は、温度検出回路OTからの温度検出信号SOTを所定の基準電圧と比較し、温度検出信号SOTが基準値を下回るとハイレベルの信号を出力する。比較器39の基準電圧は、銅ベース板の温度が許容値を超えて上昇すると、それに対応して温度検出信号SOTがその基準電圧を超えるように設定されている。
【0069】
比較器40は、センシング回路Seからのセンシング信号SSEを所定の基準電圧と比較し、センシング信号SSEが基準値を上回るとハイレベルの信号を出力する。比較器40の基準電圧は、IGBT素子のコレクタ電流が許容値を超えて上昇すると、それに対応してセンシング信号SSEがその基準電圧を超えるように設定されている。
【0070】
比較器41は、過大電圧検出回路OVからの検出信号SOVを所定の基準電圧と比較し、検出信号SOVが基準値を上回るとハイレベルの信号を出力する。比較器41の基準電圧は、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧が許容値を超えて上昇すると、それに対応して検出信号SOVがその基準電圧を超えるように設定されている。
【0071】
論理和回路37の入力端子には、さらに、他のモジュール(例えば10b)に属する診断回路PCからの異常検出信号SFO2が、インバータ42を介して入力されている。したがって、論理和回路37は、4種類の検出信号のいずれかが異常発生に相当する値となったとき、または、他のモジュール(例えば10b)に属する診断回路PCが異常検出信号SFO2を出力したときに、ハイレベルの信号を出力する。このハイレベルの出力信号は、「装置201に異常が発生した」との判定結果に対応する。
【0072】
論理和回路37の出力信号は、信号線21を通して報知信号SFOSとして入出力インタフェースI/Oへと送出され、トランジスタ43を介して異常検出信号SFO1として他のモジュールに属する診断回路PCへと送出され、さらに、トランジスタ44を介して遮断信号SSDとして遮断回路SDへと送出される。
【0073】
なお、インバータ42の入力端子には、プルアップ抵抗45が接続されている。この入力端子には、他のモジュールに属する診断回路PCのオープンコレクタ状態に置かれているトランジスタ43が結合しているからである。また、図示を略するが、診断回路PCには、一定の基準電圧を各比較器38〜41ごとに生成する回路が備わっている。この基準電圧を生成する回路には、従来周知の素子を利用可能である。
【0074】
<1−4.入出力インタフェースI/Oの構成>
図5は、入出力インタフェースI/Oの内部構成を示す回路図である。入出力インタフェースI/Oには、端子11からの入力信号をロジック回路Lへと中継する中継回路46と、端子12からの入力信号をロジック回路Lへと中継する中継回路51とを備えている。中継回路48は、抵抗49,50が接続されることによってシュミットトリガと同様のバックラッシュ特性を持った反転増幅器47と、その出力に接続されるインバータ48とを有している。もう一つの中継回路51も、中継回路48と同一構造を成している。これらの中継回路46および中継回路51は、入力信号をロジック回路Lに適合した信号の形式に変換する役割を果たしている。
【0075】
入出力インタフェースI/Oには、さらに、診断回路PCから送出される報知信号SFOSをI/F106bへと中継するバッファ52が備わっている。
【0076】
<1−5.ロジック回路Lの構成>
図6は、モジュール10a,10bのそれぞれに属する入出力インタフェースI/Oおよびロジック回路Lと、それらの間を接続する配線とを示すブロック図である。ロジック回路Lについては、その内部構成が回路図で示されている。
【0077】
ロジック回路Lには、SRラッチ55、2入力の論理積(AND)回路56、および2入力のNOR回路57が備わっている。そして、このSRラッチ55のS端子(セット端子)には論理積回路56の出力が入力されており、R端子(リセット端子)にはNOR回路57の出力が入力されている。また、論理積回路56とNOR回路57のそれぞれの2入力の一つには、I/F106aからの入力信号が端子11および入出力インタフェースI/Oを経由して入力され、2入力の他の一つには、他のモジュールに属する入出力インタフェースI/Oの出力が、端子12および入出力インタフェースI/Oを経由して入力されている。
【0078】
したがって、SRラッチ55のQ端子出力は、端子11を経由した入力信号と端子12を経由した入力信号の中で、遅くハイレベルへと立ち上がる信号に同期して立ち上がり、遅くロウレベルへと立ち下がる信号に同期して立ち下がる。このQ端子出力が駆動信号SDrとして駆動回路Drへ送出される。すなわち、ロジック回路Lは、2つの入力信号の中の遅い方の入力信号を駆動信号SDrとして出力する。
【0079】
<1−6.装置の動作例>
図7は、装置201の動作例を示すタイミングチャートである。図7には、2個のモジュール10a,10bのそれぞれにおける、駆動回路Dr等の電源電圧VD1,VD2、駆動信号SDr1,SDr2、異常検出信号SFO1,SFO2、温度検出回路OTで検出される銅ベース板の温度Tb1,Tb2、IGBT素子のゲート・エミッタ間電圧VGE1,VGE2、および、IGBT素子のコレクタ・エミッタ間電圧VCE1,VCE2、IGBT素子のコレクタ電流IC1,IC2の波形が描かれている。また、図7において、駆動信号SDr1,SDr2については電圧波形が、異常検出信号SFO1,SFO2については電流波形がそれぞれ描かれている。すなわち、図7は従来装置の動作例を示す図29と比較し得るように描かれている。
【0080】
図7に示すように、装置201に電源が投入されると、電源電圧VD1,VD2が立ち上がる。電源電圧VD1,VD2がある一定以上に達すると、過小電圧検出回路UVが動作可能な状態となる。そして、過小電圧検出回路UVは電源電圧VD1,VD2が許容値以下であることを検出し、検出信号を診断回路PCへと送出する。診断回路PCは、この検出信号にもとづいて、異常の発生を検出し、異常検出信号SFO1,SFO2を出力する。
【0081】
電源電圧VD1,VD2が正常値に達すると、過小電圧検出回路UVは検出信号の送出を停止する。その結果、診断回路PCは異常検出信号SFO1,SFO2の送出を停止する。図7には、電源電圧VD1,VD2の立ち上がりにともなう、異常検出信号SFO1,SFO2の立ち上がりと回復の過程が描かれている。この装置201では、診断回路PCが出力する異常検出信号SFO1,SFO2が、それぞれ他の診断回路PCへと入力されるために、異常検出信号SFO1,SFO2は同一時期に回復する。すなわち、装置201では、並列接続されているモジュール10a,10bの双方が、同一時期に作動可能な状態へと移行するという利点が得られる。
【0082】
装置201が正常に動作する期間においては、駆動信号SDr1,SDr2がアクティブレベルに相当するロウレベルにあるとき、ゲート・エミッタ間電圧VGE1,VGE2がハイレベルとなってIGBT素子は導通し、それにともなってコレクタ電流IC1,IC2が増加する。逆に、駆動信号SDr1,SDr2がノーマルレベルに相当するハイレベルにあるときは、ゲート・エミッタ間電圧VGE1,VGE2はロウレベルとなってIGBT素子は遮断し、それにともなってコレクタ電流IC1,IC2はゼロに引き戻される。
【0083】
この正常動作では、ロジック回路Lの働きによって、駆動信号SDr1,SDr2が同一時期に変化するので、ゲート・エミッタ間電圧VGE1,VGE2が変化する時期も同一となる。したがって、正常動作時において、モジュール10a,10bのそれぞれに属するIGBT素子は、互いに同一時期に導通および遮断する。このため、装置201では、正常動作期間において一部のIGBT素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が解消される。
【0084】
正常動作に移行した後、駆動回路Dr等の動作に支障のない短い時間幅で電源電圧VD1が低下しても、過小電圧検出回路UVは検出信号を送出せず、装置201は正常動作を継続する。一方、図7中の符号”UV”が付された時期において、駆動回路Dr等の動作上許容できない時間幅で電源電圧VD2が低下すると、この異常はモジュール10bの過小電圧検出回路UVによって検出される。
【0085】
その結果、モジュール10bの診断回路PCは遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。同時に、この診断回路PCは、異常検出信号SFO2をモジュール10aの診断回路PCへと送出する。そして、モジュール10aに属する診断回路PCは、この異常検出信号SFO2を受けて、遮断信号SSDを送出する。すなわち、モジュール10a,10bの双方で、同時に遮断信号SSDの送出が行われる。
【0086】
図7の例では、時期”UV”の前後の期間において、駆動信号SDr1,SDr2はアクティブレベルに相当するロウレベルとなっている。このため、少なくとも遮断回路SDが作動するまでは、双方のモジュール10a,10bのIGBT素子は導通状態となっており、コレクタ電流IC1,IC2は上昇の過程にある。
【0087】
その後、モジュール10a,10bの双方の遮断回路SDが、遮断信号SSDに応答して同時に作動するために、双方のモジュールのIGBT素子は同時に遮断し、コレクタ電流IC1,IC2の双方がゼロへと減少する。このとき、双方のモジュールのIGBT素子が同時に遮断するので、一方のIGBT素子のコレクタ電流のみが過剰に増大することがない。すなわち、一部のIGBT素子に負担が集中する恐れがない。
【0088】
つぎに、負荷が短絡する異常が発生しているときに、駆動信号SDr1,SDr2がロウレベルとなって双方のモジュール10a,10bのIGBT素子が導通したとする。そうすると、モジュール10a,10bの双方においてIGBTのコレクタ電流が過度に上昇する。その結果、モジュール10a,10bのそれぞれにおいて、センシング回路Seからのセンシング信号SSEにもとづいて、診断回路PCが異常発生を検出する(図7の符号”SC”が付された時期)。
【0089】
その結果、遮断回路SDの働きで、各モジュール10a,10bのIGBT素子は遮断される。センシング信号SSEが所定の基準電圧を超える時期に、双方のモジュール10a,10bの間でずれがあっても、モジュール10a,10bのそれぞれに属する診断回路PCが上述した意味で互いに結合しているために、最も早い時期に基準値を超えたセンシング信号SSEに同期して、双方の診断回路PCが同時に遮断信号SSDを送出する。このため、各モジュール10a,10bのIGBT素子の遮断は同時に行われる。
【0090】
図8は、時期”SC”の前後の期間におけるコレクタ・エミッタ間電圧VCE1,VCE2およびコレクタ電流IC1,IC2の波形を拡大して示すタイミングチャートである。図8に示すように、モジュール10a,10bのそれぞれに属するIGBT素子の遮断が同時に行われるので、双方のコレクタ電流IC1,IC2は同時に減少へと転じる。そして、一方のモジュールに属するIGBT素子に負担が集中することがない。
【0091】
図7に戻って、IGBT素子が導通から遮断へと転じた時に、コレクタ電極とエミッタ電極との間に過大な電圧が印加される場合がある(符号”OV”が付された時期)。モジュール10a,10bのそれぞれに属する過大電圧検出回路OVがそれぞれ送出する検出信号SOVにもとづいて、診断回路PCは、過大電圧の発生を検出する。検出信号SOVが所定の基準電圧を超える時期に、双方のモジュール10a,10bの間でずれがあっても、最も早い時期に基準電圧を超えた検出信号SOVに同期して、双方の診断回路PCが同時に遮断信号SSDを送出するので、各モジュール10a,10bのIGBT素子の遮断は同時に行われる。したがって、一方のモジュールに属するIGBT素子に負担が集中する恐れがない。
【0092】
つぎに、正常動作を行っている中で、銅ベース板の温度が異常な高さに上昇すると、温度検出回路OTが送出する温度検出信号にもとづいて、診断回路PCは異常発生を検出する(符号”OT”が付された時期)。図7に示すように、この時期”OT”の直前までモジュール10a,10bのそれぞれに属するIGBT素子が導通状態にあったとすると、診断回路PCと遮断回路SDの働きによって、これらのIGBT素子は導通状態から遮断状態へと転じる。そうすることで、IGBT素子等を異常な温度上昇から保護する。
【0093】
温度検出信号SOTが所定の基準電圧を超えて低下する時期に、双方のモジュール10a,10bの間でずれがあっても、最も早い時期に基準電圧を超えて低下した検出信号SOVに同期して、双方の診断回路PCが同時に遮断信号SSDを送出するので、各モジュール10a,10bのIGBT素子の遮断は同時に行われる。したがって、一方のモジュールに属するIGBT素子に負担が集中することがない。
【0094】
以上に述べたように、複合パワーモジュール201では、並列接続された半導体パワーモジュール10a,10bの間で、IGBT素子が、正常動作時、異常発生時を問わず常に、時期を一致させて動作する。このため、いずれかのモジュールに属するIGBT素子に負担が集中するという、従来装置に付随した問題点が解消される。
【0095】
また、装置201では、互いに並列接続されるモジュール10a,10bが、同一構成を有するので、モジュールとして1種類を準備すれば足りる。このため、装置201では、その製造に要するコストを低く抑えることができるという利点も得られる。
【0096】
<2.実施の形態2>
実施の形態1では、2個の半導体パワーモジュールが並列接続されてなる複合パワーモジュールの一例を示したが、この複合パワーモジュールは、3個以上の半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールへと拡張することが可能である。ここでは、拡張された複合パワーモジュールについて説明する。
【0097】
図9は、この実施の形態の複合パワーモジュールの全体構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール202は、互いに並列に接続された3個の半導体パワーモジュール60a,60b,60cを備えている。これらのモジュール60a,60b,60cは、互いに同一構造を成している。代表として、モジュール60aの内部構造を、図10のブロック図に示す。
【0098】
モジュール60a(,60b,60c)では、入出力インタフェースI/Oが、3個の端子61,62,63から入力される3個の入力信号をロジック回路Lへと中継しており、2個の端子65,66を通じて2個の異常検出信号SFO2,SFO3が診断回路PCへと入力されている点が、装置201を構成するモジュール10a(,10b)とは特徴的に異なっている。
【0099】
I/F106aの出力信号線は、分岐して各モジュール60a,60b,60cの入出力インタフェースI/Oへと、それぞれの端子61を介して接続されている。そして、I/F106aから入力される入力信号は、モジュール60a,60b,60cのそれぞれの端子61を介して、それぞれの入出力インタフェースI/Oへと入力される。入出力インタフェースI/Oを通過したこの入力信号は、ロジック回路Lへ送出されると同時に、端子68を介して他の2個のモジュールの端子62(または63)へと送出される。
【0100】
入出力インタフェースI/Oには、端子61を介して入力される入力信号とともに、並列接続される他の2個のモジュールに属する入出力インタフェースI/Oの出力信号が、端子62,63を介してそれぞれ入力される。これらの3個の入力信号は、入出力インタフェースI/Oを通過してロジック回路Lへと入力される。
【0101】
ロジック回路Lは、3つの入力信号、すなわち並列接続されるモジュール60a,60b,60cのすべての入出力インタフェースI/Oの出力信号の中で、最も遅い信号を選択して駆動回路Drへと送出する。このため、並列接続される3個のモジュール60a,60b,60cの間で、IGBT素子の正常時における導通・遮断の動作(オン・オフ動作)に時間的なずれがなく、正常時の動作が互いに同期して行われるという利点が得られる。
【0102】
診断回路PCは、異常が発生したときに、入出力インタフェースI/Oおよび端子64を介して、報知信号SFOSをインタフェース回路106bへと送出するとともに、端子67を介して、並列接続される他のモジュールに属する診断回路PCへと、異常検出信号SFO1(例えばモジュール60aの場合)を送出する。診断回路PCは、過小電圧検出回路UV等からの各種検出信号とともに、並列接続される他の2個のモジュール(例えば、60b,60c)に属する診断回路PCが送出する異常検出信号SFO2,SFO3を、端子65,66を介して受信する。そして、診断回路PCは、異常検出信号SFO2,SFO3のいずれかが入力されると、遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。
【0103】
このように、並列接続されるモジュール60a,60b,60cのそれぞれの診断回路PCの判断結果が他の診断回路PCへと入力されており、一個の診断回路PCで異常発生が検出されると、それに応答して他の診断回路PCでも異常発生が検出され、それぞれの診断回路PCが同時に遮断信号SSDを遮断回路SDへと送出する。このため、異常発生時のIGBT素子の遮断が、各モジュール60a,60b,60cの間で同時に行われる。すなわち、異常発生時に一部のIGBT素子へ負担が集中するという従来装置における問題点が解消される。
【0104】
各モジュール60a,60b,60cに備わる診断回路PCの報知信号SFOSを伝達する信号線は、互いに合流して単一のI/F106bへと接続されており、各診断回路PCのいずれかが報知信号SFOSを送出すると、変換された信号が外部装置へと送出される。すなわち、外部装置は、複数のモジュール60a,60b,60cのすべてが正常に作動しているか、または、それらのいずれかで異常が発生しているか、のいずれであるかを認識可能である。
【0105】
図11は、診断回路PCの内部構成を示す回路図である。診断回路PCには、多入力の論理和回路70が備わっている。そして、この論理和回路70の入力端子には比較器38,39,40,41およびインバータ42に加えて、もう一つのインバータ71が接続されている点が、モジュール10a(,10b)に属する診断回路PCとは特徴的に異なっている。
【0106】
2個のインバータ42,71には、他のモジュール(例えば60b,60c)のそれぞれに属する診断回路PCが出力する異常検出信号SFO2,SFO3が、それぞれ入力される。したがって、論理和回路70は、4種類の検出信号のいずれかが異常発生に相当する値となったとき、または、他のモジュール(例えば60b,60c)のいずれかに属する診断回路PCが、異常検出信号SFO2またはSFO3を出力したときに、ハイレベルの信号を出力する。このハイレベルの出力信号は、「装置202に異常が発生した」との判定結果に対応する。
【0107】
論理和回路70の出力信号は、図4に示した診断回路PCにおけると同様に、信号線21を通して報知信号SFOSとして入出力インタフェースI/Oへと送出され、トランジスタ43を介して異常検出信号SFO1として、他の2個のモジュールのそれぞれに属する診断回路PCへと送出され、さらに、トランジスタ44を介して遮断信号SSDとして遮断回路SDへと送出される。
【0108】
なお、インバータ71の入力端子にも、インバータ42の入力端子と同様に、プルアップ抵抗72が接続されている。また、診断回路PCには、一定の基準電圧を各比較器38〜41ごとに生成する回路(図示を略する)が備わっている点も、図4の診断回路PCと同様である。
【0109】
図12は、入出力インタフェースI/Oの内部構成を示す回路図である。入出力インタフェースI/Oでは、端子61,62からの入力信号をそれぞれロジック回路Lへと中継する中継回路46,51に加えて、端子63からの入力信号をロジック回路Lへと中継するもう一つの中継回路74を備わる点が、図5に示した入出力インタフェースI/Oとは特徴的に異なっている。中継回路74の構造は、他の中継回路46,51と同一である。
【0110】
図13は、モジュール60a(,60b,60c)に属するロジック回路Lの内部構成を示す回路図である。ロジック回路Lには、SRラッチ75、3入力の論理積回路76、および3入力のNOR回路77が備わっている。そして、このSRラッチ75のS端子(セット端子)には論理積回路76の出力が入力されており、R端子(リセット端子)にはNOR回路77の出力が入力されている。
【0111】
また、論理積回路76とNOR回路77のそれぞれの3入力の一つには、I/F106aからの入力信号が端子61および入出力インタフェースI/Oを経由して入力され、3入力の他の二つには、他の2個のモジュールにそれぞれ属する入出力インタフェースI/Oの出力が、端子62,63および入出力インタフェースI/Oを経由して入力されている。
【0112】
したがって、SRラッチ75のQ端子出力は、端子61を経由した入力信号、および端子62,63を経由した入力信号の中で、最も遅くハイレベルへと立ち上がる信号に同期して立ち上がり、最も遅くロウレベルへと立ち下がる信号に同期して立ち下がる。このQ端子出力が駆動信号SDrとして駆動回路Drへ送出される。すなわち、ロジック回路Lは、3つの入力信号の中の最も遅い入力信号を選択し、駆動信号SDrとして出力する。
【0113】
以上の説明では、3個の半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールの例を取り上げたが、4個以上を並列接続して成る複合パワーモジュールも同様に構成可能であり、しかも、従来装置における問題点も同様に解消されることは、以上の説明から明瞭である。すなわち、装置201から装置202への拡張を単純に延長することによって、4個以上を並列接続して成る複合パワーモジュールを構成することが可能である。
【0114】
<3.実施の形態3>
実施の形態1、2の説明から明らかなように、複合パワーモジュールを構成する半導体パワーモジュールには、2個並列用、3個並列用、・・・等の用途があらかじめ定まっている。しかしながら、一般にn個並列用の半導体パワーモジュールは、単独で使用することをも含めて、n−1個以下の並列接続を行って使用することが可能である。ここでは、図10に示した3個並列用の半導体パワーモジュールを例として、このことを説明する。
【0115】
図14は、2個のモジュール60a,60b(図10)が並列に接続されて成る複合パワーモジュールの構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール203では、モジュール60a,60bのそれぞれにおいて、端子62と端子63とがジャンパ線Jで短絡され、端子64と端子65とがもう一つのジャンパ線Jで短絡されている。
【0116】
図12および図13の回路図から容易に理解し得るように、端子62と端子63とがジャンパ線Jで短絡されることによって、入出力インタフェースI/Oおよびロジック回路Lは、2個並列用のモジュール10aの入出力インタフェースI/O(図5)およびロジック回路L(図6)と等価となる。また、図11の回路図から明らかなように、端子64と端子65とがジャンパ線Jで短絡されることによって、診断回路PCは、2個並列用のモジュール10aの診断回路PC(図4)と等価となる。
【0117】
すなわち、モジュール60a,60bの内部回路には何等の変更を加えることなく、外部に露出する端子にジャンパ線J,Jによる処理を施すだけで、モジュール60a,60bは、あたかも図1に示したモジュール10a,10bと等価となる。そして、図14に示すモジュール60a,60bの端子61,62(または63),64(または65),66,67,68は、図1に示したモジュール10a,10bの端子11、12、13、14、15、16とそれぞれ等価となる。
【0118】
端子61〜68のそれぞれを、対応する端子11〜16と同様に取り扱って、図1に示す装置201と同様の結線を、モジュール60a,60bの端子61〜68、およびI/F106a,106bとの間に施すことによって、図14に示した装置203が得られる。このように構成される装置203の機能および特性が、装置201と同等であることは明かである。
【0119】
なお、図11の診断回路PCにおいて、端子64,65に接続されるインバータ42,71の入力端子には、それぞれプルアップ抵抗45,72が接続されているので、端子64,65に対してジャンパ線Jを使用することなく、それらの中の使用されない方は開放しておいてもよい。
【0120】
つぎに、3個並列用のモジュール60aを単独で使用する形態について説明する。図15は、この使用の形態を示す結線図である。図15に示すように、端子61,62,63はジャンパ線J,Jで短絡されている。そして、I/F106aにはこれらの短絡された端子のいずれかが接続され、I/F106bには端子64が接続される。残りの端子65、66、67、68は使用されず、しかも開放したままで放置される。入力端子である端子65,66には、上述したようにプルアップ抵抗45,72が接続されているので、これらの端子65,66を開放しておいても支障がない。
【0121】
図1に示した2個並列用のモジュール10aについても、同様の端子の処理を施すことによって単独で使用することが可能である。すなわち、端子11,12をジャンパ線で短絡することによって、モジュール10aを単独で使用することが可能となる。
【0122】
以上の説明から明らかなように、一般にn個並列用の半導体パワーモジュールは、単独での使用を含めて、n−1個以下の並列接続での使用が可能である。すなわち、一種類の多数並列用の半導体パワーモジュールを準備するだけで、並列接続の個数の異なる多種類の複合パワーモジュールが構成可能である。このように、多数並列用の半導体パワーモジュールは汎用性が高いので、多数並列用の半導体パワーモジュールの種類を限定することが可能である。すなわち、小品種多数生産によって製造コストを低減することができる。
【0123】
<4.実施の形態4>
以上の実施の形態では、複合パワーモジュールを構成する複数の半導体パワーモジュールは、互いに同一構造をなしていた。ここでは、構造の異なる半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールの例について説明する。
【0124】
<4−1.装置の全体構成>
図16は、この実施の形態の複合パワーモジュールの全体構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール204は、互いに並列に接続された2個の半導体パワーモジュール80,81を備えている。これらのモジュール80,81の間では、互いに構造が異なっており、実施の形態1〜3とは異なりそれぞれの役割は同等ではない。すなわち、2個のモジュール80,81は、あたかも主従の関係をなしている。
【0125】
一方のモジュール(主モジュール)80には主インタフェース84が備わっており、他方のモジュール(副モジュール)81には副インタフェース86が備わっている。I/F106aから送出される入力信号は、モジュール80の端子91を介して、主インタフェース84へと入力される。主インタフェース84は、この入力信号を中継して、駆動信号SDrとして駆動回路Drへ送出すると同時に、端子92を介してモジュール81へ送出する。モジュール81では、主インタフェース84から送出された信号を、端子96を介して副インタフェース86で受信する。副インタフェース86は、受信した信号を中継して、駆動回路Drへ駆動信号SDrとして送出する。
【0126】
このように、I/F106aが送出する信号は、モジュール80でのみ受信し、このモジュール80を介して他のモジュール81へと二次的に入力される。このため、従来装置において問題となっていた、I/F106aから各モジュールまでの配線の長さ等の不均一に起因する入力信号の時期のずれの問題が緩和され、その結果、正常時におけるIGBT素子の動作のずれの問題が緩和される。
【0127】
さらに、一方のモジュール80には主診断回路85が備わっており、他方のモジュール81には副診断回路87が備わっている。主診断回路85は、モジュール80に備わる各種検出回路から送出される各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTにもとづいて、異常の発生を検出する。そして、主診断回路85は、異常の発生を検出すると、遮断回路SDへ遮断信号SSDを送出するとともに、端子93を介して異常検出信号SFO1をI/F106bとモジュール81とに送出する。
【0128】
モジュール81では、モジュール80から送出された異常検出信号SFO1は、端子97で受信され、そのまま遮断回路SDへと入力される。すなわち、異常検出信号SFO1は、モジュール81の遮断信号SSDとして利用される。
【0129】
モジュール81に備わる副診断回路87は、モジュール81に備わる各種検出回路から送出される各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTにもとづいて、異常の発生を検出する。そして、副診断回路87は、異常の発生を検出すると、モジュール81の遮断回路SDへ遮断信号SSDを送出することなく、端子98を介して異常検出信号SFO2をモジュール80に送出する。モジュール80では、この異常検出信号SFO2は端子94を介して主診断回路85へと入力される。
【0130】
主診断回路85は、上述した各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTだけでなく、副診断回路87から送出される異常検出信号SFO2にも基づいて異常の発生を検出する。すなわち、主診断回路85は、異常検出信号SFO2を受信すると、各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTの値とは無関係に、遮断信号SSDおよび異常検出信号SFO1を出力する。
【0131】
このように、モジュール80,81のいずれかにおいて、各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値に達すると、モジュール80,81の双方で遮断信号SSDの送出が行われ、それぞれに属するIGBT素子が遮断する。しかも、各モジュール80,81における遮断信号SSDの送出は、単一の主診断回路85によって行われるので、各モジュール80,81の間で、遮断信号SSDの送出時期にずれが発生しない。したがって、異常発生時のIGBT素子の遮断が、各モジュール80,81の間で同時に行われる。すなわち、異常発生時に一部のIGBT素子へ負担が集中するという従来装置における問題点が解消される。
【0132】
上述したように、モジュール80,81のいずれかにおいて、各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値に達すると、主診断回路85は異常検出信号SFO1をI/F106bへと送出する。このため、このI/F106bに接続される外部装置は、複数のモジュール80,81の双方が正常に作動しているか、または、それらのいずれかで異常が発生しているか、のいずれであるかを認識可能である。
【0133】
装置204は以上のように動作するので、その動作は図7および図8のタイミングチャートで例示することができる。
【0134】
<4−2.装置各部の内部構成>
図17は、主診断回路85の内部構成例を示す回路図である。図17を図4と比較すると明らかなように、主診断回路85は、図4に示した診断回路PCから信号線21を除去したものと同一構成である。
【0135】
図18は、副診断回路87の内部構成例を示す回路図である。副診断回路87には、多入力の論理和回路22が備わっている。図18と図17とを比較すると明らかなように、主診断回路87は、主診断回路85において、論理和回路37を論理和回路22へ置き換え、さらに、インバータ42、プルアップ抵抗45、およびトランジスタ44を除去したものと同一構成である。
【0136】
副診断回路87の論理和回路22は、4種類の検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値となったときに、ハイレベルの信号を出力する。したがって、論理和回路22のハイレベルの出力信号は、「モジュール81に異常が発生した」との判定結果に対応する。
【0137】
また、主診断回路85の論理和回路37は、4種類の検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値となったとき、または、他のモジュール81に属する副診断回路87が、異常検出信号SFO2を出力したときに、ハイレベルの信号を出力する。したがって、論理和回路37のハイレベルの出力信号は、「装置204に異常が発生した」との判定結果に対応する。
【0138】
また、主診断回路85、副診断回路87のいずれにおいても、図4の診断回路PCと同様に、一定の基準電圧を各比較器38〜41ごとに生成する回路(図示を略する)が備わっている。
【0139】
図19は、主インタフェース84の内部構成を示す回路図である。主インタフェース84には、図5に示した入出力インタフェースI/Oと同様に、I/F106aに接続される端子91と駆動回路Drとを中継する中継回路46が備わっている。そして、中継回路46を構成する反転増幅器47とインバータ48との接続部から信号線が分岐しており、この信号線はもう一つのインバータ120を介して端子92へと接続されている。このため、端子91を介して入力される信号は、駆動回路Drと端子92へと分配される。
【0140】
図20は、副インタフェース86の内部構成を示す回路図である。副インタフェース86には、主インタフェース84と同様に、主インタフェース84からの信号を受信する端子96と駆動回路Drとを中継する中継回路46が備わっている。すなわち、端子91から入力される信号は、主インタフェース84の反転増幅器47およびインバータ120を通過し、さらに、副インタフェース86を中継することによって、モジュール81に属する駆動回路Drへと送出される。
【0141】
以上のように、モジュール80,81はいずれも、モジュール10a(,10b)に比べて構造が簡単であるという利点がある。特に、モジュール81は、モジュール80に比べてさらに簡単な構造を有している。すなわち、これらのモジュール80,81は、比較的低廉なコストで製造可能である。
【0142】
<5.実施の形態5>
実施の形態4に示した複合パワーモジュールは、3個以上の半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールへと拡張することが可能である。ここでは、拡張された複合パワーモジュールについて説明する。
【0143】
図21は、この実施の形態の複合パワーモジュールの全体構成を示すブロック図である。この複合パワーモジュール205は、互いに並列に接続された3個の半導体パワーモジュール90,81a,81bを備えている。モジュール(副モジュール)81a,81bは、互いに同一構造を成しており、しかも、図16に示したモジュール81と同一構造を成している。モジュール(主モジュール)90の内部構成を、図22のブロック図に示す。
【0144】
モジュール90には、主診断回路85に代わって主診断回路99が備わっている点が、図16に示したモジュール80とは特徴的に異なっている。主診断回路99が異常発生時に送出する異常検出信号SFO1は、端子93を介して、I/F106b、および、他の2個のモジュール81a,81bの双方の端子97へと送出される。また、主診断回路99には、モジュール81a,81bのそれぞれに属する副診断回路87が送出する異常検出信号SFO2,SFO3が、それぞれ端子94,95を介して入力される。そして、主診断回路99は、異常検出信号SFO2,SFO3のいずれかを受信すると、遮断信号SSDおよび異常検出信号SFO1を出力する。
【0145】
したがって、モジュール90,81a,81bのいずれかにおいて、各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値に達すると、モジュール90,81a,81bのすべてにおいて遮断信号SSDの送出が行われ、それぞれに属するIGBT素子が遮断する。しかも、各モジュール90,81a,81bにおける遮断信号SSDの送出は、単一の主診断回路99によって行われるので、各モジュール90,81a,81bの間で、遮断信号SSDの送出時期にずれが発生しない。したがって、異常発生時のIGBT素子の遮断が、各モジュール90,81a,81bの間で同時に行われる。すなわち、異常発生時に一部のIGBT素子へ負担が集中するという従来装置における問題点は、装置304と同様にこの装置305においても解消される。
【0146】
また、モジュール90,81a,81bのいずれかにおいて、各種検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値に達すると、主診断回路99は異常検出信号SFO1をI/F106bへと送出する。このため、I/F106bに接続される外部装置は、複数のモジュール90,81a,81bのすべてが正常に作動しているか、または、それらのいずれかで異常が発生しているか、のいずれであるかを認識可能である。
【0147】
さらに、モジュール90の端子91は、モジュール81a,81bの双方の端子96へと接続されている。したがって、I/F106aが送出する信号は、モジュール80で一旦受信され、さらに、他のモジュール81a,81bへと二次的に入力される。このため、正常時におけるIGBT素子の動作のずれの問題は、装置204と同様にこの装置205においても緩和される。
【0148】
図23は、主診断回路99の内部構成例を示す回路図である。主診断回路99では、多入力の論理和回路122が備わっており、この論理和回路122の入力端子には比較器38,39,40,41およびインバータ42に加えて、もう一つのインバータ123が接続されている点が、図17の主診断回路85とは特徴的に異なっている。インバータ123の入力端子にも、インバータ42の入力端子と同様に、プルアップ抵抗124が接続されている。
【0149】
論理和回路122は、4種類の検出信号SUV,SOV,SSE,SOTのいずれかが異常発生に相当する値となったとき、または、他の2個のモジュール81a,81bのいずれかにに属する副診断回路87が、異常検出信号SFO2またはSFO3を出力したときに、ハイレベルの信号を出力する。したがって、論理和回路122のハイレベルの出力信号は、「装置205に異常が発生した」との判定結果に対応する。また、一定の基準電圧を各比較器38〜41ごとに生成する回路(図示を略する)が備わっている点は、図17の主診断回路85と同様である。
【0150】
以上の説明では、3個の半導体パワーモジュールが並列接続されて成る複合パワーモジュールの例を取り上げたが、4個以上を並列接続して成る複合パワーモジュールも同様に構成可能であり、しかも、従来装置における問題点も同様に解消されることは、以上の説明から明瞭である。すなわち、装置204から装置205への拡張を単純に延長することによって、4個以上を並列接続して成る複合パワーモジュールを構成することが可能である。
【0151】
並列接続されるモジュールの個数を増やすときに、変更すべきモジュールは、主インタフェース84を有する1個の主モジュールのみであり、副インタフェース86を有する他のモジュールすなわち副モジュールは、モジュール81と同一構成のままである。すなわち、モジュール81は、多種類の複合パワーモジュールに共通に利用可能である。このことは、製造コストの低減につながる。
【0152】
さらに、主モジュールにおいても、一般にn個並列用の主モジュールは、単独での使用を含めて、n−1個以下の並列接続での使用が可能である。例えば、図22に示したモジュール90は、端子95を空き端子とするだけで、2個並列での使用が可能であり、端子94,95の双方を空き端子とするだけで、単独での使用が可能である。したがって、多数並列用の主モジュールの種類を限定することが可能である。すなわち、小品種多数生産によって製造コストをさらに低減することができる。
【0153】
<6.実施の形態6>
実施の形態1で説明したように、モジュール10a(10b)を構成する回路部分4は1個の半導体チップに集積化(ワンチップ化)するのが望ましい。このことは、図10に示したモジュール60a(,60b,60c)においても同様である。また、図16に示したモジュール80を構成する主インタフェース84と主診断回路85、あるいは、モジュール81を構成する副インタフェース86と副診断回路87も、同様にワンチップ化するのが望ましい。同様のことは、図22に示したモジュール90についても当てはまる。
【0154】
さらに、実施の形態1〜5のそれぞれにおいて、図24〜図27に示すような望ましいワンチップ化の様々な形態が有り得る。図24は、主回路素子1に結合する各種回路、すなわち、過小電圧検出回路UV、過大電圧検出回路OV、駆動回路Dr、遮断回路SD、およびセンシング回路Seをワンチップに集積化した例を示している。図示を略するが、この例では、主回路素子2に結合する駆動回路Drおよび遮断回路SDも、同様にワンチップ化される。
【0155】
図25は、図24に示した各種回路と主回路素子1のIGBT素子とをワンチップ化した例を示している。図示を略するが、主回路素子2のIGBT素子とこれに結合する駆動回路Drおよび遮断回路SDもワンチップ化される。
【0156】
図26は、IGBT素子に制御回路基板3の上に展開されるすべての回路を加えてワンチップ化した例を示す。さらに、図27は、図25の例に、さらにFWD素子を加えてワンチップ化した例を示す。
【0157】
以上のようなワンチップ化を行うことで、装置の小型化およびコスト低減が促進されるだけでなく、装置の信頼性も向上する。
【0158】
<7.変形例>
以上の実施の形態では、半導体パワーモジュールが備える半導体パワースイッチング素子として、IGBT素子が用いられた。しかしながら、IGBT素子に限らず、例えば、MOSFET、MCT(MOS制御型サイリスタ)、あるいは、電流制御型の素子であるバイポーラトランジスタなどであってもよい。ただし、駆動回路の構成を簡素なものとする上で、電圧制御型の半導体パワースイッチング素子が使用されるのが望ましい。
【0159】
【発明の効果】
第1の発明のモジュールでは、入力端子の個数に1を加算した個数以下の複数個のモジュールを並列に接続したときに、各モジュールの出力端子を、他のすべてのモジュールの入力端子の一つに、重複なしで接続することができる。このとき、いずれか1個のモジュールで異常が発生すると、そのモジュールでは遮断信号が送出され、他のすべてのモジュールには異常検出信号が送出される。
【0160】
そして、他のすべてのモジュールには、この異常検出信号が特定の信号として入力されるので、他のすべてのモジュールにおいても遮断信号が送出される。したがって、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで同時に遮断信号が送出されるので、半導体パワースイッチング素子が同時に遮断する。このため、異常発生時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が解消される。
【0161】
第2の発明のモジュールは、この第2の発明のモジュールを主モジュールとし、第3の発明のモジュールを副モジュールとし、主モジュールとこの主モジュールの入力端子の個数以下の副モジュールとを、並列に接続して使用するのに適している。このような並列接続を行うときに、主モジュールの出力端子を副モジュールのそれぞれの入力端子に接続し、副モジュールの各1の出力端子を、主モジュールの入力端子の一つに、重複することなく接続し、主モジュールのもう一つの出力端子を、副モジュールの各1の駆動回路へと結合することができる。
【0162】
このとき、主モジュールで異常が発生すると、この主モジュールでは遮断信号が送出され、すべての副モジュールには異常検出信号が送出される。そして、すべての副モジュールには、この異常検出信号が遮断信号として入力されるので、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで同時に遮断信号が遮断回路へと入力される。すなわち、異常発生時の半導体パワースイッチング素子の遮断が同時に行われる。
【0163】
また、副モジュールのいずれか一つで異常が発生すると、その副モジュールから主モジュールへと異常検出信号が送出される。その結果、主モジュールでは遮断信号が送出され、すべての副モジュールには異常検出信号が送出されるので、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで、同時に遮断信号が遮断回路へと入力される。このため、異常発生時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が解消される。
【0164】
また、主モジュールのもう一つの入力端子へ制御信号を入力すると、この制御信号は出力端子の駆動回路へと伝達されるとともに、もう一つの出力端子からすべての副モジュールの駆動回路へと入力される。このため、制御信号が駆動回路へと達する時期の、各モジュール間でのずれが緩和される。すなわち、正常時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が改善される。
【0165】
第3の発明のモジュールは、第2の発明に関する上記説明で述べた形態で、第2の発明のモジュールと並列に接続して使用するのに適している。
【0166】
第4の発明のモジュールでは、前記検出回路、前記駆動回路、および前記遮断回路を含む回路部分が、1個の半導体チップに集積化(ワンチップ化)されているので、モジュールの小型化、低コスト化がもたらされるだけでなく、モジュールの信頼性が高まる。
【0167】
第5の発明の複合モジュールでは、入力端子の個数に1を加算した個数以下の複数個の第1の発明のモジュールが並列に接続され、しかも、各モジュールの出力端子が、他のすべてのモジュールの入力端子の一つに、重複なしで接続されている。このため、いずれか1個のモジュールで異常が発生すると、そのモジュールでは遮断信号が送出され、他のすべてのモジュールには異常検出信号が送出される。
【0168】
そして、他のすべてのモジュールには、この異常検出信号が特定の信号として入力されるので、他のすべてのモジュールにおいても遮断信号が送出される。したがって、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで同時に遮断信号が送出されるので、半導体パワースイッチング素子が同時に遮断する。このため、異常発生時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が解消される。
【0169】
第6の発明の複合モジュールでは、第1の発明のモジュールを主モジュールとし、第3の発明のモジュールを副モジュールとし、主モジュールとこの主モジュールの入力端子の個数以下の副モジュールとが、並列に接続されている。しかも、主モジュールの出力端子が副モジュールのそれぞれの入力端子に接続され、副モジュールの各1の出力端子が、主モジュールの入力端子の一つに、重複することなく接続されている。
【0170】
このため、主モジュールで異常が発生すると、この主モジュールでは遮断信号が送出され、すべての副モジュールには異常検出信号が送出される。そして、すべての副モジュールには、この異常検出信号が遮断信号として入力されるので、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで同時に遮断信号が遮断回路へと入力される。すなわち、異常発生時の半導体パワースイッチング素子の遮断が同時に行われる。
【0171】
また、副モジュールのいずれか一つで異常が発生すると、その副モジュールから主モジュールへと異常検出信号が送出される。その結果、主モジュールでは遮断信号が送出され、すべての副モジュールには異常検出信号が送出されるので、異常が発生したモジュールを含めてすべてのモジュールで、同時に遮断信号が遮断回路へと入力される。このため、異常発生時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が解消される。
【0172】
第7の発明の複合モジュールでは、第2の発明のモジュールを主モジュールとし、第3の発明のモジュールを副モジュールとし、主モジュールとこの主モジュールの入力端子の個数以下の副モジュールとが、並列に接続されている。しかも、主モジュールのもう一つの出力端子が、副モジュールの各1の駆動回路へと結合されている。
【0173】
このため、主モジュールのもう一つの入力端子へ制御信号を入力すると、この制御信号は出力端子の駆動回路へと伝達されるとともに、もう一つの出力端子からすべての副モジュールの駆動回路へと入力される。このため、制御信号が駆動回路へと達する時期の、各モジュール間でのずれが緩和される。すなわち、正常時において一部の素子に負担が集中するという従来装置に見られた問題点が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置と負荷との接続を示す回路図である。
【図3】図1の装置の各種検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】図1の装置の診断回路の構成を示す回路図である。
【図5】図1の装置の入出力インタフェースの構成を示す回路図である。
【図6】図1の装置のロジック回路の構成を示す回路図である。
【図7】図1の装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図8】図7の一部を拡大して示すタイミングチャートである。
【図9】実施の形態2の装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9の装置のモジュールの構成を示すブロック図である。
【図11】図9の装置の診断回路の構成を示す回路図である。
【図12】図9の装置の入出力インタフェースの構成を示す回路図である。
【図13】図9の装置のロジック回路の構成を示す回路図である。
【図14】実施の形態3の装置の構成を示すブロック図である。
【図15】図14の装置のモジュールの使用形態を示すブロック図である。
【図16】実施の形態4の装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16の装置の主診断回路の構成を示す回路図である。
【図18】図16の装置の副診断回路の構成を示す回路図である。
【図19】図16の装置の主インタフェースの構成を示す回路図である。
【図20】図16の装置の副インタフェースの構成を示す回路図である。
【図21】実施の形態5の装置の構成を示すブロック図である。
【図22】図21の装置の主モジュールの構成を示すブロック図である。
【図23】図21の装置の主診断回路の構成を示すブロック図である。
【図24】実施の形態6のワンチップ化の一例を示すブロック図である。
【図25】実施の形態6のワンチップ化の一例を示すブロック図である。
【図26】実施の形態6のワンチップ化の一例を示すブロック図である。
【図27】実施の形態6のワンチップ化の一例を示すブロック図である。
【図28】従来の装置の構成を示すブロック図である。
【図29】図28の装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図30】図29の一部を拡大して示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
IGBT IGBT素子(半導体パワースイッチング素子)、Dr 駆動回路、11,12,14,61,62,63,65,66,91,94,95 端子(入力端子)、13,15,67,68,92,93 端子(出力端子)、L ロジック回路(選択回路)、PC 遮断回路、85,99 主診断回路(診断回路)、87 副診断回路(診断回路)、UV 過小電圧検出回路(検出回路)、OV 過大電圧検出回路(検出回路)、Se センシング回路(検出回路)、OT 温度検出回路(検出回路)、38,39,40,41 比較器(比較回路)、22,37,70,122 論理和回路(判定回路)、84 主インタフェース(インタフェース回路)、56,76 AND回路、57,77 NOR回路、55,75 SRラッチ(RSラッチ回路)。

Claims (7)

  1. 主電流をスイッチングする半導体パワースイッチング素子と、当該素子を駆動する駆動回路と、異常時の損傷から前記素子を保護する保護回路と、を備える半導体パワーモジュールにおいて、
    前記保護回路に結合した少なくとも1個の入力端子と、
    前記保護回路に結合した出力端子と、
    をさらに備え、
    前記保護回路が、
    遮断信号が入力されると、前記駆動回路の動作に優先して、前記素子を遮断するように駆動する遮断回路と、
    前記素子の動作に関わる量を検出する検出回路と、
    診断回路と、を備え、
    当該診断回路は、
    前記検出回路で検出された前記量を基準値と比較することによって、異常が発生したか否かに対応する信号を出力する比較回路と、
    前記比較回路が異常発生に対応する信号を出力したときに、前記遮断回路へ前記遮断信号を送出するとともに、前記出力端子へ異常検出信号を送出し、更に前記少なくとも1個の入力端子のいずれかに特定の信号が入力されたときに、前記遮断回路へ前記遮断信号を送出するとともに、前記出力端子へ異常検出信号を送出する判定回路と、を備えることを特徴とする半導体パワーモジュール。
  2. 請求項1に記載の半導体パワーモジュールにおいて、
    もう一つの入力端子と、
    もう一つの出力端子と、
    前記もう一つの入力端子へ外部より入力される制御信号を前記駆動回路と前記もう一つの出力端子とに振り分けて伝達するインタフェース回路と、
    をさらに備えることを特徴とする半導体パワーモジュール。
  3. 主電流をスイッチングする半導体パワースイッチング素子と、当該素子を駆動する駆動回路と、異常時の損傷から前記素子を保護する保護回路と、を備える半導体パワーモジュールにおいて、
    前記保護回路に結合した入力端子と、
    前記保護回路に結合した出力端子と、
    を備え、
    前記保護回路が、
    前記入力端子へ遮断信号が入力されると、前記駆動回路の動作に優先して、前記素子を遮断するように駆動する遮断回路と、
    前記素子の動作に関わる量を検出する検出回路と、
    診断回路とを備え、
    当該診断回路は、
    前記検出回路で検出された前記量を基準値と比較することによって、異常が発生したか否かに対応する信号を出力する比較回路と、
    前記比較回路が異常発生に対応する信号を出力したときに、前記出力端子へ異常検出信号を送出する判定回路と、を備えることを特徴とする半導体パワーモジュール。
  4. 請求項1または請求項3に記載の半導体パワーモジュールにおいて、
    前記検出回路、前記駆動回路、および前記遮断回路を含む回路部分が、1個の半導体チップに集積化されていることを特徴とする半導体パワーモジュール。
  5. 並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、
    前記複数の半導体パワーモジュールの各1が、請求項1に記載の半導体パワーモジュールであり、
    前記複数の半導体パワーモジュールの個数が、当該複数の半導体パワーモジュールの各1が備える前記少なくとも1個の入力端子の個数に1を加算した個数以下であり、
    前記複数の半導体パワーモジュールの各1の前記出力端子が、当該各1を除くすべての半導体パワーモジュールの前記少なくとも1個の入力端子の一つに、前記各1とは別の半導体パワーモジュールの前記出力端子とは重複しないように、接続されていることを特徴とする複合パワーモジュール。
  6. 並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、
    前記複数の半導体パワーモジュールの1つである主モジュールが請求項1に記載の半導体パワーモジュールであり、
    残りすべての半導体パワーモジュールである少なくとも1個の副モジュールの各1が請求項3に記載の半導体パワーモジュールであって、
    前記少なくとも1個の副モジュールの個数が、前記主モジュールの前記少なくとも1個の入力端子の個数以下であり、
    前記主モジュールの前記出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールのそれぞれの前記入力端子に接続されており、
    前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記出力端子が、前記主モジュールの前記入力端子の一つに、重複することなく接続されていることを特徴とする複合パワーモジュール。
  7. 並列接続された複数の半導体パワーモジュールを備える複合パワーモジュールにおいて、
    前記複数の半導体パワーモジュールの1つである主モジュールが請求項2に記載の半導体パワーモジュールであり、
    残りすべての半導体パワーモジュールである少なくとも1個の副モジュールの各1が請求項3に記載の半導体パワーモジュールであって、
    前記少なくとも1個の副モジュールの個数が、前記主モジュールの前記少なくとも1個の入力端子の個数以下であり、
    前記主モジュールの前記出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールのそれぞれの前記入力端子に接続されており、
    前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記出力端子が、前記主モジュールの前記入力端子の一つに、重複することなく接続されており、
    前記主モジュールの前記もう一つの出力端子が、前記少なくとも1個の副モジュールの各1の前記駆動回路に結合していることを特徴とする複合パワーモジュール。
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