JP2004006829A - 配線転写シートとその製造方法、および配線基板とその製造方法 - Google Patents

配線転写シートとその製造方法、および配線基板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】全体として半導体ベアチップおよび電子部品等を実装するのに適した表面平坦性を有するとともに、微視的にはその上に積層される材料を良好に密着させる表面構造を有する配線基板を提供する。
【解決手段】保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートを、当該配線層が形成されている保持基材の表面において保持基材が露出している領域が複数の凹部を有するように形成する。この配線転写シートを用いて配線層を電気絶縁性基材に転写すると、当該凹部と相補的な形状の凸部が配線基板の電気絶縁性基材の露出表面に形成され、当該凸部は、配線基板の表面に積層される樹脂等と配線基板との密着性を向上させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配線基板の配線を形成するために使用する配線転写シートおよびその製造方法、ならびに当該配線転写シートを使用して製造される配線基板および当該配線転写シートを使用して配線基板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化および高性能化に伴い、産業用機器にとどまらず広く民生用機器の分野においても、LSI等の半導体チップを高密度に実装できる多層配線基板が使用されている。そのため、より安価な多層配線基板が要求されている。また、市場においては、より微細な配線ピッチで形成された複数層の配線パターン間が、より高い接続信頼性で電気的に接続された多層配線基板が常に要望されている。
【0003】
このような市場の要望に応えるべく、従来の多層配線基板の層間接続の主流であったスルーホール内壁の金属めっき導体に代えて、多層プリント配線基板の任意の電極を任意の配線パターン位置において層間接続できるインナービアホール接続法を採用して形成した多層基板が開発され、実用されるに至っている。この多層基板は、全層IVH(Interstitial Via Hole)構造樹脂多層基板と呼ばれる(特許文献1:日本国特許公開公報平06−268345号公報参照)。この多層基板によれば、ビアホール内に導電体を充填して必要な配線層間のみを接続することが可能であり、また、部品ランド直下にインナービアホールを設けることができるために、基板サイズの小型化や高密度実装を実現することができる。
【0004】
本出願人は、より高密度な層間接続を実現するために、電気絶縁性基材の両面に設けられた配線層間が、インナービアホールに充填された導電体によって電気的に接続され、かつ少なくとも一方の配線層が接着剤層に埋設されている構造を有する配線基板を提案し、それを製造する方法として、支持基材に形成された配線層を転写して接着剤層に埋設する手法を提案している(特許文献2:日本国特許公開公報2000−77800号公報参照)。この構造によれば、インナービアホールのサイズを小さくしても高い信頼性を実現することが可能である。本出願人はまた、高密度多層配線基板を製造するのに適した、微細配線パターンを有する転写媒体も提案している(特許文献3:日本国特許公報特許3172711号参照)。配線層の形成に適した転写シートは、日本国特許公開公報2000−154354号公報(特許文献4)にも開示されている。
【0005】
このように、配線転写シートを利用して配線層を形成する手法は、有用な配線形成方法として、配線基板の製造において採用されつつある。以下に、図16を参照して、配線転写シートを用いて配線層を形成する方法の一例を説明する。
【0006】
図16(a)〜(c)はそれぞれ、配線層を形成する主要な工程を模式的に断面図にて示す。図16(a)は、電気絶縁性基材(1204)の両面に配線転写シート(1203)を配置した状態を示す。図16(b)は、配線転写シート(1203)の配線層(1202)を電気絶縁性基材(1204)に転写する工程を示す。図16(c)は、配線転写シート(1203)の支持基材(1201)を除去して配線基板を得る工程を示す。
【0007】
図16(a)において、配線転写シート(1203)は支持基材(1201)と支持基材上に所定のパターンに形成された配線層(1202)によって構成されている。配線転写シート(1203)は、日本国特許公報特許第3172711号に記載のように、アルミ箔上に銅箔を積層して複合箔を形成した後、銅箔のみ選択的に所望のパターンにエッチングすることにより形成される。この配線転写シート(1203)の配線層付近の領域Aの拡大図を、図16(d)に示す。図16(d)に示すように、配線転写シートにおいて、支持基材(1201)が露出している表面(即ち、電気絶縁性基材と接する面)は平坦である。これは、アルミ箔が平坦な表面を有することによる。
【0008】
図16(a)において、配線層を形成すべき対象となる電気絶縁性基材(1204)は、貫通孔(1205)を有し、当該貫通孔(1205)には導電性ペースト(1206)が充填されている。電気絶縁性基材(1204)としては、被圧縮性を有する多孔質基材、またはコアフィルムの両側に接着剤層が形成された3層構造の基材が用いられる。貫通孔(1205)は、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザまたはYAGレーザ等のレーザ加工によって形成される。レーザ加工は生産性に優れていることから、貫通孔を形成するために一般的に採用されている。
【0009】
次に、図16(b)に示すように、加熱加圧によって配線転写シート(1203)を電気絶縁性基材(1204)に密着させ、配線層(1202)を電気絶縁性基材(1204)に埋設させるように転写する。電気絶縁性基材(1204)は熱硬化性樹脂を含有し、この熱硬化性樹脂は加熱加圧の際に硬化して配線層と接着することとなる。また、貫通孔(1205)内に充填された導電性ペースト(1206)は、配線層(1202)が埋設されることにより圧縮される。導電ペースト(1206)が圧縮されると、導電性ペースト内の導電粒子の密度が高くなり、それにより配線層(1202)間の電気的接続が確保される。
【0010】
次に、支持基材(1201)をエッチングによって溶解除去し、図16(c)に示すような、配線層を両面に有する配線基板を得る。エッチングは、エッチング液として支持基材(1201)を溶解し配線(1202)を溶解しない選択性のある薬品を用いて実施する。図16(e)および(f)に、図16(c)においてBおよびCで示される領域の拡大図をそれぞれ示す。図16(e)に示すように、配線基板において電気絶縁性基材(1204)が露出している表面は、支持基材(1201)の表面形状が転写されて平坦となっている。図16(f)に示すように、配線(1202)の表面も平坦となっている。これは配線(1202)の表面に相当する面が、転写前に接していた支持基材(1201)の表面を反映しているためである。かかる平坦な表面を有する配線基板には、半導体ベアチップを好都合に実装でき、優れた初期実装性が確保される。
【0011】
【特許文献1】
特開平06−268345号公報
【特許文献2】
特開2000−77800号公報
【特許文献3】
特許3172711号公報
【特許文献4】
特開2000−154354号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
配線基板の表面の平坦性が高いほど、初期実装性は良好になるものの、その上に積層される樹脂等との間の密着性が低下するという問題がある。配線基板の表面に積層されるものとしては、例えば、半導体ベアチップを実装する際に使用する封止樹脂、および電気部品実装の際に使用するソルダーを保護するためのソルダーレジスト等が挙げられる。これらの材料と配線基板の表面との間の密着性が悪いと、熱および曲げ等のストレスによって、界面剥離が生じやすくなる。また、図16に示す工程で得た両面配線基板に、さらに電気絶縁性基材を積層して多層配線基板を構成する場合においても、配線基板の表面の平坦性が高いと、配線基板に対する電気絶縁性基材の密着性が低下し、電気絶縁性基材同士の間、および配線基板の配線層(銅箔)−電気絶縁性基材間で界面剥離が発生しやすい。いずれの場合においても、界面剥離の発生は、実装不良または接続不良等を招き、配線基板が組み込まれた製品の性能等に悪影響を及ぼすことがある。
【0013】
このように、従来の配線転写シートを使用して形成した配線基板は、表面の平坦性に優れる一方、表面が平坦であるがゆえに配線基板の上に積層される樹脂等との密着性を確保するのが困難であるという課題を有していた。本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、マクロ的には半導体ベアチップおよび電子部品等を実装するのに適した表面平坦性を有するとともに、ミクロ的にはその上に積層される樹脂等を良好に密着させる表面構造を有する配線基板を製造することを可能にする、配線転写シートを提供することを課題とする。さらに、本発明は、そのような配線転写シートにより製造される配線基板であって、少なくとも電気絶縁性基材の表面がマクロ的には半導体ベアチップ等を実装するのに適した表面平坦性を有するとともに、ミクロ的にはその上に積層される樹脂等を良好に密着させる表面構造を有する配線基板を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が粗面であり、当該粗面と相補的な粗面を被転写物に形成する配線転写シートを提供する。この配線転写シートは、電気絶縁性基材に配線層を転写させて配線基板を得るためのものである。したがって、本発明の配線転写シートの被転写物は配線基板用の電気絶縁性基材である。
【0015】
この配線転写シートによれば、配線層を転写すると同時に、配線層が形成されている配線基板の表面において、少なくとも配線層が位置しない領域を、粗面にすることができる。配線基板の表面が粗面にされると、配線基板の表面積、即ち、その上に積層される樹脂等との接触面積が増加し、当該樹脂の配線基板への密着性が向上する。したがって、本発明の配線転写シートを用いて製造した配線基板は、その上に積層される樹脂等に良好に密着するものとなる。
【0016】
本発明の配線転写シートにおいて、「保持基材」は、配線層が電気絶縁性基材に転写されるまで、配線層を保持するシート状の基材である。配線転写シートにおいて、「配線層」は、導電性材料から成り、配線基板に所定の配線パターンが形成されるようにパターニングされている。
【0017】
配線層は、保持基材の一方の主表面(即ち、シートの広い2つの面のうち、いずれか一方の面)に形成される。以下の説明を含む本明細書において、保持基材に関して単に「表面」というときは、保持基材の主表面をいい、配線層が形成されている主表面を特に「配線層が形成されている保持基材の表面」と呼ぶ。他のシート状材料に関しても単に「表面」というときは、その主表面をいうものとする。
【0018】
本発明の配線転写シートは、配線層が形成されている保持基材の表面において少なくとも保持基材の露出領域が粗面であることを特徴とする。ここで、「少なくとも」という用語は、保持基材の表面において保持基材の露出領域のみが粗面である態様、および保持基材の表面全体(即ち、配線層と保持基材との界面を含む)が粗面であるものを含む意味において使用される。また、「粗面」とは、凹凸を有する表面をいう。粗面を構成する凹凸は種々の形態のものであってよく、各凸部または凹部の形状は、錐体状(円錐および角錐等)、円柱状、ひだ状、畝状、瘤状、ならびにマッシュルーム状のいずれであってよい。また、粗面には、略平坦な表面に形成された凹部のみが存在する態様、または略平坦な表面に形成された凸部のみが存在する態様も含まれる。配線層を転写する際に、粗面である保持基材の露出領域が被転写物と接触して密着すると、被転写物を構成する材料が流動または軟化等して変形し、この粗面と相補的な形状を有する粗面が被転写物に形成されることとなる。
【0019】
本発明において、被転写物に形成される粗面の形状は、配線転写シートの保持基材の露出領域の表面と実質的に相補的であれば足り、厳密に相補的であることは必要とされない。例えば、被転写物である電気絶縁性基材の樹脂の流動性が小さくて、凹部の底面まで完全に樹脂が到達しない場合には、凹部の深さよりもやや小さい高さの凸部が形成されることがある。あるいは、後述するように、配線転写シートを、樹脂シートの表面に粗面化された銅箔を積層して一体化し、それにより樹脂シートを粗面化した後、銅箔をエッチングして作製する場合には、樹脂シートの露出領域の凹部に配線層の材料が残ることがある。かかる配線転写シートを使用する場合にも、被転写物に形成される凸部は、凹部に残った金属に相当する分だけ高さが小さくなる。そのような凸部はいずれも配線転写シートの凹部と相補的であるとみなされる。本発明においては、転写により配線基板の電気絶縁性基材の露出表面を粗面にすることが重要であることに留意されたい。
【0020】
本発明の配線転写シートの特徴は、上述のように、電気絶縁性基材の表面を粗面化するように機能することにある。さらに、本発明者らは、本発明の配線転写シートにおいて、所望の配線パターンをエッチングにより形成した後で、導電性材料の一部が配線と配線との間の保持基材の露出表面(具体的には凹部の中)に残っている場合でも、その導電材料が電気絶縁性基材に転写されないことを確認した。このこともまた、本発明の配線転写シートの特徴といえる。電気絶縁性基材の表面に粗面化された銅箔を貼り付け、銅箔をエッチングして配線層を形成する方法で配線基板を製造する場合、エッチング後に銅が不要な箇所にしばしば残る。特に、配線パターンが微細である場合には、銅の残存は顕著である。残存した銅はショートの発生等の原因となる。かかる不都合を避けるために、オーバーエッチングがしばしば実施されていた。オーバーエッチングを実施すると、レジスト下の配線層が細くなり、その結果、レジストが剥離することがある。レジストが剥離すると、必要な配線が形成されなくなり、所望の配線パターンが形成されないことがある。そのため、上記のようにして電気絶縁性基材の表面に配線層を形成する場合には、オーバーエッチングを注意深く制御する必要があった。一方、本発明の配線転写シートの上記特徴によれば、微細な配線パターンを有する配線層を、配線と配線との間に不要な導電性材料を存在させることなく、簡便に電気絶縁性基材に形成できる。
【0021】
本発明の配線転写シートは、前記保持基材の露出表面が複数の凹部を有しており、当該凹部と実質的に相補的である凸部を被転写物に形成するものであることが好ましい。ここで「凹部」なる用語は、略平坦な表面に形成された窪みのほか、一見して他の部分から窪んでいると認められる部分を意味するものとして使用される。「一見して他の部分から窪んでいると認められる部分」は、例えば、全体として凹凸を有する面に存在する特に深い凹部であり、その例として、1000倍程度の倍率で拡大した顕微鏡写真にて、暗部として現れる部分が挙げられる。これに対し、「凸部」とは、略平坦な表面に形成された突出部のほか、一見して他の部分から突出していると認められる部分を意味するものとして使用される。「一見して他の部分から突出していると認められる部分」は、例えば、全体として凹凸を有する面に存在する特に高い凸部であり、その例として、1000倍程度の倍率で拡大した顕微鏡写真において、突出していると認識される部分が挙げられる。
【0022】
複数の凹部を有する表面は、例えば、本来実質的に平坦であった面に、▲1▼複数の凸部を有する型を押し付ける、▲2▼サンドブラスト処理等により、表面の一部を機械的に削る、▲3▼電解エッチングまたはドライエッチングを施す等の方法で得られる。凸部を有する型としては、後述するように、電解めっきにより析出させた粒子を凸部として表面に有する金属箔のほか、エンボスロール等が挙げられる。
【0023】
配線層を転写する際に、この凹部を有する領域が被転写物と接触して、被転写物を構成する材料が凹部内に流入し、それから保持基材が剥離されると、当該凹部と実質的に相補的である形状の凸部が被転写物表面に形成されることとなる。表面に形成された凸部は、その上に積層される樹脂等の中に容易に埋設されて、アンカー効果を発揮する。これに対し、凹部を有する表面に樹脂等を積層する場合には、積層される樹脂等を凹部内に流入させるために、その溶融粘度を低くする、または積層時に大きな圧力を加える必要がある。即ち、凸部が形成された表面は、凹部が形成された表面よりも、その上に積層される樹脂等との間で良好な密着を得やすい構造である。そのため、保持基材の露出領域は、そのような構造を被転写物に付与できるよう、複数の凹部を有する粗面であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明の配線転写シートは、配線層が形成されている保持基材の表面全体に複数の凹部が形成されており、配線層が凹部に入り込んでいるものであることが好ましい。このような配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材の表面に転写すると、配線層と保持基材との界面が露出し、したがって、転写された配線層の表面もまた、凹部と相補的な形状の凸部を有することとなる。配線基板の種類に応じて、表面における配線層の占める割合は異なる。例えば、ある配線基板においては、配線層の露出表面の占める割合が電気絶縁性基材の露出表面の占める割合よりも大きいものがある。この配線基板の表面に樹脂等を積層する場合、積層される樹脂等と配線層とが接触する面積は、積層される樹脂等と電気絶縁性基材とが接触する面積よりも大きくなる。そのような配線基板において、配線層の表面に凸部が存在することは、良好な密着性を確保する上で好都合である。また、保持基材表面の凹部に配線層が入り込んでいる配線転写シートにおいては、両者が互いに噛合うため、両者の間でより良好な密着性が確保される。したがって、この構成の配線転写シートにおいては、接着剤を使用して保持基材と配線層とを一体化させることは、概して不要である。
【0025】
配線転写シートの保持基材の表面に存在する凹部は、少なくともその露出領域において、50〜98%を占めることが好ましい。保持基材に占める凹部の割合が少ないと、被転写物に存在する凸部の割合もまた少なくなり、前記の効果が達成されない。
【0026】
保持基材の表面に存在する凹部は、0.5〜5μmの差渡しを有するものであることが好ましい。ここで「差渡し」とは、保持基材の表面における凹部の輪郭の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さをいう。保持基材の表面における凹部の輪郭は、保持基材を真上からみたときに観察される凹部の輪郭に相当する。差渡しが前記範囲内にある凹部は、保持基材の表面に存在する凹部の一部であってよく、あるいは全部であってよい。したがって、凹部の中には、前記好ましい範囲の上限よりも大きい差渡しを有するものがあってよい。大きい差渡しを有する凹部は、例えば、幾つかの凹部が連なったような凹部として観察される。かかる凹部により形成される凸部はその一部または全部が、基部において0.5〜5μmの差渡しを有するものとなる。ここで、「基部」とは、凸部の下端(即ち、開始点)を通過する面をいう。下端が被転写物の表面に平行な同一平面にない凸部の基部は、最も下方に位置する下端を通過する、被転写物(即ち、電気絶縁性基材)の表面に平行な面に向って、凸部の他の端を鉛直方向(即ち、厚さ方向)に平行移動させたときに描かれる軌跡(直線)が当該平行な面と交わることによって画定される面をいうものとする。ここで、「被転写物の表面に平行な面」とは、被転写物である電気絶縁性基材の表面に存在する凹凸を均して平坦な面としたときの当該平坦な面に平行な面をいい、電気絶縁性基材の厚さ方向に垂直な面であるともいえる。
また、凹部は、0.5〜5μmの深さを有するものであることが好ましい。かかる凹部により形成される凸部は、その高さが0.5〜5μmとなる。凸部の高さは、凸部の基部から凸部の頂部までの最短距離である。
【0027】
保持基材の表面における凹部の差渡しSuおよび凹部の深さDを、図14(a)および(b)に模式的に示す。Suは凹部の間口の差渡しともいえる。図示した凹部は、後述するように、深さ方向に垂直な断面の面積が一定でないものである。図示する凹部は、その端が保持基材の表面に平行な同一平面上にあるものである。端が保持基材の表面に平行な同一平面にない凹部の深さは、最も高い(即ち、最も上に位置する)端を通る保持基材の表面に平行な面と、底との間の距離とする。「保持基材の表面に平行な面」とは、保持基材に存在する凹凸を均して平坦な面としたときの当該平坦な面に平行な面をいい、保持基材の厚さ方向に垂直な面であるともいえる。図14(a)および(b)に示す凹部により形成される凸部を図14(c)に示す。図14(c)に示すように、この凸部は凹部と相補的な形状を有する。この凸部の基部は、符号Rで示される破線部に相当し、その形状および差渡しは図14(b)に示すものと同じであり、その高さh(基部Rから頂部Tまでの最短距離)は深さDと同じである。
【0028】
凹部は、好ましくは、深さ方向に垂直な断面が一定でない形状を有し、当該断面の面積が保持基材の表面と凹部の底との間で最大となる形状を有する。そのような凹部の例を図15(a)〜(c)に示す。図15に示す凹部において、凹部(即ち、保持基材で囲まれている空間)は、底Bと保持基材の表面との間で膨らんだ部分を有し、最も膨らんでいる箇所mにて最大の断面積を有し、その凹部形状(即ち、保持基材で囲まれた空間形状)はそれぞれ、つぼみ状(図15(a))、瘤状(図15(b))、およびマッシュルーム状(図15(c))である。これらの凹部によれば、配線基板の表面には、胴部にて膨らんだつぼみ状、瘤状またはマッシュルーム状の凸部を形成することができる。即ち、高さ方向(または配線基板の厚さ方向)に垂直な断面積が、基部と頂部との間で最大となると凸部を形成することができる。そのような凸部は、より大きいアンカー効果を発揮するため、そのような凸部を表面に有する配線基板はその上に積層される樹脂等とより良好に密着する。このような凸部は、樹脂成形の分野で「アンダーカット」と称される部分を有するものともいえ、アンダーカットによって、より高いアンカー効果が発揮される。
【0029】
図15に示すような凹部において、凹部の深さ方向に垂直な断面のうち、最大の面積を有する断面は、好ましくはその差渡しが1〜10μmである。図15において最大の面積を有する断面(即ち、最も膨らんだ箇所m)の差渡しはSmaxで示されている。かかる凹部により形成される凸部は、高さ方向に垂直な断面のうち、最大の面積を有する断面(即ち、最も膨らんだ箇所の断面)が1〜10μmの差渡しを有するものとなる。
【0030】
本発明の配線転写シートは、保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が、電解めっきによって形成された複数の凸部を有する金属箔表面を、当該凸部を有する表面を保持基材の表面に押し付けて金属箔と保持基材とを密着させた後、金属箔を除去することにより形成される表面形状を有し、当該表面形状と相補的な形状を被転写物の表面に形成する配線転写シートとして特定されるものでもある。そのような配線転写シートは、保持基材の露出領域が、金属箔表面に形成された凸部に由来する表面形状を有し、したがって、上記の配線転写シートと同様の効果をもたらす。保持基材の露出領域の表面形状は、一般には粗面であり、より具体的には上記において説明した複数の凹部を有する粗面である。また、当該凹部は、金属箔表面の凸部と相補的な形状を有するから、この配線転写シートにより被転写物に形成される凸部は、金属箔表面の凸部と略同じ形状を有することとなる。
【0031】
電解めっきによって金属箔の表面に形成される凸部は、一般に、微細な粒子(例えば、直径0.1μm〜4μm程度の球状粒子)が凝集および/または積層するように析出して形成された、瘤状または雲状の形状を有する。凸部の形状および寸法は、電解めっきの条件に応じて変わる。したがって、金属箔の表面の凸部は、被転写物に形成すべき凸部の形状に応じて、保持基材の露出領域において所望の凹部が形成されるように、電解めっきの条件を適切に選択して形成することが好ましい。
【0032】
本発明の配線転写シートはまた、保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、保持基材の露出領域が、当該領域と接する被転写物の領域を、その十点平均粗さRzが2〜12μmとなるようにする配線転写シートとしても特定される。そのような配線転写シートは、被転写物である配線基板の表面を、全体として平坦なものとし、微視的には凹凸を有する面にする。そのような表面を有する配線基板は、高い初期実装性を有するとともに、その上に積層される材料と良好に密着するものとなる。
【0033】
配線転写シートの保持基材は、被転写物、即ち配線基板を構成するための電気絶縁性基材と相溶しない材料から成ることが好ましい。そのような材料から成る保持基材は、配線層を転写した後、電気絶縁性基材から容易に剥離できる。保持基材を構成する材料は、被転写物の種類(即ち、電気絶縁性基材の材料)に応じて選択される。例えば、電気絶縁性基材が、エポキシ樹脂を含有する基材である場合、保持基材はフッ素系樹脂から成ることが好ましい。フッ素系樹脂は電気絶縁性基材に対して優れた離型性を示し、また優れた耐熱性を有するので、転写時の加熱加圧によって分解せず、電気絶縁性基材と相溶することもない。したがって、フッ素系樹脂から成る保持基材で配線転写シートを形成すれば、電気絶縁性基材の表面を粗面にすることが容易となり、特に、保持基材の露出領域が微細な凹部を有する場合には、電気絶縁性基材の表面に微細な凸形状を容易に形成できる。
【0034】
本発明の配線転写シートにおいては、保持基材を複数の層から成る積層体とし、配線層を形成する表面が電気絶縁性基材と相溶しない材料から成る層の表面となるようにしてよい。保持基材を、材料の異なる複数の層を組み合わせて構成すれば、保持基材の剥離性を確保しつつ、配線転写シートの強度およびハンドリング性を向上させることができる。具体的には、保持基材は、銅箔のような金属箔と樹脂シートとから成るものであることが好ましい。
【0035】
本発明の配線転写シートにおいて、配線層は、保持基材と接していない側の表面が凹凸を有していることが好ましい。配線層の保持基材と接していない側の表面は、転写の際に被転写物(即ち、配線基板用の電気絶縁性基材)と接する表面である。被転写物と接する配線層の表面が凹凸を有する場合、被転写物と配線層との接触面積が増加するので、配線層と電気絶縁性基材との密着性をより向上させることができる。配線層の保持基材と接していない側の表面は、好ましくは凸部を有する。その場合には、凸部がアンカー効果を発揮することによって、配線基板において電気絶縁性基材と配線層とがより強固に密着する。
【0036】
本発明の配線転写シートは、保持基材および配線層が、それぞれ選択的に除去可能な金属から成るものであってよい。そのような配線転写シートによれば、配線層を転写した後、保持基材を除去する工程を、例えば、選択的エッチング等によって実施できる。選択的エッチング等によれば、保持基材に応力を生じさせることなく、簡便に保持基材を除去できるので、電気絶縁性基材に形成された粗面、特に微細な凸部が、保持基材を除去している間に破損することを効果的に抑制できる。
【0037】
本発明の配線転写シートにおいて、保持基材と配線層との間には、配線層を構成する材料とは異なる材料から成る接合層が形成されていることが好ましい。接合層は、具体的には金属または金属酸化物から成る。接合層は、配線層と保持基材との間の密着力をより大きくする。接合層の使用は、保持基材から剥離が生じやすい微細な配線パターンを形成する場合に特に有用である。
【0038】
本発明の配線転写シートにおいて、保持基材は、可視光が通過できる材料から成ることが好ましい。保持基材がそのような材料で構成されている場合、配線転写シートを被転写物に積層する際に、配線転写シートのアライメントマーカと被転写物のアライメントマーカを同一方向から認識できる。即ち、これらのアライメントマーカを1つの認識システム(例えばカメラ等)で認識することができる。1つの認識システムを使用することによって、認識システムの座標が異なることに起因する積層精度の低下を抑制することができ、その結果、配線転写シートの積層アライメント精度を向上させることができる。
【0039】
本発明の配線転写シートは、配線層が保持基材に埋設されているものであってよい。ここで、「配線層が保持基材に埋設されている」とは、配線層の厚さの50%以上が保持基材の中にある状態をいう。そのような配線転写シートによれば、配線層を、被転写物の表面から突出するように、即ち、配線層の表面と電気絶縁性基材の表面とが面一とならないように転写できる。配線層が突出している配線基板に半導体ベアチップ等を実装すると、電気絶縁性基材と半導体ベアチップとの隙間がより広くなる。広い隙間には、実装後で注入する封止樹脂が流入しやすい。封止樹脂の流入性が良好であると、実装部の信頼性が向上する。したがって、配線層が保持基材に埋設された配線転写シートは、例えば、実装面となる電気絶縁性基材の表面に配線を形成する場合に好ましく使用される。
【0040】
本発明はまた、上記本発明の配線転写シートを製造する方法をも提供する。本発明の配線転写シートを製造する方法として、3つの方法が提供される。
【0041】
本発明の配線転写シートを製造する第1の方法は、
表面が粗面である配線材料から成るシートを、保持基材の表面に当該粗面が接するように重ねる工程、
当該粗面と相補的な粗面を保持基材表面に形成する工程、および
配線材料から成るシートをエッチングして、所定の配線パターンを有する配線層を形成する工程
を含む製造方法である。この製造方法は、配線材料から成るシート(単に「配線材料シート」とも呼ぶ)であって、その表面が粗面であるシートを、保持基材と接触させて、加圧等により当該粗面と相補的な粗面を保持基材の表面に形成することを特徴とする。この方法によれば、保持基材の表面を簡便に粗面とすることができる。このようにして形成された粗面の一部は、配線材料シートをエッチングすることにより、露出させられる。
【0042】
この製造方法において、表面に複数の凸部を有する配線材料シートを使用し、当該凸部を保持基材に埋設させれば、当該凸部と相補的な形状の凹部を保持基材の表面に形成することができる。そのような配線材料シートを使用すれば、配線層の凸部がアンカー効果によって保持基材に強く密着し、得られた配線転写シートにおいて保持基材の表面の凹部に配線層が入り込んでいる構造となる。したがって、この製造方法によれば、保持基材と配線層との間に接着剤を用いる必要をなくし得る。
【0043】
本発明の配線転写シートを製造する第2の方法は、
保持基材の表面に所定の配線パターンを有する配線層を形成する工程、および配線層を形成した後に、配線層が形成されている保持基材の表面において保持基材が露出する領域を粗化処理することにより粗面にする工程
を含む製造方法である。この製造方法によれば、粗化処理の条件を適宜設定することによって、保持基材の露出表面を任意の形状の粗面にすることができる。粗化処理は、保持基材の露出表面に複数の凹部が形成されるように実施することが好ましい。
【0044】
本発明の配線転写シートを製造する第3の方法は、表面が粗面である保持基材の当該粗面に、金属をめっきによって所定の配線パターンに析出させることにより配線層を形成することを含む製造方法である。この製造方法によれば、任意の表面形状となるように予め形成された粗面を有する保持基材を使用できるので、配線基板の表面形状を所望のように設計することが容易となる。また、めっきで所定の配線パターンを析出させるため、より微細な配線形成が可能となる。保持基材の粗面は、複数の凹部を有するものであることが好ましい。
【0045】
本発明はまた別の要旨において、本発明の配線転写シートによって得られる配線基板をも提供する。本発明の配線基板は、本発明の配線転写シートの配線層が電気絶縁性基材の表面に転写されて配線層が形成された配線基板であって、配線基板の配線層が形成された表面において、少なくとも電気絶縁性基材の露出領域が粗面である配線基板である。ここで「少なくとも」という用語は、配線基板の表面において電気絶縁性基材の露出領域(即ち、配線が位置しない領域)のみが粗面であるもの、および電気絶縁性基材の露出領域および配線層の表面がともに粗面であるものを含む意味において使用されている。この配線基板は、その表面が全体として半導体ベアチップおよび電子部品の高密度実装に必要なコプラナリティ(表面平坦性)を有するとともに、配線基板の表面に積層される材料との間の密着性が粗面によって確保されたものとなる。
【0046】
本発明の配線基板は、より具体的には、前記の保持基材の露出領域が複数の凹部を有する配線転写シートにより製造される配線基板、即ち、配線基板の配線層が形成された表面において、少なくとも電気絶縁性基材の露出領域が複数の凸部を有する配線基板である。「少なくとも」の意味は先に説明したとおりである。そのような配線基板は、その表面に樹脂等が積層されたときに、凸部がアンカー効果を発揮するため、積層される樹脂等と良好に密着する。本明細書において、配線基板に含まれる電気絶縁性基材は電気絶縁層とも呼ぶことがある。
【0047】
配線基板の電気絶縁性基材の露出領域に位置する凸部の好ましい形状および寸法等は、先に配線転写シートの凹部のそれらと関連して既に説明したとおりである。したがって、ここではそれらについての詳細な説明を省略する。
【0048】
本発明の配線基板は、2以上の電気絶縁性基材を含む多層基板であってよい。その場合、少なくとも1つの配線層が本発明の配線転写シートを用いた転写により形成されたものである。当然に、すべての配線層が本発明の配線転写シートを用いた転写により形成されたものであることが好ましい。本発明の配線転写シートで配線層を形成した後の配線基板においては、電気絶縁性基材の露出領域が粗面であるから、この上に別の電気絶縁性基材を積層すると、電気絶縁性基材同士の密着性が良好となる。
【0049】
本発明の配線基板は、配線層と接続された部品が電気絶縁性基材内に配置されている、部品内蔵配線基板であってよい。そのような配線基板は、部品により種々の機能を発揮し得る。
【0050】
部品内蔵配線基板が、多層基板である場合には、2以上の電気絶縁性基材にまたがって部品が位置してよい。部品が大きい場合には、そのような構成とする必要がある。かかる構成の部品内蔵配線基板は、後述するように、複数の電気絶縁性基材をある程度硬化しているが完全には硬化していない状態で積層して、これに部品を収容するための空間(例えば貫通穴)を形成し、当該空間に部品を位置させる方法により製造できる。
【0051】
本発明の配線基板において、電気絶縁性基材は、導電性ペーストが充填された貫通孔を有し、当該導電性ペーストが電気絶縁性基材を介して対向する配線層同士を電気的に接続していることが好ましい。そのような構成によれば、本発明の配線基板は表面の電気絶縁層にスタックドビアホールを備えることとなり、より高密度な配線収容を実現し、基板表面での電子部品実装可能領域を広く確保することが可能となる。そのような貫通孔を有する電気絶縁性基材は、樹脂をマトリックス成分として含む。樹脂としては、熱安定性の点から一般には熱硬化性樹脂が採用されている。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよい。電気絶縁性基材が熱硬化性樹脂を含む場合、実用に供される配線基板において、当該熱硬化性樹脂は一般に硬化した状態にある。後述のように、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂の一部または全部が未硬化または半硬化の状態にある形態の配線基板は、通常、配線基板として全く機能しないか、あるいは不十分にしか機能しない。そのような形態の配線基板は、本明細書において配線基板の中間体と称される。
【0052】
本発明の配線基板が部品を内蔵しているものである場合、部品が内蔵された電気絶縁性基材が、上記のような導電性ペーストが充填された貫通孔を有するものであってよい。そのような配線基板においては、配線層同士を接続するビアが部品内蔵層に備えられた構成が得られる。
【0053】
本発明はまた、本発明の配線基板を製造する方法をも提供する。本発明の配線基板を製造する方法として、以下の第1および第2の方法が提供される。
【0054】
本発明の配線基板を製造する第1の方法は、電気絶縁性基材を介して対向する配線層のうち少なくとも一方の配線層を形成する工程が、
(1)本発明の配線転写シート、即ち、保持基材およびその表面に形成された配線層を有し、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が粗面である配線転写シートを、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材の少なくとも一方の表面に積層する工程、
(2)配線転写シートと電気絶縁性基材とから成る積層体の加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域(即ち、配線が位置しない領域)を粗面にする工程、および
(3)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
を含む製造方法である。この製造方法によれば、上記の特徴を有する本発明の配線基板を得ることができる。この製造方法において、保持基材の露出領域に複数の凹部が形成された配線転写シートを使用すれば、電気絶縁性基材が露出する領域には当該凹部と相補的な形状の凸部が形成される。
【0055】
この製造方法において、電気絶縁性基材として、例えば、未硬化の熱硬化性樹脂を含む基材を使用し、工程(1)において、配線転写シートを積層する電気絶縁性基材を、既に作製された配線基板または配線基板の中間体の表面に積層し、加熱加圧に際して電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体の表面に接着させれば、多層配線基板を効率良く製造することができる。ここで、配線基板の中間体とは、配線層と電気絶縁性基材とが積層された構造を有するが、配線基板として機能しない又は不十分にしか機能しないものをいう。配線基板の中間体は、例えば、配線層同士の電気的な接続が不十分なものである。配線基板の中間体のより具体的な一例は、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材の層にマトリックス成分として含まれる熱硬化性樹脂の一部または全部が十分に硬化していない状態にあるものである。電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に積層し一体化させるこの製造方法において、工程(1)〜(3)を繰り返せば、2以上の配線層が本発明の配線転写シートで形成された多層配線基板を効率良く製造することができる。
【0056】
未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を用いて工程(1)〜(3)を繰り返す場合には、各工程(2)において、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施して、配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に仮接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出している領域を粗面にし、かつ電気絶縁性基材を既に作製された配線基板または配線基板の中間体に仮接着させ、最後に実施される工程(2)において、加熱加圧をすべての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施することができる。電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化するとは、当該熱硬化性樹脂が電気絶縁性基材を構成している状態(例えば半硬化状態)から、さらに硬化するが、完全には硬化していない状態となることをいう。仮硬化した熱硬化性樹脂は、さらに加熱加圧することにより、さらに硬化し得る状態にある。また、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化するとは、当該熱硬化性樹脂がそれ以上硬化し得ない状態またはそれに近い状態となることをいう。したがって、仮硬化は、本硬化よりも、低い温度および低い圧力を用いて実施される。熱硬化性樹脂は、粘着性を有する状態を経て仮硬化または本硬化する。したがって、仮硬化または本硬化する条件で工程(2)を実施すると、配線層が電気絶縁性基材に接着する。また、電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に積層する場合には、熱硬化性樹脂の仮硬化によって、電気絶縁性基材が配線基板または配線基板の中間体に接着する。但し、接着の度合い(接着強度)は、仮硬化を実施した場合の方が本硬化を実施した場合よりも小さい。したがって、本明細書においては、熱硬化性樹脂の仮硬化による接着を「仮接着」とも呼ぶ。
工程(1)〜(3)を繰り返す製造方法においては、すべての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を、最後の配線転写工程で一括的に本硬化させることができる。一括的に本硬化させる手法によれば、製造時間を大幅に短縮できる。また、この手法によれば、新たに積層した電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を本硬化させるたびに他の電気絶縁性基材が影響を受けて寸法変化することを防止できるので、より質の高い、高精細な配線基板を得ることができる。あるいは、すべての工程(2)において(工程(1)〜(3)が1回だけ実施される場合は、1回だけ実施される工程(2)において)、加熱加圧を電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で実施してよい。その場合には、配線基板の中間体が得られる。そのような中間体は、例えば、後述するように、部品が電気絶縁性基材内に配置されている配線基板を製造する際に使用できる。
【0057】
工程(1)〜(3)を繰り返す多層配線基板の製造方法においては、工程(1)において、電気絶縁性基材を、配線基板または配線基板中間体の両方の表面に同時に積層することが好ましい。そのような積層は、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を仮硬化させて電気絶縁性基材を順次仮接着させた後、最後の配線転写工程で熱硬化性樹脂を一括的に本硬化させる場合に好ましく適用される。配線基板の一方の面に電気絶縁性基材を順次仮接着すると、仮接着するごとに加えられる熱によって、先に積層された他の電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂の硬化が少しずつ進行する。その結果、電気絶縁性基材の硬化収縮により、配線層の位置ずれ及び/または配線基板の反り等が生じて、所望の配線基板を得られないことがある。電気絶縁性基材を積層する工程において、2つの電気絶縁性基材を対称的に上下に積層して、仮接着すれば、かかる不都合を軽減する又は無くすことができる。
【0058】
本発明の配線基板を製造する第2の方法は、
(1)本発明の配線転写シートの配線層が形成されている表面に、電気絶縁性基材を積層する工程、
(2)電気絶縁性基材に貫通孔を形成し、配線転写シートの配線層を露出させる工程、
(3)貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、
(4)電気絶縁性基材を積層した配線転写シートを、配線基板または配線基板の中間体に積層する工程、
(5)配線転写シート、電気絶縁性基材および配線基板または配線基板の中間体から成る積層体の加熱加圧によって、配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、かつ電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に接着させる工程、および
(6)配線転写シートの保持基材を除去する工程
を含む製造方法である。この製造方法において、前記の保持基材の露出領域に複数の凹部が形成された配線転写シートを使用すれば、電気絶縁性基材が露出する領域には当該凹部と相補的な形状の凸部が形成される。
【0059】
この製造方法は、予め配線が形成された配線基板または配線基板の中間体の上に、別の電気絶縁性基材を積層し、当該電気絶縁性基材の表面に配線層を形成して多層配線基板を得る方法に相当する。この製造方法においては、電気絶縁性基材を配線転写シートの表面に積層した(即ち、貼付した)後で配線基板または配線基板の中間体に積層する。そのため、この製造方法によれば、より優れた生産性で配線基板を製造できる。さらに、この製造方法によれば、配線転写シートに形成された配線パターンの位置を認識しながら、貫通孔の加工位置を補正することができるから、配線と貫通孔の合致精度が向上する。したがって、より微細な配線上に貫通孔を形成することができる。その結果、より高密度な配線をより高い精度で形成することが可能となる。この製造方法においても、工程(1)〜(6)を繰り返すことによって、2以上の配線層が本発明の配線転写シートで形成された多層配線基板を効率良く製造することができる。
【0060】
第2の製造方法においても、第1の製造方法と同様に、加熱加圧する前の電気絶縁性基材を未硬化の熱硬化性樹脂を含むものとし、工程(1)〜(6)の繰り返しにおいて、工程(5)を、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で実施して、配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に仮接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、かつ電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に仮接着させるようにし、最後に実施される工程(5)において、加熱加圧をすべての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施することができる。即ち、第2の製造方法においても、各電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を最後の配線転写工程で一括的に本硬化させることができる。それによりもたらされる効果は、先に第1の製造方法に関連して説明したとおりである。あるいは、すべての工程(5)において(工程(1)〜(6)が1回だけ実施される場合は、1回だけ実施される工程(5)において)、加熱加圧を電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で実施してよい。その場合には、配線基板の中間体が得られる。そのような中間体は、後述するように、部品が電気絶縁性基材内に配置されている配線基板を製造する際に使用できる。
【0061】
工程(1)〜(6)を繰り返す多層配線基板の製造方法においては、工程(4)において、電気絶縁性基材を積層した配線転写シートは、配線基板または配線基板の中間体の両方の表面に積層されることが好ましい。そのような積層は、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を仮硬化させて電気絶縁性基材を順次仮接着させた後、最後の配線転写工程で熱硬化性樹脂を一括的に本硬化させる場合に好ましく適用される。そのように積層することの利点は、先に第1の製造方法に関連して説明したとおりである。
【0062】
本発明は、また、部品が電気絶縁性基材内に配置されている配線基板を製造する方法であって、
(A)配線基板または配線基板の中間体に、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材を積層する工程、
(B)加熱加圧によって、電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に接着させて積層体を得る工程、
(C)積層体に部品を収容するための空間を形成する工程、
(D)前記本発明の配線転写シートの配線層が形成された面に部品をさらに実装する工程、
(E)部品を実装した配線転写シートを、空間内に部品が位置するように積層体の表面に積層する工程、および
(F)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、且つ部品の周囲の空隙を積層体に含まれる樹脂で充填する工程、ならびに
(G)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
を含む、配線基板の製造方法を提供する。この製造方法は、部品の種類および寸法等に応じて積層体を作成した後で、部品を収容するための空間を形成することを特徴とする。また、この製造方法は、上記本発明の配線転写シートの配線層上に部品を予め実装しておき、部品の電気絶縁性基材への配置を、配線層の転写と同時に実施することを特徴とする。さらに、この製造方法は、部品を収容させる空間に部品を配置した後に生じる隙間を、配線層の転写と同時に積層体に含まれる樹脂(即ち、電気絶縁性基材に含まれる樹脂)を流動させて充填することを特徴とする。これらの特徴を有するこの製造方法によれば、簡便に部品を電気絶縁性基材内に位置させることができる。
【0063】
工程(A)において使用される、配線基板または配線基板の中間体は、本発明の配線基板の製造方法に従って製造されたものであってよい。好ましくは、後述するように配線基板の中間体が使用される。配線基板の中間体を製造する方法は、先に本発明の配線基板を製造する第1の方法および第2の方法に関連して説明したとおりである。
【0064】
工程(C)において形成する空間は、積層体を貫通している穴であってよく、または窪みであってもよい。工程(F)においては、当該空間に部品を配置させた後に生じる空隙を、その周囲から積層体を構成する樹脂を流入させて塞ぐ。積層体を構成する樹脂は、工程(A)において使用される配線基板または配線基板の中間体の電気絶縁層に含まれる樹脂、または工程(A)において使用される電気絶縁性基材に含まれる樹脂である。樹脂は、未硬化の熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂である。それらの樹脂は加熱加圧処理に付されると、粘度が低下して流動する。
【0065】
工程(A)において、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用する場合には、工程(B)において、熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施することが好ましい。工程(B)において熱硬化性樹脂が本硬化すると、工程(F)において熱硬化性樹脂が流動できなくなるためである。
【0066】
空間に部品が配置された後に積層体に残る空隙は、その周囲に加熱加圧により流動し得る樹脂が位置することにより、容易に且つ確実に充填される。したがって、工程(C)において、空間として厚さ方向を貫通した穴を積層体に形成する場合、上記工程(A)においては、配線基板の中間体であって、全ての電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含むものを使用することが好ましい。また、空間として積層体に窪みを形成する場合、工程(A)では、少なくとも窪みが位置する電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む配線基板の中間体を使用することが好ましい。あるいは、一部または全部の電気絶縁性基材が熱可塑性樹脂を含む配線基板または配線基板の中間体を使用してよい。但し、形成される空間の寸法によっては、例えば、積層体を構成する電気絶縁性基材のうち、少なくとも1つが流動可能な樹脂を含んでいれば、部品の周囲の空隙を埋めるのに十分な場合がある。そのような場合には、工程(A)で使用される電気絶縁性基材が加熱加圧により流動する樹脂、即ち、未硬化の熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂を含んでいれば足りる。
【0067】
この製造方法の工程(A)においては、配線基板または配線基板の中間体を、上記第1の製造方法を適用して製造できる。即ち、工程(A)の代わりに、以下の工程(A’)を実施できる。工程(A’)は、
(1)前記本発明の配線転写シートを、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材に積層する工程、
(2)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にする工程、および
(3)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
を含む方法により配線基板または配線基板の中間体を製造し、製造した配線基板または配線基板の中間体に、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する別の電気絶縁性基材を積層して、積層体を得る工程である。この工程(1)で使用される電気絶縁性基材が未硬化の熱硬化性樹脂を含み、工程(2)において、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施すると、配線基板の中間体が得られる。工程(A’)において、そのような配線基板の中間体を製造する場合には、工程(E)において、全ての電気絶縁性基材において熱硬化性樹脂が本硬化するように加熱加圧を実施することが好ましい。
【0068】
また、工程(A’)において製造された配線基板または配線基板の中間体に積層する別の電気絶縁性基材は、未硬化の熱硬化性樹脂を含むものであってよい。そのような電気絶縁性基材は、電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む配線基板の中間体に積層してよい。その場合、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂の種類と、配線基板の中間体に含まれる熱硬化性樹脂の種類は同じであることが好ましい。
【0069】
また、工程(A’)においては、工程(1)が、配線転写シートを積層する電気絶縁性基材を、既に作製された配線基板または配線基板の中間体の表面に積層することをさらに含み、工程(2)が、加熱加圧によって、電気絶縁性基材を当該配線基板または配線基板の中間体の表面に接着させることをさらに含んでよい。その場合、工程(A’)において、多層配線基板が得られる。既に作製された配線基板または配線基板の中間体は、本発明の配線基板の製造方法に従って製造されたものであってよい。
【0070】
さらにまた、工程(1)および(2)をこのように実施して、工程(1)〜(3)を繰り返すことにより、配置すべき部品の寸法および種類に応じた多層配線基板をその場で得ることができる。工程(1)〜(3)を繰り返す場合には、繰り返される工程(1)において未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用し、繰り返される工程(2)において、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施し、工程(E)において、未硬化の熱硬化性樹脂を一括的に本硬化させることが好ましい。
【0071】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の配線転写シートの実施の形態を説明する。
本発明の配線転写シートは、前述のとおり、保持基材と配線層を含むシートである。保持基材は、配線層を転写する際に配線転写シートと被転写物との積層体を加熱加圧することによって、被転写物である電気絶縁性基材と互いに相溶しない材料から成ることが好ましい。保持基材の材料は電気絶縁性基材の材料に応じて、有機樹脂および金属から選択される。電気絶縁性基材がエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂を含む場合、保持基材は、ポリイミド、フッ素系樹脂、および耐熱性エポキシ樹脂から選択される材料で構成することが好ましい。さらに、保持基材は、配線転写後、保持基材を除去する工程において、配線層から良好に剥離するような材料で形成されることが好ましい。その観点からも、保持基材は前述のポリイミドまたはフッ素系樹脂等から成ることが好ましい。
【0072】
保持基材を熱硬化性樹脂で構成する場合には、保持基材を構成する樹脂と電気絶縁性基材を構成する樹脂との相溶性に注意する必要がある。例えば、保持基材をエポキシ樹脂で構成し、電気絶縁性基材がエポキシ樹脂を含む場合、保持基材のエポキシ樹脂が十分に硬化していないと、配線転写工程を実施している間にエポキシ樹脂の粘度が低下し、電気絶縁性基材のエポキシ樹脂と混ざり合って、保持基材の凹部と相補的な形状の凸部を形成できなくなることがある。保持基材が熱可塑性樹脂で構成されている場合も、熱可塑性樹脂が軟化する条件で配線転写工程を実施すると、同様の問題が生じ得る。したがって、保持基材として熱可塑性樹脂シートを使用する場合には、当該シートは耐熱性であることを要する。
【0073】
保持基材の厚さは、その材料に応じて適宜選択される。一般には、10〜100μmとすることが好ましい。保持基材が薄い場合には、ハンドリング性が悪くなる、強度が低下する、ならびに基材にしわが発生しやすいといった問題が生じる傾向にある。保持基材が厚すぎる場合には、保持基材を機械的に剥離しにくい傾向にある。
【0074】
保持基材は、可視光が透過できる材料から成ることが好ましい。そのような材料として、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂および耐熱性エポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂で保持基材を構成する場合、その厚さは100μm以下とすることが、可視光の透過性を確保するうえで好ましい。
【0075】
保持基材の配線層を形成する表面には、離型処理を施してもよい。離型処理を施すことによって、配線層を転写した後で、被転写物の表面に形成された粗面、特に凸部を破損することなく、保持基材を被転写物から容易に剥離することができる。離型処理は、例えばシリコーン樹脂を、0.01〜1μmの厚さとなるように保持基材の配線層を形成する表面に塗布して実施する。
【0076】
保持基材を金属で形成する場合、保持基材を構成する金属と配線層を構成する金属とは、それぞれ選択的に除去できるものであることが好ましい。それにより、配線層を転写した後、保持基材だけをエッチングで除去することができる。保持基材/配線層の組合せとしては、例えば、アルミニウム/銅、およびステンレス/銅等が挙げられる。保持基材を構成する金属と配線層を構成する金属が、それぞれ選択的に除去できないものである場合、保持基材と配線層との間に、エッチングストップ層を設けることが好ましい。エッチングストップ層を構成する材料は、保持基材と配線の組合せおよびエッチング液の種類に応じて、適宜選択される。例えば、保持基材/配線層の組合せが、銅/銅であって、保持基材を硫酸過水を使用するエッチングにより除去する場合、エッチングストップ層はチタンから成る層であることが好ましい。
【0077】
保持基材は、複数の層から成る積層体であってよい。その場合、その表面に配線層が形成される層(この層を「配線形成層」とも呼ぶ)を、電気絶縁性基材と相溶しない材料の層とすることが好ましい。そのような材料は、先に例示したとおりである。保持基板を積層体とする場合、配線形成層は、フッ素系樹脂等の有機樹脂から成る層であることが特に好ましい。配線形成層の厚さは、5〜60μmとすることが好ましい。
【0078】
配線形成層に積層される別の層は、配線転写シートに剛性および強度を付与する層(この層を「支持層」とも呼ぶ)であることが好ましい。支持層は、具体的には、30〜100μmの厚さの金属箔(例えばアルミニウム箔、銅箔またはステンレス箔)、50〜200μmの厚さの樹脂フィルム(例えばPETまたはPENフィルム)であることが好ましい。より好ましくは銅箔が使用される。配線層が銅から成るときに、銅箔を使用すれば、保持基材の両側に同じ材料が位置することとなるため、配線転写シートにおいて反り等が生じにくくなる。あるいは、支持層は、熱発泡性の樹脂(例えば、日東電工(株)より市販されているリバアルファ(商品名))から成る層であってもよい。支持層は2以上の層から成っていてよい。
【0079】
前述のように、保持基材は有機樹脂から成るシートであってよい。しかしながら、有機樹脂シートは、加熱によって寸法変化する傾向にあり、また、エッチングにより所定の配線パターンを有する配線層を形成するときにも、寸法変化することがある。保持基材の寸法変化は、配線の位置のずれを生じさせるため、避けることが望ましい。したがって、保持基材として有機樹脂シートを使用する場合には、当該シートの配線層を形成する面とは反対側の面に金属箔のような支持層を積層して2層構造にし、寸法変化を少なくする又は無くすことが好ましい。
【0080】
支持層は、配線層を転写した後、配線形成層とともに除去される。支持層が金属から成る場合、エッチングが支持層を除去する簡便な方法である。支持層が熱発泡性の樹脂から成る場合、支持層は配線転写の際の加熱によって容易に除去される。支持層が耐熱性の小さい材料(例えば樹脂)から成る場合、支持層は配線転写の前に除去しておく必要がある。その場合、支持層の除去は、例えば、支持層と配線層とを固定する部分(例えば接着剤による接着個所)を破壊または除去して実施するとよい。
【0081】
保持基材を複数層で構成する場合、層と層との間は、層と層とが接する面の全体にわたって固定してよく、あるいは一部(例えば周辺部)で固定してよい。層と層との間の固定は、一方の層が接着性を有する場合には当該層の接着性を利用して実施してよく、あるいは接着剤を使用して実施してよい。
【0082】
配線転写シートの配線層は、配線基板の配線層を構成する材料として一般的に用いられている導電性材料から成る。配線層は、具体的には、銅、銅合金および銀から選択される材料で形成される。また、配線層は、配線基板に形成しようとする配線パターンに応じて、所定のパターンを有している。配線転写シートにおいて、配線層は、配線を転写した後の配線基板において、配線層が電気絶縁性基材から所定のように突出する(または埋め込まれる)ように、保持基材の中に埋設させる。例えば、配線層は、その表面が保持基材の表面と面一となるように、保持基材に埋設させてもよい。その場合、被転写物に形成される配線層は、その略全厚が電気絶縁性基材の表面から突出することとなる。
【0083】
好ましくは、配線層は、その保持基材と接触していない側の表面が、粗面である。特に好ましくは、当該粗面は複数の凸部を有する。その理由は先に説明したとおりである。後述するように、配線層の表面に形成される凸部は、電解めっき条件を適宜選択することによって、本来平坦である金属箔(例えば銅箔)の表面に金属粒子を析出させることにより形成される。好ましくは、凸部は、配線層の表面に平行な断面のうち、最も面積の大きい断面が1〜10μmの差渡しを有する。また、凸部は、好ましくは0.5〜5μmの高さを有する。ここで、凸部の高さは、先に説明したように凸部の基部から凸部の頂部までの最短距離である。より好ましくは、凸部は、アンカー効果をより発揮できるよう、胴部において膨らんだ形状、例えば、マッシュルーム形状、瘤状、またはつぼみ状の形状を有する。そのような形状の凸部は、前述のように、電解めっきの条件を適宜設定して、微細な金属粒子が凝集および/または積層した形態となるように析出させることによって形成される。
【0084】
本発明の配線転写シートにおいて、パターニングの結果として配線が位置しない部分では、保持基材の表面が露出している。保持基材が露出した表面は粗面であり、好ましくは複数の微細な凹部を有する。前述のように、凹部は、それと相補的な形状の凸部を被転写物の表面に形成する役割をする。凹部は、先に図15を参照して説明したように、深さ方向に垂直な断面(即ち、保持基材表面に平行な方向で切断した断面)が、保持基材表面と凹部の底との間で最大となる形状を有することが好ましい。凹部の形状は図15に示すものに限られず、その他の形態であってもよい。凹部が保持基材の露出領域に占める好ましい割合および凹部の好ましい寸法は、前述のとおりである。凹部の寸法および形状は、1つの配線転写シートにおいて、すべて同じである必要はない。一般には、異なる寸法および形状の凹部が1つの配線転写シートに存在する。凹部は、好ましくは均一に分布している。
【0085】
前述のように保持基材と配線層との間には接合層が介在していてよい。接合層は、配線層とは異なる金属または金属酸化物、例えば、Cr、Zn、Ni、およびこれらの金属酸化物から選択される材料から成る。接合層の厚さは、0.01〜1μm程度であることが好ましい。接合層が厚すぎる場合において、接合層が配線層の表面に残ると、配線層間の電気的な接続に影響を及ぼすことがある。有機樹脂と銅とは密着しにくいため、保持基材が有機樹脂から成り、配線層が銅から成る場合には、接合層を介在させることが好ましい。
【0086】
次に、本発明の配線転写シートの被転写物である配線基板用の電気絶縁性基材を説明する。電気絶縁性基材は、配線基板用の電気絶縁性基材として常套的に用いられているものを任意に使用できる。電気絶縁性基材としては、一般に、被圧縮性を有する多孔質基材、またはコアフィルムの両側に接着剤層が形成された三層構造のものが用いられる。具体的には、電気絶縁性基材として、不織布、織布または紙等に熱硬化性樹脂を含浸させた後、当該樹脂を半硬化させた樹脂含浸繊維シートを使用でき、より具体的には、ガラス繊維もしくはアラミド繊維から成るシートに、エポキシ樹脂またはビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂を含浸させた複合基材を使用できる。これらの複合基材は被圧縮性を有する多孔質基材であるので、後述のように電気絶縁性基材が、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する場合に、導電ペーストが圧縮作用を受けることを可能にする。あるいは、電気絶縁性基材として、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、PTFE樹脂、または液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂を含む基材を使用できる。電気絶縁性基材の配線層が形成される表面は、うねり等が低減され、半導体ベアチップや電子部品等を高密度に実装する際に求められる程度の平坦性を有する。
【0087】
電気絶縁性基材は、前述のように、好ましくは導電性ペーストが充填された貫通孔を有する。貫通孔は、配線層が所定のように接続されるように、寸法および位置を選択して電気絶縁性基材に形成される。貫通孔は、常套の手法によって形成され、具体的には炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ等のレーザ加工により形成される。導電性ペーストは、前述の全層IVH構造樹脂多層基板等の製造において使用されているものを任意に使用できる。導電性ペーストは、具体的には、Cu、Ag、Pdまたはこれらの合金等から成る粉末を、エポキシ樹脂、またはフェノール樹脂等の樹脂でペースト化したものである。導電性ペースト中の樹脂成分は最終製品において硬化する。また、導電性ペーストは、配線基板において、圧縮作用を受けて緻密化されることによって、配線層間の電気的な接続信頼性を確保している。
【0088】
さらに、本発明の配線基板において、電気絶縁性基材内には配線層と接続された部品が配置されていてよい。部品は具体的には、半導体ベアチップ、LCRの受動部品、SAWフィルタ、またはTCXO等である。部品は、その寸法等に応じて、1つの電気絶縁層内に位置してもよく、あるいは2以上の電気絶縁層にまたがって位置してよい。
【0089】
ここで、図面を参照して、本発明の配線転写シートおよび配線基板のより具体的な実施態様を説明する。
【0090】
(実施態様1)
図1に、本発明の配線転写シートの実施態様1および当該配線転写シートを使用して作製した配線基板の断面を模式的に示す。図1(a)は、保持基材(101)の表面に配線層(102)が所定のパターンに形成されている配線転写シート(100)を示す。図1(b)は、配線層が形成されている保持基材の表面において保持基材が露出している領域Bの拡大図である。図1(c)は、配線転写シートの配線層付近の領域Aの拡大図である。図1(d)は、図1(a)に示す配線転写シートを用いて、電気絶縁性基材(104)に配線層(103)を転写した配線基板(110)を示す。図1(e)は、配線基板の配線層が形成された表面において、電気絶縁性基材が露出している領域Dの拡大図である。図1(f)は、配線基板の配線層付近の領域Cの拡大図である。
【0091】
図1(c)に示すように、配線層(102)は、保持基材(101)の表面に形成されている凹部(120)に入り込んでいる状態で、保持基材(101)表面に形成されている。即ち、保持基材(101)と配線層(102)の界面は凹凸となっている。したがって、保持基材(101)と配線層(102)との接触面積は両者の界面が平坦である場合と比較して大きくなっている。そのため、両者は良好に接合しており、両者の間に接着剤層を設けなくとも、配線転写工程までの間、配線層が保持基材に良好に保持される。接着剤を使用しなければ、配線転写後の配線層表面に接着剤が残存することがないため、好都合である。配線層と保持基材との界面をこのようにする方法は後述する。図示するように、この配線転写シート(100)において、配線層(102)の露出表面は平坦である。
【0092】
この配線転写シートを、配線基板用の電気絶縁性基材の表面に配線層が接するように重ね、加熱加圧することにより配線層を転写して、配線基板を得る。得られる配線基板の構造は、図1(d)に示すとおりである。この配線基板(110)において、配線層(103)は全体が電気絶縁性基材(104)に埋設され、その露出表面は電気絶縁性基材(104)の露出表面と実質的に面一となっている。これは、図1(a)の配線転写シート(100)において、配線層(102)が突出していることによる。配線転写工程に際しては、圧力を加えて配線転写シートと被転写物の表面との間で間隙が生じないように密着させるので、突出部である配線層は埋設されることとなる。
【0093】
図1(e)に示すように、配線基板(110)において、電気絶縁性基材(104)が露出している表面には、配線転写シート(100)の凹部(120)と相補的な形状の凸部(130)が形成されている。これは、配線転写時に、電気絶縁性基材を構成する材料が凹部内に流入して形成されたものである。各凸部(130)は、瘤状、つぼみ状またはマッシュルーム状である。このような形状の凸部は、その上に樹脂等が積層されたときに、配線基板表面に平行な断面の面積が一定である凸部(例えば円柱状の凸部)よりも、より高いアンカー効果を発揮して、配線基板と積層材料との密着性を向上させる。
【0094】
さらに、この配線基板は、図1(f)に示すように、配線層(103)の表面にも微細な凸部を有する。これは、配線転写シートにおいて、配線層(102)と保持基材(103)との界面が凹凸であり、配線転写後、保持基材を除去することにより、配線層(102)の凸部が露出したことによる。配線層(103)の凸部もまた、電気絶縁性基材(104)の凸部と同様に、その上に樹脂等が積層されるときに、当該樹脂との接触面積を大きくするとともに、アンカー効果を発揮する。したがって、電気絶縁性基材の表面だけでなく配線層の表面にも凸部が存在するこの配線基板は、その上に積層される樹脂等をより強固に密着させるものとなる。
【0095】
(実施態様2)
図2に本発明の配線転写シートの実施態様2の断面を模式的に示す。図2に示す配線転写シート(200)は、保持基材(201)が配線形成層(240)と支持層(250)とから成り、配線層(202)が配線形成層(240)の表面に形成されているものである。この配線転写シート(200)において、凹部(図示せず)は、配線形成層(240)の露出している表面に形成されている。配線形成層(240)および支持層(250)を構成するのに適した材料は先に説明したとおりである。より具体的には、支持層/配線形成層の組み合わせとして、銅箔/フッ素系樹脂シートが挙げられる。
【0096】
(実施態様3)
図3に、本発明の配線転写シートの実施態様3および当該配線転写シートを使用して作製した配線基板の断面を模式的に示す。図3(a)は、配線層(302)が保持基材(301)に埋設された構造の配線転写シート(300)を示す。図3(b)は、配線転写シートの配線層付近の領域Aの拡大図である。図3(c)は、図3(a)に示す配線転写シートを用いて、電気絶縁性基材(304)の表面に配線層(303)を転写して得た配線基板(310)を示す。図3(d)は、配線基板の配線層付近の領域Bの拡大図である。
【0097】
図3(b)に示すように、配線層(302)は、その厚さのほぼ全部が保持基材(301)に埋設されており、配線層(302)の表面と保持基材(301)の表面は、ほぼ面一となっている。このような配線転写シートは、所定のパターンを有する配線層を形成した後、さらに熱プレスによって配線層を押しこむことにより製造される。配線転写シート(300)は、配線層(302)が保持基板(301)に埋設されていることを除いては、図1(a)に示した配線転写シートと同じであり、凹部の形状および保持基材(301)と配線層(302)との間の界面等については、先に図1を参照して説明したとおりである。
【0098】
この配線転写シートの配線層を、電気絶縁性基材の表面に加熱加圧により転写すると、図3(c)に示す構造の配線基板(310)が得られる。図3(d)に示すように、配線基板(310)において、転写された配線層(303)は電気絶縁性基材(304)の表面から突出している。この配線基板の配線層(304)の表面に半導体ベアチップ等を実装すると、図1(d)に示すものよりも、半導体ベアチップ等と配線基板との間の間隔が大きくなる。前述のとおり、当該間隔が大きいほど、実装部を保護するための封入樹脂をより容易に注入することができる。配線層(303)の表面が凸部を有することは、先に図1(f)を参照して説明したとおりである。
【0099】
(実施態様4)
図4に、本発明の配線転写シートの別の態様および当該配線転写シートを使用して作製した配線基板の断面を模式的に示す。図4(a)は、配線層(402)が保持基材(401)の表面に形成された配線転写シート(400)を示す。図4(b)は、配線転写シートの配線層付近の領域Aの拡大図である。図4(c)は、図4(a)に示す配線転写シートを用いて、電気絶縁性基材(404)に配線層(403)を転写して得た配線基板(410)を示す。図4(d)は、配線基板の配線層付近の領域Bの拡大図である。
【0100】
図4(b)に示すように、配線転写シート(400)においては、配線層(402)と保持基材(401)の界面が凹凸になっているとともに、配線層(402)の露出表面が凸部を有する。配線転写シート(400)のその他の構成は先に図1を参照して説明したとおりである。
【0101】
この配線転写シートの配線層を、電気絶縁性基材の表面に加熱加圧により転写すると、図4(c)に示す構造の配線基板(410)が得られる。図4(d)に示すように、配線基板(410)においては、配線転写シート(400)の配線層(402)の露出表面に存在していた凸部によって、配線層(403)と電気絶縁性基材(404)との間で良好な密着性が確保される。
【0102】
続いて、本発明の配線転写シートの製造方法を説明する。前述のように、本発明の配線転写シートを製造する方法として、第1〜第3の製造方法がある。第1の製造方法においては、表面が粗面である配線材料シートを用い、このシートを保持基材に押し付けて粗面と相補的な形状を有する粗面を保持基材の表面に形成し、それから配線材料シートをパターニングして所定のパターンを有する配線層を形成する。
【0103】
表面が粗面である配線材料シートは、好ましくは表面に複数の凸部を有するシートである。以下に、第1の製造方法の一態様として、そのようなシートを使用する態様を説明する。
【0104】
配線材料シートは、例えば金属箔である。金属箔は、好ましくは先に挙げた配線層を構成する好ましい金属の箔である。金属箔は、本来平坦である表面を有する。この平坦な表面が粗面となるように、金属箔の表面に、電解めっきによって金属の粒子を析出させて、複数の凸部を形成することが好ましい。前述のとおり、電解めっきにより形成される凸部は、電解めっきにより析出した金属粒子が複数個、凝集および/または積層した構造を有する。電解めっきは、生産性の点から、凸部を形成する方法として好ましく採用される。
【0105】
電解めっきにより析出させる金属粒子(単に「析出粒子」とも呼ぶ」)の寸法は、保持基材の表面に形成しようとする粗面の形状(例えば、凹部の寸法)が所望のものとなるように選択される。析出粒子の寸法が小さい場合には、保持基材の表面に形成される凹部、ひいては配線基板の電気絶縁性基材の表面に形成される凸部の寸法が小さくなる。その結果、配線基板の表面に樹脂等が積層されたときにアンカー効果が十分に発揮されない。析出粒子の寸法が大きい場合には、金属箔をパターニングして微細な幅(例えば20μm以下)の配線層を形成すると、配線層と保持基材との間に存在する凸部の数が少なくなる。その結果、凸部のアンカー効果による配線層と保持基材との間の密着性が不十分となり、配線層が保持基材から脱落することがある。具体的には、析出粒子は、直径が0.1μm〜4μm程度の球状であることが好ましく、凸部は、この寸法の複数の析出粒子が凝集および/または積層した形態をとり、全体として前述した寸法(最も面積の大きい断面の差渡し1〜10μm、高さ0.5〜5μm)を有するものであることが好ましい。尤も、凸部は、複数の析出粒子で形成される必要はかならずしもなく、1つの析出粒子から成るものであってよい。
【0106】
表面に複数の凸部を有する配線材料シートは、当該凸部が保持基材の表面に接するように重ね、さらに、当該凸部が保持基材に埋設されるように保持基材に押し付けて保持基材と一体化させる。したがって、この製造方法においては、保持基材として、配線材料シートの表面の凸部が埋設され得るような材料から成る基材を使用する必要がある。具体的には、保持基材は、有機樹脂から成るシート、または有機樹脂を配線形成層とする積層体とする必要がある。その場合、保持基材を構成するのに適した有機樹脂は、先に説明したとおりであり、フッ素系樹脂のような耐熱性樹脂である。
【0107】
配線材料シートの凸部が保持基材に埋設されると、凸部のアンカー効果によって、配線材料シートと保持基材とが密着して一体化する。両者の密着性をさらに高めるために、配線材料シートと保持基材との間に接合層が介在するようにしてもよい。接合層を構成する好ましい材料は先に説明したとおりである。接合層は、配線材料シートの凸部が形成された表面に、例えばめっきにより形成される。例えばCrまたはNiをめっきにより形成すると、大気中で不動態化し、より密着性が向上する。接合層は、保持基材の表面に形成してもよい。
【0108】
配線材料シートを重ねる前に、保持基材の表面に離型処理を施してよい。離型処理の目的および方法は、先に保持基材に関連して説明したとおりであるからここではその説明を省略する。離型処理は、保持基材がエポキシ樹脂から成るものである場合に施すことが好ましい。保持基材が、それ自体、電気絶縁性基材に対して優れた離型性を示すもの(例えばフッ素系樹脂)から成る場合には、離型処理を施す必要はない。
【0109】
配線材料シートと保持基材との一体化は、両者を重ね合わせた後、加熱加圧して密着させることにより実施する。加熱加圧は、保持基材が軟化して、配線材料シートの凸部により塑性変形し、かつ保持基材が劣化しない条件で実施する。保持基材が熱可塑性樹脂から成る場合、加熱加圧は保持基材が軟化する条件にて実施する。保持基材が熱硬化性樹脂から成る場合、保持基材において加熱加圧前の熱硬化性樹脂は未硬化または半硬化状態とし、加熱加圧により、熱硬化性樹脂が軟化し、粘度が低下した状態にして、凸部と相補的な形状の凹部を形成した後、熱硬化性樹脂を硬化させる。また、加熱加圧は、配線材料シートが酸化しないように、必要に応じて不活性ガス雰囲気または真空雰囲気にて実施する。
【0110】
配線材料シートと保持基材とを一体化させた後、配線材料をエッチングして、所定の配線パターンを有する配線層を形成する。それにより、配線転写シートが得られる。エッチングは、配線材料に応じて適当なエッチング液を選択し、それを用いて常套の方法で実施する。エッチングにより配線材料が除去された部分では、保持基材の表面が露出し、当該露出した領域には凹部が存在することとなる。また、この製造方法により製造される配線転写シートにおいて、保持基材と配線層との界面は、保持基材の凹部に配線層が入り込んだ構造となっている。この構造は、配線材料シートの凸部が保持基材に埋設したことにより得られる。
【0111】
図5(a)〜(c)に、本発明の配線転写シートを製造する第1の方法の主要な工程を示す。図5(a)に、保持基材(501)および配線材料シート(502)をそれぞれ示す。図5(d)に、配線材料シートの表面の領域Aの拡大図を示す。図5(d)に示すように、配線材料シートの表面には、全体にわたって、瘤状、マッシュルーム状またはつぼみ状の凸部(530)が形成されている。保持基材(501)または配線材料シート(502)の表面には予め接合層(図示せず)を形成してよい。また、保持基材(501)の表面には予め離型処理を施してよい。
【0112】
図5(b)は、保持基材(501)と配線材料シート(502)とを重ね合わせ、さらに加熱加圧して密着させ、それにより凸部を保持基材に埋設させる工程を示す。凸部の埋設により、保持基材表面にはそれと相補的な形状の凹部が形成される。
【0113】
図5(c)は、配線材料シート(502)をエッチングして、所定の配線パターンを有する配線層(503)を形成する工程を示す。図5(e)は、配線層付近の領域Bの拡大図である。図5(e)に示すように、配線材料シートが除去されて、保持基材(501)が露出した領域では凹部(520)が形成され、保持基材(501)と配線層(503)との界面は凹凸となっている。
【0114】
上記においては、配線材料シートとして、表面に複数の凸部を有するものを使用する態様を説明した。配線材料シートの表面(粗面)は、複数の凸部を有するものに限定されない。例えば、配線材料シートの表面は、複数の凹部を有する粗面としてよい。また、保持基材(501)は、有機樹脂から成るシートと銅箔のような支持層との2層構造とすることが、寸法安定性およびハンドリング性の点において好都合である。
【0115】
次に、本発明の配線転写シートを製造する第2の方法を説明する。第2の製造方法においては、保持基材の表面に所定の配線パターンを有する配線層を形成した後、保持基材の露出領域を粗化処理することによって粗面にする。粗化処理は複数の凹部が形成されるように実施することが好ましい。以下に、第2の製造方法の一態様として、複数の凹部が形成されるように粗化処理を実施することを含む態様を説明する。
【0116】
この製造方法は、保持基材が加熱加圧によっても塑性変形しない材料、例えば金属箔である場合に、好ましく適用される。そのような保持基材には、前記第1の製造方法のように、凸部を有する別のシート(即ち、配線材料シート)を積層して一体化させても、凸部と相補的な形状の凹部を形成することが困難であることによる。この製造方法は、具体的には保持基材がアルミニウム箔またはステンレス箔等である場合に好ましく適用される。
【0117】
保持基材がアルミニウム箔等の金属箔である場合、配線層は、銅のような配線材料を保持基材の表面に電解めっきによって形成し、それからパターニングすることにより形成される。その場合、金属箔の表面は、電解めっきにより均一な層が形成されるよう、平坦であることが好ましい。
【0118】
金属箔の種類によっては、配線材料を直接めっきにより析出させることが困難な場合がある。その場合には、接合層を保持基材の表面に予め設け、当該接合層の表面に導電性材料をめっきすると、保持基材と配線層との間で良好な密着性を確保できる。例えばアルミニウム箔を保持基材とし、銅を配線層とする場合には、アルミニウム箔の表面に接合層として亜鉛層をめっきにより予め設け、亜鉛層の表面に銅を電気めっきにより析出させることが好ましい。
【0119】
保持基材表面に析出させた配線材料の層は、エッチングによりパターニングされて、所定のパターンを有する配線層に形成される。保持基材および配線層がともに金属である場合には、配線層を構成する金属だけがエッチングされるように、あるいは、保持基材を構成する金属のエッチングレートが配線層を構成する金属のエッチングレートよりも遅くなるように、保持基材と配線層との組合せを選択する。保持基材と配線層とがそれぞれ同種の金属から成る場合には、保持基材と配線層との界面にエッチングストップ層として中間層を設け、中間層の表面に配線層を形成することが好ましい。中間層を構成する材料は、保持基材と配線層との組合せ、およびエッチング液の種類に応じて適宜選択され、一般には、クロム、ニッケル、コバルト、チタンおよび亜鉛等から選択される。例えば、保持基材を構成する金属が銅であり、配線層を構成する金属が銅であり、エッチング液が硫酸系のものである場合、中間層はアルミニウム、チタンまたはクロムで形成することが好ましく、エッチング液が塩化第二鉄または塩化第二銅の水溶液である場合には、中間層はチタンまたはステンレスで形成することが好ましい。これらの中間層はまた、得られた配線転写シートを用いて電気絶縁性基材に配線を転写した後、保持基材をエッチングにより除去する際にもエッチングストップ層として作用する。保持基材がステンレス箔またはアルミニウム箔であり、配線層が銅から成る場合、このような中間層は一般に不要である。
【0120】
配線材料をエッチングすると、エッチングにより配線材料が除去された部分では保持基材の表面が露出する。この保持基材の露出表面に、粗化処理を施して複数の凹部を形成する。粗化処理の方法として、反応性ガスを用いたドライエッチング加工、サンドブラストによる機械加工、および電解エッチング加工が挙げられる。保持基材がアルミニウム箔である場合には、塩酸を主成分とする液をエッチング液とする電解エッチング加工により、微細なピット形状を有する凹部を形成することができる。粗化処理に際しては、配線層を形成する際に形成したエッチングレジストを除去せずに、粗化処理を施すことが好ましい。粗化処理の間に配線層が損傷されないよう、エッチングレジストで配線層を保護するためである。そのように粗化処理を実施する場合、エッチングレジストは粗化処理の後に除去する。
【0121】
図6(a)〜(c)は、本発明の配線転写シートを製造する第2の方法の主要な工程を示す。図6(a)は、金属箔である保持基材(601)の表面に配線材料(602)の層を形成する工程を示す。図6(a)で得た複合材料(603)における界面(領域A)の拡大図を図6(d)に示す。図示した態様においては、金属箔の上に銅のような配線材料が電解めっきにより積層されているため、両者の界面は平坦である。金属箔の表面に配線材料の層が形成された複合材料は市販されており、例えば、アルミニウム箔の表面に銅の層が形成された複合材料は、UTC銅箔(三井金属社製)の商品名で市販されている。本発明の製造方法においては、そのような市販の複合材料を使用して、後の工程を実施してよい。
【0122】
図6(b)は、配線材料から成る層(602)をエッチングによりパターニングして配線層(604)を形成する工程を示す。前述のように、エッチングは、配線材料から成る層(602)だけが除去されるように実施する。図6(b)の工程を実施した後の保持基材の露出表面(領域B)の拡大図を、図6(e)に示す。図示するように、この段階においては、保持基材(601)の露出表面は平坦である。
【0123】
図6(c)は、図6(b)の工程終了後、保持基材(601)の露出表面に粗化処理を施す工程を示す。粗化処理を施した後の保持基材の露出表面(領域C)の拡大図を図6(f)に示す。図示するように保持基材の露出表面には複数の凹部(620)が形成されている。粗化処理は、被転写物である電気絶縁性基材に形成すべき凸部の形状等に応じて、所定の形状および数の凹部が得られるように行う。
【0124】
本発明の配線転写シートを製造する方法は、保持基材が金属箔である場合だけでなく、樹脂から成る場合にも適用される。保持基材が樹脂から成るシートである場合には、配線材料から成る層を、無電解めっき、無電解めっきと電解めっきとを組合せた方法、または真空成膜により保持基材に形成し、それから配線材料から成る層をエッチングして所定パターンの配線層を形成する。
【0125】
上記においては、粗化処理を、複数の凹部が形成されるように実施する態様を説明した。粗化処理は、保持基材の露出表面に凹部を形成するものに限定されない。例えば、複数の凸部が形成されるように粗化処理を施してよい。
【0126】
次に、本発明の配線転写シートを製造する第3の方法を説明する。第3の製造方法においては、保持基材の表面を粗面にした後、当該粗面に金属をめっきによって所定の配線パターンに析出させて配線層を形成する。保持基材の表面は、好ましくは複数の凹部を有する粗面にされる。以下に、第3の製造方法の一態様として、保持基材に複数の凹部を形成した後、配線層を形成する態様を説明する。
【0127】
保持基材の表面に凹部を形成する方法は、先に第2の製造方法に関連して説明したとおりである。また、保持基材が樹脂から成る場合、凹部は、凸部を有するロールもしくは金型、または電解めっきにより形成された複数の凸部を有する金属箔を使用し、当該凸部を押しつけることにより形成してもよく、あるいは機械的な加工によって形成してもよい。保持基材が配線形成層と支持層とから成り、配線形成層が樹脂の層である場合も同様である。ロールまたは金型等に形成される凸部の形状は、被転写物に形成しようとする凸部の形状にすることが好ましい。ロール等の凸部が転写されて、保持基材に凹部が形成され、さらに当該凹部と相補的な形状の凸部が被転写物に形成されるからである。換言すれば、ロール等の形状によって、配線基板の表面形状を制御することができる。
【0128】
次いで、保持基材の凹部が形成された表面に、フォトレジストを形成し、フォトレジストをパターニングする。例えば、フォトレジストはドライフィルムタイプの材料をラミネートすることにより形成される。パターニングは、パターニングにより形成される開口部が所定の配線パターンを形成するように実施する。それから、当該開口部にめっきによって金属を析出させ、配線層を形成する。保持基材が金属から成る場合、金属の析出は電解めっきによって実施することが、生産性の点から好ましい。保持基材が樹脂から成る場合、金属は無電解めっきによって析出させることができる。めっきによって析出させる金属は、一般的には銅である。めっきによって析出させた金属は、保持基材の凹部に入り込むため、得られた配線転写シートにおいて保持基材と配線層との界面は凹凸となる。その後、フォトレジストを除去すると、所定のパターンの配線層が形成され、配線転写シートが得られる。
【0129】
図7(a)〜(d)は、本発明の配線転写シートを製造する第3の方法の主要な工程を示す。図7(a)は、保持基材(701)の表面に凹部(720)を形成する工程を示す。保持基材(701)の表面(領域A)の拡大図を図7(e)に示す。図示するように、保持基材(701)には、瘤状、マッシュルーム状またはつぼみ状の凹部(720)が多数形成されている。
【0130】
図7(b)は、保持基材(701)の表面にフォトレジスト(702)を形成し、フォトレジスト(702)をパターニングする工程を示す。パターニングにより、フォトレジスト(702)には、配線層を形成すべき開口部(740)が形成される。図7(c)は、フォトレジスト(702)の開口部(740)に、めっきによって配線材料(703)を析出させる工程を示す。図7(d)は、フォトレジストを除去して配線層(703)を形成する工程を示す。図7(e)は、図7(d)に示す工程を実施して得た配線転写シートにおける配線層付近の領域Bの拡大図である。図示するように、保持基材の露出表面には凹部(720)が存在している。保持基材(701)と配線層(703)との界面は凹凸となっていて、両者は良好に密着している。したがって、この構成の配線転写シートにおいては、保持基材と配線層との密着性は良好である。
【0131】
上記においては、保持基材の表面を、複数の凹部を形成することによって粗面にする態様を説明した。保持基材の表面(粗面)は、複数の凹部を有するものに限定されない。例えば、保持基材の表面は、複数の凸部を有するように加工して粗面としてもよい。
【0132】
以上において、本発明の配線転写シートおよびその製造方法の具体的な態様を説明した。次に、本発明の配線転写シートを用いて、配線基板を製造する方法を説明する。
【0133】
本発明の配線基板は、本発明の配線転写シートの配線層が転写されることにより配線層が形成された配線基板であって、配線基板の配線層が形成された表面において、少なくとも電気絶縁性基材が露出している領域が、粗面であり、好ましくは複数の凸部を有する。配線層が転写される電気絶縁性基材については、先に説明したとおりであり、例えば熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む。
【0134】
前述のように、本発明の配線基板を製造する方法としては、第1および第2の製造方法がある。第1の製造方法においては、電気絶縁性基材を介して対向する配線層のうち少なくとも一方の配線層を形成する工程が、(1)本発明の配線転写シートを電気絶縁性基材の表面に積層する工程、(2)加熱加圧によって、配線転写シートの配線層を転写するとともに、電気絶縁性基材の表面を、配線転写シートの保持基材の粗面と相補的な形状である粗面にする工程、および(3)配線転写シートの保持基材を除去する工程を含む。
【0135】
本発明の配線転写シートは、電気絶縁性基材の少なくとも一方の表面に積層される。本発明の製造方法においては、電気絶縁性基材として、導電性ペーストが充填された貫通孔を有するものを使用する。配線転写シートの積層に際しては、電気絶縁性基材を介して対向する配線層が所定のように接続されるように、導電性ペーストが充填された貫通孔と転写される配線層とを適切にアライメントする必要がある。配線転写シートの保持基材が可視光を通過させる材料で構成されている場合、配線転写シートの配線層および電気絶縁性基材の貫通孔をそれぞれアライメントマーカとする。これらのアライメントマーカは、保持基材の上方(配線層が形成されている面とは反対側)にて、1つの認識系(例えばカメラ)で認識され、それによりアライメント積層を実施する。アライメントマーカの認識系は、X線を用いる認識系であってもよい。
【0136】
電気絶縁性基材が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、配線転写シートが積層される段階において、当該熱硬化性樹脂は、未硬化または半硬化の状態にある。これは、配線転写シートに形成された凹部と相補的な形状の凸部が、電気絶縁性基材の表面に形成されることを確保するためであり、また、この電気絶縁性基材を他の配線基板または配線基板の中間体に積層して一体化する場合に、当該他の配線基板または配線基板の中間体との接着性を確保するためである。
【0137】
配線転写シートを電気絶縁性基材の表面に積層した後、加熱加圧により、配線層を転写するとともに、配線転写シートの保持基材の露出表面と接する電気絶縁性基材の表面を、保持基材の露出表面(即ち、粗面)と相補的な形状の粗面とする。保持基材の露出表面が複数の凹部を有する場合、電気絶縁性基材の表面には当該凹部と相補的な形状の凸部が形成される。凸部は、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が、加熱加圧により、まず軟化して粘度が低下した状態となって保持基材の凹部内に流入し、その後、熱硬化することにより形成される。また、この加熱加圧により、貫通孔中の導電性ペーストが圧縮され、転写される配線層と電気絶縁性基材を介して対向する配線層との間を電気的に接続する。加熱加圧の具体的な条件は、電気絶縁性基材の種類および配線パターン等に応じて適宜選択される。一般に、加熱加圧は、150〜250℃、1.96〜19.6MPa(20〜200kgf/cm)の圧力を使用して実施される。
【0138】
加熱加圧は、配線転写シートを構成する保持基材と、電気絶縁性基材とが相溶しないように実施する必要がある。例えば、保持基材が熱可塑性樹脂から成る場合に、保持基材が軟化する条件で加熱加圧を実施すると、電気絶縁性基材を構成する樹脂と保持基材を構成する樹脂とが混ざり合い、保持基材の凹部と相補的な形状の凸部を電気絶縁性基材に形成することができない。
【0139】
配線層を転写した後、配線転写シートの保持基材を除去する。保持基材の除去は、保持基材の材料に応じて適当な方法により実施する。前述のように保持基材が選択エッチングにより除去できる金属から成る場合には、エッチングにより除去することが好ましい。保持基材が樹脂から成る場合には、機械的に剥離して除去する。
【0140】
この第1の製造方法においては、電気絶縁性基材を、既に作製された配線基板または配線基板の中間体の表面に積層し、加熱加圧に際して、電気絶縁性基材をこの配線基板または配線基板の中間体の表面に接着させ、それにより多層基板を得るようにしてよい。電気絶縁性基板を接着させる配線基板または配線基板の中間体は、任意のものであってよく、配線層を転写により形成したものである必要は必ずしもない。電気絶縁性基材は、転写以外の方法で配線層を形成した両面配線基板または多層配線基板に積層してもよい。あるいは、電気絶縁性基材は、1層または複数層の電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む両面配線基板または多層配線基板の中間体に積層してもよい。未硬化の熱硬化性樹脂を含む配線基板の中間体に電気絶縁性基材を積層する場合には、配線層の転写工程において、配線基板の中間体に含まれる熱硬化性樹脂も本硬化させることが好ましい。
【0141】
また、上記の製造方法において、工程(1)〜(3)を繰り返すことによって複数の配線層が本発明の配線転写シートにより形成された、多層配線基板を得ることができる。その場合、次の電気絶縁性基材が積層される、電気絶縁性基材の露出表面は、本発明の配線転写シートによって粗面(例えば、複数の凸部を有する表面)にされているため、次の電気絶縁性基材と良好に密着する。さらに、配線層の露出表面も粗面となっている場合には、その上に積層される電気絶縁性基材との密着性はより良好となる。
【0142】
熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を用いて、工程(1)〜(3)を繰り返す場合、工程(2)においては、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件、即ち一旦粘度が低下した後に硬化するが完全には硬化しない条件で加熱加圧を実施し、最後に実施される工程(2)において、全ての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で加熱加圧を実施することが好ましい。即ち、繰り返し実施する工程(2)を最後の1回を除いて、▲1▼配線転写シートの配線層が電気絶縁性基材に仮接着され、▲2▼電気絶縁性基材の表面が、配線転写シートの表面形状と相補的な形状を有する粗面とされ、▲3▼電気絶縁性基材がその下に位置する電気絶縁性基材と仮接着するような条件にて実施することが好ましい。そのような条件は、熱硬化性樹脂が本硬化する条件よりも穏やかな条件であり、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂の種類および配線パターン等に応じて適宜選択される。一般には、50〜100℃、0.98〜4.9MPa(10〜50kgf/cm)の圧力を用いて、工程(2)(最後の1回を除く)を繰り返し実施する。
【0143】
最後の工程(2)においては、全ての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂を一括的に本硬化させる条件で加熱加圧を実施する。その条件は、積層した電気絶縁性基材の数および各電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂の硬化の度合いに応じて適宜選択される。一般には、150〜250℃、1.96〜19.6MPa(20〜200kgf/cm)の圧力を用いて、最後の工程(2)における加熱加圧を実施する。
【0144】
仮接着の繰り返しの後、本硬化を実施する場合には、前述のように、電気絶縁性基材は、好ましくは配線基板または配線基板の中間体の両方の表面に同時に積層される、即ち、対称的に積層される。当然のことながら、工程(1)〜(3)の繰り返しにおいて電気絶縁性基材を対称的に積層して多層配線基板を作製する場合には、対称的に積層して得られる配線基板が所望の回路を形成するように、回路設計を行う。
【0145】
なお、工程(1)〜(3)を繰り返して多層配線基板を得る方法は、熱可塑性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用して実施してよい。その場合には、各工程(2)(最後の1回を含む)は、配線基板に積層される電気絶縁性基材のみが軟化する条件で実施すればよい。但し、電気絶縁性基材に含まれるマトリックス成分が熱硬化性樹脂であるか、熱可塑性樹脂であるかを問わず、最終的に得られる配線基板においては、導電性ペーストが十分に緻密化され、それにより配線層同士の結合が確保されることが必要である。したがって、各々の工程(2)は、配線層の転写および層間の接合に加えて、かかる要求をも満たすように、条件を設定して実施する必要がある。
【0146】
図8(a)〜(c)に、本発明の配線基板を製造する第1の方法の主要な工程を示す。図8(a)は、本発明の配線転写シート(803)、被転写物である電気絶縁性基材(806)、および配線基板(807)を積層する工程を示す。
【0147】
配線転写シート(803)は、図1に示す配線転写シート(100)と同じ構成を有する。図8(d)に配線転写シート(803)の配線層付近の領域Aの拡大図を示す。図示するように、配線転写シート(803)において、保持基材(801)の露出表面には凹部(820)が形成され、保持基材(801)と配線層(802)との界面は凹凸となっている。
【0148】
電気絶縁性基材(806)は、導電性ペースト(805)が充填された貫通孔(804)を有している。図示した態様において、電気絶縁性基材(806)は未硬化の熱硬化性樹脂を含む複合基材である。
【0149】
図8(a)では、配線基板(807)として、全層IVH構造樹脂多層基板が示されている。配線基板(807)として全層IVH構造樹脂多層基板を用いれば、より高密度に配線を収容することができる。但し、配線基板(807)の基板構造はこれに限定されるものではなく、一般的なガラスエポキシ基板を用いてもよい。あるいは、配線基板(807)と同じ構造を有し、一部または全部の電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む中間体を用いてよい。
【0150】
図示した態様において、保持基材(801)は可視光を通過させる材料から成る。したがって、配線転写シート(803)と電気絶縁性基材(806)とのアライメントは、配線転写シート(803)の上方に設けた認識系(図示せず)を用いて実施される。電気絶縁性基材(806)と配線基板(807)とのアライメントは、それぞれに形成されたアライメント用の貫通孔を合わせることによって実施する。
【0151】
図8(b)は、配線転写シート(803)、電気絶縁性基材(806)および配線基板(807)を積層した状態にて、加熱加圧する工程を示す。加熱加圧工程は、例えば、熱盤プレスを用いて実施する。この工程において、電気絶縁性基材(806)の樹脂成分が、配線転写シート(803)の表面の微細な凹部(820)に流入した後、本硬化する。この硬化の際に、配線層(802)−電気絶縁性基材(806)間、および電気絶縁性基材(806)−配線基板(807)間が接着する。また、この工程においては、貫通孔(804)内の導電性ペースト(805)が圧縮されて、配線転写シート(803)から転写される配線層(802)と、配線基板(807)上の配線(808)とを電気的に接続する。配線基板(807)に代えて、配線基板の中間体が使用される場合には、それに含まれる未硬化の熱硬化性樹脂も本硬化する条件で、加熱加圧を実施することが好ましい。
【0152】
図8(c)は、配線転写シート(803)の保持基材(801)を除去する工程を示す。保持基材(801)は、先に述べたように、その材料に応じてエッチングまたは機械的な剥離により除去される。図8(e)は、保持基材を除去して得られる配線基板(810)における、配線層付近の領域Cの拡大図を示す。図8(f)は、配線基板(810)の表面において電気絶縁性基材が露出している領域Bの拡大図を示す。図8(e)および(f)に示すように、得られた配線基板においては、配線層(802’)および電気絶縁性基材(806)のいずれの表面にも凸部が形成されている。
【0153】
次に、図10(a)〜(i)に、上記積層する工程、加熱加圧する工程、および保持基材を剥離する工程を繰り返して、多層配線基板を製造する方法の主要な工程を示す。図10(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)と同じであり、配線転写シート(1000)によって、電気絶縁性基材(1006)の表面に配線層(1002)を転写するとともに、電気絶縁性基材(1006)を配線基板(1007)の表面に接着し、その後、保持基材(1001)を除去して、配線基板(1008)を得る工程を示す。図10(a)において、配線基板(1007)に代えて、これと同じ構造を有し、一部または全部の電気絶縁層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む配線基板の中間体を使用してよい。あるいは、他の構造の配線基板の中間体を使用してもよい。
【0154】
図10(d)〜(f)は、この配線基板(1008)の表面に、別の電気絶縁性基材(1016)を積層するとともに、この電気絶縁性基材(1016)の表面に配線層を形成して、配線層を1つ増やす工程を示す。図10(d)〜(f)も図8(a)〜(c)と同じであり、配線転写シート(1010)によって、電気絶縁性基材(1016)の表面に配線層(1012)を転写するとともに、電気絶縁性基材(1016)を配線基板(1008)の表面に接着し、その後、保持基材(1011)を除去して、配線基板(1018)を得る工程を示す。得られた配線基板において、配線層および電気絶縁性基材の表面には、図8(e)および(f)に示すように凸部(図示せず)が形成されている。配線層(1002)と配線層(1012)との間は、電気絶縁性基材(1016)に形成された貫通孔(1014)に充填された導電性ペースト(1015)によって電気的に接続されている。
【0155】
図10(g)〜(i)は、図10(f)に示す配線基板(1018)の表面に別の電気絶縁性基材(1026)を積層するとともに、この電気絶縁性基材(1026)の表面に配線層を形成して配線層を1つ増やす工程を示す。図10(g)〜(i)も図8(a)〜(c)と同じであり、配線転写シート(1020)によって、電気絶縁性基材(1026)の表面に配線層(1022)を転写するとともに、電気絶縁性基材(1026)を配線基板(1018)の表面に接着し、その後、保持基材(1021)を除去して、配線基板(1028)を得る工程を示す。配線層(1012)と配線層(1022)との間は、電気絶縁性基材(1026)に形成された貫通孔(1024)に充填された導電性ペースト(1025)によって電気的に接続されている。
【0156】
図10では本発明の配線転写シートを用いて、配線層を三層形成する工程を示している。同様の工程をさらに繰り返して、さらに多くの配線層を本発明の配線転写シートで形成してよいことはいうまでもない。
【0157】
また、図10(b)および(e)に示す工程を、配線層と電気絶縁性基材との間、および電気絶縁性基材と配線基板との間が、仮接着されるように実施し、図10(h)に示す工程を、すべての電気絶縁性基材(1006,1016,1026)に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化して、全体が一体化されるように実施してよい。その場合、図10(b)および図10(e)に示す工程は、熱盤プレスを使用して実施する必要はなく、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する程度の加熱加圧(例えば、熱ラミネート)で足りる。また、図10(c)および図10(f)に示す、保持基材(1001,1011)を除去する工程は、好ましくは保持基材を機械的に剥離することによって実施する。保持基材をエッチングにより除去すると、電気絶縁性基材(1006,1016)において完全に硬化していない熱硬化性樹脂がエッチング液に曝されて、樹脂が溶解することがあるためである。
【0158】
最後に実施する加熱加圧工程、即ち図10(h)に示す工程は、すべての電気絶縁性基材(1006,1016,1026)に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化するとともに、電気絶縁性基材の間に残存するボイド等が除去されるような条件で実施する。図10(a)に示す配線基板(1007)に代えて、配線基板の中間体が使用される場合には、加熱加圧工程は、その電気絶縁層に含まれる未硬化の熱硬化性樹脂も本硬化するように実施することが好ましい。したがって、図10(h)に示す工程は、熱盤プレスを用いて、十分な圧力を加えて、十分に時間をかけて行うことが好ましい。また、この最後の加熱加圧工程においては、各電気絶縁性基材に形成された貫通孔中の導電性ペーストが高密度に圧縮されるため、各配線層間の電気的な接続がより信頼性の高い確実なものとなる。
【0159】
次に、本発明の配線基板を製造する第2の方法を説明する。第2の製造方法は、(1)配線転写シートの配線層が形成されている表面に電気絶縁性基材を積層する工程、(2)電気絶縁性基材に貫通孔を形成する工程、(3)貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、(4)電気絶縁性基材を積層した配線転写シートを、配線基板または配線基板の中間体に積層する工程、(5)加熱加圧する工程、および(6)配線転写シートの保持基材を除去する工程を含む。
【0160】
配線転写シートに電気絶縁性基材を積層する工程(1)は、電気絶縁性基材が未硬化または半硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂が仮硬化して、それにより電気絶縁性基材が配線転写シートに仮接着する条件で実施する。仮接着は、熱硬化性樹脂の硬化が促進されないよう、ロールラミネータ等を用いて短時間で実施することが好ましい。熱硬化性樹脂の硬化が進行しすぎると、後で、電気絶縁性基材を配線基板に接着させることが困難となる。
【0161】
電気絶縁性基材に貫通孔を形成する工程(2)は、常套の方法、例えばレーザ加工により実施できる。貫通孔に導電性ペーストを充填する工程(3)も、常套の方法で実施でき、例えば、導電性ペーストのスクリーン印刷等により実施できる。工程(1)〜(3)を実施することにより、配線転写シートに電気絶縁性基材が貼付された積層体を得ることができる。配線転写シートと電気絶縁性基材とから成る積層体は、配線転写シートだけを取り扱う場合と比較して取り扱いやすい。
【0162】
次いで、工程(1)〜(3)で得た積層体を、配線基板または配線基板の中間体の表面に、電気絶縁性基材が当該表面と接するように積層する工程(4)を実施する。先に第1の製造方法に関連して説明したように、この積層工程(4)の際にも、電気絶縁性基材と配線基板または配線基板の中間体とを適切にアライメントする必要がある。配線転写シートの保持基材が可視光を透過させ、かつ電気絶縁性基材も可視光を透過させる場合には、配線転写シートの側に配置した認識系(例えばカメラ等)を用いてアライメントできる。電気絶縁性基材が、繊維等を含み、可視光を透過させにくいものである場合には、アライメント用の貫通孔を積層体の電気絶縁性基材および配線基板または配線基板の中間体に、予め形成する必要がある。
【0163】
電気絶縁性基材を積層した配線転写シートが配線基板に積層された後、この積層体全体を加熱加圧する工程(5)が実施される。加熱加圧は、先に第1の製造方法に関連して説明したように、電気絶縁性基材の種類等に応じて適当な条件を設定して実施する。この加熱加圧によって、配線転写シートの配線層が電気絶縁性基材に完全に転写され、電気絶縁性基材の表面が配線転写シートの粗面と相補的な形状である粗面にされるとともに、電気絶縁性基材が配線基板に接着する。
【0164】
加熱加圧後、配線転写シートの保持基材を除去する工程(6)を実施する。保持基材は、先に第1の製造方法に関連して説明したように、保持基材の材料に応じて、エッチングまたは機械的な剥離により除去する。
【0165】
工程(1)〜(3)で得た積層体は、配線基板の中間体に積層してよい。その場合には、工程(5)において、加熱加圧は、配線基板の中間体に含まれる熱硬化性樹脂も本硬化する条件にて実施することが好ましい。
【0166】
この第2の製造方法においても、工程(1)〜(6)を繰り返すことにより、複数の配線層が本発明の配線転写シートによって形成された、多層配線基板を得ることができる。また、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を用いて、工程(1)〜(6)を繰り返す場合、工程(5)において、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化するが、完全には硬化しない条件で加熱加圧を実施し、最後に実施される工程(5)において、加熱加圧を全ての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施することが好ましい。繰り返しの工程(5)(最後の1回を除く)の条件および最後に実施される工程(5)の条件は、先に第1の製造方法の工程(2)に関連して説明したとおりである。
【0167】
図9(a)〜(f)に、本発明の配線基板を製造する第2の方法の主要な工程を示す。図9(a)は、本発明の配線転写シート(903)を示し、図9(h)は、当該配線転写シートの配線層付近の領域Aの拡大図である。図9(a)に示す配線転写シートは、図8(a)に示すそれと同じである。したがって、図9(h)は、図8(d)と同じであるから、それに関する説明は省略する。
【0168】
図9(b)は、本発明の配線転写シート(903)の配線層(902)が形成された表面に、電気絶縁性基材(904)を積層して積層体(909)を得る工程を示す。積層体(909)において、電気絶縁性基材(904)は配線転写シート(903)に仮接着されている。図示した態様において、電気絶縁性基材(904)は、未硬化の熱硬化性樹脂を含む複合基材である。
【0169】
図9(c)は、電気絶縁性基材(904)に貫通孔(905)を形成する工程を示す。貫通孔の形成方法は先に説明したとおりである。
【0170】
図9(d)は、貫通孔(905)に導電性ペースト(906)を充填する工程を示す。この工程が終了した段階で、電気絶縁性基材は、それを介して対向する2つの配線層を電気的に接続し得る状態となる。
【0171】
図9(e)は、積層体(909)を配線基板(907)に積層する工程を示す。図9(e)では、配線基板(907)として、全層IVH構造樹脂多層基板が示されている。配線基板(907)はそれ以外の配線基板であってもよい。あるいは、配線基板(907)に代えて、配線基板の中間体を用いてよい。積層工程は、配線層(902)、貫通孔(905)および配線層(908)が適切にアライメントされるように実施する。
【0172】
図9(f)は、積層体(909)を配線基板(907)に積層した状態にて、加熱加圧する工程を示す。この工程において、電気絶縁性基材(904)に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化して、配線層(902)−電気絶縁性基材(904)間、および電気絶縁性基材(904)−配線基板(907)間が接着する。また、この工程においては、電気絶縁性基材(904)の樹脂成分が、保持基材(901)の微細な凹部(920)に完全に流入し、それから硬化する。さらにまた、この工程においては、貫通孔(905)内の導電性ペースト(906)が圧縮されて、配線転写シート(903)の配線層(902)と配線基板(907)の配線層(908)とを電気的に接続する。
【0173】
図9(g)は、配線転写シート(903)の保持基材(901)を除去する工程を示す。得られた配線基板(910)における、配線層付近の領域Bの拡大図を図9(i)に示す。図9(i)に示すように、得られた配線基板において、配線層(902’)は電気絶縁性基材(904)に埋設されている。また、配線層(902’)および電気絶縁性基材(904)のいずれの表面にも凸部が形成されている。
【0174】
図9(b)〜(g)に示す工程を繰り返して、得られた配線基板(910)の上に、電気絶縁性基材および配線層をさらに積層してよい。その場合、先に図10を参照して説明したように、図9(f)に示す工程を、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が完全に硬化しない(即ち、仮硬化する)条件で繰り返し、最後に行われる図9(f)に示す工程を、すべての電気絶縁性基材に含まれる未硬化の熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施することが好ましい。それにより、より高精度な配線と貫通孔の合致を実現できる。
【0175】
仮接着(即ち、仮硬化)の繰り返しの後、一括硬化(即ち、本硬化)を実施する場合には、前述のように、電気絶縁性基材は、好ましくは配線基板または配線基板の中間体の両方の表面に同時に積層される、即ち、対称的に積層される。当然のことながら、工程(1)〜(6)の繰り返しにおいて対称的に電気絶縁性基材を積層して多層配線基板を作製する場合には、対称的に積層して得られる配線基板が所望の回路を形成するように、回路設計を行う。
【0176】
図8〜図10に示す製造方法においては、電気絶縁性基材の一方の表面にのみ本発明の配線転写シートが積層されて、配線層が転写されている。本発明の配線転写シートは、図16に示すように、電気絶縁性基材の両方の表面に積層してよい。その場合、電気絶縁性基材の両方の表面に、配線層が転写される。
【0177】
前述のように、本発明の配線転写シートを利用して、部品を内蔵した配線基板を製造できる。以下にその製造方法を図面を参照して説明する。
【0178】
図11(a)〜(l)に、部品が内蔵された本発明の配線基板を製造する方法の主要な工程を示す。図11(a)は、電気絶縁性基材(1101)を示す。図示した製造方法において、電気絶縁性基材(1101)は樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む。また、図示した電気絶縁性基材(1101)は、両方の主表面をカバーフィルム(1102)で覆った後、貫通孔(1103)を形成し、これに導電性ペースト(1104)を充填することにより得られる。カバーフィルム(1102)は貫通孔(1103)に導電性ペーストを充填する際にマスクとして機能するとともに、電気絶縁性基材の表面に導電性ペーストが付着しないように保護する役割を果たしている。
【0179】
図11(b)は、カバーフィルム(1102)を剥離し、電気絶縁性基材(1101)の両側に配線転写シート(1100)が積層されるように配置する工程を示す。この配線転写シート(1100)は本発明の配線転写シートであり、保持基材(1105)と、その表面に所望の配線パターンに形成された配線層(1106)とにより構成される。したがって、配線層(1106)は、前述のように両面が粗化された銅箔で形成することが好ましく、それにより最終的に得られる配線基板において、配線層の表裏面で電気絶縁性基材との十分な密着を確保できる。
【0180】
図11(c)は、配線転写シート(1100)を、電気絶縁性基材(1101)の両面に積層した状態にて、加熱加圧する工程を示す。ここでは、電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化して、電気絶縁性基材に配線層が仮接着される程度に加熱加圧を実施して配線基板の中間体(1300)を得る。そのような加熱加圧は、ラミネーター等の簡便な装置で実施できる。加熱加圧は、平板構造の真空ラミネーターを用いた場合には、例えば0.98MPa(10kgf/cm)、80℃、5分の条件にて実施される。この程度の条件で加熱加圧を実施した場合、電気絶縁性基材(1101)中の導電性ペースト(1104)が十分に圧縮されず、導電性ペーストによる配線層同士の電気的接続は十分に確保されていないことに留意すべきである。
【0181】
図11(d)は、得られた配線基板の中間体(1300)から、2つの配線転写シートのうち一方のシートの保持基材を剥離し、剥離により露出した表面に、電気絶縁性基材(1111)を積層する工程である。この電気絶縁性基材(1111)は、導電性ペースト(1114)が充填された貫通孔(1113)を有する。また、この電気絶縁性基材(1111)は図11(a)で示したものと同様にして形成した後、片側のカバーフィルムを剥離したものに相当する。電気絶縁性基材(1111)は、この剥離面が電気絶縁性基材(1101)と接触するように配置される。
【0182】
図11(e)は、電気絶縁性基材(1111)を積層して加熱加圧する工程である。図11(d)において電気絶縁性基材(1101,1111)から剥離されなかった保持基材(1105)およびカバーフィルム(1112)は、この工程において、積層体を保護する役割をする。加熱加圧は、上記図11(c)の工程と同様の条件にて実施する。この条件であれば、カバーフィルムとして、高温(例えば200℃)に耐えられないPET、またはPEN等のフィルムを用いても、溶融等が生じないので好都合である。得られた積層体において、電気絶縁性基材(1111)に含まれる熱硬化性樹脂は仮硬化しており、電気絶縁性基材(1111)は配線基板の中間体(1300)に仮接着した状態である。
【0183】
図11(f)は、部品を内蔵するための部品収容空間(1107)を形成する工程である。図示した方法では、部品収容空間は、電気絶縁性基材(1101,1111)を貫通している穴である。貫通穴を形成する加工方法としては、金型による打ち抜き加工、レーザー加工、およびルーター加工等を採用できる。表面に設けられている保持基材(1105)とカバーフィルム(1112)とは、加工の際の保護フィルムとして機能する。
【0184】
図11(g)は、配線層(1116)が形成された面に部品(1108)を実装した配線転写シート(1110)を、図11(f)で得た構造体の一方の面に、前記部品収容空間(1107)に部品を位置決めして配置する工程である。また、この工程において、積層体の他方の面に保護シート(1109)が積層される。図示した方法では、部品(1108)として半導体素子が用いられ、これが配線層(1116)の上にベアチップ実装され、さらに半導体素子(1108)と配線層(1116)との間にはアンダーフィル樹脂が封入されている。実装される部品はこれに限るものではなく、チップ部品等を実装してもよい。図示した方法では、保護シート(1109)として、配線転写シート(1110)の保持基材(1115)と同じものを使用している。それにより、同一プロセスにて両方のシート(1109,1115)を除去することができ、好都合である。
【0185】
図11(h)は、配線転写シート(1110)および保護シート(1109)を積層して加熱加圧する工程である。加熱加圧は、真空中にて行うことが好ましく、電気絶縁性基材(1111)中の樹脂成分がフローして、部品収容空間を埋める条件にて実施する。加熱加圧の条件は、熱硬化性樹脂の本硬化条件であってよく、あるいは電気絶縁性基材中に含まれる樹脂が十分にフローすれば樹脂が本硬化する条件でなくてもよい。例えば、電気絶縁性基材の樹脂の本硬化条件である4.9MPa(50kgf/cm)、200℃、1時間の加熱加圧条件を用いると、樹脂硬化の際に樹脂の溶融粘度が最低となる温度領域に曝されるため、樹脂のフローを十分に確保できる。また、樹脂を本硬化させると、電気絶縁性基材(1101,1111)に設けられた導電性ペースト(1104,1114)も硬化し、配線層間での電気的接続が確保される。配線層(1106,1116)の両面が粗面である場合には、導電性ペーストと配線層との間の密着力が大きくなり、電気的接続の信頼性がより向上する。
【0186】
図11(i)は、保護シート(1109)および保持基材(1115)を除去する工程である。この工程で得られる配線基板(1400)の両面の配線層は、いずれも、本発明の配線転写シートを用いて形成され、また配線層の両面が粗面である(即ち、保持基材の除去により露出する配線層の表面も粗面である)ために、配線基板(1400)の両方の表面はともに全体に亘って粗面である。
【0187】
図11(i)に示した状態のものは、最後に実施される加熱加圧工程にて電気絶縁性基材中の熱硬化性樹脂を本硬化させていれば配線基板として機能する。尤も、図11(i)に示す配線基板において、部品収容空間(1107)が形成されていた面のうち一方(図11(i)において部品と対向する下側面)には、配線層が形成されていない。この配線層が形成されていない部分は、配線基板表面に部品を実装する際のデッドスペースとなる。
【0188】
そこで、このデッドスペースを無くすために、図12(a)〜(c)に示すように、電気絶縁性基材および配線層をさらに形成してもよい。図12(a)は、貫通孔(1123)に導電性ペースト(1124)が充填された電気絶縁性基材(1121)を2つ用意し、図11(i)に示す配線基板(1400)の両方の表面に積層するとともに、電気絶縁性基板(1121)の表面に配線転写シート(1120)をさらに積層する工程である。配線転写シート(1120)は、図11(b)の工程で使用したものと同じであり、両方の表面が粗面である配線層(1126)と露出表面が粗面である保持基材(1125)とから成る。ここで、配線基板の両方の表面に電気絶縁性基材を配置するのは、樹脂の硬化による電気絶縁性基材の収縮に起因して生じる反りを低減させるためである。樹脂の硬化による収縮が小さい場合には、一方の表面にのみ電気絶縁性基材を配置してよい。
【0189】
図12(b)は、配線転写シート(1120)を、電気絶縁性基材(1121)の両面に積層した状態にて、加熱加圧する工程を示す。加熱加圧は、電気絶縁性基材(1121)中の熱硬化性樹脂が本硬化する条件にて実施する。図12に示すようにして配線基板を製造する場合には、図11(h)において、熱硬化性樹脂が仮硬化する条件にて、加熱加圧を実施して配線基板(1400)を得ることが好ましい。配線基板(1400)と電気絶縁性基材(1121)とをより良好に接合させるためであり、また、最終的に得られる配線基板において反り等が生じないようにするためである。
【0190】
図12(c)は、配線転写シート(1120)の保持基材(1125)を剥離する工程である。この結果、図12(c)に示すように、デッドスペースの無い配線基板が得られる。
【0191】
図11に示す方法においては、図11(e)の工程を、電気絶縁性基材(1111)からカバーフィルム(1112)を剥離するとともに、配線転写シートを積層して加熱加圧を実施して、電気絶縁性基材に配線層を転写する工程としてよい。図11(e)に示す工程をそのような配線転写工程として、図11(a)〜(e)に示す工程を繰り返すことにより、内蔵する部品の寸法等に応じて、所望の厚さを有する多層配線基板を得ることができる。また、図11(a)〜(e)の工程を繰り返す場合、配線層の両方の表面が粗面である場合には、導電性ペーストによる配線層間の電気的接続信頼性を高めることができる。また、本発明の配線転写シートを用いることにより、電気絶縁性基材の表面が粗面となり、例えば、微細な凸部が多数形成されるため、次に積層される電気絶縁性基材との間で良好な密着性を確保することができる。
【0192】
さらに、図13は、図11に示す製造方法を応用した部品内蔵配線基板の製造方法の別の態様を示す。図13(a)は、図11(h)の工程にて加熱加圧した後、保護シート(1109)を除去した構造体(1140)を2つ用意し、これらを電気絶縁性基材(1131)の両方の表面に配置する工程である。電気絶縁性基材(1131)は、導電性ペースト(1134)が充填された貫通孔(1133)を有する。
【0193】
図13(b)は、構造体(1140)を、電気絶縁性基材(1131)の両面に積層した状態にて、加熱加圧する工程を示す。加熱加圧は、電気絶縁性基材(1131)中の熱硬化性樹脂が本硬化する条件にて実施する。
【0194】
図13(c)は、保護シート(1109)を剥離する工程を示す。図示するように、得られた配線基板においては、2つの内蔵部品が積層されている。部品は、互いに異なるものであってよい。また、図13(c)に示す配線基板においてデッドスペースを無くすために、図12に示す工程を実施して、さらに電気絶縁性基材および配線層を積層してよい。
【0195】
いずれの製造方法を採用する場合にも、配線層を本発明の配線転写シートを用いて形成することによって、電気絶縁性基材の少なくとも露出表面が、例えば微細な凸部を有する粗面となる。微細な凸部は、その上に電気絶縁性基材が積層されるとアンカー効果を発揮する。したがって、本発明の配線転写シートを用いれば、電気絶縁性基材同士の良好な密着性を確保しつつ、部品が内蔵された多層配線基板が得られる。
【0196】
別法として、図11(d)において、両面配線基板に代えて、図9(f)に示す形態の積層体を、電気絶縁性基材(1111)に積層し、続いて、図11(f)〜(i)に示す工程を順次実施してよい。その場合、図9(f)に示す保持基材(901)は、図11(e)の工程において、積層体を保護する役割をする。あるいは、図9(f)で得られる形態の積層体に部品を収容するための空間を形成し、部品が実装された配線基板をこれに積層し、一体化することによっても、部品が内蔵された配線基板を製造することができる。
【0197】
以上図8〜図13を参照して説明した配線基板の製造方法は、それぞれ本発明の製造方法の一態様にすぎず、他に種々の態様が存在する。例えば、図示した各製造方法において、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材に代えて、熱可塑性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用してよい。例えば、図11において、そのような電気絶縁性基材を使用すれば、部品を実装した配線転写シートの配線層を加熱加圧により転写する際に、熱可塑性樹脂が軟化して流動し、その結果、電気絶縁性基材の露出表面が粗面になるとともに、部品の周囲の空隙が充填される。また、電気絶縁性基材の積層と配線層の転写とを繰り返す場合において、各電気絶縁性基材は同じ材料で構成される必要は必ずしもない。例えば、熱可塑性樹脂を含む電気絶縁性基材に配線層を転写した後、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を積層してもよい。
【0198】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、半導体ベアチップおよび電子部品の高密度実装に必要な表面のコプラナリティを確保しつつ、配線基板表面を粗面にすることが可能となる。配線基板の表面が粗面であると、配線基板とその表面に積層される樹脂等との間の接触面積が増加して、配線基板とその表面に積層される樹脂等との密着性が向上する。また、本発明によれば、配線基板の表面を微細な凸部を有する粗面とすることができ、そのような配線基板の上に樹脂等が積層されると、当該凸部がアンカー効果を奏するため、より密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施態様1にかかる配線転写シートの断面図であり、(b)および(c)はそれぞれ、(a)に示す配線転写シートの領域BおよびAの拡大断面図であり、(d)は(a)に示す配線転写シートにより配線層を転写した配線基板の断面図であり、(e)および(f)はそれぞれ、(d)に示す配線基板の領域DおよびCの拡大断面図である。
【図2】本発明の実施態様2にかかる配線転写シートの一態様の断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施態様3にかかる配線転写シートの断面図であり、(b)は(a)に示す配線転写シートの領域Aの拡大断面図であり、(c)は(a)に示す配線転写シートにより配線層を転写した配線基板の断面図であり、(d)は(c)に示す配線基板の領域Bの拡大断面図である。
【図4】(a)は本発明の実施態様4にかかる配線転写シートの断面図であり、(b)は(a)に示す配線転写シートの領域Aの拡大断面図であり、(c)は(a)に示す配線転写シートにより配線層を転写した配線基板の断面図であり、(d)は(c)に示す配線基板の領域Bの拡大断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の配線転写シートの第1の製造方法を示す工程断面図であり、(d)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(e)は(c)に示す領域Bの拡大断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の配線転写シートの第2の製造方法を示す工程断面図であり、(d)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(e)は(b)に示す領域Bの拡大断面図であり、(f)は(c)に示す領域Cの拡大断面図である。
【図7】(a)〜(d)は本発明の配線転写シートの第3の製造方法を示す工程断面図であり、(e)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(f)は(d)に示す領域Bの拡大断面図である。
【図8】(a)〜(c)は本発明の配線基板の第1の製造方法を示す工程断面図であり、(d)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(e)および(f)はそれぞれ(c)に示す領域CおよびBの拡大断面図である。
【図9】(a)〜(g)は本発明の配線基板の第2の製造方法を示す工程断面図であり、(h)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(i)は(g)に示す領域Bの拡大断面図である。
【図10】(a)〜(i)は本発明の配線基板の第1の製造方法の別の態様の工程断面図である。
【図11】(a)〜(i)は本発明の部品内蔵配線基板の製造方法の一態様の工程断面図である。
【図12】(a)〜(c)は図11の製造方法を応用した部品内蔵配線基板の製造方法の一態様の工程断面図である。
【図13】(a)〜(c)は図11の製造方法を応用した部品内蔵配線基板の製造方法の別の態様の工程断面図である。
【図14】(a)は本発明の配線転写シートが有する凹部の深さおよび保持基材表面における差渡しを示す断面図であり、(b)は凹部の保持基材表面における差渡しを示す上面図であり、(c)は(a)に示す凹部により形成される凸部を示す断面図である。
【図15】(a)〜(c)は本発明の配線転写シートが有する凹部の態様を示す断面図である。
【図16】(a)〜(c)は従来の配線転写シートを用いた配線基板の製造方法を示す工程断面図であり、(d)は(a)に示す領域Aの拡大断面図であり、(e)および(f)はそれぞれ(c)に示す領域BおよびCの拡大断面図である。
【符号の説明】
100...配線転写シート、101...保持基材、102,103...配線層、104...電気絶縁性基材、110...配線基板、120...凹部、130...凸部、200..配線転写シート、201...保持基材、202...配線層、240...配線形成層、250...支持層、300...配線転写シート、301...保持基材、302,303...配線層、304...電気絶縁性基材、310...配線基板、400...配線転写シート、401...保持基材、402,403...配線層、404...電気絶縁性基材、410...配線基板、501...保持基材、502...配線材料シート、503...配線層、520...凹部、530...凸部、601...保持基材、602...配線材料、603...複合材料、604...配線層、620...凹部、701...保持基材、702...フォトレジスト、703...配線層、720...凹部、740...開口部、801...保持基材、802,802’...配線層、803...配線転写シート、804...貫通孔、805...導電性ペースト、806...電気絶縁性基材、807...配線基板、808...配線層、810...配線基板、820...凹部、901...保持基材、902,902’...配線層、903...配線転写シート、904...電気絶縁性基材、905...貫通孔、906...導電性ペースト、907...配線基板、908...配線層、909...積層体、910...配線基板、920...凹部、1000,1010,1020...配線転写シート、1001,1011,1021...保持基材、1002,1012,1022...配線層、1006,1016,1026...電気絶縁性基材、1007...配線基板、1008,1018,1028...配線基板、1014,1024...貫通孔、1015,1025...導電性ペースト、1101,1111...電気絶縁性基材、1102,1112...カバーフィルム、1103,1113...貫通孔、1104,1114...導電性ペースト、1105,1115...保持基材、1106,1116...配線層、1100,1110...配線転写シート、1107...部品収容空間、1108...部品(半導体素子)、1109...保護シート、1300...配線基板の中間体、1400...部品内蔵配線基板、1121...電気絶縁性基材、1123...貫通孔、1124...導電性ペースト、1125...保持基材、1126... 配線層、1120...配線転写シート、1131...電気絶縁性基材、1133...貫通孔、1134...導電性ペースト部、1140...構造体、1201...保持基材、1202...配線層、1203...配線転写シート、1204...電気絶縁性基材、1205...貫通孔、1206...導電性ペースト。

Claims (61)

  1. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が粗面であり、当該粗面と相補的な粗面を被転写物に形成する配線転写シート。
  2. 保持基材の露出領域が複数の凹部を有しており、当該凹部と相補的な凸部を被転写物に形成する、請求項1に記載の配線転写シート。
  3. 配線層が形成されている保持基材の表面全体が複数の凹部を有し、配線層の一部が当該凹部に入り込んでいる請求項2に記載の配線転写シート。
  4. 少なくとも保持基材の露出領域において凹部が50〜98%を占める請求項2または請求項3に記載の配線転写シート。
  5. 凹部の少なくとも一部が、0.5〜5μmの差渡しを有する請求項2〜4のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  6. 凹部が、0.5〜5μmの深さを有する請求項2〜5のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  7. 凹部の少なくとも一部が、深さ方向に垂直な断面が一定でない形状を有し、当該断面の面積が保持基材の表面と凹部の底との間で最大となる、請求項2〜6のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  8. 凹部の少なくとも一部が、保持基材の表面にて0.5〜5μmの差渡しを有し、深さ方向に垂直な断面のうち、最大の面積を有する断面が1〜10μmの差渡しを有する請求項7に記載の配線転写シート。
  9. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が、電解めっきによって形成された複数の凸部を有する金属箔表面を、当該凸部を有する表面を保持基材の表面に押し付けて金属箔と保持基材とを密着させた後、金属箔を除去することにより形成される表面形状を有し、当該表面形状と相補的な形状を被転写物の表面に形成する配線転写シート。
  10. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートであって、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、保持基材の露出領域が、当該領域と接する被転写物の領域を、その十点平均粗さRzが2〜12μmとなるようにする配線転写シート。
  11. 保持基材が、被転写物である配線基板用の電気絶縁性基材と相溶しない材料から成る請求項1〜10のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  12. 保持基材が2以上の層から成り、保持基材の配線層が形成されている表面が、被転写物である配線基板用の電気絶縁性基材と相溶しない材料の層の表面である請求項1〜10のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  13. 被転写物である配線基板用の電気絶縁性基材と相溶しない材料がフッ素系樹脂である請求項11または請求項12に記載の配線転写シート。
  14. 保持基材が、金属箔と樹脂シートとから成り、樹脂シートが、被転写物である配線基板用の電気絶縁性基材と相溶しない材料から成る、請求項12に記載の配線転写シート。
  15. 配線層の保持基材と接触していない側の表面が粗面である請求項1〜14のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  16. 保持基材および配線層が、それぞれ選択的に除去可能な金属から成る請求項1〜15のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  17. 選択的除去がエッチングであり、保持基材および配線層が異なるエッチング液によって除去可能な金属から成る請求項16に記載の配線転写シート。
  18. 保持基材と配線層との間に、配線層を構成する材料とは異なる材料から成る接合層が形成されている請求項1〜17のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  19. 接合層が金属または金属酸化物から成る請求項18に記載の配線転写シート。
  20. 保持基材が、可視光が通過できる材料から成る請求項1〜19のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  21. 配線層が保持基材に埋設されている請求項1〜20のいずれか1項に記載の配線転写シート。
  22. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートの製造方法であって、
    表面が粗面である配線材料から成るシートを、保持基材の表面に当該粗面が接するように重ねる工程、
    当該粗面と相補的な粗面を保持基材表面に形成する工程、および
    配線材料から成るシートをエッチングして、所定の配線パターンを有する配線層を形成する工程
    を含む配線転写シートの製造方法。
  23. 配線材料から成るシートの粗面が、複数の凸部を有する面である請求項22に記載の配線転写シートの製造方法。
  24. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートの製造方法であって、
    保持基材の表面に所定の配線パターンを有する配線層を形成する工程、および配線層を形成した後に、配線層が形成されている保持基材の表面において保持基材が露出する領域を粗化処理することにより粗面にする工程
    を含む配線転写シートの製造方法。
  25. 保持基材が露出する領域を粗化処理することにより、当該領域に複数の凹部を形成する、請求項24に記載の配線転写シートの製造方法。
  26. 保持基材およびその表面に形成された配線層を有する配線転写シートを製造する方法であって、表面が粗面である保持基材の当該粗面に、金属をめっきによって所定の配線パターンに析出させることにより配線層を形成することを含む配線転写シートの製造方法。
  27. 保持基材の粗面が、複数の凹部を有する面である請求項26に記載の配線転写シートの製造方法。
  28. 請求項21〜27のいずれか1項に記載の方法で製造される配線転写シート。
  29. 配線転写シートの配線層が電気絶縁性基材の表面に転写されて配線層が形成された配線基板であって、配線基板の配線層が形成された表面において、少なくとも電気絶縁性基材の露出領域が粗面である配線基板。
  30. 前記配線転写シートが、保持基材およびその表面に形成された配線層を有し、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が粗面であり、
    電気絶縁性基材の露出領域の粗面が、保持基材の露出領域の粗面と相補的である
    請求項29に記載の配線基板。
  31. 少なくとも電気絶縁性基材の露出領域が複数の凸部を有する請求項29に記載の配線基板。
  32. 前記配線転写シートが、保持基材およびその表面に形成された配線層を有し、当該配線層が形成されている保持基材の表面において、少なくとも保持基材の露出領域が複数の凹部を有しており、
    電気絶縁性基材の露出領域が、当該凹部と相補的な凸部を有する
    請求項29に記載の配線基板。
  33. 電気絶縁性基材の露出領域において凸部が50〜98%を占める請求項32に記載の配線基板。
  34. 凸部の少なくとも一部が、基部において0.5〜5μmの差渡しを有する請求項32または請求項33に記載の配線基板。
  35. 凸部が、0.5〜5μmの高さを有する請求項32〜34のいずれか1項に記載の配線基板。
  36. 凸部の少なくとも一部が、高さ方向に垂直な断面が一定でない形状を有し、当該断面の断面積が凸部の基部と頂部との間で最大となる請求項32〜35のいずれか1項に記載の配線基板。
  37. 凸部の少なくとも一部が、基部において0.5〜5μmの差渡しを有し、高さ方向に垂直な断面のうち、最大の面積を有する断面が1〜10μmの差渡しを有する請求項36に記載の配線基板。
  38. 2以上の電気絶縁性基材を含む多層基板である、請求項29に記載の配線基板。
  39. 配線層と接続された部品が電気絶縁性基材内に配置されている請求項29に記載の配線基板。
  40. 部品が2以上の電気絶縁性基材の層にまたがって配置されている請求項39に記載の配線基板。
  41. 電気絶縁性基材は、導電性ペーストが充填された貫通孔を有し、当該導電性ペーストが、電気絶縁性基材を介して対向する配線層同士を電気的に接続している請求項29〜40のいずれか1項に記載の配線基板。
  42. 部品が2以上の電気絶縁性基材の層にまたがって配置されており、当該2以上の電気絶縁性基材がそれぞれ、導電性ペーストが充填された貫通孔を有し、当該導電性ペーストが、電気絶縁性基材を介して対向する配線層同士を電気的に接続している、請求項39に記載の配線基板。
  43. 配線基板を製造する方法であって、電気絶縁性基材を介して対向する配線層のうち少なくとも一方の配線層を形成する工程が、
    (1)請求項1に記載の配線転写シートを、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材の少なくとも一方の表面に積層する工程、
    (2)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にする工程、および
    (3)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
    を含む配線基板の製造方法。
  44. 請求項2〜20のいずれか1項に記載の配線転写シートを使用し、工程(2)において、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域に複数の凸部を形成する請求項43に記載の配線基板の製造方法。
  45. 工程(1)が、配線転写シートを積層する電気絶縁性基材を、配線基板または配線基板の中間体の表面に積層することをさらに含み、工程(2)が、加熱加圧によって、電気絶縁性基材を当該配線基板または配線基板の中間体の表面に接着させることをさらに含む請求項43または請求項44に記載の製造方法。
  46. 工程(1)〜(3)を繰り返す、請求項45に記載の配線基板の製造方法。
  47. 加熱加圧する前の電気絶縁性基材が未硬化の熱硬化性樹脂を含み、工程(2)において、加熱加圧を電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で実施し、最後に実施される工程(2)において、加熱加圧をすべての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施する請求項46に記載の配線基板の製造方法。
  48. 工程(1)において、配線転写シートを積層する電気絶縁性基材が、配線基板または配線基板の中間体の両方の表面に積層される、請求項46または請求項47に記載の配線基板の製造方法。
  49. (1)請求項1に記載の配線転写シートの配線層が形成されている表面に、電気絶縁性基材を積層する工程、
    (2)電気絶縁性基材に貫通孔を形成し、配線転写シートの配線層を露出させる工程、
    (3)貫通孔に導電性ペーストを充填する工程、
    (4)電気絶縁性基材を積層した配線転写シートを、配線基板または配線基板の中間体に積層する工程、
    (5)加熱加圧によって、配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、かつ電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に接着させる工程、
    および
    (6)配線転写シートの保持基材を除去する工程
    を含む配線基板の製造方法。
  50. 請求項2〜20のいずれか1項に記載の配線転写シートを使用し、工程(5)において、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域に複数の凸部を形成する請求項49に記載の配線基板の製造方法。
  51. 工程(1)〜(6)を繰り返す、請求項49または請求項50に記載の配線基板の製造方法。
  52. 加熱加圧する前の電気絶縁性基材が未硬化の熱硬化性樹脂を含む基材であり、工程(1)〜(6)の繰り返しにおいて、工程(5)において、加熱加圧を電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で実施し、最後に実施される工程(5)において、加熱加圧をすべての電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が本硬化する条件で実施する請求項51に記載の配線基板の製造方法。
  53. 工程(4)において、電気絶縁性基材を積層した配線転写シートが、配線基板または配線基板の中間体の両方の表面に積層される、請求項51または請求項52に記載の配線基板の製造方法。
  54. 部品が電気絶縁性基材内に配置されている配線基板を製造する方法であって、
    (A)配線基板または配線基板の中間体に、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材を積層する工程、
    (B)加熱加圧によって、電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に接着させて積層体を得る工程、
    (C)積層体に部品を収容するための空間を形成する工程、
    (D)請求項1に記載の配線転写シートの配線層が形成された面に部品をさらに実装する工程、
    (E)部品を実装した配線転写シートを、空間内に部品が位置するように積層体の表面に積層する工程、および
    (F)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、且つ部品の周囲の空隙を積層体に含まれる樹脂で充填する工程、ならびに
    (G)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
    を含む、配線基板の製造方法。
  55. 工程(A)において、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用し、工程(B)において、当該電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施する、請求項54に記載の配線基板の製造方法。
  56. 工程(A)において、全ての電気絶縁性基材の層が未硬化の熱硬化性樹脂を含む配線基板の中間体を使用する、請求項54または請求項55に記載の配線基板の製造方法。
  57. 部品が電気絶縁性基材内に配置されている配線基板を製造する方法であって、
    (A’)(1)請求項1に記載の配線転写シートを、導電性ペーストが充填された貫通孔を有する電気絶縁性基材に積層する工程、
    (2)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にする工程、および
    (3)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
    を含む方法により製造した配線基板または配線基板の中間体に、
    (4)導電性ペーストが充填された貫通孔を有する別の電気絶縁性基材を積層する工程
    (B)加熱加圧によって、当該別の電気絶縁性基材を配線基板または配線基板の中間体に接着させて積層体を得る工程、
    (C)積層体に部品を収容するための空間を形成する工程、
    (D)請求項1に記載の配線転写シートの配線層が形成された面に部品をさらに実装する工程、
    (E)部品を実装した配線転写シートを、空間内に部品が位置するように積層体の表面に積層する工程、および
    (F)加熱加圧によって、当該配線転写シートの配線層を電気絶縁性基材に接着させるとともに、配線層が形成される電気絶縁性基材の表面において電気絶縁性基材が露出する領域を粗面にし、且つ部品の周囲の空隙を積層体に含まれる樹脂で充填する工程、ならびに
    (G)当該配線転写シートの保持基材を除去する工程
    を含む、配線基板の製造方法。
  58. 工程(A’)の工程(1)において、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用し、工程(2)において、当該電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施する、請求項57に記載の配線基板の製造方法。
  59. 工程(A’)において、別の電気絶縁性基材として、未硬化の熱硬化性樹脂を含む電気絶縁性基材を使用し、工程(B)において、当該別の電気絶縁性基材に含まれる熱硬化性樹脂が仮硬化する条件で加熱加圧を実施する、請求項57または請求項58に記載の配線基板の製造方法。
  60. 工程(A’)において、工程(1)が、配線転写シートを積層する電気絶縁性基材を、配線基板または配線基板の中間体の表面に積層することをさらに含み、工程(2)が、加熱加圧によって、電気絶縁性基材を当該配線基板または配線基板の中間体の表面に接着させることをさらに含む、請求項57〜59のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
  61. 工程(A’)において、工程(1)〜(3)を繰り返す、請求項60に記載の配線基板の製造方法。
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