JP2004006067A - イオン伝導性高分子電解質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ金属または有機アルカリ金属化合物によってラジカルアニオンまたはカルボアニオンを生成する含芳香環構造体を分子内に有し、その含芳香環構造体が、ラジカルアニオンまたはカルボアニオンとなり、アルカリ金属との錯体を形成しているポリマーを用いてイオン伝導性高分子電解質を構成する。上記含芳香環構造体としては、縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、ポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体、少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体などであることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子内にアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物によってラジカルアニオンまたはカルボアニオンを生成する含芳香環構造体を有するポリマーを用いたイオン伝導性高分子電解質に関し、さらに詳しくは、イオン伝導度が高く、かつイオン輸率が高く、安全性と放電特性が優れた電池を構成することができるイオン伝導性高分子電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーリチウムイオン二次電池に代表されるポリマー電池では、イオン伝導性高分子電解質を用いることにより、耐漏液性を含めた安全性、貯蔵性が優れ、しかも、薄く、フレキシブルな電池を構成できることから、機器の形状にあわせた電池を設計できるという、今までの電池にない特徴を持っている。すなわち、上記イオン伝導性高分子電解質は、シート状に形成することができるので、A4版、B5版などの大面積でしかも薄形の電池の作製が可能になり、各種薄形電気製品への適用が可能になって、電池の使用範囲が大きく広がっている。
【0003】
上記イオン伝導性高分子電解質として、これまでにも種々のポリマーを用いた高分子電解質が提案されている。それらの中でも、一般的に用いられているのは、ポリマーにリチウム塩を溶解させた系であり、このような系においては、イオン伝導度の向上のため、イオン伝導の支配因子となるイオンの移動度と解離したイオンの総量とをいかに大きくするかが課題になっている。
【0004】
そこで、イオンの移動度の向上に関して、従来からも種々の試みがなされている。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル系ポリマーに、リチウム塩を溶解させた高分子電解質組成物およびそれらの組成物を用いた電池が既に提案されている(特開昭55−98480号公報、特開昭58−108667号公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらのイオン伝導性高分子電解質組成物では、室温でのイオン伝導性は充分でなかったものの、エーテル鎖の結晶性を低下させる目的でポリマーを架橋構造にしたり、あるいは高度に枝分かれ構造にするなどの改良を行っていることから、高分子電解質としては、イオン伝導度が10−4S/cm台という高いイオン伝導度を達成している〔Macromolecules,32,1541(1999)〕。
【0006】
しかしながら、上記イオン伝導性高分子電解質も、液体電解質のイオン伝導度(10−3S/cm)にはいまだ一桁およばない。これは高分子電解質中での物質の移動度が液体中のそれに比べて劣るためである。
【0007】
さらに、上記イオン伝導性高分子電解質は、リチウムイオンの輸率が低いという問題もある。例えば、上記イオン伝導性高分子電解質では、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテルがリチウムイオンに配位してリチウム電解質塩を解離させるが、配位したリチウムイオンは、配位していない対アニオンに比べて移動が妨げられるため、リチウムイオン輸率が低下する傾向にある。つまり、見かけ上のイオン伝導度は高いものの、リチウムイオンの輸率に関しては、0.1〜0.2程度まで低くなり、液体のカチオン輸率(0.3〜0.4)に比べて大きく劣っている。
【0008】
上記のように電解質のカチオン輸率が低い場合、分極が起こりやすくなり、電池に使用したときに、電圧降下が大きくなるため、大きな電流を取り出せないという問題がある。したがって、カチオン輸率の向上は重要な課題である。
【0009】
このような問題を解決するため、ポリエーテルに比べてリチウムイオンへの配位能の低い他のポリマーを使用することが提案されている。例えば、ポリカーボネートなどを使用する高分子電解質またはゲル状高分子電解質の使用が種々提案されている(特公平6−69966号公報)。しかしながら、ポリカーボネートなどを用いた場合、ポリエーテルを用いていたときに比べて若干の特性の改善はみられるものの、ポリマー分子のリチウムイオンへの配位能が相変わらず大きいことと、ポリマー分子がリチウムイオンに配位してリチウム塩を解離させるという原理は同じであるため、リチウムイオンの輸率は対アニオンに比べて低く、電池の電解質として使用するのに充分なレベルの特性が得られているとは言いがたい。
【0010】
そのため、ポリマーにアニオンを固定するという方法も種々行われている。例えば、イミド塩骨格を有するポリアニオンの使用などが行われている〔Electrochemica Acta 45(2000)1187〕。また、芳香環に−SO2 CF3 のような電子吸引基を多く結合させることによって、電荷密度を減少させ、アニオンとしてポリシロキサンポリマーに固定して使用している例もある(特表平11−502819号公報)。しかしながら、これらのポリマーでは、カチオン輸率は0.9以上と高くなるものの、アニオンが巨大になり、対となるカチオンの密度が低くなるため、イオン伝導度が低すぎて実用レベルでないという問題があった。
【0011】
このように、アルカリ金属イオンを塩として導入するという従来の設計方針では、アルカリ金属イオン濃度を高めるという点、イオン伝導度とアルカリ金属イオン輸率を両立させる点、の2点の解決が困難であり、高分子電解質のイオン伝導特性は限界に達している。
【0012】
本発明は、上記のような従来のイオン伝導性高分子電解質の問題点を解決し、イオン伝導度が高く、かつアルカリ金属イオン輸率が高いイオン伝導性高分子電解質を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルカリ金属を塩としてではなく、錯体としてポリマー中に固定することによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、アルカリ金属または有機アルカリ金属化合物によってラジカルアニオンまたはカルボアニオンを生成する含芳香環構造体を分子内に有するポリマーを用いたことを特徴とするイオン伝導性高分子電解質に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のイオン伝導性高分子電解質について詳述する。本発明のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマー中のアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物によってラジカルアニオンまたはカルボアニオンを生成する含芳香環構造体は、例えば、縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、ポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体、少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体などからなり、ラジカルアニオンまたはカルボアニオンとなることにより、アルカリ金属との錯体を形成することができるという特性を有している。
【0016】
そして、上記縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体としては、例えば、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、フェナントレン骨格、フェナジン骨格などを有するものが挙げられ、これらの骨格を有する構造体はラジカルアニオンを形成することにより、アルカリ金属との錯体を形成する。
【0017】
また、上記ポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体は、例えば、下記の式(1)
【化31】
で表される(上記式中のnは0〜4である)骨格を有しており、この構造体はラジカルアニオンを形成することにより、アルカリ金属との錯体を形成する。
【0018】
上記少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体は、例えば、下記の式(2)、式(3)または式(4)で表される骨格を有しており、これらの構造体は、メチレン基の水素がアルカリ金属によって置換されてカルボアニオンを形成することにより、アルカリ金属との錯体を形成する。
【化32】
【化33】
【化34】
【0019】
少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体は、例えば、式(5)、式(6)または式(7)で表される骨格を有しており、これらの構造体は、ラジカルアニオンを形成することにより、アルカリ金属との錯体を形成する。
【0020】
【化35】
【化36】
【化37】
【0021】
上記ラジカルアニオンまたはカルボアニオンは、その電荷が隣接する芳香環によって非局在化されているため、電荷密度が小さくなり、アルカリ金属イオンの解離度が大きくなる。また、上記アニオン骨格はポリマー中に固定されていることから、その移動度がアルカリ金属イオン(カチオン)に比べて大きく制限されるので、アルカリ金属イオンの輸率が高くなる。
【0022】
上記アニオン骨格のポリマー中への結合様式としては、アニオン骨格が縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体に由来する場合は、下記の式(8)、式(9)、式(10)、式(11)または式(12)で表される構造体でポリマー中へ結合する。
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
〔ただし、式中、R1 〜R2 は酸素、カルボニル基または炭素数20以下のアルキル鎖を表し、A1 〜A9 は水素、フッ素、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアルコキシ基またはフッ素置換された炭素数5以下のアルキル基を表す。R1 〜R2 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。A1 〜A9 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。〕
【0023】
また、アニオン骨格がポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体に由来する場合は、下記の式(13)または(14)で表される構造体でポリマー中へ結合する。
【化43】
【化44】
〔ただし、式中、R1 〜R2 は酸素、カルボニル基または炭素数20以下のアルキル鎖を表し、A1 〜A13は水素、フッ素、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアルコキシ基またはフッ素置換された炭素数5以下のアルキル基を表す。nは0〜4であり、R1 〜R2 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。A1 〜A13は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。〕
【0024】
さらに、上記アニオン骨格が少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体に由来する場合は、下記の式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、式(20)、式(21)、式(22)または式(23)で表される構造体でポリマー中へ結合する。
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
〔ただし、式中、R1 〜R3 は酸素、カルボニル基または炭素数20以下のアルキル鎖を表し、A1 〜A14 は水素、フッ素、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアルコキシ基またはフッ素置換された炭素数5以下のアルキル基を表す。R1 〜R3 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。A1 〜A14は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。〕
【0025】
そして、上記アニオン骨格が少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体に由来する場合は、下記の式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)、式(29)または式(30)で表される構造体でポリマー中へ結合する。
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
〔ただし、式中、R1 〜R2 は酸素、カルボニル基または炭素数20以下のアルキル鎖を表し、A1 〜A8 は水素、フッ素、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアルコキシ基またはフッ素置換された炭素数5以下のアルキル基を表す。R1 〜R2 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。A1 〜A8 は同一でもよく、またそれぞれ異なっていてもよい。〕
【0026】
上記式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体は、アルカリ金属または有機アルカリ金属化合物とラジカルアニオンまたはカルボアニオンを形成することによって錯体化するが、このとき同一含芳香環構造体に存在する2つ以上の芳香環は互いの同一平面に対するねじれが45°以内にあることが好ましい。そして、上記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、メチルリチウムなどが挙げられる。
【0027】
また、上記含芳香環構造体の芳香環に置換基としてフッ素原子や、フッ素置換された炭素数5以下のアルキル基が導入されると、電子吸引作用が大きくなり、特に含芳香環構造体がカルボアニオンを形成する少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合されている構造体の場合には、リチウムイオンの解離度を向上させる効果が大きく現れる。
【0028】
本発明におけるアルカリ金属と錯体を形成したイオン伝導性高分子電解質は、式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を有すると共に重合性官能基を有するモノマーを重合することによって式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を分子内に有するポリマーを合成し、その式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を有するポリマーを錯体を安定化させる溶媒中でアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物と反応させることによって得られる。
【0029】
また、本発明におけるアルカリ金属と錯体を形成したイオン伝導性高分子電解質は、式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を有すると共に重合性官能基を有するモノマーを、錯体を安定化させる溶媒中でアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物と反応させ、このアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物との反応によって錯体となったモノマーを重合する方法などによっても得ることできる。上記錯体の形成にあたっては、乾燥雰囲気中であれば、式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を有するポリマーまたはモノマーとアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物とを錯体を安定化させる溶媒の中で直接反応させることによっても錯体を形成することができる。
【0030】
上記含芳香環構造体を有するモノマーは、例えば、水酸基が直接または炭素数5以下のアルキル鎖を介して上記含芳香環構造体に結合した化合物と、水酸基と反応しうる官能基と重合性官能基を少なくとも1つ以上有する化合物との反応から得られる。
【0031】
上記含芳香環構造体が縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体の場合、水酸基が直接または炭素数5以下のアルキル鎖を介して上記含芳香環構造体に結合した化合物としては、例えば、1−ナフトール、2−ナフトール、ナフタレンメタノール、ヒドロキシメチルアントラセン、ヒドロキシピレンなどが挙げられる。
【0032】
上記含芳香環構造体がポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体の場合、水酸基が直接または炭素数5以下のアルキル鎖を介して上記含芳香環構造体に結合した化合物としては、例えば、2,6−ジフェニルフェノール(2,6−Diphenylphenol)、2−ヒドロキシビフェニル(2−Hydroxybiphenyl)、3−ヒドロキシビフェニル(3−Hydroxybiphenyl)、4−ヒドロキシビフェニル(4−Hydroxybiphenyl)、4−ヒドロキシターフェニル(4−Hydroxyterphenyl)、2−ヒドロキシメチルビフェニル(2−Hydroxymethylbiphenyl)などが挙げられる。
【0033】
上記含芳香環構造体が少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体の場合、水酸基が直接または炭素数5以下のアルキル鎖を介して上記含芳香環構造体に結合した化合物としては、例えば、フルオレンメタノール(Fulorenemethanol)、ヒドロキシジフェニルメタン(Hydroxydiphenylmethane)、トリヒドロキシトリフェニルメタン(Trihydroxytriphenylmethane)などが挙げられる。
【0034】
上記含芳香環構造体が少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体の場合、水酸基が直接または炭素数5以下のアルキル鎖を介して上記含芳香環構造体に結合した化合物としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン(2−Hydroxybenzophenone)、4−ヒドロキシベンゾフェノン(4−Hydroxybenzophenone)、2−ベンゾイルベンゾイックアシッド(2−Benzoylbenzoic Acid)、4−ベンゾイルベンゾイックアシッド(4−Benzoylbenzoic Acid)、1−ヒドロキシアントラキノン(1−Hydroxyanthraquinone)、1−ヒドロキシ−2−アミノアントラキノン、(1−Hydroxy−2−aminoanthraquinone)、 1,5−ジヒドロキシアントラキノン(1,5−Dihydroxy anthraquinone)などが挙げられる。
【0035】
水酸基と反応しうる官能基と重合性官能基を少なくとも1つ以上有する化合物としては、例えば、塩化メタクリロイルなどのようなメタクリル酸の酸塩化物、塩化アクリロイルなどのアクリル酸の酸塩化物、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、クロロメチルスチレン、アリルブロミドなどが挙げられる。
【0036】
上記錯体を形成するにあたっては、錯体を安定化させるために溶媒が使用されるが、その錯体を安定化させる溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチル−テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはその誘導体などの環状エーテル、メチルブチルエーテル、ジメトキシエチレングリコール、ジエトキシエチレングリコール、ジメトキシジエチレングリコール、ジエトキシジエチレングリコール、ジプロピオキシジエチレングリコール、ジメトキシトリエチレングリコール、ジエトキシトリエチレングリコール、ジメトキシテトラエチレングリコール、ジエトキシテトラエチレングリコール、末端をメトキシまたはエトキシ基でキャップしたオリゴエチレンオキシドの鎖状エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類を、それぞれ単独でまたは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0037】
さらに、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネートや、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルプロピルカーボネートなどの環状カーボネートなどを、それぞれ単独でまたは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0038】
上記のような式(1)〜(30)で表される含芳香環構造体を有するモノマーとアルカリ金属または有機アルカリ金属化合物とを、錯体を安定化させる溶媒中で反応させた錯体溶液に重合促進剤として重合開始剤を添加し、熱あるいは光照射にて硬化することによって、上記の錯体を高分子(ポリマー)中に固定した本発明のイオン伝導性高分子電解質が得られる。
【0039】
上記硬化方法としては、例えば、紫外線または可視光線などの活性光線を照射する方法、あるいは加熱する方法などが採用される。
【0040】
活性光線を照射する方法による場合は、光重合開始剤として、例えば、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、トリメチルシリルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、アセトフェノン、アントラキノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどを添加しておくことが好ましい。
【0041】
また、加熱する方法による場合は、開始剤として過酸化物を添加しておくことが好ましい。そのような過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられ、より具体的には、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0042】
本発明においては、電解質に柔軟性を付与するなどの目的で、第二成分のモノマーを添加してもよい。また、その際、ポリエーテルを含有するモノマーを使用することにより、溶媒を含まない高分子電解質を構成することもできる。ただし、本発明のイオン伝導性高分子電解質は、上記のような溶媒を含まない固体状のものだけではなく、溶媒を含んだゲル状のものであってもよい。
【0043】
このような第二成分のモノマーとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの環状エーテルモノマーや、エチレンオキサイド基を有する片末端アクリロイル基変性アルキレンオキシドモノマー、例えば、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレートなどを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いることができるし、また2種以上を併用することもできる。
【0044】
さらに、電解質を構成する高分子(ポリマー)を架橋するために、2官能以上のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリメチロールプロパントリアクリレート、またはそれらの化合物のエチレングリコール構造をプロピレングリコール構造に変えた化合物などを用いることもできる。
【0045】
本発明のイオン伝導性高分子電解質は、基本的に電解質塩の添加を必要としないが、必要に応じて、電解質塩を添加してもよい。そのような電解質塩としては、例えば、MClO4 (MはLi、Na、Kなどのアルカリ金属元素を表す。以下同じ)、MPF6 、MBF4 、MAsF6 、MSbF6 、MCF3 SO3 、MC4 F9 SO3 、MCF3 CO2 、M2 C2 F4 (SO3 )2 、MN(CF3 SO2 )2 、MC(CF3 SO2 )3 、MCn F2n+1SO3 (n≧2)、MN(RfOSO2 )2 (ここで、Rfはフルオロアルキル基)、MOHなどのアルカリ電解質塩が挙げられ、少なくともLiを含む塩が好適に用いられる。そして、これらはそれぞれ単独で用いることができるし、また2種以上を併用することもできる。
【0046】
以上では、本発明のイオン伝導性高分子電解質の構成成分として主として重合性成分について説明したが、本発明のイオン伝導性高分子電解質には、その目的を損なわない限りにおいて、他の成分を添加することもできる。
【0047】
例えば、各種無機微粒子を添加してもよく、そうすることによって、強度、膜厚均一性が改善される上に、無機微粒子とポリマーとの間に微細な空孔が生じることになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度や移動度などを向上させることもできる。また、無機微粒子を添加することにより、重合性組成物の粘度が上昇し、高分子と溶媒の相溶性が不充分な場合にもその分離を抑える効果が期待できる。
【0048】
上記のような目的で使用する無機微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものを選択することが好ましく、イオン伝導性を有するものであればさらに好ましい。具体的には、α,β、γ−アルミナ、シリカなどのイオン伝導性または非伝導性セラミックス製微粒子が好適なものとして挙げられる。
【0049】
無機微粒子の具体例としては、例えば、アエロジル〔日本アエロジル(株)製〕のようなシリカ超微粒子、アルミナ超微粒子などが挙げられ、安定性、複合効率から、特にアルミナ超微粒子が特に好ましい。
【0050】
本発明のイオン伝導性高分子電解質には、その支持体として多孔質シートを用いてもよい。そのような多孔質シートとしては、例えば、不織布や微孔性フィルムなどが用いられる。上記不織布としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの不織布などが挙げられ、微孔性フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体の微孔性フィルムなどが挙げられる。
【0051】
上記構成からなる本発明のイオン伝導性高分子電解質は、アルカリ電池、アルカリ蓄電池、リチウム電池、リチウム二次電池などの電解質として使用することができる。
【0052】
例えば、本発明のイオン伝導性高分子電解質を用いてリチウム二次電池を構成する場合、その正極の活物質としては、例えば、LiCoO2 などのリチウムコバルト酸化物、LiMn2 O4 などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2 などのリチウムニッケル酸化物、LiNiO2 のNiの一部をCoで置換したLiNiCoO2 、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物などの金属酸化物または二硫化チタン、二硫化モリブデンなどの金属硫化物の1種または2種以上などが用いられる。上記例示の正極活物質の中でも、LiNiO2 、LiNiCoO2 、LiMn2 O4 などの充電時の開路電圧がLi基準で4V以上を示すリチウム複合酸化物を用いる場合には、高エネルギー密度が得られるので、特に好ましい。
【0053】
正極は、上記正極活物質に、必要に応じて、例えば、鱗片状黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの導電助剤や、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーなどを適宜添加し、混合して調製した正極合剤を加圧成形するか、またはその正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ぺーストを調製し(この場合、バインダーはあらかじめ溶剤に溶解または分散させておいてから正極活物質などと混合してもよい)、その正極合剤含有ぺーストをアルミニウム箔などからなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて圧延処理する工程を経由することによって作製される。ただし、正極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0054】
負極に用いる材料としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープできるものであればよく、本発明においては、そのような材料を負極活物質として呼ぶが、この負極活物質の具体例としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素化合物が挙げられる。また、Si、Sn、Inなどの合金あるいはリチウム(Li)に近い低電位で充放電できる酸化物などの化合物も負極活物質として用いることができる。
【0055】
負極は、上記負極活物質に、必要に応じて、前記正極の場合と同様のバインダーなどを添加し、混合して調製した負極合剤層を加圧成形するか、または上記負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ぺーストを調製し(この場合、バインダーは溶解または分散させておいてから負極活物質として混合してもよい)、その負極合剤含有ぺーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて圧延処理する工程を経由することによって作製される。ただし、負極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0056】
本発明において、正極の集電体としては、例えば、アルミニウム製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどが好適に用い得るが、特にアルミニウム箔が好ましい。また、負極の集電体としては、例えば、銅製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどが好適に用い得るが、特に銅箔が好ましい。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
実施例1
4−ヒドロキシベンゾフェノンをメタノールに溶解し、その溶液に水酸化カリウムを加え、室温にて12時間攪拌して、アルコキシ化した。上記溶液から溶媒のメタトールを減圧除去し、テトラヒドロフランに溶解した後、当量(上記4−ヒドロキシメチルベンゾフェノンと当量)のエピクロロヒドリンを含むテトラヒドロフラン溶液を加え、60℃で10時間加熱して分子内にベンゾフェノン骨格と重合性官能基であるエポキシ基を有するモノマーを得た。このモノマーに対して熱カチオン触媒〔サンエイドSI−H40(商品名)、三新化学工業製〕を1重量%加え、80℃で6時間の条件下で加熱重合し、ポリマーの側鎖にベンゾフェノン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥ジメトキシエタンとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて12時間攪拌して金属リチウムをポリマーに反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム金属箔上にキャストした。ついで乾燥してジメトキシエタンを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例1のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ベンゾフェノン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体は式(26)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0059】
実施例2
4−ヒドロキシベンゾフェノンをメタノールに溶解し、その溶液に水酸化カリウムを加え、室温にて12時間攪拌して、アルコキシ化した。上記溶液から溶媒のメタノールを減圧除去し、ジメチルホルムアミドに溶解した後、当量(上記4−ヒドロキシメチルベンゾフェノンと当量)のアクリル酸クロリドを含むテトラヒドロフラン溶液を加え、40℃で48時間反応して分子内にベンゾフェノン骨格と重合性官能基であるアクリル基を有するモノマーを得た。このモノマーに対してアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1質量%加え、80℃6時間の条件下でラジカル重合し、ポリマーの側鎖にベンゾフェノン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥ジメトキシエタンとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて12時間攪拌して金属リチウムをポリマーに反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してジメトキシエタンを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例2のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ベンゾフェノン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(26)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合して、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0060】
実施例3
4−ヒドロキシビフェニルをメタノールに溶解し、その溶液に水酸化カリウムを加え、室温にて12時間攪拌して、アルコキシ化した。上記溶液から溶媒のメタトールを減圧除去し、テトラヒドロフランに溶解した後、当量(上記4−ヒドロキシメチルビフェニルと当量)のエピクロロヒドリンを含むテトラヒドロフラン溶液を加え、60℃で10時間加熱して分子内にビフェニル骨格と重合性官能基であるエポキシ基を有するモノマーを得た。このモノマーに対して触媒〔サンエイドSI−H40(商品名)、三新化学工業製)を1質量%加え、120℃、6時間の条件下でモノマーを重合させ、ポリマーの側鎖にビフェニル骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥ジメトキシエタンとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて12時間攪拌して金属リチウムをポリマーに反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してジメトキシエタンを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上に電解質フィルムを形成した。なお、この実施例3のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ビフェニル骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体式(14)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のnは0で、R1 は酸素(O)で、A1 〜A12はいずれも水素(H)である。
【0061】
実施例4
4−ヒドロキシビフェニルをメタノールに溶解し、その溶液に水酸化カリウムを加え、室温にて12時間攪拌して、アルコキシ化した。上記溶液から溶媒のメタノールを減圧除去し、ジメチルホルムアミドに溶解した後、上記当量(4−ヒドロキシメチルビフェニルと当量)のアクリル酸クロリドを含むテトラヒドロフラン溶液を加え、40℃で48時間反応して分子内にビフェニル骨格と重合性官能基であるアクリル基を有するモノマーを得た。このモノマーに対してアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1質量%加え、80℃、6時間の条件下でモノマーをラジカル重合させ、ポリマーの側鎖にビフェニル骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥ジメトキシエタンとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて12時間攪拌して金属リチウムをポリマーに反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してジメトキシエタンを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例4のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ビフェニル骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(14)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のnは0で、R1 は酸素(O)で、A1 〜A12はいずれも水素(H)である。
【0062】
実施例5
2−ヒドロキシアントラキノン2.2g(0.01モル)とトルエン200mlとトリエチルアミン2.48g(0.01モル)を内容積500mlのフラスコ内に入れ、0℃に保った。その中にアクリロイルクロリド1g(0.01モル)をゆっくり滴下し、さらに室温にて攪拌した。沈殿をろ過にて取り除き、さらに水洗いをし、トルエンを減圧除去した。残余物をエタノールで再結晶して目的とするアクリロイルオキシアントラキノンを得た。このアクリロイルオキシアントラキノンは、分子内にアントラキノン骨格と重合性官能基であるアクリレート基を有していて、目的とするポリマーを合成するためのモノマーとして使用するものである。このアクリロイルオキシアントラキノンを乾燥したテトラヒドロフランに溶解し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー(アクリロイルオキシアントラキノン)に対して0.5質量%の割合で加え、60℃にて24時間ラジカル重合して、ポリマーの側鎖にアントラキノン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥したテトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて3日間攪拌して金属リチウムをポリマーと反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム金属箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上に電解質フィルムを形成した。なお、この実施例1のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、R3 が水素の式(7)で表される構造を有するものである。なお、この実施例5のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、アントラキノン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記アントラキノンは式(28)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A7 はいずれも水素(H)である。
【0063】
実施例6
4−ヒドロキシメチルアントラキノンをメタノールに溶解し、その溶液に水酸化カリウムを加え、室温にて12時間攪拌して、アルコキシ化した。上記溶液中から溶媒のメタノールを減圧除去し、ジメチルホルムアミドに溶解した後、上記4−ヒドロキシメチルアントラキノンと当量のエピプロモヒドリンを含むテトラヒドロフラン溶液を加え、50℃で12時間攪拌した。得られた反応混合物中から沈殿をろ過により除去し、溶媒のテトラヒドロフランを減圧除去した後、残査をジエチルエーテルに溶解し、水洗いを行った後、ジエチルエーテル相を硫酸マグネシウム(MgSO4 )にて乾燥し、ジエチルエーテルを除去して、目的とする2−グリシジルオキシアントラキノン(2−Glycydyloxyanthraquinone)を得た。この2−グリシジルオキシアントラキノンは、分子内にアントラキノン骨格と重合性官能基であるエポキシ基を有していて、目的とするポリマーを合成するためのモノマーとして使用するものである。この2−グリシジルオキシアントラキノンを乾燥したテトラヒドロフランに溶解し、重合開始剤としてジエチルアミン/ジエチルエーテル錯体をモノマー(2−グリシジルオキシアントラキノン)に対して、1質量%の割合で加え、24時間イオン重合して、ポリマーの側鎖にアントラキノン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥したテトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、これに金属リチウムを入れ、室温にて3日間攪拌して金属リチウムをポリマーと反応させて、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついでテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上に電解質フィルムを形成した。なお、この実施例6のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、アントラキノン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体は式(28)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A7 はいずれも水素(H)である。
【0064】
実施例7
アルゴン置換したフラスコ内でテトラヒドロフラン250mlにフルオレン10g(12ミリモル:東京化成社製)を溶解させたテトラヒドロフラン溶液を調製した。これを0℃に冷却した後にフルオレンに対して2当量のn−ブチルリチウム(24ミリモル:東京化成社製)を投入し、0℃にて1時間攪拌して赤褐色の溶液を得た。この溶液に1,2−ジブロモオクタン(12ミリモル:東京化成社製)を当量(フルオレンと当量)投入した後、45℃にて24時間攪拌を行った。攪拌終了後、エバポレータにてこのテトラヒドロフラン溶液を50mlまで濃縮した後、水に投入してポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを風乾し、再びテトラヒドロフランに溶解させ、その溶液をメタノール中に注いでメタノール中からポリマーを再沈殿させ、オリゴマーを除去することによって、分子内にフルオレン骨格を有しかつフルオレン分子間がアルキル鎖で結合された高分子フルオレンを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液に金属リチウムを入れ、室温にて3日間攪拌し、濃赤色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例7のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、フルオレン骨格を有する含芳香環構造体を主鎖内に有する高分子フルオレン(フルオレン−オクタン系共重合体)であって、上記含芳香環構造体は式(17)で表される構造体でポリマーの一部を構成していて、式中のR1 は炭素数が8のアルキル鎖で、A1 〜A8 はいずれも水素(H)である。
【0065】
実施例8
窒素置換したフラスコ内に、9−フルオレニルメタノール(Fluorenylmethanol)100g(0.51モル)と、トリエチルアミン(Triethylamine)51.6g(0.51モル)と、脱水テトラヒドロフラン200mlを加え攪拌して均一に溶解した。この溶液に、脱水テトラヒドロフラン100mlで希釈したアクリロイルクロライド(Acryloyl chloride)48.4g(0.54mol)を1時間かけて加え、さらに24時間攪拌した。得られた反応混合物から沈殿を除去し、さらに溶媒を減圧除去した。残余物をジエチルエーテル100mlに溶解し、飽和水酸化ナトリウム水溶液で1回、蒸留水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO4 )にて一晩乾燥した。その後、エーテルを除去して目的とする黄色オイル状の9−フルオレニルメチルアクリレート(9−Fluorenylmethyl acrylate)を得た。このモノマー(9−フルオレニルメチルアクリレート)は、分子内にフルオレン骨格と重合性官能基であるアクリロイル基を有している。このモノマーを乾燥テトラヒドロフランに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃にて24時間ラジカル重合し、ポリマーの側鎖にフルオレン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液に金属リチウムとフルオレン骨格に対して0.5モル%のナフタレンを入れ、室温にて3日間攪拌し、濃赤色の錯体溶液を得た。この溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例8のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、フルオレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(17)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は炭素数が1のアルキル鎖で、A1 〜A8 はいずれも水素(H)である。
【0066】
実施例9
アルゴン置換したフラスコに、フルオレン(Fluoren)5g(0.51モル)と脱水テトラヒドロフラン200mlとを加え、攪拌して均一に溶解した。得られた溶液に金属リチウム0.126g(0.51モル)を加え、室温にて48時間攪拌し、赤色のリチウム/フルオレン錯体溶液を得た。別のフラスコにポリエピクロロヒドリン1gを脱水テトラヒドロフラン100mlで溶解し、上記のリチウム/フルオレン錯体溶液を10時間かけて滴下し、カルボアニオンの赤色が消えるまで室温にて攪拌した。反応後の溶液に水に注いでポリマーを析出させ、そのポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、その溶液をメタノール中に注いでメタノール中からポリマー再沈殿させることを繰り返して、ポリマーのメチレンクロライドの60%がフルオレンによって置換されたポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液にn−ブチルリチウム(n−BuLi)ヘキサン溶液を加え、室温にて3日間攪拌し、濃赤色の錯体溶液を得た。この溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついでテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上またはリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例9のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、フルオレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体は式(17)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は炭素数が2のアルキル鎖で、A1 〜A8 はいずれも水素(H)である。
【0067】
実施例10
アルゴン置換したフラスコに、2,7−ジフルオロフルオレン(2,7−Difluorofluorene)5.5g(0.51モル)と脱水テトラヒドロフラン200mlとを加え、攪拌して均一に溶解した。得られた溶液に金属リチウム0.126g(0.51モル)を加え、室温にて48時間攪拌し、赤色のリチウム−フルオレン錯体溶液を得た。別のフラスコにポリエピクロロヒドリン1gを脱水テトラヒドロフラン100mlで溶解し、上記のリチウム/フルオレン錯体溶液を10時間かけて滴下し、カルボアニオンの赤色が消えるまで室温にて攪拌した。反応後の溶液を水中に注いでポリマーを析出させ、テトラヒドロフランとメタノールにて再沈殿を繰り返して、ポリマーのメチレンクロライドの55%がフルオレンによって置換されたポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液にn−ブチルリチウム(n−BuLi)ヘキサン溶液を加え、室温にて3日間攪拌し、濃赤色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで、乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例10のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、2,7−ジフルオロフルオレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体は式(17)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は炭素数が2のアルキル鎖で、A1 〜A8 のうち、A2 とA7 がフッ素(F)で、残りはいずれも水素(H)である。
【0068】
実施例11
ドライ雰囲気中、ナフタレンメタノール(Naphthalene methanol)10g(63.3ミリモル)とトリエチルアミン5.53g(70ミリモル)をテトラヒドロフラン100mlに溶解させ、この溶液にテトラヒドロフラン20mlに溶解したアクリロイルクロライド(Acryloyl chloride)5.76g(63.3ミリモル)を室温において2時間かけて滴下し、全量を滴下後、さらに室温にて6時間攪拌し、得られた反応混合物から濾過によって沈殿したピリジン塩酸塩を除去した。得られた反応混合物中からテトラヒドロフランを減圧除去した後、残余物を石油エーテルに溶解させ、水洗した。有機層を乾燥後、溶媒を減圧除去して、黄色液体を得た。これを減圧蒸留することにより、目的とするアクリロイルメチルナフタレン(Acryloylmethylnaphthalene)6.2gを得た。このモノマー(アクリロイルメチルナフタレン)は、分子内にナフタレン骨格と重合性官能基であるアクリロイル基を有している。このモノマーを乾燥テトラヒドロフランに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃にて24時間ラジカル重合し、ポリマーの側鎖にナフタレン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液に金属リチウムを加え、室温にて3日間攪拌し、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例11のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ナフタレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(12)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は炭素数が1のアルキル鎖で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0069】
実施例12
ドライ雰囲気中、2−ナフトール28.8g(0.2モル)をメタノール30mlに溶解させ、この溶液に水酸化ナトリウム8g(0.2)を加え一晩攪拌した。メタノールを減圧除去し、さらに一晩60℃にて真空乾燥し、メタノール、水を除去した。窒素置換後、無水テトラヒドロフラン150ml、無水ジメチルホルムアミド(DMF)100mlを加え溶解後、15℃にて冷却し、アクリロイルクロライドをテトラヒドロフラン20mlで薄めて2時間かけて滴下した。室温で2日、40℃で12時間攪拌した。沈殿をブフナー漏斗にて取り除き、溶媒を減圧除去した。残余物約40gにエーテル40mlと石油エーテル80mlを加え、不溶物を除去した。分液ロートに移し、水50mlにて3回水洗した。硝酸マグネシウムで乾燥し、エーテルを除去して、減圧蒸留(80℃/43Pa〜86℃/25Pa)にて精製して無色透明液体であるアクリロイルオキシナフタレン22gを得た。このモノマー(アクリロイルオキシナフタレン)は分子内にナフタレン骨格と重合性官能基であるアクリル基を有している。このモノマーを乾燥テトラヒドロフランに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃にて24時間ラジカル重合し、ポリマーの側鎖にナフタレン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液にリチウムメタルを加え、室温にて3日間攪拌し、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例12のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ナフタレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(12)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0070】
実施例13
ドライ雰囲気中、1−ナフトール28.8g(0.2モル)をメタノール30mlに溶解させ、この溶液に水酸化ナトリウム8g(0.2)を加え激しく一晩攪拌した。メタノールを減圧除去し、さらに一晩60℃にて真空乾燥し、メタノール、水を除去した。窒素置換後、無水テトラヒドロフラン150mlを加え溶解後、15℃にて冷却し、エピプロモヒドリン(0.22モル)をテトラヒドロフラン20mlで薄めて2時間かけて滴下した。室温で2日、40℃で12時間攪拌した。沈殿をブフナー漏斗にて取り除き、溶媒を減圧除去した。残余物約40gにエーテル40mlを加え、不溶物を除去した。分液ロートに移し、水50mlにて3回水洗した。硫酸マグネシウムで乾燥し、エーテルを除去して、減圧蒸留(100℃/2.7Pa〜3.6Pa)にて精製して分子内にナフタレン骨格と重合性官能基であるエポキシ基を有するモノマーを得た。このモノマーに対して熱カチオン触媒〔サンエイド SI−H40(商品名)〕を1質量%加え、80℃にて6時間加熱重合し、ポリマーの側鎖にナフタレン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液にリチウムメタルを加え、室温にて3日間攪拌し、濃青色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで、乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例13のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、ナフタレン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリエーテルであって、上記含芳香環構造体は式(12)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は酸素(O)で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0071】
実施例14
ドライ雰囲気中、9−ヒドロキシメチルアントラセン〔9−(Hydroxymethyl)anthracene〕13.2g(63.3ミリモル)とトリエチルアミン5.53g(70ミリモル)をテトラヒドロフラン100mlに溶解させ、これにテトラヒドロフラン20mlに溶解したアクリロイルクロライド(Acryloyl chloride)5.76g(63.3ミリモル)を室温において2時間かけて滴下し、全量を滴下後、さらに40℃に加熱して6時間攪拌した。得られた反応混合物中から濾過によって沈殿したトリエチルアミン塩酸塩を除去し、テトラヒドロフランを減圧除去した後、残余物を石油エーテルにて溶解させ、水洗した。有機層を乾燥後、溶媒を減圧除去して、黄色固体を得た。これをトルエン/メタノールから再結晶することにより、目的とするアクリロイルメチルアントラセン(Acryloylmethylanthracene)7gを得た。このモノマー(アクリロイルメチルアントラセン)は、分子内にアントラセン骨格と重合性官能基であるアクリロイル基を有している。これを乾燥テトラヒドロフランに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃にて24時間イオン重合し、分子内にアントラセン骨格を有するポリマーを得た。このポリマーを乾燥テトラヒドロフランとジエトキシジエチレングリコールとの体積比1:1の混合溶媒に溶解させ、この溶液に金属リチウムを加え、室温にて3日間攪拌し、濃赤色の錯体溶液を得た。この錯体溶液をアルゴン雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストした。ついで乾燥してテトラヒドロフランを除去してステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。なお、この実施例14のイオン伝導性高分子電解質におけるポリマーは、アントラセン骨格を有する含芳香環構造体を分子内に有するポリアクリレートであって、上記含芳香環構造体は式(9)で表される構造体でポリマーの側鎖に結合していて、式中のR1 は炭素数が1のアルキル鎖で、A1 〜A9 はいずれも水素(H)である。
【0072】
比較例1
メトキシエトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製、180)5gと乾燥ジメトキシジエチレングリコール3gに、LiN(SO2 C2 F5 )2 1.5gとジエチレングリコールジアクリレート0.2g(日本化薬社製、SR−213)とルシリン(Lucirin)TPO(BASF社製の2,4,6−トリメチルジフェニルホスフィンオキサイドの商品名)0.01gを溶解させ、イオン伝導性高分子電解質の前駆体溶液を調製した。この溶液を不活性雰囲気中でステンレス鋼板上およびリチウム箔上にキャストし、30mW/cm3 、10分の条件下で紫外線を照射して硬化させ、ステンレス鋼板上およびリチウム箔上にイオン伝導性高分子電解質フィルムを形成した。この比較例1におけるリチウムイオンの総量は実施例1におけるリチウムイオンの総量と同量である。
【0073】
上記実施例1〜14および比較例1で形成したイオン伝導性高分子電解質フィルムについて、その室温でのイオン伝導度およびリチウムイオン輸率を調べた。その結果を表1に示す。なお、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率の測定方法は次に示すとおりである。
【0074】
イオン伝導度の測定
上記ステンレス鋼板上に形成した実施例1〜14および比較例1のイオン伝導性高分子電解質フィルムをもう一枚のステンレス鋼板とではさみ、それらをアルミラミネートフィルムからなる外装材中に封止してモデルセルを作製し、室温でのイオン伝導度(σ)を複素インピーダンス法で測定した。
【0075】
リチウムイオン輸率の測定
上記リチウム箔上に形成した実施例1〜14および比較例1のイオン伝導性高分子電解質フィルムをもう一枚のリチウム箔とではさみ、HSセル〔宝泉(株)製〕に組み込んでモデルセルを作製し、直流分極法と複素インピーダンス法とを組み合わせた輸率測定法〔Polymer,28,2324(1987)〕でリチウムイオン輸率を測定した。すなわち、上記リチウム箔を電極とし、その電極間に一定の印加電圧(10mV)を与え、初期電流値(I0 )および定常電流値(Is)を測定し、さらに電圧印加前後の界面抵抗測定値(それぞれ、R0 およびRs)を複素インピーダンス法により求めた。そして、得られた値を次式に導入してリチウムイオン輸率を求めた。
【0076】
なお、上記式中の△Vは印加電圧で、R0 は電圧印加直前の界面抵抗(交流インピーダンス法により求める)であり、Rsは電圧印加後の界面抵抗(交流インピーダンス法により求める)である。
【0077】
表1には、上記イオン伝導度およびリチウムイオン輸率の測定結果を示すが、表1にはそれらと共に、それらのイオン伝導性高分子電解質中に使用されている含芳香環構造体の種類も併せて示す。なお、イオン伝導性高分子電解質中のポリマー比率は実施例1〜14および比較例1のイオン伝導性高分子電解質とも50質量%であった。
【0078】
【表1】
【0079】
上記実施例1〜14と比較例1はポリマー比率がいずれも50質量%で同じであるにもかかわらず、表1に示すように、実施例1〜14のイオン伝導性高分子電解質は、比較例1のイオン伝導性高分子電解質に比べて、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率がともに高く、特にリチウムイオン輸率は比較例1のイオン伝導性高分子電解質に比べて高かった。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、イオン伝導度が高く、かつイオン輸率が高いイオン伝導性高分子電解質を提供することができた。
Claims (11)
- アルカリ金属または有機アルカリ金属化合物によってラジカルアニオンまたはカルボアニオンを生成する含芳香環構造体を分子内に有するポリマーを用いたことを特徴とするイオン伝導性高分子電解質。
- 含芳香環構造体が、ラジカルアニオンまたはカルボアニオンとなり、アルカリ金属との錯体を形成していることを特徴とする請求項1記載のイオン伝導性高分子電解質。
- 含芳香環構造体が、縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、またはポリフェニレン構造である2つ以上の芳香環を有する構造体、または少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体、または少なくとも2つ以上の芳香環がカルボニル基によって結合した構造体であることを特徴とする請求項1記載のイオン伝導性高分子電解質。
- 縮合環構造である2つ以上の芳香環を有する構造体が、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、フェナントレン骨格またはフェナジン骨格を有することを特徴とする請求項3記載のイオン伝導性高分子電解質。
- 少なくとも2つ以上の芳香環がメチレン基によって結合した構造体が、下記の式(15)、式(16)、式(17)、式(18)、式(19)、式(20)、式(21)、式(22)または式(23)で表されることを特徴とする請求項3記載のイオン伝導性高分子電解質。
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